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俺がお題でお前が書いてコミュの第11回お題(10/2:締め切り10/31)

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1日遅れましたが、まだ前回お題があるのでご勘弁。

・メイド神社
・友人との三角関係
・エプロンおばさん

コメント(15)

タイトル「エプロンおばさんは十二歳」

 二〇〇八年の正月は、お世話になってる下宿屋のアルエおばさんの声で目が覚める。
「さあさ、寝正月では牛になりますよ。おせちを食べにいらっしゃいな」
 その声色の高さに少々違和感を抱きつつも、眠い目をこすって万年床から起き上がり、シャツとセーターとドテラの重ね着で階下のダイニングに降りる。
「おはようございます」
 眠い目を擦りつくし、うすぼんやりと目を開けると、十二、三歳くらいのの見知らぬ少女が網膜に飛び込んだ。
「誰……?」
「何言ってるんですか。有江ですよ、アルエ」
 俺は絶句し、欠落した発話を視認によって代替する。
 髪はツインテール。華奢で未発達なボディラインは、少女の幼さを十二分に感じさせる。アルエのチャームポイントといっていい、恰幅のよい姿にすんなりと合っていたエプロンは、その細い体に余りに余り、歩くと床にすってしまうほどだぶだぶで、純白のワンピースを髣髴とさせた。
 あまりの変貌ぶりに静止画のように固まる俺に、アルエさんは、「あけましておめでとう」。と、挨拶の内容と声色以外、いつもとかわらぬ明るさで声を弾ませる。
「アルエさん。あの……」
「ええ、わかってますよ。姿が変わっているんでしょう?」
 アルエさんはとてもうれしそうにその場で一回転した。白いエプロンが重く揺れる。
「どうしてかは知りませんけど、朝起きるとこんな体になっていました」
「あんまり、驚いてないみたいね……」
 アルエさんは頷き、
「ええ、むしろワクワクしていますわ。わたし、またこんな若い体が入ったんだって」
 ころころと笑う。いつに無く能天気なおばさんだ、と俺は内心辟易とする。
 アルエおばさんは、この下宿屋をずいぶんと長い間切り盛りしている。数年前に旦那さんを亡くしてからも、ずっと一人で俺たち下宿生の炊事なり洗濯なりの面倒を見てくれる、いわゆる俺たちの母さんみたいな存在だ。もうすぐ還暦を迎えるはずなのだが、その元気に俺たち下宿生が圧倒される場面だってしばしばある。
 だが、そんなアルエさんが、少女に変身だと?
 頬をつねろうが、柱の角に頭を打ちつけようが、アルエさんは少女のままだった。受け入れたくない事実が今ここに。しばらく黙っていると、アルエさんはテーブルを指差して、とりあえずおせちを食べるように促した。
「いつまでも動転していても始まりませんよ。もっと楽しまないと」
 アルエさんは八重歯を出してにこやかに笑う。
 俺とアルエさんは二人きりでテーブルを囲む。他の下宿生がみんなして帰省している今、この家には俺とアルエさんの二人しかおらず、誰も助けに入らない。当事者がその状況を楽しんで、部外者のはずの俺がいつまでもうろたえているこの状況。俺はなんとかこの気分を落ち着かせようと、おせちの後に出された熱いおしるこを一気に平らげようとしたが、熱い小豆がのどに詰まって散々ひどい思いをした。俺の咳が病んだ頃、アルエさんは肘をテーブルにつけて、じっと俺を見ながら言う。
「アザイくん、これから一緒に初詣行きましょうか」
 い、一緒に?
 俺はさらに追加の咳を重ねなければならなかった。
 このあたりで神社というと、「冥途神社」が有名である。本来は黄泉の国にいる神様の誰かを祭神にする神社であるそうだが、近年のアキバ系にブームの同音異義語との無理やりな関連付けによって一躍萌えスポットの烙印を押され、今や全国から妹や幼馴染との縁結びを願う参拝客でごったがえす、ある意味可愛そうな神社だ。
 アルエさんと二人で鳥居をくぐり、参拝客のごったがえす本殿への道を歩く。ぶかぶかのエプロンに身を包んだアルエさんはいやでも目を引くようで、一緒にいる俺は恥ずかしくなって早足になるけれども、歩幅の短いアルエさんはついてこれなくて小走りに走ったところ、「はうぅ」とか言いながら石に躓くのでちょっと萌えた。
 本殿近くだろうか。人ごみから外れたあたり、仮設された丸椅子に座って、ひとつ腰を休める一人の巫女さんが見えた。
 巫女、といっても、一般に知られるそれとは容姿にたいそうなギャップがある。
 巫女衣装の上に、ステレオタイプのメイドの着ているそれと同じく、過度にフリルの入ったエプロンとカチューシャを着用しているのだ。
 俺はその巫女メイドを知っている。同じゼミに通うアサクラだ。この神社の一人娘をやっていると聞いていたが、どうやらそれは嘘ではなかったようだ。
 俺が近くに来たことに気づくと、アサクラは、無粋な顔を俺に向ける。その顔にはいくばくかの疲れが混じっているようだった。
「やあ、忙しそうだな」
「忙しいよ。あたしはあんまり歓迎しないけど」
 そしてアサクラはアルエさんを舐めるように眺める。
「で、その娘は?」
「あ、ああ……」
 説明に困る。俺が何を言おうか迷っていると、アサクラは何かを隠すような表情を察してか、
「あんた、そんな趣味があったんだ」
 軽蔑したような目線を向けてきた。
「未成年の少女にそんなカッコさせて歩いてちゃ……、捕まるよ」
 俺はアルエさんを見る。華奢な体格に合わないだぶだぶのエプロン姿は結構倒錯的だ。ツインテールがさらにその攻撃力を高めているといっても過言ではない。
 だがしかし、……こいつには言われたくない。
「そういうお前はどうなんだ。巫女がメイドエプロンを着用するなんて、やばいだろ。いろいろと」
「こ、これは……、仕方ないでしょ。うちのお父さんが、『時代の流れだ。着れ、着れ』ってうるさいから……!」
「そうかねえ、俺はお互いのいいところを殺しあってる風にしか見えないけど」
「あの、アザイ君。この方は……?」
 アルエさんが小さい声でささやく。
「ああ、アサクラっていう、ゼミでの知り合い」
「そうなの、仲いいのねえ」
 その言葉に、アサクラは過剰に反応する。
「ちょ……、勘違いしないでよね。こいつとはゼミで同じだけなんだから」
「今度アザイ君の部屋にいらっしゃいよ。」
「な、なによこの娘。馴れ馴れしいわね」
「あのさ、アサクラ」
 俺は、アサクラに、この少女が実は自分のお世話になっている五十八歳の下宿屋のおばさんで、今朝から何故か少女に変身してしまっていることを告げた。俺の話は荒唐無稽もいいところで、アサクラは案の定、俺を鼻で笑い殺した。
「そんな嘘をつくなんて、三ヶ月早いわ。あたしを莫迦にする気?」
「いやそうじゃない信じてくれ。俺だって、内心どうすりゃいいかわからないんだ」
「その声が震えてるのは寒さのせいじゃなかったわけね」
 アサクラは、さっと椅子から立ち上がり、少しだけ歩を進めて、二人を手招きした。
「ついて来て。少しだけね、心当たりがあるの」
 二人はアサクラに連れられて、境内の裏側から本殿に入った。入ってすぐにある階段を下へ下へと降りると、目の前に、仰々しい鉄の門扉が見えた。アサクラは、一言「入ります」と言い、扉を慣れた手つきで手前に引く。重苦しい音とともに扉は俺たちの前から逃げるようにして横に開き、その向こうに六畳ほどの小部屋が姿を現した。
 ござが敷かれたその部屋に、小柄な人の姿が見えた。ずいぶんと色白の少女だった。お姫カットに振袖をまとった、ずいぶんと時代錯誤の姿。片手にはお猪口を持ち、徳利から酒を無尽蔵に注ぎ、ぐいぐいと容赦なくやっていた。
 少女はこちらに気づくとひとつしゃっくりを加えつつ、据わった目をこちらに向ける。
「なんじゃ、まだ何かあるのか?」
 アサクラはすこしかしこまった。
「ヨミヒメ様。もうお酒は控えてはいかがですか?」
「何を言う。今日は年に一度のめでたき元日であろう。今飲まずしていつ飲むのだ」
「あの……これは?」
 俺はアサクラに訊いた。アサクラはこちらを見て、
「ああ、この神社のご祭神さん……」
 ご祭神!?ってことは、神さん?俺は少女をまじまじと眺める。どう見ても平安時代からタイムスリップしてきた稚児にしか見えない。
「何を見ておる」
「いや、君が本当に神様なのかって……。子供にしか見えないし」
「ば、ばかにするでない。わらはなぁ、これでも、この神社に久しく住まってきた高貴高邁な存在なのだぞ。それが……、なんだ、この頃の世間の凋落ぶりは……。メイドという毛唐の文化が流行しているらしいが、なぜわらわの神社がそれに迎合しなければならん。参拝客が、わらわを縁結びの神だと勝手に誤解して、参拝に来る。まったく、勘違いも甚だしいわ」
「え?そうなの?」
 それは知らなかった。
「そうじゃ。わらわは病の神だ。衆生を黄泉へ誘う疫病神じゃ。わらわに何かを願っても、わらわはその者を病にする事しか出来ないのだ。ああ、もうたくさんじゃ!もう鈴の音も、お前たちの願いなぞ聞きとうないわ。これが、飲まずにいられるか……!」
 回らない呂律でそう語り、再び杯の酒を一気にあおる。少しむせび泣いているようで、そっとしておいてもよかったんじゃないかと思ったが、アサクラは一歩ずいと前に出て話を切り出す。
「ところでヨミヒメ様。昨日は夜からずっとお飲みになっていたみたいですが、そのときの記憶は残っていますか?」
「そんなもの、いちいち覚えていては、神はつとまらん」
 アサクラは、やっぱり、といった表情でひとつ大きなため息をつくと、俺の後ろにいたアルエさんの腕を引っ張り、前に押しやった。
「この方は、元はオバサンだったみたいです。それが、今朝目が覚めるとこのような少女の姿に成り果てていたとか。ヨミヒメ様がこの方に術をおかけになった、なんてことはありませんか」
 その言葉を耳に入れ、ヨミヒメは杯を床に置き、しばらく指で頭をかきながら首をかしげた。
「ううむ……確かに深夜、腹が立ってしてそこらじゅうを際限なく飛び回っていたという記憶は無いでもない。そのときに、どこかの民家に入って、気まぐれに変化の術をかけたということも考えられる。だが、だからといって、わらわがこの者を術にかけたという確証にはならんだろう」
「ヨミヒメ様しかいないでしょう。ヨミヒメ様以外、どこの誰もそんなことやりませんし、できませんよ」
「ふむ、そうなのか」
「そうです!とにかく、今から戻してもらいますからね」
 アサクラは、アルエさんに向かっていった。
「というわけなんです。この酔狂な神さんのせいで、あなたは少女に変えられてしまったというわけなんです。ごめんなさい、今戻してもらいますから」
 頭を下げるアサクラに、アルエさんは驚いた顔を見せ、手を振った。
「いえいえ、ぜんぜん構いませんでしたのよ。新鮮な気持ちでいっぱいで、むしろ感謝したいくらいです!……で、戻ってしまうのですよね、元の姿に」
 アサクラははっきりと頷く。
「そう……」
 アルエさんに、少しがっかりした顔がよぎった。俺のほうに向き、
「アザイ君、わたし、もう少し、今のままでいたかったです。今の姿でいれたら、またワクワクする新しい恋ができたのかもしれませんのにね」
 見つめる。その目はやけに悲しげに映り、名残惜しさが痛いほど伝わった。
「さ、さ!早く戻してもらうわよ。ヨミヒメ様、今元に戻せますよね?大丈夫ですよね?」
「うにゃ……、眠たくなってきたぞ。暫し寝てからでよいか?」
「駄目です!」
「うみゃあ、ダメじゃ。頭がクラクラする……」
 寝そうなヨミヒメの肩を必死で揺らすアサクラ。何もそんなに急がなくていいのに……。
「アザイ君。じゃあ私、また元のオバチャンに戻りますね。少し残念ですけれど」
 軽く舌を出した。
 俺は、ゆっくりと頭を振って、笑顔を作った。
「ええ、そちらのほうがいいですよ。俺、実は幼女には魅力を感じないんです。エプロンおばさんだったアルエさんのほうが、今よりずっと、ずっと魅力的に見えますよ」
 俺とアルエさんは、同時にヨミヒメに向き直る。
「というわけで、よろしくお願いします」
 そこには、正座をしたアサクラと、それに膝枕をしてもらうヒメの姿。ヒメはすやすやと心地よい寝顔を見せていた。
 アサクラは、まったく笑っていないツリ目でこちらを見据え、頑とした一言をその腹の底から発する。
「駄目だって。やっぱ眠いって。今日は帰ってくれない?」
また自転車操業でした。

最近地の文が適当になってきてる気がする……。

あと書いててアサクラがちょっと好きになりましたw。
ぎりぎりアウトな気がしますが、面白かったのでよし。

普通にこのまま話を続けてほしいところ。

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