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J.M.クッツェーコミュの吉村治郎の『恥辱』の誤読

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以前書いた文章ですが、アップしておきます。

吉田徹夫監修の『ブッカー・リーダー』(2005年)には、クッツェーの『恥辱』について吉村治郎という九州大学大学院の助教授が書いている。それなりに面白い論文であるが、いくつか的を外していたり、誤っている点があるので指摘しておこう。

まず、教授がレイプまがいに手中に収める女子学生メラニーは、吉村氏によると中国系の有色人種といことになっている(318頁)。これはどういった根拠によるものなのか。確かに、「小柄で細身、短く刈った髪は黒く、中国的といってもいい広い頬骨、大きな黒い瞳」(訳書、15ページ)と書いてあるが、中国系というということを示唆するものはどこにあるのか。むしろ黒人女性とみなすべきであろう。たとえば、メラニーは次のように発言している。「2年生のとき、エイドリアン・リッチとトニ・モリソンをやりました。それから、アリス・ウォーカーも。私、夢中になって読みました」(訳書、18ページ)とある。これらの女流黒人作家に関心を寄せる女子学生が、中国系だとどうして言えるのか。

あるいは、メラニーは新生南アフリカの演劇に興味を持っており、ドック・シアターという芝居参加してる。そこに登場してくるのは黒人と白人であり(訳書、31頁) 、彼女は新米美容師グロリアを演じている(訳書、248頁)。この芝居を見た教授は、「彼らの中に入ると、この上ない違和感を覚える」(249ページ)と感じる。彼らとは誰であろうか。常識的にいえば、黒人ではなかろうか。

コメント(5)

つぎに教授が買春するソラヤという女性についてである。吉村助教授は、「彼女はおそらく白人と黒人の混血であるカラードと呼ばれる人種であると思われるが」(322頁)と指摘する。私は、これははっきりと間違いであろうと考える。そもそも教授が通う売春クラブは、「エキゾチックなタイプはよりどりみどりです。マレーシア、タイ、中国、お好みをどうぞ」(訳書、12頁)なのである。決定的なのは、彼女の背景について、「ムスリムや異例のことだが、今日びの世の中だなんでも起こりうる」(6ページ)とある。また、「ソラヤには好んで贈り物をする。新年には、七宝細工のブレスレットをやり、イスラムの大祭”イード”には、骨董品店で目にとまった小さなクジャク石のアオザキの置物をやった」(8ページ)とあるのだ。要するに彼女は、イスラム教徒でエキゾチックな女性なのである。だとすれば、マレー系かインド系のカラードであると考えるのは普通である。
吉村氏の行きすぎた解釈についても指摘しておこう。

「ここ東ケープはそのような白人主体のキリスト教的モラルは通用しない。隣に住み何かと支援してくれる黒人ペトラスによるルーシイの搾取が物語るように、逆に黒人が白人を搾取する世界である。いわば逆アパルトヘイトの世界といってよい」(322頁)と論じている。

同様に、吉村氏は次のように述べている。「彼女は殉教者なのだ。しかし彼女とてデカダンスと無縁ではない。同性愛者であるからだ」(329ページ) 同性愛をデカダンスと呼んでよいのか。

逆アパルトヘイトといい、同性愛デカダンス説といい、吉村氏のクッツェー解釈はあまりにも保守的反動的ではないのか。こういう解釈がまかり通るようでは、クッツェー文学が南アフリカで批判されてしまうのも当然といことになってしまうだろう。
要約


教授が買う女性  白人と黒人の混血==>インド系かマレー系
    
   ∵ イスラム教のエキゾチックなタイプだから 

教授が寝る(セクハラ)女学生
         中国系===>黒人

   ∵ 黒人女性文学、黒人演劇への関心
メラニーはアフリカーナーかと思ってました(汗)
>メラニーはアフリカーナーかと思ってました(汗)

そういう可能性も捨てきれないでしょうが、そうだとすると、かなりラディカルな女性という設定になりそうです。(新世代の南アの黒人演劇でどんな役を担ったのでしょうか? 白人アフリカーナということもありうることなのでしょうか?)。

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