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俺がお題でお前が書いてコミュの第六回お題(7/1:締め切り7/15)

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コメント(14)

ゴメンナサイ間に合いませんでした。
今日中にはあげさせていただきます……。
タイトル「笹いっぱいの愛を」

 放課後の数を母数とするくじ引きがあるとすれば、漫画部室への闇田小夜子の到来という当たりくじはずいぶんな数になるんじゃないかと思う。もっとも、あたしはそれを引くことは望んでないけれど。
 文化祭にあわせる漫画のネームを描いているのもお構いなしに、今日も闇田は部室に闖入してきた。
「おや、今日も赤星はいないようだね」
「そうですけど。先輩に何か用ですか?」
「いや、彼に特に用というものは無いんだけれどね」
 闇田は窓際にある本棚まで足を運んだ。
「ああ、闇田先輩、お疲れ様ス」
 後輩の時任が痴愚のようにへらへら笑いながら闇田に近づいた。
「やあ時任君は今日も元気そうじゃないか」
 時任は曇りない笑顔でデレデレ答える。そのまま二人は何やら楽しげに会話をし続けた。あたしは聴覚を遮断して黙々とペンを動かす。
「先輩、このまえ借りた本を……」
「……何、君は中上健次も知らないのか。先ずはこれくらいは知っていてもらわないとと近現代の……」
 いやでも会話は耳に入る。気が散って筆圧は嫌でも高くなった。
 闇田は気に入った漫画を手に持って、空いたスペースに自分の持ってきた文庫本を二、三冊本棚に詰め込むと、
「では失礼するよ。赤星が来たら僕に顔を見せるように申し伝えてもらえないかな」
と言い、私の嘘まみれの首肯を確認すると帰っていった。あたしは心の中で部室の引き戸を勢いよく閉める。
「ああ、闇田先輩、なんかいいな」
「はぁ?あんな女のどこがいいの」
「俺、ああいうメビウスの輪みたいな表裏のない人が好きなんだ。なんか自由に生きてるって感じで。ああ、闇田先輩は三次元だから、むしろクラインの壷だよね」
 正直に言うと、あたしは赤星先輩に恋をしている。ペンも握れなさそうなほどの優男で、その女の子のような優しい目はあたしをドキリとさせたし、細長い指先から紡ぎだされる儚いタッチの写実的な漫画はとても絶望的で悲惨な作風だったけど、それには深く心を打たれるものがあった。でもあたしは先輩になかなか話しかけることができなかった。目を合わせるだけでも焦げてしまいそうで、話どころじゃなかったから。それに先輩は、体が弱くてあまり学校に来なかったから。
 先輩のことを想って、毎日シクシク胸を痛ませる。悶々とした気持ちで毎日登校して、誰もいない先輩の指定席を見ては甘くて深い溜息をつく。
 だからあたしは闇田が嫌いだ。それ以上の理由は無い。

 学校からの帰り道、商店街を歩いているとアーケードの真ん中にひときわ大きな笹が立てられてあるのが見えた。笹には様々な色の短冊が結び付けられていて、夏のクリスマスツリーのように爽やか彩を添えていた。ああそうか、そろそろこんな時期なのか。あたしは興味を持って笹に近づき、短冊を眺める。ここを通る人たちが気まぐれに、あるいは真剣に筆を走らせたのだろう。様々な願い事が書かれてあった。某大学に合格できますように、某フィアンセと結婚できますように、家内安全、健康長寿云々。あたしは近くにあったテーブルから青い短冊を取り出し、サインペンを走らせる。
「赤星先輩が学校に来ますように」
 笹につけてみるものの、あたしの短冊は他の短冊にまぎれて目立たなくなった。
 あたしの願いが織姫と彦星に届いたのだろうか。次の日赤星先輩は部室に姿を現した。テンションが高くなって、あたしは先輩に話しかける。快気を祝うやり取りの後、あたしはふともらす。
「笹のおかげかもです」
「そうなの?」
「ええ、あたし、先輩が来ますようにっていう願を短冊に書いて笹に結び付けてたんです」
 先輩は、「そのおかげかも知れないな」とにこり微笑む。あたしは赤面してうつむいてしまい、それ以上会話が続かず席に戻ってしまう。赤星先輩は近くの席の男子たちと落ち着いたテンションで会話しながら、鬼神のようなスピードで自分の原稿にペンを走らせている。あたしは風景を消してその姿だけを見つめる。先輩の背中はひどく遠く映る。あたしとの間に、深く濁った天の川が横たわっているようだった。あたしは、黙々とペンを走らせるしかなかった。ページは全然進まなかったけど。
 扉の開く音。クラインの闇田だ。暗いオーラと根拠不明の自信に満ち溢れた微笑を浮かべた闇田は、赤星先輩の姿を確認すると「やあやあ久しぶりだね」と言いながら自在に天の川を渡る。先輩に話しかけながら隣の席に座る。図々しい女。何様だろう。先輩のセカイから出て行けばいい。
 でも先輩はあたしの願望とは裏腹に、顔に屈託無い笑顔を浮かべて闇田と話し出す。いったん意識し始めると、嫌でも話の内容が耳に入る。
──今度の日曜。──高架下のあの店が。──ツキアッテ。
 あたしはペン先でインク瓶をゆっくりとかき混ぜる。古いインクに乗り移った鬱屈はペン先をドロドロと濡らしへばりつく。
「どうしたのコーヅキ。顔がおおむね般若だけど」
 時任がアホ面提げてやってきた。
「画用紙持ってきて。烏より黒いやつを」
「えーと、なんに使うの?」
「いいから早く」
 時任の持ってきた黒の画用紙をペーパーナイフで短冊状に切断する。ルーペで光を集めたら一瞬で燃え尽きてしまいそうな真っ黒な短冊の束。その一枚一枚に、等ペースで赤いサインペンを走らせる。闇田が不幸になりますように。闇田が不幸になりますように。闇田が不幸になりますように。闇田が。闇田が──。
 
 七夕を間近に控えた商店街は強風のせいか、いやに人通りが少なかった。あたしの吊るした黒い短冊が、笹を隅から隅まで埋め尽くす。それはもはや笹ではなく、黒い髪を振り乱す妖怪だった。あたしはそれをただ無表情に見上げる。笹いっぱいの呪詛。誰もそこには寄り付こうとしない。
 それから闇田は部室に姿を現さなくなり、そして七夕の日の部室はあたしと先輩しかいなかった。普段来る人達が来なくて、普段いない人がいる。ベン図の境界を踏み越えた不思議な気分。あたしは思い切って先輩の横の席に腰掛ける。先輩はそれを気にする風でもなく「やあ光月」と一言挨拶をして、闇田の置いていった本を読み進めていた。あたしは心臓の鼓動に合わせるように手早く原稿作業を進める。あたしは持てる限りの勇気を出してさりげなく、
「闇田先輩、最近来ませんね」
「ああ、そうだな」
「まるで織姫と彦星みたいですよね。学校には来てるんですか?」
「さあな、あいつはいつもフラフラしてて捉まらないから」
「せ、先輩は……」
 あたしは完全に筆を止めて言う。
「闇田先輩と、ツキアッテ、イルンデスカ」
 ひたすら長い沈黙。ただ書きかけの原稿を見下ろし返答を待つ。
「闇田は……、ちがうよ。ただの幼馴染だ」
 今書いてる漫画の設定と同じじゃない。最後にはハッピーエンドじゃない!
 先日の先輩たちの会話を思い浮かべる。掴んだペンに筆圧をこめて、
「もう付き合ってるも同然ですよ。もうコクっちゃえばいいじゃないですか。そうすればあたしは……」
 諦められる?まさか、嘘にもほどがある。
「それは、違う……」
 先輩は、悲しさをたたえた目であたしを見据えた。
「お前が、どういう考えでいるかわからないけど、それは、誤解だ……」
 もう限界だった。いろいろなことが頭が回り、苦くて不味いボルシチを作り上げていた。目の前が青黒くなって、気分が悪くなる。
「今日は、帰ります」
 おぼつかない手つきで荷物をまとめ、足早に部室を後にする。年に一度の逢瀬もこの有様だ。あたしはもう自分を笑うしかない。
 町は相変わらずの曇り空。風が無いというのに、商店街は人通りひとつ見ることができなかった。店の殆ど全てにシャッターが下ろされていて、ゴーストタウンを髣髴とさせる。あたしが黒くした笹は相変わらずそこにいた。あたしは百円ショップで購入したライターを右手に持って笹と向き合う。黒という色はよく燃えると聞いている。あたしのつけた二百の短冊が作り出す炎は、どんなにキレイに見えるだろうか。目を瞑り、その光景を脳裏に浮かべうすら笑う。
「死んだ町だね。誰がここをこうまで酷くしたんだい?」
 背後からの声に、あわてて振り返る。
「闇田、先輩……」
 学校で見るのと全く変わらない姿で立っていた。少なくとも不幸になった風ではなかった。
「まずここにいるとは思っていたよ。ずいぶんとやってくれたじゃないか」
 闇田は笹をまじまじと見上げ、わずかな笑みをたたえた。あたしは自然と身構える。
「いや別に怒ってるわけじゃない。誰だって魔が差すことはあるからね」
「不幸には、なっていないんですね」
「願いは赤の他人が叶えるものではないからね」
「なんで、先輩はここに来たんですか」
「うん、さっき部室を顔に出したら、赤星にこれを渡されてね。商店街にある『願いを叶える笹』とやらに、これをかけておいてほしいと頼まれたんだ」
 闇田は制服のポケットから紙切れを取り出して私に見せた。薄桃色の短冊だった。そこには、深い緑のサインペンでこう書いてあった。
 《光月が、俺と付き合ってくれますように  赤星》
 一瞬、何が書いてあるかわからなかった。その文字の意味するところを理解すると、あたしはみるみる足を震わせ、その場に膝をつく。
「なんで……なんで……!」
 何もかもが溢れて、両掌で顔を覆う。
「先輩たち、……この前だって、部室で今度の日曜デートするって話、してたじゃないですか……!」
「誤解もいいところだよ。赤星はあのとき、君とデートがしたいと言っていたのだぞ。光月は自分と付き合ってくれるだろうかと、相談を受けていたのだよ」
 闇田のひどく落ち着いた声が、頭の上から降り注ぐ。
「願わくば、彼の願いを、叶えてやっては、くれないか」
 あたしは塩水で手を濡らす。
「君が、叶えてやっては、くれないか」
 しばらくの後、あたしは首を縦に動かす。もう頬を伝う涙と天の川は、完全に干上がっていた。
ずいぶんと遅れてしまいました。
すみません。

前回のMOY飲み会でいろいろと批評されたので、
今回はちゃんと完結してる話を書いたつもりです。
(お題の消化はあまりなってないですが)
結論は多分こういうことだろうと思います。


心残りもあるのですが、今書くとネタバレなのでまた今度。
おっと、闇田シリーズ来ましたね。
なんていいやつなんだ。

ちゃんと完結していると思いますよん。

心残りというのは・・・闇田の前世と短冊が絡んだりしてたんでしょうか?
闇田は書きやすいですね。
でも最近素直クール率が高いので封印しようと思ってたり、思っていなかったり。

心残りというのは、赤星が光月を好きなそぶりを見せる描写がなかったことですね。
それが原因でラストが唐突に見えてしまった気がします。
ああ、最近携帯でミクシィするには字がちっちゃくてつらい私です。コメント遅れました。

おっしゃる通りお話は完結してると思います。闇田さんと先輩がつきあってると思わせる描写もさりげなく混ぜとくとよりよかったかと思います。

実は一番気になったのは、僕の読み落としでなければ、今回の地の文の一人称が誰なのか分かんなかったでした。実は最初は「あたし」とゆーのは闇田のことだと思ってしまい、 辻褄の合わなさに何度か読み返したものでした。
先輩の隣に座るシーンまで主役(?)の子の名前が出てなかった気がするですが、単なる読み落としでしたらごめんなさい。

しかし毎度犬丸先生の引き出しの多さは素晴らしいですね。今回のお話は可愛くて僕的に好きです。
次回も期待してます。
>一人称の件

最初の一文目〜二文目。

 > 文化祭にあわせる漫画のネームを描いているのもお構いなしに、今日も闇田は部室に闖入してきた。

部室に到来する闇田を見ているもう一人のキャラからの視点であることがわかると思ったのですが。どうでしょう。


>光月さんの名前
これは〜、読み飛ばしですね。
短冊を作るシーンで
時任君が「コーヅキ」と彼女の名を呼んでいます。

私の引き出しはまだまだ狭いほうだと思いますよw。
少ない素材同士のつなげ方に力を入れているので、
引き出しが広いように見えるだけかもしれません。
かくいう私も、引き出しの多さ(知識の多さ)=創作のしやすさではないと思っていますね。

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