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洋楽名盤・新譜 レビューコミュのソニックユース「Goo」

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オルタナティブを考える時、ソニックユースをはずすことはできない。
と同時にソニックユースを考えるときにオルタナティブ、という言葉についても考えずにはいられない。

ソニックユースのリーダー、サーストン・ムーアは1976-77年のニューヨークで、テレヴィジョンやパティ・スミス、ラモーンズetc.らいわゆるニューヨークパンク勢の活躍を目の当たりにし、少し遅れた「ノー・ウェイヴ」と呼ばれる時代(1978-79年)にそのアンダーグラウンドな活動を始めた。NYパンクの聖地CBGBのようなクラブではなく、ガレージのような場所でライブを行った。

イギリスなどでも活動し、80年代半ばには同じ時期に活動していたアングラのもう一方の雄ヘンリーロリンズのブラック・フラッグによるSSTというロスのレーベルなどでも活動、
この時期、後にシアトルからグランジを発信するサブ・ポップ・レーベルがその先見性に
富んだコンピレーション盤『サブ・ポップ100』にソニック・ユースの「Kill Yr Idols」を収録したりしている。

80年代の終わりへ向かい、社会は大きく転換しはじめる。
時代的な空気が変わり始める。それまでメジャーだったもの、主流だった価値観、それら全てに対する不信感、だけど社会はそんな経験はすでに70年代に経験済みであり、その頃ほどハングリーでもなく無邪気に反抗していても始まらないことはわかってしまっているという諦念的現実感、どうすりゃいいんだよ、という停滞感。ロンドンのリアルパンク勃発時に似たような状況が80年代という10年近い潜伏期間を経て、アメリカに訪れる。そのうねりはちょうどソニックユースのアングラ活動と曲線を共にするかのようでもある。

サーストン・ムーアは大学教授の息子だからというわけでは無いだろうが、他のパンク勢との共通点として、やはりインテリな部類にはいるだろう。しかし一線を画している点は、インテリというよりクレバーというべき、その在り方だろう。
バンドの核になっているのはムーアのノイズギターだ。ムーアは「エレキギターを聞くという
ことはノイズを聞くことに等しい」と言っている。つまりムーアは、あの手この手の実験の中で、色々なノイズの形を繰り出し続けている。彼にとって、我ら聞き手にとって、はたして、このノイズとは何なのだろうか。

ノイズとは不協な音だ。理解の範疇外の音とも言える。しかし理解の範疇の音とは、誰にとっての音なのだろうか。いつの間にか理解の幅を作ってしまっている者達にとって不協な音。ノイズ。メジャーなものに対する警笛。マイナーなものの痛みそのものの音。ムーアはそのノイズそのものを実験し続けている、しかも間違いなく確信的に。つまりメジャーな者に対するオルタナティブ(代替)でいつづけること。メジャーなものは変わり続ける。オルタナティブで居続けることは理解の範疇を超え続けること、主流に取り込まれないこと。それをムーアは肩の力の抜けた実験精神とキムゴードンというパートナー、後に続く同朋達を得て、30年ちかくに渡って継続しているのだ。
安定的にオルタナティブで在り続ける、という一見矛盾しているような、アーティスティックな活動にたいする信頼感はアングラの帝王と称されるにふさわしい。

80年代はまた、大学のFM局をネットワーク化したCMJが、同じく反メジャーの等身大のパンクテイストで割とポップなフォークロックで人気を得たREMを大きくのし上がらせたが、あいかわらずノイジーなソニックスはアングラ活動を続け、その活動を集大成した1988年の傑作2枚組LP『デイドリーム・ネイション』を出した10年目の終わりに彼らはようやくメジャー・レーベルのゲフィンと契約、1990年に本作『GOO』をリリースする。80年代のアングラ活動を通じて、世間的評価の低いオルタナティブ勢の地位を向上させたい、という親玉的目的が大きかったようだ。

それでいて自身の活動は相変わらず実験精神に富んだ作品作りを継続しており、インディーからも作品を出せる環境を整えるなど、メジャーにいながらオルタナティブで居続けられるという後続のロックバンドにとってやはり見本になるような地位を固めている。

90年の夏を『ラグド・グローリー』ツアーでニール・ヤング&クレイジー・ホースと一緒にアメリカ中をツアー、1992年にはニルヴァーナ『ネヴァーマインド』のプロデューサー、ブッチ・ヴィグを迎えてメジャー2作目を制作。1995年、ロラパルーザでヘッドラインを務め、REMとツアーを行っている。
 
本作はシニカルでノイジーでNYパンクらしいアバンギャルドな音と同時に、タイトなロックンロール感も併せ持つ。次作のダーティでは、プロデューサーのせいか割と聞きやすい今聞けばいわゆるグランジ的な音になっている。

社会は低成長時代に突入した。ロックは社会に文化として浸透し、もはや誰にとってもすぐそばにあるものになった。ロックは極めてパーソナルな、人それぞれの気分に細分化されたものになった。それでもメジャーなものは存在する。同時にそのオルタナティブなものも大きく存在するようになった。ソニックユースがあるいはその近いフォロアーが、ロンドンパンクやグランジのように社会を覆い尽くすムーブメントをおこすことはないかもしれないが、それまでアンダーグラウンドでしかなかったものをメジャーレーベルから一定の規模で、1ジャンルとして、世間の反主流なものを求める一定層に発信できるようになったことはかれらの大きな功績と言えるだろう。
 
そもそもロックとは野蛮で粗野で反抗的で、そして反主流な音楽だったはずだ。そのことをノイズという形で表現し、オルタナティブなサウンドを実験し探求し続ける彼ら。急にメジャーになってしまってオルタナティブで居続けたかった自分を見失ってしまったカートにはできなかった想いを、後輩思いの彼らは、これからも探し続けてゆくことだろう。

http://rtaro.de-blog.jp/rtaro/

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