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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第二十三回 サイモン作 『소원』

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コミュ内全体

夜具の中になにかがもぐり込んできた。
布団を上げて見るとお腹のあたりで白い顔がこちらを見上げた。
「オンニ(韓国語でお姉ちゃん)、一緒に寝てもいい?」
「いいよ、おいで」
双子の妹スヨンは同じ年なのにひどく甘ったれだ。二人別々の部屋で寝るようになってからも、
度々夜中にわたしの寝床にもぐり込んでくる。
ズリ上がってきた妹を抱きしめた。
「怖いの?」
「ううん」
「なんでいつも一人で寝ないのよ」
スヨンは柔らかくて暖かくていい匂いがする。
生まれてから生きた年数は同じなのに、なんだかとっても幼く感じて、愛しくてしょうがない。
わたしが守ってあげなくちゃ、という気持ちになる。
「さっもう寝よ」
「・・・」
スヨンは黙ってうなづいた。


オンニとわたしは見た目はそっくりだ。双子だから当然、なのかな。
髪型も示し合わせたわけでもないのに、同じ長さ、肩に届かないくらいで揃えてる。
目の下にあるほくろの位置が左右逆なので、それがどちらかを見分ける目印になるのかな。
とにかく向かい合うと鏡を見ているような気になる。
でも性格は全然違う。
オンニはとてもはっきりした強気な性格で、物事ははっきり言うし、決断も早いので行動も迅速だ。
わたしは全く逆で、すごく臆病で優柔不断だ。物事をなかなか決められない。
いつも幼いころから、しっかりしたオンニの背中に、隠れていた記憶しかない。
大きくなって、一人づつの部屋を持つようになったけど、一人で寝るのは嫌だ。
特に、この家は夜静かすぎて、何か物音がする度にドキッとする。
オンニに抱きしめてもらうと安心して眠れる。
今日もオンニの為に、呪文を唱えよう。


「タリタックム、タリタックム」
「なにそれ?」
「おまじない、なんでも願いがかなうの」
「スヨンたら、どこでそんなの覚えるのよ、で、なにをお願いしたの?」
「ないしょ」
スヨンは時々不思議なことを言う。
もっと子供のころは、見えない何かと話してるみたいに、一人でキャッキャッと
笑ったりしていた。
いつもちょっと知恵おくれかと思われるような、はっきりしない表情をしてるけど、実は物事をよく見ていて、記憶力もいい。
わたしが言って、忘れた言葉もちゃんと覚えてる。
だってオンニ言ったじゃない、てよく反撃される。
本を読むのも好きで、難しい言葉をよく知っている。
さっきの呪文も本で覚えたのかな。
「もう寝た?」
そっと囁いてみた。
黙ってるけど、きっとまだ起きてる。
でももうじき寝るだろう。
するとスウスウと可愛らしく、規則正しい寝息が聞こえるようになる。
それが聞こえる前に、きっとわたしも眠りに落ちるだろう。
心も体も、とても安心する、幸せなひととき。


まっすぐのびた ゆるやかな坂を二人でのぼっている
つないだオンニの手が冷たい
まわりは鬱蒼とした森だけど 道はどこまでもまっすぐで
のぼりきった向こうに明るさが見える
あそこまで行けばきっと
「スヨナ」
オンニは疲れてるのだろうか 歩みがのろい
「スヨナ」
「もう少しだよ オンニがんばって」
「行きたくない」
「なんで? あそこまで行けばきっと」
「行きたくないよ」


ダメだ 引き返さなきゃ
これ以上進んだらいけない
スヨンはどうしてもあそこまで行こうとしている
どうしてなのか わたしはわかってる
わたしは立ち止まる スヨンの手を 強く握ったまま
「オンニ どうしたの あそこまで行けば あそこまで行けばね」
「スヨナ 引き返そう」
振り返ると背後はすぐに闇だ
でも前方の明るさのほうがわたしは怖い
闇に飲み込まれてしまったほうがマシだ
もし 闇に溶けてしまったとしても
「わたしは 初めてじゃない」


目が覚めて、上半身だけ起きてみる。
涙が一筋、頬を伝って流れた。
なんだかとても、寂しくて哀しい。
とても大きなものを失った気がする。
でもそれがなんなのか、思い出せない。
顔を洗って、鏡を見た。
鏡の向こうのわたしが、わたしを見ている。
わたしのはずなのに、わたしではないような奇妙な感じがした。
わたしの顔をした、わたしとは違うわたし?
「オモニ(お母さん)を」
え、なに?鏡の中のわたしの口が、そう動いた気がした。
「オモニを」
オモニを、オモニがなに?
「・・・・」
唇がまた動いた。
なにか恐ろしいことを言っている気がする。
聞きたくない、知りたくない。
でも目を離せない。
次は、唇の動きだけでなく、はっきり声が聞こえた。
「殺した・・」





「やっぱり、あなただったのね」








タイトルの소원はソウォンと読みます
願い、という意味です
スヨンをスヨナ、と呼ぶのは日本語でスヨンちゃん、と言うのと
同じような意味です

コメント(11)

>>[1]
感想ありがとう。
もし興味があってホラーが苦手じゃなかったら、韓国映画の「箪笥」を観てください
この小説はその映画をわたしの頭の中で再構築したものです
怖いと思っていだだけてうれしいです
異国設定で怖さが際立つように思いました。
短い作品ですが無駄がなくて、それもまた恐怖演出に一役買っていますね。
>>[003]
感想ありがとう
わたしは韓国人の女の子のいる飲み屋に行くのですが、そこで女の子同士の会話の中でオンニと相手を呼ぶことがよくあります。別にほんとの姉妹でなくとも、少し年上の女性はみなオンニと呼びます
。このオンニのアクセントですが、最後のニをほんの少し上げるんですね。わたしはその言い方が凄く好きで、是非小説に入れたいと思いました。
あ、ちなみに男性は少し年上の女性をオンニではなくヌナと呼びます
「やっぱり、あなただったのね」の一言で、サスペンスな雰囲気が際立っていると感じました。ほんのり怖くてよかったです。
オン二、スヨンという呼び方が、柔らかくて優しくて、二人の少女が可愛らしく描かれていて。それだけに、あとからぞっとしますね。

結末がはっきり書かれていないところが、また怖いです。

「世にも奇妙な物語」を思い出しました。
映像化したいですね。
視覚から得られるキーワードを足すと、よりよく作品の意味を理解できそうです。
みなさん、感想ありがとうございます

>かとうさん
ラストの一言が決まってるってのはなかなか難しかったですよね

>みけねこさん
スヨンじゃそのまんまです、スヨナですよね
結末の意味は、読んだ方の想像におまかせしたい

>ハルトさん
映像化が観たかったら是非「箪笥」をご覧ください

みなさんに怖いという感想をいただきましたが、自分では予想外のうれしい反応です。
どこら辺が怖かったのか、お聞きしたいです
最後にもっと詳しく、この話の経緯を書いた方が親切だとは思ったのですが、これだけの情報から
どのくらい皆さんが読み取ってくださるか、興味があったので、あえてこのままにしました。

ラストでゾゾっとしてしまいました。

韓国語とかはよく分からないのですが、すっと入ってきて読みやすかったです。
なぜかポン・ジュノ作品を思い出しながら読みました。
一般的に短編がそこまで好きでは無いのですが、ホラーは短編だと引き立つ気がしています。面白かったです。
記憶というのは怖いですね。実は覚えてないだけ、みたいな。
読書会でネタバレしましたが
きちんと説明しきれなかった気がするし
いらっしゃらなかったかとうさんや、ハルトさんの為にも
描かれてない部分を説明します。

まず、スヨンは生まれるとき
母親と、双子の姉スジン、の二人を亡くしています。
スヨンは長じるにしたがって、そのいきさつを少しづつ知るうちに
母が身の危険を顧みず、自分を生んだことによって命を落とした。
つまり自分のせいで母は死んだ。自分が母を殺した。
と自分を責めるようになります。
その苦しみから逃れるため、スジン(オンニ)というもう一つの人格を作りだし
自分を守ろうとします。
同時に母の記憶を抹消します。
記憶にないので、母親がいないことを寂しがって、呪文を唱えて母に会えるように
願います。
そのことで、自ら封印していた自分が母を殺した。という記憶を
自分の分身である、オンニに突きつけられることになります。

森の中の一本道は産道で、闇に飲み込まれることは死ぬことを意味します。
だからスジンは「初めてじゃない」と言ったのです。

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