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ドラマ「たったひとつの恋」コミュの★☆スト-リ-要約☆★

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管理人様からのご要望を頂き,要約トピを立てさせていただきました(u‿ฺu✿ฺ)
今週土曜日の第5話より,スト-リ-内容を文章にてアップしていきたぃと思ぃます(๑→‿ฺ←๑)
見逃してしまった方達のぉ役に立てればと思います(o´ω`o)

また,私の要約は,個人的な判断で重要だと思われるセリフはそのまま載せたいと思いますが,全てのセリフを載せることは大変なのでできませω(。→ˇ艸←)
しかし,もし「ここのシーンのセリフ・やりとりを知りたい!!」というご要望をいただければ,できる限りアップさせていただきたいと思っています(✿ฺ´∀`✿ฺ)ノ

この要約に多少解釈の違ぃや,ニュアンスの違いが生じてしまうかも知れませωが,できる限りがωばりますのでご容赦くださぃ(。→ˇ艸←)ヒドぃものがあればご指摘をお願いいたします(u‿ฺu✿ฺ)

☆しぃ☆さん以外の、こちらのトピへの書き込みはご遠慮下さい。(管理人)

コメント(16)

★☆第5話☆★


始まりは,ゆきとの関係についての誤解を解こうと,弘人が菜緒のマンションに行って,中華街帰りの菜緒とみつこ・達也に会うところから。。。

弘人の挨拶に対してぶっきらぼうに接し怪訝そうに伺う達也と,それを注意しながら菜緒を気遣って弘人と菜緒に接するみつこ。みつこは部屋に上がるように弘人に勧めるが,今日のところは帰るのでまた改めて来ると言って帰ろうとする弘人。菜緒は送っていくと言うので,みつこは近くの喫茶店で2人で話をしてくるように勧め,2人は喫茶店へ向かう。

部屋に戻ったみつこと達也。
妹の彼氏を「今時の軽い兄ちゃん」と言い,よく思っていない達也。喫茶店に言った2人のコトを考えて,椅子に座りながらも始終落ち着かない。それに対して,薄着だった弘人の心配をしていたり,「お父さんがいなくてよかった」と,落ち着いた様子でのんきなことを言うみつこに,達也は「そんなこと言ってる場合じゃないだろっっ」と注意する。

喫茶店に来た弘人と菜緒。少し気まずい空気が流れる中で会話を交わす。突然家に行ったことを謝る弘人にゆきとの関係の事でわだかまっていてぶっきらぼうに答える菜緒。
そこに「誤解を解こうと思って。。。」と話を切り出す弘人。気まずそうに「なんだっけ。。」と惚ける菜緒。
「あれは母親が勝手に話しただけ。この間会った昔の同級生だといった子は,実は昔付き合っていた。金に困っていて昔の同級生に金を借りまくっていたから,金を貸した。ただそれだけ。。」と伝える。「。。本当に??」と問いかける菜緒に「本当。なんなら神様にも仏様にも誓ってもいい」と真剣なまなざしで言う弘人。それを聞いて「わかった。。安心した。」という菜緒。
その様子に弘人も安心する。ふと思いついて,菜緒の体について,血液のガンだったことや,骨髄移植をしたことを何も知らなかったことを謝る弘人。もうだいじょうぶだからと微笑んでみせる菜緒。
それでも少し俯く弘人に「じゃぁさ,これから少しずつでもいいから。。私の事わかって?」優しく笑顔で頷く弘人。
「そいで。。私も少しずつかも知れないけど,弘人の事。。していきたい」頷く弘人。
「手。。」といって手を広げて弘人に手を置くように言うと,「そいで。。末永く。。よろしく。。」と言って微笑む菜緒に,周りの客を気にしながらも手を握り返して「了解。。」と言う弘人。

山下のアパート。。。
ゆきが弘人から借りた金をテーブルに並べてニヤつきながら勘定する山下。隣でお茶を入れるゆきに対して,弘人とヨリを戻したのかとけん制するように問いかけ,それを少し焦る様に否定するゆき。
「まぁいいけど」と言う山下にゆきは「なんでも超金持ちのお嬢さんと付き合ってるらしい。本町のスタージュエリーの娘と付き合ってる。」ということを言ってしまう。それを知った山下は企むような笑みを浮かべる。

夜,いつもの船の上で弘人と甲とあゆたが鍋をしながら飲んでいる。。。
甲が裕子と付き合うことになったと聞いて驚くあゆたと弘人。「これで弘人は菜緒ちゃんと付き合って,甲は裕子ちゃんと付き合うことになった。。。なんで俺だけ1人。。。俺が一番かっこいいのに。。。」と言うあゆた。「一番どんくさいからだ」と笑いながら口を揃える弘人と甲。
同じ頃,裕子の家で裕子から同じ話を聞かされた菜緒は百面相する。意外そうな菜緒に「甲くんじゃダメかな?」と問いかける裕子に「いいとおもう!面食いでお金持ちじゃないとダメって言ってたから以外だっただけで。。」と言う菜緒。
それに対し裕子は「卒業したのょ。人は見てくれや持ち物じゃないわ。心よ心。でもね。。ほんとにいい人だなぁって思って。。なんかね,一緒にいると胸の真中辺り。。あったかくなるの。。あたし。。いごこちいいって言うか。。それにね,よく見てみてみ?カッコぃぃょ〜!」と言う。微笑む菜緒。
その頃甲には裕子から,弘人には菜緒から電話が来る。悔しいような淋しいようなあゆた。

少し急ぎながら電話に出るために事務所に戻る弘人。そこには従業員がいて,引き出しを探っている。弘人が階段を上ってくるのに気付いて急いで引き出しを閉めるが挙動不審になっている。従業員が居たことに驚くも,特に疑うこともなくねぎらいの言葉をかけてその場をさる弘人。一安心しながらも弘人を伺う従業員。

裕子の家の前。。。
帰ろうとする菜緒と,家の前で見送る裕子。裕子に対して「よかったね」と言葉をかける菜緒。「お互い大事にしようね」と言う裕子。「今年のクリスマスは彼と一緒にいられる」と笑顔をかわす2人。帰っていく菜緒。
その後ろを,山下とその仲間がつけていく。。。

翌日,スタージュエリーコーポレーションのビルに雅彦から呼び出される菜緒。
雅彦は菜緒に「お前の付き合っている人の父親は自殺をしている。借金苦に首をつったんだ。」と言いながら『神崎弘人に関する調査報告書』を見せる。
父の言葉と調査書を見て,動揺しながらも「何これ」とムッとしながら問う菜緒に,「すまん。。こんなことをするつもりはなかったんだが。。」と誤り「このことはお母さんにもおにいちゃんにも話してない。まずお前と話がしたかった。大変な家の息子だ。お前に相手が出来ると思えない。お前は彼の父親が自殺をしていたことを知っていたのか?」と問いかける。
弘人の自殺の事実を知らなかった菜緒は一瞬動揺するが,父親に迷いを見せまいとして思い直し,「知っていたわ。了承済みよ。全てを知って,それでも彼と付き合いたいと思ってるの。」と言う。
その言葉にため息をつきながらも「本気なんだな。。」と言われたことに対して「遊びで人と付き合ったりしません。」という菜緒。菜緒の意思を認めざる終えない様子の雅彦。
それでも,「お前のそんなところがお父さんは帰って心配だ。そんなにまっすぐでは,壁にぶつかった時にもろいものだ。」と説く雅彦。

車を運転してデートに向かう途中,父親の言葉にあった「弘人の父親の自殺」の事を考え,心配する菜緒。

弘人の家。。。
デートの準備をしている弘人に付きまとうようにして「どこに行くの??ボクも連れてって!!」とダダをこねる弟・レン。「菜緒お姉ちゃんとデートなんでしょ?だったらボクも連れてって!」というレンに「あのな?デートは2人でするものなんだよ」とさとすが,「ケチ!」と捨て台詞を吐いて去っていってしまうレン。
レンの後を追おうとすると家の窓からアユタが顔をのぞかせて「デート。。行こうよ」と言う。アユタに連れられて家の外に出てみると,菜緒の車に乗った甲と裕子と運転席に座った菜緒。もとは弘人と菜緒,甲と裕子のデートだったが,アユタが独りになることを気遣ってのグループデートだった。
海沿いを通り,露天のゲームをしたり,買い食いをしたり,展望台に上ったり,サイクリングをしたり,水族館に行ったり。。。
神社に立ち寄った5人はそれぞれの想いを絵馬に書く。
「2人がずっと幸せで居られますように 菜緒 弘人」
「裕子ちゃんが世界一好き♡ 甲 甲くんが安全で無事で居られますよう 裕子」
「俺にも幸せを!!亜裕太」
夜には花火をして。。。
それから帰りのドライブ中に,車は弘人と甲とアユタが通っていた高校を通る。懐かしがる3人に,菜緒と裕子は「中に入って見たい!!」と嬉しそうな顔をする。
5人は校舎に入り高校生だった頃の話で盛り上がり,3人が使っていた3−Aの教室に入る。3人はそれぞれ当時座っていた席に着き,裕子は甲の後ろへ,菜緒は教壇にあがり,先生のマネをする。
そんななか,しみじみとしたように「学生だったころが懐かしい。。。あ,俺と甲以外はみんなまだ学生か。。」と苦笑いをしてみせる弘人。
微妙に気まずい空気が流れる中で弘人が菜緒に「そういえば大学ってどんな所?」と問いかける。顔を見合わせて「別に。。普通だよ」と言って微笑む菜緒と裕子。それに対して「でも。。。遠いなぁ。。」と言う弘人と甲。
話の空気を変えようと,教室にあったバスケットボールをとるアユタ。
グラウンドに出てバスケを始める甲・裕子・アユタ・菜緒。なぜか弘人だけその場をふらっと離れていってしまう。気になる菜緒は3人に断って弘人の後を追う。後を追う菜緒を気にした様子のアユタ。そこで甲がボールを奪い再度3人でバスケを始める。
菜緒が弘人の下に行くと,弘人はグラウンドに寝転がって空を見上げていた。「何やってるの?」と問いかける菜緒に「思い出してた。。。あの頃ここが俺のグラウンドだったんだなぁって。。。」と応える弘人。「知ってる野球部のエースで,あと少しで甲子園にもいけたんだよね。レンくんとアユタくんから聞いてた。」と言う菜緒。「でも。。大学も諦めて,もう野球やることもねぇんだろうなぁ。。。」と言う弘人。寝転がる弘人の隣に腰掛けて,「大学。。行きたかった?」と言う菜緒の問いかけに「。。ちょっと。。ね」と言う弘人。
するとそこで弘人がふと父親の話を始める。
「うちのオヤジ死んでんじゃん?6年前。。自殺なんだ。。借金苦に自殺して,その保険金で借金返済に充てて。。。その子が俺がちゃんと受け継がなきゃなぁって思ってさ。。」と話す弘人に,「お父さん。。そうだったんだ。。」と応えるしかない菜緒。「引いた?」と問いかける弘人に「ううん。。引かない。大変だったんだなぁと思って。。」と言う菜緒。
起き上がって菜緒を見て,「この話,レンには内緒にしといて?あいつまだ4つとかだったから。。病気で死んだと思ってるから。。」と言う弘人に「うん。。わかった。。」とだけ応えて頷く菜緒。
再度寝転がって「でもここは俺の夢の場所。。青春で夢の場所。。」と呟く弘人。グラウンドの砂を握り締めて「弘人の走った土だね。。」と言って微笑む菜緒。
「県大会の準々決勝9回裏2アウト満塁。。あのときの完成がまだ聞こえてくるみたい。。」当時の楽しかった野球の試合の最高の瞬間を思い出して呟くようにその場面を話す弘人。それを目を閉じて聞き入る菜緒。「もっと言って?思い浮かべる。。あたしが居られなかった弘人の高校時代。。そこにいた気持になる。。今だけでも。。」と言う菜緒。それに対して「ダメだよ。。もしアンタが居たら,きっと姫だから俺なんか選んでないと思う。。だって俺なんかよりかっこいいヤツもっといっぱいいたし。。サッカー部とか。。」と言う弘人。
それを聞いてちょっと怪訝そうな顔をするもすぐに微笑んで「違うよ?ちゃんとあなたを見つけたよ?どこでどうあっても。。」と言う菜緒に笑いながら「通学途中,サカナ引っ掛けられても?」と言う弘人。それに対して微笑みながら「そうだよ!すごいよ!」と言う菜緒。
菜緒と一緒に微笑むが,少しhくらい表情を浮かべて「でも俺も,もっと早く菜緒に逢ってたらって。。そしたらもっと早く助けてあげられたのにって。。でもこれから先は。。これからは,ず〜っと傍に居るから。。いい?」と菜緒の顔を横から覗き込む弘人。に対して笑顔で「いいよ?」と応える菜緒に弘人がキスをする。

家に帰った菜緒に「おかえり」と声を賭ける雅彦。「最近遅いな。。あの男の子か。。菜緒が本気なら,一度ちゃんと連れてきなさい」と言ってその場を去る雅彦。

弘人の部屋。。。
今日言った水族館の半券を手にしながら嬉しそうな表情をする弘人。

横女のキャンパス。。。
裕子とそのほかの友達3人が一緒に帰っているところで,話の内容は一橋大学との合コンの企画で,人数合わせに裕子に参加してほしいとの事。参加するしないは特に返事はせず,楽しそうに話をしていると,回りの友達がなにやら小声で話している。友達達の目線の先には,裕子会いたさに,仕事場からそのままの格好でトラックに乗ってやってきた甲が裕子に向かって笑顔で大きく手を振っている。「キモい。。怖い。。借金取り?」と言葉が飛び交う中で,友達に知り合いかとたずねられて,見栄を張ってしまい「知らない人」と答えてしまい,工の横をそのまま素通りしてしまう裕子。
裕子の態度にショックを受けその場にしゃがみこんでしまう甲。そこに偶然菜緒が通りかかり,しゃがみこんでいる甲に話しかけるが呻くばかりで反応がない。

仕方なく,菜緒はそのまま弘人と待ちあわせている,アユタのバイト先まで甲を連れて行き,アユタと2人で話を聞く。そこに弘人も到着し,改めて甲の話を聞くために4人でのみに行くことに。。
完全に酔っ払ってしまった甲は道路に寝そべり,「もう一軒!もう一軒!」とノリノリ。それを3人が起こし,菜緒は「裕子にはちゃんと言っておくから」と言うと「何も言わなくていい。。。」と言うので「じゃあ何も言わない。」と言うと「言わないの!?言わないの!?」とふさぎこむ始末。甲をアユタが支えて家までつれて帰ることにし,菜緒は弘人がおくっていくことになり,別れ際,甲は菜緒に「デートだったのにごめんね!ありがとね!」と手を振りながら謝る。微笑みかける菜緒。
帰りの駅まで着いて別れる時,思い出したように弘人に雅彦が「彼を連れて来なさい」と言っていたことを切り出す菜緒。それに対し,わずかに緊張した表情を浮かべるが,「あぁ。こないだあんなだったし,ちゃんと一回行って挨拶するよ。」と返す弘人。「もっと嫌がるかと思ったのに。。」と言いながら嬉しそうに笑う菜緒。弘人は「実は。。ちょっとがんばっちゃってたりしてるけど。。すごい行きたいなぁってわけでもなかったり?。。まあでも,菜緒の事すごい心配してると思うしさ。それに,俺もお前の事真剣だし。」と言う。

山下のアパート前,ユキが買い物を終えて部屋に戻ろうとしている。その頃,部屋では山下が仲間と菜緒を襲う計画について話し合っていた。そこにユキが帰ってきて電話を切り,少し挙動不審な態度をとりながらも妙に明るく振舞う山下。浮気でもしてるんじゃないか,何かを企んでるんじゃないかと疑いの目を向けるユキ。

弘人の部屋。。。
菜緒の家に挨拶に行くために着る服で迷っている弘人。そこにレンもいて,「うまくいくといいね」と応援している。ちょうどズボンを履き替えようとして脱いだところに母・亜紀子が入ってきて,慌ててズボンを上げる弘人。

元町のケーキショップでお茶菓子のケーキを買っている菜緒。
ケーキを買って帰る帰りのところを,山下達が車に乗って待ち伏せている。
菜緒の後を追い,仲間の2人が咲きに車を降り,山下が車から菜緒に「すいません,このヘンにガソリンスタンドはありませんかね?」と問いかける。快く道案内をしようと菜緒が振り返るとそこには山下の仲間が控えていて,山下も車から降りて菜緒を捕まえようとするが,菜緒が逃げたため,その後を追っていく。
ちょうどその頃すでに近くまで着ていた弘人が横断歩道で立ち止まり,ふと目をやると土手の向こうに菜緒が男達に連れて行かれるところを偶然見かける。
血相を変えて走っていき,菜緒を捕まえていた仲間の腕を振り払い菜緒をかばう弘人。
「お前だけいい思いしやがって」と言いがかりをつけて殴りかかってくる山下と殴り合いのケンカになり,菜緒を捕まえようとする仲間からも身を挺して覆いかぶさって菜緒をかばい,菜緒に逃げるように叫ぶ。土手を登ったところでまた仲間に捕まえられてしまうが,ちょどその時すぐそばを車で通った兄・達也がそれを目撃し,菜緒を助ける。分が悪くなった山下たちはその場を走り去っていく。それを居っていこうとした弘人は足がもつれてその場に転んでしまう。
地べたに転んでいる弘人の前に達也が立ち,「君の知り合いなのか?」と問いかけ,弘人は「いえ。。昔の同級生で。。」と応える、それに対して達也は「帰ってくれここは君達のようなのが来る場所じゃないんだ。。。帰ってくれ。。。。帰れ!!」と怒りをあらわにする。
自分が原因で巻き起こってしまったことだけに何も言えない弘人は「わかりました。今日は失礼します。。」といってその場を後にする。

達也に連れられてマンションに戻ってきた菜緒。達也はエレベーターに乗っている最中,菜緒を気遣う。そして「もうあいつには会うな。。いいか」といいつける。
45階に着き,達也がエレベーターを降り,菜緒も降りると思っていたが降りてこない。ハッと気付き急いでエレベーターに駆け寄ったがもう遅く,ドアはほぼ閉じきっていて,わずかな隙間から菜緒は「お兄ちゃん。。ごめん。。」と言葉を残す。達也は隙間に手をかけてこじ開けようとしていたが,その言葉に一瞬からだが止まり,エレベーターは降りて行ってしまった。菜緒は弘人をそのままにはしておけず,残してきた弘人の下に戻ろうとしていた。

菜緒は山下たちに襲われた場所にまだ弘人がいると思いその場所まで走って戻ったが,既にそこに弘人の姿はなく,近くを探していると,大通りの向こうに弘人を見つけて,大声で名前を呼んで呼び止める。疲れたような表情でいた弘人が驚いた様子で菜緒の方を見る。
菜緒は弘人に向かって「あたし,諦めないからね!なにがあっても,どんなことがあっても,弘人の事。。諦めないから!!」と言って微笑む。
モノローグでは「ねぇ。。あの時僕は。。一生君を愛していけるような気がした。。。」



以上です(u‿ฺu✿ฺ)
詳細がアップされましたので,要約の15分分を加ぇて追記させていただきました(u‿ฺu✿ฺ)


★☆第6話☆★


前回の事件からの続き。。。

その日,街の中を家路につく弘人。ボーッとしながらみちを歩いていく。

一方家に帰り着いた菜緒は,事件の場に遭遇し事情を知っている兄の達也に,両親への口止めを頼む。みつこと雅彦へは「今日は頭が痛いのでやめにしてもらった」ということにした。
雅彦は仕事を早く切り上げて帰ってきたが,娘の彼氏が来ていなかったことに内心安心する。
達也は弘人の人間関係を疑い菜緒に考えてみろと言う。「知り合いの彼女が金持ちの人間だからといってそのままさらおうとするヤツなんてそうはいない。結局類は友を呼ぶってことなんだ。そういう世の中に居る人間で、ウチとは違う。」
差別したような達也の口ぶりに怒った菜緒は、自分の部屋から達也を追い出す。が、兄に助けられたことの事実には、ドア越しに「ありがとう」と呟く。

事件の事を思い出しながら,いつもの船着場に帰ってきた弘人。そこにはすでに甲とアユタが来ていた。弘人に何かを言いかけようとする2人の下に廉が来て甲を呼び,甲は弘人の横を通り弘人の肩に手を置き何も言わないまま廉と一緒に家に入っていく。そのあとアユタが弘人に歩み寄り,「菜緒ちゃんちにいったんだろ?廉から聞いた。」と言うも,顔の傷と弘人の様子を見て,何かあったのかとたずね,頷く弘人。
辺りに腰掛けて,アユタが弘人に飲み物を渡し,礼を言って受け取ると,唐突に弘人が「山下の居場所わかるか?」とアユタに問いかける。「なんで?」と返すが,言葉を濁す弘人。

その頃裕子は学生食堂で,甲の事を考えていた。大学の帰り際甲を見つけ,友達の手前甲を無視してしまったこと。菜緒が膳を手に戻ってきて、上の空な裕子に呼びかけて「いい加減謝っちゃいなよ。。許してくれるよ。」というが,不安そうな裕子。
そこに裕子の友達が「今日の合コンはいけそうか」と尋ねてくる。菜緒も驚いて裕子に尋ねる。周りの友達は「最近裕子の様子が怪しいから,彼氏でも出来たんじゃないかって!菜緒は知ってるんでしょ?どんな人?医者とか。。商社マンじゃない?」とはやし立てる。
その頃。。。
仕事をサボッてトラックの運転席に横になっていびきをかいている甲。どやされて飛び起きる。
菜緒と裕子の大学からの帰り際,菜緒は裕子に「どうして甲くんがいるのに合コンなんかに行くの?」と少し怒ったように問いかける。すると裕子は「じゃぁどうして菜緒は言わないの?裕子の彼氏は医者とか商社マンじゃなくて、トラックの運転手なんだって。菜緒がそれいえなかったのは、菜緒だってそういうの気にしてるからなんだよ。自分ばっかりイイコぶらないでよ。」と言う。
菜緒は俯きかけるが,去っていこうとする裕子に向かって顔を上げて、「大事じゃないモンのために大事なモンなくしたらダメだよ!見栄とか、つまんないプライドとか、そんなモンのために大事なモンなくしたりしたら後悔するよ!?」と説得する。すると裕子は振り返って、「だから!あたしは菜緒のそういうところが苦手なの!もう放っておいてよ!」といってしまう。それに対して菜緒は悲しい表情で「わかった。放っておくよ。。」と返す。去っていく裕子。

横浜の港に来て遠くを見つめている菜緒。おもむろに弘人に電話をかける。
弘人が電話を取る。少し黙りかけるが,「こないだ、悪かったな。。なんか俺のせいでさ。。菜緒怖い目にあわせちゃって。。」と謝る。菜緒はそれに対し,「ううん、それより、なんかお兄ちゃんテンション高くって、追い返したりして。。ごめんね。。ねぇ今から。。行っていい?」と言う。少し驚く弘人。「今仕事中だしなぁ。。」と言いかける弘人。菜緒の電話の向こうで廉が弘人に「菜緒姉ちゃん?かわって?」と頼んでいる。電話を代わった弘人が廉の頭を撫でて去っていく。代わった廉は「お姉ちゃん?ねぇ、廉ねお姉ちゃんに見せたいものがあるんだ!」

夕方、結局弘人の家に来た菜緒。廉に「学校の図書館で見つけたんだ!お姉ちゃんに教えてあげようと思って。」といって、「月に歌うクジラ」という本を見せられる。

そんな2人を見ながら仕事を続けている弘人。そこに工員の棚田が近寄ってきて、弘人に「彼女最近よく来るね。いいよねぇ。。弘くんの彼女。。いつもベッピンだもんねぇ。いいよねぇいい男は。。。」とイヤミを言う。
何も言わずに軽く頷く程度で返している弘人の肩口を丸めた競輪雑誌で突き,「俺さまた競輪でスっちゃった。。金貸してくんない?」と言い寄るが弘人が拒否しかけると、「冗談!冗談!」といって笑いながら下がっていく。
そこに弘人の母親が仕事に行くので,廉の夕飯を頼むといってくる。その時菜緒が目に入り,半ば呆れたようにまた来たの?と言う。笑顔で挨拶をする菜緒に、まぁうちはいいんだけどねぇ。。と苦笑いをして去っていく。

合コンの最中の裕子。。。
周りの友達は楽しそうにしているが,疲れたようにうんざりした表情の裕子だが、相手の男の中の1人が裕子に目をかけ始める。帰り際に声をかけられ、「君かわいいね!今日の中で一番だよ!ずっと僕が君だけを見てたの気付いてた?」と言われ、言葉に困る裕子に、ちょっとまっててと声をかけて、すぐ近くにあった花屋で花束を買い、「決めてたんだ。本当にかわいいコと出逢ったら、黄色いバラを渡すってさ。。君は僕に選ばれたんだ。」といって、裕子にプレゼントする。裕子は思い出していた。甲とのドライブデートでのこと,甲は用意していた花束を「なんかダメだね俺。。なんかこう。。花!ってキャラじゃねぇなって。。思っちゃった。」と言ってなかなか渡せずに居たことを。そんな甲に惹かれたことを。
そして裕子はその男に「私。。そんなに女の人に花とか渡す男の人、苦手なんです。(ここがなかなか聞き取れないのですが。。「お金持ちにも惹かれない」というような意味を言う)そりゃぁ少しは惹かれるけど、でも、それより大切なものがあるんです。ごめんなさい!」と言ってその場を足早に去る。

弘人の家の近くの船着場で。。。
船の上に寝転がっている菜緒のところに、廉を寝かしつけた弘人が戻ってくる。菜緒にビールを渡し,隣に腰掛ける。
すると菜緒が、今度ベイクウォーターのクリスマスイルミネーションを見に行こうと弘人を誘う。笑顔で頷く弘人。
おもむろに菜緒は船の後ろに立って、
「私ね、今まで日本から外に出たこと無いの。病気だったから。」という言葉に弘人も、「俺も無いよ。貧乏だったから。。」と返す。「一緒だね。」と言いながら笑う菜緒。
菜緒は「でもここにいるとどっかにいけるみたいだね。。星見えるでしょ?目閉じるでしょ?波の音聞こえるでしょ?あ。。遠くで汽笛。。どんどん船が進んでいくみたい。」と言って目を閉じている。
そこに弘人が船に寄りかかりながら、「じゃぁ今どのヘン?」と問いかける。「東シナ海。。」と応える菜緒。次々と応えていく菜緒。適当すぎると笑う弘人。
弘人の吸っているタバコの火を見て,蛍みたい。捕まえてみたいと言う菜緒。根性焼になるとチャカす弘人に、笑いながら文句を言う菜緒。すると弘人が呟くように菜緒に話し出す。
「本当は思ってたんだ。。もう会えなくなんのかなぁって。。あんなことあってさ。。あんたの兄ちゃん、すっげぇ怒ってたし。。」と言う弘人に、「ダメだよ!そんなコトいっちゃダメだよ!」と言いながら弘人に寄り添うように弘人の胸に体を預ける菜緒。弘人の服を掴みながら、「捕まえたからね。もう話さないからね。」と言う菜緒を、優しく撫でる弘人。
菜緒「ねぇ。。」
弘人「ん?」
菜緒「好き?」
弘人「うん。。」
菜緒「言って?ちゃんと。。」ちょっとしかめっ面で言う菜緒。照れたような、菜緒を愛おしそうな笑顔で、
弘人「。。好きだよ。。」
菜緒「。。嬉しい。。」それを聞いて、安心したような優しい表情の菜緒。
「ここが一番おちつく。。世界で一番安心する。。」そう言う菜緒に愛おしそうに菜緒の頭を撫でたり,耳に触れたりしていると,菜緒が笑い出し,「ドキドキしてる。。心臓。。」と言って笑う菜緒に、
「。。そういう事言ってるとやっちゃうよ?」と言い、少し驚いた顔をするも
「。。いいよ?」と真剣な表情で言う菜緒。その答に弘人は小さく笑い「。。やめとく。。」と応える。
「なんで?」と問う菜緒に、「一応まぁ。。プランっていうか。。」と言葉を濁している弘人。「プラン?どんな?」と問う菜緒に、「。。どんな。。?。。ま最初は。。やっぱりこぅ。。素敵な所とか。。」と照れくさそうな弘人。
思わず笑ってしまう菜緒に「笑うなよ。。」とふてくされる弘人。「楽しみにしてよ♪素敵なところ。。」と言って笑う菜緒。「お嬢さんがそういう事言っていいのかよ。。」と言う弘人。
菜緒は弘人に「ねぇ。。この先のプランってある?私とどうこうとかそういうのじゃなくて、この先。。自分の将来。あたしは、もっと元気になって、いろんなとこ行ってみたいなぁ。。」と言う。「大学出たらどうするの?」と言う問いかけに「働くよ?弘人は?」と問う。「だって俺もう。。働いてるし。。」という答に「そうじゃなくて。。これからの将来。。」
弘人「将来か。。そうだなぁ。。そんな対したことじゃないけど、ここを立て直して、ぶっちゃけ今あんまりよくないからさ。。ここをちゃんと軌道に乗せて。。後は、笑うかも知んないけど、家族でにぎやかに暮らす。」
菜緒「家族。。」
弘人の言葉に範唱するように呟く菜緒。
弘人「子供たくさん欲しいんだ。。」
その言葉に答を詰まらせ、少しうつむく菜緒。
弘人「うん。。そんで。。野球やる。」
菜緒「へぇ。。いぃね。。」
取り繕うような笑顔で声をかける菜緒に
弘人「参加する?俺の将来。。。参加する?」
なんとも応えられずに「あぁ。。。」とだけ返し,あいまいにしか返せない菜緒。
その様子に自己解釈をしたように弘人が笑いながら
弘人「そうだよな。。悪りぃ悪りぃ。先の事なんてわかんないし,菜緒と俺じゃぁ。。。」
と少しずつ表情と声音を曇らせる弘人。
その言葉をさえぎるようにして
菜緒「ううん、そうじゃなくて。。一緒にいれたらいいなって思うけど。。」
何かを言いかけている菜緒。
そこに弟のレンが「甲兄ちゃんから電話が来てる」と弘人に呼びかける。
話を途中に、電話に出るために家に戻った弘人。
電話に出ると甲から「山下の居場所がわかった」と聞かされる。
何かを決意したように表情が強張っていく弘人。。
弘人と変わるように船着場へレンが来て,一緒に毛布に包まって星空を見上げている2人。

菜緒と裕子の大学。。英語の講義を受けている。。
外国人講師が英文のを読み上げている中で,裕子から菜緒にメールが届く。
裕子「昨日はゴメン!!言い過ぎたm(__)m」
メールを見て裕子の方を見て笑顔になる菜緒。
菜緒「こっちもゴメン。。気になってた。」
裕子「何か、ナオ話あったんじゃない!?」
菜緒「あ、ううん( ̄〜 ̄;)とりあえず大丈夫↑。それより、ユウコの方は(^0^)?合コン行ったの?」
裕子「そうそう行ったの↑そいでね、その話なんだけど…やっぱりコウくんじゃなきゃダメ(≧ω≦)みたいなんだ…謝りた〜い♥」
菜緒「ホントに(*^□^*)!?そうしなよ!それがいいよ〜↑絶対、喜ぶよ♥ヽ(´▽`)/コウくん\(^0^)/許してくれるよ!」(メールの書き方よりは実際にはもっと落ち着いた話し方をしてますが。。。」
すると講師が話をやめて2人に立ち上がるように呼びかける。2人は悲しい内容の話をしている中でみるみるうちに表情が明るくなった。いったいどんな話を机の下のメールで話していたのか聞かせて欲しいといわれてしまう。注意を受けている最中に2人は目を見合わせて笑顔をかわす。
大学からの帰り際、今まで通り一緒に帰る菜緒と裕子。
今から甲の元に行って謝りに行く。と言う裕子に驚くも嬉しそうで安心したような菜緒。
いつもの帰り道を行こうとした裕子を呼び止め、「あたしは今日こっちだから。。今日、病院の日」と別の方向を指す。
思い出したように頷く裕子。調子を気にかける裕子に、余裕だよと笑顔で返す菜緒。
菜緒は裕子にがんばってねと声をかけて、お互いに後で連絡すると言ってその場で別れる。

その頃、甲から山下の居場所を聞いた弘人は、土砂降りの雨の中山下の下に向かっていた。
とある場所で仲間と麻雀をしていた山下の元に弘人が現れる。
一方甲から弘人に山下の居場所を教えた事を聞いたアユタは眉根を寄せて「あいつは何かヤバい事を考えてる。。」と考えていたことを甲に伝えて、2人はそれぞれの場所を後にしてすぐに弘人と山下の下に向かう。

甲があわてて仕事場を後にして出ようとするところに、裕子が尋ねてきて鉢合わせる。驚く甲に裕子は何かを言いかけるが,弘人の元に急がなければならない事と、顔を合わせずらいのが重なって「今急いでるから。。」とだけ残してその場を去ってしまう。甲の方を振り返って何も言えない裕子。

あたりも暗くなった頃、町の大通りに面した建物の影に居る弘人と山下。
2人がにらみ合う中、弘人のほうに向き直り、
山下「なんでしょう?こんなとこで〜?」
すると突然山下の胸倉を掴み壁に押し付ける弘人。
弘人「自分のしたことわかってんのかよ。。」
山下「痛いよ〜ぉ」
どこかチャカしたかのように言う痛がる山下。それに対して真剣を越えた怒りの表情で
弘人「余裕かましてんじゃねぇょ!」
胸倉を掴んだまま山下の体を振り回し、フェンスに投げつける弘人。倒れ掛かった山下にすぐさままた胸倉を掴み上げて、首を締め上げる弘人に、
山下「うっ。。ヤバぃょぉ〜死ぬよぉ〜」
弘人が手を離すと咳き込み、弘人に突き飛ばされてその場に転ぶ山下。
弘人「お前今度菜緒に手ぇ出したら容赦しねぇかんな。。なぁ!」
そういって凄む弘人にまだ余裕をかましたように笑いながら立ち上がり、胸元からナイフを取り出して
山下「こんなもんあんだけど。。」といって弘人の頬に切っ先を近づけていく。表情を変えずにただ山下を見据える弘人。

その時、診療時間を過ぎたはずの病院の待合室で椅子にかけている菜緒。
そこに以前入院していた頃に菜緒を見知っていた看護師(町田さん)から声をかけられる。
診療は終わったはずなのに、今日はいったいどうしたのかと心配そうに問いかける看護師に、
菜緒「私、先生に改めて聞いてみたんです。将来子供。。ムリなんでしょうか。先生は、そういう症例はなくはないって言うけど、やっぱりとっても稀で。。。」と言う菜緒に、どこか優しい表情で「月岡さん、いい人できた?なんかとっても具体的な感じがしたから。。」と言う看護師。

場面は再び弘人と山下に戻り。。
ナイフを突きつけられたまま「そんなものしまえよ」と言う弘人。しかし山下はそのまま弘人の服の襟を切りつける。そして再び顔に近づけ、
山下「そんなにあの女がいいか?」と笑いながら言う山下に
弘人「こういうのさ。。ホント目障りなんだよ。。なぁ。。目障りだっつってんじゃん。。」と言いながら、突きつけられたナイフをそのまま右手で素手のまま握り締める。右の手のひらは切れ、ナイフに血が滴る。
弘人の行動に恐れをなし、手が震え表情がこわばる山下。おびえた声で「やめろよ。。。」と牽制するがそれでも弘人はナイフを離さず怯まない。山下を真剣なまなざしで見据えながら、再度、
弘人「いいか。。今度あいつに手ぇ出したら。。お前の事殺すからな。」その言葉にそんな事をしたら。。お前の人生も終わるぞ」と言いかけるが、その言葉を怒声でさえぎるようにして、
弘人「いいんだよ俺は!!。。いいんだよ。。わかったな。。今度菜緒に手ぇ出したら。。殺すからな。。」
さすがに諦めた山下は震えた声で「わかったよ。。」と残して、ナイフを離してその場を去っていく。
山下が去った後、ナイフを強く握り締めていた手をゆっくりと開くと、中は血で真っ赤になっていた。

病院にいる菜緒。。
看護師と別れた後も待合室にいて考え込む。
回想。。
看護師「ねぇ。。一度、その人と来てみたら?」
菜緒「自信ないなぁ。。全部言う自信なぃ。。。」

建物の壁にもたれかかるようにしてしゃがみこみ、手首を掴んで痛みに耐える弘人。そこにアユタと甲が駆けつけて、救急車を呼べ!すぐに手当てをしないと。。。と騒ぎ立てるが、弘人は
弘人「騒ぐな!!そんなたいしたことねぇから。。。ちょっとしたケンカで、ちょっとした怪我だから。。。なんでもねぇんだょ。。。なんでもねぇことにしねぇと。。アイツにあえなくなんだよ。。菜緒に。。菜緒にあえなくなんだ。。。頼む。。大事にしないでくれ。。」そういいながら脂汗をかいて痛みに耐えて必死に言う弘人に、何もいえなくなるアユタと甲。
病院からは菜緒が帰る頃だった。。。

昼間、マンションのベランダから弘人の家のほうを見つめている菜緒。ちょうどその時に菜緒のケータイに弘人から電話がくる。ケガをしたと言う弘人に驚く菜緒。弘人は本当のコトを菜緒には離さず、工場の機械でケガをしたと伝える。心配する菜緒に大丈夫だと伝えるが、手の自由がきかないので落ち着くまではしばらくは会えないと言う。約束をしていたクリスマスも、イルミネーションを見に行く約束もムリになってしまったと。謝る弘人に菜緒はそんなことはいいけど、お見舞いに行かない方がいいかと問いかけ、それに対して弘人はちゃんと気持は受け取っておくと言う。
話を変えて弘人はずっと気にかけていたことを菜緒に話す。
弘人「菜緒?俺と会うのってさ、ちゃんと許し貰ってんの?こないだあんなことあったじゃん。。まぁ、俺のほうはなんとかケリつけたけど。。」
菜緒「ケリ?」
弘人は言葉を濁しながら、
弘人「あ。。ほら、お兄さんとかお父さんとか、ちゃんと許し貰ってんのかなって。。。」
菜緒「あ。。お父さんは、年末で仕事が忙しくってなかなか弘人と会う時間がないみたいで。。。で、お兄ちゃんも大丈夫だよ。ちゃんとあたしが話したら、わかってくれた。」
弘人「そっか。。」
菜緒「うん。。」

その頃大学の帰り、甲のケータイに電話をかける裕子。電話が来て裕子からだとわかって出ようとするも、踏み切れずに切ってしまう甲。落ち込む裕子。

月岡家。。
食後にお茶を飲みながら、みつこはエクレアを取りにキッチンへ戻る。それを尻目に達也はみつこに聞こえないように、菜緒に問いかける。
達也「お前さ、もう会ってないんだろうな。。弘人とかってヤツと。。」
それに対して菜緒は
菜緒「うん。。。なんかもうあってないよ。。さすがにあぁゆうことあると。。ね。。」
達也「そっか。。だったらいいけど。。」
みつこがエクレアを持ってきて、嬉しそうに喜ぶ菜緒をみながら、どこか信じきれない達也。

一方弘人の下にはアユタが駅前の八百屋で売っていた700円のメロンをもってお見舞いに来ていた。
飲み物の用意をする弘人。そこにアユタが弘人に何かを言おうと弘人に声をかけるが、言いづらそうにして辞めてしまう。気にしている弘人。弘人にせかされて口を開いたアユタは、
アユタ「やっぱ。。無理なんじゃないか?こんな事言いたかないけどさ、菜緒ちゃんと付き合うの難しいんじゃないか?甲にしろさ。。裕子ちゃんに素通りされたりさ。。ヤな目にあってないか?。。俺の知らないところでヤな目にあってないか?」と言う。それに対して、
弘人「別にあってないけど。」と即答する弘人。
アユタ「それならいいけど。。。」と応えるアユタ。

そこに工員の棚田が弘人に「お客さんが来ている。月岡って言う人」と声をかけに来る。来ていたのは菜緒ではなく達也だった。
部屋に上がった達也は辺りを見回して眉を顰める。汚いところで申し訳ないと気を使う弘人。
アユタはお邪魔だったら。。と帰ろうと気を使うが達也はこっちはかまわない、すぐに話は終わると返す。それに対して弘人はコイツは身内みたいなんで。。。と言う。お茶の用意を始めるアユタ。
弘人の手のケガに気付き、どうしたのかとたずねる達也に、菜緒と同じように工場でケガをしたと応える弘人。危険なこともあるんだろうねと呟くように言う達也。
すると唐突に、
達也「あれから。。あってますか?妹に。」とたずねる達也。
弘人「はい。会ってます。」菜緒は会っていないと言っていたことで、ここで矛盾が生まれてしまう。
達也「ウチの金が目当て?」と問いかける達也に、弘人ではなく聞いていたアユタが「突然来ておいて。。なんなんですか!?失礼じゃないですか!」怒鳴るがそれを弘人が制止する。
達也「こんな事言われてなんで怒らないの?腰抜けだなぁ。。それとも図星?」
弘人「怒ったらお兄さん。。。(達也「お兄さんとか言うな!」)。。。怒ったら。。あなた帰るでしょ。。認めて欲しいんです。骨髄移植のこと菜緒から。。妹さんから聞きました。お兄さんから貰ったって。。妹さんすごい大事だと思うし。。菜緒も、お兄さんの事すごい大事だと思うから。。だから認めて欲しいんです。そんな金目当てとか、そういうんじゃなくて。。ちゃんとわかってほしんです。」
そういう弘人に、それまで口を閉ざして聞いていた達也がいらだったように、
達也「だったらこそこそ会ったりするなよ。隠れてあったり嘘ついたりするなよ。」
驚いたような表情をする弘人。
達也「菜緒とは。。妹とは、別れて欲しいと思ってます。父も許してないでしょう。」
菜緒に聞いた事とはまったく逆の事実を聞かされ、それを受け止めつつもショックを隠しきれない弘人。隣で聞いていたアユタも辛そうな表情をする。

達也が帰った後、重く暗い雰囲気が2人に流れるが、ふと気付いた弘人が、アユタが買ってきたメロンを食べようと声をかける。気付いたアユタも笑顔をして応える。メロンを手に取ろうとした弘人は、上手く持てずにメロンを床に落とし、メロンが2つに割れてしまう。小さく笑いあう2人。
モノローグ「菜緒。。なんでだろな。。俺はあの時のメロンが甘かったのが忘れられないんだ。。アユタが駅前で買ってきたメロンは、旨くて。。甘くて。。俺はなんだか余計。。泣きたくなったんだ。。」

スタージュエリーコーポ。。。
菜緒は大学に行っている頃。
新作ジュエリーの製作会議をしている雅彦。若い社員の新商品の製作案を元に話し合い、案を出した若い社員は自信のない様子を見せるが、雅彦はその内容を誉め、自信を持つようにと若い社員を励ます。
そこにたずねてくる弘人。
弘人の待つ部屋に入る雅彦。弘人を見るとその場で、
雅彦「ごめんなさい。待たせましたね。」
弘人は立ち上がり会釈して
弘人「始めまして。神崎弘人です。」
といって再び深く頭を下げる。雅彦は頷くと、弘人に椅子に腰掛けるように促す。すみませんと断って再度座りなおす弘人。
雅彦も椅子にかける。
弘人「あの。。どうしたら。。どうしたら僕を認めてもらえますか。」と単刀直入に切り出す弘人。
雅彦「いきなりだな。まぁ、こんな風にわざわざ合いに来るってことは本気なんだね?」
弘人「はい。」真剣な表情で応える弘人。
雅彦「そう。。娘の事が好きですか?」
弘人「好きです。」
雅彦「好きと言う気持ちだけでなんだって乗り越えられると思っている。。そういう時代に君はいるんだなと。。思ってね。。」
弘人「。。いけませんか。。?」
雅彦「娘の病気の事は知っていますか?」
弘人「はい。。」
雅彦「。。娘は。。子供が産めません。。」
弘人「。。え?」驚く弘人。
雅彦「いや。。まるで可能性が無いわけじゃない。。だが、ほぼ無理だと思ったほうがいいでしょう。知っていましたか?」
弘人「。。いえ。。」その時不意に弘人の頭に思い浮かんだのは、船着場で、弘人の将来の夢が、子供をたくさん作って野球をやることだと話したときの、菜緒の表情だった。。
雅彦「大丈夫ですか?」と問う雅彦に大丈夫です。となんとか応える弘人。
雅彦「なおかつ、骨髄移植をしてまだ5年経っていません。再発の可能性もないとは言い切れない。今度再発したら難しい状況です。娘は死ぬかもしれません。」
雅彦の言葉に驚きを隠せず、何も言えず考え込む弘人。
それに対して弘人を伺い、試すように見据える雅彦----------


という内容でした。
Mapleさωからのご要望を頂いた,第6話の船上での弘人と菜緒の会話の詳細をアップさせていただきますd(。ゝω・´)


弘人「おい。廉やっと寝た。」
菜緒「うん。」
弘人「はい。」
菜緒「ありがと。ねぇ、今度、ベィクウォーターのクリスマスイルミネーション見に行かない?なんかすっごいキレイなんだって。」
弘人「うん。。。あぁ〜うめぇ。。」
菜緒「あたしね。。今まで日本から外出た事ないの。。病気だったから。」
弘人「俺も無いよ。貧乏だったから。。」
菜緒「はは。一緒だね。」
弘人「一緒じゃねぇだろ。」
菜緒「ふふ。そうかな。」
弘人「そうだよ。」
菜緒「でもここにいるとどっかに行けるみたいだね。星見えるでしょ?目閉じるでしょ?波の音聞こえるでしょ?。。遠くで汽笛。。どんどん船が進んでくみたい。」
弘人「じゃあ今どのヘン?」
菜緒「東シナ海。。」
弘人「じゃあさっきは?」
菜緒「。。海峡」
弘人「。。適当すぎんだろ。。ほんとそんなんで大学行ってんの?」
菜緒「ふふ。。蛍みたい。。」
弘人「?」
菜緒「弘人の煙草。。暗がりで光ってて。。蛍みたい。捕まえたくなっちゃう。」
弘人「いいよ?まぁでも。。根性焼になっちゃうと思うけど。。」
菜緒「なんでそういうこと言うかなぁ〜」
弘人「ほんとはさ、ほんとは。。思ってたんだ。。もうあえなくなんのかぁって。。あんなことあってさ。。アンタの兄ちゃんすっげぇ怒ってたし。」
菜緒「ダメだよ。。そんな子といっちゃダメだよ。。捕まえたからね。。もう離さないからね。。ねぇ。。好き?」
弘人「うん。。」
菜緒「言って?ちゃんと。。」
弘人「好きだよ。。」
菜緒「嬉しい。。ここが一番落ち着く。。世界で一番安心する。。。。。ふふっ。。」
弘人「何?」
菜緒「ドキドキしてる。。心臓。。」
弘人「お前そういう事言ってるとやっちゃうよ?」
菜緒「。。。。。。いいよ?」
弘人「。。。。。。やめとく。。」
菜緒「なんで?」
弘人「いや。。一応まぁ。。プランっていうか。。」
菜緒「。。プラン?。。どんな?」
弘人「どんなって。。最初は。。やっぱりこう。。素敵なところでとか。。」
菜緒「。。ふふっ。。ふふふふっ。。」
弘人「。。笑うなよ。。」
菜緒「楽しみにしてよ♪素敵なところ。。」
弘人「。。お嬢さんがそーゆーこと言っていいのかよ。。」
菜緒「えへへ。。。。あ、ねぇ。。この先のプランってある?」
弘人「プラン?」
菜緒「あ、あの。。あたしとどうこうとかすいうんじゃなくて。。この先、自分の将来。」
弘人「。。あぁ。。」
菜緒「あたしは、もっと元気になって、いろんなトコ行ってみたいなぁ。。」
弘人「大学でたらどうすんの?」
菜緒「働くよ?弘人は?」
弘人「だって俺もう働いてるし。。」
菜緒「そうじゃなくて、これからの将来。。」
弘人「将来か。。そうだなぁ。。そんな対したことじゃないけど、ここを立て直して、うん。ぶっちゃけ今あんまよくないからさ。ここをちゃんと軌道に乗せて。。あとは。。笑うかも知んないけど、家族でにぎやかに暮らす。」
菜緒「家族。。」
弘人「子供たくさん欲しいんだ。。うん。。そんで。。野球やる。」
菜緒「へぇ。。いぃね。。」
弘人「参加する?。。」
菜緒「。。え?」
弘人「俺の将来。。。参加する?」
菜緒「。。ぁぁ。。。」
弘人「だよな。。悪りぃ悪りぃ。そぅだょな。。うん。先の事なんてわかんないし,菜緒と俺とじゃぁ。。いろいろなんか、やっぱ違うし。。。」
菜緒「ううん、そうじゃなくて。。一緒にいれたらいいなって思うけど。。」

廉「お取り込み中すいませ〜ん!」
弘人「。。廉突然ビックリすんじゃんかよ。。」
菜緒「。。どぅしたぁ?廉くん。。」
弘人「トイレ?」
廉「トイレくらい1人で行けるよ!お兄ちゃんに電話。」
弘人「電話?」
廉「甲兄ちゃんから。」

--弘人が去ったあと--

菜緒「ありがと。。星がきれいだねぇ。。」


こωなヵンヂです(o´ω`o)ゞ
大変お待たせいたしました!!(。→ˇ艸←)7話分をアップさせていただきます!!


★☆第7話☆★

弘人は港沿いの道を歩いていた。雅彦に言われた言葉を思い出す。。。
菜緒は子供が産めない。可能性としてはないわけではないけれど、ほぼ無理だろう。なおかつ移植をしてから5年経っていない。菜緒は死ぬかもしれない。
更に。。
雅彦「二十歳の君には荷が重い。。」
弘人「仰るとおり僕は二十歳だけど、彼女を守りたいんです。」
その言葉を聞いて口角をあげて小さく笑う雅彦。
弘人「なんで笑うんですか?」
雅彦「人を守るなんてそんな大それたことを軽々しく言っちゃいけない。。君には何もない。経済力も、地位も名誉も、人生経験も。それでも娘を守ることが出来るのか。君に何が出来る。」
弘人はまっすぐな目で雅彦を見つめて、
弘人「彼女を愛しています。」
雅彦「愛に出来ることには限りがある。買いかぶっちゃあいけない。それに、君のそれは若さゆえの情熱だ。まだ愛なんて呼べるものじゃない。ただの恋だ。」
弘人「ただの恋かも知れないけど、俺には。。僕にとっては、たった。。たったひとつの恋なんです。この先誰と逢っても絶対にこういう風にはなれません。俺の命と引き換えに、もし菜緒が助かるんなら、今すぐ差し出します。」
真剣に雅彦を見つめて話す弘人の言葉を聞いて、うつむくように目をそらす雅彦。そこに社員が入ってきて雅彦を呼び出したため、雅彦は「君の気持はわかったが、許したわけじゃない。それだけは言っておくよ。」と残してその場を後にする。

夜、亜紀子が勤めるクラブ。。。
亜紀子の常連客が、パチンコでとった様々な景品を手にやってくる。亜紀子に見せようとテーブルに広げたところ、いくつかテーブルから落としてしまい、それに気付いた亜紀子が客の下へやってくる。
他の若い女達もその客と亜紀子に気付いてこちらを伺っている。
客は亜紀子に景品の髪飾りをつけてやり、亜紀子もそれを喜んではしゃいでいる。
女達は2人を見ながら陰口を叩く。「あんあ子供だましのもので。。。いくら貢いでんだか。。。あの男、パチンコだけじゃないしね。。競馬やマージャンもやってるし。。」

その頃、誰もいない弘人の家(事務所)に忍び込む人影があった。。。
人影は引き出しを開けて中から金庫の鍵を取り出し、金庫を開けて通帳と印鑑を盗み出す。
翌朝、騒々しく物音を立てて必死に辺りを探っている亜紀子。異様に思った弘人が今に入ってきて、不機嫌そうに亜紀子に声をかける。
亜紀子は振り返って必死の様相で弘人に通帳と印鑑がなくなったことを伝える。
人影の招待は工員の棚田だった。棚田は工場の作業着のまま電車に乗って、あてがあるのかないのか、既にどこかへ逃げていた。
驚いた弘人はすぐに電話で問い合わせるが、既にその時には講座の金は全て引きおろされていた。金額は200万ほどだった。
亜紀子は慌てふためく中で棚田に疑いをかける。競輪ですってその借金が山積みになっていたことを思い出したのだ。急いで警察に通報費用とするが、弘人はそれを「棚田さんは父ちゃんが工場始めた時からいてくれた人。警察に知らせるのか。」と亜紀子を止める。亜紀子はその言葉を聞いて、どうせみつかりっこない。と肩を落として諦める。
しかし、金が戻ってこない以上、当面の生活費、工場の運営費等はすぐにでも用意しなければならなかった。弘人はすぐに付き合いのある他の会社に当たろうと考えるが、その裏で亜紀子は何かを考えていた。
弘人と亜紀子、それに工員の1人と経理の1人で話し合い、金策を立てる。最低限必要な金額を30万と割り出し、電話より直接行った方がいいという弘人の案で、経理が作った会社リストを手に弘人は出かけていく。そのあと、工員と経理が出て行った事務所に1人残った亜紀子。1人呟くように「30万じゃ足りないんだよ!!」と地団駄を踏んでいた。

亜紀子はヤクザがらみの金貸しに150万以上に積もった借金をしていた。その夜、ヤクザの男2人に囲まれまだ用意できないのかと責められる亜紀子。大きな金が入るはずだったという亜紀子の言葉にも聴く耳を持たない。ヤクザ達は「アンタんとこに体の弱いガキいるだろ。気をつけなよ?何があるかわかんねぇからなぁ。」と脅しをかける。怯えた亜紀子はヤクザにやめてくれと縋るが「だから、本気になればまだ金が入る所があるんじゃねぇの?150!どうにかしろ!」と追い討ちをかけられる。その言葉に何かを決意したかのような表情をする亜紀子。

その頃、弘人の家で電話が鳴る。。。
家にいた弘人は電話に出ると、電話の相手は菜緒だった。険しかった弘人の表情が、一瞬で穏やかな表情に変わる。
菜緒「もしもし、菜緒です。」
弘人「あぁ。。」
菜緒「なんかちょっと、久しぶりだね♪」
弘人「ごめんななんか。。ちょっといろいろバタバタしててさ。。それどころじゃなかった。。」
弘人の言い草にちょっと不満そうに膨れっ面をして、
菜緒「。。それどころ。。」
弘人「あ、ごめんそういう意味じゃなくて。。」
菜緒「バタバタって?」
弘人「ちょっといろいろ。。あって。。あ、そっちは、どう?」
くしゃみをする菜緒。
弘人「風邪?」
菜緒「少し。。でも平気!」
弘人「気をつけてな?」
菜緒「うん。。明日会える?」
弘人「あ、ごめん、明日無理だわ。。」
菜緒「そう。。なんかあたし、いたいけな乙女に迫る脂ぎったおっちゃωみたいな気分になってきたから、もう切るね?」
弘人「あぁ。。」
菜緒「また、電話します。。」
弘人「。。はぃ。。」
ちょっとムッとしながら複雑な表情で電話を切る菜緒。それでもまたくしゃみをしてしまう。
なにがなんだか。。といった表情で電話を持ったままの弘人。小さくため息をついて、そのまま受話器を置く。

翌日、付き合いのある会社を回る弘人。しかしどこの会社も無理だと言って断られてしまう。それでも必死に頭を下げ、頼み込む弘人。次々にリストに乗った会社名に赤い線が引かれていく。
甲とアユタも弘人を助けるために、お金を用立てる。アユタが5・6万円ほどで、甲は1万7千円ほどにしかならない。誤りながら弘人にお金を渡す2人に弘人は礼を言う。
そこに事務所に一本の電話が入る。相手は吉井さんという弘人の工場と付き合いのある店を経営している人からで、30万なら用立てられるという連絡だった。経理から電話を代わり、急いで電話口に出て笑顔で礼を言う弘人。

甲とアユタの帰り途中。。。
アイツはがんばるなぁと呟くように言う甲。その言い草にアユタは「お前も頑張れよ。裕子ちゃんと仲直りしろよ。」という。それに対して甲は「俺はもうダメだって。。。裕子ちゃんち何やってるか知ってる?神戸の芦屋で開業医だって。医者の娘だから。。。なんか、怖くてさ。。」と呟く。

また別の日、菜緒はアユタのバイト先のハーバーカフェに来ていた。弘人の状況をアユタから聞かされる菜緒。もう大丈夫みたいだけどというアユタに菜緒は寂しそうな表情で、「言ってくれればあたしだって。。」と呟くが、アユタはそれを遮る様に「それはしたくなかったんだよ。。わかってやってよ。。ね?。。嫌われるのが怖いんだ。。菜緒ちゃんに、嫌われるのが怖いんだよ。。。」というアユタ。
それを聴いて菜緒は複雑そうな表情をするが、小さく微笑んで、「優しいね、アユタくん。。」と言葉をかける。そして「なんかここにくると落ち着くなぁ〜。ねぇ、またここに来てもいい?」という菜緒にアユタは「もちろん!あ、じゃぁ俺は年中無休だから!菜緒ちゃんには年中無休!」と応えて、菜緒も笑顔で「24時間営業!」と返し、2人で冗談を言いながら笑いあう。

夜、アユタの家で飲んでいる甲とアユタ。
「あぁ〜!やっぱ仕事の後のビールはうまい!」などといっている甲にアユタはお前親父くさ!と突っ込む。そんな話からこれからの人生を語り始める甲。配達人生ですよ。。と嘆く甲に笑っているアユタ。
すると玄関の戸を誰かがノックする。アユタは誰が来たのかわかっているようで、すぐに玄関に向かい戸を開けた。伺うように玄関に目を向けた甲は驚き目をそらす。玄関にいたのはアユタの計画で甲に内緒で来た裕子だった。
2人に話をさせようと気を使って、近くのコンビニでヒマを潰すアユタ。アユタの家では2人が気まずい空気の中はなし始める。
裕子「ごめんね。。あの時、あたし立ち止まって彼ですって紹介すればよかったのに。。」
甲「いや。。しょ、しょうがないよ!だって。。俺が彼氏じゃ恥しいもんね!だから全然いいよ。。もう気にしなくて。。うん、平気。」
裕子「合コンとかも行ってみたの。。でも、やっぱり違くて。。あたし、甲くんじゃなきゃだめなの。。甲くんじゃなきゃ、だめなの。。」
その言葉を聞いてまっすぐに裕子を見つめた後、そろそろと裕子の隣により、正座してひざに手を付きながら、
甲「俺も、電話しなくて悪かった。。なんか、でも、なんて言われるんだろうとか考えたら、怖くなっちゃって。。あんなことぐらいでへそまげて、ガキで、悪かった。。」
そういうと、照れて迷いながらも右手で裕子の手を取って握る甲。その行動に目を見開いて驚く裕子。
甲「これからも、よろしく。」
という言葉に裕子は安心したような笑顔で頷き、
甲「でもお前、合コンだけは行くなよ?」
の言葉には笑顔で、はい。と言いながらしっかり頷く。
コンビニの外で飲み物を手に待っていたアユタ。
1人待ちながら、「俺はおせっかいおじさんか。。24時間営業だもんなぁ。。。」と呟き、後ろを振り返ってコンビニに向かって「一緒だな!コンビニくん。がんばろうな!」と声をかける。

一方千葉へ向かっていた弘人。吉井さんから30万を受け取り、嬉しそうに礼を言ってその場を後にする。
その後、すぐに公衆電話から菜緒に連絡する弘人。仕事にキリがついたから、今日会えないかと伝えると、菜緒は嬉しそうな表情で強く頷いた。

夜、いつもの船の上にいる弘人と菜緒。
2人で手のひらを合わせて、菜緒は占いか何かをしているようだった。「わかった。さんきゅ♪意外と手小さいね。」と言う菜緒に、わけのわからない様子の弘人。「何?」と問いかけるが「ちょっとね♪」と楽しげにはぐらかす菜緒。
船の上でゆっくりした時間の中、何気ない会話が始まる。
弘人「あれ、ホントにここでよかったの?ほら、どっか別の場所とかさ。。。」
菜緒「ここがいいの。」
弘人「そっか。。」
菜緒がそこで咳き込むのを気にして弘人が、
弘人「風邪治ってねぇの?あ、俺薬持って来ようか。。」
という弘人の言葉を遮って、
菜緒「あ、ううん、大したことないの。病院いったとき薬貰うし。」
弘人は、この前雅彦に会ったことを言おうか迷っていたが、決意したように切り出す。
弘人「この前、親父さんにあった。。」
菜緒「ぅえ?」
驚いて拍子抜けしたような返事をする菜緒。
弘人「。。やっぱ聞いてねぇんだ。。」
菜緒「。。知らない。。」
弘人「菜緒の事、いろいろ話した。。体の事も聞いた。」
菜緒「体の事って、みんな?」
弘人「み、みんなって?」
慌てたように聞き返す弘人だったが、
菜緒「。。だから。。子供の事とか。。」
自分が知っていた事だったことで落ち着いて応える。
弘人「うん。。」
菜緒「ごめん!隠してたわけじゃないの!。。、。隠してたね。。。」
弘人「。。関係ないよ?」
菜緒「関係、ないの?大事なことよ?ちゃんと考えた?」
弘人「うん。ちゃんと。。考えた。」
といって、菜緒の隣に腰掛ける弘人。
弘人「ほら前にさ、あんたに話したじゃん。家族みんなで一緒に暮らすのが俺の夢だって。だから、ちゃんと考えた。けどどんなにどんなに考えても、すぐに答出んだ。俺さ、あんたじゃないとダメなんだ。」
菜緒「でも、あたし、死ぬかもしれない。。」
弘人「死なないよ。その可能性、だって、ごくわずかでしょ。」
菜緒「調べたの?」
弘人「調べた。」
菜緒「でも。。でも、もしぁ」
菜緒が言いかけると、それ以上言わなくていいというように、菜緒を唇を人差し指で押さえる弘人。
弘人「それでもいい。」
というと、菜緒を立ち上がらせて腕の中に抱きしめる弘人。
船に腰掛けて、菜緒を後ろから包み込むようにして抱きとめ、菜緒も弘人に寄りかかって座りながら話始める。
菜緒「ってことは。。あたしたち、結婚とかするの?」
弘人「俺さ。。あんた以外の人といるところ、想像できないよ。。そっちは?」
菜緒「こっちは。。嬉しい。弘人とずぅ〜っと一緒にいること想像したら、すごい嬉しい!嬉しすぎて死ぬ!」
弘人「そうゆうこと全部言わなくていいから。。なんかタックルされまくってるカンジ。。もうとっくに倒れてんのにさ。。」
すると菜緒は弘人の腰元に突然ギュッと抱きつく。
菜緒「タックルって、こうゆうカンジ?♪」
と笑いながら言う菜緒に、菜緒を起き上がらせて後ろから菜緒の首に腕を回して首を絞めるような仕草をしながら、
弘人「いや。。スリーパーホールドってカンジ。。」
と耳元で囁くように笑いながら言う。笑いながら弘人の腕の中から抜け出した菜緒は、また弘人の後ろに回り込んで腕を回し、強めに首を絞める。それをギブアップ!というように腕を外させた弘人は、菜緒を追いかけて、菜緒も弘人から逃げるが、逃げかけた菜緒が弘人の胸に飛び込み、それを優しく抱きとめた弘人。互いに笑いながら抱きしめあう2人。
抱きしめあいながら菜緒は、
菜緒「楽しいね!。。楽し過ぎて。。なんか怖いね。。」という。その言葉に笑顔だった弘人の表情が少し曇る。
菜緒「なんか。。いつかなくなっちゃう気しない?」
笑顔でいながらも寂しげな菜緒の言葉は弘人の胸に突き刺さっていた。
モノローグ。。。
弘人「君の言葉の切れ端が、心に刺さる。すって紙で手切った時みたいに、痛い。。」
その時、その様子を亜紀子が影で見ていて。手にはカメラが握られていた。。

翌日、スタージュエリーコーポに向かった亜紀子。雅彦を呼び出し、話を始めた。その話とは、雅彦に金を用立ててほしいということだった。
スタージュエリーの広告塔が、ウチの息子なんかと付き合ってていいのか。そっちにとっては100万や200万ははした金だろうと言って写真を突きつけて息子を売ってまで、金をゆすろうとしたのだった。

その頃弘人の家では、廉がくじらの置物の作り方が書かれた本を弘人に見せていた。
そのとき弘人は初めて菜緒の誕生日がイブの日であることを廉から聞かされるのだった。

そして菜緒はみなとみらいの病院にいた。
風邪がなかなか治らないので、医者から入院を言い渡されていた。菜緒本人は入院するほどでもないと思って驚いていたが、こんなことで変にこじらせてはつまらないだろうと医者の言葉もあって、入院することを承諾していた。

夜、菜緒はみつこと入院の支度をしていた。入院をするのにアロマオィルを持っていくという菜緒に呆れたように笑うみつこ。
その時雅彦と達也は中華街の店にいた。達也は雅彦から亜紀子の話を聞き、とんでもない母親だなと呟く。そして、達也は菜緒から口止めをされていた山下の事件の事を雅彦に話してしまう。「お父さんには黙ってたけど、菜緒、一度襲われかけたんだ。あの弘人ってやつの友達だか同級生高に、ウチの金が目当てで。。」と言い終わるかいい終わらないかのうちに血相を変えた雅彦が「なんでそれを早く言わない!!」と達也に怒鳴りつける。

家に帰った雅彦はみつこにその話を聞いていた。君は知っていたのかと問う雅彦に、いいえと応えるみつこ。
自分から菜緒に話をすると言ってソファから立ち上がる雅彦を、「あの子、明日から病院なんです。ただの風邪といっても心配です。時期を見て私から話します。」というみつこ。雅彦は「とにかくもう勝手なマネはゆるさんからな。」といってその場を後にする。その後、菜緒を心配して寝室の方をみやるみつこ。

仕事から帰った亜紀子。すると廉がまだ起きていて、何かを作っていた。まだ起きてたの?何してるの?と問いかける亜紀子に「菜緒姉ちゃんのプレゼント」と応える廉。それに対して目を泳がせる亜紀子。
そこに弘人が仕事を追えて部屋に戻ってくる。着替えてすぐに手伝うからと廉に伝えて着替えに行く弘人を黙って見やる亜紀子。

菜緒を思って思いつめた、どこか何かを決心したような表情のみつこ。
寝室のベットの中で穏やかな表情で眠る菜緒。
廉と一緒に菜緒へのプレゼントを作る弘人。

ある日の昼間、弘人はケータイが繋がらないので菜緒の家に電話をかけていた。
すると家政婦が出て、達也と目を合わせながら留守だと伝える。弘人が、何時に戻るかと尋ねると、入院しているので戻らない。といわれる。聞き返しながら入院という言葉に驚く弘人。家政婦は達也に「神崎という男性からです。これでよろしいんですか?」と伝える。
電話を切った弘人は呆然としている。廉がくじらを作りながら「菜緒姉ちゃんクジラの目何色がいいって?」と問いかけるが、それにはまともに応えず、様子のおかしい弘人を心配する廉の頭を撫でて、クジラ作りを再開するも、「菜緒の入院」が頭の中を巡っていた。

病棟の個室でヒマを持て余している菜緒は、ベットの上で編み物を始めていた。
菜緒を気にかけつつも廉と一緒に着々とクジラを完成させていく弘人。幾日もが過ぎる間、菜緒の編み物もまた完成に近づいていった。
しばらくすぎて、やっと菜緒の風邪が良くなり、医者から来週には退院しようといわれて喜ぶ菜緒とみつこ。
その日の夜の病室。。みつこが部屋に花瓶を置く。そこに菜緒が編み物の糸の始末を教えてくれとベットからみつこに声をかける。みつこはベット脇のイスに腰掛けて、菜緒から編み物を受け取り教えようとするが、菜緒は理解できたので自分でやりたいからといってすぐに返してもらう。編み物を再開しながら菜緒がみつこに話しかける。
菜緒「あ、そうだお母さん。ケータイがね、なんかオカシイの。壊れてるって言うか、通じない。。」
何も知らない菜緒に、少し辛そうな表情をしながらみつこが、
みつこ「菜緒、ケータイ。。オカシイんじゃなくて、お兄ちゃんが契約止めたの。」
菜緒「え?」
みつこ「ケータイ。使えなくしたの。」
菜緒「なんで?」
みつこ「お母さん、ちょっと菜緒にお話があるの。」
菜緒「。。なぁに?」
みつこ「あなたの付き合ってる、弘人くんの事よ。」
驚いたような表情をする菜緒のベットの足元に腰掛けて、みつこは話を続ける。
みつこ「彼とは、もう会わないでほしいの。」
菜緒「どうして?」
みつこ「その子のお母さん、お父さんのところに来たらしいわ。」
菜緒「何しに?」
みつこ「。。お金を借りに。そしてあなたと、自分の息子さんの写真を見せてお父さんのゆすったの。それを外に出したくなかったらお金を出せって。お母さん、何も知らなかった。でもおにいちゃんにも聞いた。あなた、襲われそうになったんですってね。その子の友達に。。」
菜緒「友達じゃないわ!ただの同級生よ!」
無言のまま首を振るみつこ。
みつこ「お父さんもそれを知ったのよ。菜緒には、退院して帰ってきたら、ボディーガードのために運転手さんをつけるって言ってるわ。」
菜緒「あたし、監視されるの?」
みつこ「守られるの。お父さんに守ってもらうの!」
菜緒「お母さんも、お父さんの見方なの?」
みつこ「私は、母親だから、あなたを守る義務があるの。あなたが二十歳だからって、まだ守るの。だって母親ってそうゆうものよ?弘人くん、お父さんのところに来た時ね?自分の命と引き換えても、あなた助けたい!って、言ったそうよ。だからお父さん、しばらく様子見てたのね。お母さん、お嫁に来る時に覚悟したことがあるの。スタージュエリーの、嫁に来るんだって、そう思ったの。あそこの店が大好きだった。私、そこに傷をつけるわけにはいかないわ。お父さんとお兄ちゃんは気にしてないけど、お母さんは怖いと思ってる。あなたのスキャンダルは怖いと思ってる。お母さんは、あなたとうちを守りたいの。」
菜緒「でも。。でも、お母さん、あたし、弘人の事、本気で好」
みつこは涙を流しながら、言いかけた菜緒の手を握って言葉を遮り、
みつこ「菜緒。。お兄ちゃんを裏切らないで。あなたに骨髄をくれたお兄ちゃんを裏切らないで。。お兄ちゃん、命がけであなたを助けたのよ?」
すると菜緒を涙を流して、震えた声で
菜緒「お母さんっ。。今それ言うのずるいよ!。。ずるぃ。。」
とやりきれない気持を訴えて泣き崩れる。少しすると顔をあげて、
菜緒「もう。。会えないのね?」

その頃弘人の家では菜緒たちを余所に、クジラを作り終え、廉と一緒に眺めながら、「でも菜緒。。来てくれっかなぁ。。」と呟くと廉が「当たり前だよ!イブは恋人達の日だよ?」と言う。そんな廉に「バ-カ」といって笑っている弘人。

菜緒「もう、会えないのね?」
とみつこに問いかけると、
みつこ「そうして。。ください。。」
みつこはそういって、菜緒に頭を下げた。
何も言えなくなり、ただ静かに弘人を想って編んだ手袋を握り締めて涙を流し続ける菜緒。みつこも涙を流しながら菜緒を見つめる。しばらくすると菜緒は、何かを決意したかのような表情をして、涙をぬぐいながら、みつこに頼みごとをする。
菜緒「お母さん、あたし、カフェオレ飲みたい。」
みつこ「え?」
菜緒「いつも飲んでるやつ。この病院の中、ないの。ほら、あたし、朝はカフェオレじゃなきゃだめじゃない?信号のとこのコンビニで、買って来て。」
その言葉にみつこは、何かを確かめるかのようにまっすぐに菜緒を見つめて、
みつこ「。。明日の朝、飲むのよね??」
菜緒「。。。うん。」
みつこ「明日。。飲むのよね?」
菜緒「。。うん。。。。」
みつこ「わかった。。お母さん買って来る。」
そういうと立ち上がって、菜緒を見つめているが、振り返って病室を後にしていく。ドアを閉める音が聞こえると、菜緒は意を決したようだが、どこか迷っている寂しげな表情をする。
病院を出て夜道をあるくみつこ。足を止めて思いつめる。
その後、看護師が回診にくると、すでに病室に菜緒の姿はなかった。。。

夜中、計算機を手にまだ家で仕事をしていた弘人の元に1本の電話が入る。
電話の相手は菜緒。突然の電話に驚く弘人。入院したと聞いていただけに、いろいろと問いかけようとするが、菜緒はそれを説明しているヒマはないというように言葉を遮り、今すぐ丘公園の上に来てと弘人を呼び出す。菜緒のただならぬ様子を感じた弘人はすぐに家を出て丘公園に向かう。
公園の上のベンチで弘人を待つ菜緒。しばらくすると弘人が走ってくる。菜緒の目の前で止まり、息咳を切らせて苦しそうな弘人に、
菜緒「お金ある?」
弘人「。。いきなりそれかよ。。」
菜緒「今日泊まるから、泊まるお金。。」
弘人「ないことなぃけど。。」
菜緒「病院抜け出してきた。」
弘人「!?お前大丈夫なの!?」
菜緒「平気。ただの風邪。お医者さんも来週には退院していいって。」
弘人「そっか。。」
菜緒「お財布置いてきた。。小銭だけ握って。」
弘人「はっ。。メチャクチャだな。。」
菜緒「靴はいてるだけマシでしょ?」
すると弘人はひざに手をつきながら菜緒を見上げて小さく笑い一息つくと、立ち上がって菜緒を強く抱きしめる。
弘人「ちょっとこうしてていい?泊まる泊まらないは置いといてさ、ちょっとここで。。」
菜緒「え、おいとかないでさ、泊まろうよ。。」
弘人「置いとけよ。。だからもうちょっとここで、こうしてていい?」
菜緒は驚くも、泣いているように声を震わせている弘人を抱きとめて背中をさすりながら、
菜緒「どうした?。。。どうした?」
と、耳元で優しく問いかける。
弘人「。。安心したいんだ。。ケータイにずっと電話しても繋がんないしさ。。家に電話しても、入院とか言って取りついでもらえねぇし。。俺どうしようかと思ったよ。。けど今、菜緒はちゃんと俺の腕ン中にいるって。。なんかあんのかと思った。。」
泣いて縋るような声で呟き菜緒を強く抱きしめる弘人を、菜緒は優しく抱きとめながら、
菜緒「。。なんにもないよ?大丈夫だよ。。」と笑ってみせる。しかし、みつこの言葉が頭をよぎり、弘人には見えないが菜緒も不安の表情を隠しきれなかった。。

病室。。。看護師を説得するみつこ。。。
「ちょっと急用で、明日の朝には戻ってきますので、どうか多めに見てやってください。。」と頭を下げるみつこ。

ぉ互ぃの不安を消し去るようにと強く抱きしめあう弘人と菜緒。。。
★☆第8話☆★


始まりは翌朝。。。
弘人の家(おそらく弘人の家と言うよりいつもの船の中)で朝を迎えた菜緒。毛布に包まりながら外に出て,すがすがしい朝に笑顔になる菜緒。ふと足音のする方を見ると,弘人が朝ご飯を買ってきたところだった。遠くから買ってきた袋を持ち上げて菜緒に見せる弘人。弘人の姿を見て嬉しそうに笑う菜緒。
朝食を口にしながら,唐突に菜緒が話し始める。
菜緒「ねぇ、あたし指輪とかほしい。。」
弘人「。。だって自分ンち宝石屋でしょ?」
菜緒「。。そういう事じゃないのぉ〜。。女の子はみんな欲しいんだよ。。」
弘人「。。。はい。。」大人しくなって頷く弘人に微笑む菜緒。
菜緒「ねぇ。。こういう時ってさ、なんか。。チュッとかしたりするんでしょ?」
思わずパンを口に運ぶ手を止めて菜緒を見る弘人。
菜緒「してみて?。。はい。いいよ?」そういって座りなおすと目を閉じる菜緒。
照れ隠しで咳払いをしながら菜緒の横に座る弘人。
菜緒「。。え?横位置なの?」
不満そうに呟く菜緒。
弘人「え、ダメ?」
菜緒「いいけど。。。」
そう言って俯きかけるが、また弘人のほうに向き直って目を閉じ、「はい♪」とキスを待つ。
一瞬目を逸らそうとするが,観念してキスをしようと菜緒に近づく弘人。けれど何度近づいてもてれて笑ってしまい,キスするとこができない弘人。
弘人「。。ふっ。。ゴホン。。ちょっと待ってっっ。。」
菜緒「。。。。。。。はぃ♪」
弘人「。。。くふふふふっっ。。。。」
菜緒「早く〜っっ」
弘人「はい。。。。くひひひひひっ。。。ちょ待って。。へへへっ。。」
菜緒「もぉ〜〜〜〜〜〜。。。いい加減にしてよっっ」
その瞬間馬鹿力で弘人を突き飛ばしてしまう菜緒。思いっきりつき飛ばされてしまった弘人は転げ落ち、呆然としている。
菜緒「。。。ごめん。。大丈夫??」
弘人「だい。。じょうぶ。。」
そういうと、2人は目を見合わせて笑う。

その頃、病室で心配そうに菜緒の帰りを待つみつこ。

ちょうど菜緒は弘人の家から病院に帰ろうとしていた時だった。もう行くね?と言いながらもなかなか帰れずにいる菜緒。弘人がもう5回目と指摘して笑うと、今度は本当に行くと言う菜緒。菜緒の頭を撫でて頷く弘人にじゃあねと言うと、また弘人は6回目。。といって笑う。笑う菜緒のダッフルコ-トのボタンを少し引っ張って、優しく菜緒を抱きしめる弘人。
弘人「じゃぁね。。」「またね。。」「またすぐね?」
抱きしめられながら頷く菜緒。しかし頭の中では、昨日の夜みつこに言われたことを思い出していた。
今別れてしまえば、菜緒はもう弘人に会うことが出来なくなる。弘人を強く抱きしめ、意を決して病院に帰ってきた菜緒。

病室では、みつこが椅子に座ったまま眠っていた。起こさないようにそっと部屋に入って扉を閉め、みつこにコートをかける菜緒。

工場。。。
弘人が口笛を吹きながら仕事をしている様子を見て、工員の水上が「何かいいことあったの?」と問いかける。少し笑顔になりながらも「いや。。?」とはぐらかして特に応えない弘人。しかし自然に出てしまう口笛と笑顔は止まらない様子だった。

菜緒の家。。。
みつこと菜緒が夕食の準備をしている所に、達也から電話が入り、雅彦が取る。ゼミが終わったので今から帰るという電話だった。
電話を終えた雅彦は、みつこを手伝っていた菜緒を呼び、話を始める。
雅彦「菜緒、お母さんから聞いたと思うが、これからしばらく人をつける。運転手兼ボディガードだ。移動は全て車だ。」
菜緒「。。。はい。」
雅彦「お前が襲われそうになったなんて。。。お父さんは知らなかった。あの子とは、神崎弘人とは、もう会うな。いいな。」
目を見合わせる菜緒とみつこ。
菜緒「。。。はい。。」

工場。。。
廉が、ほぼ完成したクジラを持って弘人の下にやってくる。クジラの目をつけたと伝えに来たのだった。工場の服を着て工場にはいるものの、仕事をしている風ではなく、何かを作っている様子の弘人に廉は「何してるの?」と問いかける。「ちょっとな。。」と楽しげな弘人の手には部品の一つである、小さなわっか状の留め具が握られていて、それを薄く削っているところだった。。

大学。。。
菜緒と裕子が帰り道の石段を降りていると、先には運転手が車を待機させていた。菜緒に向かってお辞儀をする運転手。
菜緒の頼みで裕子は一瞬迷ったような表情をするが、結局裕子も一緒に乗っていくことになり、ハーバーカフェに寄って行く事になった。

当然カフェにも運転手は着いてくる。
それを見たアユタは「大変そうだね。。」と呟くように菜緒に言う。「不良娘だから仕方ない。」といって笑う菜緒。
そこに裕子のケータイに甲から連絡が入る。2人に断って少しその場を離れようとする裕子に、菜緒は「もしかして、今日甲くんと会うはずだったの?」と申し訳なさそうに問う菜緒。しかし裕子は「気にしないで」と言い、その場を離れる。「悪いことしちゃった。。」としょげる菜緒。
そんな菜緒にアユタは「人のことじゃなくて自分の事だよ。。どうするつもりなの?これから。」と問うと、菜緒は「。。弘人にね、伝えて欲しいの。。しばらく連絡できないけど、必ず、必ず説得するからって。。ね?それ、弘人に。。」とアユタに頼む。「わかった。伝えるよ。」と応えるアユタ。
小さくため息をついてしゃがみ込むと「でもがんばるなぁ〜。そんなにがんばって、大丈夫なの?」と菜緒を気遣う。
すると菜緒は、困ったような不安そうな表情を浮かべて、
菜緒「アユタ君、みんなに、内緒にしてくれる?」
アユタ「ん?」
菜緒「弘人のお母さん、うちのお父さんにお金借りに来たの。あたし達の写真持ってゆすりに来たの。。」
アユタ「。。そう。。」
菜緒「弘人は知らないからっ。。弘人には。。。」
アユタ「言わないよ。。。」
思いつめたような菜緒の目からは涙が零れていた。菜緒は涙を指でぬぐいながら、
菜緒「。。ダメだ。。ヤだな。。。」
アユタ「お嬢さんなのに、強ぇな。菜緒ちゃんは。」
と言いながらハンカチを渡すアユタ。
アユタ「応援するからさ!最後まで。」
そういったアユタに笑顔で「ありがとう」と答える菜緒。

工場。。。
仕事を続けていた弘人の下に、アユタ・甲・裕子の3人が訪ねて来る。驚いている弘人に、本題を振らないまま、「あたしが来た方がいいかと思って。。菜緒の近くにいるの、あたしだし。。」と言う裕子。「俺も、いてもいなくても一緒なら、いてやろうみたいな。。」と言う甲。
そんな甲に笑いながらも「ありがとう。でもそんないい話じゃないでしょ。3人して心配して来てくれてるワケだし。。」と見透かす弘人。
居間で話し始める4人。。。
アユタ「親にな、反対されてるんだって。。しばらく待ってくれって。親説得するからって。。」
裕子「菜緒、襲われそうになったんでしょ?それお父さんが知ったのよ。。あ、そうだ。これ、菜緒の新しい番号。一応。。。」
弘人「いい。。それ知ったら、かけたくなるからさ。。いい。菜緒が決めたことなら、俺待つからさ。。」と自分にも言い聞かせるように言う弘人。

菜緒の家。。。
電気を消した部屋でイガイガくんを引っ張りながら、窓の外を眺める菜緒。
リビングでは雅彦が望遠鏡を除いていた。そこにみつこがやってきて、思わずあてつける様にため息をつく。望遠鏡から顔を上げて、「なんだ?そのうらみがましいため息は。。」と言うと「だってぇ。。菜緒は5歳の子供じゃないのよ?もう少し自由に。。。」と言う。それを聞いていた達也が「ダメだよ、お母さん甘い顔しちゃ。菜緒一度ウソついて会ってたからなぁあの男と。ここは厳しくビシッと言っておかないと、菜緒のためにならないんだから。」と独り言のように文句を言う。雅彦もそれに対して「そうだ。」と頷く。不満そうなみつこ。

その頃菜緒は、突然何かを思いついたようにベランダに出た。
部屋の戸を開けっぱなしにしていた弘人がそれに気付いて、窓を閉めようとした時、菜緒を想って何気なくマンションのほうを見る。するとチラチラと小さく何かが光っているのが見えた。菜緒がベランダからイガイガを弘人の家に向けて光らせていたのだ。慌てて部屋から出て途中居間のイスにぶつかって倒してしまうも、懐中電灯を取りに行く弘人。物音で廉が起きて来てしまい、「どうしたの?」と眠たげに問いかける廉に、懐中電灯を後ろでに隠しながら、起こしてしまったことを謝っていく。何気なく弘人の後ろを付いて部屋に来た廉。廉に気を使って棚に懐中電灯を置いてしまう弘人。すると廉が、
廉「お兄ちゃんも早く振り返さなきゃ。」
驚く弘人。
廉「菜緒姉ちゃんでしょ?」と言いながら懐中電灯をつけて弘人に手渡し、ほら早くといって弘人をせかす。弘人の手に懐中電灯を持たせて一緒に振る廉。その光に気付いて驚く菜緒。
廉「知ってるよ?あの光は、菜緒姉ちゃんとお兄ちゃんのクジラの声なんだよね?クジラってさ、クジラ同士が200キロはなれたところでも、話が出来るんでしょ?クジラだけに届く声があるんだよね?菜緒姉ちゃんとお兄ちゃんも、そうでしょ?」廉の言葉を聞きながら、顔は見えなくても菜緒を見つめる弘人。菜緒もまた弘人を見つめていた。。

スタージュエリーコーポ。。。
雅彦と斉藤、それに他の社員も数人含めて、打ち合わせをしている。スタージュエリーの売り方と社風を十分に理解した上で、斉藤なりにクリスマス商戦を成功させようと言う斉藤の仕事ぶりに感心をする以上に、感謝をする雅彦。他の女性社員も斉藤の有能さを雅彦に伝える。謙遜する斉藤。仕事詰めで疲れている斉藤を気遣う雅彦。

その頃甲とアユタ。。。
港で話し合っていた。
「何か俺達に出来ることはないか」と言う甲に「見守るしかないんじゃないか」と応えるアユタ。そこに裕子がやってくる。
「これから菜緒ちゃんと買い物だって?」と問うアユタに「菜緒が合うの許されてるの、女友達3人しかいないの。あたしそのうちの1人だし、出番多いの。。」と応える。
裕子が出かける前に2人で話をする甲と裕子。。
甲「なんつうかさぁ〜。。。あの2人が幸せじゃねぇと、なんか俺らも心がカッと晴れねぇっていうか。。。」
その言葉に無言で頷く裕子。
裕子「でも好きだよ?」
甲「。。ぁっ。。ぅん。。はい。」
裕子「甲くんは?もう、そんなでも、ない?」
甲「いやいやいやいやいや?あの、裕子ちゃん。。日々、かわぃぃ。。ょ。。。あの、日々好き。。好き?。。好き。。うん。。」
てれて呟くようにわけのわからないまま喋る甲の言葉に笑う裕子。それに対して甲は「はい!」そっと手を差し出して、裕子も「はい!」と答ながら手を繋ぎ、2人で歩いていく。

工場。。。
夕方、前に削っていた留具に何かを彫っている弘人。。

ある日の昼。。。
再度スタージュエリーに来た亜紀子。依然来た時にも亜紀子を見かけたスタッフが亜紀子を見つけ、怪訝そうに「何か御用でしょうか」と亜紀子に問いかける。愛想笑いをする亜紀子。
スタッフは雅彦にその事を伝えた。雅彦は「今度きたら私を呼びなさい」と言いつける。

その頃、水上と共に仕事をしている弘人。水上に「本当にすみません。棚田さんがいなくなっちゃってから、水上さんの仕事増えちゃって。。俺あの船体修理、全部俺がやるんで。」と申し訳なさそうに水上を気遣う。
水上は小さく頷くと、その場を弘人に任せる。
その後弘人はまた、留具を作っていた。その留具には「HN」と彫られ、綺麗に光るほどに磨かれていた。弘人は以前に菜緒が欲しいといっていた「指輪」を作っていた。その指輪を手に持って見つめ、嬉しそうな表情の弘人。
そこに事務所へ電話がかかってくる。電話を取るとその相手は雅彦だった。思わず椅子から立ち上がって驚く弘人。。
弘人「はい。神崎造船鉄工所ですが。」
雅彦「月岡と申します。。」
弘人「!!。。はい。。。」
雅彦「少し話がしたいんですが、会えますか?」

カフェで弘人を待つ雅彦。
急いでカフェに着て雅彦を見つける弘人。。。
雅彦は封筒に入れた厚みのある何かを弘人に差し出した。
雅彦「これでもう、娘とは別れて欲しい。」
押し黙る弘人に、せかすように
雅彦「さあ、中を確かめてくれ。」
そう言われて弘人が中を見ると、そこには数百万分の札束が入っていた。札束を見てすぐに封筒の口を閉じる弘人。封筒をテーブルに置きなおして、
弘人「これ、どういうことですか?」
雅彦「そういうことだ。」
弘人「人をバカにするのやめてください。こんなの受け取れるわけないじゃないですか。もう少し僕の事。。僕達の事、わかってくれているのかと思いました。
雅彦「甘いこと言っちゃいけない!。。。いや、すまなかった。。これは手切れ金なんかじゃないんだ。君のお母さんに頼まれた金だ。君のお母さんは、私に無心をしに来た。知らなかったかね。」
弘人「。。まさか。。。」
雅彦「それだけじゃない。。そうだ。これは君からちゃんとお母さんに伝えてもらおう。『写真のデータは破棄してください。』」
弘人「写真。。?」
雅彦「君とうちの娘の写真だ。君のお母さんは、私の娘と君を、売ろうとしたんだ。。。」
驚きのあまり、何もいえなくなり、目を泳がせる弘人。
雅彦「頼む。もうウチには関わらないでくれ。頼む。。」
そういって弘人に頭を下げる雅彦。
弘人は、呆然として何も言えず、表情を暗く落としてただ頭を下げる雅彦を見つめていた。

弘人の帰り際、車に乗った菜緒とすれ違うが、お互い気付かないまま通り過ぎていく。。。

夜、部屋のあかりもつけないまま、強めの酒をグラスに注いで一気に飲み干す弘人。それは1杯にとどまらず、何杯も飲み続けた。
するとそこに亜紀子が帰ってくる。居間で壁に背を預けてもたれかかるようにして酒を飲んでいる弘人を目に「明かりもつけないでなにやってんのぉ?あ、珍しい〜飲んでんの?」と声をかける。
お勝手に向かう亜紀子に目を向けないまま弘人が、目をうつろにして静かに口を開く。
弘人「母ちゃん。。菜緒の親父さんとこにさ、」そのことばにギョッとして驚いたように弘人の方に向き直る亜紀子。
弘人「金借りに行った?」
亜紀子「。。いや。。あ、まぁ。。ちょっと。。」
弘人「もう終わりだよ。。」そういって酒をまた一口飲むと外に出て行く弘人。亜紀子は呼び止めるが弘人は聞かなかった。

船着場。。。
壁に寄りかかって、煙草を取ろうと何気なくポケットに手を入れる弘人。煙草をつかみ出すと、煙草の下の人差し指に何かが触れていた。手のひらから煙草を除けると、弘人が菜緒のために作った指輪が人差し指にかかっていた。。それをギュッと握り締めて、菜緒のマンションを見つめる弘人。が目を向けていられないかの様に、すぐに目線を逸らしうつむく。
するとそれをもったまま、水辺の真上に手を差し出して、涙をこらえるような小さくて短いため息をついて、右の薬指にはめた指輪をそのままに、手のひらをそっと逆さにし、指輪は弘人の指からすり抜けるように落ち、小さく水音を立て、輝きながら海に沈んでいった。

夜、雅彦は、カフェでの話を思い返していた。
弘人「これは、受け取れません。母の事は、謝ります。本当に、すみませんでした。二度とこんなことはさせません。」
雅彦「娘とは、別れてくれるね?」
弘人は何も応えられなかった。。。

その頃、とあるレストランに居た菜緒。誰かを待っているようだった。そこに来たのは斉藤だった。なにがなんだかわからず、斉藤に会釈をする菜緒。

菜緒の家では、雅彦がみつこに菜緒と斉藤を2人で食事をさせていることを話していた。レストランに斉藤を向かわせたのは雅彦の計らいだった。みつこは菜緒を気遣って、雅彦に何を考えているのと訴える。雅彦はみつこを説得するように「斉藤君は勤務態度もいいし、なにより誠実だ。言い青年だなと思って。。」というが、雅彦を責めるような目で見るみつこ。

菜緒は雅彦と食事をするつもりで居たので驚いていたのだった。お互い食事を始めないので、斉藤が「社長は急に仕事が入ったらしいので。。」と言いながら、菜緒に食事を勧める。しかし菜緒は気分が乗らず、「あまり食欲がないので。。」と返す。食事をしないで居る菜緒に店員が近づき、「お口に合いませんでしたでしょうか。」という問いかけに対して、斉藤が「いやそんなことないです。」といい、菜緒の前に出されていた皿を手に取り、「これもいただいちゃおうかな」といいながらがつがつと食べ、笑顔を見せる。菜緒はのどを詰まらせながら食事を続ける斉藤を気遣いつつ、ただぼーっとしながら見ている。

弘人の家。。。
電気を消した部屋で、廉が完成したクジラの中のライトをつけて弘人に見せていた。間に合ってよかったと安心している廉に、弘人は、
弘人「なぁ廉、菜緒姉ちゃんもしかしたらイブこれないかもしれないな。。」
廉「え、どうして??」
弘人「ん?ほら、忙しいかもしれないじゃん。」
廉「忙しいってなんでぇ〜」
弘人「ほら、大学とかさ、家とか。。店とか。。なんかいろいろ。。」
廉「。。お兄ちゃん?」
表情を曇らせていく弘人を心配そうに覗う廉。それを見せまいとして隠すように弘人が立ち上がって、飯の準備が出来たから食うぞと廉に言う。

レストランからの帰り際。。車に乗ろうとする菜緒を呼び止めて、突然斉藤は、緊張しながら菜緒に「あの、僕はもう一度会いたいと思っています!」と告げる。訳のわからない様子の菜緒。「お父様から。。社長から、何も聞いていらっしゃらないんですね。」と言う言葉に驚く菜緒。

菜緒の家。。。
家に帰り着くなり雅彦に問い詰める。
菜緒「お父さん、どういうこと?」
雅彦「どういうことって。。そう堅く考えなくていいんだ。ちょっとぶきっちょだけど、いい青年だろ?」
菜緒「お父さん、奈に考えてるの?」
雅彦「。。お前の結婚だ。現実的なお前の結婚だ。」
菜緒「。。結婚?。。は。。するわけないじゃない!」
雅彦「あの弘人って子と結婚するつもりか?冗談じゃない。お前にそんな潰れそうな工場の嫁が務まるのか?あんな母親とやっていけるのか。息子自信が驚くようなことをする母親だ!息子自信に呆れられるような母親だぞ。」
菜緒「。。お父さん。。弘人に会ったのね?お母さんの事言ったのね?弘人のお母さんがお金借りに来たこと言ったのね!?」
雅彦「お前と息子の写真でゆすったこともな!」
菜緒「なんでそんなひどい事するの!?」
雅彦「本当の事だ!」
菜緒「傷つくわ。。弘人が傷つくわ!」
雅彦「何が傷つくだ!自分の母親のしたことだ、知って当然だ。」
菜緒「ひどい。。あたし、おとなしくしてたじゃない!許してもらおうと思って。。あたし、毎日おとなし」
雅彦「お前、そんなことを思ってたのか!もう一度許すなんて、冗談じゃない!いい加減わかるんだ!!お前のためなんだ!!明日からもう外には出さん!」
菜緒「ひどいわ!子供じゃないのよ!」
雅彦「まだまだ子供だ!」
菜緒「もう二十歳よ!出て行くわ!」
雅彦「出て行きたいんだったら出て行きなさい。」
菜緒「わかったわ。。」
そういうと走って部屋に行って荷造りを始める菜緒。
急いで菜緒の後を追って、荷物を持って出て行こうとする菜緒をとめるみつこ。
みつこ「待って。待って菜緒。行かないで!お父さんのいう事を聞いて?母さん、あなたに幸せで居て欲しいの。。あの日、約束したわよね?お母さんと。お母さん、あなたに一日だけあげたわ。」
菜緒「だから!帰ってきたじゃない!」
みつこ「今、また出て行こうとしてるでしょう!?お母さんを、裏切るの?」
部屋の外の廊下では達也がその様子を聞いていた。
みつこ「小さいときから、あんなに病気で大変な思いをして、もう苦労させたくないわ。」
菜緒「あたしの人生は、あたしのものだわ。あたしの病気もあたしのものだし。」
みつこ「ひどいことを言うのね。。何があなたをそこまでさせたの?あの男の子に恋をしたこと?だとしたら、恋って怖いわね。
その言葉を聞いた後、泣きながら菜緒をとめるみつこの手を振り切って部屋を出て行く。すると廊下には達也が居た。
菜緒「今度はお兄ちゃんなの?」
達也「本当に出て行くのか。お母さんの涙捨てていくのか。そうなのか?」
菜緒「。。。そうよ!」
走ってその場を去る菜緒。
静かに涙を流すみつこ。
今でただ黙ってじっと座っている雅彦。

途方もなく菜緒は歩き、ふと、電話をかけた。
弘人が仕事をしていると電話が鳴り出る。しかし、何度もしもし?と声をかけても、何も話さない。

弘人に電話をかけたのは、工員の棚田だった。
棚田「あ。。弘くん?」
弘人「棚田さん!?」
棚田「弘くん、すまなかったなぁ。。」
弘人「ねぇ!今どこ!?」
棚田「ごめんなぁ。。俺、高校中退して、親父さんに拾ってもらって、お世話になって。。その恩を仇で返すようなことしちまって。。」
弘人「。。棚田さん。。?」
棚田は泣きながら続けた。
棚田「前に親父さんに連れて着てもらった、箱根の旅館に来てるんだけど。。あの頃は弘くんのところもまだ羽振りが良くてなぁ。よく親父さんに連れて来てもらったんだ。。刺身が旨くってなぁ〜。でもだめだぁ。ぜんぜん旨くねぇの。1人で食ったって。。」
弘人「棚田さん。」
棚田「最後に、ちゃんと謝っておこうと思って。。」
弘人「最後って。。。棚田さん!?ちょ、何考えてんの!だめだよそんなの!!」
棚田「すまなかったなぁ〜。。ごめんな。。お上さんにも謝っといて。」
そういって電話は切れてしまった。
廉が外に出ると、そこに着ていたのは菜緒だった。菜緒は廉に「弘人、いる?」と聞くが、既にその時弘人は家を出た後だった。

弘人はまず先に、亜紀子の働く店に向かっていた。亜紀子を見つけるなり息を切らせながら「棚田さん!ほら、昔父ちゃん箱根の方行ってただろ!?社員旅行かなんかでさぁ!箱根行ってたじゃんか!あれ旅館どこ!?」とまくし立てる。訳がわからない様子の亜紀子。

菜緒は、弘人の家から、裕子の家に来ていた。。。
とりあえず飲み物を出す裕子。「もう家には帰らない」と言う菜緒に「。。かけおち、とかかんがえてるの?」と問いかける裕子。
菜緒「あたしは家を捨てる。」
裕子「弘人くんにも、家を捨てさせるつもり?」
菜緒「何?その言い方!」
裕子「だって、そういう方向に行くしかないようなことしてるから。。」
菜緒「じゃあどうしたらいいの!?教えてよ!!。。。。ごめん。」
裕子「。。。こんなことあたしが言うのもなんだけど、。。やっぱり無理なんじゃないかな。。もう諦めた方がいいんじゃないのかな。。」
菜緒「。。。裕子まで。。そんな事言うの?」
裕子「だって。。あたし達、まだ二十歳だよ?誰かまた違う人好きになるかもしれないし。。」
菜緒「そんな風に思うんだったら、最初ッカラ付き合ってないよ!」
裕子「。。。ごめん。。。そうだった。。菜緒はそういう人だった。。。。あ、外冷えたでしょ?暖まって?また風邪ひくと大変だから。。」
そういって裕子はお風呂の用意をしに行く。思いつめたような菜緒。裕子が部屋に戻ってくると、そのとき既に菜緒は裕子の家を出て行っていた。
また途方も泣く歩き続ける菜緒。。。今度こそ、行くところがなくなってしまったのだった。

弘人は、箱根のとある旅館についていた。
館内の受付に、「棚田と言う人が泊まっていないか」と聞き、仲居に案内してもらっていた。

菜緒は、アユタの家を訪ねた。。。
驚くアユタ。
アユタ「どうしたの!?」
菜緒「まいっちゃった。。。行くところ。。ない」

仲居が弘人を案内した旅館に一室。。。
弘人は最悪の事を考えるも勢い良く戸を開けると、棚田は遺書を書いて、薬を手にしたところだった。
弘人の顔を見ると薬を後ろ手に隠そうとし、弘人は棚田の腕を引いて帰ろうというと、棚田は泣き崩れた。それを背中をさすって落ち着かせようとする弘人。。

アユタの部屋に入った途端、テーブルの前でくず折れる菜緒。心配したアユタが椅子に座らせて、大丈夫かと問いかける。その言葉に涙を零し、
菜緒「優しいね、アユタくん。。優しいね。。あたしもう、ホント。。どうしたらいいかわからなくて。。。突然ごめん。。」
するとアユタは優しくさとすように、
アユタ「だから、俺は年中無休だから。。平気だよ?」
そういって、自分の肩にかけていたタオルで菜緒の頬をそっと拭う。アユタの優しさに、少しだけ笑顔を見せる菜緒。それを見たアユタは突然、菜緒を優しく抱きしめた。。

弘人は棚田と共に、バスで横浜へ戻ろうとしていた。。。
今回、モノローグシーンの映像と言葉とが複雑に重なるため、モノローグは全て【】で表させていただきました。モノローグ中であっても、【】でくくられていない部分はその場面の説明になりますので、読みにくいかとは存じますが、ご容赦ください。。



☆★第9話★☆


続きは奈緒がアユタに抱きしめられているところから。。。
ふと我に返って誤りながら奈緒を離し、奈緒を気遣って「友達のところに行くから」と、そそくさと家を出ようとするアユタ。奈緒は引きとめようとするが、アユタは足早に部屋を出て行った。
外から部屋を見つめるアユタ。寒さに震えながら街の中を歩いていく。翌朝、アユタの部屋でそのまま寝ずにいた奈緒。すると奈緒のケータイにアユタから着信が入る。アユタは外にいた。
アユタ「俺から弘人に話つけといたから。3時半に横浜港に行って。」
ということだった。

弘人の家。。。
2時45分。。何気なく時計を気にしている弘人。廉の部屋では廉と亜紀子が寄り添って眠っている。それをただ見つめる弘人。
弘人が自分の部屋で、出かける支度をしつつ物思いにふけっていると、廉が起きてきて弘人に声をかける。すると弘人はおもむろに、
「廉は母ちゃんのこと、好きか? さっき仲良く寝てたじゃん。」
と問いかける。廉は、
「ただ眠かったから一緒に寝てただけだよ!。。。でも好きだよ!お母ちゃん、だって、今はあんなだけど、本当はきれいだし、優しいし、自慢のお母ちゃんだよ。」
と答える。
「そっか。。」と言って、廉を優しく抱きしめる弘人。

横浜港。。。
弘人を待つ奈緒。そこに弘人が来て奈緒を見つける。大きな荷物を持っている奈緒を見て、何かを察する弘人。ネックレスにした父親の指輪に確かめるように触れると、決心したように奈緒の下へ行く。弘人が声をかけると、
「家、出てきた。。出てきたの。」
と告げる奈緒。何も言わないまま奈緒を見つめる弘人。
二人はフェリーに乗った。
静かに話し始める。。。
弘人「何考えてるの?」
奈緒「家、捨ててきた。。。あたしは、あなたが大事よ?何よりも、誰よりも。何に変えても、全てを捨てても弘人が必要なの。あたしにとって弘人が一番大事よ?」
奈緒の荷物を持ってデッキに上がる弘人。なおもその後を追う。荷物を置くと、
弘人「どうするつもり?」
奈緒「一緒にいるわ。。。。一緒にいたい。。ずっと。」
弘人「じゃあこのまま、ふたりでどっかに行くってこと?」
うなずく奈緒。
弘人「ねえ、三日後考えてみ?どこ行くのかもしんねぇ。じゃあ例えば地方行くとすんじゃん。小さいアパートにさ、二人で一緒に暮らすとすんじゃん。でも三日後、窓の外見ながらきっと泣くよ。。お母さんの事思って泣くよ。お兄さんの事思っ泣く。。お父さんの事思って、泣くよ。。奈緒は泣くだろ?俺にはさ、そんな奈緒、どうすることもできないんだよ。。」
奈緒「大人だね。。冷静だね。。」
弘人「大人になれよ。。冷静になれよ。。」
奈緒「あたしの事、好きじゃないの?」
弘人「それ本気で言ってる?。。中学生かよ。。」
奈緒「だって。。不安なの。。不安なのよ!あたしはあなたみたいにいっぱい恋してない。。。」
弘人「今それずるくない?」
奈緒「今よ!今一緒にいたいの!今一緒にいなきゃダメんなっちゃう!」
弘人「信じろよ!」
奈緒「あたしのために何かを捨ててよ!あなたの大切なもの、一つ捨てるくらいあたしにしてよ!」
弘人「。。。。。。。俺は捨てれない。。捨てれない。弟も、母親も、捨てられない。親父亡くしてさ、俺までいなくなるわけいかねぇんだ。。」
諭すように言いながら奈緒を見つめる弘人を、涙を浮かべながら見つめる奈緒。そこに奈緒のケータイにみつこから着信が入る。
「誰?」
弘人に、戸惑うように
「お母さん。。」
と答える奈緒。奈緒のケータイを見る弘人。ため息をつくと奈緒はケータイに出る。
奈緒が出ると、みつこが呼びかけた。奈緒の体を心配するみつこ。奈緒は電話の音からみつこが今外にいることに気づき、問いかけると、雅彦があんまりわからずやなのでケンカになってしまったと言って笑うみつこ。みつこは、優しく奈緒に、「帰ってらっしゃいね。お母さん、待ってるわ。」と声をかけて電話を切る。
目に涙をためてケータイを握り締める奈緒に、ハンカチを手渡す弘人。それを受け取って涙をぬぐう奈緒は、
「ほんとに中学生みたい。。。」
といって泣きながら自嘲する。そんな奈緒を見つめて、隣に寄りかかりながら前に向き直ると、
弘人「俺達はさ、それぞれの場所に、帰るんだ。。」
その言葉を聴いて、涙をぬぐう手を止めて恐る恐る弘人のほうを向く奈緒。声を震わせながら、
奈緒「それって。。。さよならする。。ってこと?」
そのうちついに涙声になってしまい、
奈緒「。。だよね?」
と問う。
弘人もまた泣くのをこらえて震えるような声で、
弘人「あぁ。。」
と答える。静かに嗚咽を漏らしながら泣く奈緒。。。
既に日は暮れかけて、夕方になり、奈緒が泣き止んでたわいもない話をするころ、船は夜景の中にあった。

奈緒「くじら、見に行きたかったなぁ。。一緒に。。いないかなぁ?いるわけないかっ」
といいながら海を見つめる奈緒に、小さく笑う弘人。
奈緒「なんで笑うの?」
弘人「いやなんか、かわいいなぁと思ってさ。」
奈緒「。。。もぅいいよ。。そんなこと。。もう言わなくていいよ。。。。」
そういって笑いながら涙を流す奈緒。
弘人「。。いいてぇよ。。一生分いいてぇよ。。」
奈緒「。。ばかぁ。。」
弘人「泣くなよ。。」
少しあわてたように言う弘人。その言葉を聴いてよりいっそう声を上げて泣いてしまう奈緒。
弘人「切なくなんじゃんかよ。。こっちだって泣きてぇんだから。。」
小さく声を震わせながらそうつぶやく弘人の頬を、涙が伝う。一息ついて涙を落ち着かせた奈緒が、弘人に小さく微笑む。
するとアナウンスが入り、船があと15分で横浜港に着くことを知らせる。
奈緒「あと15分。。手、つないでてもいい?」
弘人「。。。いいよ?」
奈緒が手を差し出すと、弘人が手を重ね手をつなぐが、再度指を絡ませて繋ぎなおす。
弘人「ねぇ、一つだけさ、お願い事してもいい?」
奈緒「なに?」
弘人「奈緒さ、骨髄移植して、5年でもう大丈夫なんだよな?」
奈緒「。。うん。」
弘人「今もう、3年目だったっけ?」
奈緒「うん。。」
弘人「奈緒がちゃんと元気で、生きてるかどうかさ、やっぱ心配だからさ、3年だけ、クリスマスイブとかにさ、あのベランダからさ、俺に、あのオレンジのイガイガ振ってくんないかなぁ。」
奈緒「振ったら、振り替えしてくれる?」
弘人「。。うん。」
奈緒「わかった。。。。。あたし、弘人の手ぇ好き。。あったかくて、いつも、握り締めてほしいときは、ギュッてしてくれて。。」
そういいながらまた目を潤ませてしまう奈緒。
奈緒「それがすごぃ好きだった。。」
モノローグ。。。
弘人【僕達は、長い長い残りの人生の、その中の、15分間だけ手を繋ぐ。。。こうして、僕の二十歳の恋は、終わったんだ。。今も鮮やかによみがえる、恋。あの船の上で、本当は僕は、こう言えばよかったんだ。。『時間をかけて、整えようよ。お互いの立場を。。奈緒だって、大学を卒業して、僕だって、工場を軌道に乗せて。。そしたら、僕達を取り巻く状況も、変わってくるかもしれないだろ。。』】
モノローグの途中。。。
工場に戻ってきた棚田。水上や亜紀子に頭を下げる。その棚田に、水上は笑顔で頷き、亜紀子はぶっきらぼうながらも「もういいよ。。」と声をかけた。
工場で仕事を続ける弘人。。休憩中、奈緒のマンションを眺めながら。。
【だけど、あの時あの船の上で、あの強い瞳の前で僕は黙った。。気の瞳は、僕に時間の猶予なんて許さなかった。。】
また前までのように、アユタと甲と共に、夜中に釣りに出かける弘人。
【もうここで答えてもらわないと、この気持ちは死んじゃう!という勢いだった。。。】

釣りをしている途中。。。
アユタ「。。なんで?」
弘人「なんでって?」
アユタ「なんで別れたんだよ。。なんで諦めたんだよ!」
そういってアユタは釣竿を地面に投げつける。
弘人「んな、仕方ねぇじゃん。つかお前も前にやめとけとか言ってたよな?」
弘人の胸倉を掴むアユタ。
アユタ「俺は決心したんだよ。。応援するって。。なのになんだよ、仕方ねぇじゃねぇよ!!お前はそうやって自分を追い詰めるなよ。。自分ばっか大人ぶりやがって。。そんなんじゃなかったじゃねぇかよっ。。子供の頃はそんなんじゃなかったじゃねぇかよ!」
そういって掴んでいた手を、弘人を突き飛ばすように離す。
弘人「つかおめぇうるせぇよ。。甲、ここ片付けといて。。」
といってその場を去ろうとする弘人。それをアユタが弘人の肩を掴んで引き戻し、
アユタ「おい、ちょっと待てよ!奈緒ちゃんあんなにお前の事好きだったのにひでぇじゃねぇかよ!」
それでも去ろうとする弘人。また引き止めるアユタ。
アユタ「自分に自身持てよ。自分の人生生きろよ!犠牲になるなよ!!頼むよ!!」
弘人の前にたって両手で肩を掴んで、揺さぶりながら訴えるアユタ。弘人はその手を払い落として、
弘人「何そんなアツくなってんの?。。ハッ。。つかおめぇ奈緒の事好きだったんじゃねぇの?」
嘲笑うようにそういい残して去っていく弘人。呆然と立ち尽くすアユタ。だがすぐに弘人のほうに向き直って後から追いかけ、弘人の背中に思い切り飛び蹴りをする。地面に倒れこむ弘人。
アユタ「おい、早く立てよ。」
とすごむアユタに、弘人は起き上がってアユタに掴みかかり、
弘人「てめぇみてぇにお気楽に生きてるヤツに俺の気持ちがわかるわけねぇじゃんかよ!!なぁ!?」
そういってアユタを殴りつける。
モノローグ
【アユタが奈緒を好きだったことには、まるでいづいていなくて、こういっちゃなんだけど。。笑った。】
殴り合って転ぶ相手にのっかって抜け出させないようにしたり、口の端から地を流して倒れこんだり、めちゃくちゃになっていた。そんな二人をただ傍観してあきれたように首を振っている甲。
【そのときの俺らのケンカは3年ぶりぐらいのケンカで、なかなか激しかった。。けど、俺らのケンカは子供の頃から、三日と持たない。。あのケンカも、今となってはいい思い出だ。。】【そういえば、釣りに行かなくなったなぁ。。。】
疲れて笑いながら倒れこんだ二人の間に笑顔で寝転んで、「終わった?♪」を声をかける甲。
【そういえば、釣りに行かなくなったなぁ。。。】

【とうとう僕らは、借金で回らなくなった工場を、手放すことにした。決めてしまうと、それはいい決断のように思えた。父親の残した工場を守ることが、自分の務めと思ってたけど、僕が一番に守らなければならないのは、弟と、母親だ。】
明渡書を書き、工場の看板を外す弘人。看板のなくなった壁を見つめる弘人。
【母は水商売をやめ、廉の体調も安定し、中学への進学を決めた。】
みつことともに家の中などの荷造りをする弘人。
【オレンジの。。あのオレンジのイガイガは、クリスマスイブに2年ほど光った。俺ももちろん、懐中電灯を振った。横浜中を照らす勢いで。。3年目、オレンジは光らなかった。僕は、光を見つけることができなかった。真っ暗だった。。僕の心も真っ暗になった。。僕は、彼女が死んだとは思えず、僕を忘れたんだ、と思った。。なぜか、何の迷いもなく、そう確信した。死んだのは、彼女ではなく、彼女の心の中の、僕だ。。】
引越しのトラックを運転しながら、奈緒とフェリーの上で話したときのことを思いだす弘人。
【君を連れて逃げる。。なんてこともできたのかもしれない。。でも、できなかった。。所詮、二十歳だった。。僕達は、優しすぎて、幼すぎて、どうしようもなく、二十歳だった。。。】


港のガードに腰掛けて、煙草に火をつける弘人。。。
その姿は、髪型を変え、色も黒くし、スーツに身を包んでいた。
【こうして僕の、二十歳の恋は終わっていった。。それにしても、あの頃。。。ねぇ、僕は、君をちゃんと愛せてたかなぁ。。】
そこにアユタがくる。久しぶりに再会して、笑顔でハイタッチを交わす弘人とアユタ。アユタもまたスーツを身に纏い、髪型も変わり、落ち着いた様そうとなっていた。
アユタが弘人の姿を見て、「お前それ笑えるぅ〜」と言うと弘人もまた「お互い様じゃんかよ」と返し、笑いあう。

教会。。。
弘人とアユタは、甲の結婚式に来ていた。
神父に向かって花嫁(森田美香。。?)と並び、誓いの言葉を述べる甲。
式の後、甲が挨拶周りをしていると、弘人とアユタを見つけ、「構えなくてゴメン」と言いながら、話をする。
「仕事忙しいんじゃねぇの?」と二人を気遣う甲に、
「まぁ今は、雇われの身だし、今は楽。」という弘人と、「もうすぐ、4年目だろ。主任よ♪」と自慢げに言うアユタ。「うそ!車売れてんの?」と聞く甲に、「売れてねぇ!」と笑いながら返し、笑いあう3人。

式が終わり、港の見えるレストランで食事をする3人。甲の結婚を祝って軽く祝杯を挙げる。
ビールで乾杯し、「やっぱ男同士で飲む酒はうまいね〜!」という甲に、アユタが「実は、もう一人来るんだ」と告げる。
アユタ「どうしても、お前におめでとうって言いたいってさ。」
甲「。。。え、誰?」
アユタ「裕子ちゃん。」
甲「ハァァァァァァァ!?!?リァリィ??は??なんで??」
アユタ「お前知らせたろ。結婚するって。」
甲「いや、だって、何も言わないのは水くさいべ?だから一応はがきは送ったけど〜。。。」
アユタ「。。だから、ここ教えといた。」
甲「。。そか。。緊張すんね!」
明らかに緊張しているような戸惑った様子の甲。
その様子を見ていた弘人が話し出し、
弘人「。。なんか、いい関係なんだな。」
甲「え?」
弘人「別れてもさ、別れても、いい関係なんだなぁって、思って。。」
甲「まぁ、いや、別に喧嘩別れじゃねぇし?お前が。。お前が奈緒ちゃんと別れてから。。俺らもこう、疎遠、みたいになって。。ま、自然消滅っつうか。。向こうも、大学卒業してから神戸行っちゃったし。までもこう連絡とかは取り合ってて、近況報告とかし合ってたんだけど。。家継いで、医者になるからっつって、医学部はいりなおすっつった時はビックリしたけどね〜。でまぁそうやって相談乗ってて、友達みたいになって。。なんかそんなこともあんだなぁと思ってさ。」
アユタ「弘人は?。。弘人は。。奈緒ちゃんと。。?」
甲「こぉいつは無理だよだってそんな器用じゃねぇべ〜?」
その言葉に弘人自身小さく頷きながらも、話をそらすようにして、店員に煙草を頼むが、この店には置いていないとアユタに知らされ、外に買いに行くからと、そそくさとその場を後にする。

煙草を買い、港で一服している弘人。。。
何気なくガードに寄りかかっていると、そこへブーツの足音が聞こえる。見るとそれあ、何冊かのパンフレットを手にして、あたりを見回している奈緒だった。
思わず固まる弘人。
しばらく見ていると、奈緒の下に男が駆け寄ってきた。それは斉藤だった。驚き呆然としながら、親しげに寄り添い歩いていく二人の姿を見つめる弘人。
すると、その視線に奈緒が気づき、弘人を見つけて驚く。

レストラン。。。
裕子がレストランに着き、甲たちを探していると、アユタがそれに気づき、手を振って呼びかける。甲も振り返って見るが、驚きと緊張のあまり椅子から転げ落ちてしまう。それを見て微笑む裕子。
花束を持って甲達のもとへ歩み寄り、おめでとうと声をかける。

港。。。
斉藤が奈緒を急かそうとするが、奈緒の目線の先に人がいるのに気づき、奈緒の知り合いだろうと気を使って、先に車を回してくるといって去っていく。弘人の下に歩み寄る奈緒。
吸っていた煙草を携帯灰皿に押し付けて捨てる弘人。
奈緒「びっくりした。。」
弘人「結婚式、だったんだ。。」
奈緒「え?」
弘人「あ、甲の。」
奈緒「あぁ。。」
弘人「今裕子ちゃんも来るって。あ、そこのレストランにいるんだけどさ。。。」
目線で「行く?」と問いかける弘人。
奈緒「あたしは、ちょっと。。」
弘人「。。だよな。。」
奈緒「うん。。明日裕子には会うの。」
弘人「あそう。。」
そういって何気なく視線を落とした先には、奈緒の左手の薬指にはめられたダイヤの指輪があった。
奈緒がおもわず手を隠そうとすると、誤って手に持っていたパンフレットを落としてしまう。そのパンフレットの表紙にはウェディングドレスが載っていた。あわててそれらを拾い上げる奈緒。
弘人「。。。。。結婚すんの?」
奈緒「うん。。まだわかんないけど。。今、いろいろ見てる。。」
弘人「。。。そう。。」
表情を落として小さく頷くが、慌てたように、
弘人「あ、お、俺アユタたち待ってるからさ、行くわ。。。」
そういって、その場を去ろうとするが、すぐに立ち止まって、
弘人「あ、みんなに、よろしく言っとくね。」
奈緒「あ。。。」
奈緒がわずかに呼び止めようとするが、そのままソコを離れていく弘人。
【俺は今、世界一カッコ悪りぃぞ。。】

その後4人は飲みに行った。
珍しく泥酔し酔いつぶれる弘人。
【正体なく飲んで、頭が痛くて、吐いた。。神様。。いくつになったら、人は大人になれるんだ?教えてくれ。。いくつになったら。。俺は、何かに傷ついたり、ヘコんだり、あがいたりしなくなるんだ?】

翌日、カフェでお茶をしている奈緒と裕子。
奈緒「二度と会うことないと思ったのになぁ。。」
裕子「本当に結婚してくんだね。」
奈緒「うん。。まぁおばあちゃんのこととかあるしね、元気なうちに?」
裕子「うん。。」
奈緒「あ、ねぇ、あの後、弘人と一緒だったんだよね?」
裕子「気に、なる?」
奈緒「いやぁ。。」
すると裕子は小さく微笑んで、
裕子「今はね、あの工場たたんで、一年位前に、磯子のほうに引っ越したんだって。」
奈緒「工場、やめたの?」
裕子「うん。あの工場って借地だったから、人件費と家賃?じゃないけど、借地代とコストかかって。。」
奈緒「大体、知ってたけど。。」
裕子「今、お母さんは水商売やめて、デパ地下のお惣菜売り場。弘人くんは、大手の造船所に採用してもらえたんだって。」
奈緒「そう。」
裕子「あ、廉くんっていたでしょ?あの喘息だった。」
奈緒「うん!」
裕子「中学上がって、野球やってるんだって。」
奈緒「え、じゃあよくなったんだ!」
裕子「うん。」
奈緒「あぁ〜そっかぁ〜」
うれしそうに笑顔する奈緒に
裕子「自分の家族みたいね。」
奈緒「え?」
裕子「自分の家族みたいに、心配して、喜んで。」
奈緒「だって。。」
裕子「。。なおも再発5年間なくって、もうすっかり大丈夫よって、弘人君に伝えたよ?」
奈緒「。。そう。。。そっかぁ〜。。あの工場、もうないんだぁ。。」
裕子「なんか、来年の春には、新しいマンションが建つらしいよ?」
奈緒「マンション?」
裕子「うん、工場の機械とか、まだ置いたままになってて、処分するの、忍びないって言ってた。。」
奈緒「そう。。。」
裕子「ねぇ。。。弘人くん、荒れてたよ?奈緒が結婚するかもしれないて聞いて。」
奈緒「もう。。そんな。。仕方ないよ。。」

市内の中学校。。。
教師となって英語を教える奈緒。。

バス停。。
斉藤の両親が降りてきて、笑顔で迎える斉藤。

夜、奈緒のケータイに斉藤から電話がかかってくる。
斉藤「斉藤です。。あ、明日の食事会の件、聞きましたか?」
奈緒「。。はい。」
斉藤「あの。。いいでしょうか?」
奈緒「はい。」
斉藤「ほんとに。。いいでしょうか?」
奈緒「あはは。。なんで?」
斉藤「あ、いぇ。。」
奈緒「おかしいよ。。斉藤さん、あたし達もう付き合ってずい分経つのに、他人行儀。」
斉藤「こうしか、しゃべれなくて。。すみません。。」
奈緒「ふふ。。謝らないでください。」
斉藤「あぁ、親父もお袋も、楽しみにしてますから。明日、よろしくお願いします。」
そういって電話は切れた。

奈緒の家のリビングでは、みつこが雅彦と達也に食事会に着て行く服を合わせて見せながら、これでいいかと楽しそうに問いかけている。あまり見もしないで答える雅彦に文句を言うみつこ。達也に問いかければ、ちょっと若すぎない?といわれる始末。

奈緒の部屋。。。
クローゼットを開けて中の服を見ながら選ぶ奈緒。クローゼットの中を探っていると、何かの箱を見つけて取り出す。
あけて見るとそこには、オレンジのイガイガや、奈緒が編んだ手袋。ハロウィンで弘人が奈緒にあげた飴などが入っていた。。
おもむろにイガイガを手にとって光らせる奈緒。思い立ったようにベランダへ出て、弘人は引っ越して、振っても反応はないだろうとは思いつつも、工場の方へ向けてイガイガを光らせる。すると、驚いたような顔になる奈緒。工場のほうを見ると、懐中電灯の灯りがわずかに揺れているのが見えた。もう一度振り替えしてみると、今度は反応がない。奈緒は絶えず振り続けて見た。するとまた、工場の中から懐中電灯の灯りが揺れた。急いで部屋に戻った奈緒は、すぐにそばにあったコートとバックを持って、家を飛び出し、工場へ向かった。

横浜の街中を懸命に走る奈緒。そのときの奈緒の脳裏には、弘人との出逢い、中華街の帰りに横断歩道で弘人に呼び止められた時、交流パーティーで二人してプールに落ちた時の事が甦っていた。。
工場に着くと、入り口の鍵が開けられていた。中に入ってあたりを見回す奈緒。しかしそこには、ビニールシートやブルーシートをかけられた機材が並ぶだけで、弘人の姿は見えなかった。
さらに奈緒は階段を上がり、家の中に入ってみた。
懐かしむ奈緒。壁の落書きに触れたり、弘人の部屋だった場所にいると、遠くから、スパナの落ちる音がした。
物音に気づいた奈緒は、急いで部屋を出て、また工場の方へも戻ってみた。すると奈緒の後ろの階段から降りてくる人影と、懐中電灯の灯り。。。弘人がいた。
弘人は、何気なく自分の前に人の気配を感じ、懐中電灯で照らすと、そこには奈緒がいた。二人とも驚いた様子で、
弘人「なにしてんの?」
奈緒「そっちこそ。。なんでいるの?」
弘人「機械売れたから。。整備してた。。」
呆然と立ち尽くすも、じっとお互いを見つめあう二人。。。
大変遅くなってしまぃ申し訳ぁりませωでした(。→ˇ艸←)
長文をアップできる時間がなかなかなかったもので,送れてしまぃました(´;ω;`)
今回は最終回ということで、少し趣向を変えてアップしたのですが、わずかな変化にお気づきいただけるでしょうかヽ(。´口`)ノ
こんなところが違うのでは?と感じてくださったら、管理人様が立ててくださった“ありがとうトピ”に書き込んでいただけると嬉しいです(。→∀←。)



★☆最終回☆★


菜緒が工場に来て,偶然弘人と再会したところから。。。


言葉につまり,ぎこちないながらも話し出す2人。。。
弘人「そっちこそ何しに来たの?」
菜緒「弘人に,会いに。。。」
そう言う菜緒に戸惑う弘人。
菜緒が結婚を控えていることを知っている弘人は,菜緒を諭すようにそれを否定した。挙式の予定を聞く弘人。しかし予定はまだ決まっておらず,それでも今年中には。。と答える菜緒。
弘人「。。。幸せになれよ。」
どこか自分自身を抑えるようにも聞こえる弘人の言葉。。。それを聞いた菜緒は何も言えずに,眉根を寄せてわずかに俯いた。それを見て小さく笑う弘人。
弘人「お前ホントにずるいな。。会いに来たりするなよ。。最後の最後に。。そうやって人の気持ちもう一回かき回すようなことすんなよ。。。」
そういって,座り込んで俯く弘人。。しかし振り切るようにまた顔を上げて,
弘人「だいじょぶ。菜緒だったら,どこに行っても幸せんなれるよ。。大丈夫。。がんばれよ。」
そう言って頷く弘人。しかし菜緒はそれを弘人にそのまま問い返す。
菜緒「弘人は?。。大丈夫なの?」
そう聞かれて言葉を失ってしまう弘人。。あせるように立ち上がると,
弘人「俺は。。。別に何も変わんないしさっ。これからも,いままで通りやってくよ。」
そう言いながら菜緒の横を通り過ぎ,船着場の方へ行く弘人。
弘人のほうに振り返って,
菜緒「あたしの心配は要らないのっ?」
あたりに落ちていたスパナを拾い上げて,何気なく持ちながら菜緒に歩み寄り,
弘人「あんたさ。。結婚すんだろ?。。はっ。。そんな,余所の男心配してどうすんの?」
菜緒「。。そっか。。。。わかった。」
そう言って小さく笑う菜緒。
帰ろうとする時,何かを言いかけた菜緒に,
弘人「ごめんとか言うなよ?。。ごめんは,言うなよ?」
と制止した弘人。
菜緒「なんで?」
と菜緒は笑って問いかけるが,それはまさに菜緒が弘人にかけようとしていた言葉だった。
菜緒「ちょっといいそうだったけど。。」
弘人「ほら。。」
少し得意げに言ったような弘人に,菜緒は小さく笑った。
菜緒「困るね。。こういうとこで笑っちゃって楽しくなるの。。違うよね。。」
そういって笑う菜緒。
だが弘人の表情は曇ったままだった。。
弘人「菜緒。。俺,別に楽しくねぇよ。。必死こいて,こうやって自分作ってんだ。。」
何もいえなくなり,弘人を見つめる菜緒。。
弘人「だからカッコ悪くなる前にさ。。行けよ。」
頷く菜緒。。
菜緒「。。。好きだったよ。。」
弘人「。。。知ってる。。」
菜緒「何よそれ。。。」
そういって笑うと,惜しみながらもその場を後にする。。
振り返った時,そこに弘人の姿はもうなかった。。。

翌日。。。
横浜の景色が一望できる場所での,月岡家と斉藤家の会食。。
両家の親の間で話が盛り上がる中,作り笑顔を浮かべ,なかなか気の乗らない菜緒。
それを気遣うように見つめるみつこ。
途中,斉藤が手洗にたち,そこから出ると,みつこがそれを待っていた。みつこは斉藤に,今度改めて話がしたいと頼んだ。。

菜緒の勤める中学校。。。
英語の授業をしている菜緒。。。
授業中,後ろの席でおしゃべりをしている生徒達に気づいた菜緒は,授業を進めながら黒板の桟に置かれたチョークを持ち,生徒に向かって投げる。
すると話をしていた生徒の後ろの生徒に当たってしまい,あわてて駆け寄る菜緒。
菜緒「ごめん!本当に当たると思わなかった!」
話をしていた生徒は「俺当たってないっすよ♫」とふざけて,他の生徒に「お前じゃないだろっ」と突っ込まれ,みなが笑いあう。
授業後,職員室で校長から,転任の話を持ちかけられる菜緒。
校長の友人が,北海道で養護学校をやっているので,かねてから養護学校に行きたいという希望のあった菜緒への厚意だった。
しかし,菜緒はそれを断った。迷いはあったものの,やはり斉藤との結婚を考え,北海道に行くことはできないと言ったのだった。

工場で働く弘人。。
大勢の工員が働く中,工場長の花田の目に,少しふらつきながら重機材を運ぶ一人の工員が入った。気にかけるも,楽勝だと言って張り切る工員。
しかし狭い通路を通ったとき,機材の端が配線に引っかかり,建物の上につながっていた配線は,上に置かれていたパイプ管を引きずり,そのパイプ管やそれに押された箱やドラム缶などが,工員の上に落ちてこようとしていた。
その時偶然,工員の後ろで配線を運んでいた弘人は,危険に気づきかけよって工員を庇った。
落ちた機材は弘人たちの真横に落ち,二人は無事だった。しかし工員はその場を目撃した花田に責められ,工場を辞めろといわれるが,誰も怪我はなかったのだからと,工員を庇った弘人。

その夜,みつこから話を聞いていた斉藤。。。
全てを聞いた後一言,
斉藤「わかりました。。」
と頷く。
気遣うみつこに
斉藤「いえ、僕もちょっと気になってたんです。お話が聞けて,よかったです。。」
と,まっすぐにみつこを見る斉藤。

工場。。。
他の社員は皆,仕事を終えて飲みにでたが,一人残って仕事を続けている弘人。。。
花田がそれをみて,弘人の下に歩み寄りねぎらう。
あまり根つめずに,今日は帰れという花田だが,弘人はもう少しだけといって,帰ろうとしない。
なぜそんなにがんばるのかと花だが問いかけると,
弘人「弟。。弟をちょっと,大学まで行かせてやりたいなぁと思って。。」
そういって頷きながら,尚も仕事を続ける弘人。
花田「あぁ、野球やってる弟かぁ。」
弘人「はい。あ!こないだ関東大会出たんすよその弟が。ピチャーで。けっこうスゴかったんすよ。」
そういって嬉しそうに答える弘人。
花田「お前の嬉しそうな顔は,いつもあれだなぁ。人のことばっかり。。もっと自分のことで,楽しめ!」
しかしそれを聞きながらも弘人は,戸惑うような表情を浮かべる。
弘人「なんか,よくわかんないんすよね。。自分のためって。。。今までそういう風に,生きてこなかったんで。。」
そういって小さく笑いながら,また仕事を続ける弘人。。

デパートの惣菜売り場。。。
笑顔で客の呼び込みをしながら売り場に立っている亜紀子。。。
すると,突然開きこの表情が止まった。目線の先には,こちらに気づかず買い物をしているみつこがいた。
思わず売り場を出て,後からみつこに声をかける亜紀子。
弘人の母親だとは知らずに、「もしかして、月岡さんじゃありません?元町のスタージュエリーの。。」と声をかけてきた店員に笑顔で答えるみつこ。言葉を失いかけるが、焦ってしまうのを「前に雑誌でお見かけしたもので思わず。。すいません。。」と言ってそれを隠す。「いえ。。」と笑顔で会釈してその場を後にするみつこ。
去っていくみつこの後姿に、亜紀子は必死で,深々と頭を下げた。。

夜、弘人の家。。。
食卓に買ってきたものを並べる亜紀子と、3枚の皿を用意する弘人。
弘人「あ。。廉いないんだった。。あいつ合宿いつまで?」
亜紀子「。。。え?」
弘人「廉。。。」
亜紀子「。。あぁ。。あさってまでだよ,ほら。。。」
そう言ってカレンダーを指差す亜紀子。
ボーっとしている亜紀子を気にかける弘人。しかし何を言うわけでもなく、言葉を濁してため息をつく亜紀子。。

一方、菜緒と斉藤の挙式の準備は着実に進んでいた。
その日は、菜緒のウェディングドレスの試着をしていた。
菜緒の試着が終わるのを待ち、さまざまなドレスが並ぶ中を,俯きながらゆっくりと歩いている斉藤。
するとスタッフが新郎を呼びに来る。スタッフに案内されるまま向かうと,ドレスに身を包んだ菜緒がいた。
小さく微笑む菜緒に,複雑そうな表情をしながらも微笑み返す斉藤。

斉藤「あのドレス。。。足りなかったなぁ〜。。。」
空を見上げながらそうつぶやく斉藤。。
二人は外に出て、道脇に腰掛けていた。
斉藤「似合ってたけど、なんか。。足りないと思いました。」
そういう斉藤に、「シンプルすぎるんでしょうか。。」と答える菜緒だったが、
斉藤「違います。。足りないのは。。菜緒さんの、笑顔です。」
戸惑う菜緒。。
斉藤「これから、僕が言うこと間違ってたら、言ってくださいね?」
そういって、斉藤は話し始める。。。
斉藤「僕らは元々、社長に。。あなたのお父さんに引き合わされた。僕だったら、お父さんは。。いや、お父さんもお母さんもお兄さんも、安心する。どうやら悪い人でもなさそうだし、仕事もちゃんとする。浮気は?。。しそうもない。違いますか?」
まっすぐに菜緒を見つめ、問いかける。
思わず目を泳がせる菜緒。
菜緒「ちょっと。。そう思ったところも。。。」
自分の薬指にある指輪を見つめながら、下を向く。
その雰囲気を断ち切るように、ポンとてを叩いてまた花塩続ける斉藤。。
斉藤「。。じゃあ!。。僕も本当のこと言います。。菜緒さんは、めちゃめちゃかわいい。常識もあるし、どこに出しても恥ずかしくない。それに、社長の、娘さんです。。」
それまでまっすぐに菜緒を見つめて話をしていたが、少し落ち着きなく、両手で膝をつかむ。。
斉藤「。。将来。。おいは会社の中で、よかポストもらえるのかもしれない。いや、継げるのかもしれない。おいだって人間じゃて、最初はそんな打算も、ありました。」
そこまで言ってのけると、決心したように握り締めていた手を解いて軽く膝を叩き、立ち上がって数歩前に出る。菜緒に背を向けたまま、言いづらそうに両手を組んでは離したりしている。。
斉藤「。。ただ。。一つだけ、僕は、菜緒さんと違ったんです。」
振り返ってまたまっすぐに菜緒を見つめて、
斉藤「僕は、あなたのこと、本当に好きになったんです。。本当に好きになったからこそ、あなたの気持ちが僕にないのが、わかるんです。付き合いはじめに、言いましたよね?。。ゆっくりでいいです。。ゆっくり好きになってもらえればいいからって。。。祈るような、気持ちでした。。」
そういって斉藤は笑った。。
菜緒はその場からそっと立ち上がり、少し震えた声で話した。
菜緒「斉藤さんが。。あんまりに真っ直ぐだったんで。。真っ直ぐ、私に来てくれたんで。。私は、いつかの自分を見ているような気がして。。」
その時、斉藤は、全てを理解したように頷いた。
そして、決心して笑顔を作った。
斉藤「。。止めましょう!結婚は。」
驚いて、呆然と立ち尽くす菜緒。
斉藤「社長には、僕から話します。」
しかし自分が斉藤にしてしまったことと、斉藤の気持ちへの自分の心の呵責が菜緒の表情を曇らせていった。。
斉藤の言葉に言葉を返そうとする菜緒に、
斉藤「。。おいに、まかせっくれよ!最後くらい、カッコつけさして下さい。」
そういって笑ってみせ、あえてあっさりと別れを告げて、足早に去っていく斉藤。。菜緒はしばらく、その後を見つめていた。。。

「WISEが6500、CRPは9.5にて、感染性胃腸炎の。。。」
大学の授業で,病院内の一室で教授や医師の言葉を書き取りながら、他の学生とともに勉強をしている裕子。
ふと、「感染性胃腸炎の原因を知っているか」と問われ、「ウイルス性感染や病原性大腸菌などの細菌性によるものがあります。」と見事に答え、二年生ながらにしてのその優秀さをほめられる。
嬉しそうに一礼した裕子。さらに授業は続く中、裕子の携帯に着信が入る。菜緒からだった。。
授業が終わり、病院内から出て菜緒に電話をかけなおす裕子。
菜緒は裕子に、北海道の養護学校に行ってみようと思うと伝えたのだった。。

中学校の校長室から、驚いたような声が響く。。
菜緒は改めて、校長に養護学校への赴任の話を申し込んでいた。

リビングのテーブルについて、俯いている雅彦。
みつこ「前々から考えていたみたいですよ。」
キッチンからみつこが声をかけた。
みつこ「就職した頃から、家を出て、一人でやってみたいって。」
そういいながら笑顔でお茶を注ぐ。
みつこ「あの子は、自分の将来の図面を引いてたんですよ。独り立ちしようって。。あなた知らないでしょう?家にもお金を入れて、それで貯金もしてたのよ?あの子。」
トレーにお茶をのせて、雅彦へ差し出す。
雅彦「しかし切ないな、お母さん。お金を出せなくなったら、一体私はしたらいいんだ?娘に。。」
みつこ「弱気ですねぇ〜いつになく。体が弱くて、ちょっと時間がかかったけど、やっと大人になっていくんですよ。」
そういって微笑むみつこ。
雅彦「そうだな。。」

夜、弘人の携帯に着信が入る。アユタからの電話だった。
話し出しからアユタの口から出た言葉は、「菜緒ちゃんがさぁ。。」。
あからさまに今にもため息をつかんばかりの顔をする弘人。ところが、「結婚止めて、北海道いくらしいんだ。」という言葉に、思わず拍子の抜けたような声で聞き返してしまう。

「えっ?」
驚いて振り返る亜紀子。
弘人は家に帰って、亜紀子に奈緒の家に行くことを話した。
アユタからの電話の内容は「奈緒が北海道に発つ前に、奈緒の家にみんなで集まるから弘人も来い」という内容だった。
すると亜紀子は弘人に、自分も一緒に連れて行ってくれと頼む。驚く弘人。。

当日。。奈緒の家に向かって歩く弘人と亜紀子。
不安げに弘人の腕を引っ張る亜紀子だが、大丈夫大丈夫。となだめながら先を歩く弘人。。
玄関の戸を開けた菜緒は驚いた。
亜紀子は菜緒に向かって、消え入りそうな声で謝りながら、深々と頭を下げた。そうしていると、奥からみつこが弘人を迎えにきた。
顔を上げた亜紀子を見て、首をかしげているみつこに、亜紀子は「弘人の、母です。」と名乗り、みつこも「あ!この前。。」とデパートの地下で声をかけられた時を思い出す。
亜紀子「松坂屋の地下で。。あの時、本当は、名乗り出て謝りたかったんです。本当に、申し訳ございませんでしたっ。。」
そう言ってみつこの手を握り締め、頭を下げる亜紀子。
そんな亜紀子に「もう頭上げてください。どうぞおあがりになって?」と声をかけるが、頭を上げようとしない亜紀子。
すると奥から、今度はアユタ・甲・裕子が出迎えに来る。
三人もまた亜紀子が来ていることに驚く。
みつこは気遣って、「神崎さんと近くでお茶してくるわね?」と伝える。
それを聞いた弘人は恐縮し、遠慮するが、みつこは、「だって、ここは若い人たちばかりで落ち着かないわ。」と微笑んで、菜緒にコートを持ってきてくれるように頼む。
弘人のほうを伺っているアユタと甲に弘人はそれとなくアイコンタクトし,それを受けたアユタと甲は裕子を促し、部屋の奥の方へ戻っていった。裕子はわけがわからぬままアユタ達の後についていった。
弘人達は、自分と亜紀子とみつこが3人で話せる状況を作ったのだった。
弘人「その説は、うちの母が、本当に申し訳ありませんでした。」
深く頭を下げる弘人と亜紀子。
みつこ「ううん。菜緒にも話聞いてたけど、廉君。。弟さん、菜緒って本当に良かったわ。私、あなたのお母さんの気持ちよくわかるわ。。子供が体が弱いって、本当に悲しいものよ。ましてやお母さん一人で、大変なこと、たくさんあったのよね。私、あなたのお母さん、決して悪い人じゃないと思うわ。」
そういって微笑むみつこに、涙を流す亜紀子。
そこにコートを持って菜緒が戻ってくる。それを受け取り、亜紀子を促してその場を後にするみつこ。

それから,甲が音頭を取り、ワインで乾杯をする五人。。
話も弾み、楽しそうにしている菜緒を横目で、複雑そうに見つめる弘人。。同じように楽しそうにみなと会話をする弘人を、小さく微笑んで見つめる菜緒。。

それから時間がたったころ、菜緒の家の階段に甲が腰掛け、下に結うこと菜緒が立ち、階段に寄りかかるようにしてアユタと弘人が立っている。アユタはすでに出来上がっていた。。よろけたところを弘人に支えられながらも、仕事で成功したことが嬉しくて、飲まずにはいられない様子でいた。
アユタ「でもわかんないもんだな、人生。まさか、こうゆう展開になるとは思わなかったよ。。」
裕子「うん。。あの頃、まだみんな子供で、若くて、なんか、ちょっとかわいかったね。」
皆が思いに浸る中、アユタがノリ良く話を続けた。
アユタ「そうそうそうそう!覚えてる?みんなで昔祭りに始めて行った時さ、菜緒ちゃんが“あの、オレンジの、欲しい”とかってさぁ!弘人戻ったよね!」
裕子「あぁ〜あったあった!ね?」
表情を落としかけるが、裕子に話を振られて笑顔で頷く菜緒。
ところが弘人は「んなことあったっけ?」とせせら笑ってはぐらかす。アユタはそんな弘人に「あったじゃぁ〜ん♫」と絡むが、菜緒はショックを受けたように表情を凍らせ、
菜緒「なんで。。?。。なんでそんな大事な事、忘れられるんだろ。。」
目を逸らしてつぶやくように言うが、それは全員に聞こえる大きさでの独り言だった。
弘人「は?」
菜緒「。。気にしないで!独り言だから。。」
弘人「いや独り言になってないから。みんなに聞こえてんじゃん。」
菜緒「だから。ちょっとびっくりしただけ。。なんであんな大切なこと、忘れられるんだろうって。。」
どんどん重く気まずい雰囲気になっていく中で、取り繕うように裕子がフォローするが、とりつくしまもなく、
菜緒「あの時、あたしたち始めて手ぇ繋いだんだよ!?」
弘人「そうだっけ?つかさ、手ぇ繋いだとかさ、中学生じゃないんだから。。」
そういって笑う弘人。
菜緒「信じらんない。。あたしの思い出返してよ!大事にしてたんだから!」
弘人に詰め寄り、責めるように言う菜緒。
弘人「何それ。何その言い方。だって勝手に結婚してくのそっちだろ。」
菜緒「結婚やめたじゃない。」
弘人「やめたって結婚しようとしてたじゃんかよ。でやめたって言ってとっとと北海道行くのそっちじゃんかよ。」
菜緒「とっととって何よ!北海道行くのやめて欲しいならやめて欲しいって言えばいいじゃない!。。行くなとか言わないの!?」
弘人「。。。。行けば?。。別にやめて欲しいなんてこれっぽっちも思ってねぇし。だって養護学校の先生になんのがお前の夢だったんでしょ?じゃがんばればいいじゃん。だから今日もこういう風にみんなで集まってんじゃないの?」
弘人のそばを離れ、窓のほうを向いて、虚勢を張ろうとする菜緒。
菜緒「ふ〜ん。。自分の気持ちはないんだね。」
弘人「は!?」
苛ついたように菜緒のほうを見る弘人に対して、菜緒もまた弘人のほうに向き直って、
菜緒「弘人っていっつもそうだよ!壁作って人入れないようなとこあるんだよ!人の陣地に入ってこなくて、自分の陣地にも人入れないんだよ!」
何も言えずになおから目線を逸らす弘人。しかしさらに菜緒はまくし立てた。
菜緒「弘人は!ちゃんと人を好きになることなんてできないんだよ!!」
その言葉を聞いた弘人は、目線を逸らしたまま遠くを見つめ、胸の内をえぐられた様にわずかに目を見開いた。。
その表情を見た菜緒は言葉を詰まらせ、弘人を傷つけてしまったと悟る。
何も言えなくなった弘人は、菜緒を見ると、自分の煙草と上着を取り、そのまま菜緒の家を出て行った。。
甲が呼び止めるが振り向くはずもなく、菜緒はただ弘人の出て行った後を見つめて、俯いた。。

苛立ち足早に町の中を歩く弘人の頭の中には、菜緒の言葉がめぐっていた。。
港沿いのガードに腰かけて、煙草を吸いながら、三年前を思い返す。
「ったく。。勝手なことばっかり言いやがって。。三年目振らなかったのはそっちだろつーの。。」
三年前のクリスマスの夜。。。
弘人は約束どおり、菜緒へ向けて懐中電灯を振った。しかし、応答はなく、その後いくら待って見ても、オレンジの光が見えることはなかったのだった。。
何度窓の外をのぞいても、ともることのない灯り。。
あの時の思いを今また思い返して、打ち消すように煙草を銜えた。。。

中学の卒業式。。。
教室で生徒達に「皆さんと一緒にこの学校を卒業して、北海道の養護学校に行くことになりました」と挨拶をする菜緒。
職員室でも、他の教員仲間から応援の拍手をもらう。

菜緒の出立当日。。
工場で仕事をしている弘人。。
菜緒はその頃部屋で荷造りをしていた。弘人との思い出の品が入った箱からイガイガを手に取り、微笑む菜緒。そこに達也が荷造り用のガムテープを持って,ノックをして入ってくる。いつものようにノックする意味もなくすぐに入ってくる達也を責める菜緒。
達也「お前ギリギリだなぁ〜発つその日まで。」
菜緒「いいでしょ?間に合ったんだからっ。。」
達也「。。いよいよ、行くんだな。。」
菜緒「うん。。。」
すると達也は、照れくさそうに目を逸らし、
達也「。。がんばれよ。。」
とぶっきらぼうに言う。
菜緒「。。うん。」
そんな兄に菜緒は笑顔で、応えた。。

弘人が仕事を中断させて、現場を出ると、そこにはアユタが弘人を訪ねてきていた。
現場の壁に寄りかかって話をする二人だが、手に持ったヘルメットを小刻みに揺らして苛立っている弘人。。
弘人「つかお前マジしつけぇな。。だって俺電話でも行かないって言ったじゃん。。」
アユタ「。。。ホントは怖いんだろ。。この前菜緒ちゃんも言ってたけど、自分で壁作って、傷つかないようにするとこあるもんな!」
わざと挑発するように言うアユタ。
弘人「つかマジうぜぇんだけど。。いやほら、もうやったじゃん送別会とかさ、もうそれで十ぶ。。」
アユタ「んああじゃ!もういいよ。俺間に合わなくなるとヤバいからもう行くわ!」
そういってその場を去るアユタ。。

中華街のレストランで携帯のカメラから横浜の景色を撮る菜緒。。そこは前に裕子たちに謀られ、弘人と一緒に食事をした店だった。
裕子「何やってんの?」
菜緒「ん?まあ一応、思い出のばしょなんで。。」
笑いあう二人。。
菜緒「ねえ、リムジンバスの時間までまだあるよね?」
腕時計を見る。
裕子「うん。だいじょぶ。」
菜緒「あたしね、実は、もう一ついきたいとこあるんだけど、付き合ってもらってもいい?」
笑顔で頷く裕子。。

菜緒「懐かしい〜!」
雨のなか、傘を差して歩くその場所は、弘人の家だった工場だった。。
菜緒「変わってない。。」
雨の中でも香る潮風の匂いを、深呼吸するようにかぐ菜緒。。
裕子「いいの?置いてって。」
菜緒「何を?」
裕子「あなたの大事なもの。」
菜緒「。。持ってけないよ。おっきすぎて。思い出だけ、持ってく。」
頷きながら笑って見せる菜緒。
工場を後にしようとする二人のの後で、何段にも積まれたダンボール箱が倒れる。驚いて振り返った二人の目に入ったのは、箱から出てきた、廉と弘人が作ったクジラの置物だった。二人がそれに歩み寄ると、クジラの絵の描かれたカードがあった。カードの下には“ハッピーバースデー&メリークリスマス ナオ”とあった。
裕子「菜緒の誕生日に渡すつもりだったんだね、これ。かわいいねぇ〜!」
菜緒「ホントだ。。かわいい。。。お礼言いたかったなぁ。。。これの。。」
そんな菜緒を見つめる裕子。。。

甲「え?はぁ!?弘人の工場ぁ?」
裕子「そうよ!今すぐ〜。」
甲「弘人の工場。。え、だって、リムジンバス出るとこじゃねぇの?」
裕子「だから、それは行かないってきかないのよ。。あたしも電話したし、アユタ君も電話したけど。。」
甲「で、弘人の工場。。」
裕子「そう!もう最後のチャンスなんだからね?わかった!?」
甲「わかったけど。。えぇ〜裕子ちゃんそれできっかなぁ、ハードル高くない?」
裕子「できるかなぁじゃないの何が何でもなの!ごめんちょっときるね?」
そのまま電話を切られ、街中で呆然と立ち尽くす甲。。

工場で働く弘人の下に電話が入る。事務員にから連絡を受け、弘人が電話に出ると、相手は甲だった。。甲は裕子から☏を受けてその場からすぐに弘人に電話をかけたのだ。
弘人「もしもし?」
甲「。。すぐ。。すぐ来てくれ!!」
弘人「どうした!?」
甲「あ。。嫁さん。。嫁さんが産気づいちゃって。。っ。この。。このままじゃ死んじゃう!!」
弘人「甲っ。。落ち着け!今どこにいんの!?」
歩道橋の上に立つ甲は、地面に携帯を置き、遠くから
甲「お前んちの昔の工場。。おい!お前今弘人来っかんな!待ってろ!おい寝るなお前!寝たら死ぬぞ!!」
と一人で演じると、携帯のところへ戻ってきて、
甲「あぁ〜そうそう!で、ドライブしてたら近く通ったからよって見たの!そしたらお腹痛ぇぇとかって産気づいちゃって、であせって機械の下敷きに、下敷きになっちゃったの!!」
弘人「は??」
甲「鉄板こう〜曲げる機械あったろ?あれの下敷きになっちゃったの!!」
弘人「マジ??あ!じゃわかった!俺すぐ行くからさっ あ、その前にお前救急車!」
甲「そら呼んだけど、呼んだけどじゃお前もすぐ来て!」
弘人「わかった!じゃ、じゃあな!!」
そういうと、あわてて事務員に断りを入れて、謀られているとも知らずに工場を後にする弘人。

工場に着き、辺りを見回す弘人。。しかし甲の姿はない。
機材を覆ったブルーシートをめくって見ても、奥さんの姿もどこにもない。
改めて甲の言葉を思い返すと、めちゃくちゃな内容。。。
そこで初めて謀られたと気づく弘人だった。。
しかし“なぜ”謀られたのかが弘人にはわからなかった。不思議に思って何気なく辺りを見回していると、クジラの置物がそのままで工場に置かれ、さらにその上にマフラーがかけられていた。弘人がそれに歩み寄り、マフラーを手に取ると、その下にはルーズリーフを折り込んだ手紙が挟んであった。手紙に気づいてそれを広げると、菜緒からの置手紙だった。。

“弘人。。
ここから弘人が灯りを振ってくれてたのかな。もしかしたら、3年目も見てくれてたかな。
入院してて、振れませんでした。その事を、伝える術もありませんでした。
でも、もう1年待ったの。
4年目、私、振ってみたんだ。そしたら応答はありませんでした。
私はどこかで、ずっと弘人が私を見ててくれるような気がしてた。そんなわけないのにね。
でも、だから、ショックでした。勝手な事ばっか言ってるね。
人に頼ってばっかで、こんな根性のない自分とさよならするために、ここは一つ、一人で頑張ってみようと思います。北海道、行きます。
弘人も頑張ってね。もう、会えないのかもしれないけど、私、あなたの事、忘れません。
ねえ、弘人。私、あなたが大好きでした。そして今も、やっぱり好きです。
でも大丈夫。あなたと過ごした時間が、いくつかの思い出は、私の宝物です。弱虫で、泣き虫で、どうしようもない私の、たったひとつの拠り所です。
ねえ、私は、本当に本当に、心の底から、あなたを愛してたんだよ。
いつまでも話してたいけど、さよなら。
時々、心の中で、あのオレンジの灯りを振ります。
あなたには、弘人にはわかるような気がして、振ってしまいそう。
そしたら、もし感じたら、振り返してね。  菜緒”

必死に走る弘人。ただ菜緒への想いそれだけで、ひたすら走り続けた。。

その頃菜緒はすでに、リムジンバスの停留所まで、裕子と共に車で移動をしていた。
そして停留所に着き、裕子・甲・アユタに見送られ、バスに乗る。バスはゆっくりと走り出した。。

三人が手を振りながら菜緒を見送り、バスの走って言った後を見つめている。。
すると、駅の構内から必死に走る弘人の姿があった。
三人の後ろから走ってきて、通りすがり際アユタの肩を叩いていく弘人。
甲「弘人?」
アユタ「弘人だ。。」
甲「行こう。行こ。」
アユタ「行こう!」
ものすごい勢いで走っていく人影の後姿を見つめながら、呆然と立ち尽くすも、自分達の足に言い聞かせるように呟いて、弘人の後を追いかけて走り出す三人。

弘人「バス待って!!そ・こ・の・バ・ス!!待って!!」
苦しそうに息を切らせながらも必死にバスを止めようと呼びかける。しかし、バスは止まらず、少しずつ離されてしまう。。
『菜緒!!!』
体のそこから声を振り絞るようにして叫んだ。
その声は菜緒に届いた。声のする後に目をやった菜緒は驚き、慌ててバスの奥へ駆け寄り呆然と弘人に目を向ける。
手を差し伸べながら走る弘人を見て、今度は運転手の下へ駆け寄り、バスを止めるように頼んだ。
バスは止まり、急いで降りて来る菜緒。その菜緒の元へ駆け寄り、両手を膝について苦しそうに息を切らせる弘人。
菜緒「どうした?弘人。。」
弘人「。。。どうしたじゃねぇよっ。。」
菜緒の言い草に少し拍子抜けしつつも、起き上がって息を整えようとしながら、弘人は続けた。
弘人「勝手に行くなよ。。あんな手紙残してさ、勝手に行くなよ。。」
菜緒「だって。。。」
弘人「つか言えよ。。入院してて振れなかったってさ、ちゃんと言えよ。。」
菜緒「だってっ。。。」
弘人「だってじゃねぇよ。。」
呆れた様に言うと、大きく息をついて息を整えた弘人。少し目を逸らすが、まっすぐに菜緒を見て言った。
弘人「頑張れねぇかな。。今から俺達頑張れねぇかな。前は無理だったけどさ、今だったらその壁っつぅか、一緒に超えられねぇかな。。」
目を見開く菜緒。。
するとバスからクラクションが鳴る。ドライバーが「時間なので。。」と、菜緒を急かしたのだ。
迷わずにドライバーに「降りるので行って下さい」と伝える菜緒。バスは扉を閉め、菜緒を残して再度出発した。
弘人「お前、バスいいの!?」
菜緒「いいよ。飛行機はいつだって飛ぶもん!弘人はいましかいない!」
菜緒は強く口を結ぶと、思い切って弘人に抱きついた。
菜緒「がんばるっ 乗り越えるっ 二人で頑張るっ もう一回頑張る!!」
菜緒の勢いに少しよろめきながらも、しっかりと菜緒を抱きとめ、その言葉を聴いて嬉しさを隠し切れないように笑顔で頷きながら、
弘人「。。でも、養護学校の先生は、ちゃんと頑張んだかんな?」
弘人の言葉をしっかりと反芻し、自分の胸にも言い聞かせるように頷く菜緒。
弘人「応援すっからっ。。」
菜緒「うんっ」
弘人「でも俺達付き合うかんなっ」
菜緒「うんっ “遠距離恋愛”ってヤツ?」
菜緒を抱きしめながら、思わず噴出してしまう弘人。
弘人「でも、いつも一緒だから。。」
菜緒「うんっ」
弘人「そいで。。そいで、一緒んなるから。。」
菜緒「うんっっ」
弘人「うんって。。返事早ぇよっ 一応プロポーズなんだからさ。。」
弘人から離れ、弘人の両腕を持って、笑顔でまっすぐに弘人も見つめて、
菜緒「いいよ?了解!!」
弘人「。。了解!」
そう言ってまた強く抱きしめあう二人。

そんな二人を少しはなれたところから、安心したように息をつきながら、微笑ましげに見守る三人。

しかし雰囲気を遮る様にして菜緒が叫んだ。
驚いて菜緒を抱きしめたまま聞き返す弘人。そっと菜緒を離すと、目を見合わせて、
菜緒「スーツケース!。。スーツケース忘れた!」
弘人「どこに!?」
菜緒「バスん中。」
弘人「。。。マジで?」
菜緒「。。。マジで。」
思わず笑うと、菜緒の頭をくしゃくしゃっと撫でてから、また走り出す弘人。その後を追いかける菜緒。
様子を伺っていた裕子達が、更に後を追いかける。
裕子「どうした!?」
菜緒「スーツケースーー!!」
アユタ「弘人どうしたぁ!?」
弘人「菜緒!!早く!!」
バスは五人を置いてどんどん離れていく。。。




『僕は、君といると、探し物ばかりしてるんだ。。。』





別の日の朝、菜緒が編んだ手袋をして仕事に出かける弘人がいた。。。

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