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意味不明小説(ショートショート)コミュの「晩夏」

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コミュ内全体

初めてキミのアパートに行く約束をした日
深夜 セブンイレブンの前で待っていると
千鳥足の君がぷらぷら手を振りながら現れた
知り合いの家でワインととびきり新鮮な金目鯛の刺身を頂いたそうで
アルコールの匂いをぷんぷんさせながらご満悦なご様子
近くのアジアンテイストな小さなサテンに入って
きみはジンジャエール ぼくはブレンドコーヒーを注文
楽しかった一日がきみの笑顔からこぼれおちるのを
ぼくは熱いコーヒーと一緒に味わった
もう真夜中の12時を過ぎているというのに
店内には小さな子供2、3人を連れた家族連れと
大きなおなかのゴールデンレトリーバーがうろうろしている
きみはちょっと気取ってハイヒールのサンダルを履いて行ったので
浜辺の階段で転んでしまったと苦笑しながら脛のあたりをさする
みると2つ3つ小さなあざができている
足の指にはネイルサロンでやってもらったという真っ赤なペディキュア
10匹の可愛い赤いカニが階段から落下し砂浜に着地する様を想像し
にやにやしながら ぼくは近寄ってきた犬の頭を撫でる

明日は早いのでそろそろ帰ったほうがいいと店を出ると
マスターが呼び止めて なぜかお祭りにあるようなヨーヨーをくれた
きみがなかなか上手にできないので「へたくそ」と言ってやってみると
あっちこっちに飛び跳ねてうまく手に当たらない
みれば中の水がちょっと足りないようだ
困ったように頬を強張らせるきみの手からヨーヨーを奪いとって
かわりにしっかりときみの手を握った
月明かりの静まり返った住宅街
どこかの家の庭先からコオロギや知らない虫の声が聞こえてくる
「手が汗ばんでる」
ときみが言うので
「そりゃおまえだろ」
と返して 二人して服で手をごしごしとぬぐって
再び手をつないだ
ちょっとちからを込めると握りかえしてくる君のゆび

ぼくたちの結んだ手のひらの中で立ち去りがたい夏が
ひっそりと呼吸しているようで 

気がつくといつのまにか きみのマンションの前まで来ていた
「ここの螺旋階段はハイヒールだとあぶないの。でものぼりは大丈夫」
と見上げるきみ
青暗い空に向かって伸びる螺旋
僕は眩暈をおこしそうになって視線を落とし
階段の下で佇んでいるきみにヨーヨーを手渡しながら
そっと きみのからだを抱きしめた
そして ぼくらは
不器用にキスをした

ヨーヨーが手からすべり落ちて
音もなく 地面に転がった 


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