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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第33回コヤンイ作『女児紅』

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一人の兵士がいくさから逃れて森の中に逃げ込んだ。かつて人の入り込んだことのない。
魔物が棲むといわれた森だった。三日三晩森の中をさまよい続けて兵士はついにつかれ果てて倒れこみ、ねむってしまった。

どれほどの間ねていただろうか、兵士が目を覚ますとそこは陽の光が丸く差し込む広場のような場所だった。兵士が上を見上げると見たこともない巨大な樹がそびえ立っていた。
その樹の、人が立って思い切り手をのばしたあたりに切れ目があり、そこから光の粒子が漂って兵士のいるほうに流れてきた。その粒子には今まで嗅いだことのない不思議な香りがして、つかれはてはらも減って動くこともままならない筈の兵士が、フラフラとすいよせられて、樹をよじ登りその切れ目に手をかけてのぞこうとした。するとどういうわけか兵士はその切れ目にすいこまれ、光の粒子のただよう空間をどこかに落ちていった。

気がつくと兵士はあたたかくしつとりとした空気のただようどこかにいた。苔に覆われたその場所は樹の中でどこからも光がさしこんでいないにもかかわらず、明るい光にみちていた。兵士はそのもっとも強いあかるさのあるほうに眼をむけると、そこにはきらきらと輝く水が溢れていた。兵士はそこまで這っていくとその水は光の粒子とおなじにおいがした。おもわずその水を手にすくって飲んでみた。なんという不思議な味だろうか、今まであじわったことのない、そのあまりのおいしさに兵士はわれを忘れてなんどもなんどもすくってはその水をのみ続けた。

しばらくするとその水の底の方からゆっくりとなにかが浮かび上がってくるのがみえてきた。それはながい黒髪のぬけるように白いはだをした女だった。女は身になにもまとわずうまれたままの姿だった。兵士は女のうつくしさとあまりに不思議なできごとに信じられず、かなしばりにあったように動けずにいた。女はめをつぶっていたので兵士はしんでいるのかと思った。すると女は兵士のかおの目の前まで浮かび上がるとゆっっくりと目をあけて、そして微笑んだ。兵士はりょうてを水のなかにさしだして女の手をつかもうと手をひろげた。女は兵士の手をとって今度は水のそこにしずんでいった。兵士も女とともに水の中にしずんでいった。どこまでもどこまでもしずんでいった。

コメント(8)

コヤンイさんの、平仮名が多く使用されるやわらかい印象の文章を楽しませていただきました。
「女児紅」というものが実際にあるんですね。
途中までは、なんとなくマンガのナウシカをイメージして読みました。
ラスト、魔物が棲む森ということなんでしょうけど、「戦いに疲れた(?)兵士にとっては、案外悪くない結末なのでは?」と思いました。
感想ありがとうございます。
女児紅、検索してみました?
紹興酒の一種です。
>>[3]
感想ありがとうございます。
どの字を漢字にしてどの字を漢字にしないか
急いで書いたので統一できていませんが、そうした意図は思った効果をある程度あげられた気がします。
とても味がありますね!童話…といったらいいのかわかりませんが(子供向けに限定しないので)、ひらがなの具合がちょうどいいと思います。
>>[005]
感想ありがとうございます
説話というか昔話を書くつもりで書きました。
>>[006]
感想ありがとうございます
お酒のCMにこんなストーリーの映像どうかな。と書き終わってから思いました。

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