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【二次創作】魔神英雄伝ワタルコミュの【3の第3話】 夜の砂漠

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【3の第3話】 夜の砂漠 2016年11月08日 02:41
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ノーザンタイガーは夜になるとツキノ砂漠にひとり寝そべって夜空を眺めるのが習慣になっていた。
この静けさが、彼の心を癒してくれる。

気がつけばノーザンタイガーは完全にゴンベエたちに打ち解けていた。
初めの頃は自分の身に起きている状況が理解できなかった事もあり、警戒を解く事もなかなかできなかった。
それもそのはずだ。浮遊界では常に周囲の者たちを警戒しなければならかかった。
仲間であってもその顔は偽りであり、本当は敵かもしれないような者たちばかりだったのだ。
ノーザンタイガー自身も、魔界皇子牙皇子を、チャンスがあれば出し抜いてやろうと常に思っていた。
自分自身に裏があるのに、簡単に他人を信じられるはずもない。

快適なこの環境は、それこそ自分を洗脳するために綿密に計算された罠ではないかとさえ思った。
だが、どうやらそうでは無さそうだ。仮にそうだとしても自分にとってデメリットがあるわけでもなさそうなので
開き直って気にしないようにした。

それにしても平和すぎる。誰も誰かを警戒したり、陥れたりしようとしないのだ。
そもそも中二界層最強のドラゴンが仲良く、砂漠をもっと楽しい場所にしようと日々働いているのだ。
浮遊界では信じられない事だ。

ドアクダーも中二界層から消えた。同時に救世主ワタルも創界山へ帰って行った。
だったら、ドラゴンの恐れる存在などいないであろうに。

だが中二界層には雷神の勇者と呼ばれる強者がいて、先日そのものに敗れたばかりだとドラゴンは言っていた。
信じがたい事ではあるが、どうやら本当らしい。
ならば何故、その雷神の勇者という者は中二界層を征服しないのだろうか。

「眠れないんですか?ノーザンタイガーさん」

優しい声の主はジャンヌだった。何時の間に現れたのだろう。
まったく気配に気づかなかった。
それは決して平和ボケでノーザンタイガーの感覚が麻痺していたからではない。
それはジャンヌの特技だ。というよりも、習慣、あるいは癖だ。
決してノーザンタイガーを驚かそうとしたわけでは無い。

「な…っ!気配を消して突然現れるとは…。貴様は暗殺者か!?」

「え…暗殺者…!?違います、違います!悪気はなかったんです!
ちょっと夜風に当たろうと思って外に出てきたら、偶然、ノーザンタイガーさんが
いらっしゃったので、お話でもしようと思って近づいたんです!」

ジャンヌはアタフタしながら謝罪した。
その慌てた姿が、悪意がなかった事を見事に証明している。

「おとなりに座っても良いですか?」

ジャンヌはノーザンタイガーの返事を待つ前に隣に腰を下ろした。

ノーザンタイガーにしろ、ジャンヌにしろ、最近は砂漠の開発に全力を注いでいたため、
個人的な話などは殆どしていなかった。

ノーザンタイガーはせっかくなので、自分の疑問をジャンヌにぶつけてみた。

「それは、未来の何処に目を向けているかが、魔界の人たちとは違うからだと思いますよ。
確かに、ドラゴン…桃龍さんや、半魔のクレナイさんは、ものすごく強いパワーを秘めています。
その気になれば世界征服だって可能かもしれません。

そのパワーのせいで、人々に恐がられたり、差別されたこともたくさんあるそうです。

だからと言って、本当に恐れられる存在になる必要はないと思っているんだと思います。
私も元ブリキンジャンパーだったのでわかるのですが、魔界の者たちの発想は少々
極端すぎます。支配する側になるか、される側になるかだけの
人生ってつまらないじゃないですか。友達もできませんし。

私、ゴンベエさんに出会ってから毎日が楽しいんです。
彼は生まれや育ち、見た目で誰かを差別したりしませんからね。
あの人と接しているうちに、もしかしたら、もっと多くの人たちと分かち合って
共に仲良く暮らして行けるんじゃないかなって思えるようになったんです。

きっと、それは桃龍さんや、クレナイさんも同じだと思いますよ。スフィンクスさんも。
ちょっと前までは、差別や偏見で、イヤな思いもされてきたみたいですし、
だからこそ、桃龍さんたちはドラゴンタワーに。スフィンクスさんはピラミッドに
居座って、外の世界との交流を極力持たないようにしてきたそうです。

でも、私同様、ゴンベエさんと出会ってからは違った未来が見えて来たというか…。
だって、戦わなくて良いんですよ、みんなが仲良くできれば。
恐怖で民衆をコントロールする事は確かに有効ですが、それって最終的に
幸せじゃありませんしね。

だから、みんな、手始めにツキノ砂漠を、もっと楽しい場所にして
みんなに提供できたら良いなって思って活動してるんですよ。

雷神の勇者も、虹の国のお姫様と婚約されたそうですが、
別にそれは政略結婚でも何でもなく、王様とお姫様に熱烈にアタックされて
心打たれたからだと聞いています。
王族になれば、当然権力も手に入ってしまいますが、別にだから
何かをしようとか、そういうタイプではなさそうですよ。
そもそも、この世界で、何かを企む必要性なんてないですから」

ノーザンタイガーは困惑した。

「まるで御伽噺だな。オレ様の理解を遥かに超えている。
でも、ここは、きっと本当に御伽の世界なのかもしれないな。
それは、何となくわかる気がする。
夜、安心して眠れる。一番驚いたのはそこだ。
敵がいないんだぞ。信じられない事じゃないか。
ぐっすり眠って、スッキリ目覚める。
そんな贅沢、浮遊界ではまずあり得ない。
権力を手にして、民衆を恐怖で支配でもしない限り、
自分が安心して眠れる事なんてないからな…。
ここにいると、本当に感覚が狂ってくるぜ」

そうは思うが、それは決して悪い意味では無い。
世界にはあらゆる可能性がある。中二界層にはそう思わせてくれる
不思議な力を感じた。

「それにしても、ゴンベエや、お前たちは、直接勇者たちと
ドアクダー一味を追い払ったわけではないにしても、実際は
かなりの活躍をしたのだろう。
何故、名乗り出て功績を求めないんだ?」

ノーザンタイガーは、自分の功績はきちんとアピールすべきではないかと
問い詰めた。

「私に関しては元魔界側の存在でしたし、ゴンベエさんは
特に功績を称えて欲しいとか、そういうことは思っていないみたいですよ。
それに、自分にもいろいろ落ち度はあるし、必ずしも自分の言動が
誇れるものとは言い切れないと言ってました。
ヒーゲボーシさんや他の大勢の方々も、活躍して下さいましたが、
みなさん、やっぱり、そこで自分を売り込んだりする気は無いようです」

ノーザンタイガーは腕を組んで顔をしかめた。
世の中には、自分の知らないところで活躍をしている者たちがたくさんいるのかもしれない。
歴史に名を刻んだ者たちだけが優れているわけでは決してないのかもしれない。
ふと、そんな考えが脳裏をよぎった。

「それに、世界を救ったと言っても、それは中二界層限定です。
創界山では、まだまだ救世主ワタルはドアクダーたちと死闘を繰り広げている
と思うんです。100%両手をあげて喜んではいられない…という気もします。

ゴンベエさんも、やはりそれは気にしていました。
でも、時空を越える術がなければ創界山を守る手伝いに志願したくても
できませんからね。悔しい話ですが…」

ジャンヌは空を見上げ、創界山を想った。
星々は穢れを知らぬかの如く美しく輝いている。
しかし、現実は何処かではまだまだ誰かが苦しんでいる。
そう思うと向けが締め付けられた。

ノーザンタイガーは、浮遊界の事を考えた。
あの世界も、中二界層のように誰に怯えることなく、嘘をつく必要もなく
ただ素直に生きられる時代が来るのだろうかと。

自分自身はこれからどうして行けば良いのか、思いつきもしない。
元の時代、元の世界に戻れる保証もないし、戻りたいかと問われれば
素直に戻りたいと言う事も無い。
戻ったら戻ったで、魔界の海の帝王ゴクアクダーに再び殺されるか、
あるいは魔界皇子牙皇子、もしくは虎王あたりに狙われるのがオチかもしれない。

どちらにしても今は、中二界層からは出られないのだ。
ならば、もうしばらくゴンベエたちと一緒に過ごし、中二界層の事を知るのも
良いかもしれない。

二人の間に沈黙が続いた。
すると、新しい気配が近づいて来た。

「誰だ!?」

ノーザンタイガーは立ちあがり振り向いた。
同時に剣を構えた。

「オレだよ。クレナイだ。何故そう、身構えるんだ、ノーザンタイガーは。
そんな態度だと、夜中にこっそり、ジャンヌとイチャついていたことを
ゴンベエにチクるぞ?」

クレナイは笑いながらノーザンタイガーの方に歩いて来た。
言葉選びこそ上品とは言えないが、攻撃の意図は無さそうだ。

「なんだと、このシスコン野郎!」

ノーザンタイガーは構えた剣を下ろそうとしない。

「シスコン…って。そうか、オレ、そんなふうに思われていたのか…。
ちょっと心外だな。それから、今のは冗談だ。別に密会だろうが何だろうが
誰かに言うつもりはない。安心しろ」

「あの、クレナイさん。別に密会していたわけじゃゃないですよ」

ジャンヌは慌てて弁解した。
クレナイは笑っている。
ノーザンタイガーは相変わらず構えたままだが、攻撃するつもりは無さそうだ。

いつの間にか、こんなふうに軽口を叩ける仲になっていた。
それはノーザンタイガーに限った事では無い。
クレナイにしても同じ事だ。

クレナイは、その場に腰を下ろし、空を見上げた。
無数の星はクレナイを歓迎するように輝いている。

「星、キレイだな。あまり、こうしてのんびり空を眺めた事なかったよ」

クレナイは目を細めて空をジッと見つめている。

「浮遊界の空は、こんなにキレイじゃない。
だから、オレ様は夜ここに来て星を眺めるのが好きなんだ」

「そうですね。こんなに広いところで、天然の星空を満喫できるって
ステキですよね」

三人は砂漠の夜空について熱く語りだした。

「まさか、桃龍やゴンベエ、スフィンクスもこっちに向かってたりしないだろうな?」

ノーザンタイガーは再び腰を下ろした。

「姉さんは、ぐっすりだよ。何しろ寝てる時は終始イビキだからな。
本人には言えないけど殺人級だよ。スフィンクスは動いている時以外は
起きてるんだか寝てるんだか、普段からわかりづらいから何とも言えない。
少なくともオレの気配に気づかないくらいだから寝てるんだろう。
ゴンベエは…知らない。あいつは、未だに何を考えているかわからん」

「確かに、ゴンベエはいまいち、個性が掴みにくいタイプだよな」

「ゴンベエさんは、良い方ですよ」

ジャンヌがすかさずフォローを入れると、二人は「それは知ってる」と言って
ケラケラと笑った。ジャンヌもつられて笑った。

「私、こんなふうに、みんなでお喋りしたり、笑ったり出来る日が
来るなんて考えた事もなかったんです。
だから、今、とっても嬉しいです!」

ジャンヌの言葉はまさにノーザンタイガーやクレナイの気持ちと同じだった。

三人はそれ以上何も言わなかった。
そして静かに願った。

「ずっと、この平和が続きますように」

と。

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