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five actually 〜5人寄らば〜コミュの第2章 出会い

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大学生活に入り、2年。
なぜか外の人間との交流が広がっている傾向にあったが、学内にも割りと気が合う友人が出来、授業を抜け出しては何を語りあうわけでもなく集まり、時間を過ごしている。
ほんとに、10分前の会話も思えだせないくらい他愛のない会話。
芸能人として、歌手として、作家として、一流スポーツ選手として、脚光を浴びている同世代がいるというのに。。。全く自分は何をやっているんだろうと自己嫌悪に陥るときが何度かありはしたものの、こんな生活も悪くないと過ごしていた。

最近までやっていたハンバーガーショップでのバイトは店員の“人妻”とのごたごたに耐え切れず、辞め、今はテレアポのバイトをしている。
人妻という肩書きがなければ、うまくいく可能性はあったかもしれない。でも、田舎から出てきた僕には結構しんどいものがあった。責任という言葉は知っていたとしても、その内容を理解し行動に移せるほど人間が出来ていなかった。まだまだ。。。

コメント(20)

いつものように大学に行き、バイトに行き、そして誰もいない家に帰る、何気ない毎日を送っていた。

そんなある日、休みだったため部屋の掃除をしていると、携帯がなった。

着信画面を見ると、知らない番号からの着信だ。不安になりながらも電話に出てみた、・・・・

(女の声)「もしもし、久し振り、元気にしてる?・・・・」

誰だろう・・・?

「すみません失礼ですけど、どちら様ですか?」

受話器ごしに聞こえ来るの女の声、聞いたことあるような無いような…。



(女性)「あっ、ごめんなさい。叔母さんから聞いてかけたんだけど、いとこの友里だけど…覚えてる?」

電話の主は、小さいころよく家に遊びに来てた、いとこの友里だった!
でも、ほとんど覚えていない……もう何年も会っていないし、子供のころ以来だ!

いったい何の用でかけてきたんだ?
友里「実はね、今日久し振りに本家に行ったんね!そしたらおばちゃんから秀樹兄ちゃんが東京にいるってっ聞いたんよそれで・・・・」

秀樹「それで?」

友里「実はね、私東京に就職決まったんよ!それでな、慣れない土地だしお金もないし、東京はみんな危険だって言うから・・・おばちゃんには許可はもらったんだけど、秀樹兄ちゃんのところにその・・・なんて言うか・・・居候?みたいな(笑)」

秀樹「ちょっ!ちょっと待てよ、俺は聞いてないよ!」

友里「だから今言ってるじゃん!お願い!迷惑はかけないし、夜ご飯つくまりますから、ご主人様〜」

秀樹「・・・」

僕は断ることも出来ず、友里はうちに来ることになってしまった・・・。

 いつもの何気ない生活、独りで過ごす孤独な日々、それに、これから当分彼女も作れそうにないし、そんな日々から少し変化があっていいかなって少し思った・・・。
それから何日かして友里が東京に出てきた。
僕は学校が終わり、新宿駅からJRの中央線に乗り東京駅に着いたのは友里の乗った新幹線が到着する予定時刻の一時間前だった。
しょうがなく駅構内にあるカフェで時間を潰すことにした。

しかし東京駅に来たのは久し振りで、上京したちょうど二年前のこの時期、桜が満開の4月だった。こっちに来て随分と長くじかんがたったような気がする。
上京した日のことは今でもおぼえている

僕は18歳、高校卒業して大学生活に入る用意のため、一度上京した。入学手続きや、住民票移動、その他不動産、通学の手段、家の近くのスーパー、病院、生活用具、など出来ることすべて自分なりにすべて一人で整えて、自分を安心させて帰った。意外と神経質な自分に気づいた・・・。

いざ東京に日が来た。当時付き合っていた同じ高校の2つ年下の彼女が駅まで送りに来ていた。彼女から手紙と何か箱に入ったプレゼントをもらった。

彼女は目に涙をためながら僕にこう言った。
『秀チャン・・・なんかもう逢えないような気がする・・・嫌だっ!離れたくない!私も行く!』

僕は、落ち着かせようと過去に彼女に伝えた思いをゆっくりとはなし確認させた。
『いいか!俺は、おまえと離れたりはしないし、たとえ離れていてもいつも想ってるから、心配すんなって・・・愛してるよ』
今想うと赤面して吐き気を訴えるかも、よく人前で言えたもんだと過去の自分に感心する。

出発時刻、新幹線の扉はベルと同時に閉じられた。ドラマのワンシーンのようだった。

車内でさっき彼女からもらった手紙と箱をあけてみた、すると箱の方からハート型のクッキー、しかもハートが欠けていた、食べてみると塩の味がした。手紙には紙の端から端までぎっしりと『愛してる』と書いてあった。ちょっと引いたけど彼女の気持ちが嬉しかった。

以前、東京駅に来たのはそんな日だった。因みにその後、彼女とは別れた。遠距離によるすれ違い、彼女の浮気。このときからちょっとした女性恐怖症になってたもな。

ふと過去を思い出しながら、コーヒーをすすり、ぼーっとしていた。時計を見ると到着時刻、慌てて改札まで向かい、友里を探した。すると携帯にメールがきた。
『秀樹兄ちゃん(☆o☆)着いたよん☆友里』
改札口を見ると手を振ってる美女がいた、友里だ!会うのは十年ぶり。まるで別人のようだった。
そして久し振りの再開、そして新たな生活が始まった・・・
松井『どうしたん?浮かない顔して』

秀樹『いや。。。』

大学の講義をサボる時にいつもいる構内の広場のベンチで声をかけられた。
標準語にはない独特のイントネーション。
東北人の自分には当初、九州弁(彼は鹿児島弁というが、僕には判別がつかない)の語り口は、なぜか怒っているように聞こえて対処しきれなそうな怖さがあったが、2年も立つとなれ、今ではその語り口がなぜか耳触りが良い。

松井は僕の友人で大学に入って一番最初に仲良くなった人間だ。結構、映画の趣味であったりとか、お互い。。。漠然としたものでしかなかったが。。。将来なりたい自分のあり方が似ていて、楽しいというか、一緒にいると楽になれる人間だった。

昼食時のベンチは新入学生とその人間を囲い込もうとする人間でごった返している。声が四方八方に飛び交っている。

友里とのことで問題は山積みではあったが、努めてそのような状況を悟られずに繕ってはいた。しかし、周りが楽しそうにしている状況でそれを隠しとおすのは難しかったようだ。平静は保てても、周りの状況の中で自分のテンションを持ち上げるということは僕には出来なかったようだ。
まあ、松井の言葉は、結局は周りに比べての相対結果でしかないから、友里のことは隠していこうと考えていたが、その予想が外れる事を明らかに示す次の松井の台詞。
松井『どげんしたん・・・なんか最近あったんけ?』

秀樹『なんもないよ・・・。』

松井『うんにゃ(いいや)・・・俺にはわかる!最近何があった?俺には言ってみろよ。なぁ・・・女か?』

ドキッとした!ばれてるのかも知れない。正直心は揺れた、こいつなら変な目で見たり、疑がったりしないだろうし、現実問題として、友里との関係でよく分からないことや、どう接すればよいか?他のやつがもし同じ状況ならどうするのか相談したくてうずうずしていた。

とは言っても、端から見ればちゃんと話せばなんて事のない、そこまで悩む必要のない事柄なのだろうが、どうも物事を難しく考える癖があったようだ。
さらに今まで彼女と同棲もしたことのない僕にとってみれば、身内とはいえ独りの女と一緒に暮らすことの難しさ、どうしていいの分からないけど、今の僕にはその答えが・・・・。

しかし、それとなく松井に聞いてみた・・・・。
秀樹『なぁ松井、もしだよ?もし仮に、お前の家にある日突然女がが住みだしたら、決して彼女に出来ない女がだよ、住みだしたらお前ならどうする?』

松井『はぁ?言ってる意味が分からん?どう言うこと、彼女には出来ない女・・・?はぁ?』

秀樹『だから、仮定としって言ってんだろ?

松井『そりゃ嬉しいに決まってんだろ!たとえ彼女じゃなくてもよ〜!毎晩楽しみじゃねえか(笑)、だろ?あっ!もしかして、・・・お前んちにそんな奴が来たんか?ああ?』

《チャイムがなってる》

秀樹『おまえに聞いた俺が・・・・何でもない、さっ、次哲学だったよな?行こうぜ・・・・』

そうやって話しは途中で途切れた。


その日は結局、松井とは友里のことは話さなかった。そして、バイトも休みだったこともありまっすぐ家に帰った。


家の前まで着くと、電気がついていた。どうやら友里が帰ってきてるらしい。

秀樹「友里も帰ってるのか…」

ドアの前まで行き、インターホンを鳴らしてもドアが開く気配はなかった…

秀樹「音小さいから聞こえてないんだな。」

しかたなく鍵を使って入ると奥から話し声が聞こえた。どうやら誰かと電話してるらしい。気にせず部屋に入っていくと、俺に気付き…

友里「あっ、ごめん、電池切れそうだからもぉ切るね!また、メールするね!ばいば〜い♪♪」とあわてて電話を切った。

なぜかしらないが、友里のその行動が妙に気になった…

すると友里は…
友里「秀樹兄ちゃんおかえりぃ〜」

秀樹「ただいま、友里今日は早いね。電話は友達だったん?」

友里「そうだよ…」

秀樹「切らないで、俺にかまわず話ててよかったのに〜」

友里「…」

友里は黙ってしまった。何か違和感というか、不安な感覚にとらわれた。第六感というやつが働いたのかもしれない。

黙ったままの友里。表情が曇りだし突然泣き出した・・・ 。

秀樹『どっ、どうしたの?なんかあったの?』
友里『・・・』

友里は問いには答えずただ涙を流している。また聞いてみた。

秀樹『どうした、言ってみなよ!俺でよければ相談のるけど・・・いや、嫌ならいいけど。』

すると友里はゆっくり涙目の顔を上げこっちを向き話し出した。

友里『うん、実はね・・・・』

友里『・・・』

友里『振られた・・・』

流れる沈黙。沈黙。沈黙。どうしていいかわからなくなる。
途方にくれる自分。

友里『・・・どう?』
秀樹『どうって?』

目じりに涙を残した目でこっちを見る。
そしてにやっと笑う。

またかと思う。やっと理解する。
平気で嘘をつく性格。
何度となく、騙された。騙されないと警戒しても、忘れたころにまた嘘をつかれる。

今度は新しい武器を搭載し、さらに厄介になっている。
手には負えないと思う瞬間。
女性は怖いと思う瞬間。
何人の男共が騙されたことだろう。

秀樹『かわいそうに・・・』
思わず、口から出る。男共をいたわる言葉が。

友里『何が?』
こちらを伺う友里。

いよいよ友里の居候を認めたことが大変なことだと感じ始める。
食事をし(約束どうり友里に作らせた。今晩はすき焼きのたれを入れて簡単に作った肉じゃがと、かにかまがのったサラダ。期待と現実のギャップの大きさ。)適当に時間をすごし、シャワーを浴びて寝ようかという流れ。今日も一日が終わろうとしている。

友里『タオルはどこ?ないよ?』
先に入った友里がユニットバスから声を張り上げている。

さっきの友里の嘘からなんとなく友里の世話というか、面倒を見るというか、何かをしてあげるということが何かイライラさせる。あまり関わりたくないと思わせる。

いつもと同じところにあるはず。わかっているくせに。自分でやれよ。

秀樹『いつもの所にあるだろ?』
イライラを前面に押し出したような声色。

返事がない。時計の針を見る。5秒、10秒。
テレビの中の音だけが部屋に響いている。

秀樹『なんだよ・・・』

部屋のドアを開け、ユニットの入り口へ行く。タオル入れのバスケットを見ると、タオルは無かった。

ドア越しから伝わる、友里のイライラ。

なぜか笑いが出てくる。
お互いがイライラしている。どう考えても、長くは続かないだろう。どうにかなるだろうと思っていたところがあったが、こんなにも早く無理という気持ちになるなんて。あまりの早さでこんな気持ちになっている自分に笑ってしまったのだ。
もっとも声には出さなかったが。

収納から新しいタオルを取り出し、持ってきたことを伝え部屋に戻る。

これからどうなるのだろう。考えをめぐらせていると、自分の前を友里は通り過ぎ、寝室へ向かう。交わす言葉はない。

今日は僕がソファの日で。友里がベッドの日だった。

ソファーはベッドにもなるものだが、ベッドという名前をつけるにはあまりにも狭く、頼りないものだった。
世の中には、『ファミレス』と呼ばれるものが色んなところに建っている。

ある1つの町、地域だけでも数々のファミレスが存在している。

24時間営業、料理の付属サービスで飲み放題のドリンクバー
などは当たり前。同業種間での競争が激化しているのだろう、他店との差別化として大型テレビによる有料衛星放送見放題や店内インターネットへの無料無線LANによる接続サービスなど、サービスがどんどん向上しているらしい。

コストがかからず、快適に時間を過ごすことが可能な場所。

特にお金がなく、時間をもてあましているような僕ら大学生にとってはこれ以上快適な場所はない。

大学の周りにはちょうど同じくらいの距離に3件のファミレスが存在している。どこも大手のチェーン店だ。

それらのファミレスはどこも昼の3時過ぎくらいから徐々に大学生の出入りが多くなっていく。恐らく講義など聞く気も無くて、特に行くあてもなくて、という感じでみんなファミレスに行ってしまうのだろう。
行く当てもなく、大学の構内の広場でタバコを吸っていると、松井がやってきた。

松井『おおう!調子はどうよ?』

秀樹『まあまあ』

珍しく、しーんとしている広場に声が響いている。

松井『浮かない顔してると得るものも得られないし、近寄るものも近寄ってこねーぞ』

秀樹『どういうこと?』

松井『いや。。』

松井『いや、前先輩が言ってた。なんかお前に言えば意味があるような気がしたから言ってみた』

秀樹『なんだよ、それ』

松井『特に効果はなかったみたいやね』

松井はタバコに火をつけ横に座る。

松井『いつも同じところに居て、同じことしかしてないからだれるんだ。気分転換にファミレス行かね?』

秀樹『行って何か変わる?』

松井『行ってみないと判らんよ。そんなこと試しに行ってみようぜ』

時間を見る。16時。特に用事があるわけでもないけど、わざわざ行こうという気にもなれなかった。飯には早すぎるし、松井といろいろと話す気にもなれなかった。

でも、家に帰るのも“おっくう”というのもあった。
どこにいても大変ならば、新しいところに出かけてみるのもいいかと思った。


僕らはファミレスに出かけた。ゼミのノート、教科書をすべてロッカーに投げ入れ、手ぶらで。
『ジョナサン』
大学から一番近いファミレス。階段をい上った2階にある。一階はコンビニ ファミリーマート。地下に居酒屋ワタミ。

ファミレス内は時間をもてあましている人間数十名。
なんだかなと思う。

コーヒーを注文して、タバコをくわえる。

コーヒーとタバコ。
体に悪い組み合わせだと友里が行っていたことをふと思い出す。
そして、高校生のころ担任だった数学教師の息がタバコとコーヒーの混ざったにおいでくさかったことを思い出す。いやだ、いやだと思っていたが、自分もそうなるのかなと考えた。

いやだいやだと思って自分は絶対こうなるものかと思っていたことを気づいたら自分もやっていたりする。往々にしてある。

もっと色々あるんじゃないかと思ったが、めんどくさくなって考えるのを止めた。考え出すときっときりがないように思えたから。
ジョナサン店員『ご注文のコーヒーとフルーツパフェになります』

松井『はい、はい、どーも』
松井はうれしそうな顔で、パフェを手に取り早速ほおばり始める。

笑顔が素敵な女性だった。
名札はついていたが、そこに書いてある名前を確認できなかった。というより、“名前を見ている自分を見られたくない”“気があると思われたくない”という変なプライドが働いて、意識的に見なかったという方が正しい。
好きな人に、それを悟られたくない一心でいじめてしまう小学生。もしくは中学生。

松井『どうした?』

秀樹『いや』

松井『うんにゃ。なんかあったね。さっきの店員さんが気になったか?』
松井『とりあえず、今までのお前のタイプとちょっと違うみたいだね』

秀樹『まあ、そうかも』

秀樹『でもああいう感じで笑顔向けられたら、元気になりそうだね』

松井『確かに。あの八重歯もいい。気になってきたか?』

秀樹『・・・』

松井『俺が気になるのは、お前がさっきの娘をいいなと思うようになったことだわ。なんか心境の変化でもあったか?』

秀樹『そんなことねーけど。。。』

松井『そんなことねーけど。。。??』

松井『今までは完璧な、なんてか、まるで人形さんみたいな女の子ばっかいいっていっただろう?』

松井『さっきの娘はかわいい部類には入るだろうけど、そこまでといった感じだろ?どうしたんかな?って思うわぁ』

秀樹『あ〜、うん』

松井が俺をそこまでよく見ていたということに少し感心していた。
松井『ほほえみは最高の化粧。そんな言葉聞いたことあったな』

秀樹『えっ』

松井『豪華な衣装よりも高価なアクセサリーよりも均整のとれたスタイルよりもほほえみに勝る化粧はないってことだ』

秀樹『・・・』

松井『後はお前がどうしたいかだな』


流れる時間。


松井は後で頼んだドリンクバーにも飽きたらしく、ストローをスポイトのようにして、グラスから水分を吸い取り、テーブルの上に水滴を並べ作っていた。水滴5個で1セット。縦に2列。3列目には3つの水滴。合計13滴。

秀樹『すみません。ボールペン貸して頂けませんか?』

僕は隣の席の同じ大学生だろうか?女性に話しかける。
驚いた顔でこっちを見ている松井。
驚いた顔で自分を見つめる女性。

ナンパと思われないように努めて平静にボールペンを要求する。

秀樹『申し訳ないんですけど。。。すぐ返しますから』

大学生(女)『あっはい』

ミッキーマウスの頭をノックすれば芯が出てくるボールペンが渡される。

秀樹『すんません。すぐ返します。』

紙がないことに気づき、咄嗟にそばにあった手を拭くペーパーの束から一枚抜き取る。

そして言葉を。

でも、何を書き出すべきか浮かんでこなかった。
書き出すまで、こんなにスムーズに行ったのに。

しょうがないので、自分の携帯の電話番号とアドレスを書き記す。

松井『よし、行って来い』
行動の訳を察したらしく、松井は言う。
秀樹『・・・』

次の松井の言葉を待っていたが、松井は何かを言おうとはしなかった。

秀樹『今はまずい。帰るときにやるよ。受け取ってくれても、受け取ってくれなくても、その後ここに居るのは気まずい』

松井『じゃあ、帰ろう。』

秀樹『。。。うん。だな。』

立ち上がりボールペンを貸してくれた隣の女性を見る。
何を話しているのだろう?ケラケラと笑っている。
なぜか、自分が笑いものになっている気分にさせられる。

ミッキーマウスのボールペン。
捨ててしまおうかという気分になっていると、松井がボールペンを俺の手から奪い取り、隣の席の女性のところへ返しに行った。

松井『行ってこいよ』
そういい残して、隣の女性達の中に入っていった。ナンパか。


伝票を片手にレジの前に行く。丁度、あの笑顔が素敵な女性はレジの前で、伝票整理をしていた。

支払いを済ます。
こういう時はいつも、何を話していいのか頭の中が真っ白になる。
何を言えば、相手の心に響くのだろう。
相手を見て、相手の気持ちを考え、素直な等身大の自分で行けばいいと思っていても、言葉選びに終始してしまう。
ストレートに伝えられなくなる。

結局、回りくどく、何も伝えられず、目的は果たせなくなる。
ここ一番の時にはこういう形になってしまう。

でも、なぜだろう?


秀樹『あの、これ』

ジョナサン店員『はい?』

彼女の手の中に渡った僕の携帯の電話番号とアドレスが書かれてある手拭きペーパー。僕が握り締めていたものだからぐちゃぐちゃで、鼻紙の様。

どんな思いでそれを受け取ったのだろう?

秀樹『今日初めて、ここに来て、初めてあなたを見たんですけど・・・』

ジョナサン店員『はい?』

秀樹『・・・一緒に話をしてみたいと思いました。だから』


秀樹『あなたの笑顔が好きです。』


猫のような目。その目が大きく見開いている。
僕を見る。その目。その目に心が握り締められる感覚に陥る。

秀樹『その紙に電話番号とアドレスを書きました。できたら、連絡ください』

声の音量の調節が聞かなくなっている僕の喉。
店内に響く、僕の声。
背中に多くの視線を感じる。痛いほど。
松井はどんな思いで僕の背中を見ているのだろう?
自分のほほが熱くなっていくのを感じる。

彼女の視線を受け止めきれず、立ち去る。
背中に感じる視線にも。


かっこよくの退出は出来ない。
42.195km走破した後のホノルルマラソンランナーのように、その足取りはおぼつかない。

外にでた僕を追いかけるように松井がやってくる。
松井『よくやった。13滴×5分。イコール65分。65分で実行できたな、お前』

松井のその台詞を聞き、肩の力が抜ける。空気がしっかりと肺に入ってくる。息苦しさがなくなる。

いたずらを決めた子供のような雰囲気で僕の顔を覗き込んでいる松井の顔を見て、笑いがこみ上げてくる。
一瞬、松井の顔を見ていたら、友里の顔が浮かんでくる。
友里もいたずらを決めたときはそんな感じだったかな。

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