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孫崎亨・広原盛明・色平哲郎達見コミュの【色平哲郎氏のご紹介】 世界は「平等に不平等になりつつある」

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【色平哲郎氏のご紹介】
世界は「平等に不平等になりつつある」

『世界を変えた14の密約』訳者あとがき by 関 美和
文藝春秋 発売日:2018-05-30

「企業の密約が世界を変えた」と言えば、ありがちな陰謀説だと思われるかもしれない
。しかし、本書はそんな陰謀説を掲げてスキャンダルを暴露しようとする本ではない。
むしろ、それとは正反対だ。この本は、今わたしたちをとりまくこの世界が、偶然の産
物ではなく、ある意図のもとになるべくして今の形になったことを、歴史的な事実と綿
密な取材に基づいてひも解いていく。本書を読めば、ばらばらに見えた点と点がつなが
り、今目の前にある世界が違う角度で見えてくる。

著者のジャックス・ペレッティは、名門ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを卒
業して調査報道の道に進み、ガーディアンやワイアードといった一流紙誌に予言的な記
事を掲載してきた、今最も旬なジャーナリストのひとりである。ドキュメンタリー制作
者としての実力も折り紙つきで、本書をもとにしたドキュメンタリー番組もBBCで放送
され、大きな反響を呼んでいる。

そんな旬の著者が今問いかけるのは、ビジネスが政治を駆逐し、一握りの人たちが世界
の大半の富を握り、砂時計のように中間層がなくなって砂粒が下方に収斂され、ロボッ
トが人の仕事を奪うのではなく、人間がロボットの仕事を奪わなければ生きていけなく
なるような未来の社会の姿である。金融、食品、薬品、仕事、政治、ビジネス、テクノ
ロジーなど、14の切り口から世界の過去と現在と未来をオムニバス形式で描いたのが、
この本だ。

貧富の格差は種の格差に

本書によると、世界は「平等に不平等になりつつある」。途上国はこの30年で着実に豊
かになり、絶対的貧困者数は1990年の19億人から2015年の約8億人に減り、貧困率も36%
から現在は10%を下回る割合まで改善している。テクノロジーの発達により、インフラ
のない国でもさまざまな商取引が可能になり、インターネットのおかげで銀行口座を持
たずにおカネをやりとりできるようになった。貧しい国ほど古いインフラに邪魔されず
、一足飛びに最新技術の恩恵を得られている。

一方で、世界の半分の富を8人の金持ちが所有している。いずれも事業経営者で、その
うちの半数はテクノロジー起業家だ。よく1%と言われるが、実際には0.1%ですらなく、
ほんの一握りの実業家だけが世界中で創造された富を自分のものにしている。先進国で
は、格差は着実に、そして思いのほか速いペースで拡大している。1988年から2011年に
かけて、下位10%の収入は年間3ドルも増えていないのに、上位1%は182倍になった。ア
メリカと日本はG7中最も相対的貧困率が高く、ひとり親世帯の貧困率は50%を上回る
。ロンドン市民の28%は貧困認定され、「このままでいくと2030年までにハンガーゲー
ムのような二極化都市になる」と言われる。

貧富の格差は教育格差になり、職業格差になり、健康格差になる。一握りの金持ちは高
い教育を受け、いい仕事につき、バランスのいい食事を取り、遺伝子を操作してますま
す病気になりにくい身体を作る。一方残りの99.9%はこれまでと同じかそれ以下の生活
を強いられる。数世代後の人類は、遺伝子操作を受けた「人類A」とそうでない「人類
B」に分かれるだろう。貧富の格差は種の分化につながると本書は説いている。

人間がロボットの仕事を奪い合う

人口知能の発達によって今ある仕事の半分以上はロボットに奪われると言われて久しい
が、著者の関心はそこにはない。問題は、ロボットより安い人間がロボットの仕事を奪
い合う未来がやって来ることだ。その兆候はすでにある。自動洗車機がいい例だ。アメ
リカではガソリンスタンドから自動洗車機が消え、人間の労働力が機械に代わっている
。人間の方が機械より安いからだ。機械が壊れたら修繕コストがかかるが、人間なら代
替コストがかからない。クビになりたくない人間はどんな低賃金でもいとわない。AI
によって人手が余る未来には、需給はさらに人間の不利になる。一方、ロボットは高度
な管理職の役割を学習し、意思決定機能を持ち、経営判断を下すようになる。ロボット
が人間の奴隷を使う未来はもうそこまで来ている。

再分配機能は誰の手に?

「自己責任」が資本主義国家のあるべき姿とされるようになったのはいつからだろう?
 わたしは1965年生まれだが、少なくともわたしの子供の頃は違っていたように思う。
市民は税金を納め、政府がそれを受け取り、より恵まれた人の手から少しだけ恵まれな
い人の手に富が移動することを社会全体が許容していた時代は、それほど昔ではない。

本書によると、「自己責任」の種がまかれたのは1970年代の終わりから80年代にかけて
だと言う。1960年代から70年代にかけての市民権運動と企業への規制強化に対する反動
から、サプライサイド経済学と結びついた新自由主義が台頭したのがこの頃だった。サ
ッチャー‐レーガン時代に富裕層減税が経済政策の核となり、格差の拡大は景気拡大の
副産物ではなく、計画そのものになった。以降、アメリカでは「再分配」という言葉さ
えタブーになった。「再分配」という言葉を使ったオバマ大統領は社会主義者のレッテ
ルを貼られた。恵まれた人から恵まれない人に富を受け渡すのは、政府の仕事ではなく
なった。少なくとも保守派は今も、金持ちをさらに金持ちにすれば、富が自然に上から
下にしたたり落ちる(トリクルダウン)という理論に固執している。実際、金持ち企業
や一握りの起業家の持つ資産は、国家予算を上回る。再分配を行うかどうか、それをど
う行うかを決めるのは、今や政府ではなく企業であり、ゲイツやザッカバーグのような
資本家になりつつある。

砂時計型の未来を生きる

著者は未来の社会を砂時計に例えている。上と下が厚く、真ん中は細くくびれている。
そして砂は上から下へとすべり落ちる。真ん中にとどまることはない。そしていったん
下に落ちた砂粒が重力に逆らって上にのぼることはない。わたしたちの世代にはなんと
か上に留まっていたとしても、何もしなければ子供の世代には下にすべり落ちる可能性
の方がはるかに高い。

どうしたら上に留まることができるのか、この本に答えはない。ただ、砂時計型の未来
に備えるための選択肢はあるのかもしれない。ひとつは、はじめから意図して資本家へ
の道を選ぶということだ。みずから進んで砂時計の下を目指す人はいないと思うが、す
べての労働階級(ホワイトカラーの従業員も含めて)が下にすべり落ちるとしたら、上
にとどまるにはその反対に向かう、つまり次のベゾスやザッカーバーグを目指すしかな
い。たとえ失敗しても、何もやらなくても同じ99.9%に入るのだから、起業の実質的な
リスクはない。ピーター・ティールも書いていたが、リスクを取らないことがリスクに
なる。

一方で、再分配機能を資本家に任せることに反対なら、話はややこしくなる。選挙で選
ばれた政治家になり、政権を握り、国民の理解を得て、再分配機能を政府の手に取り戻
すのか? その場合、ある一定期間政権にとどまる必要があるが、有権者の支持を長期
間持続できるのか? 政治家でなければ新しいタイプの活動家になるのか? 

では資本家も政治家も目指さない場合は? 革命を起こす? それともいっそのこと砂
時計の下でいいとはじめから諦める? 貧困やむなしと覚悟を決める?

著者が描いた未来はSFの世界の出来事でもなければ、遠い遠い先のことでもない。今そ
の未来はすでに目の前にある。それを見るか、目を背けるかは読者の皆さん次第だ。本
書が皆さんの世界を見る目を変え、未来を見る目を変える助けになれば幸いである。

関 美和  2018年05月31日

http://honz.jp/articles/-/44763

コメント(1)

歴史は繰り返す。

資本主義という経済システムも、ケインズとか、修正資本主義とか、新自由主義とか、いろいろでたけれど、基本的には、なにも変わらない。

おそらく、アダムスミスの時代に戻っただけなんだろう。

民主主義の現在、この格差の拡大を、打破する方法は、労働者階級の意識と、政党としての結束、そして、再分配の要求しか、ないのではないか?

トリクルダウンは、今の経営者の意識が、変わらない限り、ありえない。

戦後いわれた、国家独占資本主義になりつつある現在、政治力で国家を動かすしかない。

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