九条の会@mixiコミュの人類の当面する基本問題（７）軍事国家アメリカが平和への最大障害　覇権意識と新自由主義は変革可能か　落合栄一郎

　日刊べリタ記事の転載です。
http://www.nikkanberita.com/

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2010年12月25日10時19分掲載　印刷用

人類の当面する基本問題
（７）軍事国家アメリカが平和への最大障害　覇権意識と新自由主義は変革可能か　落合栄一郎

　　人類の念願する平和への最大の障害は、現在のアメリカという国家である。なぜそうなってしまったのかを簡単に考えてみたい。複雑な問題だが、基本は単純である。基本的問題は、アメリカという国家のもつ覇権意識と資本主義市場経済（新自由主義）の徹底である。しかし、このような状態になってしまった軍事大国アメリカを早急に変革させる方法はあるのだろうか。

　覇権意識は、後者の目的を遂行する為の建前となっている。そして、覇権意識を支えるのは、「アメリカは最善の国」という多くの国民の間違った意識である。そのような体制を他の国にももたらしてやることは良いことだという傲慢なお節介である。イラク侵攻にあれだけのウソを並べて始めたにもかかわらず、一方では、サダム・フセインの圧政を倒して（アメリカ流の）民主主義をイラク国民にもたらしてやるのだという、善意なるものを多くの市民は持っていたので、あのような状態がいつまでも引きずっていられるようである。もちろん、様々な、もっと直接的な理由はある。

　しかし、覇権意識を全面に出していたら世界中から総スカンを食わされる可能性がある。そこで、アメリカ政府は、すべての戦争を「自己防衛」の形に持って行く画策をしてきた。ヴェトナム、イラク、そして日米開戦にも、おそらく現在の中東戦争の発端となったいわゆる9・11テロ事件も、そうしたある種の画策やウソのでっち上げを用いて、戦端を開く口実にしてきた。今は、北朝鮮とイランを悪者にしたてあげることに懸命になっている。そしてそれに備えるという名目で、世界中に米軍基地網をめぐらせている。どうしてか。戦争が唯一の経済基盤になってしまったからである。

　さて，アメリカは、建国当時から、政府は「企業」による政治・経済支配を懸念してきた。その初期の事情は先に述べた（日刊ベリタ2007.12.13，2008.01.08；「アメリカ文明の終焉から持続可能な文明へ」無料ダウンロード：http://www.e-bookland.net/gateway_a/details.aspx?bookid=EBLS10071200
）ので繰り返さない。しかし、企業が社会的地位を拡大し、アメリカ人全体に、「自由な企業活動がアメリカ的なもの、アメリカの基本」という考えを植え付けてしまった。
　現在、アメリカはこの意味で「コーポラトクラシー」（企業主義―民主主義に対して）と呼ばれるが、かなり以前から実はそうなってしまっていた。第2次世界大戦後の共産主義国家群の台頭は、「コーポラトクラシー」にとって大脅威になった。そのため、マッカーシズム旋風などを通して、「共産・社会主義＝悪」なる観念をアメリカ国民に植え付けてしまった。現在でも、右派にとって気にいらないものには、「共産・社会主義」というレッテルをはりつける。するとそれに煽動されて大衆は、心底から反撥する。まったく、モノを考えず、レッテルだけで動く。このレッテル付けは、企業体系に組み込まれたメデイアが大量のカネを注ぎ込んで行う。「合理性」とか「理性」とかは、大衆からは期待できない。

　おそらく、このことは、先頃（日刊ベリタ2010.12.23）報告したアメリカ人の宗教意識と関係しているであろう。
さて企業の唯一最大の目的は、利潤である（「利潤という利己的遺伝子」日刊ベリタ2007.04.12）。企業はこのためにはあらゆることをする。戦争相手の国に金融融資したり（実際アメリカのある種の銀行は第2次大戦中ドイツに融資）、労賃を低く抑えるためには労働組合運動は弾圧、労賃の安いところへ工場移転、工程の機械化などなど。金融面の利潤のためには、借金（住宅ローンなど）の金融証券化など。

　そして海外に雄飛した企業を脅かす外国政府は、様々な手段で崩壊させてきた。チリのアジェンデ政権の転覆が典型例だが，中南米諸国を始めとして数々の例がある（日刊ベリタ2007.12.13，2008.01.08）。

　アメリカの産業は、第2次世界大戦直後は世界最大、世界最強であった。しかし、やがてドイツ、日本その他に押され始めると、競争力を回復するために、安い賃金で生産できる海外に工場を続々と移転させてしまった。しかし、軍事関係の製造業は海外に移転するわけにはいかない。
　この結果が、現状である。アメリカに残る主な産業は、軍需関係（武器製造、戦争関係サービス業）とそれに繋がるハイテクのある部分、製薬、そして消費者向けの低価格大流通業と日常のサービス業のみといっても良い状態になってしまった。これらの産業（企業）が全て、利潤増大に邁進しているのがアメリカの現状である。

　流通最大手ウオールマートと従業員とのいざこざは絶えないし、製薬業は，最近では、様々な「ごまかし」で裁判沙汰に追い込まれ、課せられる罰金は軍需産業を超えたようである。しかし、それでも罰金を払う方が有利とみえて、儲かる見込みのある、ごまかしの薬の販売（もちろん正規のものもある）は後をたたない。昨年は世界保健機構を動かして、スワインフルーなるパンデミックを演出させ、大量のワクチンを各国政府に買わせることによって大変な利潤を上げた。

　さて、軍需産業である。これが，現在のところ、殆ど唯一の成長可能な産業すなわち、まともな雇用を提供できる産業になってしまった。この産業分野が、利潤を拡大し、成長するには、戦争を起こすにしくはない。市民も、この雇用機会に依存せざるをえない。このような雇用機会を削る動き（防衛費削減、基地閉鎖、兵器生産停止）は市民の反撥を買う。だから、地元国会議員は、そのような動きは国会でつぶしてしまう。軍需企業側にとっても好都合である。
　国民の税を注ぎ込んで兵器を開発、製造し、戦争を促進、外国に兵器を売りつける。これによって、軍需産業は肥え太り、市民は戦争遂行の犠牲に。他国の市民が何人死のうと眼中にない。これが法人という、人間の理性とか道徳感を持たない「ヒト」の行動原理に基づく当然の結果なのである（日刊ベリタ2010.11.06）。

　このような国家体制が、エリートによって作り上げられてしまった背景には、アメリカ国民への教育（広い意味で）の欠陥がある。エリートの教育も含めて。教育の問題はアメリカに限らないが、これは別の機会に。

コメント(2)

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[1] mixiユーザー 12月25日 22:28

＞ぜんしんさん

「アメリカ」を「中国」に置き換えるとさらに適切だと思います。

[2] mixiユーザー 12月26日 09:27

＞müshükさん

　中国は日本やアメリカの後追いをしている遅れた国だと思います。これに反してアメリカは進んだ？最悪の国と言う関係だと思います。人類が解決すべきことはアメリカが引き起こしている問題を解決することでしょう。
　アメリカに本拠を置く多国籍主義者が癌細胞を世界に波及させて、世界を破滅直前のところまで追い込んでいるのだと思います。多国籍者は自国にも他国にも縛られない国の枠から外れた集団です。
　彼らは都合の良い時だけ「自分の国」と言います。国民のことなど考えません。安い資源、安い人間がおればどこでも出ていき、高く売れるところにはどこにでも出ていきます。この結果、一方に巨万の富が蓄積し、他方では世界の国民と国が破産寸前に追い込まれています。

　この癌の正体は自由主義です。他人のことなど考えない自由競争が生き残りの原則です。法(話し合いで生まれたルール)に縛られることを嫌うのです。経済でも軍事でも法を取り払おうとしています。
　地球生物を絶滅させる科学技術をもつ人類が自由主義に負けたらどんな悲劇に向かうか考えて見てください。もうこの流れは止まらないかもしれませんが。

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