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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第三十二回自由課題コヤンイ作『虚幻』その二

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コミュ内全体

頼子の旧姓は西園寺といい、二人が親しくなって最初のころ家はお公家さんか。
と平助が冗談めかしていうと頼子はそんなのと違う、と頭と手を両方振って否定した。
夕食はたいてい二人いっしょに食べ、頼子は食べ物を口にふくんでゆっくりと噛み
味わうことに集中するかのように目を閉じた。
その様子がおもしろくて平助は思わずおいしい?と声をかけると頼子はしっかり
食べ物を飲み込んでから目大きく開いて少し身を平助の方に乗り出しおいしい、
と大袈裟にこたえ、お返しのように頼子もおいしいと尋ねるので平助もおいしいと
頼子のいい方を真似てこたえたりするのである。


しっくりこない。畳の上に胡坐をかき平助は手を耳の後ろにやって頭を撫でてみた。
じょりじょりと音がする短い髪の感触が心地いい、何度もこすってその音をたててみる。
そうしていると頼子が両手で頭をさわってくれた時のことが頭に浮かび、その時も
同じ音がしたな、と平助はあきることなく何度もじょりじょり音を立ててみるのであった。
頼子のいない家は静かだった。窓を閉め切るとなんの音も外からは入ってこない。
確か用事があって出掛けるから帰りは遅くなるので夕食は外で食べてきて下さい。
とそんなようなことを言っていたように思う。なんの用事であるか平助は訊いたはずだった。
しかし頼子がなんとこたえたか覚えていなかった。頼子がこたえたのかこたえなかったのか
もはっきり覚えていなかった。何度も訊いてなにか疑っていると思われるのも嫌だったので
一回しか訊かなかった気がする。もっとはっきり訊いておけば良かったといまでは思う。
きっともう少しすれば帰ってくるだろう、と思いながら時間はどんどん過ぎていき、電車も
動いているだろうか、わからない時間になってきた。
もしかしたら歩いて行ける距離だったのかも、などと思いつつ電話でもすればいいものを
と少し怒りに似た感情も芽生えてきた。平助は頼子が心配だった。こんなときどうするのが
一番いいか、心を鎮めて落ち着いて考えようと自らに言い聞かせた。


気がつくと耳鳴りのような音でない音が耳の中で幽かに鳴っているのに気づいた。
おそらくなにか音がしている日常では気づかないがなにも音のしない状況で初めて
気がつく類の音なのだろうと平助は理解した。気になるとその音の正体を見極めたくなって
さらに集中してその音を聴こうと耳をいや脳を澄ませた。しばらくその音に集中していたが
その音になにか意味があるわけでもなく、意味を知ることが出来るわけでもなく、束の間
頼子のことを忘れることが出来たというだけだった。平助は放心した。

コメント(2)

>>[1]
感想ありがとう。
まめやさんに喜んでもらおうと思って、じょりじょり入れました。

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