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ぽっぽのぴっぽコミュのぽっぽのぴっぽ

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青〜いお空にぽっかり浮かぶ白い雲。
そこにちっちゃなおうちがちょこんと乗っかってます。
住んでるのは、ちっちゃな妖精さんたち、ぽっぽの一族。
今日はちっちゃなぴっぽの誕生日。

「ぴっぽは幾つになったんじゃ?」
「六つだよ、ぱっぽじいちゃん。」
「じゃあ、そろそろ下へ出かけても良い頃じゃな。」
「下?」
「そうじゃな、こっちへおいで。」

ぱっぽじいちゃんはぴっぽを外に連れていきました。
「ここから雲の下を見てごらん、落っこちるんじゃないぞ。」
ぴっぽはそ〜っと覗いてみました。
「うわ〜、何か色々あるんだね、ぼくんちの回りは白い雲と青〜いお空だけなのに。」

「あれが森でこっちが川、それから人間達の家…。」
ぱっぽじいちゃんはぴっぽに色々教えてあげています。

「下って、楽しそうなのがいっぱいあるんだね、早く行ってみたいな〜。」
「そうじゃのう、今日準備をして、明日早くでかけるとするか。」
「うわ〜い、楽しみだなぁ〜、早く用意しようよ、物置へいくんでしょ?」
「これこれ、そんなに慌てるでない。」
ぴっぽは物置へぴゅ〜んと行っちゃいました。

「一等賞! ぱっぽじいちゃん、早く早く。」
「そんなに急がなくても物置は逃げはせんぞ。」
「ね〜、早く戸を開けてよ〜。」
「待っとれよ、さあ、よっこらせっと。」
ぎぎ〜、と戸が開きました。
「ねぇねぇ、何持ってくの?」
「そうじゃなぁ、まずはトンボのメガネ。」
ぱっぽじいちゃんはメガネを取りました。
「とんぼのめがねは♪ 水いろめがね♪ 青いおそらを♪ とんだから〜♪ と〜んだ〜か〜ら〜♪」
「ふふ、ぴっぽはお歌、上手じゃな。」
「へへ、かあちゃんに教えてもらったんだ、でもトンボのメガネって何に使うの?」
「下へ行ってのお楽しみじゃな。」
「何かどきどきだなぁ〜、他には何持って行くの?」
「雲の命。」
ぱっぽじいちゃんの手にはガラス瓶があります。
「あれ? 中で雲みたいなのがゆっくり動いているね、上のボタンを押すと出てくるの?」
「そうなんじゃがここで押しても何も起らないんじゃよ。」
「やっぱり下へ行ってのお楽しみってことなんだね、ねえ、下へ行ってのお楽しみばっかなの?」
「いやいや、これはちょっと違うんじゃ。」
ぱっぽじいちゃんは、小さな小さな雲みたいなを二つとりました。
「何なんだろう、これ。」
「雲風船じゃ。」
「雲風船?」
「さあ、右の一つを手に取ってごらん。」
「うわ〜、ふわふわだ〜。」
「その雲風船はこれから、ぴっぽの友達じゃよ。」
「うわ〜い、おともだちなんだ。」
「ぽっぽ一族にとっても、とても大切な友達だから大切にするんじゃぞ。」
「うん、わかった、でも、何をすればいいの?」

「まずはな名前を付けてあげるのじゃ。」
「名前?」
「そうじゃ名前はとっても大切なんじゃよ。」
「う〜ん名前かぁ〜、う〜ん、う〜ん、迷うなぁ〜、そうだ、もくもくしてるからモックってどう?」
「ふむモックか、雲風船が喜びそうな良い名前じゃな。」
「じゃあモックに決定! で、どうやっておともだちになるの?」
「まずは両手の上にそっと乗せて、ゆっくり揺すってやるんじゃ、乱暴はいかんぞ、自分の両手がゆりかごになったと思うのじゃな。」
「その後は?」
「しばらくすると目を覚ますから、おはようモックと声をかけてあげればいいんじゃ。」
「ぱっぽじいちゃん、もう夕方だよ。」
「まぁ気にするな、細かいことを気にする奴は大物にはなれんからな。」
「よく分かんないけど…、やさしく揺すってあげて、おはようモック、なんだね。」
「そうじゃ。」
「じゃあやってみるね。」

ぴっぽは両手で雲風船を揺すり始めました。
「ねえ、ぱっぽじいちゃん、子守唄でも歌ってあげた方が良いのかな?」
「今から起こすのに、子守唄はまずいじゃろう。」
「あっ、そっか。」
ぴっぽがしばらく揺すっていると、雲風船はプルンと震えて少し大きくなりました。
「そろそろお目覚めのようじゃな。」
「おはようモックって声をかければいいんだね。」
「そうじゃ、もういいじゃろう。」

ぴっぽは雲風船に向かって声をかけます。
「おはようモック。」

おや、雲風船はなんかつぶやいているようです。
「おはよう? モック? モックって誰だ? 誰が声をかけた?」
「モックは君の名前だよ、ぼくはぴっぽ。」
「おや、ぽっぽ族の子だな、おいらに新しい名前を付けてくれたのか。」
「そうだよ、ねえおともだちになってくれる?」
「おいら雲風船は、ぽっぽ族の仲間さ、ふむ、モックかぁ気に入ったぞ、ぴっぽはおいらの大切な友達だ。」
「うわ〜い、なかよくしようね、モック。」
「もちろんさ、ぴっぽだったな。」

「ぱっぽじいちゃんモックがおともだちになってくれたよ。」
「そうか良かったなぴっぽ、モック、わしの孫をよろしく頼むぞ。」
「おう。」
「ところでモック、明日ぴっぽを下まで連れて行きたいのじゃが、連れて行ってくれんかのぉ。」
「お安い御用だ、じゃあ今からごはん食べに行ってくらぁ。」
ピュウ〜。
モックは雲の中へ飛んで行ってしまいました。
「あれ? モック行っちゃったよ、いいの?」
「大丈夫、明日になったら、おなか一杯になって帰ってきてるよ。」

「ぼくもおなかすいた〜。」
「そうじゃな部屋へ戻るとするか。」

ぴっぽが部屋へ入ろうと戸を開けた瞬間…。
『ぴっぽ、お誕生日、おめでと〜!』
「うわ〜い、ありがとう、みんな来てくれてたんだね。」
皆にこにこ笑顔でぴっぽとご挨拶。
ぴっぽがぱっぽじいちゃんと過ごしている間に、ぽっぽ族のみんなが集まってお誕生会の用意をしておいてくれたのです。
おいしいケーキを食べたり、歌ったり踊ったりの楽しいお誕生会が始まりました。

「かあちゃんの作ってくれたケーキ、やっぱりおいしいや、もう最高〜。」

『ぽっぽぴ〜のぱっぽぴ〜♪ ぷっぽぷっぽぴん♪ ぱぽぴぺぱぽぴぺ♪ ぷぱぽぺぷぱぽぺ♪ ぷ〜ぷ〜ぷ〜♪』
ぽっぽ族の歌に合わせてみんな踊っています。
『ぺっぽぱ〜のぷっぽぴ〜♪ ぱっぽぱっぽぷん♪ ぴぽぱぽぴぽぱぽ♪ ぺぽぱぽぺぽぱぽ♪ ぺ〜ぺ〜ぺ〜♪』
ぽっぽ族は陽気な種族、皆仲良しです。
歌に踊りにおしゃべりと、お誕生会はまだまだ続きそうですが…。

「かあちゃん眠くなってきた。」
「そうね、ぴっぽはもう寝る時間ね、じゃあ皆さんにおやすみの歌を歌いましょうね、ちゃんと歌える?」
「うん、大丈夫。」
かあちゃんが部屋の皆に声をかけます。
「みなさ〜ん、ぴっぽはそろそろお寝んねの時間です、今日は来て下さって本当にありがとうございました、ぴっぽがお休みの前にお歌を歌います。」

「ぽっぽ〜♪ ぽっぽ〜♪ みんなありがと〜♪
ぴっぽ〜♪ ぴっぽ〜♪ ぼくは〜♪ おねむだよ〜♪ もうおねんねさ〜♪
ぽっぽ〜♪ ぽっぽ〜♪ みんな〜♪ ゆっくりしていってね〜♪
ぽっぽ〜♪ ぽっぽ〜♪ おやすみなさい♪ おやすみなさい♪」
ぴっぽの歌に皆が歌を返してくれます。
『ぴっぽ〜♪ ぴっぽ〜♪ ゆっくりおやすみ♪ 楽しい夢を沢山見れますように〜♪ おやすみなさい♪ おやすみなさい♪』
皆とおやすみをして、ぴっぽは寝室へ行きました。

「今日は楽しかったなぁ〜、明日は下へ行くんだよなぁ〜、ぐ〜。」

朝になりました。
「おっはよ〜、かあちゃん。」
「おはよう、ぴっぽ、ご飯できてるわよ。」
「は〜い、お顔洗ってくるね。」

みんなで朝ごはんを食べました。
「とうちゃん、今日ぱっぽじいちゃんと下へ行くんだよ。」
「そうだったな、ぴっぽ、ぱっぽじいちゃんの言うことよく聞くんだぞ。」
「うん分かった。」
「ぴっぽ、お弁当とおやつを用意しておいたからね。」
「わ〜い、かあちゃんありがとう。」

「そろそろかしら?」
「そろそろだな。」
「かあちゃん、とうちゃん、そろそろって?」
トントン
その時、戸を叩く音がしました。
『ぽっぽの子ぴっぽ、初めて下へ行くお祝いの日、ぽっぽの者一同、見送りに来たぞ。』
「あっ、みんな見送りに来てくれたんだ。」
「さあ、ぴっぽ、外へ出て皆さんにご挨拶をしておいで。」
「は〜い。」

ぴっぽがご挨拶をしている間に、ぱっぽじいちゃんも用意が済んだようです。
「ぴっぽ、おいで。」
「あっ、ぱっぽじいちゃん、おはよう。」
「トンボのメガネ、雲の命、お弁当とおやつは、このリュックに入ってるからな。」
ぴっぽはリュックを背負いました。

「ねえ、雲風船は? ぱっぽじいちゃん。」
「そうじゃな、心の中でモックに来てって呼びかけるんじゃ、声に出してもいいんじゃぞ。」
ぴゅ〜ん
ぱっぽじいちゃんが話し終わる前に雲風船のモックがやってきました。
「おう、呼んだか?」
「わお、心の中でモックのことを呼んだだけですぐ来てくれた〜、けど昨日はあんなにちっちゃかったのに、ずいぶんおっきくなってるね。」
「ぴっぽを乗せてひとっ飛びしなくちゃいけないから、しっかり食ってきたんだ。」
雲風船は小さな風船が沢山集まっているようなものです。
モックはぴっぽを乗せるために、いっぱい雲を食べて風船を膨らませ大きくなったのです。
「さあ、ぴっぽ乗りな。」
「うん。」
ぱっぽじいちゃんも自分の雲風船に乗りました。
ぽっぽの皆は輪になって二人を見守っています。
「出発するぞ。」
とぱっぽじいちゃん。
「ぱっぽじい、後をついていくからな。」
「頼むぞモック。」
「いってきま〜す。」
『いってらっしゃ〜い。』
二つの雲風船はふわりと浮かび上がりました。
ぽっぽの皆はぽっぽ族の歌を歌い始めました。
『ぽっぽぴ〜のぱっぽぴ〜♪ ぷっぽぷっぽぴん♪ ぱぽぴぺぱぽぴぺ…♪』
ぴっぽは一生懸命手を振っています、ぽっぽの皆も笑顔で手を振っています。

ふわふわ〜、ふわふわ〜。
モックはぴっぽを乗せて、ゆっくり、ゆっくり、ちっちゃなおうちから離れていきます。
「モック、こうやって飛ぶのって気持ちいいね。」
「だろ、でも最近は早けりゃ良いって、あわてんぼさんが増えちまってな…。」
ふわふわ〜、ふわふわ〜。
ゆっくりゆっくり下へ下りていきます。
下にはひろ〜い海が見えています。
「ぴっぽおっこちるなよ。」
「うん。」
ふわふわ〜、ふわふわ〜。
「モック、島が見えてきたね。」
「ああ、ぱっぽじいは、あそこへ向かってるみたいだな。」
ふわふわ〜、ふわふわ〜。
「うわ〜、山の緑がきれいだね〜。」
「今が緑の一番綺麗な時期だな、季節によって山の色は変わるんだよ。」
「へ〜、そうなんだ。」
ふわふわ〜、ふわふわ〜。
ぴっぽたちは山に近づきました。

「ぴっぽ、モックここでちょっと休憩じゃ。」
「おう、了解、ぴっぽ、降りるぞ、ふわ〜っとな。」
ぴっぽたちは山のてっぺんの、一番高い木の、一番上の枝に降りました。
おや、ぴっぽが鳥を見つけたようです。
「あれ? 忙しそうに飛んでるのは何?」
「あれはヒヨドリかな、鳥という生き物の仲間じゃよ。」
「向こうの大きなのはすぃ〜って、気持ちよさそうに風に乗ってるね。」
「あれはイヌワシじゃな、餌を探してるのじゃろう。」
しばらくの間、ぴっぽは山の生き物達について、ぱっぽじいちゃんから教えてもらっていました。」
「色んな生き物がいるんだね。」
「そうじゃな色々いる、で、皆、懸命に生きているんじゃよ。」
「ふ〜ん。」

「さあ、そろそろ、この山の麓の人間の町へ下りるぞ、下は騒々しいから、モック、ピッポに色々説明してやってくれんかのう。」
「お安い御用だぜ、ぱっぽじい。」
「人間の町か、何かどきどきするよ、モック、疲れていない?」
「ぜんぜん平気さ。」

「一度、一番下の方まで行ってから、少し高い所へ降りるからな、モック。」
「おう、了解。」
町を目指して、ぴっぽたちは下り始めました。
ふわふわ〜、ふわふわ〜。
「うわ〜、人間の町って何かごちゃごちゃしてるね。」
「もう少し下りると、もっとごちゃごちゃして見えるぞ、ぴっぽ、目を回すなよ。」
「だ、大丈夫だよ、おっきな…、おうち? がいっぱいあるんだね。」
「まだ、ずいぶん高いんだぜ、あれは、おうちというよりはビルだな。」
ふわふわ〜、ふわふわ〜。
「うひゃ〜、ビル? がどんどんおっきくなってく〜。」
「もう少しで本当の大きさがわかるよ。」
ふわふわ〜、ふわふわ〜。
「こ、こんなに大きかったなんて…。」
「ぴっぽ、他も見てみなよ。」
「うん、あ、何かでっかいのが忙しそうに動いてるね。」
「あれは自動車と言って人間の乗りものなんだ。」
「ふ〜ん、ということは、あれが人間なんだ、ずいぶん大きな生き物なんだね。」
「おいらに言わせりゃ無駄にでかいということだな。」
「ずいぶん沢山いるんだね。」
「おいらに言わせりゃ無駄に増えすぎということだな、おっと、ぱっぽじいが合図してる、あのビルのてっぺんへ行くみたいだな。」
ふわふわ〜、ふわふわ〜。

ぴっぽたちは、おっきなビルのてっぺんに降りました。
「ぴっぽ、どうじゃった?」
ぱっぽじいちゃんが聞きます。
「う〜ん、なんかおっきなのばっかで、びっくりしちゃったよ。」
「目が回ったりはしてなさそうじゃな。」
「大丈夫、でも、ちょっとお腹すいたなぁ〜。」
「おお、そうじゃな、そろそろ昼ごはんにするか。」
「わ〜い、かあちゃんの作ってくれたお弁当だね、モックたちは?」
「昨日たらふく食ったから、まだ大丈夫なんだけど…、ここいらの空気は悪いから、ぱっぽじいの雲風船と一緒に上に行ってくる。」
ぴゅ〜ん。
「うわっ、もう見えなくなっちゃった。」
「雲風船はわしらを乗せていない時は、結構せっかちなんじゃよ。」

ぴっぽとぱっぽじいちゃんはお弁当を食べ始めました。
「いっただっきま〜す。」
「よく噛んでな。」
「うん、おいしいね。」
「さすが、ぴっぽのかあちゃんじゃ、こんなにおいしい物が食べれてわしらは幸せ者じゃな。」
「うふふ、ねぇ、ぱっぽじいちゃん、この後はどうするの?」
「今度はトンボのメガネをかけて人間達の様子を見に行くんじゃ。」
「物置から持ってきたメガネをかけるんだね、あんなにおっきな人間に近づいても大丈夫なの?」
「人間にはわしらは見えてないから大丈夫じゃよ。」
二人はお話しながらゆっくりお弁当を食べました。
「ふ〜、おいしかった、ごちそうさま。」

「さて、そろそろ雲風船たちを呼ぶとするか。」
「どうやって呼ぶの?」
「心の中でモックに呼びかけるのじゃ。」
ぴゅ〜ん。
モックたちが戻って来ました。
「早い! まだモックって思っただけなのに。」
「はは、ぴっぽの心はすぐおいらに伝わるのさ、ぴっぽたちの様子は、う〜んと上から見てたしな。」
ぴっぽはトンボのメガネをかけました。
「お似合いだぞ、ぴっぽ、さあ乗りな。」
「モック、今度は人間達をゆっくり見れるとこに降りるからな。」
「おう、ぱっぽじい、了解。」

さあ〜、ビルのてっぺんから出発です。
ふわふわ〜、ふわふわ〜。
「トンボのメガネをかけても見える物はあんまりかわんないなぁ〜。」
「はは、もう少し待ちな。」
ふわふわ〜、ふわふわ〜。
モックは人間達が良く見える所まで下りてきました。
「あれ? モック、人間たちの色が違って見えるよ。」
「それがトンボのメガネの力さ。」
「灰色の人が多いけど赤やオレンジ色の人間もいるんだね。」
「えっ? ぴっぽ、灰色の人間はそんなに多いのかい?」
「うん、灰色じゃない人間は変わった人間なのかなぁ〜。」
「う〜ん。」
モックは、う〜んと言ったきり、黙ってしまいました。

ふわふわ〜、ふわふわ〜。
ぱっぽじいちゃんは、降りるのに、いい場所を見つけたみたいです。」
「ぴっぽ、ぱっぽじいのとこに降りるぞ、ふわっとな。」
モックは何か元気がなくなってしまったみたいです、どうしたんでしょう。
「ぴっぽ、人間達はどうじゃった?」
おや、ぱっぽじいちゃんも少し元気がないみたいです。
「人間って灰色が普通なの? 赤やオレンジの人間もいたけど。」
「ふ〜、ぴっぽ、トンボのメガネで見る人間の色は心の色なんじゃ、赤色やオレンジ色は楽しいことを考えている人間、灰色は悲しいこと、楽しくないこと、つらいことを考えている人間なんじゃよ。」」
「へ〜、悲しいとか、つらいって、かあちゃんが読んでくれた本の中だけの話だと思ってたよ。」
「久しぶりに、ここへ来たら、灰色の心の人間がう〜んと増えてしまってたんで、驚いてるんじゃ。」
「ふ〜ん、そうなんだ。」
「まあ驚いてばかりもいられない、ぴっぽ、雲の命の出番じゃ。」
「うん、え〜と、今、リュックから出すね。」

「ぴっぽ、今から大切な話をするから良く聞くんじゃぞ。」
「うん。」
「わしらポッポの一族には、神様からいただいた大事なお仕事があるのじゃ。」
「大事なお仕事?」
「そうじゃ、灰色に見える人間の心を、呪文と雲の命で、赤色やオレンジ色に変えてあげるのじゃ。」
「でも、あんなに大勢いるよ。」
「もちろん全員は無理じゃ、雲の命も沢山持って来てないからな、」
「どうやればいいの?」
「やることは簡単じゃ、灰色の人間に近づいて、ぴっぽぱっぽぴん! 楽しい事出てこ〜い! と呪文を唱えてから雲の命をシュ〜と吹きかければ良いのじゃ。」
「ぴっぽぱっぽぴん! 楽しい事出てこ〜い! シュ〜 だね。」
「そうじゃ、ぴっぽやってみるか?」
「うん。」

ぱっぽじいちゃんは辺りを見渡しました。
「この人間にしよう、どうやらグルグル病みたいじゃな。」
「グルグル病?」
「嫌なことばかり考える病気じゃ、同じような嫌なことばかりグルグルグルグル考え続けるから、グルグル病じゃ。」
「ふ〜ん、まずは近づくんだね、モック頼むよ。」
モックは黙って人間に近づきました。
「それぐらいでいいぞ、あ、それと始める前に人間の顔を見ておくんじゃ。」
「なんか暗い顔してるよ、じやあ、やってみるね。」
ぴっぽは雲の命の入ったビンを手に人間の耳のあたりに向かって呪文を唱えました。
「ぴっぽぱっぽぴん! 楽しい事出てこ〜い!」
それから、雲の命の入ったビンの上にあるボタンを押しました。
シュ〜
ぴっぽが吹きかけた雲の命は霧の様になって人間にかかりました。
「あっ! ぱっぽじいちゃん、お顔がなんか、おだやかになって微笑んでいるみたいだよ、色もオレンジに変わった!」
「成功したみたいじゃな、何か楽しいことが頭に浮かんだのじゃろう。」
「うわ〜い良かった〜。」
「まだ雲の命はあるから何人かに同じことをしてあげるんじゃ。」
「うん、わかった。」
ぴっぽはモックに乗って、灰色の心の人間達を楽しい気持ちにしてあげて回りました。

ぴっぽの持っていた雲の命がなくなりかけた頃、ぱっぽじいちゃんが近づいてきました。
ぱっぽじいちゃんもお仕事をしていたのです。
「ぴっぽ、そろそろ終わりにしよう、朝降りた山のてっぺんの、一番高い木の、一番上の枝に行くぞ。」
「うん、わかった、モック頼むね。」
「おう。」
ふわふわ〜、ふわふわ〜。

モックがぴっぽに話しかけます。
「ぴっぽ、疲れたかい?」
「大丈夫だよ、でも初めてのことばかりで、びっくりの連続だったから、まだ胸がどきどきしてるよ。」
「だんだん慣れるさ。」
「うん、早く慣れたいな〜。」
「そう言えば昨日は誕生会だったんだろ?」
「うん! 楽しかったよっ〜! モックも来ればよかったのに。」
「はは、おいらも雲風船の仲間と楽しんでいたよ。」
「そうなんだ、あっ、もうすぐだね。」
ふわふわ〜、ふわふわ〜。
「さ〜て降りるぞ、ふわっとな。」
モックは枝の上に降りました。

先に下りていた、ぱっぽじいちゃんがぴっぽに話しかけます。
「ぴっぽ、疲れたろう、おやつにしないか。」
「わ〜い、おやつ、おやつ、かあちゃんの作ってくれたおやつ。」
ぴっぽはリュックからおやつを取り出しました。
「はい、これはぱっぽじいちゃんの分、モックも食べるかい?」
「いや、雲風船はそういうもんは食わねえんだ。」
「おいしいのに残念だなぁ〜、」
「楽しそうな、ぴっぽの笑顔がおいらにとっては、おやつのようなものさ。」
「ふ〜ん、ぱくぱくぱく、うひゃ〜、やっぱりおいしいや、かあちゃんありがと〜って聞こえないか…。」
「はは、きっと届いているよ。」
ぴっぽはおやつを食べながら回りの風景を眺めています。

モックがぱっぽじいちゃんと話し始めました。
「なぁ、ぱっぽじい、この島の灰色人間ってすごく多いのか?」
「はっきり言って多い。」
「全く人間達も困ったもんだな、大切なことを忘れちまって。」
「そうじゃな、ちよっと何人かの心を覗いてみたのじゃが、お金儲けのことばかりを考えていて、大切なことを考えない人が増えてしまったみたいなんじゃよ。」
「自分達の種族のことを大切に考えてない奴らなんだな。」
「そういうことじゃ。」

モックがぱっぽじいちゃんとお話をしている間にぴっぽはおやつを食べ終わりました。
「あ〜、おいしかった、かあちゃ〜ん、おいしかったよ〜、あっりがっとね〜!」
「さあそろそろ出発するか。」
「そうだな、ぱっぽじい、ぴっぽも、そろそろかあちゃんが恋しくなって来たみたいだしな。」
「え〜、モック、そんなことないよ〜。」
おうちのある白い雲を目指して、ぴっぽたちは上り始めました。
ふわふわ〜、ふわふわ〜。

ずいぶん長いこと下にいたので、おひさまはもう西の大地へ沈もうとしています。
「うわ〜、おひさまが真っ赤になってきれいだなぁ〜、雲も大地も赤くなって、もうすぐお休みするのかなぁ〜。」
ぴっぽがおひさまに、また明日ね〜、と言ってる頃、ようやくおうちに着きました。
「さあ、ぴっぽ、おうちに着いたぞ、ふわっとな。」
「モック、今日はありがとうね。」
「どういたしまして、じゃあ、ちょっと腹へったからごはん食べに行ってくらぁ。」
ピュウ〜、とモックは雲の中へ行っちゃいました。
ぱっぽじいちゃんも用があるからと、またお出かけです。

ぴっぽはお部屋の戸を開けました。
「ただいま〜。」
「おかえり、ぴっぽ。」
かあちゃんは、ぴっぽをぎゅっと抱きしめて。
「初めてのことばかりでびっくりしたでしょう。」
「うん、びっくりなことばかりだった、でもね、ちゃんとお仕事もしたんだよ。」
「ぴっぽはおりこうさんね。」
「えへへ。」
「すぐ、夕ごはんにするわね。」
「わ〜い、あ、そうだ、かあちゃん、お弁当もおやつもとってもおいしかったよ、ありがとうね。」
「ぴっぽが喜んでくれてうれしいわ、下へ行く時は、また作ってあげるからね。」
「うわ〜い!楽しみだな〜、でも次は何時行くのかな?」
「ぱっぽじいちゃん次第だけど…、ぴっぽはこれからぽっぽ族の一人として色々なことを覚えていかなくてはいけないのよ。」
「と、いうことは今まで知らなかったことを、沢山教えてもらえるんだね、なんかどきどきするな〜。」
「ふふ、ぴっぽなら大丈夫そうね。」
その時、戸が開きました。
「あっ、とうちゃんだ、とうちゃんお帰り、あのねあのね、今日ね、下でね…。」

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