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くれない貝コミュのバトンリレー小説 (作:くれない会奥様方)

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印税で暮らすことがどれだけ夢の話なのか体験したいと思います。

バトンリレー式で現代小説を書いてみましょう。
ルールと注意事項を説明いたします。

1セクター(1コマ)につき最大10行まで。
セクターを書く会員の順番は決まっていません、好きな時に小説を書いて掲載してください。
1人1セクター以上続けて書くことは禁止します。
小説の順番がはっきり分かるように文の始めに
必ずセクター番号を記入してください。
同じセクター番号が掲載された場合は、一番早く掲載された方の小説が残ります。
それ以外は許可なく削除になります。
セクター番号記入がない場合は、心のつぶやきとして削除されます。ご注意ください。
毎週、「悪臭キーワード」を発表します。
事前に決められた「悪臭キーワード」はくれない会の文化部が毎週火曜日に発表いたします。
このキーワードをセクター内で利用したものは「魔女狩り★いけにえの刑」によって軽く処罰されます。
こちらの方は「魔女狩り★いけにえの刑」のトピをご覧ください。
バトンリレー小説に関しての詳細・質問・悩みなどは
「くれない会保健室」トピに記入してください。
会長・副会長が責任を持って介護いたします。
こちらは小説の原稿用紙だけのトピですので、
小説に関係のないことが記入してありましたら、「くれない会保健室」の方にタンカで運び出します。(有料)

ーーーーーーーー小説に関するルールーーーーーーーーー
登場人物は増えても結構ですが、極端に増えすぎるのは次の人の迷惑になります。
常に全体のバランスをみて、土地・季節・登場人物の性格などの急激な変化も避けてください。(ストーリー性があれば○)
会話文の場合は「」を利用、()は小説にふさわしくありません。
セクター中の「方言を利用した会話」はちゃんと方言を下調べしてからご利用ください。

ーーーーーーー一応メインな登場人物ーーーーーーー

私         :本郷里佳子(34歳)
夫         :本郷公彦(38歳)   
魚屋亭主     :杉田のぼる(55歳)
妻         :光子(51歳)
魚屋パート    :清水三恵子(32歳)
魚屋アルバイト :鉄平(17歳)
看護婦      :まゆみ(24歳)
バーのママ   :マリリン(?歳)
謎のメル友    :キラーメロン(自称26歳)

コメント(52)

13、「連絡マツ」の一言のみ。送信者は非通知設定。外科医という職業柄か夫は執拗なほど用心深く、神経質。誰か・・私を警戒しての設定なんだろう。。
水音が聞こえなくなったことに気づいたときは遅かった。
14、ガチャ、リビングの扉が開き夫が風呂から出てきた。瞬間、私は夫の携帯をテーブルに置いた。一瞬夫は私を睨みつけたが、そのまま携帯を持って寝室に消えていった。数分後、夫は着替えを済ませ寝室から出てきた。「緊急オペの呼び出しが来た。今から病院へ行ってくる。帰りは遅くなると思う」そういい残すと玄関を後にした。
15、翌朝、魚屋の件が気になって朝食の後片付けをする前に家を出た。今日は今年で一番暑い日かもしれない。セミの声が耳にこびりつく。いつものように魚屋の前を通ったら、無造作にシャッターが下りていた。ちょうどその時、店の裏からパートの清水三恵子が出てきた。私から声をかけてみたが、三恵子はそっけなく「鉄平ちゃんは若いのに人生を無駄にしたわね」とため息をついて、私の前から逃げ去った。なぜこうしたのか分からないが、私は三恵子を追って、何があったのか問いかけた。
16、しばらく黙っていた三恵子だがようやく重い口を開き始めた。「昨日、鉄平ちゃんが怪我をして病院に運ばれたのは知ってるでしょう?あれね、鉄平ちゃん、魚屋の大将の奥さんと出来てて、大将にばれたのよ。」「え?なんですって・・・奥さんと!」確かに奥さんは50代とは思えないほど若々しく、美しい、しかし30歳以上もの年の差があるのに・・・
付け加え三恵子は小声で言った。「鉄平ちゃんは私の恋人だったのに・・・」
18、振り向くとそこには、夫の病院で看護婦として働くまゆみだった。彼女とは何度もこの魚屋で顔をあわせたことがあったが、そこまで親しいという関係ではなかった。主人からも、まゆみの話を聞くことは最近あまりない。
「昨日彼が病院に運びこまれた時、彼女らしき人も一緒にいましたけど・・複雑そうですね・・失礼します」私は好奇心でいっぱいになってしまった。久しぶりに胸が高鳴る。
19、三恵子は食いつかんばかりの形相で、その場を立ち去ろうとしていたまゆみの腕を掴んだ。「ちょっと、彼女らしき人ってどういうことよ!誰なのよ!教えなさいよ!」まゆみは一瞬驚いた顔をしたが、困惑したような顔になってしまった。
20、「私には関係ないわ!そこのクラブかもめのママに聞くといいわ」そういい残し走り去っていった。その場に取り残された私と三恵子。三恵子は苦虫を噛み潰したような顔で私に言った。
「あなたもあの看護婦には注意した方がいいわよ」「え?どういうこと?」と聞き返そうとしたが三恵子はそのまま走り去ってしまった。あの、看護婦、まゆみに注意したほうがいいなんて、どういうこと・・・ふと昨日の夫の携帯メールが頭をよぎった。あれは一体誰からだったのかしら・・・
21、クラブかもめのママは、神秘的なベールに包まれた女として、彼女のウワサ話は絶えない。名はマリリン、長いまつげに意思の強そうな眉、銀幕スターとも思える鼻筋の通った美人だ。口は多少おちょぼで、この口で口説かれると嫌とは言えない。長身でスリムな体格だが、女性らしいふくよかな部分も残す。
22、家に帰り着くまでの間、様々な事が気になっていた。
鉄平と魚屋の奥さん、そして三恵子、まゆみ・・・三恵子の言った「まゆみには気をつけろ」一体どういう意味だったのか。
昨日、夫は緊急オペだといって出て行ったけど、本当なのだろうか?今までそんな疑いを持った事は無かったけど、今日の様々な出来事で疑わざるを得なくなっていた。ふと、夫の書斎が気にあり、書斎の机を開けてみる。こんなことは結婚後初めてだ。3段目の引き出しには薄っぺらい紙切れが一枚、無造作に置かれていた。「これは・・・」
24, 見てはいけないものに触れてしまった。普段、干渉しあわない夫婦としてサバサバとした関係を気付いてきたのに、一瞬にして崩れていってしまいそうで目を反らしたかったのかもしれない。誰かに見られているような錯覚に襲われ、あわてて引き出しを閉めた。引き出しに取り残されたことにも気付かずに・・・。

書斎を出た後も白黒写真に映るマリリンの横顔が頭から離れない。気を落ち着かせようと、ダージリンティーを入れる。紅茶を飲みながらも落ち着かず、今からクラブかもめに行けば開店前のマリリンに話を聞けるかもしれない・・・、ふと脳裏をよぎった。
25、でも、、私は一家庭の専業主婦。水商売の世界はテレビや小説の中の世界。実在する人と実際の接触(コンタクト)を取ることは・・・・。優柔不断な自分が疎ましい。
ダージリンティーの茶葉がいつのまにやら開ききってしまった。こんなときは誰に相談するのがベストか・・。
26,実家の母親に話してみようか。でも確かな証拠もないのに、そんな相談をして心配させるのはかわいそうだ。ただでさえ心臓が弱い母なのだから。
近所の主婦友達に相談することは絶対にできない。ただでさえ、医者の妻ということでやっかまれているのだ。どんな噂を立てられるか、考えただけでもめまいがする。
信じられるのはもう自分だけなのかもしれない。
クラブかもめに向かう決心が固まった。
27、その時、メールの着信音がなる。きっとまた広告メールだろうと思ったが、急いでクラブかもめに行かなくてもいい気持ちが背中を押し、メールをチェックする。
送信者、キラーメロン。
「悩みがある時はボクに教えて。」
私の手はキラーメロンにメールを作成するにクリックした。
28、「キラーメロンさん、はじめまして。私はあなたを知らないけど、あなたは私を知っているのですか?こんなメールの返信をしている私はどうかしているのかも知れないけれど、今、とても悩んでいます。もう、どうしていいかわからなくて・・・誰にも相談できずに困っています」
メールを返信するとすぐにまたメールが届いた。
「僕は君をよく知っています。いつも見ています。僕に悩み事を相談してください。誰かに話すと楽になりますよ。よかったら、会って話しをしませんか?」
会って話す・・・戸惑いを感じたが、返信ボタンをクリックした。
29、「土曜日正午、猫舎カフェで待ってます」キラーメロンは画面の向こうで待ってたかのように素早く返事をよこした。
その日は、夫との久しぶりの外出・・・既に、どうやって夫にウソをつこうか頭の中で細工し始めていた。
今ならキラーメロンだけが信用できる。
しかし、私の期待を裏切るようになることが起こるとは、この時、夢にも思わなかった。
そして、土曜日の朝、
30、夫は午前中は病院へ術後患者の状態を診るために出勤した。
夫との待ち合わせは午後2時、キラーメロンとは正午に待ち合わせた。目印に私はエルメスの茶色のエヴリンを持つ事にした。キラーメロンの目印はプラダスポーツのグレイのTシャツ。私は待ち合わせよりも10分早く猫舎カフェの一番奥のテーブルにつき、カプチーノを注文しキラーメロンを待った。
猫舎カフェの扉が開いた。ふと扉に目を向けると、そこに現れたのは、
32,「私の命に関わる!?あなた何を言っているの?」
思わず大きな声を上げてしまった。
「黙って!彼らに聞かれてしまう!」
光子が慌てて私の口を手でふさいだ。毎日魚を扱う手のはずなのに、なぜかとても良い香りがした。これはゲランのミツコだ。
彼女のこういうところに鉄平は惹かれたのだろうか。こんな時だというのになぜか鉄平の事を考えてしまう自分がおかしい。
「まゆみという女を知っていますね?」
33、まゆみは魚屋の事件の一部始終を知ってる、主人の病院で働くナースだ。
そういえば、先日もまゆみに気をつけろと忠告をされたばかりだ。世間の狭さと息苦しさに私の胸は押さえつけられた。
「まゆみはあなたのご主人に脅されて、マリリン殺害を計画してます」軽い冗談だと思い、私は思わず微笑んでしまったが、笑えない自分もいることに気がついた。その時、ウエイトレスがカプチーノを運んだ。「それでは、」と光子はその場から逃げ去った。
34、約束の時間から1時間が過ぎたがキラーメロンは現れなかった。「知らない人に悩み相談なんてどうかしていたわ」私は
猫舎カフェを後にした。夫との約束まであと1時間ある。少し早いが待ち合わせ場所へと向かった。途中、マリリンの店、クラブかもめの近くを通りかかった。4〜5台のパトカーが物々しくクラブかもめを取り囲んでいた。一体何があったのだろう。私は野次馬の一人に声をかけた。「何があったんですか?」
35、振り向いたのは地元新聞記者らしき男性、黒ブチのメガネをかけ、暑苦しくスーツを着ていた。
「殺人事件です。ここのママが殺されたんです。不可解な点も多いらしいですよ。美人ママだけに、話題性もあるんですが、警察もまだ口をひらかないんですよ・・・」
私は気分が悪くなって、その場にしゃがみこんでしまった。
他人事とは思えないことに極度の罪悪感もこみ上げてきた。
36、携帯電話が鳴った。夫からだ。「術後の患者の容態が良くなくて、まだ病院にいる。今日の食事の約束は無理そうだ。すまない」思わず夫にどこにいるの?と叫びそうになったが、「そう、わかったわ」と返事をしすぐに電話は切れた。
頭が混乱し、めまいで倒れそうになりながらなんとか、野次馬たちを押しのけ現場を離れた。「奥さん、大丈夫ですか?」と声をかけてきたのは看護師のまゆみだった。
37、光子の言ってることが正しければ、まゆみが殺人事件の犯人になるのだが、今の私にはそこまで追求しようとする気がなかった。まゆみの首筋にうっすらとかすり傷があった、まゆみは私の目線に気がついたのか、そっと手で隠して私から目をそらした。
その時、まゆみの弱さをまのあたりにし、自然と私の口から言葉が漏れた、「ナースだから人の死に目は平気でしょう」
まゆみの凶漢の目が私を冷たくみつめる。その時、遠くの路地で女性の悲鳴が聞こえ、何者かが走り去る足音が響いた。
39、気がつくとベッドに横になっていた。見覚えのない部屋だ。「ここはどこかしら?」ワンルームのマンションのようだ。部屋は綺麗に片付けられこざっぱりとしている。モノトーンにまとめられたインテリアがお洒落だ。「あ、目覚めましたか?大丈夫ですか?奥さん、急に意識をなくされたようで・・・魚屋の奥さんの殺害現場を目の当たりにしたんですからショックですよね」見知らぬ男が私の顔を覗き込むように話しかける。「あなた、誰!?ここはどこなの?」「大丈夫、僕の部屋ですから。奥さんが僕を知らないのは無理もない。でも、知ってるはずですよ、僕、キラーメロンです。」
40、キラーメロンと聞いて安堵し、ゆっくり起き上がった。初対面なのだが、何故か見覚えがある。しかし、私の記憶はつぎはぎだらけだ。キラーメロンはゆっくり私に近づいてきてニヤリと笑って喋り出した。「マリリンも光子も僕が世のため殺しました。」これ以上聞きたくないと私は目を閉じた。「あなたのご主人とマリリンの隠し子はボクの親友、鉄平です。鉄平は精神病院に通ってました。打つ手がないとはこのことですね。ある日、自分と関係のある女を全て抹消して欲しいと僕に頼んできました。僕は殺人や凶器に興味があったので喜んで受け入れました。彼の恋人、魚屋のパートの三恵子は岩田海岸に沈めました。もうじき発見されるでしょうね。でも、まゆみを殺そうとしたら・・うまく逃げられてしまったのです。あ〜残念」 そして、私をじっと見てこう言った。「私を逃がしてなんて、聞き飽きました。気が利くセリフ最期に言えますか?」次の瞬間
41、キラーメロンはナイフを手に歩み寄ってきた。ベッドに腰掛けていた私は後ろへ倒れそうになったがベッド脇の出窓になぜかツナ缶が置いてあるのが目に入った。すかさずそれを手に取り、キラーメロンの頭上めがけ力いっぱい振り下ろした。鈍い音とともに「ウウウッ」とうめき声が聞こえキラーメロンはその場に倒れこんだ。何がなんだかわからない。私はツナ缶を手から離すことも忘れ、そのまま外へ飛び出した。どのくらい走ったのだろうか?無我夢中で走り、気がつくと自宅マンションに帰っていた。手にはまだツナ缶を握りしめている。震える指を一本一本、解き放ちツナ缶を手から離した。ツナ缶にも手にもねっとりとした血糊がついているのがはっきりとわかる。「里佳子!何なんだこれは?一体どうした?」見上げると夫が険しい顔でこちらを見ている。
42、「これはツナ缶じゃないか!なぜアンチョビを買ってこないんだ!僕がアンチョビが好きだって知ってるだろう。」
血糊には気づいていないのか、夫はそんな言葉で私を攻めた。
「あなた!よくも今まで私をだましていたわね!」
自分でもコントロールができないくらいの怒りが沸き上がっていた。「マリリンとの事、知っているのよ!隠し子の事だって!」
私はもう一度、血まみれのツナ缶を掴んだ。
43、夫は突然笑い転げて、「そんな話を信じたのか?マリリンと俺に隠し子・・・誰に告げ口されたんだ・・マリリンは正真正銘の男だよ。俺が手術したんだから確かだ」そう言い残して部屋を出た。翌日、何もかも分からなくなり、私は、以前から隠し持っていた離婚届に判を押し、最後に綺麗な花を生け、主人の好物の焼肉を用意した。そして、スーツケースに荷物を入れ、成田空港に1人立っていた。空港では結婚したばかりのカップルが胴上げをされ、暖かい笑顔に包まれていた。それを見つめる視野から、キラーメロンが現れ、手を振りながら向かって来た。全てがスローモーションだ・・・彼は飛びきりの笑顔を向け、「この間はごめん、冗談がきつすぎたね。ほら僕だよ、ご主人の医療ミスで脳に一生傷を負った僕だよ、ご主人を痛めるけるには最愛の君を殺すことにした」そして、私の胸にはナイフが貫通していた。
44、真っ白な壁、薄い象牙色のカーテン、点滴ボトルがぶら下がっている・・・
病院のベッドの中で目が覚めた。「私、生きてるんだ・・・」誰かが私の手をきつく握った。「里佳子さん!気がついたのね、あぁ、よかった」傍らには看護師のまゆみがいた。
起き上がろうとすると胸の傷がズキンと傷む。あぁ、本当に
あの時キラーメロンに刺されたんだ。痛みで現実を再認識する。
「どうしてまゆみさんがここに・・・?」
45、「ごめん、里佳子・・何もかも話すわ」そう言ってまゆみは私の向かいの椅子にゆっくり腰掛けた。
「キラーメロンと私は5年前まで恋人同士だったの、5年前のあの事件さえなければね・・・」
5年前の事件・・、まゆみが主人と働きだしたのは6年前。5年前は、主人が医療ミスをした年、医療ミスは患者の言い分で主人は落ち度はなかったと言ってたはずだ。この話と私はどう接点があるのか分からなかった。まゆみは話を続けた「彼の障害の症状は幻覚が見えるの。相手の心が読めるの。」遠まわしに説明するまゆみに苛立ちを感じた。「私と里佳子のご主人の関係を見破られたの」そして、更にまゆみは力強く言い切った。「公彦との関係がばれたの。」
46、Sasami氏
「キラーメロンは5年前、あっさり私たちの前から姿を消したわ。でもそれが彼の恐ろしい復讐の始まりだったのよ。」まゆみはそう言って小さく身震いした。
「キラーメロンは人の心が読めるのを良い事に巨額の富を得たわ。そして、彼は公彦の過去を調べ上げたの。そして、彼の初恋の小学校の先生をまず事故に見せかけて殺し、その後も公彦が少しでも関係を持った女達を殺していったの」
そこまで言い終えたまゆみは傍らにあった注射器を取り上げた。
「里佳子、本当にごめんね。私もキラーメロンに脅されているの。死んでちょうだい!」
まゆみが私の右腕をしっかりと押さえ、冷たい光を放つ注射針が
近づいてくるのを私はどうすることもできなかった。
47、MIKI氏
しかし、そこへ夫が飛びこんできて、赤子の手をねじられるが如くその注射針は夫の手へと渡った。柔道黒帯の夫にかなうはずもない。私は恐怖と緊張のあまりその場へしゃがみこみ泣き出した。「お昼ですよ〜」ちょうどその時、この緊迫した雰囲気には違和感のある配膳のおばさんの甲高い声が聞こえた。今日のメニューは鯖の味噌煮のようである。天辛い匂いが鼻をつくと同時に、のぼるの事が脳裏をよぎった。
48、 RIKU氏
それを皮切りに、堰をきったように昔の記憶が蘇った。
 そう、あれは17年前。当時私は高校2年生だった。暑い夏の日の朝、朝礼中に私は倒れ、目を覚ますと病院のベットに寝ていた。急性の脳疾患で緊急手術を受けたのだった。その手術を担当したのが天才外科医杉田先生だった。クールな容姿、エリートを鼻に掛けない気さくな人柄に魅かれ、私は彼に淡い恋心を抱いていた。しかし、これといったアプローチもできないまま退院日を迎え、失恋で落ち込んだその日の夕食が鯖の煮込みだったのだ。
 髪の毛を多くして、体重を20キロ減らしたら…そうだ、のぼるは杉田先生に間違いない。でもなぜ魚屋に…?
49、「里佳子君、思い出したのか?倒れた17年前の事を」魚屋の店主のぼるが病室に入ってきた。しかし魚屋のエプロンではない、白衣を着、聴診器を首にぶらさげている。頭の中のモヤモヤしたものが晴れていくような気がした。
「思い出したのかしら・・・さぁ、里佳子さん病院へ帰りましょう。心配したわ」そういいながら看護師まゆみが私の荷物を片付けている。
そうだ、私は17年前脳疾患を患ってからずっと入院していたのだ。時々妄想癖があるようだけど。ふと、夫の顔を見る。いや、夫ではない、私の副主治医 本郷公彦である。憧れからか夫であると妄想していたようだ。ふと鉄平の顔が浮かぶ。誰?そうだ、精神病院の給食室の栄養士だ。彼とツナ缶が結びついた。すべては長い夢だったのか・・・

あれから7年、また暑い夏がやってきた。病院の庭の大きな木でセミがうるさいほど鳴いている。
時々7年前の事を思い出す、そう、給食にツナサラダが出たこんな日にはあの妄想のように普通の主婦としての生活、そして恋がしたくなる。
ツナ缶、恋の予感・・・・ツナ缶、殺人の予感・・・目を閉じてつぶやくとまた頭の中が白くなっていく。

ーーーーーーーーー完ーーーーーーーーーーーーー
  解説      くれない副会長:メリー
小説「ツナ缶、恋の予感」はセレブ奥様の集まり、くれない会の英知の結晶と言える小説でしょう。そこには不倫への憧れ、夫の不倫疑惑、殺人事件、メル友との出会い、日常の身近な事と非日常の出来事が見事にシンクロされた調和の取れた作品と仕上がりました。

主婦にとって魚屋はとても身近な場所であり、そこで働く若い男、鉄平との出会いは日常私たちが体験するものであり、この小説の主人公、里佳子の存在を自分自身に容易に置き換えることができるでしょう。
医師の夫を持つ裕福なカリスマ主婦も裕福な生活の反面、夫の不倫疑惑や、仕事が忙しく家庭を顧みない夫など、実際の生活には悩みなどなさそうなセレブ主婦にも悩みがあることが理解してもらえるでしょう。
そして殺人事件、日常生活とはかけ離れた事件にどんどん巻き込まれていく里佳子。メル友キラーメロンとの出会い、そして罠。
主婦が寂しさからメル友を作ることは今日では珍しい事ではないかもしれません。しかし、気をつけないと恐ろしい罠が待ち構えているかもしれないのです。
そしてどんでん返しのラスト、殺人事件も、生活も何もかも、夫までもが夢だった。そう、あなたの生活も夢かもしれません。

この本が店頭に並ぶ頃には「英国くれない会」はもっと素晴らしい発展を遂げている事でしょう。
著者  くれない会女子
発行者 くれない会文化部
発行所 くれない好文社


本書の一部あるいは全部を無断で複写複製することは、法律で認められた場合を除き、著作権の侵害となります。

くれない会には法律に詳しい方々、通称バンブルビー族が多いのでくれぐれもご注意してください。 

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