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作家の卵達『落ガキ』コミュの華詩 とある2月のとあるチョコの日

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「いってきます。6時ぐらいには帰ってくるから。」

私は玄関で見送りをしてくれているお母さんに伝える。すると意外な言葉か返ってきた。

「気をつけてね。あっそれと、帰れなくてもいいから。」

 そういってお母さんはニコニコしている。えっと、帰れなくてもいいってどういう事だろう。私はお母さんを見る。するとお母さんは、詰まらなさそうに言った。

「もう、面白くないね。ちょっとは反応しなさい。」
「どういうこと。」

そう言うと近づいてきて、私の耳元で囁く。私は体中が熱くなるのを感じた。

「ほら、照れないの。まぁ帰りは明日の朝でもいいから。」
「お母さん。」

そんなに娘をからかって面白いのだろうか。

「冗談よ。まだまだ早いしね。まぁ真一君によろしくね。」
「もう、じゃ行ってくるね。」

 玄関を開ける。すると冷たい風が私の体を包む。外は立春がすぎて十日、暦のうえでは春が来てだいぶ経っているはずなのだが、まだまだ寒い。
 でも顔はと言うか全身が何だか熱い。さっきので余計に熱くなったみたいだ。今こんな状態だとついた時はどんな事になっているやら。
 そんな寒い中、私は彼の家に行く。理由はただ一つ。日本中の多くの女の子が大好きな人に、この日渡すもの渡しに。親友は学校で渡すから面白いと言って昨日の昼休みに彼氏に渡していた。
 私にとってこれは初チョコ。なのでちゃんとこの日に渡したかった。それを聞いた親友は「もう、はずかしがりやなんだから。」と笑っていた。
 昨日は彼を残念がらせてしまったけど今日は喜ぶ顔が見えるかな。そんなやりとりのあった昨日の昼休みを思い出しながら駅へと向かう。

「はい、これ一日早いけど。」

親友はそう言って彼氏にラッピングされた箱を渡す。

「おっ、今年はどんなの。今、開けていい。」

 親友の返事を待たずに親友の彼氏はラッピングを解いていく。包んでいた紙を丁寧に外していく。出てきた箱の上にはカードが置いてあった。カードに目を通し、さっとポケッットにいれる。何が書いてあったんだろうか。でもきっと良い事が書いてあったんだろうな。顔がすごく嬉しそうだ。
 そして、箱を開ける。

「今年はこれなんだ。」

親友の彼氏はとっても嬉しそうだった。

「そうだよ。亜由美と一緒に作ったの。」

 親友はそう言って私を見る。家族以外にあげた事がなかった私は、どんなのがいいのかわからなかった。
 だからそれとなく親友に聞いてみると、「それなら手作りだね。一緒に作ろう」と誘われた。
 本来なら教えてもらう私が行くべきなのだが、親友が弟妹の話を聞いて以来、私の家にきたがったのと、私もその方が都合が良かったので私の家で作る事にした。
 まぁ気になっていた事を色々聞かれたり、聞きたい事を色々聞けた。とっても楽しかった一日にだった。

「で、亜由美ちゃんはもってきてないの。真一がソワソワしてるんだけど。」

隣にいる彼を見る。目があうと何故か視線をそらす。何だか可愛い。

「えっと、私ね。こうやってあげるの初めてなんだ。だからちゃんと14日渡したいの。」
「へぇ、初チョコなんだ。それ、すっごく以外なんだけど。今までにはないの。」
「ないよ。」

親友の彼氏それを聞き隣に座っている彼を見る。

「なんだよ。」

彼が怪訝そうに聞く。

「別に。」

 親友の彼氏はそう言って箱に入ったチョコを一つ付属の楊枝でついて口の中に入れる。
そう、ちゃんと明日渡したい。だから持ってきてない。それとあとまだやる事が残っている。

「そっか。明日か。」

 彼はホッとしたような、残念そうな何ともいえない表情だった。期待していたんだ、前もって言っておけば良かった。

「まてまて、真一。何落ち着いてんだ。明日は休みだぞ。会えないのにどうやってもらうんだ。」

 親友の彼氏が彼にいう。それは大丈夫、ちゃんと渡しにいくから御心配なく。それはそうと彼の家の場所を聞いておかないと。

「それでね、渡しにいきたいから家の場所を教えて欲しい。」

 そう言った私に彼は驚いた顔をしていた。何か変な事言ったかな。

「えっ、俺の家にくるの?大丈夫なのか。いつもみたいに俺が行った方がいいだろ。」
「大丈夫だよ。あの子達はお母さんが見ていてくれるから。」

 これは私の願い、渡しに行くこれも重要なんだ。お母さんに話したら仕事を休んでくれた。なので二人の事は心配ない。
 そんな理由で休まなくてもといったら、大切な日なんだから協力させなさいと怒られた。

「いつもってどういう事だ。」

親友の彼氏が聞いてくる。相変わらず抜け目がない。余計な事もちゃんと聞いている。

「もう、いいじゃないそんなこと。それより感想は?」

親友が助け舟を出してくれた。親友は嬉しそうに私と彼を見ていった。

「あれ、何、のってこないのこんな面白い事。」

 いつもなら、そうだな二人しての口撃が始まり勝手に盛り上がっていく。おかげでこの間のプロポーズ騒動は大変だった。
 これが沈静化するまでゆうに半月かかった。うん、思い出したくない、それのおかげでクラス公認夫婦にってしまったし。

「だって、チョコ作りにいったときに色々と教えてもらったし。」

 教えたというより、上手い事誘導されてしゃべらされたという方が正しいんじゃないんだろうか。けどそれはお互い様かな。

「なになに、俺には内緒なの。」
「うん、女の子同士の秘密。ねぇ亜由美」

 そう言うもんなのかな。そう言うのもいいかもしれないな。そう思い取合えず頷いた。

「あっそ。まぁいいけどさ。チョコ美味いよ。ありがとな。」
「いえいえ、どういたしまして。さて、真一、チャッチャと教えてあげなさいよ。」
「ああ。どっかに紙ないか。それと、どこから書けばいいんだ。」

 彼はそう言ってメモ紙探す。

「あっ、真一。亜由美はブルーの場所してるよ。」

 親友がそういってアドバイスをする。さて、ブルーはてどこだろう。
 どかかで聞いたような気もするけど、思い出せない。

「ねぇ。それどこ?」
「もう、この間の雑貨屋さんだよ。」

 あぁ、そう言えばそう言う名前だった。クリスマスプレゼントと今回のラッピング材料を買いにいったお店だ。

「うん、大丈夫だよ。一回は一人で行っているし覚えてる。」
「そっか。ならそこからの地図を書けばいいか。」

 そう言うと彼はペンを走らせ地図を書いてくれた。

「じゃ、三時ぐらいにお邪魔していいかな。」

 本当はもっと早くに行きたいんだけど、たぶんアレが出来るには午前中いっぱいかかりそうだ。

「もう、いい加減携帯もったら。そしたら地図とかいらないでしょ。」
「えっ、だってあんまり必要ないし。」

 私がそう言うと親友は何とも言えない顔をしていた。

「まぁアンタがいいなら。いいけどさ。」

そんなに持ってないのは変なのだろうか。別に不自由はしてないしな。

「ほら、書けた。」

 彼から地図を受け取りなくさないように、手帳に挟み込む。何だか宝の地図みたいな気がしてワクワクしていた。
 その後は携帯電話がどれほど恋人たちの繋がりに必要かを実例つきで切々と親友カップルが語り何時の通りの昼休みが過ぎて行った。

―それにしても彼の家は思っていたより遠かった。よくよく考えれば分かりそうなものだったんだけど、簡単に私の家に来てくれるから近いと思っていた。いつも来てもらってたのは悪かったかな。まさか電車で二駅あったなんて。―

 駅につき、切符を買う。ホームで電車が来るのを待つ。
 それにしても今日は本当に寒い。早く電車来ないかな。はく息は真っ白だ。暖冬はどこにいったんだろう。ホームに電車が入ってきて扉が開く。暖かい空気が洩れてきた。
 電車に乗りロングシートの端に腰掛ける。ここから二駅だけど、チョコ溶けないよな。
電車を降りるまでもってくれると良いんだけどな。ゴトゴトと揺られながら袋の中に入っているチョコを作った日の事を思い出ていた。

 市販の板チョコを細かく刻む。簡単なはずのこの作業が思った以上に難しい。一緒に刻んでいた親友は隣で生クリームを暖めている。

「亜由美、チョコ細かく出来た?。こっちはそろそろ良いはずだけど。」
「うん、たぶんいいと思うけど、見てくれる。」
「わぁ細かいね。それなら問題ないよ。じゃ入れるからそれちょうだい。」

 親友に切り刻んだチョコを渡す。親友はコンロから鍋を外して、刻んだチョコを生クリームの中に入れて溶かしていく。見る見るうちにチョコが生クリームに溶けていった。
それを丁寧に杓文字で混ぜていく。次に溶けきったチョコを予め用意しておいたパッドに流し込む。
 そして、チョコを流し込んだパッドを冷蔵庫に入れる。あとは時間が経つのを待つだけだ。
 そう親友は生チョコを選択した。あまり凝った物は最初にしては難しいので、それなりに簡単で美味しい物ということで生チョコらしい。それでも初体験なだけあって面白かった。

「はい、あとは固まるのを待って。切り分けてラッピングしておしまい。休憩しよう」
「うん、だけどその前に片付けしよう。それで休憩。」
「そうだね。固まってから洗うの大変だしね。」

二人で使った道具を洗う。まだ暖かいのでお湯で流すだけできれいにとれていく。水を切るために逆さまにして網棚に置いていく。

「ねぇ、来年はもっと凝ったのにしようね。」
「うん、そうだね。」

来年は果物とか使ったのを作ってみたいな。そんな風に考えていると親友に小突かれた。

「ねぇ」
「なに」
「チョコ以外にも何か準備してるんでしょ。」
「えっ、何で。」

確かにチョコ以外の物も準備してる。何でわかったんだろう。

「隠さない隠さない。私も最初はそうだったしね。」

親友は何かを思い出すかのように笑っていた。

「そうなんだ。何を……「で、何あげるの。」

先に聞かれてしまった。後で教えてもらう。

「手編みの手袋。」

 そう、クリスマスのときに思いつき来年のプレゼントと思い練習をはじめてた。お母さんは気が早いっていっていたけど。私には丁度いいくらいだと思った。
 その前に渡してあげれる日がある事に気づき、ちょっとばかりペースをあげて編みはじめた。おかげでチョコに関してはギリギリになってしまったんだけど。
 手袋は指を全部分けたタイプではなく、親指と残りを分けた簡単な奴だ。今の私にはこれが精一杯の技量。クリスマスにはマフラーとセーターと帽子をセットで渡したいな。

「へぇ、いいなアイツ。今度は私にも何か作ってね。」
「えっ、まだ始めたばかりだから不格好だよ。」

 そんな話をしているうちに水切りをした道具を拭きしまっていく。あらかた道具を棚にしまい込み、飲み物を準備する。

「優子、コーヒーと紅茶どっちがいい。どっちともインスタントだけど。」
「えっとコーヒーかな。」

 コーヒーカップを取り出しカップを暖める。その間に戸棚からクッキーを取り出す。
適当な量をカップにいれお湯を注ぐ。親友の分にはミルクと砂糖を添えてテーブルにおく。私は何もいれない。

「おまたせ。今日はどうもありがとう。」

 私はお礼をいう。彼女がいなければチョコは買った物になっていただろう。

「いいって、私も作る予定だったし、それにお家にもよんでもらえたしね。」

 親友は砂糖を半分とミルクを入れコーヒーを混ぜる。

「へぇ亜由美はブラックで飲むんだ。大人だね。」
「そっかな。お母さんがそうだったから。」
「ねぇ弟君や妹ちゃんは?」
「二人なら夢の中。お昼寝中」
「それは残念。会ってみたかったのにな。」

 時計を見る。もしかしたら起きてくるかな。

「チョコが固まるまでには起きてくるような気がするけど。」
「そっか、それは楽しみだ。そうそう、今さらなんだけど。どうしてアイツなのかな。」
「どうしてって、何が。」
「だってさ、気づいてないかもだけど。結構いるんだよ。亜由美を狙っている男の子。」

それは初耳だ。私なんかのどこがいいんだろうか。親友の方が多そうだけどな。

「嘘ばっか。私が何で。」
「ダメだよ。もっと自覚しないと。その内に真一に襲われちゃうぞ。」

 彼はたぶんそんなことしない。そう確信を持てる。ヘタレとかそんなのじゃなくて、上手く言えないけど、そう感じている。

「大丈夫だよ。絶対しないよ。」
「なにそれは彼に対する信頼。いいな。」
「優子だって圭司君に対してそう感じてるでしょ。」

私ばかりなのもアレなので聞いてみたかった事を聞いてみた。

「ねぇ優子と圭司君はいつからなの。」
「私たち?小ちゃい時から一緒だったから。」
「それって幼なじみってこと。」
「そうだよ。でもちゃんとつき合いだしたのは中一のバレンタインの時。私からね。」
「わぁ凄いね。でも、いいなそれ。」

 などと、互いの彼氏の話やどうでもいいような話。主に私と彼の話だった気がするが、色々と詳しく聞いたり聞かれた。あとは、ちょっぴり進路の話なんかもした。進路の話をした時にちょっとだけ寂しそうな顔をしていた。そんなたわいもない話している間に時間が来た。

「そろそろ大丈夫かなって言うか。喋りすぎたね。」
「そっだね。でも楽しかったな。」

 時計を見ると予定していた時間はとっくに過ぎていた。冷蔵庫からチョコを取り出す。いい具合に固まっている。あとは適度な大きさに切って、ココアをまぶすだけ。ヤカンでお湯を沸かして、包丁をあっためる。あと型をお湯につけておく。暖めた包丁を丁寧に吹き水分を取る。
 そして、慎重にチョコを半分に切り分けていく。親友に半分渡す。それを親友は丁寧に細かく立方体をつくっていく。
 私はお湯につけておいた型を取り出し、水分を取りゆっくりと押して行く。上手くいった。形はこれって決めておいた。箱に入る数を抜き終わり、残ったチョコを親友と同じように立方体に切っていく。
 それをココアの入った器で軽く転がす。私が作ったにしてはよく出来たと思う。味はこれから確認。そんな風に作業をしていると、扉が開く音がした。振り向くと目をこすりながら妹近寄ってきた。

「おねえちゃん。おはよう。」
「おはよ、りょうちゃん。ほらお口開けて。」

私はしゃがんで妹の口の中に破片をひとかけら放り込んでやる。

「おいしい。」

そい言った妹はとっても嬉しそうだった。

「そっか、りょうちゃんも楽しみにしていてね。今度のお休みにあげるからね。」
「ほんと、やったー。」
「じゃ、私もあげるね。楽しみしていてね。」

親友がそう言うと妹はびっくりしたように私の後ろをみた。

「こんにちは。初めまして。」

親友はそういってニッコリと笑う。とっても優しい笑顔だった。

「ほら、りょうちゃん。」

妹は私に隠れるように親友を見ている。
最初に彼が来た時もこんなんだったかな。彼はその日のうちにあっという間に仲良くなってたけど。

「だれ?」

妹がそういうと親友も私と同じようにしゃがんで妹を見る。

「えっと私はお姉ちゃんの友達の優子っていうの。よろしくね。」

そういって妹にチョコを一欠片差し出す。
するとビックリした表情は消えとっても嬉しそうな表情になっていた。

「ありがとう、おねえちゃん。」

そう言うと妹は走って出てしまった。

「ごめんね、優子。あのこ恥ずかしがりやだから。」
「いいよ。それにしても可愛いな。私も妹が欲しいな。ねぇまた来ていい。」

そう言った親友に対して大きく頷いてあげた。親友はとっても嬉しそうだった。

「チョコは亜由美に渡しておくから。その日にあげてね。キレイなお姉さんからって。」
「はいはい、ちゃんと渡しておくから。」

 そんなやりとりを交わした穏やかな祝日の午後のひと時を思い返しているうちに目的の駅に着いた。
 電車を降りて、改札をでる。ポケットの中から書いてもらった地図を取り出す。お店までの道は覚えている。取合えずお店が近くなったらもう一度確認しよう。
 そう思い、彼の家に向かって歩き出す。何だか胸の辺りが痛いぐらい、ドクドクとしている。
 もう緊張しているんだろうか。ちょっとだけ深呼吸をしてブルーに向かって歩き出す。
ブルーの前につく。外の飾りはバレンタイン用に飾ってあった。この間買いにきたときよりも派手になっていた。お店の中を覗くと、クリスマスの時にアドバイスをくれた店員さんが店のを掃除していた。
 この間来た時はいなかったな、アルバイトの人なのかな。そんなことを思いつつ再度、地図を確認する。ここから真っすぐいって三つ目の角を曲がった所。
 駅に着いたとき以上に胸が高鳴っているのがわかる。
渡しに行くだけで、こんなになるのに。これと同時に告白なんかしたらどうなっちゃうんだろうか。告白した親友はすごいな、絶対私には無理だろうな。

 そして、彼の家の前につく、なんだかとっても大きな家だった。
 表札を見る彼の名字が書かれている。ここで間違いはないよね。表札の近くにはチャイムがついてない。仕方ないので門を開け玄関まで続く小道を通り、玄関まで行く。壁についているインターホンを鳴らす。しばらくするとドアが開いた。

「えっと、どちら様ですか。」

そう言って男の人が立っていた。彼のお父さんかな結構似ている気がする。

「えっと」
「ああ、ちょっと待ってね。美咲、お友達来てるぞ。」

私が言う前に誰かを読んでしまった。

「あの。」

 すると私が切り出す前にその男の人は直ぐ近くの部屋に入ってしまった。広い玄関で一人取り残されていると、奥のからお姉さんがやってきた。なるほどお姉さんの名前だったのか。あの時に、名前も聞いた気がしたけど覚えてなかった。

「こんにちは、お久しぶりです。」

お姉さんは何だか不思議そうな顔をしていたが、やがて笑顔になり話しはじめた。

「あれ、もしかして。今日は髪の毛あげてないんだ。だいぶ印象違うね。でもそれも可愛いよ。」
「えっ、ありがとうございます。」
「今日はどうし、あっ、なるほどね。」

私の手元をみてそう言った。何だかとっても楽しそうだ。

「たぶん部屋にいたと思ったけど。まぁ寒いから中へどうぞ。」

そう言ってスリッパを取り出してくれた。

「お邪魔します。」

 靴を脱ぎスリッパに履き替えていると、手前の部屋から女の人がやってくる。よく見るとお姉さんとよく似ている。たぶん彼のお母さんなんだろうな。すごく綺麗な人だ。

「もう、玄関で何やってるのお友達が来たらならさっさと上がってもらいなさい。寒いんだから。あれ、初めて見る子ね。誰さん?」

お姉さんは私を見て何やら考えている。すると何かひらめいたような顔をしてこんなことを言った。

「妹。」
「誰の。」
「私の。」

そう言って私を見る。何の話をしているんだろうか。でもなんだかとっても嬉しそうだ。

「何わけわからないこといっているのよ。まったく。ごめんなさいね。変な子で。」
「ねぇ、母さん真一は部屋かな。どうしてる。」
「たぶん部屋。さっき洗面所でなにかしてから。出かけるのかな。」
「違うって。なるほどね。」

それを聞きお姉さんは何やらニヤニヤしていた。

「何ニヤニヤして、それでその子は誰なの。」

お姉さんが何か耳打ちする。するとビックリしたような顔をしていた。何を言ったのだろうか。

「うそ、本当に。」
「だから私の妹っていたでしょう。」

私をマジマジと見つめる。えっと何だろうか。

「あの。」
「ごめんなさいね。はじめまして。」
「こちらこそ初めまして。」
「いい。うんすっごくいい。こんな子が欲しかったのよ。あの子もやるわね。」
「何それ、私は?」
「アンタは、まぁいいのよ。そのうちいなくなるんだし。ほら、あがってあがって。」

そんなことを言いながら彼のお母さんは後ろに回り、私の肩を掴み後ろから押してくる。

「あっ、そんな押さないでください。」

隣でお姉さんは笑っている。

「ごめんね。こんなんで。でも気持ちはわからなくないな。」

 えっとその、なんなんだろうか。そして、リビングに案内され、勧められた席に座る。私の正面には彼のお母さんが座り、私の隣にはお姉さんが座る。
 あれ、彼を呼んできてくれるんじゃないんだろうか。すると彼のお母さんから自己紹介が始まった。

「さて、改めてはじめまして。真一の母です。おかあさんって呼んでくれると嬉しいな。」
「えっと榊亜由美です。はじめまして。」
「クリスマスの時はごめんなさいね。この子がアホな事して。」

そう言って隣にすわっているお姉さんを見る。

「もう、アホって何よ。アホって。」

お姉さんが講義の声を上げる。

「いえ、こちらこそすみませんでした。でもおかげで楽しかったです。」

アレは今では良い思い出の一つだ。

「それはそうと、アイツのどこがよかったの。」
「お母さん、それこの間私が聞いたよ。もっと別のにしようよ。」
「いいの私も聞きたいの。」

 私はボソボソとあの時お姉さんにいったのと同じ事ような事を伝える。暖房がきついのかな、何だかちょっと熱い。
 それからは私の事、学校での二人の事などを聞かれて答えていたら、突然こんなことを言われた。

「あと、二人はどこまでの関係。」
「えっと、あの。」

 何だろうこれは、チョコを渡しにきたのに。何でこんなことになっているんだろう。何て答えようかと考えていると、お姉さんが答えを出していた。

「あのねキスはしてるよ。」
「うそ、どこで。どうやって。なんでアンタは知ってるのよ。詳しく教えなさい。」

 彼のお母さんはとってもビックリしていた。彼はそう言う事は家族に言ってないみたいだった。
 あの時の事をお姉さんは事細かに伝える。なんて嬉しそうに話すんだろうか。聞いているだけですっごく恥ずかしい。さっきよりも体が熱くなってきた。熱かったのは暖房のせいではなく、私の体温がぐんぐん上がっているせいだったみたいだ。間違いなく私は今、真っ赤なんだろう。

「なるほど、誰に似たのかしらね。やる事はやるのね。」
「お母さん、感心しないの。もしもかしたらもっと先まで二人はいってるかも。」
「うそ、もうしちゃったて事。えっとどうなの。」

 彼のお母さんはとっても真剣な表情で聞いてくる。えっともっと先って……しちゃったって……。ダメだ、恥ずかしすぎてどうにかなりそうだ。とりあえず、首を横に振る。なんだかうまく喋れない。

「本当にまだなのね。よかった。」

 今度は縦に首を振る。そんなとき、リビングの戸が開く音がした。そちらに視線を向けると彼が驚いた顔をしてこっちを見ていた。
 私と視線が合う。彼と視線が会った瞬間、私はホッとした。さっきまで熱かった体が嘘のように平常に戻って行くような気がした。

「亜由美、いらっしゃい。こっちこいよ。」

彼はそう言って私の所に来て手を掴む。

「あっ、うん。」

私は彼に引かれるまま立ち上がる。

「こら、まだ私たちが話てるでしょ。」
「そうよ、今とっても大事な事聞いてるんだから。」

そんなお母さんとお姉さんの声を無視して彼は進んで行く。

「お母さんも、お姉さんもありがとうございました。」

私はそれだけを伝え彼に引かれながらリビングを出ていく。廊下の突き当たりにある階段を上がり、二階に行く。

コメント(2)

「今日は髪おろしてるんだ。」
「うん、どうかな。」
「似合ってる。覚えていてくれたんだ。」

 私は頷いた。あげているのもいいけどおろしている方がもっと好きだ。
そんなこと言われたら、誰だって意識する。ただ、普段はおろしていると邪魔なので上げている。
 けど、今日は髪をまとめあげなかった。だって彼の好みに合わせたかったから。部屋のドアを彼が開け、部屋の中にいれてくれる。
 彼の部屋は彼らしいとってもシンプル飾られた部屋だった。男の子の部屋ってもっと、ごつごつした感じをイメージしていたけど、彼の部屋はなんとなく柔らかな印象だった。

「えっと、そこに腰掛けて。」

 彼はそう言ってベットをさす。私は彼のベットに腰掛ける。私の家にあるのよりちょっと大きなベットだった。彼もちょっと離れて私の隣にかける。もう少し近くに座ってくれてもいいのにな。

「ごめんな。母さんも美咲もなにしてんだか。」
「ううん、楽しかったりもしたから大丈夫。」
「本当か、だってすごく困った顔してぞ。」

 まぁ確かに最後の方は困った質問ばっかりだった。でも、嫌じゃなかった。
だから私は大きく頷いた。

「それにしても父さんも何してたんだろう。人が来たら教えてくれって言ってあったのにな。」
「あっ、お父さんなら会ったよ。お姉さんの友達だと思ったみたい。」

 彼はなんだか考えるような顔をしていた。そうだ渡さなきゃ。何のために来たのかわからないや。私は手に持っていた袋の中からまずは、チョコ箱を取り出し彼に渡す。

「えっと、これ。バレンタインのチョコ。」

 彼ははにかみながらこっちを見て、受け取ってくれた。

「ありがとう。開けてもいい。」
「うん、どうぞ。」

 彼は膝の上でゆっくりとラッピングをほどいて行く。何だかドキドキしてきた。

「この包装紙も亜由美らしいくていいね。」

 そして、彼は一旦手を止めた。箱の上のカードに気づいたみたいだ。目の前で読まれるのはちょっぴり恥ずかしいな。そう思うなら書かなければいいんだけど書いておきたかった。
 彼がこっちを見る。どうしていいのかわからず思わず私は目をそらす。恐る恐るゆっくりと視線を戻すと彼はとっても優しそうな表情で箱を開けていた。

「ハート型なんだ。一緒に作ったていってたから。四角いと思ってた。」

 そう私は生チョコをハートの型で切り抜いた。私の中でバレンタインチョコのイメージはハート型なのだ。

「あとね。これも。」

そういって私は袋から手袋を出す。

「これって、もしかして手編み。」

彼は受け取り片方を手にはめる。

「あったかい。大事につかうよ。」

 彼はそう言って、手袋を外して机の上に置きベットからたった。再び私の横に座る。さっきよりちょっとだけ近くなった気がした。

「チョコ、食べてもいい」

 彼がそう聞いてきた時、私はふと思いつきベットの上に置かれた箱をとり、一緒にいれておいた楊枝にチョコを刺して、。彼の前に持ってくる。彼が受け取ろうと思って手を伸ばしたがうまくかわした。

「なに。」
「ほら、口開けて。ね、」

 この間、不意打ちでやられたこら今回は私から。それも、不意打ちでなく堂々と正面から。せっかく二人きりになってるんだし。実は一回やってみたかった。

「えっと」

 彼は少し赤くなっていた。私はじっと彼を見つめる。

「ねぇ、ダメ。」
「ダメじゃないけど。たださ、」

 そんな事を言いながらゆっくりと口をあけてくれた。ごめんね恥ずかしいんだよね。でもありがとう。私は彼の口の中にチョコを入れてあげた。

「どう。」
「うん、おいしいよ。」

 彼はそう答えた。良かった、自分でも味見はしたけど。彼に言ってもらえるまでとっても不安だった。彼にチョコの箱と楊枝を渡す。自分からしておいてちょっぴり恥ずかしくなってきた。

「ほら。」

 今度は彼がチョコを刺してにもっている。えっともしかして私にもしようってことなんだろうか。

「ううん、作ったときに食べたからいいよ。全部食べて。」
「そっか。」

 断れば無理にしてこない事を知っていた。だからそう言って私は逃げた。やっておいてなんだけどこれっは、やっぱり恥ずかしい。
 すると彼はチョコの箱を隣に置き、彼は手を重ねピッタリと横にくっ付いてきた。二人の距離がぐっと縮まる。なんだろう、どうしたんだろう。なんだかとってもドキドキしてきた。
 私は横を見る。彼の顔はちょっと赤かった。たぶん私も赤いんだろうな。重ねられた手が私の手をゆっくりと握る。私も握りかえす。そしてお互いに向き合う。
「なぁ、キスしてもいい。」

『今日は天気がいいな』みたい感じでスラッと彼がそんなことを言った。恥ずかしさで声が出そうもなかったので、私は目を閉じることで返事をした。
 ほどなくして唇が重なる。すると彼の口が開き唇をなめられた。思わず口が少し開く。その隙間ゆっくりと入ってきた。それに合わせるかのように私は自然と口を開いていく。
 すると舌の上に何かが転がり込んできた。次第にチョコの甘さが口いっぱいに広がっていった。これらの事は一瞬に行われ、私は驚いて目を開ける。
 その表情はさっきのお返しと言わんばかりの悪戯っぽく笑顔がそこにあった。唇を離さずそのままで、ちょっとだけ彼を睨む。でも、気持ちとしては、もう、しかたないな。そんな風に思っていた。だって今日は特別な日だから。
 そして、再び目を閉じ流れに委ねる。そんな時間がずっと続くかのように思ってた。でもそれは次の瞬間に終わりを告げた。

『パシャ』

 眩しい光と音で私は目を開けた。光が走った方に目をやると開いたドアの前にはお姉さんとお母さんがたっていた。

「ほら、お母さん。言った通りでしょう。いい写真が撮れた。」

 私は固まって動く事が出来なかった。えっとお姉さん。手に持っているデジタルカメラはなんでしょうか。いい写真が撮れたったて、もしかして今の彼とのアレをとられたんだろうか。
 火照っていた顔がさらに熱くなるのを感じ少しだけ冷たいのを感じた。すると私の目元に優しく手が添えられた。そして軽く撫でられる。
 何だろうそう思い彼を見る。彼は私と目があうと優しく笑ってくれた。よくわからず首を傾げる。
 さっきまで騒いでいたお母さんとお姉さんの声がしない。二人を見ると、困ったような顔をしていた。
 すると、とっても大きな声が部屋に響いた。

「二人とも何やってんだよ。」

 初めて聞いた。彼のこんなにも怒っている声。一番近くにいた私は竦みそうになり、彼の腕を掴む。彼は私の頭を軽くなでる。私は体を預けた。

「「だって」」

二人の声が重なる。

「だってじゃない。」

そういって私の腕をゆっくりとほどいて、立ち上がり、お姉さんがもっていたデジタルカメラを取り上げた。

「あっ。」

 お姉さんがそう言って抵抗しようとしたが、すんなりと彼にデジタルカメラを取られる。彼はあっというまにデジタルカメラを操作していく。

「消去完了。ほら」

そういいカメラをお姉さんに返す。

「いいじゃない別に減るもんじゃないんだから。」
「そういう問題じゃない。それに、母さんも一緒になにやってんだよ。」
「だって何か間違いがあってからじゃ。困るしね。」

 お姉さんを見る。お姉さんはウンウンと頷いていた。でも表情は二人とも浮かない表情をしていた。

「そんなことするか。恥じかかせるな。ほらちゃっちゃと出てけ。」

 そういって彼は二人を部屋の外に追い出す。部屋のドアを閉しめる時お姉さんと目があう。お姉さんは手を合わせゴメンネとしてくれた。私はそれに頷いた。二人が出ていくと部屋が静かになった。

「亜由美、ごめんな。」

彼はそういって横にすわる。

「大丈夫。」

私はそう答え彼を見る。

「無理するなって、泣いてたろ。」

私は再び彼に体を預けた。

「ううん、ビックリしただけ。涙は何だか知らないうちに出てた。」
「そっか、でも本当ごめんな。アホな身内で。」

彼はそう言って頭を掻いていた。

「真一、あのね。お母さんもお姉さんも悪気はなかったと思うから。だから許してあげてね。」
「わかってる。お前は優しいな。」

 彼は私をギュッと抱き寄せながら言った。そう言ったあと、彼は私の耳元まで顔を近づけ、囁いて離れる。私は小さく頷く。再び私は目を瞑むる。
 今度は驚きもなく受け入れる、まだちょっとだけチョコの味がした。今度はお互いが自分の意志で離れるまで誰にも邪魔はされなかった。

 初めてのバレンタインは口に広がったチョコの甘さよりも甘く幸せに満ちたものだった。

fin

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