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夢みる頃を過ぎてもコミュの短歌06年間回顧

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毎日新聞「短歌06年間回顧」


 三月に山中智恵子、六月に近
藤芳美の死があり、喪失感の深
い年となった。山中智恵子は前
衛短歌を、近藤芳美は戦後短歌
を代表する歌人として、ともに
最後まで志を貫く生涯だった。
・天の川の太陽を視る青空は地
球にもとどき青ふかめゆく
山中智恵子
・新たなる戦争殺戮のこととし
 て始まりし世紀まぎれなけれ
 ば        近藤芳美
 以下、歌集を中心にして一年
を回顧する。これまでの月評で
触れた歌集は割愛する。
 『岡井隆全歌集』(思潮社)全
四巻が完結した。第一歌集以前
の未刊作品集『O』から二〇〇
三年刊行の『旅のあとさき、詩
歌のあれこれ』まで、岡井隆の
歌業が集大成されている。まさ
に最後の前衛歌人である岡井隆
の軌跡と現在を知るための必須
で最上ののテキストである。
 角川書店の角川短歌叢書が実
力派の歌人の歌集を連続して刊
行した。佐藤通雅『予感』、石
田比呂志『萍泛歌篇』、加藤治
郎『環状線のモンスター』、藤
井常世『夜半楽』、沢口芙美『わ
が眼に翼』栗木京子『けむり水
晶』、坂井修一『アメリカ』等、
どれも歌人の正味の表現力を実
感させてくれる一巻だった。
・ 同人誌から文壇に出づるごと
楡の木を発つ鳥一羽、二羽
         栗木京子
 岡野弘彦『バグダッド燃ゆ』
(砂子屋書房)、篠弘『緑の斜
面』(短歌研究社)馬場あき子
『ゆふがおの家』(不識書院)
高野公彦『甘雨』(柊書房)、
尾崎左永子『青孔雀』(砂子屋
書房)とベテラン勢も力強い表
現力を見せてくれた。
・この世なる鼠穴兎穴土竜穴深
 きいのちの闇しめるらむ
        馬場あき子
 三十代の男性からは松村正直
『やさしい鮫』(ながらみ書房)
が、こけおどかしのない文体と
発想で、読み応えがある。
昭和十年代生まれの女性歌人
の層は厚いが、小島熱子『クレ
パスの線』(ながらみ書房)と
酒井佑子『矩形の空』(砂子屋
書房)が技量の冴えを見せた。
 短歌史的な視点からみれば、
『高瀬一誌全歌集』(短歌人会)
が嬉しい一巻だ。高瀬は異色の
文体を確立した歌人だが、初期
作品も収録した全歌集の刊行で、
その全貌が明らかになった。『尾
上柴舟全詩歌集』(短歌新聞社)、
片山廣子(芥川龍之介、堀辰雄
とも交流のあったアイルランド
文学の翻訳家)の詩歌と資料を
集大成した『野に住みて』(月
曜社)も資料的価値が高い。
 戦後短歌、前衛短歌の主役た
ちの退場の喪失感の中で、岡野
弘彦、馬場あき子、高野公彦ら
のベテラン勢が、志ある仕事を
した年といえる。一方で、言葉
のお洒落さや口語的な軽みの短
歌はすでに飽和感を見せた。
短歌がいかに時代と拮抗でき
るか、外へ向けた視線を持たな
い歌人は、結局、短歌状況から
取り残されて行くだろう。

               了


12月10日「毎日新聞」掲載

コメント(1)

週刊読書人「2006年短歌回顧」

 山中智恵子と近藤芳美の死が、二〇〇六年
の短歌状況を象徴している。
 山中智恵子は三月九日に亡くなった。享年
八十。最後の前衛歌人というべき存在だった。
・うつしみに何の矜持ぞあかあかと蠍座(さそり)は
西に尾をしづめゆく
・あをく老ゆるねがひこそわが一生つらぬ
きとめぬいのちなりける
 一首目は一九五七年に刊行された処女歌集
『空間格子』の歌。「山中智恵子を偲ぶ会」
で講演をした三枝昂之は、この上句「うつし
みに何の矜持ぞ」という自問の意識を、山中
は生涯持ち続けたと説き、また、山中自身の
「短歌は時代とかかわらなければだめ」との
言葉を紹介して、時代を詠いつつ抽象的な純
度を失わなかったのが、山中智恵子の短歌の
個性だったと論じた。
 二首目は最晩年の作品。「あをく老ゆる」の
「あを」は、山中短歌のキーワードの一つで
あり、青人草としての矜持であろう。
・青人草あまた殺してしづまりし天皇制の
 終を視なむ
 一九九二年刊の『夢之記』の絶唱。この強
靭な志の持続こそが歌人山中智恵子の表現の
本質だったといえる。
 近藤芳美は戦後短歌の代表選手。一九四八
年に刊行された『早春歌』と『埃吹く街』の
みずみずしい抒情と知的な批評意識をたたえ
た作品は、華々しく戦後短歌の扉を開いた。
・果てしなき彼方に向ひて手旗うつ万葉集
 をうち止まぬかも     『早春歌』
・水銀の如き光に海見えてレインコートを
 着る部屋の中      『埃吹く街』
 一九六〇年代以降の近藤芳美短歌の晦渋
な文体は、認識者として歌人として時代状
況に真向かい続ける誠実さと困難の葛藤の
あらわれだったのかもしれない。
 個人の歌集では岡野弘彦『バグダッド燃
ゆ』(砂子屋書房刊)と栗木京子『けむり水
晶』(角川書店刊)が話題を呼んだ。
・東京を焼きほろぼしし戦火いま イスラ
ムの民にふたたび迫る『バグダッド燃ゆ』
・人を追ひ斜坑をふかく降りてゆく夢な
 り白き軍手をはめて  『けむり水晶』
 八十三歳の岡野の時代状況への静かな怒り、
栗木京子の定型との自在な距離感ともに、現
代短歌の表現の広さを感じさせる。
 『高瀬一誌全歌集』(短歌人会刊)は、二
〇〇一年に亡くなった異色歌人の歌集未収録
の初期作品も集めた全歌集。オフビーとな超
個性的文体の展開が確認できる貴重な書。
 歌集に対して与えられる賞は今年も盛況だ
った。迢空賞は岩田正『泡も一途』と小島ゆ
かり『憂春』の二冊。小島は一九五六年生れ。
当然、最年少の受賞者だが、歌人の力、作品
の力は歴代受賞者に十分匹敵している。
 稲葉京子の『椿の館』は詩歌文学館賞と前
川佐美雄賞のダブル受賞。吉川宏志の『海雨』
は寺山修司短歌賞と山本健吉文学賞のダブル
受賞。大口玲子『ひたかみ』が葛原妙子賞。
現代歌人協会賞は松木秀『5メートルほどの
果てしなさ』と日置俊次『ノートルダムの椅
子』。若山牧水賞は坂井修一『アメリカ』と
俵万智『プーさんの鼻』。
歌人の名前を冠にしている賞は、本来、そ
の歌人の詩歌の精神が継承されている歌集に
授賞されるのが本筋かと思うが、必ずしもそ
うではないのは、現代短歌の混沌の証か。シ
ングルマザー俵万智の子育ての歌集が若山牧
水賞となる不可解は、誰もが感じるだろう。
授受双方の志が問われる問題だと思う。

「週刊読書人」2006年12月15日号掲載

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