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FCYCLEコミュの北海道Tour16

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2016/8/8

 1986年から31年目、通算32回と私的ライフワークになってしまった夏の北海道ツーリング、今年も行って参ります。

8/11(木)釧路空港→鶴居→塘路
8/12(金)塘路→姉別→開陽
8/13(土)開陽→根釧台地ベスト202km→開陽
8/14(日)開陽→養老牛→札友内
8/15(月)札友内→津別→チミケップ湖
8/16(火)チミケップ湖→滝上→西興部
8/17(水)西興部→歌登→中川
8/18(木)中川→豊富→浜頓別
8/19(金)浜頓別→歌登→仁宇布
8/20(土)仁宇布→幌加内→大村
8/21(日)大村→旭川空港

 チミケップホテルすらもうワンパターンとなりつつある超マンネリコースですが、昨秋訪問時にほぼベストコンディションで麓郷・老節布・北落合を楽しめたので、今年は美瑛大村終点に。ほぼ中間の札友内鱒や〜チミケップ湖で余裕を持たせたコースとなりました。いつもより余裕を持ってリゾートホテルの午後をくつろげると思います。

 今年の目玉は何と言っても新機材のフルサイズ一眼。適度に晴れて適度に涼しい北海道を希望しています。先週辺りの高温を見ていると、何とか今週後半辺りから落ち着いてくれるのではないかと思うのですが。甘いかな。

■■■2016/8/8
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

コメント(49)

北海道Tour16 #1 釧路空港→塘路-2


 阿寒の手前で釧路阿寒自転車道を途中下車。開けた牧草地を横切り谷間の平野の反対側へ。11:45、阿寒町仲町着。道道835沿いに予め狙いを定めておいたセイコーマートで、とりあえず今回の初セイコーマートとする。道東では、2000年代に幹線道道の拡幅整備と交通量増加が進んだように思う。その結果、セイコーマートがありそうな規模の町を通る幹線道道を、最近の私は避けるようになっている。そういうこともあり、道東では寄れるセイコーマートに確実に立ち寄り、物資を補給して集中的に飲み食いする必要があるのだ。ちなみに道北では、ツーリングで使う静かで通って楽しい道が道東より少ないのだが、それだけにあまり道を選ぶことができず、道道の使用率は却って道東より高いように思う。このため、1日の行程中のセイコーマートは、道東よりも高いという逆転現象が起こる。まあどれもこれも正確に分析したわけではなく印象の話ではある。とりあえず今の私は、昨年秋に取得したクラブカードプラスの道内初使用も兼ね、出発早々の初セイコーマートに臨みつつあった。
 阿寒のセイコーマートは、露骨に木造店舗を改造した店構えである。今時珍しい昔ながら?のセイコーマートだ。近年Hotchefを追加したようで、店舗ロゴは新しい物に変わっていた。そのHotchefには豚丼があったものの、今日の私にはこの後の布伏内で大きな目的がある。涙を飲んで豚丼は見送り、携行食としてクロワッサンとおにぎりを集中的に補給しておく。
 暑い日なたを避けて軒下でむしゃむしゃ食べる行為は端から見て大人げなくみっともないかもしれないが、同時にツーリング中の気分を一杯感じることができ、これはこれで私の旅に欠かせない、楽しい時間でもある。駐車場の向こうの道道835に、この辺りにしちゃ妙に車が多いことに気が付いた。これが道東自動車道開通の効果というものだろう。

 道道835は下辛川沿いに、山裾を遡ってゆく。両側の山は低いが、谷間が狭くなったためか山裾沿いの道は木陰が増え、所々で冷やっとした涼しさが感じられる。前回阿寒から布伏内へ向かった時は、下辛川対岸の林道みたいな市道みたいな茂みダートを使った。道道835を阿寒から北上するのは、2005年の道東2期林道訪問以来となる。前回は低く薄暗い雲の下、阿寒から林道入口を探しながらここまで遡ってきたのだ。時々ぱらぱらっと雨が降り始めて、その割には何だか蒸し暑かったのを思い出す。現に道東2期林道を抜けた後、縫別から一度国道392を釧勝峠へ向かい、早々に雨で断念し、その後南十勝の晩成まで雨か霧だったのだ。きらきらと明るい木漏れ日を浴びながら、天気でだいぶ印象が違うのが愉快になるが、あの時から何ともう12年経ってしまっているのにも驚かされる。
 途中、大きな樹が立つ谷間の森への入口が登場。道東2期林道である。風格ある樹の木陰は涼しげで、「またおいでよ」と誘ってくれているように思えた。いや、今日の所は。

 道の先の森が切れ、唐突に民家が見え始めた。12:20、布伏内着。
 周囲の森が茂みに変わり、畑となった。静かな落ち着いた集落の中、商店、学校跡と、知人に聞いていた各ポイントをチェックしながら通過してゆく。阿寒、鶴居など以外の市街地では自販機を探すのもこの阿寒〜鶴居の山間にしちゃあ、商店が数軒、飲食店まである。静かな落ち着いた表情ではあるものの、意外な山里なのである。
 この静かな山里に、ラーメン屋さんがあるらしい。えっ、鶴居でも阿寒でもないのにこの辺に飲食店があるのかと思ってWebでググると、釧路からわざわざこの店を訪れる人の文章が読めた。けっこう人気がある店のようなのである。布伏内には以前訪れたことがあったのに、ラーメン屋さんなど見かけた記憶が無い。完全に見落としていたのだ。再訪のチャンスがあったら、必ずラーメンを食べねばと思っていた。きっと美味しい店に違いない。そして今日は天気がいい。布伏内再訪、真澄訪問、雄別経由と、課題をまとめてこなすチャンスである。
 しかし、万難を排してせっかく訪れたこの布伏内で、そのラーメン屋さん「真澄」を探すのにはやや難儀した。てっきり集落のまっただ中にあると思っていたのだ。結局集落を過ぎ、国道274の交差点から更に北上した道道885沿いで、真澄をみつけることができた。

■■■2016/11/25
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour16 #1 釧路空港→塘路-3


 そう広くないお店には、お客さんが何人かいた。そして私が食べている間にお客さんは入れ替わり、むしろ人数は増えた。さすがはお昼時の人気店である。肝心の味は、この寒い釧路の山奥のラーメンなのだからこってり系かと思っていたら、意外にもすっきりした正当派。すっきりしてはいるが、豊かな味わいでついスープを飲む。麺もごく普通なようでいて、固くない程度にしっかりしていて美味しい。美味しくて、いくらでも食べたくなる味だ。さすがは人気店、これは釧路から食べに来る人がいるね、とまた思った。
 食べている間、店のおばさん、お客さんが親しげに話しかけてくれた。こういう場合にサイクリストは人気者だ。会話の内容は毎度の通りだが、せっかく地元の方と話せる機会なので、この先の雄別の道の状況を聞いてみた。知人の親戚の方が「熊に出会ってびっくりした」とのことだったし、さっき上空から見た感じでも茂みの雰囲気がいかにもそれっぽい。おまけにツーリングマップルだとダートと言うことになっていて、細い道に×印まで付いていた。この辺りの道としては、長年気に掛かっている道ではあるが、これらの情報通りならあまり踏み込みたくない。踏み込まないなら踏み込まないで、現地情報で裏付けは必要だ。後で後悔する。
 しかしお客さんによると、
「徹別への道は、10年以上前に舗装されてるねー。熊は…昼は出ないよ」
とのこと。舗装だって、話が違う。それなら行けるね。天気も時間も全く申し分無い。さっき飛行機から見下ろした丘陵のダートが気になるが、それなら行ってみるか。きっと道が呼んでくれているのだ。でも熊は怖いが。

 13:00、布伏内発。
 北上するとすぐに知人に聞いていた喫茶店があった。もうだいぶ集落から離れた森の中みたいな場所なのに。布伏内、やはりこの辺りでは知る人ぞ知る穴場なのかもしれない。それはそうと既に一気に谷間が狭くなり、次第に斜度が感じられていた。
 このまま谷里鯀未襪函道は行き止まりとなる。道道222としての区間はもうすぐ徹別の外れで終わり、番号を変えて道道667として東側の丘を越えた徹別で国道238に突き当たる。その道道222終点、道道667の登り始めまであと2kmぐらいの所で、道はおもむろにダートに変わった。驚くことは無い。これだとツーリングマップルの情報通りである。おやじ、ふかしやがったな。
 道を囲む茂みは結構高く、熊が潜んでいるかどうか知らないが、ブキミで不安な雰囲気が漂っている。その茂みの中に、風化しつつある炭鉱の遺構が現れ始めた。存在するとわかっていないと気付かない程度だが、かつての集落らしき土地の拡がりも認められた。この賑わいがあったからこそ、阿寒から釧路までかつて鉄道が走っていて、布伏内の賑わいがあったのだと思った。さっき布伏内でラーメンを食べ、地元の人とお話しできた後で、この遺構を眺めることができて良かった。

 少し遡った辺りで、道道885は谷間から分岐して徹別への丘越え区間に突入。少し手前から見えていた法面の赤い岩とその高度に、ややワイルドな雰囲気が漂っていて少々びびっていた。が、谷底の分岐点から、何と舗装路面が始まっていた。おそらくこのまま徹別まで舗装で行ってしまうのだろう。ガードレールやら法面補強などの経年は、一見15〜20年というようにも見える。これならさっきのおじさんの話も、辻褄は合っていると言える。
 登りはたかだか100mも無いぐらい。取付で厳しかった斜度は途中から7%ぐらいに安定した。さっきまでのダートに比べて、何と言っても舗装路面には安心感がある。しかし、登り始めると途端に日差しの暑さが堪え始め、木陰と速い雲に助けられる状態だった。それに周囲はもはや森と茂みだけ、やはり熊が出そうな気がしてならない。

■■■2016/11/25
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour16 #1 釧路空港→塘路-4


 峠部分を越えると、徹別側は意外に早く森が切れた。それは地図でわかっていたが、開けた牧草地と木立と牧場がやや起伏のある緩斜面に展開する風景は変化に富み、その風景が地図からすると意外に長い間続いた。阿寒から同じぐらい北上している場所なのに、やはりさっきまでの道道885に比べ、こちらの国道238の谷間は人里なのである。或いはさっきの道道885で、こちらの谷間に比べて高度を上げていたのかもしれない。
 2008年、2010年に阿寒側から下って来た時のことも思い出す。阿寒湖から延々大森林を下って来て、徹別手前の飽別からやっと拡がり始めた谷間は、こんなにステキな風景だったのだ。毎度心に余裕が無い自分の旅を後悔する。

 谷底で国道238を横切り、そのまま西側の丘へ。ここからコッタロ湿原手前の中久著呂まで、しばしこの辺り毎度の丘陵横断が続く。道道885としての区間は国道238に突き当たって終り、道としてはそのまま国道238の反対側へ市道っぽい細道が続いている。その市道沿いに建つ赤い屋根の畜舎に見覚えがあった。地形図で細道として描かれたこの市道っぽい道は、2010年に確かに一度通っている。計画時には気付かなかった。ようやく今思い出すことができた。
 低い丘ですぐ終わる坂ではあるが、細道のためか登り斜度が厳しい。そして途中まで牧草地に面するため、日陰が無く、路面の照り返しが暑い。この辺りで近年感じたことが無い暑さである。水をがぶ飲みしながら、さっきセイコーマートで目一杯入れといて良かったと思った。

 もうひとつ丘を越えて下った上徹別で、さっき布伏内で交差した国道274に北側から合流。交通量はほぼ皆無だ。道東自動車道が阿寒まで開通してしまった現在でも、ほとんどの車は釧路へ向かってしまうのかもしれない。しかしやはり曲がりなりにも比較的新しめの国道、何だか埃っぽい表情が漂う。
 丘陵連続アップダウンのひとつひとつは40〜80m程度。しかし、以前2度以上通っていて、同じような道ではあるが時々見覚えがある程度に、何となく勝手はわかっている。そういうものだと思っていて、時間もあるので、あまり焦る気にならない。やはり初日は余裕を持つべきである。
 そして14時半を過ぎた頃から、風が明らかに涼しくなり始めていた。

 気が付くと上幌呂。ここでまだしばらく丘陵横断を続ける国道274を下車し、道道1093へ。明日の朝食と昼過ぎまでの補給食を入手するため、鶴居のセイコーマートに寄っておかなければならない。久著呂へ向かうのにアップダウン込みの3角形の2辺ではなく、谷間・ショートカット・未済経路とメリットが三拍子揃ったこちらに経路を選んでいる。GPSが無いとこれらをアドリブ込みの地図読みで選んでゆくことになるが、GPSトラックツーリングは景色だけ眺めていても分岐を間違えにくい。こういう時に大変便利である。

 15:25、鶴居着。新建材の住宅に拡幅道路、新しい道路舗装や構成材など、北海道の町はどこもかしこも10年以上前とは雰囲気ががらっと変わっていて、面影は道の方向や周囲の景色ぐらいに残るだけだ。そういう意味では、北海道は意外に旅情を拒むような裁けた土地であると言える。今日の鶴居について言えば、確か2004年に立ち寄ったセイコーマートの看板も、近年のロゴに替わっていた。そして店内で、セイコーマートのPB商品のロゴが、「SECOMA」に替わっていることに、今気が付いた。
 とりあえず北海道の地方市街らしいぱりっとした雰囲気の町並み、目の前の山のような物資に安心感がある。しかし今、ここで明日の朝食を買っておく必要がある。数年前、鶴居を経由して今日と同じ塘路泊、翌日根釧台地に向かって失敗しかけたことがあったのだ。そう思わないと、物資を買い込む行動になかなか進むことができない。早くツーリングに感覚を合わせないといけないね。

■■■2016/11/25
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour16 #1 釧路空港→塘路-5


 店内の空調空気を振り切って外に出ると、まだまだ身体は汗べとべとで気持ち悪いものの、夕方の風を感じることができる。日なたはまだ暑いが、日陰は大分涼しくなってきた。野菜、ヨーグルトなどを集中的になどを食べてちょっと長居し、16:05、鶴居発。夕食まであと2時間半。17時台には楽勝で着けるだろう。

 町外れの道の分岐へは完全にGPS頼り。分岐周辺にカーブが多く、この農道は確か初めての道だし、方向感覚が掴みにくい。
 クチョロ原野手前の私的ジャンクション下久著呂へ、農道はちょっとした丘越え丘陵が湿原へ落ち込む手前のエリアのアップダウン2発は、さっきの徹別〜上徹別辺りに比べて優し目だ。また、やや新しめの雰囲気が道道と何ら変わり無い農道は、やや埃っぽくて大型車が目立つ国道274より明らかに好ましい。今日も16時を過ぎていよいよ終盤かなあ、という安心感がある。
 下久著呂では、交差点近くの自販機に表敬訪問しておく。気が付くと、空の雲は完全に消えていた。真っ青な夕方特有の空だ。そして昼間の輝くような眩しい光と暑さはすっかり消え失せ、日影はひんやり涼しい。自転車を停めると汗が吹き出てくるぐらいにまだ気温はぬるいものの、一方で風が確実に涼しく感じられる。影が長く、山の姿がもうすっかり青くなり、景色全体がが静かで落ち着いた濃い色に変わりつつあった。夕方の表情に、東京より日没が早い北海道、そして去年より日程が1週間弱遅い影響が確実に現れている。

 クチョロ原野への道道1052へ。湿原外周丘の一番低い部分を乗り越えて湿原側へ出た途端、空気が一気に涼しくなる。まだ根釧台地には入っていないが、いよいよ本格的に釧路にやってきたと感じる瞬間であり、この先のダート区間と並んで印象的な場所の一つである。
 空が晴れているので今日のクチョロ湿原の眺めは良さそうだが、何となく早く宿に着きたいような気がして、展望台はもうそのまま通過。この先のダートで、過去2回もパンクしているのだ。しかも2度とも17時過ぎの宿到着直前だったから、心理ダメージが大きかったのだ。
 今日もクチョロ湿原のダート区間では、難儀するぐらいに砂利がやや深く、まともに大きな石や露骨な凹みを踏まないように気を付けてそろそろ進む。あまり間隔を置かずやって来る車の埃も大変にツライ。落ち着いて進まねばと思いつつも、夕方の光に包まれた湿原の風景、釧路川のゆったりした、しかし力強い流れは味わい深く、ここで30分以上も掛かってしまった。

 国道243に合流、塘路湖を眺めて塘路へ。17:40、塘路湖畔YH着。
 今日は宿泊自体は満員とのことだが、食事は3人だけでひっそりしている。まだ盆休み期間前、ライダーや車は苫小牧や小樽辺りから走っている最中なのだろう。釧路湿原を一望するテラスからの夕焼けを、風呂上がりに楽しみにしていたのだが、いつの間にか空は曇り始めていた。この分だと今晩は星空も望み薄だ。そしてテラスに出ると、薄暗くなってきたせいか蚊がとても多い。北海道の茂みでよく見る、ばかでかいホッカイシマカである。幸いこちらにはムシペールもハッカ剤もあるし、ホッカイシマカは動きがかなり遅くて百発百中でやっつけることができる。ただやはり数は多く、閉口する。

■■■2016/11/25
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour16 #2 2016/8/12 塘路→開陽-1

塘路→(道道221他)阿歴内→(道道1128他)太田→(道道813)高知
→(農道)茶内西→(道道123)別海→(道道831)豊原→(農道)緑町南
→(町道)開陽台→(町道)開陽 132km
ルートラボ>http://yahoo.jp/z97_FP

 目覚ましが鳴った。もう朝なのか。まだ2日目というのに、もっと寝ていたい。東京の暑さで疲れが溜まっているのかもしれない。明日は自動的に4時に目覚めることができるだろうか。朝が早い北海道、しかも道東とはいえ、4時では辺りは真っ暗だ。その真っ暗な窓の外に、霧が溜まっているのがよくわかる。4時半を過ぎて辺りが次第に明るくなると、その霧の濃さがよくわかってきた。今日の天気予報は晴れなので、いずれ朝のある時点でこの濃い霧も消えて晴れとなるのだろう。晴れで気温が上がった翌日によくあるパターンだ。そしてそういう現象が起こる場合は、晴れの周期もそろそろ後半に入っている場合が多い。

 5:30、塘路YH発。霧の塘路で自販機を探し、コーヒーを飲む。コーヒーがあるのならまずはコーヒーだ。コーヒーを飲まないと自分は何もできないのか、とも思う。甘えのようなものかもしれない。
 5:40、塘路発。森と牧草地が、100mぐらい向こうが見えないぐらいの霧に包まれている。以前森の中に少しは見えたはずの、塘路湖の湖面が殆ど見えない。薄暗い霞で風景は灰色で、霧の中からおもむろに現れる少々のちょい坂が、出発したばかりの身体にやや鬱陶しい。過去の訪問での、晴れの風景が思い出される。もう少し爽やかな1日の始まりであってほしい。せっかく実際の道を走っているのに過去の訪問に思考が向いてしまうのは、多分薄暗いからかもしれない。人間にはつくづく明るい朝の光が必要なのだと思う。今日の天気予報は晴れなので、多分すぐ晴れるのではないかとも思う。
 薄暗いので、北側の農道経由ではなく、このまま道道221を継続して南側の阿歴内を経由することにした。北側の農道方面は何となく茂みから熊が出てきそうで怖い。そして阿歴内経由の方が道が道道だけあって起伏が多少小さく、楽に通れる気がした。何より阿歴内にはしばらく行っていない。

 牧草地の霧とカーブの向こう、茂みに人里の雰囲気が漂い始め、民家が登場して阿歴内に到着。
 まだ早朝で人気は無いものの、以前何度か立ち寄った自販機で缶コーヒー休憩とする。自販機があると無いでは、脚の停めやすさが全然違う。しかし、薄暗くて出発せねばという気持ちとまだ何かと動きにくいような気もする身体が一致しない現状に対し、缶コーヒー休憩という大義名分に逃避しすぎているような気もしないでもない。
 ささっと出発しよう。根釧台地に入ったら晴れるかもしれないのだ。と思っていると、やや大粒の雨がぱらぱらっと降り始めた。雨かよ。話が違うな。雨具を着込む間、放し飼いっぽい小柄な犬が寄ってきたきたので、少し遠くの玄関先をうろついている風のおじさんに「何とかしてくれ」とお願いすると「それ、うちのじゃないんだ」と返事が返ってきた。まあそんな時間が過ぎてゆく、早朝の阿歴内なのだった。

 台地上から国道272の谷間へ下り、東阿歴内の愛らしい「おはか→」看板を眺めてまた台地上へ登り返す。
 道道1128で、以前経由した片無去経由の農道との分岐をのぞき込んでも、まあ事前の想像通りに霧が掛かっている。農道は細く静かで、距離もアップダウンも道道1128とそう変わらない。魅力的な道なのだが、以前の訪問時に道道1128は晴れているのに農道区間だけ妙に雲が出てきたことがあった。やはり道道の通る台地上の方がより天気は安定する傾向にあるのかもしれないと勝手に思っていて、今日の所は道道1128へ。
 雨がほぼ上がって空が多少明るくなってきた。分岐の標識に自転車を立てかけ、ここで雨具を脱ぎおにぎりを食べておく。この先太田のA-COOPに寄らないとすると、少なくとも50kmぐらい先まで自販機すら無い。
 初の経路となる高知→東円あたりの地図を予習したり、もう1個おにぎりを腹に入れておく間、再び雨が降ってきた。小粒で密度が高く、いつのまにかじっとり服に浸みるタイプの嫌な雨だ。再び雨具を着込む間にまた時間を食う。
 ひとつひとつは必要なことなのだが小さな出来事の積み重ねが、何となくだらだらと脚を重くしてけだるい時間となり、気が付くと7:20になってしまっていた。ここまで1時間40分もかかってしまっている。せっかく宿を5時台に出発したのに。

北海道Tour16 #2 2016/8/12 塘路→開陽-2

 案の状、走り始めると霧の水滴が上着に張り付いてくる。路面はぎりぎりで乾いていたり、所々水たまりにもなっている。霧と寒さのせいか、走っては停まってを繰り返していた。南片無去辺りでは、今までそこそこ明るかった霧の中がやや薄暗く、雨粒も大きめに変わってきた。もう本格的な雨だ。立ち止まってフロントバッグに突っ込んでいるGR2をフロントバッグの中に仕舞いつつ、どんよりと低い雲を見上げてみる。話が違う。今日は晴れじゃなかったのか。ペースも明らかに低調だ。全体的に低調になってしまっている。大回りの恵茶人で、太平洋を眺めるコースも望み薄な気がしてきた。ならば、早めに民宿地平線に着いて、夕食前に町営温泉に連れて行ってもらおう。早く温泉に入ってビールでも呑んでゆっくりしよう。等と考えると、町営温泉の食堂の中札内地鶏唐揚げで頭が一杯になる。唐揚げのイメージで雨を耐えるのも悪くないな。

 太田の外れで道道13を越え、別寒辺牛湿原へ。道道13沿いの少し南のA-COOPに寄れば自販機がある。何か飲んだりするなら、今がそのチャンスだ。いや、ここまで散々ゆっくりしているし、物資に不安は無い。粛々と先へ進もう。
 8:05、大別発。幸い再び雨が途切れ、空が明るくなり始めている。ここは天気が変わる場所、台地上の片無去から低湿地を囲む別寒辺牛の丘陵部の境界だ。まあいつもは片無去で晴れていて丘陵部で雲が出るのだが。

 牧草地が拡がる大別から、植林の森が拡がる別寒辺牛の丘陵部へと、周囲の風景は移行する。整然と植えられたカラマツの植林が続く丘陵は、アップダウンはそう厳しくないものの全く牧草地や人の居住地が途絶え、何となく不気味な雰囲気が漂う。薄暗い今日のような日は尚更だ。
 湿原を横断して別寒辺牛川を渡る低地、次々毎度の立ち寄りポイントで脚を停め、霧に霞む景色を眺めながら思う。恵茶人まで足を延ばさなければ、今日はかなり楽目の行程だ。もうのんびり行程でいいよ。

 道がするするっと台地裾に登り、糸魚沢への町道と合流。別寒辺牛湿原から茶内原野へ続く牧草地へ、いよいよ根釧台地の中核とも言えるエリアがここから始まるのだ。遠景はまだ霧っぽいものの、空気中の水滴は完全に消えていた。
 9:05、別寒辺牛着。明日また根釧台地202kmコースでここまで来るのだ、と思うと何だか奇妙な感じがする。あれほど来たい根釧台地なのに、来れるときには毎日来れてしまうのだ。
 さっきの登りで少し汗をかいていた。登りのせいもあるが、あの高性能レインジャケットが蒸れている。間違い無く、出発前の洗濯時、撥水剤浸け込み後に横着して乾燥機入れずに自然乾燥させてしまったのが原因だろう。我が家には乾燥機など無いので、いつもレインジャケットを乾かすためだけに地元コインランドリーに行かなければならないので、それが面倒でついベランダ干しに頼ってしまったのだ。今後はちゃんと乾燥機に入れることにしよう。コインランドリーがある銭湯でお風呂に入るのも楽しいしね。楽しんでしまえばいいだけだろう。この天気だって楽しんでしまえばいいだけだ。
 というわけで、ここで反省しながらレインジャケットを脱ぐついでに、牧草地が拡がる台地上でまたもや少し休憩することにする。遠景、というより少し遠くの防風林からして未だとっぷりと濃厚な灰色の霧の中だ。平坦に拡がる牧草地には、丹頂鶴のつがいが戯れ、時々ギャーッと鳴いていた。鳴かなければ大変優美な鳥なのだが、等と思うのは人間の勝手である。
 霧はかなり濃く、相変わらず頭上の雲はかなり低い。でも、あまり雨が続きそうな気はしない。そもそも今日は晴れ予報、降水確率も低かったし、さすがにもう雨は降らないだろう。でも、たとえこの後根釧台地が晴れても、海岸から海上には雲がどんより溜まっているパターンかもしれない。過去にはそんなことは何度もある。太平洋岸の恵茶人へ向かうと中標津到着が遅くなるが、とりあえず今のところは予定コースの未済経路で東円朱別へ向かい、その後は恵茶人を省略し、直接上風連へ向かおう。行程が短くなって楽になったら、いい加減晴れているであろう夕方に、開陽台でたっぷり時間を取れるかもしれない。開陽台到着が早ければ、売店で何か食べることもできる。
北海道Tour16 #2 2016/8/12 塘路→開陽-3

 高知小学校を過ぎ、南側へ入り込む道へ。さすがにこの辺の未済経路だけあって、今まで見逃していたぐらいのさりげない農道分岐だった。コースとしては、明日も訪れる道道813の1本南、道道123へ向かうのに、未済経路を使うのが今日のポイントだ。上風連方面に向かうには、この南回りだとやや大回りとなる。そして過去の訪問では、道道123方面や浜中、太平洋岸へ向かうのに、もう少し北で南に向かう道道807を使っていた。何故かというと、今回のコースは私が持っている地形図では道が繋がっていないからだ。それが今回出発前にルートラボでコースを描いてみたら、道が牧草地で数百mつながっていないだけであることがわかった。そしてそういうときの必殺技、空撮写真拡大の状況では、何だか全く問題無く道がつながっているようなのだ。おまけにその辺に、「北海道牧場」などという大変すてきな名前が見られた。試しに行ってみる価値が、十二分にあるように思えたのだった。
 しばらく町道然とした狭い幅の舗装が続いた後、牧草地のど真ん中で道はダートに変わった。この先が、ルートラボで強引にトラックの線をつなげた区間だ。もしかしたら牧草地の途中で、何か柵があるかもしれない。そうなったらそうなったで、道道813へ戻って円朱別まで進んでから、また南下して道道123へ向かえばいいと考えていた。何と言っても「北海道牧場」を一目見るのが楽しみである。
 ダート区間では道両脇の茂みは高くなり始め、牧草地の眺めは途絶えた。しかし結局、その破線区間をあっけなく通過することができた。ルートラボでコースを拾えた区間に入ってもしばらくダートは続いていたが、農場が現れ、その先から舗装が復活。道道813からの南回りルートを阻んでいた高知からのアプローチが、(私的に)開通したのだった。まあしかし、たかだか平地ダート数百mの話ではある。そして結局、「北海道牧場」の文字は見そびれてしまった。

 一直線の道が10km以上も丘陵を横断しながら続く道道813と違い、こちらの南回りルートでは牧草地のグリッドを区切る道が時々ずれたり、微妙に曲がって続いている。こちらもクランクや交差点の標識の度に立ち止まり、地図確認や交換して、やや大きめの起伏に続く牧草地の中をのんびり進んでゆく。脚を停める度に費やす時間は、1回当たり数分に充たない。しかし停車回数はやや増え気味で、その度に自分の周りを動く景色と風が停まり、何となく移動している時間が分断されている気になってくる。気分も実態も、明らかにペースに乗れていない。
 霧はすっかり晴れ、遠景も鮮明に眺めることができている。終始厚い曇りではあるものの、空は次第に明るくなり始めていて、朝に見舞われたような雨の心配は薄れていた。恵茶人へ向かうとすると、そろそろどこかで南に向かう必要がある。それがさっきから地図を時々眺めている理由でもあった。しかし根釧台地でこの調子だと、曇り確率が非常に高い太平洋沿いの恵茶人では、きっと鉛色の海上に厚い雲が広がっていることだろう。
 もう今日は恵茶人は止めることに決めよう。天気だけじゃなく、片無去からここまで時間が掛かりすぎている。一方で天気にひと安心したせいか、そろそろ疲れを感じ始めていた。ここまで食料品店で休憩できていないからかもしれない。東京での暑さ疲れが出ているのかもしれない。まあ歳だしな。セイコーマートに行きたい。この辺りに誰かセイコーマートを始めてほしい。儲かるかどうかはわからないが。

 等と悶々と進むうち、交差点の角に「浜中簡易軌道」の文字が描かれた立て札を発見。初めて浜中や歌登の地名を知ったのが、中学生の頃に読んだ鉄道ファン誌の軽便鉄道の記事だった。そのため、私にとって浜中の地名と簡易軌道は切っても切り離せない。それに、葛藤中の中高年には止まり木が必要だ。止まり木が繁華街の盛り場である必要は無い。
 刈り込まれた草むらの中のレールを少し眺めて再び走り始めると、牧草地に続く道の脇、茂みに埋もれつつある土手が並行しているのに気が付いた。これも簡易軌道の跡だと思われる。
 この間空は更に明るくなり、更に上風連手前で道道123が道道813と合流する辺りでは、そろそろ日差しが現れ始めていた。
北海道Tour16 #2 2016/8/12 塘路→開陽-4

 11:20、上風連着。明日の朝、というより24時間以内にもう一度ここに来る予定だ。今のところはA-COOPで缶コーヒーを飲んでおくことにする。明日の朝は交差点近くの森重商店の自販機にお世話になろう。
 缶コーヒーの後は、水を貰いに小学校へ。小学校で水をもらうのは、伝統的なサイクリングの補給方法である。それに高知や東円の小学校が閉校してしまったので、水をもらえそうな小学校をこの辺りで見つけるのは一苦労なのだ。
 人口密度が少ない土地のイメージに反して、小学校の校庭は小学生の野球で賑やかだった。見知らぬおやじが休憩していると怪しまれそうなので、水を汲んだら小学校を出て人気が少ない集会場へ。こちらもお年寄りがゲートボールを楽しまれていた。もう構わず建物の軒下ベンチで補給食のパンを全部片付けてしまう。
 まだ雲は低いものの、勢いよく流れる雲はもうすっかり明るい。明らかに予報通り、天気は晴れへ向かって推移している。この先のコースが悩ましくなってきた。もし晴れるなら、道道150や開陽台を訪れる千載一遇のチャンスだからだ。当初予定の東回り標津方面経由より、西側へ向かう方がいいかもしれない。もし可能なら、養老牛へ足を延ばせれば言うことは無い。
 などと考えるうち眠くなってきた。もう11時半過ぎ、少しぐらい居眠りしてもいいだろう。

 11:55、上風連発。
 走り始めてすぐ、居眠りする前より劇的に晴れていることに気が付いた。雨の心配が全く無くなったのは有り難いが、急激に暑く、いや日差しが熱くて照り返しが熱くなっている。もう少し涼しいとこの先助かるんだけどなー、等と思いつつとりあえず北へ。
 道道123は別海方面へ一番オーソドックスな道だ。2000年代後半ぐらいまでの私的幹線だが、実は最近あまりこの道を通っていない。いつの間にか、1990年代後半辺りに比べて交通量がやや増え、道自体も大分改修が進み、何かと物々しく立派な道になった気がする。
 上風連から別海へは、ひたすら連続する丘と低地に牧草地と防風林と牧場の緑が続く。一直線で道の方向はほぼ南北、ちょうどお昼頃に路上に森の影が全く無く、日差しと照り返しがつらい。丘越えの高低差が別海へ向かって次第に少なくなってゆく間、国道243まで丘越えがあといくつ、交差する町道の番号は何線だ、いまどの辺だ。この道を通る間中、毎回そんなことばかり気になっている。

 12:45、別海で国道243を渡り、そのまま道道831を北へ。ここまで道の方向は北西向きに、そしてもう何回かアップダウンが続いた後、道は起伏が少ない台地上に乗り上げる。
 改めて地図を見直すと、というよりここまでののんびり行程で何となく覚悟していたが、改めて地図を見るとここから養老牛は思っていたより遙かに遠い。中春別14時、西春別15時、計根別で16時前、養老牛で17時。開陽台着は18時過ぎか。空は晴れているから夕方の開陽台も悪くないが、途中食事すると更に30分以上延着となるだろう。昔はこんなこと当たり前のようにやっていたが、51歳になったワタクシとしてはもう少し宿に早めに着きたい気はする。それに明日のコースや既済経路と重複する道を通ることになるし。
 結局このまま中標津に向かうことにした。多少余裕がありすぎだが、どうせ養老牛へは行けないのだ。そして、余裕がある分開陽台で余裕を持って過ごすことができる。

 別海・中標津間は、旧標津線沿いでやや交通量が多い幹線道路道道8以外、南北方向の道のつながりが大変に悪い。別海と中標津で道の直交グリッドの角度が違うため、その間で道が途絶えてしまうのだ。そして更に中標津側の豊原では、南北方向の道に舗装道路が無く、今時根釧台地の地域間道路としては珍しくダート区間まで現れる。
 しかし、近年曇りばかりだった根釧台地の晴天ツーリングが楽しめていた。空はますます晴れ渡り、特に正面に武佐岳、西別岳がよく見えるのがとても嬉しい。さっき諦めた山裾の道道150に行きたかった、とも思う。きっと最高に気分がいい道道150の風景を楽しめたことだろう。上風連までのだらだら行程を反省。
 振り返って太平洋岸方面に目を凝らすと、空の地面との境界に近い辺りが何となくとろーんと雲っぽい色になっている。海上には相変わらず厚い雲が溜まっているのかもしれない。そうでないかもしれないが、どっちにしてもあり得ることだ。そして今日はもう、恵茶人へは向かっていないのだ。後悔ばかりしても仕方無い。
北海道Tour16 #2 2016/8/12 塘路→開陽-5

 茂みの中に新しめの住宅や施設が点在し始め、次第に密度が増えて、辺りがいつの間にか中標津の町外れに移行して、国道272に合流。路上はここまでの静けさが嘘のように車が多い。1986年に初めて中標津に訪れてからもう30年。その間、中標津は北海道のこの辺りにしては意外な程に町が拡がった。むしろ根室より大きくなったらしい。
 14:45、国道沿いに期待通り発見できた蕎麦屋「わかもり」で休憩とする。かしわ南蛮が切れと香りが良くてなかなか美味しい。

 15:05、中標津発。
 やっと木陰が涼しくなり始めた俣落直交の町道を北上、夕方っぽい日差しに牧草地の緑が鮮やかになっている。時刻も上々、今日は開陽台でゆっくりしよう。
 15:50、俣落着。意外に早く着けた。しかし、町道北19と開陽台入口道路の登りはやはり汗だくである。

 16:10、開陽台着。前回が何時だったか忘れてしまったほど久しぶり(2011年以来だった)の、晴れの開陽台だ。
 駐車場の定位置に自転車を停め、そそくさと展望台へ階段を登る。まずは売店でサンドイッチにソフトを瞬殺。いつもこの売店では、いい歳をして自分でも可笑しくなるぐらいに食べ物がすいすい腹に入ってしまうのだ。
 食べ物を食べた後は、展望台の屋上へ。360°上空に開けた、北海道有数の展望スポットである。今日の開陽台は空に雲はあるものの、根釧台地のはるか地平線まで良好な眺めである。いやー、近年出会えていなかった、なかなかの開陽台だ。やはり開陽台は素晴らしい。素晴らしいとしか言いようが無い。裏手のキャンプ場にはバイクも多い。今日はここで極上の一夜を過ごすのだろう。少し羨ましい。

 この時間、どんどん日が傾いてゆく。そして今日は雲の動きが早い。根釧台地を照らす日差しは雲に遮られ、大きな影が次第に動き、また明るい日差しに照らされてゆく。僅か5分ぐらいの間に、風景のニュアンスがどんどん変わってゆく。
 こういう日も来るのだと思わせられる、間違い無く当たりの開陽台である。思えば朝はどんより暗く霧と雨に行く手を遮られそうだったが、途中からぐんぐん晴れ始めて暑くなり、印象としては暑かったことしか残っていないほど晴れてしまった1日だった。そして前半の余韻か東京での暑さ疲れのせいか何となくだれた行程の1日ではあったものの、いい時間に開陽台に着けて、近年全く遭うことが出来なかった晴れの根釧台地を眺めることができている。曇りの日も、霧の日ですらそれぞれ味わい深い表情を見せてくれる開陽台ではあるが、この晴れの日の風景こそ開陽台にやって来る理由となっている風景とその体験なのである。

 16:55、開陽台発。町道北19号から少し脇道に入り、1987年から私的な定点撮影地となっているダートで夕方の風景を少し眺めた後、17:20、民宿地平線着。

 宿に着いてすぐに町営温泉へ。早めの到着が効いて、午前中からの目論見通り夕食前に風呂に入れたのはいいが、町営温泉の私的名物中札内の地鶏から揚げを生ビールと共に味わう望みは叶えられなかった。地鶏から揚げはボリュームたっぷり過ぎて、夕食前に食べてしまうと夕食を残しそうでどうしても食べることができないのだ(しかし今考えたら、残して持ち帰りにすればいいだけかもしれない)。
 夕食時には、宿主の石川さんに新コース、2年前から構想を伺っていた根釧台地100kmの完成版を見せていただいた。明日は晴れ予報なので、問答無用で初の晴天202kmだが、石川さんが満を持して組み上げた第2作、100kmコースもきっと素晴らしいコースに違いない。いずれ辿ってみたい。
 一方、「明日は大丈夫でしょうけど明後日はまた嘘みたいに雨でしょうね。台風も心配ですし、今年の夏はこれで終わりでしょう」と石川さん。長年の実績と経験で、総合的に見て間違い無いらしい。ならば明日は心置きなく202kmコースを楽しみ、明後日の弟子屈までの屈曲コースをどうするかは明日の予報で考えよう。

■■■2016/12/19
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北海道Tour16 #3 2016/8/13 民宿地平線の根釧台地ベスト202km-1

開陽→(町道北19)武佐→(道道775)東武佐→(農道)俵橋→(道道994)中春別→(農道)別海温泉→(新酪農道)奥行→(道道930)上風連→(道道121・813)奥奥別寒辺牛→(道道813)東円朱別→(道道928)上風連→(農道・町道)西春別→(道道957他)上多和原野→(道道13)萩野→(農道・町道)虹別→(道道885)養老牛→(道道150他)俣落→(町道北19他)開陽台→(町道北19他)開陽 207km
ルートラボ>http://yahoo.jp/eQmpNY

 夜が明けた開陽は濃霧の中。今日一杯は晴れの予報、いくら何でも昨日よりは早めに霧が晴れてほしい。根釧台地202kmコース3年目にして、ようやく晴天のチャンス到来なのだ。そして昨夜から万全の9時間睡眠、町営温泉も効いたのか、目覚めの身体もすかっと爽やかだ。
 昨日町営温泉帰りに買っておいたセイコーマート珠玉の食料品を喉の奥に押し込み、フロントバッグの荷物をカメラから4サイド選抜日帰りメンバーに交換。朝露がぽたぽたと雨かと思うようなミズナラの木陰で荷積みを完了し(といってもフロントバッグを着けてサドル袋に輪行袋を入れるだけ)、5:20、開陽「民宿地平線」発。

 まずは町道北19を武佐へ。
 霧は濃いものの路面は基本的に乾いている。そしてあまり寒くない。さすがはまだ晴れの周期内である。そして昨日と違って霧でも路面が乾いていて、景色に漂う雰囲気というか自分の安心感が全然違う。
 武佐の一番上手、北東へ向かっていた道が南東へ向きを変える場所は、中標津の山裾ならではの根釧台地の地平線が眺められる場所だ。しかし今は濃霧のせいで、楽しみにしていた地平線が全く見えない。まあまだ出発したばかり。この先少なくとも上風連辺りから先では晴れの風景を目一杯楽しめるだろう。それがいつ頃かは期待のレベルを超えないが、その時を信じて着実に脚を進めるべきだ。
 道が南東向きに変わるとともに、開陽から少しづつ高度を上げていた道が下りに変わる。根釧台地の山裾から、武佐、そして標津の低地へと一気に100m以上下ってゆくのだ。今日のコースは小規模アップダウンが終始続くものの標高200m以上に登ることが希なのに、オプション扱いになっている開陽台からの下りを除けば、コース随一の下りが初っぱなにあるのがこのコースの奥深いところであり、根釧台地の面白いところでもある。
 とにかく武佐、武佐中央、東武佐まで、霧の中をどんどん下ってゆく。無風時に脚を停めて下るときに30km超ぐらいの定速で安心して効率良く下れる、ツーリングにはいい下りである。しかし、登るときにはこの坂がなかなか曲者で、あまり視覚的に坂っぽくないのに何だか脚が重くて動きがのろいという、訪問時の毎度のストレスを思い出す。大好きな中標津の道だからどっちでも構わないのだが。
 などと霧を眺めつつ、どっちでもいいようなことばかり気楽に頭に浮かぶ。

 東武佐の道道774クランク交差沿いには、このコース中数10kmに1箇所づつしかない自販機がある。道道774の反対側にある「はるかなる山の呼び声」ロケ地の民家セットを眺めつつ、表敬訪問程度に自販機コーヒーとする。まだ出発したばかりだが、このコースで自販機がある場所なんて数える程しか無いのだ。朝早い近所の方が、自転車ツーリストを見ると声を掛けてくれて嬉しい。私も昔は「チャリダーですか」と聞かれて「自転車ツーリストです」などと突っ張っていた時期もあったが、最近はチャリダーもツーリストもどっちでもいいじゃん、人類皆兄弟と思えるようになった。

 東武佐から俵橋へと、何度かのクランクと小さなアップダウンを経由し、短区間道道や町道、農道を乗り換えて更に標高を下げてゆく。東武佐で40m台だった標高は、俵橋では標高20m台後半になっていた。比較的安定した台地上に牧草地が拡がり、時々渡る川沿いの低地には茂み以上大森林未満ぐらいの広葉樹林が拡がっている。10km足らずのオホーツク海岸まで、標津の低地に牧草地と森が拡がる風景を、空から眺めるように想像してしまう。
 川沿い低地の森はまだ早朝のため静かで、時々大型の熊の糞が落ちている。そういう場所はささっと通り過ぎてしまいたい。霧に霞む行く手の先へ、急ぎすぎること無く淡々と経済運転で、脚を進めておこう。

北海道Tour16 #3 2016/8/13 民宿地平線の根釧台地ベスト202km-2

 牧草地と防風林、そして低地の茂みと、人の手は入っていても人気は無いものがひたすら道端に続いていた。標津へ向かう国道272を横断してからも、時々現れる標識はまだ標津だった。これが上春別、尾岱沼を過ぎ、別海、床丹になってからまだしばらく南下は続く筈だ。別海の文字が見え始めないと、次の段階には移らない。202kmコースのいくつかの段階の中でも、距離が長い区間である。
 空はまだ曇っていたが、国道272を横断した辺りから霧が消え、明らかに遠景が澄み始めた。一気に青空が拡がる兆しかもしれない。北海道では晴れが何日か続いた後によく見られるパターンだ。そして、昨日よりそのタイミングが早そうだ。
 早くも6:30頃、別海町との町界を越えてまもなく空が晴れ始めた。と思っていたら、曇り空が一気に青空に替わった。早朝の静かな牧草地が眺められる場所を狙い定め、脚を停めてみる。空が晴れると森の白樺の幹、葉っぱの緑が、急に爽やかに見える。晴れているだけで低い気温も爽やかに感じられる。相変わらず森からは無数の生物の気配がこちらを圧迫してくるが、空が晴れただけでどちらかと言えば爽やかな森の朝というような雰囲気に感じられる。こちらの気分の問題か、とにかく霧に圧迫されているような気分ががらっと変わってしまったのだった。これなら今回もいい気分で最後まで走り続けられるだろう。

 別海町に入って、道の周囲に牧場が増え始めていた。交差する道の標識に別海市街という文字が現れてから、ひたすら南下し続けていた道が屈曲し始め、牧場の間を右往左往して、8:00、別海温泉(の痕跡)着。次は新酪農道から上風連へ、前半約2/5の〆である。
 ここで道を間違ってしまった。本当は国道243をクランク経由して少し北側から新酪農道に入るのを、なんとなくコース前半はどんどん南下せねばという気持ちが先走り、つい南下してしまったのだ。国道243を1kmほど下って見覚えのある低地に降りてから、さすがに「今日国道243ではここは絶対に通らないよ」という風景が現れ、ようやく気が付いたのだった。

 空には再び雲が出始めていた。でも、基本的に今日は一昨日昨日と同じ、時々日差しが隠れるぐらいのちょうどいい晴れで推移するのだろうと思う。むしろサイクリングには申し分無い。あとは毎度の撮影ポイントで具合良くできるだけ日差しが出て、空に青空が拡がっていてくれればいい。そう都合良く展開しなくても、3年かかってやっと会えた晴れの202kmコースなのだ。贅沢は言うまい。
 別海の丘陵部をまともに横断して南下する新酪農道。特に新酪展望台前後の起伏と登り返しは、一直線に続く道の行く手の大きな起伏が、毎回心理的にやや堪える。これからこんなに下ってまた登るんだ。なんて非経済的な地形なんだ。しかし、通ってみれば意外に淡々とこなせてしまうのも毎度の事。
 何度かアップダウンをこなすと地形の起伏は多少収まり、道は南向きから西へ向かい始める。やがて森の木々の中に、この辺では大変珍しい鉄筋コンクリート造の建物が見え始めた。昨日訪れたばかりの上風連の小中学校である。

 9:00、上風連着。
 去年より15分遅れの到着だ。さっき別海温泉で道を間違ったせいだ。まあ今日はこの天気だし、途中写真を撮ることも増えて、遅かれ早かれ去年のペースよりは遅れるのだろう。多少の遅れに焦らず、狙って訪れて出会えるものではない風景との出会いを大切にせねば。
 今日は昨日行かなかった「森重商店」へ行く番だ。昨日立ち寄ったA-COOPはまだ開いていない。去年会った男の子を思い出しながら、人気の無い店の前でコーヒー休憩とする。2日連続、というより昨日来てからまだ24時間経っていないという、何だか妙な気分を適当に楽しんでおく。
 一人おにぎりなどを食べていたら、店裏手の引き戸ががらっと開き、野球ユニフォーム姿の少年が2人登場。弟さんの方がにこにこしながら私を思いだしてくれた。「また来年」と言ったら、またにこっと笑ってくれた。

北海道Tour16 #3 2016/8/13 民宿地平線の根釧台地ベスト202km-3

 9:10、上風連発。道道813の昨日通った分岐を、今日はそのまま大別方面へ。牧草地、森、軽い起伏が断続するのは相変わらずだが、道は比較的谷間に続いて短い区間で道が微妙に曲がってゆく。谷でも丘でも無関係に一直線気味に道が延びてゆく上風連・円朱別・茶内原野の中では、特徴的な場所だ。
 後で北上を開始する道道928との分岐を過ぎて茶内原野、奥別寒辺牛への折り返し区間へ突入。まずは高知手前までの、8km一直線区間だ。印象的な道が多い根釧台地でも、道の味わいとしてかなり突出した区間だと思う。
 道は正確に直交グリッドの連続となる。丘、牧草地と川を渡る低地のアップダウンは相変わらず延々と続くものの、上風連北側の新酪農道辺りより、アップダウンの高低差(標高差などという程の差ではない)は明らかに少ない。同じ別海町でも、上風連南の谷間を境に別のエリアと捉えるのがいいのだろう。
 丘と谷間の周囲の地形、直交する道を地図と照合し、自分の居場所を確認しながら進んでゆく。トライベツへの分岐を過ぎ、JA浜中西円取扱所もとりあえず往路は通過しておく。さっき上風連で休憩したばかりだし。

 浜中町へ入ると、道端に牧場農家が登場。廃校となった元高知小中学校は、水を戴くことができれば一躍コース上の重要ポイントになるのだが、コンクリートの丈夫そうな校舎周辺には水が飲めそうな水栓は無い。折り返しの奥別寒辺牛が間近でもあり、昨日分岐した高知の細道を横目にとりあえず行くところまで行くことにする。
 10:30、奥別寒辺牛着。民宿地平線から97km。折り返し地点は厚岸湖岸の糸魚沢への町道分岐であり、別海町からずっと断続してきた牧草地の西南端だ。ここから西、牧草地の外れから地形は谷間へ下り始め、別寒辺牛湿原周囲に拡がる無人の森林地帯となる。202kmコースの折り返しがこの場所なのは、根釧台地すなわち牧草地であることの象徴でもある。
 草と茂みの香りが濃厚に漂う折り返し地点の道端でおにぎりを1つ食べた後、折角なので、見晴らしのいい高知の牧草地まで少し戻って廻りを見渡してみる。
 昨日丹頂鶴のつがいを見かけた濃霧の草原が、今日は暑すぎない程度に晴れ渡っている。しかし青空の下部、遠くの中標津方面、知床山地はややとろんとした色の雲に覆われている。中標津は曇りなのかもしれない。今日はまだ雨が降ることは無いとは思うものの、やはり昨日開陽台で時間を取っておいて良かった。振り返ると、南側の空も陸地に接する辺りが不透明っぽい。しかしその色は、昨日晴れた段階での色より軽い色だ。今日は太平洋沿岸は晴れなのかもしれない。恵茶人で晴れの海を眺めるチャンスかもしれない。
 まあしかし、とにかくこちらは3年目にしてようやく晴れの根釧台地202kmコースなのだ。今日は粛々と202kmへ脚を進めねば。

 再び別海町へ、一直線区間の幾多のアップダウンを逆戻り。今度はJA浜中西円取扱所で少しコーヒー休憩しておく。高知からここまで、そしてここから上風連まで、牧草地と牧場は数あれど自販機の一つも無い。アップダウン区間まっただ中の、まるでオアシスのような施設だ。西部劇に出てくる砂漠の町の酒場は、こんな雰囲気なのではないかと想像させるお店だ。
 見事に晴れていた茶内原野〜東円朱別でも、相変わらず南側の空の低い部分に少しとろんとした色の雲が溜まっていた。やはり太平洋岸は霧の中かもしれないし、そうじゃないかもしれない。

 11:20、東円朱別の道道928分岐到着。ここで折り返し区間は終了、ピストン行程より何となく嬉しい、と言う程度のあまり根拠の無い新鮮な気分で、別寒辺牛演習場の森に沿った北上区間へ。
 いつも周辺が晴れていてもここだけは曇っていることが多かった別寒辺牛湿原と演習場。晴れていると、牧草地の拡がりが伸びやかで、森の表情が軽やかだ。毎度のペースより遅れ気味ではあるものの、まあ想定希望時刻よりまだ前倒しの通過であり、気分も軽い。ただ、この先西春別、泉川の距離ボリュームを毎回私は少なめに把握している傾向があるので、やはり着実に脚を進めてゆく必要がある。
 道は別海らしいやや大きめの波のアップダウンで丘陵を越えてゆく。これは昨日通った1本東の道道121でも同じ傾向だ。ただあちらの方が道道番号が若いためか交通量も道沿いの牧場も多く、こちらは僅かに内陸側に位置するからなのか、アップダウンはやや露骨だ。

北海道Tour16 #3 2016/8/13 民宿地平線の根釧台地ベスト202km-4

 演習場の森沿いにコースは道道928から農道へ乗り換え、道の向きは北から西北へ。谷間と丘をまともに横断していたコースは丘の上に乗り上げ、アップダウンは小さく少なくなり、ひたすら淡々じりじり高度を上げる区間に移行する。こうなると、名実ともにコースもいよいよ後半の主要区間だ。
 12:00、矢臼別演習場入口分岐通過。こんな位置にあったのかとも思う、意外と早い登場だ。
 南側には森、北側は広々とした牧草地が山裾の中標津へと続いてゆく。標高は東円朱別からの北上区間で一度50mまで下っていたが、再び60〜70m台後半へと上がり始めていた。この先西春別で100m、泉川と道道13を経由して200m超の萩野まで、数多くのアップダウンとともにまだまだ登りが続く。お昼からお昼過ぎにかけてそろそろ眠くなる時間帯でもあり、今日のような晴れの日は1日で1番暑い時間帯でもある。コース中、いや、単調な景色に緩い登りが普通の訪問で通過するときにもなかなかの曲者だ。

 13:00、牧場(の脇)で小休止。南の森をバックに北側の牧草地を見渡すこの状況、このコースが西向きから西北向きに移行しつつ、しばしば登場している。というより、12時頃の矢臼別演習場の手前の風景にそっくりだ。実はこれだけ離れていることに気付いたのは、今回が初めてだった。3回目ともなると、やや渾然一体となっていた矢臼別→西春別の風景が、ようやく把握できてくる。好きだと思っている道道150・885の風景だって、連続してこれの次はこれ、と思い出せるようになったの、実は結構最近のことだ。
 森の佇まいは似ていても、実は既に演習場入口分岐で道が少し北上した段階で、演習場そのものの森から道は離れている。そして南側の森が牧草地に替わり、更に南側も北側も植林のカラマツとなった。
 以前、少し北側の道を何度か通ったことがある。主に根釧台地でのコースに変化を出すつもりが、毎回単調な風景の印象が残った。いや、牧草地と防風林が続く風景自体は大好きなのだが、進んでも進んでも安定した地形と直線基調の道で、風景があまり変わらないのだ。特に目印となる施設も皆無で、時々横断する道道の表情すら似ている。風景だけではなく、風向きも全く変わらないため、特に登り方向の場合に強めの向かい風に延々悩まされ続けることもあった。
 それがこのコースでは、同じような場所なのに、道が適度に曲がりつつ牧草地と森を経由し、変化に富んだ風景が楽しめている。「こんな道あったのか」と思わせられる、石川さんさすがのチョイスだ。

 14:00、西春別通過。西春別というか、市街地っぽい気配を遠目に何となく眺めつつ、町の外側を掠めてゆく。
 コースは泉川へ、これまでの北西向きから概略南西へ90°変わり、平坦基調の地形は再びアップダウン連続に、そして道が屈曲しはじめた。根釧台地内側の高台上から次のエリア、縁部分の丘陵横断に移ってきたのだ。標茶との境界部まっただ中の泉川は、旧国鉄標津線では標茶から気動車が100m登りを確か20分ぐらい掛けて辿り着く、根釧台地入口の駅だった。このコースでも後半のハイライトの一つとして、泉川を外す訳にはいかないのかもしれない。
 距離はもう160km、お昼過ぎでそろそろ5時台スタートの疲れが感じられ始めているところに、この地形の変化は堪える。そしてここまでずっと距離感覚と方向感覚を保ってコースを辿っていたのが、道の屈曲で自分がどういう方向を向いて進んでいるのかわからなくなり、更に焦りが助長される。毎回泉川はこのコースの難所なのだ。
 ペースはというと、今日はもう去年と一昨年より30分ぐらい遅れている。まあこの天気のお陰で、随所で写真を一杯撮っているからな。去年より時間が掛かったという落としどころで手を打つことにしよう。焦らない焦らない。
 と気を許し、泉川の一番奥で、ちょっと興味があった農道へ踏み込んでみた。風景はそれなり以上に良かったものの、アップダウンを伴う回り道に、またもや時間を喰ってしまった。

 道は再び台地上へ。根釧台地上縁の比較的安定した面上を北西へ、淡々と次第に標高を上げてゆく。そして風景も牧草地と防風林が規則正しく断続する根釧台地北部らしいものに変わった。今日のような晴れの日に、ここを通ってみたいと思ってからもう4年目。雲が出始めてやや薄曇り気味だが、日差しが現れると眩しく輝くような日なたの牧草地を眺めることができる。最後まで落ち着いて風景を楽しまねば。
北海道Tour16 #3-5

 道道13に合流すると標高はいよいよ150m以上に移行、最高地点180m台のスノーシェッドまでちょい坂がしんどい。スノーシェッドから先は、地形全体の傾斜なりに道道13が下り始める。牧草地から遠景の山裾へ開けた平面を見渡しながら下ってゆく風景のためだけに、標茶からのルートにこの道を選ぶこともあるほどだ。今日はその平面から立ち上がる北側の山々の中腹から上が、雲に覆われているのがよく見えた。
 標高170mの虹別から再び220mまで登り返す萩野の高台からも、虹別から養老牛への山裾に雲が掛かっているのが見えた。ここまで晴れだったのに、最後の区間の道道885・150と開陽台は今年も曇りかもしれない。

 15:00、虹別の国道243クランクから道道885へ。民宿地平線まであと30km未満。そんな距離より早くも帰ってきたという気すらする、大好きないつもの道である。
 中虹別から中標津町界、西別岳登山口を過ぎて養老牛へと、楽しみな風景が続くはずなのだが。北側の山々はやはり雲に隠れているか、上空の重い雲であまり景色がすっきりしない。つくづく昨日、晴れの機会に訪れたかったが、近年の訪問中では雨が降っていなくて風景が見えるのはむしろ上々だ。
 15:30、養老牛着。
 去年は15時前に養老牛を出発していた。やはり去年より行程が30分以上は遅れている。まああれだけ晴れて写真を一杯撮ったという言い訳はある。思えば去年も一昨年も、養老牛から先では小雨だったのだ。どんより曇りも雨も本物の根釧台地には違いないのだが、やはり小雨の中を黙々と走るより緑輝く夏景色の中を彷徨いたいというものである。
 しかし今日ももう15時過ぎ、山沿いまで帰ってきてみれば、空一杯に雲が押し寄せている。明日からやって来るという雨雲が、早くも現れ始めているのかもしれない。今日ここまで晴天で、風景を楽しめたことに感謝せねば。
 開陽台には売店営業時刻終了までに着き、202kmコースの〆としてソフトとドッグサンドを頂きたい。例え空が曇りだとしても。

 養老牛から旭新養老牛の道沿いの牧草地には、山裾の地形が見せる独特の開放感とともに、開陽までの道道150で一番好きな風景が続く。川を渡る谷間とスノーシェッド、旭新養老牛では養老牛温泉への分岐と、もう25年以上前の冬に水を頂いた農家の廃屋を過ぎ、一直線だった道は北進でいくつかのカーブを経て、北進から一気に80m下り、16:40、俣落着。さあ、今回のコースもいよいよ大詰めの開陽台だ。空の雲は多いものの、幸いまだ少し日差しが出ている。全体が霞っぽくても、何とか夕焼けと呼べる空を開陽台から眺められるかもしれない。
 開陽台道路の10%登りはもう全押しにしてしまう。200km走ってくるとさすがにしんどいし、いいのだ、昨日4サイドで登っているし。

 17:00、開陽台着。
 登っている間に、というより実は登り始めぐらいの段階で速い雲が押し寄せて、日差しを完全に隠していた。根釧台地の眺めは地平線まで遮られずに見通せてはいたが、やや薄暗い色の拡がりである。やはり昨日、上々の開陽台を眺めておいて良かった。そして、今日はもういいやという気になれた。売店でドッグとソフトを頂き、もう民宿地平線へ帰ることにした。
 17:30 開陽「民宿地平線」着。202kmコースは別海温泉での国道243ピストン、泉川での寄り道が効いて、207kmになっていた。
 到着後、すぐに町営温泉へ。今日も夕食前に温泉に入ることができた。

 天気予報によると、明日14日〜明後日15日、台風が道東を直撃するらしい。まさか北海道に台風がやって来るとは思っていなかった。石川さん予報でも、「明日は来ますよ。午後もう来ますね」とのこと。「今年の晴れはこれで終わりでしょう」とも仰っていた。毎年の天気の記録と実際の推移から、もうわかってしまうのだそうだ。考えてみれば、牧場農家もそういうことをしないと折角刈り取った牧草ロールが雨に濡れてしまい、うまく発酵させられずに腐ってしまう。年間の生業に関わる重要事項なのだ。
 一方夏休みの自転車ツーリストの身の振り方としては、明日は全く走れないわけじゃないが、あまり無理しない方がいい。幸い明日の宿は、ストレートに行けば50km台の札友内「鱒や」。予定では途中根釧台地西部を行ったり来たりして距離を稼いでいたが、まっすぐ向かってちょうどいいぐらいかもしれない。今日の晴天の後ではやや残念だが、今諦めきれなくても明日の天気が、自分がどうするべきかを実感させてくれることだろう。というより、もう朝食を頂いてから出発することにした。

■■■2017/1/2
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■■■高地 大輔
北海道Tour16 #4 2016/8/14 開陽→札友内-1

開陽→(町道・道道150)南開陽→(町道・道道775)若竹→(道道311)旭新養老牛
→(道道150)養老牛→(道道885他)萩野→(国道243)仁多→(農道他)弟子屈
→(道道717)札友内 67km
ルートラボ>http://yahoo.jp/wqS_lp

 4時に起きると辺りは霧。しかし、霧の空には昨日感じられた明るさは全く無い。そして昨日、一昨日より視界が悪い。多分開陽台は更に真っ白けだろうと思われた。この時点で、朝の開陽台は止めにした。

 のんびり朝食を食べて出発しようと思っていると、5時過ぎには雨が降り始め、8時の出発すら危ぶまれる状態に。石川さんの予想はばっちり的中していた。そして、雨雲の襲来は天気予報より早まっている。
 朝食を食べてから空を見上げても、何か変わりそうな兆しは全く感じられない。もっと言えばこの後天気が悪化するのか良くなるのか、さっぱりわからない。まだ8時台だから、このまま待っていれば9時頃には少しは雨は上がるかもしれない。しかし、10時になってもまだ雨は続いているかもしれない。或いは出発してみたら、意外に少し下手や俣落以西で雨が上がるのは珍しいことではない。ならばいつまで待っても何か劇的にどちらが良かった、ということは無いだろう。それなら出発してしまえ。

 8:20開陽「民宿地平線」発。
 今日の夕方には台風か熱帯低気圧がこちらに進んでくるようだ。最悪のシナリオは、台風のまま速度が速まって15時頃に北海道に上陸するパターンだ。幸い今日の宿は札友内の「鱒や」である。直線距離が近いので、根釧台地西部の未済経路を集中的にローラー作戦して距離を稼ぐコースを組んでいた。それを素直にあまり行ったり来たりせず余裕たっぷりの超のんびりと、弟子屈でどこかの店で昼食でも食べれば、15時の宿到着まで何とかツーリングっぽくなるだろう。それに計根別辺りまでは、一昨日教えていただいた「根釧台地ベスト100kmコース」の一部が使えそうだ。
 というわけで、まずは宿の前の道を南下。標高の高い山裾方面ではなく、下手の南側へ向かっているのに、正面の300mぐらい向こうの防風林が霞んでいる。振り返っても防風林の向こうは真っ白だ。まあ今日は終始こんなもんかもしれないね。昨日までの晴れに出会えたことに感謝せねば。

 出発したばかりではあるが、開陽市街で缶コーヒー休憩に。さっき地平線でもコーヒーを飲んだので、休憩と言うより毎朝恒例行事、行事と言うより心の甘えみたいなものだ。10年以上ぐらい前だったか、確か交差点近くで見かけた喫茶店兼飲食店はもう無くなっていたようだった。なんとなく行く道は絶えずして元の開陽にあらず的諸行無常感に浸っていると、地元の方が声を掛けてくれた。いつもの今日の行程について会話の後は
「明日台風だからねー。気を付けてね」
とのこと。明日は全面的に台風だという実感が、更に高まってきた。

 道道150を更に少し南下。見落としてしまいそうにさりげない、地味目の分岐から100kmコースの町道へ。やや細目の落ち着いた雰囲気の道である。1本北の道道505は俣落の先まで通ったことはあったものの、確かにこちらは通ったことが無い。
 しかし俣落の交差点では、角地の自販機に見覚えがあった。交差する道を、2014年に確かに南下している。あの時は朝から日差しが出て、照り返しが暑くなり始めていたのを身体が覚えている。今日は薄暗い霧の中の交差点だ。2年振りの表敬訪問として、またも自販機休憩しておく。
北海道Tour16 #4 2016/8/14 開陽→札友内-2

 俣落から先は、所々で川の谷間へ落ち込む大きな起伏と、登り返した高台にしばし牧草地が拡がった。少しずつ山裾へ高度を上げてゆく牧草地の表情は広々と伸びやかだ。起伏が連続する別海中部や、低地的な拡がりの標津、高台上の牧草地だけがどこまでも続く西春別辺りの風景とも違う。それはまさに山裾1本道の道道150辺りから数km下って来たという雰囲気そのものであり、中標津の地形を改めて理解できた。というより、一番山裾に近い道道150ではなく、むしろこっちの方が中標津西部の雰囲気なのだ、と思われた。2008年の訪問で、馴染みの道道150経由ではなく1本下手の道で北進に向かい、まだまだこの辺りには魅力ある道が多いことを実感していたが、今回も何故今まで通らなかったのか、という気になるほどの充実した風景を楽しむことができた。100kmコースもいつか是非とも晴れの日に通らねば。

 若竹で100kmコースを下車、なるべく未済経路の細道を選んで道道150へ北上を開始。途中ダート含みで道道775へ。養老牛温泉に続くこの道は、1990年代後半に一度通っている。確かこの辺りは下り基調に乗じて、一目散に通過してしまったような気がする。霧で100mぐらい先が真っ白な牧草地の真ん中でおにぎりを食べながら、風景にさっぱり記憶が無いね、などと思う。この辺の谷間は山裾から南北に流れる川沿いである。牧草地や道、見渡す周りの風景は主に台地上の風景なのだが、山裾ならではの地形の微妙な起伏が風景に変化を付けていて、眺める景色がひとつひとつ心魅かれるものが感じられる。
 牧草地には丹頂鶴がやってきていた。根釧台地でももうすっかり丹頂鶴は普通の鳥になった。

 旭新養老牛で、昨日通った道道150に合流。大好きな道道150は今日は完全に霧の中。これもこの道によくある表情の一つである。
 10:35、養老牛「ながかわ商店」着。8時過ぎ出発に少し回り道気味のコース、脚を停め停めのちんたら行程で、けっこういい時間になってしまった。お昼までもうたったの1時間半である。根釧台地最後の休憩ポイントなので、またもや自販機休憩の後、10:40ながかわ商店発。

 山裾のためか、道道885ではこの期に及んで霧が更に濃い。西別岳登山口を過ぎるとますます霧が濃くなり、服に粒が付き始めた。そして中虹別を過ぎると粒はいよいよ水滴になり始た。
 萩野への農道分岐では小雨が降り始めた。分岐から向こうの農道路面が濡れ始めたので、この辺りでレインジャケットを着込むことに。

 標茶町と弟子屈町の町界へは、国道243の丘越えとなる。しかし、昔からのちょい峠という印象とは裏腹に、標高差はたったの80m。国道に合流した段階で相変わらず霧は濃かったが、小雨は切れ始めて路面も再び乾き始めていた。さすがは国道である。丘を越えても雨が強くなる気配は無く、丘のてっぺんでレインジャケットを脱ぐことにした。今回、レインジャケットはいつもより通気性と耐水性が悪く、着ていて熱が籠もるのである。出発前の防水処理に、モンベル推奨のドラム乾燥機を使わなかったためであることが、北海道から帰ってからわかった。

 仁多のスノーシェッドを抜けた分岐で農道へ。相変わらずやや粒の大きい霧が漂っているものの、弟子屈側は遠景が晴れていて、空が明るい。弟子屈への100m下り途中、時々雨粒が大きくなり、雨具を着ようか悩む前に雨が止む、というのが2〜3回繰り返された後、弟子屈手前で完全に雨は止んだ。

 12:20、弟子屈着。
 摩周駅周辺で一番名の通った昼食ネタと言えば、駅前「ぽっぽ舎」の豚丼だ。しかし私的には、豚丼は全面的にセイコーマートである。
 と思って、昨日既に弟子屈ではラーメンを食べようとなんとなく決めていた。というわけで地元の方に少しヒアリングした結果、街から少し離れた「弟子屈」以外はやはり駅前「ぽっぽ舎」の味噌ラーメンが美味しいとのこと。というわけで、結局毎度の駅前「ぽっぽ舎」で味噌ラーメンを食べることになった。味と立地の両方で、地元の方にとっても鉄板チョイスということなのかもしれない。外様の観光客も昼食を探してこの店に辿り着く人は多いようで、「ぽっぽ舎」の前には少々列ができていた。やれやれ、これだから町は嫌いだ。こちらには時間は目一杯あるので相手にとって不足は無いが。ただ私はお一人様なので、10分も待たずに席に着くことができた。
北海道Tour16 #4 2016/8/14 開陽→札友内-3

 味噌チャーシュー麺を注文し、その間に明日の天気予報をチェックしておく。と、やはり今日の午後から雨が降り始め、今夜から明日にかけて台風か熱帯低気圧がこの辺りを通過してゆくようだった。順当に進めば直撃である。
 この時点で明日の全行程輪行が確定だと思った。しかし輪行するとなると、この地域主要駅の弟子屈か鱒や最寄り駅の美留和発として、斜里経由網走→乗り換えて北見→その後タクシー輪行という大技投入含みの大回りコースになってしまう。天気状況次第では、北見からチミケップ湖は走れるかもしれない。でもあまり期待しない方がいいだろう。仕方無い、そういう鉄道コースから離れた道の方が楽しいので、そういうコースを組んでいるのだから。これだって釧網本線が廃止されてしまえば、そもそも鉄道輪行自体が不可能となるのだ。大回りの大部分で釧網本線に乗れる現状は有り難いとも言える。
 で、時刻はというと、ほぼ7:25弟子屈発チミケップ湖11:14着の一拓になってしまうのだった。11時台の快速しれとこはチミケップ湖13:12着でむしろこちらの方が好ましく思えたが、思い出すとこれ、実は去年見かけた満員のディーゼルカーの列車なのであった。ましてや道東台風直撃の非常事態、数少ない列車には去年とは比較にならないぐらいに輪行チャリダーが集中するだろう。そんな列車に乗るわけにはいかない。
 まあとにかく全行程が輪行となるなら、網走まで朝食難民になりたくないし、早朝セイコーマートに行ったらまだ何もありませんでしたという事態も避けたい。今買えるうちに朝食を買っておく必要がある。味噌ラーメンの味は、さすがにお店が混んでいるだけあり、なかなか美味しかった。

 昼食の次はセイコーマート。そして今日の分の野菜、ヨーグルトなども、セイコーマートに寄れる機会があるのだから食べておきたい。また、もう根釧台地を出るのだから、根釧台地の地図を家に送り帰すいい機会でもある。更に、鱒やのチェックイン時刻は15時。今すぐもうすこし弟子屈で時間を潰す必要があった。なにしろ根釧台地だったこの2日半、民宿地平線からの町営温泉ツアー時は別にして、自転車行程時には全くセイコーマートに出会えていないため、何だかここでセイコーマートに寄らずして、というような義務意識があった。
 いろいろ買って荷物を送り返す段階で、店員さんに
「あ、梱包はセイコーマートの袋に入れて縛れば毎回大丈夫です」
と説明したら、
「去年もそうだったので知ってます」
とのこと。2日ぶりのセイコーマートが、何だか自分のホームグラウンドに帰ってきたような、嬉しい出来事だった。

 14:30、弟子屈セイコーマート発。西側山裾沿いの道道717では美羅尾辺りで低い雲の切れ間に青空が出て、何と一瞬陽が差した。さっきまであんなに濃い霧だった根釧台地とはそう離れていないのに。弟子屈は毎回天気がいいことが多いのが面白い。
 15:00、鱒や着。お風呂に入れていただき一息つく。これで台風が来てもとりあえずひと安心だ。そして前代未聞の短縮行程ではあったが、やはりこういう余裕がある旅はいい。などと思いながら明るいうちから屋内で酔っ払うワタクシなのであった。
 何だか辺りが明るいのであまり危機感は無い 明日は台風から変わった熱帯低気圧とのこと 台風が熱帯低気圧に変わって、移動速度が極端に遅くなり、雨雲が居座るらしい。
 もう明日はチミケップホテルまで全輪行確定ということでいいだろう。今年もまたチミケップホテル絡みで長距離タクシー輪行になってしまうが、いいのだ、私の得意技なのだから。
 明日はどうするの?と尋ねる橘さんに半ばやけで「全部輪行です!」と答えると、見るに見かねた橘さんが車で送って下さることになった。長距離タクシー輪行を回避できた一方で、前代未聞の全行程宿送迎かつ私的最長乗用車輪行記録更新である。もちろん、想像を超えて大変有り難い事態だ。

 夕方から雨がぽつぽつ降り始め、風が吹き始めていた。台風は熱帯低気圧に変わるようだが、やはり道東に上陸する可能性が高いようだ。
 夜中には木々がざわざわしていたような気がした。しかしそれは風が強いぐらいの印象で、台風というには意外に静かであり、少なくとも風が吹き荒れ雨音が窓を強く叩く暴風雨というような音ではなかった。なかなか来ないなあと思いながら、ぼやっと目覚めて又寝てしまっていたように思う。まあ屋根の下にいれば、それぐらいに危機感の無い熱帯低気圧襲来なのだった。風が強い台風が当たり前の内地民にとっては。

■■■2017/1/19
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour16 #5 2016/8/1 札友内→チミケップ湖-1

 朝方、明るくなり始めた頃にまだ風は吹いていたし、雨も降っていたが、勢いはそう強くない。何だか台風直撃という感じではない。これが台風ではない熱帯低気圧かと思った。後でニュースを観てわかったが、確かに上陸したのは熱帯低気圧だったものの、根室、釧路支庁のあちこちで冠水など大変な雨の被害があったとのこと。私がいた弟子屈〜津別はあまり影響が無いように見えたものの、台風(低気圧)直撃が1日遅かったら、今回の旅もどうなっていたかはわからない。

 8時頃の朝食の後、本来次々お客さんが出発してゆく時間は、今日はライダーの皆さんが主役のけだるい出発待ち時間に移行した。今日の全区間ワゴン車輪行が確定している私も、旅人を気取って一応出発準備が完了したバッグと輪行袋を軒下に出し、いつでも出発できるという態度は取っておく。時々外へ出てみると、雨のせいか肌寒い。しかし、もうあまり風は吹いていない。
 車のお客さんが出発した9時半過ぎから、ずっと6人ほどのライダーと、密度の濃い雨と雨が落ちてくる空を見上げていた。粛々と淡々と時間は過ぎていったが、10時過ぎ、意を決したように最初のバイクが雨具を着込み、荷物を積んで出て行った。その後は堰を切ったように一台、また一台とバイクが出発。最後のバイクが出発しようかというタイミングで、急に空が明るくなって雨が止んだ。気温も嘘のように上がり始めた。

 残りが私一人になったところでちょうど11:00、橘さんのお仕事が一段落し、おもむろに札友内発。
 屈斜路湖岸ではまた軽く雨が降り始めた。雲が低空にどっぷり溜まっているものの、美幌峠はよく見えている。津別峠はどうなっているのかなー、と思っていると、ウランコシで橘さんが「どうする、津別峠行く?」と聞いてくれた。願っても無い展開ではあるが、現実問題として路面に倒木や大きな枝など落ちていたらと心配ではある。「お任せします」と答えたものの、橘さんはウランコシの分岐で当然のように津別峠に向かったのだった。ああ、何と今回は車輪行で津別峠を越えることになったのだった。

 津別峠を越え、上里に降りると、雨が目に見えて弱くなった。そして美都を過ぎ、豊里では遂に青空が現れ、路面が乾き始めた。でもまあ、この期に及んでもう自走でチミケップ湖に向かう気は全く無い。
 11:55、津別着。車だと、札友内から津別峠経由で1時間で津別に着いてしまうのかと思った。
北海道Tour16 #5 2016/8/1 札友内→チミケップ湖-2

 津別では橘さんのお勧めで「西洋軒」へ。津別のメイン通り、毎回立ち寄るセイコーマートが面する国道238から2本裏手の食堂だ。食堂というのは洋食主体なのだが、ラーメンや焼きそばもやっていて、メニュー全般が大変親しみやすいものばかりだ。今日は昨日の弟子屈に続き、ラーメンを注文。これがまた大変美味しく、今後津別での昼食はこの店に決めた。

 明日の予報は一応9時以降から晴れとなっている。6時台には雨マークが付いていて、道道494でのダート山越えが熊出現と共にちょっと心配ではある。ただ降水量は0mm。雨具で何とか堪え忍べばじき晴れるだろう。出発できないほどの雨だとしても、どうせ終着は西興部。9時には雨が止む予報なのだから、雨が弱くなってから出発すれば、最悪でも金八トンネル経由の短縮行程で何とかなるだろう。
 どちらにしても、明日の朝食は津別で仕入れておく必要がある。セイコーマートに立ち寄っていただき、明日の朝食を買っておくことにした。1泊3万のホテルで、早朝に冷えた弁当やインスタント食品を喉に押し込むと言う行為もやや残念な気はするが、これが私の旅なのだ。再会が楽しみだったツーリスト少年は今日は不在とのことだったので、「私同級生です」とのバイトの女の子に、「今年も来たよ」という伝言をお願いしておいた。
 12:30、津別発。もう国道240も道道494も、すっかり路面は乾いていた。しかし、やはりもうこの期に及んでチミケップ湖へ走る気は全く無い。

 13:00、チミケップホテル着。結局札友内から所要時間1時間半で、チミケップホテルに着いてしまった。何だか自分の自転車行程がいかに遅いかを思い知らされた出来事だった。ショックにうちひしがれる間もなく荷物をポーチに出し、チミケップホテルへの輪行移動が完了。橘さんは県道494号を北見方面へと向かっていった。

 ウェルカムドリンクはアイスコーヒーをお願いし、その後ビールを所望。天気が冴えないので部屋で15時過ぎまで一寝入り、目覚めてからチミケップ湖を一目見ておくことにした。天気はあまり優れないものの、明日の朝雨だと、今年の夏はこれが最後のチャンスだ。
 自転車はもう組立済ではあるが、空は暗いし湖面は鉛色だし、キャンプ場に向かう気はしない。ホテル近くの湖岸、常用されてはいないっぽいものの安全性は問題無さそうな船着き場へ。きょろっと眺め回してみるものの、あまりそれ以上の展開は無い。晴れると最高なんだけどなあ。
 夕食は例によってフランス料理のフルコース。前菜から一つづつ、まだ明るい18時から2時間近くかけて最終段階へ。満腹、というよりやや気疲れした。もう少し早く食べ終わってもう少し早く寝たいような気もした。

■■■2017/1/19
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour16 #6 2016/8/16 チミケップ湖→西興部-3

チミケップ湖→(道道494)日の出→(町道・農道)相内→(国道38他)留辺蘂
→(国道242)仁田→(道道1032・244他)学田→(道道137)滝上→(道道137)西興部
169km ルートラボ>http://yahoo.jp/ym8YCc

 夜明けまで雨は降り続いていた。天気予報はやはり6時から9時まで雨、早朝のダート山越えは雨の中かもしれない。他に道は無いし、チミケップ湖の山から北見盆地の日の出に出たら雨は上がるだろう。どうせ知ったコース、のんびり行けばいいのだ。雨具だってあるのだし。
 朝の雨は一昨日から覚悟している。しかし、15時以降も雨予報に変わっている。降水確率30%降水量0m。多分その頃は滝上〜西興部、オホーツク内陸の低山地帯。コースのどこも山間だ。基準地でそれぐらいの予報なら、もっと降っても全然不思議じゃない。ただ、さすがに鴻之舞とか立牛ほど山奥ではないし、所詮は降水量0mm予報。小雨じゃなさそうだが雨具を着て走れないという事態にはならないだろう。
 だって折角4年振りのこのコースへ、脚を向けるチャンスなのだ。結局雨が降るときは降るし、降らないときには降らない。降るかもしれないと思っている方が心の準備にはなる。朝と夕方に降るかもしれない雨など、そんな程度のハードルでしかない。

 5:40、チミケップホテル発。雲が低く薄暗い早朝の湖岸である。少し北側のキャンプ場で爽やかな朝の定位置写真を撮るため、半ば意地になってチミケップホテルに泊まる計画を続けて3年目。ああ、それなのにキャンプ場手前で、雨がぱらぱら降り始めた。この雲の低さなら順当な展開ではある。
 もう定位置の写真も撮る気はしない。訪問の証しとして、キャンプ場の流しで水は頂いておく。昨日曇りだからと言わずに、定位置写真を撮っておけば良かったのかもしれない。とにかく、今年は遂に定位置写真すら撮れなかったのであった。
 等と干渉に浸る余裕は無く、雨はやや強くなり始めていた。

 今時珍しい程昭和の林間学校の色濃いYMCAの宿泊施設も、今朝は全く人気が無い。湖岸から短い舗装区間に入ると、雨はいよいよ本降りになってきた。舗装区間が終わると共に森が深くなり、次第に登り斜度を増してゆく。まだ早朝で森の中は薄暗い。なんだかヒグマが出そうな雰囲気が漂っている。ヒグマよ、頼むから現れないでくれ。それがお互いのためだ。いや、圧倒的に向こうが強いのである。
 幸い、登り途中の谷底折り返しから雨は小降りになってきた。そんな都合のいい話は無いぞと思っていると、更に都合良く雨は目に見えて弱まり、そして稜線手前部分で濃霧に替わった。近くでも濃淡がわかるぐらいに霞みが森の間から押し寄せてきて、一時視界は50m程度にまで落ちた。今回はどうも都合のいい話なのかもしれない。
 相変わらずヒグマが出そうな薄暗い湿った林道は不安だ。しかしもう登りが終わった稜線区間、最悪下るという選択肢は取りやすい、と思ってから、流石にダートで35km/h出すわけにはいかないことに気が付いた。訂正、ヒグマだけはやはりとにかく勘弁だ。まあヒグマさえ出なければ、極上ダートなので路面の心配は無く、幽玄と漂う濃霧が何だか楽しい。

 北見市に入った稜線部のピーク辺りで森の霧がすっと消え、一瞬空の青い色まで見えた。
 ダートは山腹からポンオロムシ川の谷底へ降り、深い森の谷間の長い下りが区間へ移行。路面は更に良好ではあるものの、石に乗り上げないよう最低限の注意は必要だ。まああまり調子に乗って速度を上げずに、脚を止めて徒然なるままに下っていればいいだけだ。
 谷間が別の谷間と合流し、道も別の道と合流。舗装区間が始まっても、まだまだ深い森の下りが続く。舗装路面自体はそう荒れていないのに、道が狭くて苔生していて急なカーブが多く、調子に乗って速度を上げると滑ったり、たまーに現れる対向車とぶつかるような事態は避ける必要がある。やはりあまり速度は上げられない。
 舗装路面が再びダートに替わり、少しは狭くない谷間に出ると、もう北見盆地も間近なはずだ。再び舗装に替わった道幅と頭上の空が拡がって、初めて雲が大分高くなっていることに気が付いた。これなら安心だ。もうこれからどんどん晴れてゆくのだろう。
 周囲に残っていた森が開けて、道は北見盆地の畑の中へ。谷間全体がさっきまでの森に比べて明るい。舗装路面が乾き始めている。そして山の中から平地へ出たのと、急速に晴れていることの両方が影響しているのか、行く手の雲が切れ、青空が拡がり始めていた。

北海道Tour16 #6 2016/8/16 チミケップ湖→西興部-3


 7:30、日の出着。次は相内への丘陵越え区間へ。最大40m程度の丘越えが2回、北見盆地だと思っていると毎回しんどい場所だ。
 しかし通る度に思うのは、丘陵に拡がる畑の風景が、いかにも北海道の畑のイメージそのものの風景であるということだ。それはもう文句の付けようが無い程に。
 今日はまだ太陽に雲がかかっていて日差しは出ていないものの、行く手の空に大方の雲は消えつつある。遠景が青空を背景にすっかり澄んでいて、丘の風景が尚更拡がるようだ。まだ空気中に時々水滴がぱらついているものの、さすがにもう雨が降ることは無いだろう。と思っていると、路面の色がちょっと変わるぐらいに雨が降ったりして、またすぐ止んだ。部分的に空気中の水分が残っているような状態なのかもしれない。

 8:00、相内着。目の前を石北本線の普通列車が通過していった。今日のコースは、2012年以来輪行を余儀なくされていた。やっとこのコースを石北本線に乗らずに済んでいることが、大変感慨深い。
 いかにも野菜の産地北見盆地らしく、国道38は瑠辺蘂まで12km野菜畑に続く。やや埃っぽい幅広の路上には交通量、特に大型車が多く、慌ただしく怖くてつらい。しかし、このそう広くも狭くも無い谷間に、連続している道はこの国道38しかない。瑠辺蘂まで辿り着けばセイコーマートで休憩できるし、その先は車が少ない国道242だ。
 とはいえ、もう完全に路面も空気も乾いているし、時々メーターを眺めてそれでも勤勉な程度に脚を回していると、意外に早く瑠辺蘂手前の小山が見えてきた。そんなもんかもしれない、12kmという距離は。

 8:45、瑠辺蘂着。
 以前1989年と2000年に泊まった町営YHの建物が、YH休館後そのまま町民会館となっている。国道38からいつもその建物を眺め、在りし日の瑠辺蘂YHを思い出すのが、瑠辺蘂での私的ミッションとなっている。ちなみに瑠辺蘂YHは、2016年現在まだ廃止にはなっていない。
 瑠辺蘂二つ目のミッションは、国道沿いのセイコーマート。一応早朝のチミケップホテルで、昨日津別で買った朝食物資を食べたものの、次のセイコーマートはもうお昼前の遠軽だ。お昼までの中間に何か食べるのに悪くないタイミングでもあり、やや集中的にいろいろ食べておく。
 その間、空に残っていた雲がどんどん動いて青空に替わり、遂に日差しが登場。辺りがかっと明るく照らされ景色の掘りが深くなる。気温も一気に上がり始め、途端に暑さを感じ始めた。何も急にこんなに暑くならなくてもとも思うが、北海道の夏の日差しは大変厳しいなんてわかりきっていることじゃなかったか。晴れなら雨より有り難いのだ。

 9:05、瑠辺蘂発。
 町西側の交差点から国道242に進むと、途端に車が少なくなり、自分の周りにある程度は静かさと落ち着いた時間が戻って来る気がする。
 北見方面から遠軽へは、以前はサロマトンネル、ルクシ峠、東峠経由の国道333をよく使っていた。あちらは大まかに中小峠3発、何度か通るうちに、特に佐呂間・安国間で交通量がどんどん増えていった。次はもう瑠辺蘂経由を試してみようと思ってから、その後ずっと瑠辺蘂経由となっている。恐らく遠軽自動車道開通の影響であり、近年はもっと増えていることだろう。
 こちらの国道242は、北見からだと国道38込み瑠辺蘂経由でやや大回りに見える。しかし今日は北見からではなく、相内からの合流だ。瑠辺蘂から遠軽まで約40km。最初に標高差140mの金華峠を越え、その先は遠軽まで30km強淡々と単純緩緩下りが続く。遠軽の数km手前、安国で国道333と合流して交通量は増えるものの、その辺りは遠軽の盆地の始りで、もう裏道が選べる。遠軽市街をなるべく車が少ない住宅地で通過できるのだ。
 というわけで、瑠辺蘂の分岐からすぐに金華峠が開始。登りと言っても所詮は標高370m、最初から最後まで斜度は緩々だし、今日は雲が多くて更に助かる。途中に目立った展望も見所も無く、石北本線の常紋信号場も、もはや人気の全く無い寂れた佇まいぐらいが目印程度に登場するだけだ。一ツーリストとしては、SL時代常紋信号場と言えば石北本線の名だたる難所で名撮影地、泣く子も黙る存在だったことを思い出すのが、名撮影地へのせめてもの敬意である。
北海道Tour16 #6 2016/8/16 チミケップ湖→西興部-3


 清里で金華峠からの下りが一段落。その後次第に拡がってゆく谷間の畑に、更に安定した緩下りが遠軽までひたすら淡々と30km以上続く。今日のような追い風だと、絵に描いたような経済走行が可能だ。かつてかなり強い向かい風の日もあったので、毎回この追い風を期待するわけにはいかない。
 小山に囲まれた盆地が一気に拡がり、10:10、生田原着。遠軽まで20km、11時前の遠軽着が見えてきた。強追い風のお陰でなかなか好調だ。安心したところで、生田原の町中にまさかあると思っていなかったセイコーマートを発見。幸先がいい。用も無いのに緊急缶コーヒー休憩としておく。

 安国で漸近線のように国道333が近づいてきた辺りで、狙い定めてGPSトラック通りに裏道へ。北海道にしてはやや珍しい、内地のような普通の農家の集落を少し経由し、道道1032でやや屈曲しつつ遠軽へ。市街地裏手で遠軽を通過するこちらの経路は、多少ジグザグ過ぎる嫌いはあるものの、遠軽市街を抜けるまでどうせ大した距離じゃない。それに前述のように、大型車が多い遠軽市街の国道242を避けることができる。
 10:55、遠軽着。湧別川東岸住宅地のセイコーマートで休憩とする。
 11時までに遠軽に着けた。なかなか順調な進行だ。一方、生田原から遠軽に向かう間にまたもや空に低い雲が増えていた。というか、いつの間にか空に青い部分が全く消えている。しかも何だか遠景の山が霞みっぽい。空気中には時々水滴も感じられる。明らかに雨が降る可能性が高まっている。
 そういう状況下で遠軽から10km足らずの千代田から、峠を二つ越えた立牛までは結構な山奥が続く。海岸からの距離は30km、全くの無人地帯で峠は標高460mの上原峠と400mの狐沢橋越え。立牛の先にも標高300mのトンネルがある。実際にも、かつて上原峠・狐沢橋間の逃げ場が無い鴻之舞で雷雨に降られて、とんでもない目に遭ったことは忘れもしないというか、雷雨の恐怖をまだ身体が覚えている。今回もそういういやな雰囲気が漂い始めている。
 予報は少なくとも15時まで曇り。それなら立牛の先の滝上まで行ける。何と言ってもこの区間に通行止め情報が無く、2012年以来4年ぶりの訪問チャンスなのだ。ぎりぎりの選択、という言葉を思いつつ、今回は天気予報を信じて行ってみることにした。行って「みる」、とはいえ撤退は効かないんだけどね。

 11:20、遠軽発。
 学田から道道137へ入り込むと、途端に周囲は畑に替わり、車が殆どいなくなった。低く丸い山沿いにくねくね谷底の平地を進んでゆく道に、4年振りに来たという印象は全く無い。そして、「道道137」と描かれている六角形の看板に、この道に来れていることを実感し、嬉しくなった。いろいろと悩んだものの、帰ってきた感一杯の、道道137なのだった。
 しかし一方、展開はやや不安だった。進むにつれて谷間の雲はますます低くなり、社那淵では早くも空気中の水滴が雨と酔えるぐらいに密度が上がり、路面の乾いている部分が少なくなってきた。雨具を着込みつつも、まだ大丈夫、山々がくっきり見えていると自分を安心させる。
 最後の集落、千代田の自販機で、ポカリスエットを飲んでおく。まだ遠軽で食べたお昼が腹にがぼついている気はするが、30km以上先の立牛まで完全無人地帯だし、立牛には民家はあれど自販機は全く無い。もう濁川の道の駅まで45km、商店はおろか自販機、いや、給水可能な小学校的なものすらひとつも無い。ボトルにはちゃんと水が入っているので、これは先行きの見えない展開に向かうための、気持ちのスイッチなのかもしれない。
北海道Tour16 #6 2016/8/16 チミケップ湖→西興部-4


 千代田の畑が終わると、上原峠の峠区間だ。谷底の森から山肌へ、次第に淡々とトラバース気味に6〜7%ぐらいで、そして一気に高度を上げること無く標高を上げてゆく。特徴的なのは登りが比較的長いことだ。斜度は緩いし峠の標高は460m、麓から400mの標高差は、北海道、特に道北の峠では高い方である。内地だと400m登りなんて当たり前なのだが。
 山肌の道はいつの間にか谷底を、周囲の山々を見渡し、そしていつの間にか周囲の稜線を見下ろしてゆく。ずっと遠景は澄んでいて山々がよく見えていた。霞んでいる印象は全く無い。登るにつれ雲は次第に高くなり、もうこれ以上深刻な雨にはならないだろうという確信を、次第に持て始めていた。
 上原峠通過まで水滴だけは僅かに感じられていたのものの、案の状、峠の向こう側で下り始めると水滴は全く消え失せた。気温はぐっと冷え込んで肌寒いほど、そして空はやや薄暗い。しかし、雲自体は相変わらず高く、遠景も澄んでいる。
 谷底に降りると、頭上に大型の猛禽が一羽、低空飛行で先行しはじめた。飛び方自体はふわふわ舞っているぐらいののんびりしたもので、先行しては遠くの先の路上で停まり、こちらが近づくとまた先へと道路上空を飛んで行く。こういうのはもっと北の仁宇布周辺や道道120辺りで見かけることが多かった。だいぶ南のこの辺りでも出るようになったか、と思う。

 13:05、鴻之舞着。谷底の道道305と離合、再び道道137単独で狐沢橋越え区間へ。併用区間は、かつてのほぼ交通量皆無だったこの道の記憶よりは車が増えていた。2011年、ダートだった金八峠が金八トンネル開通で、この道に車は確実に増えているのだ。
 道道137の私的通称狐橋越え区間は、どこからどう見ても峠なのだが、この区間のピーク部分に峠の名前は付いていない。国道のちょい峠に名前が付いていて、こういうマイナー道道の峠に名前が付けられないのは何だか不条理だとか、交通量が多い場所に名前が付くのは当たり前のことだとか、とにかく今は曇っているがこの道が通行止めじゃないこと、天気の条件が揃ってここへの訪問が成立していることに感謝したり、いろいろなことを考えてこの展望が少ない登りをこなしてゆくことにする。
 そう考えれば、峠部分の急斜面を一気に飛び越す狐橋だって、今日は崩落していないし何とか雨も降っていない。至って平和な久しぶりの訪問だ。

 谷間が狭く森が深い立牛への下りは、ヒグマが出そうで早く終わって欲しいと思っていると、やや長く感じられた。たかだか標高差200m程度なのに、北海道の峠の例に漏れず斜度がとても緩いのだ。
 谷が別の谷と合流、谷底の1本道が別の下って来た道と合流し、辺りが開けた牧草地に替わると立牛の谷間だ。ここまで無人の大森林が延々続いてきたので、拡がる牧草地に何だか里に下りてきた気分で一杯になるものの、興部の海岸部から遡ればここだって実は相当な山奥なのだ。2001年、未開通だった道道137の代わりに通った上古丹4号沢林道・ウチャンナイ林道白樺峠への道を聞いた酪農農家は、今回は納屋が荒れ放題となっていた。あれももう15年前のことなのだ。

 14:10、立牛着。集落中心でも民家は廃屋が目立ち、前述のように自販機は無い。静かな集落には、しかしながら人里の安心感が感じられ、水を飲んでパンを食べておくことにする。更に少し写真を撮ったり地図交換をしているうち、あっという間に20分ぐらいの時間は過ぎるのであった。

 滝上まで最後の峠は西立牛トンネル。標高差180m未満、地形図だと短い道なのだが、山腹1回折り返しで直線トラバース気味の登りは毎回意外にしんどく感じられる。
 トンネル向こうの滝上側も、谷間に下りきって畑と集落が始まってが意外に長い。しかしこちら側に降りてしまえば、もう濁川まで下ってしまえば滝上に着いたも同然なのだ。もうこっちのものだ。
 15:15、濁川着。集落や道の駅の自販機はもうそのまま通過、15:25、滝上着。念願のセイコーマートで休憩とする。ここまで天気はまあまあ安定しているし、時間もたっぷりある。もう何があっても、今日は余裕を持って西興部まで行けるだろう。西興部にもセイコーマートはあるのだしここで休憩しなくても何の問題も無いのだが、まあ折角のセイコーマートだし。
北海道Tour16 #6 2016/8/16 チミケップ湖→西興部-5


 15:40、滝上発。
 出発すると町中で雨が少しぱらついて止んだ。ぱらっときたかなと思っていると、町外れを過ぎて再び雨が降り始め、意外にも次第に密度が濃い。これまでの水滴を感じるというようなものとは次元が違うかもしれない。大丈夫、すぐ止むはずだ。
 と思って山方面を観ると、何と山々がいつの間にかかなり霞んでいる。いつの間にか路面もしっとりと色が変わり始めていた。結局、立ち止まって雨具を着込んだり道道137単独区間分岐までのあっという間に、本降りになってしまった。もう雲も遠くの遠景だけじゃなく、近くの山を霞ませるほどに低く降りている。あまりに急な展開に驚きつつ、思い返せば朝の天気予報では15時から雨マーク。順当に、天気予報がばっちり大当たりなだけなのである。
 今日終点の西興部まで、あと20km余り。峠も小さいものだけだし、時間的には余裕を持って西興部まで行ける。焦るような出来事ではない。

 標高299mの札久留峠へは、しばらく正面に稜線の凹みを眺めながら少しずつ登ってゆく。確か峠はあの凹みの辺のはず。意外な近さになんだあんなもんかとも思う。標高差はたったの130m、登りの少なさは計画時に物足りなく、実際に走ると毎回とても助かっているのが我ながら可笑しい。過去の訪問で逆方向から夕暮れ間近にこの峠を越え、サクルー荘到着と同時に辺りが真っ暗になったことを思い出す。
 等と思っていると、路上の端の方に大きな泥みたいな塊を発見。ヒグマの糞だとすぐわかった。そして、これほどでかい糞も珍しい。うーん、やはりこの辺にはいるのだ、と思った。森があればヒグマがいて不思議じゃない北海道。いること自体には驚かないが、今は出てこないでくれ。
 一喜一憂する間雨はいよいよ強くなり、路面はぬらぬらになってしまった。峠の向こう側も、雨が止む気配は全く無い。西興部到着目前にして、ぬらぬらの路面で滑らないように気を付けながら慎重に脚を進めてゆく。幸い、下り一方の緩緩斜度は、楽にのんびり下るにはもってこいだ。

 雨は瀬戸牛峠分岐手前でかなり弱くなり、峠に登るまでに完全に止んだ。まだ雲はかなり低く薄暗く、このまま晴れるという気はまったくしない。しかし、今回も瀬戸牛峠から西興部を見下ろすことができて、感謝感動である。
 17:05、西興部着。セイコーマート中に、またかなり強い雨が降り出し始めた。最後の最後で雨やどり、それでもホテル森夢着は17:15。夕食の前にお風呂に入って一息付ける、余裕の到着だ。

 明日の天気予報予報は道内どこもかしこも1日じゅう雨、降水量は1時間1〜4mm。自転車にとってはしんどい、というよりやや危険なほどの大雨だ。予定コースの道北縦貫道道は山まっただ中、この天気じゃ走れない。天塩中川まで全区間運休の輪行で決まりだ。
 輪行経路は、西興部から名寄まで名士バス、名寄から天塩中川へはJRの一拓だ。バスの時刻は6時台、8時台、その次は11時。名寄での列車の連絡先は全て良好だ。11時に西興部を出ても天塩中川着は14時半だが、8時台発だと天塩中川着は11時21分。駅での自転車組立時間込みでお昼にホテルに着くことになる。これだと温泉に入って昼食が食べられるだろう。特急スーパー宗谷にも乗れるし。こっちで行こう。
 とこの時は軽い気持ちで思ったが、この決定は間違っていなかったことを翌日思い知ることになる。2016年の北海道Tourは、とんでもない方向に進み始めていたのだ。

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北海道Tour16 #7 2016/8/17 西興部→中川

天塩中川→ポンピラアクアリズイング 3km
ルートラボ>http://yahoo.jp/Z7UDvE

 すでに大雨が夜中から降り続いていた。4時に起きる必要は無い。しかし、8時22分のバスに乗るために、7時半過ぎには休憩所付きバス停で自転車解体を始めたい。更に少しだけお風呂にも入れるとステキだ。5時半には起きる方が、何かとのんびり事を進められるだろう。そんなことを寝ぼけながら考えていた夜明け、窓の外がいつまでも明るくならない。

 名寄本線代替のバス停は、屋根付きアルミ開き戸付き便所付き。今日その中はやや寒い。もう少しお昼の暑い空気が残っていて欲しいような気もする。外が暑い日には、外気温なりにこの中も暑くなるのかもしれない。空気の寒々しさは、ベンチに置かれた、地元の学生さん制作色とりどりの座布団が救ってくれていた。
 バス発車前5分前どころか、2分前を過ぎてようやく数人かの乗客が集まってきた。何だか都会より交通機関の時刻通りに人がやってくる。交通に不確定要素が少ない夏は、こんな感覚なのかもしれない。
 8:22、西興部発。上興部から雨の天北峠を一気に越え、一の橋、二の橋、下川とあっという間にバスは通り過ぎてゆく。名寄まで1時間なら、確かにこれぐらいじゃないと1時間で辿り着けないだろう。悪天候時のバス輪行で感じることは、つくづくバスは偉くて頼りになるということと、自分がいかにゆっくりのんびり旅をしているのか、ということだ。

 9:26、名寄着。バス停の屋根が狭いため、駅待合室まで身体がけっこう濡れてしまった。辿り着いた名寄駅は、駅舎にも待合室にも、1980年代半ばの面影が濃厚に残っていた。1990年代半ばまで北海道に来たら毎回のように訪れていた朱鞠内と母子里。深名線への乗換駅だった名寄駅から、当時既に1日3本しか列車が無かった深名線の、15時台の列車に乗ることが多かったことを思い出す。
 10:13、名寄発。スーパー宗谷は美深、音威子府と雨の中を快調に進み、たった1時間強で11:26、天塩中川着。駅で自転車をのんびり組み立てる間に雨は一度止み、また降り始めた。こちらも雨宿りを兼ねて、かなりのんびり自転車を組み立てたりスローパンクのチューブを替えたりして、雨が小雨に替わるのを12時半過ぎまで待った。

 セイコーマートで明日の朝食物資を仕入れてから、13:10、ポンピラアクアリズイング着。
 当然のようにまだチェックイン時刻ではない。荷物はフロントにお願いしてどこかに置かせてもらい、風呂と昼食で時間を過ごそうと思っていた。しかし実際には部屋の掃除は終わっていて、問題無く部屋に荷物を置くことができた。
 温泉大浴場で風呂にのんびり浸かってから昼食へ。レストランの昼食営業は14時までとのこと。ぎりぎりで何とかお昼にも問題無くありつくことができた。外は大雨で空は薄暗い。レストランの客ももはや私一人。何とものんびりと時間を過ごすことができていた。何だか何もしない旅になっているなあ、と思っていた。
 ところが、ぼんやり眺めていたTVニュースで驚くべきことを知った。この大雨で全道各地に浸水被害が出ているのみならず、さっき名寄から乗ってきたばかりのJR宗谷本線が、何と午後から全面運休になってしまったとのこと。
 もちろん特急だろうが何だろうが全面運休である。もし今朝のんびり11時台発のバスで出発していたら、間違い無く名寄で進退窮まっていたのだ。もしそうなったら自分はどうするだろう。名寄YH辺りか駅近くの旅館にでも投宿するだろうか。いや、こんな日に予約がうまく取れるとは思えない。ならば長距離タクシー輪行せざるを得なかったのだろうか。現実としては、雨音すら聞こえない室内で暗い空を眺め、安全で落ち着いてかなりのんびりできている。それは今日最初のパート、西興部→名寄のバスが1本違うだけ、首の皮一枚の違いによる結果と言えた。早め早めの行動に越したことは無いのだ、とつくづく思い知らされた出来事だった。
 雨はその後一度止み、それから大雨に変わった。部屋に戻って早々にビールを一杯やって一寝入り、また風呂に入ったり明日のコースを組んだり思い出して外の雨を眺めてみたり。天気予報によると、明朝6時頃雨が上がり、日中は晴れが続くようだ。明後日も晴れ時々曇り。明日からは道北巡りを続けることはできそうだ。

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北海道Tour16 #8 2016/8/18 中川→浜頓別-1

中川→(道道541他)歌内→(国道40)雄信内→(道道256)幌延
→(道道121他)沼川→(道道1119他)下増幌→(道道1077)東浦
→(国道238)浜鬼志別→(国道238)浜猿払
→(村道エサヌカ線・天北南部広域農道他)浜頓別
158km ルートラボ>http://yahoo.jp/g1Eyxt

 昨夜時点で天気予報は夜明けまで雨、6時から晴れだった。4時に起きて一度外を眺めると、夜明けの明るい澄んだ空が見えたものの、しばらくいつものように出発準備とながら朝食を進めて5時頃もう一度外を眺めると、いつの間にか空一杯に厚く低く薄暗い雲が拡がっていて、荷積み中に雨まで降り始めた。これだと天気予報の通りではある。
 今日の宿は浜頓別「トシカの宿」。宗谷本線沿いに道道を乗り換えて幌延、内陸の道道121を周辺の未済裏道主体で内陸を宗谷湾数kmまで北上し、宗谷丘陵南の道道1119でオホーツク海へ半島横断、最後は静かなエサヌカ線で浜頓別へという予定だ。特に通行止め情報は無い。
 似たようなというより、今日とかなり似たコースを2012年に訪れている。天気に恵まれて何とか走れそうな今日も、一昨日に引き続き2012年のコースと似た道を通るのは何だか因縁を感じる。
 今回は前半の幌延以北で、道道121周辺の未済脇道をいくつか通る点が目新しく、楽しみだ。ちなみに内陸の道道121は、仁宇布から中頓別までやはり内陸ど真ん中の山中を延々北上する道道120の1番違い。ともに道北内陸の基幹道としての位置づけが感じられる。

 荷積みが終わったところで、ちょうど雨が止んだ。幸先がいいようではあるものの、山の谷間にはまだ低い雲がとっぷりしつこく貼り付いて溜まっていて、いつ再び降り始めても何の不思議も無い。大丈夫、これから晴れるという天気予報を信じて、多少降られても希望を持って進もう。
 5:50、中川「ポンピラアクアリズイング」発。案の状、町外れから再び水滴が空気中にぱらぱら感じられ始め、そして町を出るとあっけなく雨に替わった。勢いは弱いが密度が濃い雨で、雲の低さとどんより具合を見るとなかなかしつこそうだ。こういう雨は、意外とすぐに服がずぶ濡れになって身体が冷えて動けなくなってしまう。出発したばかりで何だか前に進もうという気が削がれるものの、仕方無い。立ち止まって雨具を着込む。

 雨は、弱まったと思うと道の向きが変わっただけでまた強くなったり、なかなか途切れてくれない。そして空は意外に明るいような気はするものの、劇的に明るくなり始めるということは無い。まだしばらく基本的に雨が続くのかもしれない。今日のように雲が低くて密度が濃い状態では、山裾では当たり前のように雨っぽくはなるのだろう。
 歌内から私的基本パターンで国道40へ。途中、歌内大橋から濁流の天塩川を眺めてみる。というより、ざーっという重低音に、橋の上で思わず脚が停まった。流速がやや速い泥水が、川幅一杯に溢れそうだ。川面には水煙が漂っている。息を呑んだ。近年の訪問では道北の天候が不安定で、穏やかな天塩川を眺めた記憶が無いが、これまでで最大級の迫力だ。恐怖を感じるほどだ。
 今、今回の大雨が過去の北海道Tour中最大級であることを実感した。道東の中標津からここ、道北まっただ中の歌内まで、大雨による行程への影響としては最悪の事態からは逃れることができていたことがよくわかった。
 しかし一方、空の南半分が見事に晴れ渡っていることに初めて気が付いた。いままで走ってきた区間は、もうすっかり見事に晴れ始めていて、空が南半分の雲一つない青空とこれから向かう北半分のどんより雲に、まるで冗談みたいに分かれているのである。雨雲と晴れの境界が南からやってきて、北上する自分のいるところに迫っているのだ。だから雨が降ったり止んだりするのだろう。雨雲と晴れの境界よ、早く追い越してくれ。等と思っていると、また雨が降ってきた。

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北海道Tour16 #8 2016/8/18 中川→浜頓別-2


 国道40では、雨が止んだり大雨だったり。雨具は上下バッチリだし、バッグは防水スプレーでこてこてに防水済だ。ほんの少し追い風気味なのが有り難く、安定しない道路際路面のスリップを避けるために25km/h制限で進むほど。しかしやはり雨だと辺りは暗く、風景の色は全体的に灰色っぽく、何より太陽の光を浴びることができない。思考は自然と内向きになり、対照は目の前にあるものと全く無関係に、そして自分の中だけを回り続けてゆく。もしこの場所で今晴れだとしても、暑すぎればやはり身体を動かすのもつらいし、思考だって鈍る。自転車で走っているだけのことなんだが、どうもあまり自由ではない。つくづく人間というものは弱いと思う。

 雄信内の先から道道256へ。南幌延の手前で雨が消えるようにすっと止んだ途端、軽いというか乾いた風が吹き始め、空気が一気に軽くなった。見る見る路面も乾き始め、急に空の雲が明るくなってきた。天気が回復基調に移行しつつあるのだ。

 7:50、幌延着。宿でちゃんといろいろと朝食は摂ったものの、今日はこの先オホーツク海岸の浜鬼志別までセイコーマートは無い。せっかくのセイコーマートだし、雨も一段落着きつつあるので、少し休憩することにする。その間、雲の中は眩しく明るくなり、ところどころ雲が切れて青空が見え始めていた。いいぞ。
 8:10、幌延発。幌延の町中には徒歩通勤の人々がいそいそと仕事へ向かっている。その中に、登校中の小学生が目立つ。横断歩道には緑のおばさんもいた。おばさんと言っても多分私より15歳以上確実に若そうな人ではある。夏の北海道ツーリングで普段見かけない風景に、尋ねてみると、道北の小中学校は今日から2学期開始らしい。もう8月も18日だ。北海道の多くの小中学校が8月21日に2学期始業であることは知っていた。道北は夏休みが短い分、冬休みと春休みが長いのだろう。

 町外れから再び空が暗くなって、セイコーマートで一度脱いだ雨具を再び着て丘陵を登る羽目になった。雨が降っているかと思うと空の中が妙に明るくなり、途端に日差し成分で体感気温は一気に上がり、ここまでおよそ縁が無かった汗というものをかき始め、何もこんなに急に気温が上がらなくても、と思う。まあまだ雲が厚く、日差しもそう長く続かない。
 ゆめ地創館の手前で、GPSトラックに従い、まずは脇道一発目。しかし、200mほど進んだところで舗装路面が切れ、のみならず道全体が茂みに完全に埋もれた。明らかに廃道である。仕方無い、最初の脇道は撤退だ。希望を捨てずに次へ行こう。

 次は豊富町大規模草地育成牧場だ。本流の道道84交差脇で分岐して、道道121とは少し離れて牧草地の丘陵を進む、数kmの回り道である。
 茂みが続く狭い谷底から丘陵の裾を登る途中で、勢いよく流れていた雲が切れ始め、どんどん青空が増え始めた。丘陵の中腹から稜線へと高度が上がると、辺りの眺めは周囲の丘を越え、一気に拡がった。近景から遠景へ、緑の牧草地と茂みが丘に続き、移動と共に刻一刻とダイナミックに動いてゆく。そして雲は勢いよく動き、日差しが現れた途端にボリュームたっぷりの緑の丘が軽やかな草原へと、風景のニュアンスがまたがらっと変わる。以前道道121を訪れた時に、地形図から期待していたがやっぱりほんの少し物足りなかった、その期待通り、いや、期待を超えた空間体験である。この景色のどこかには、実はその道道121もちらちら見えているのかもしれない。毎度のことで、何故もっと早く来なかったのかが悔やまれる。
 牧草地の丘に、道は結構長い間続く。そして丘のアップダウンもそれなりにある。実は道道121より100m弱ぐらい高い場所に登ってはいて、北向きに下り基調の道道121と比べてやや時間の掛かる寄り道ではある。しかし、楽しくて仕方ない。良い道である。見事な眺めにしょっちゅう脚が停まるので、ますます歩みは遅い。
 後で思い返すと、何だか過去経路の焼き直しだよなと思っていた今日のコースへの気持ちは、この丘で完全に変わった。

■■■2017/2/18
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北海道Tour16 #8 2016/8/18 中川→浜頓別-3


 道道121に戻り、もうすっかり晴れ基調の空の下、沼川の谷間にどんどん下って行く。この辺りは道道121で何度か通っている。丘陵から谷間の平地に降りてきて道端にも牧場農家が目立ち、ひたすら牧草地だけが続いた大規模草地育成牧場よりずいぶん人里っぽく、すっかり既知の場所に戻ってきたという気分になる。
 10:20、沼川A-COOP着。沼川は声問川の谷の平地から少し丘陵の裾を登った場所にある。実は集落手前の丘陵登りがやや直登気味で、毎回閉口する。というのはさて置き、集落にはセイコーマートも他コンビニも無いものの、代わりに手頃な規模のA-COOPがあり、屋根付きのバス停もある。かつては天北線の駅があり、「沼川」という名前が地形図の名前にもなっている、この辺りでは比較的頼りになる集落だ。
 この先、浜鬼志別まで商店は無い。いつものようにA-COOP店舗の軒下で地べた座りで小休止。ツーリストのやること立ち居振る舞いは、51歳になってもあまり変わらない。

 10:40、沼川発。
 少し山裾側に回り道してから道道1119へ、宗谷湾からわずか数km手前の下増幌を目指す。2012年訪問時の沼川から下増幌は、まだすこし西側に並行して北上している道道121を継続していた。
 もう山裾区間の一部を除いて標高はほとんど20m台。風景にはさっきの大規模草地育成牧場のようなドラマチックな展開は無い。とはいえやや狭い谷間は、牧草地でも低山が背景だったり、時々人里離れて妙に山深い。低地に拡がった平地に右往左往する道道121より、風景の展開は多彩だ。そして、山裾だとやはり雲は消えていなくて、明るく熱い日差しを時々隠して、ちょっとした丘越え時に暑さから助けてくれていた。
 下増幌手前で道道1119と離れて稚内市道へ。宗谷湾の海岸へ続く平原に、電柱と共に一直線の細道が続く。海岸までもう数km。平原の開けた空間で西からの横風が強く、やや難儀する。大丈夫、東向き横断区間の道道1007では、この風が追い風になってくれるだろう。
 ここまでいろいろと寄り道してきたものの、コース変曲点の下増幌には何とかお昼前に着けそうだ。これならレストランさるふつの、早すぎるランチタイム14時終了にも何とか間に合うかもしれないという気になってきた。順調に進めば、可能性はある。青空には勢いよく白い雲がちぎれて飛んでいる。日差しが出れば草原は輝くように明るく、曇れば気温がぐっと下がり、気分は上々だ。

 11:50、下増幌着。そのまま宗谷半島横断の道道1007へ。
 オホーツク海岸の東浦まで無人の森が続く、内陸の分水嶺越えだ。しばらく谷底に茂みが続く区間では、道の姿はややくたびれた雰囲気の道道そのものだ。路盤もそう高くない。しかし、おもむろに離陸し始めたと思うと、いつの間にか道幅、路盤部、フェンス等々の雰囲気が、ここ10年以内ぐらいに開通したような新しい道道の雰囲気に替わっていた。まあこういうことは2012年に訪れてわかっている。
 中央のピーク部分まで、あとは登りが続くはず。とはいえ斜度は5%程度と思っていると、意外にすぐ丘陵稜線部に到達。峠部分を乗り越えてあっけなく下り区間へ移行した。標高160m、それぐらいでももう少し登りが厳しい道はあるような気がする。全体的に登りも下りも斜度は緩いのだ、この道は。
 峠部分直下、橋と切り通しで一気に谷底へ下る区間の、オホーツク海岸へ絵年と続いてゆく樹海、そして樹海を飛び越えて飛び込んでゆくような道の展望は、道道1007全体で最大の見所だ。この区間のために、数年前まで地図でこの道を未開通の線で眺めていたのだ。この眺めと自分がこの道を通れていることが感慨深い。他の未開通道道も、いずれいつか通れるようになり、こんな感慨を覚えるのだろう。

■■■2017/2/18
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北海道Tour16 #8 2016/8/18 中川→浜頓別-4


 樹海の谷底に下りきると、道の表情が峠越え区間とは露骨に替わり、再びややくたびれた2〜30年ぐらい前の道道の雰囲気が漂い始める。長年この道が途中まで続き、登り始めで終わっていたのだろう。ツーリングにはこれぐらいの方が落ち着ける。
 オホーツク海岸まで約10km。周囲はずっと樹海、樹が高いだけ下増幌側より更にだらっと単調な味わいだ。そして、こちらのオホーツク側では薄曇り。日差しは影が目立たないぐらいに弱い。まあこれぐらいが却って暑くないかもしれない。もうほんの少しでオホーツク側だと思っているとだらだらと冗長な、大変カジュアルな平地の森だ。

 13:05、東浦着。浜鬼志別まで15km。さっきまで東向きの風だったのが、オホーツク海岸では南南東向きに替わっていて、見事な追い風である。これならレストランさるふつは楽勝だ。
 海岸沿いの国道238には、登りも下りも殆ど現れない。道道1007の森から東浦で眼前に海が拡がったときには、「おお!」ぐらいの感動はあったものの、5分も海が続くと、変わり映えしない海の風景にそろそろ退屈になってくる。現金なものだ。
 空の雲はかなり高いものの、完全に空一杯に拡がって、日差しは完全に消えていた。海岸線の微妙な凹凸や小さな川、丘や、苗大路、知来別、知来別シネシンコ、浜鬼志別シネシンコと独特な地名を時々眺め、交通量はだいぶまばらながらいかにも国道らしく時々通り過ぎる大型車に抜かされたりすれ違ったりしながら、番屋がぽつぽつ並ぶ海岸で脚を回す。ややどろんと、それでも重いというほどでもない色のオホーツク海が、行程の単調さを盛り上げる。幸い今日は追い風基調なので、進むのが楽なのがまだマシだ。

 しかし追い風だけあって進行は意外に早く、13:30、浜鬼志別の漁協売店到着。近年ここの前を通るように計画しても、毎回お盆休みだったこの売店。今日はもうお盆明けで営業中だ、やった!
 と喜んでしまうほど、やはりここの冷凍ホタテは過激に安い。お徳用パックだとホテルさるふつ売店のざっと半額程度。いや、あっちも札幌価格や内地価格より安くて甘くて美味しく、不満など何も無い。こちらが安すぎるのだ。
 浜鬼志別のセイコーマートはこの際もう通過、13:50、ホテルさるふつ着。自転車を停めて速攻でレストランへ。やはり昼食営業は14時までだった。せめて15時だと大分来やすくなるのだがとは思うものの、この国道238のまばらな交通量を見ていると、営業合理化としてある程度仕方の無いことのような気もする。とりあえず直近の行動として、全力でホタテフライ定食を食べることに迷いは無い。

 14:15、ホテルさるふつ発。走り始めると、ホタテフライ定食で腹ががぼがぼになっていることが実感される。こういう時に追い風なのは、大変に有り難い。
 浜猿払まで9km。辺りはまるっきり平野なのに、道端に登場するのは茂みと電線と時々の民家かライダーハウスだけ。道が海岸からやや内陸へ入り、海の眺めは次第に無くなり、風景を更に単調にしていた。
 芦野への分岐、スノーシェッドを過ぎ、浜猿払へ。浜猿払から今日の終着浜頓別へは、近年毎度の村道エサヌカ線を使う。
 このエサヌカ線は、浜猿払の集落を外し、少し先で国道238から海岸沿いへ向かう正規ルートが設定されている。しかし一介の自転車ツーリストとしては、少しでも交通量が少ない細道の方が落ち着く。集落経由の細道では、一番海岸沿いの道沿いの民家がことごとくぱっと見築10年以内、いや、その多くは築5年以内の、しかもけっこう大きな住宅ばかりだ。真新しい民家自体は北海道では珍しくないものの、この辺はその傾向が顕著だ。羅臼では海岸の漁村が羅臼御殿と呼ばれていることを思い出した、その羅臼御殿よりさらにゴージャスに見えるこちらの家々も、聞くところによるとホタテ御殿というらしい。

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北海道Tour16 #8 2016/8/18 中川→浜頓別-5


 浜猿払の集落を過ぎると、細道は本格的にエサヌカ線に移行する。海沿いの牧草地に幅6mぐらいの道が、道幅が1点に収束するぐらい視界の彼方へ一直線に続いてゆく。国道238がもっと内陸へ向かってから低い丘を横断したり、何度か緩く曲がったり、時々低い台地に乗り上げたりして、最終的に海岸沿いの浜頓別へ辿り着くのと違い、こちらは海沿い1本道。浜頓別へ距離はやや短く、海岸近くなので丘の緩い登り下りも無く、何と言っても大型トラックが全く来ない。ただ、風の影響は受けやすい。幸い今日は、オホーツク海岸へ出てからずっと追い風が続いている。

 エサヌカ線は最初は岸壁の端から海が見えるほどの海岸沿いに、次は海は見えにくいがまだ波の音が聞こえるぐらい、というように少しずつクランク状に内陸へスライドしてゆく。クランクで内陸側へ移ってから最初のうちは次のクランクが見えることが無い程度に、それぞれの区間は結構長い距離で続く。そしてクランクを経由し、内陸側へ移ると共に、前方にうっすら低く見えていた歌登の山影が、少しずつ大きく、色が濃くなってきた。
 再び空の雲が流れて、日差しが現れていた。さすが牧草地、脚を止めるとゴマフアブが目立つものの、天気も風も時間的にも全く心配が無い今日のエサヌカ線である。途中で猿払村から浜頓別町に入ると、道の名前は村道エサヌカ線という名前じゃなくなるが、そんなことはどうでもいい。浜頓別まで17km、1本の道なのだから。
 山影が次第に大きくなってきた。坂皆無で追い風という好調要因と、写真を撮ったり草原を眺めて道端でパンを食べたり、どうしても時々立ち止まってここにいたいという気持ちがせめぎ合った結果、浜頓別までは2時間かかった。まあ、幸せなのんびりペースである。思えばルートラボで計画精度が抜群に上がり、ドコモ回線で現地予報をほぼリアルタイムで収集できるようになって、無理な計画をしなくなった。

 16:10、浜頓別着。セイコーマートに立ち寄って、お金を下ろして明日の朝食にHotchefの(豚丼)とクロワッサンを買ってから、16:40、「トシカの宿」着。
 夕食は待ってましたのジンギスカン。同じテーブルの方々がジンギスカンを熟知した方で、野菜と肉を焼く順番、食べるタイミングにペースなどなど事がスムーズに運び、大変有り難かった。

 明日の天気予報は、朝の予報からかなり悪化して午前中雨に変わっていた。その後曇り時々晴れである。仁宇布までの行程をどうするかが問題だ。
 仁宇布まで行くなら、道道120の歌登から先の山奥で雨に降られたり、そうでなくてもなるべく17時以降に仁宇布に着くような行程を組みたくない。そして、仁宇布まで公共交通機関で辿り着くためには道道120経由ではなく、音威子府・美深経由となる。
 つまり、雨の降り方や明朝の午後予報次第では、道道120での自走仁宇布到着ではなく、本来の経路とは全く離れた音威子府から輪行に切り替える必要がある。つまり、予定コースを進みながら仁宇布自走と音威子府アクセスの両方を藪睨みする必要があり、更に決断の時刻はなるべく遅くできるコースの方が、結果的に無駄の無い行動ができる可能性が高い。
 もし明日朝の時点で天気が予報より悪化して、雨が午後まで延びそうなら、もう朝からバス輪行に切り替える方がいい。このため、自走でもバス輪行でも浜頓別は朝の早いうちに出発する必要がある。とりあえず自走として、コースは国道272で小頓別→歌登の一拓だ。これなら小頓別、最悪歌登まで決断ポイントを先延ばしにできる。走行距離は仁宇布までフルコースの場合で120kmとかなり短め。天気が不安定なので、こればかりは仕方無いかもしれない。中頓別から直接歌登へ向かう道道120の兵知安峠は通行止めという情報だし、とにかく朝雨が降っていて、お昼以降も曇り予報なら、大回りで知駒峠に向かう選択は全く無い。
 そして更に明後日の天気予報は、何だか夕方から大雨らしい。かなり大型の低気圧が着々と脚を進めてきていて、天気図を見ればその確度は一目瞭然なのだった、悲しいことに。明後日夕方、美瑛の自走到着と翌早朝の旭川空港アクセス手段を何か考える必要があるかもしれない事態もありうる、と思った。そして実際の展開はそんな簡単なもんじゃなかったことは、この時まだ知る由も無かった。

■■■2017/2/18
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■■■高地 大輔
北海道Tour16 #9 2016/8/19 浜頓別→仁宇布-1


浜頓別→(町道・農道他)ウソタン→(道道586)下頓別→(国道275)中頓別
→(道道120)兵知安→(道道647)上頓別→(国道275)小頓別→(道道12)毛登別
→(道道764)本幌別→(道道220・道道12)歌登→(道道120他)仁宇布
 124km ルートラボ>http://yahoo.jp/k2RJiS


 4時の段階で天気予報は昨夜と変わらず。浜頓別町、中頓別町で9時だけ雨、降水量は0mm。そして夜明けの空は意外に明るい。これなら今日のコースだとあまり山奥には踏み込まないので、多少降っても雨具で凌ぎ切れる。
 5時に再び外を伺うと、予想以上に雲は厚くなっていた。雲は全体的にそれほど低くはないようでもある。どうせ行かない予定の知駒峠は、行ってもやはり霧の中か、山裾から雨になるだろう。やはり知駒峠が気になるのだと、我ながら思う。

 荷積みに外へ出ると、やはり雲は低い。まだ雨は降っていないものの、何時降り始めてもおかしくはない雰囲気だ。天気は雨に向かいつつあるのかもしれない。少なくとも、予定が劇的にいい方に変わることは無さそうだ。
 5:50、「トシカの宿」発。町中の自販機でコーヒーを飲み、何とは無しにセイコーマートにもう一度立ち寄っておく。国電区間各駅停車のようなあまりしゃきっとしない出発だ。
 6:15、浜頓別発。まずは町の南、山裾の道道586を目指す。毎年のように訪れる浜頓別なれど、町中から直接南下するこのパターンは初めてだ。町から出て台地の縁の牧草地で、雨がほんの少しぱらつき始めた。9時から雨にしちゃ少し早い。雨はほんの少しで、まだ路面は乾いている。山々はまだクリアだ。しかし一昨昨日の滝上では、本降りが始まるときに急に山が霞み始めた。今山がクリアに見えても、気休めにしかならない。
 台地から降り、頓別川の谷間を横切り、谷間の南端の山裾で道道586へ合流、ウソタンから下頓別へ向かう。山裾なので片側は茂みのような森、もう片側は牧草地やら牧場やら茂みやらという風景が続く。浜頓別と言えば丘陵に波打つ牧草地や、クッチャロ湖の物寂しい湖岸の風景が印象的だ。ここ頓別川の谷間は、各方面からの主要アクセス国道から離れていることもあり、浜頓別という地名と紐付けられた風景としての印象はやや薄い。今日のような薄暗いどんより雲の下では、緑の彩度が下がって尚更だ。道道586そのものが、いつ通ったのかあまり覚えていない。以前何度か通っていることは確かである。比較的時間の余裕があるときだとは思う。
 今日もかなり余裕がある行程だ。時間があると思っていると、身体を動かすのがやや億劫だ。温泉ホテルが続いたので、或いは湯当たりなのかもしれない。とにかく天気が冴えなくてまだ薄暗く、訪問そのものとか土地の味わいに気持ちが向いていかない。
 浜頓別から路面はずっと乾いているものの、雲はかなり低い。そして天気予報では9時には雨が降ることになっている。いずれ遅かれ早かれどこかで降り始めるのだろう。しかし、山裾でずっと感じられていた空気中の水滴は、道道586が山裾を離れるとすっと消え始め、下頓別で国道275に合流して集落を出ると完全に消えた。
 国道275は寿の山裾乗り上げ区間へ。何でこんな所で山裾へ乗り上げてまた下るのか、一見あまり意味が無い登りだ。自転車ではペースが落ちて気が急く程度の2〜30m程度の登り下りなのに、トンネルまである。実は昔ここで頓別川が時々氾濫していたとか、ちゃんとこんな経路を辿る理由はあるのかもしれない。何かと脳内活動(しかもどちらかと言えばネガティブ寄り)が先行する、薄暗い朝の行程なのだった。

 7:20、中頓別着。浜頓別から1時間強。ややだらだらしすぎかもしれない。しかし今日先を急ぐ必要は無い。どうせどこかで降られるんだし、ここには道北最大の私的拠点的セイコーマートがある。寄っていかねば。
 早朝に朝食済なので、またもやコーヒーに少々物資を仕入れる間、一度止んでいた雨がまたぱらつき始めた。これから山裾、そして狭い谷間を通過することになるし、今現在の段階で、かなり遠くの山々が霞み始めている。霞んでいるのはかなり遠くなので、まだ雨がすぐに降り始めることは無いとは思う。しかしそろそろ降られるのかもしれない。

北海道Tour16 #9 2016/8/19 浜頓別→仁宇布-2


 7:45、中頓別発。
 道道120への分岐には「開通」と表示された看板が建っていた。えっ、と思った。何故なら、今回コース計画の段階で、道道120の中頓別・歌登間兵知安峠は通行止めという情報を得ていたからだ。看板をよく見ると、「除雪情報」である。どちらにしても今日は雨だし歌登へ急ぐ必要は無いので、わざわざ雨が強まりそうで熊も出そうな兵知安峠へ向かう選択は無いと思うものの、兵知安の峠入口で情報収集はしておきたい。
 などと除雪情報の看板に惑わされる一方で、道道120へ曲がった途端、まるで空気中の湿度が高まるように水滴が空気中に漂い始めた。道が山裾方面へ向かっているからだ。ああ、こういう感じで雨に替わってゆくのか今日は、と思った。
 雨具を着込もうと思って適当な場所を探して進む少しの間に、雨は本降りに替わった。しかしまだ空は明るい。天気予報でも降水量は0mmだったし、まだ9時じゃないから、これから雨は更に強く降るのかもしれない。ならば、音威子府に向かう選択はあり得るのかも知れない。今年も音威子府から輪行なのか。

 道道120と道道647の分岐手前で、道路情報の電光掲示板が登場した。「通行止め」の文字がはっきり読める。やはり兵知安峠は通行止めなのだ。まあこれだと事前の情報通り。予定通りなので悔しくもない。
 兵知安峠へ向かう道道120から分かれて、道道647はやはりそう広くない谷間を遡ってゆく。谷間には牧場に森が断続、製材工場もある。中頓別から国道272の上頓別へは、美峰ピンネシリの西側を大きく回ってゆく国道272より、東回りの道道120・647経由の方が距離が短いのが面白い。こういう場合、途中にやや厳しい峠があるのが普通だ。しかし、道道647のピークは国道272との再合流地点上頓別のすぐ手前、標高差で30mほど高いだけだ。峠というより地形の縁を乗り越える、そんなイメージに近い。それなのにこちらがメインの国道にならないのは集落が少ないためだと思われる。それには何か理由があるのだろう。或いは川の砂金の採れる量とか、そんな理由なのかもしれない。
 緩い登りでは、ここまでなかなか動かなかった身体が意外に快調だった。もちろんペースはがくっと落ちているものの、緩い斜度で身体に掛かる負荷が不快ではない。静かな谷間を少し進むと、空が大分暗くなってきた。調子に乗って兵知安峠に進むような事態にならずに済んで良かった。まあ向こうへ行ったとしても、空がこれだけ暗いと引き返すだろう。

 上頓別で国道275へ合流。国道は秋田の集落上手を乗り越え、また集落の向こう側で谷間に下る。国道は自転車ツーリストのことを考えて造ってないのか。まあそうなんだろうな。交通量的にはごく少ない自転車に合わせたらむしろ税金の無駄遣いであると、わかってはいますよ。などととぼとぼと進む国道275区間はそう長くない。秋田を過ぎて畑が切れ、森と茂みが少し続いて、おもむろに小頓別の外れに到着。歌登へ向かう道道12の分岐も現れた。
 9:10、小頓別着。
 郵便局前に自販機を発見。少しというかまたもやここでコーヒー休憩、と、急に雨が強くなってきた。少しここで雨宿りすることにした。というより、雨の様子を伺いつつ身の振り方を考える場所に来ていた。
 音威子府へ向かうなら、このまま国道275で音威子府に向かうのが最短経路である。今まさに9時過ぎ。天気予報の雨の時間帯そのままだ。予報ではこの後雨が上がるし、このまま音威子府に向かうと、美深着が早すぎる。もし音威子府へ向かうとしても、決断を先延ばしにしても決して遅くはない。まあ今音威子府に行っちゃって、何年か前みたいに天塩川温泉に入ってもいいんだが。
 それより、今は目の前に未済経路がある。小頓別から歌登へ向かう道道12と、咲来峠から歌登へ向かう道道220の間を繋ぐ道道764だ。道道12・220とも天塩川・頓別川(というよりJR宗谷本線・元天北線)の谷間と歌登を効率良く結ぶ道であり、わざわざ道道764を通る機会が今まで無かったのだ。できれば晴れの日に通りたかった道だが、晴れの日は順調に効率の良い道で長距離コースで行くため、こういう道は通りにくい傾向がある。
 その道道764で、本幌別へ向かい、道道220で咲来峠を越えて音威子府に向かうかどうかを判断しても、音威子府着が遅すぎることは無い。もっと言えば、その先道道120で仁宇布に向かい始める歌登でも、まだ最後の判断は可能と言えば可能だ。それにこのまま道道12で歌登へ直行すると、歌登は多分10時前。いくらなんでも早すぎる。
 道道764経由本幌別は、今現在できることの選択としては悪くないように思われた。これでいこう。

北海道Tour16 #9 2016/8/19 浜頓別→仁宇布-3


 地図交換やらおにぎりやらで15分ぐらい経っても、雨はなかなか弱まらない。出発してしまおう。
 さっきの道道647同様地形の縁を乗り越えるような小さいピークを越え、山の向こう側へ出た途端、雨が面白いようにすっと上がった。というか、何とは無しに空が明るく、空気が明らかに乾き始めている。路面はまだ黒々ぬらぬらしているものの、もうこちら側では雨は上がりつつあるのであった。
 少し下った毛登別で、長年懸案の未済の道道764へ。まずは70mの小さな峠というか丘越えがある。普通にずっと地図で眺めていた通りの坂だ。しかし、途中の熊注意看板の、大変恐ろしいヒグマの表情は、ここまでヒグマにおびえながら毎日過ごしてきた私の恐怖を更に高める傑作だった。浜頓別のオホーツク自転車道ですら熊出没情報で立入禁止になるこの道北の、しかも山間。確かに、いつ熊が出ても不思議は無い。音威子府におとなしく向かった方が良かったかな、と少し思った。
 どきどきしながら斜度やや厳しめの峠を越えると、次第にポールンベツの谷間が開けた。不思議な地名の谷間には、やや狭くも穏やかな表情の牧草地と森が拡がっていた。谷間が少し拡がるに連れ、道端には牧場が点在し、人里の香りが漂い始めた。やはり晴れの日の風景を見てみたい気分になる。
 雨が再びぱらつき始めていたが、低い雲は動き始めていた。谷間の町道をこのまま下ると、歌登へ向かう道道12に合流するものの、もうあまり雨にも勢いは無さそうだ。くるっと折り返して道道764を継続、もうひとつ丘越え込みで本幌別へ向かうとする。
 ぐっと細くなった道端の、牧場が何とも愛らしい。本幌別を目指しつつ「ポールンベツ」の地名看板を見ると、「本幌別」と「ポールンベツ」の音が似ているように思えてきた。あるいは本幌別という地名は、ポールンベツに漢字を振ったものなのかもしれない。
 2つめの丘越えも40m程の小さな丘ながら、斜度はやはりぐいぐいっと厳しめだ。朝っぱらからギヤをインナーに落として汗だくになってしまった。

 本幌別は歌登へ続く盆地の一番西側にある。牧草地が拡がる谷間の、集落はその南側山裾にかたまっている。本来集落の中を通っていた、咲来峠から歌登へ下ってゆく道道220は、数年前に集落の外側に経路変更されている。本幌別は大きな集落ではないし、今日は行程にかなり余裕があるので、懐かしい旧道へ脚を向けてみた。小学校の脇を通る旧道は、静かで優しく人なつこい表情である。そして森の中へ伸びてゆくペヤマン林道は、相変わらずダートのままだった。まあここが舗装される日は来ないのだろう。
 音威子府へ向かうなら、今ここ本幌別が潮時として区切りがいい。この先歌登へ向かってしまうと、音威子府に行くには小頓別か咲来のどっち経由にしても、浜頓別からここまでやってきた経路に対して何らか逆戻りが発生する。
 しかし、空は明らかに明るくなり始めている。今日はこのまま歌登まで行ってしまってもいいんじゃないか。

 期待に反して本幌別の先から再び雨が降り始め、約10kmの平地緩下りの間弱い雨が続いた。時々渡る小さな川はことごとく、今にも川幅から溢れ出しそうに濁流が迸っていた。また、牧草地では草地の中に水たまりがみられた。大雨の影響はかなり大きいようだ。思えば一昨日宗谷本線も停まった程の大雨だ。近年、北海道への往復に飛行機を使っているので、特にツーリングの最中はあまり道内の鉄道状況は気にしていない。しかし、もしこれが鉄道頼りなら、走っていても気が気で仕方無いぐらいの事態なのだろうな。
 しかし雨にもう迫力は無かった。案の状、雨は歌登の手前ですっと止み、雲が開け始め、急に空が明るくなり始めた。空の明るさに、もうこれからは雨が止むのだろうという希望が持てた。これなら予報通りだし、今後も天気予報通り曇りで推移し、問題無く仁宇布まで行けるのかもしれない。
北海道Tour16 #9 2016/8/19 浜頓別→仁宇布-4


 10:50、歌登着。
 セイコーマート休憩中、空はどんどん晴れてきた。歌登が晴れでも、これから向かうのは無人の山中。この晴れは割り引いて考える必要はある。しかし、それでもこの先、午後の予報が雨になっている場所は無い。ここまでずっと考えてきたように、今が音威子府に向かう最後の分かれ道だが、もう撤退を考える必要は無いだろう。
 仁宇布まで道道120だけだとすると、時間の余裕はありすぎる。歌登15時発で普通に走って仁宇布着17時だった年もあったぐらいなのだ。しかし、もう少し何かできないかと思っても、仁宇布までは1本道。途中大技的な回り道は無い。まあこれぐらいが、余裕たっぷりでいいのかもしれないし、志美宇丹か上徳志別辺りで脇道の寄り道でもしてみるか。
 余裕がありすぎると思うと、ついついだらだらしてしまうのは毎度の話。セイコーマートには50分もいた。11:40、歌登発。

 歌登から数km続く平野では、朝の低かった雲が去り、雲がやや高く、明るくなってきていた。そして空気はここまでより明らかにからっと乾いていた。
 歌登の平地は辺毛内で終了、志美宇丹峠への短い登りに移行する。谷間が狭くなると低い雲がやってきて、空気中に水滴が何となくぱらつき始めた。以前辺毛内の健康回復村うたのぼりグリーンパークホテルで泊まったとき、「歌登が晴れでもこの辺は雷雨なことも多いんです」と教えて貰ったことを思い出す。しかしやはり、空の明るさは朝の中頓別・上頓別辺りとはもう次元が変わっている。とりあえず希望は持てていた。
 結局、志美宇丹峠を越えると、再び空気中の水滴は消えた。志美宇丹では山間に再び広々と牧草地が拡がる。かなり広々とした歌登とはまた空間のスケールが違って、山に囲まれた盆地の、何とは無しの安心感を伴う拡がりが居心地が良い。盆地の形が赤塚不二夫のお巡りさんの目のような関係にある上徳志別とペアで、私の道北でのハイライトとなっている。

 さて、志美宇丹の脇道へ脚を向けるチャンスだ。しかし、西側のオフンから100mぐらいの小山を越えて上徳志別へ降りる道には興味はあったものの、さっきの曇りを見た後ではどうせ急に雨になるんじゃないかという心配があり、峠への密な茂みを前にして何となく熊が怖くなっていた。
 というわけで、お手軽に盆地東側、黒単線含みの牧草地の道に向かうことにした。開けた広々と開けた牧草地の丘を登ってゆく道は、地形図上で黒単線なだけあり巾6〜4mぐらい、細目の道だ。牧草地の中に続いてはいてもやや高い茂みに囲まれていて、その茂みに囲まれたやや閉ざされた空間に、途中牝鹿が仁王立ちしていた。極めつけは、道のど真ん中にヒグマの糞がこんもり。それも一昨昨日札久留峠でみかけたようなかなり巨大なものが、ほんとに道のど真ん中に鎮座していた。早々に、ここは外様が興味本位で踏み込むような道ではないのだ、と理解できた。道道120、坂は緩くても毎年通ってはいても、やはり侮れない山奥の道なのだ。
 道道120から40mぐらい登った頂部で開けた牧草地からの展望は、それだけになかなか感動的だった。緩斜面に拡がる草原、その向こうに小山がぽこぽこ並んび、まさにこの谷間の空間感覚。お天気が快晴なら、尚良かったかもしれない。また来るかどうかはわからないが。

 日差しは再びやや薄くなり始めていた。一旦谷間はやや狭くなって、赤塚不二夫のお巡りさんの目のくびれ部分、風烈布へ向かう道道1023との分岐を過ぎ、徳志別川沿いに緩登りを開始。再び谷間が拡がって上徳志別へ。
 同じ盆地とは言え、拡がりの中にやや起伏がある志美宇丹と打って変わって、上徳志別はほぼ完全に平坦な盆地となっている。ただ、何故かこちらの方が人口密度が少なく、ほぼ一面が牧草地と牧場だ。途中の元校舎っぽい建物が印象的な上徳ツーリストキャンプ場では、以前見かけたはずの看板が無かった。中に車は2台停まっていたものの、もう営業を辞めてしまったのかもしれない。テントは無くても校舎には泊まれそうだったので、一度セイコーマートで一杯買い込んで泊まったら楽しそうだなと思っていたのだが。
北海道Tour16 #9 2016/8/19 浜頓別→仁宇布-5


 上徳志別の外れから大曲へは40mひと登り。早速雲は低く空はやや暗くなり始め、これから仁宇布への本格的山間区間が始まるのだ、という気にさせられる。そして軽い坂を登っている途中でやはりぱらぱらと軽い雨が降ってきた。しかし路面の色が変わるということは無く、服が濡れるという事態にも陥る事はない。
 登りは下りに比べてペースが半分かそれ以下であるにも関わらず、何故か体感通過時間は1.5倍とか、せいぜいそんなもんである。徳志別川を渡って、森に入って、丘に登って炭焼き小屋。記憶と目の前に現れる風景を照合しつつ、低い雲の不気味さを紛らわして進んでゆくのは、実は雨が降るまでのツーリング的楽みなのかもしれない。そして何とか首の皮一枚で雨が降らなければ、なんだか自分でその危機を乗り越えられたような気になって嬉しくなるのだ。
 懐かしい道北スーパー林道との分岐の先は織姫橋休憩所。ここで少しクロワッサンを食べておくことにする。道北スーパー林道方面に時々バイクの音が響いていて、2002年の訪問を未だに思い出させてくれる。空気中の水分はやや増していたものの、見渡す周囲の山々は済んでいる。どうぞこのまま、雨にならずに保って欲しい、お天気様。

 天の川トンネルに入ればしばし雨からは避難できる。そしてトンネルの向こうでは、雨はとりあえず全く降っていなかった。少し助かった気になった。
 トンネルの手前は徳志別川の谷間、向こうはフーレップ川の谷間。トンネル両側で標高差はほとんど無く、再び西尾峠へ約8km標高差200m足らず、緩急ある緩登りがだらだら続いてゆく。狭い谷間にずっと美幸線未成線が並行するだけあり、坂に弱い国鉄気動車向きの峠と言える。最後の稜線部分がまたやや高原上の地形で、だまし峠っぽいピークと登り返し付きだ。こちらは地形図で標高を把握しているし、そもそももう何度も欺されているので、さすがにもう欺されない。
 全体として今日は薄暗い空の下、茂みが全体的に圧迫してきてやや不気味で怖い印象の西尾峠越えだった。朝に毛登別であんな熊の看板を見たからかもしれない。それにしても、傑作の看板だったな。

 西尾峠より少しだけ雲が高くて空が明るい仁宇布の牧草地も、やっぱり相変わらず曇りである。しかしここまで自走で来れて、大変嬉しい。雨の不安に負けないで良かった、そんな気になれている。嬉しくて畑や牧草地の写真を撮り撮りのんびりしていると、ぱらぱらっと弱い雨がぱらついて止んだ。今日は早く「ファームイントント」で酔っぱらうことにしよう。

 15:10、仁宇布着。更に写真を撮り撮り、15:30、「ファームイントント」着。
 トロッコには十分間に合う時間だが、早めにお風呂に入らせていただき、1階の食堂で念願のビールに。この風景を眺めるのが楽しみでここまでやって来れたようなものだ。曇りでも文句は言うまい。などと思いながら明るいうちから酔っ払って道北山間の牧草地を眺める、最高に豊かで幸せな旅のひとときである。

 明日の天気は夕方18時から雨。そして明後日へ向けて大雨になるらしい。仁宇布から大村へは、毎年朝食を頂いて普通に走って、18時前に確実に大村「美瑛ポテトの丘YH」には着けている。しかし、予報の雨が早まらないという保証は無い。おれは去年のゲリラ豪雨をまだ忘れてはいないぞ。
 何にしても明日の朝は少なくとも自走で出発できるだろう。天気の雰囲気次第では、昨年同様サンルダム・下川・岩尾内湖・於鬼登峠経由で旭川盆地に向かいたい。しかし途中で雨が降りそうなら、途中からの輪行を視野に入れて美深・幌加内経由で旭川へ向かう方がいい。どっちにしても多分明後日は大雨だから、明後日のYHから旭川空港へは、明日夕方時点の天気予報により自走かタクシーかを考える必要がある。

 などと思いつつ、夕食のジンギスカンをお腹いっぱい食べて更に気分良く酔っぱらう、9日目の夜なのだった。

■■■2017/2/20
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■■■高地 大輔
北海道Tour16#10 2016/8/20 仁宇布→大村-1


仁宇布→(道道49・国道40)美深 25km ルートラボ>http://yahoo.jp/3O12Ua

 4時に起きて準備開始。天気予報をチェックすると、昨夜と変わらず雨はお昼以降。これなら問題無く自走で出発だ。お昼から雨だから、輪行ポイントをどうするかは検討が必要だ。或いは美深から名寄に出て、名寄盆地を士別か和寒辺りまで南下してもいいかもしれない。どこへ向かうにしろ、朝食をはお願いしてある。比較的のんびりと荷造りできる。

 朝食が終わろうという6:10、雨が降ってきた。予報より早いぞ。まあ雨はお昼からのはず、すぐ止むだろう。少し出発を待てばいいのだ。しかし、期待に反して雨は止んでくれない。そしていつの間にか、スマホの天気予報がお昼から雨だったのが9時以降雨に変わっていた。しかもその雨が、けっこうな大雨のようだ。
 この時点で今日の行程は、もう美深から輪行してしまうことにした。美深からは旭川に向かい、旭川ラーメンでも食べよう。列車の時刻は、と、大変上手い具合に9:28にスーパー宗谷がある。旭川着は10:39とかなり早い。さすがはスーパー宗谷、それなら2杯食べられる。どことどこにしようかな。駅に自転車が置ければ、少し離れた蜂屋に行ける。そうでなくても、駅近くに新規開拓してもいい。とにかくラーメンが食べたい。

 しばらく待っても雨は止みそうな気配は無く、しとしと、というよりややしっかり降っている。ならばこの雨は、9時からの雨が山間で早まっていると考えるべきだろう。もう降り続けるなら、まだ急ぐような時間じゃないが出発してしまおう。でも、途中少しは晴れてくれるとうれしいな。美深まで25km下り一方なので、雨ではあるがなんだか気が軽い。
 7:05、ファームイントント発。
 仁宇布に降りても、高広PAを過ぎても、雨が弱まる気配は無い。のみならず、前方の空が霞んでいる。もしかして美深まで1時間ぐらい雨の中なのか。デマンドバスにしとけばよかったな。まあ下るだけだし。
 想像は当たっているようで、途中下りが一段落する辺りでも、相変わらず谷間と行く手の空は暗く霞んでいた。ペンケニウプ川も雨に煙っている。あまり汗をかかないようにとぼとぼ徒然なるままに下ってゆくが、班渓内で美深盆地に降りても、雨はむしろ激しくなるばかりだった。さすがの大雨予報、オホーツク側の天気の影響を受ける仁宇布より、道北内陸気候の美深の方がむしろ雨が厳しいのだ。もう地図も変えずに黙々と盆地の中央へ、道北自動車道を越えて盆地西側の国道40へ。

 8:00、美深着。去年立ち寄った蕎麦屋さんに心魅かれつつも美深駅へ。待合室には学生さん数人が8:18の普通列車を待っていた。大急ぎで輪行すれば間に合わないわけじゃないが、予定通り9:21発のスーパー宗谷2を目指すとしよう。出発まで80分、のんびり輪行荷造りしてちょっと待つぐらい。輪行時間には何の問題も無い。
 ならばまずは座席確保優先だ。旭川まで指定券を買おうとすると、美深は委託駅のため、名寄へ電話を掛けて指定券を問い合わせるらしい。名寄駅からの返事を待つ間、売店のトマトジュース「びふか太陽の水」をいただくとする。瓶入りで500円とやや高くて量が多いこのトマトジュース、ピューレーかと思うように濃厚で、最高に美味しい。これほど濃厚なトマトジュースは、他の場所では飲んだことが無い。特に濃縮加工などはしていないらしい。昨夜ファームイントントの宿主さんが仁宇布、美深にもっと人が来るような何かを探していると仰っていたが、このトマトジュースは美深の特産としてもっと売り出してもいいと思う。

 少し待ってスーパー宗谷2の指定券は取れたものの、
「でも名寄で運転打ち切りになるかもしれないらしいんです。それでもいいですか」
とのこと。いまこの美深駅ではやや強い雨は降っているものの、まだそこまで深刻な雨でもないようにも思える。とりあえずここは、予定通り旭川まで指定を買っておくことにした。
 輪行作業を進めるうち、待合室には乗客が意外に集まってきた。こういう状況でよくいる、いかにも話しかけたそうな雰囲気満々の、永遠の北海道旅人みたいな親父の視線や動線をかわしていたら、案の状別の人が狙い撃ちされた。耳をそばだてなくても耳に入ってくる語りの、美深での濃厚そうな思い出に、多分私は応えられないだろうと思えた。

北海道Tour16#10 2016/8/20 仁宇布→大村-2


 スーパー宗谷2は7分遅れで到着、9:28、美深発。乗り込んだ車内では、乗客は何事もないかのように落ち着いていた。途中打ち切りなんて無いんだろうと思っていると、名寄到着直前に、既報の通り名寄で運転打ち切りになること、名寄から旭川までは代行バスに乗り換えるという車内アナウンスが。やっぱりそうなのか。まあ、わかってたんだけどね。
 9:45、名寄着。ドアが開いて、民族大移動で代行バスへ。思えば久々の民族大移動だ。1990年代中頃、北海道への往復に昼間1日掛けていた頃以来かもしれない。しかし今日は改札から遠い車両だったこと、荷物が大きかったこともあって、やや出遅れてしまっていた。結果的に最前列の片方へ収まることができたのは、ラッキーな出来事だった。どこかの親父が、我が儘で2人分を一人で占領していたのだ。親父はなんだか不満そうに席を空けた、すぐ後ろの同行者らしき人をちらっと眺めて方をすぼめるようなそぶりを見せていたが、その後すぐに補助席まで埋まるほどバスは乗り継ぎ乗客で一杯になった。
 代行バスは一昨昨日乗ったばかりの名士バスだ。この緊急時に、4〜5台も名士バスの大型代行バスが出動できている。旭川到着予定は12時とのこと。そんなにかかるのか。一体旭川でラーメンを食べる余裕はあるだろうか。まああの速い(たとえ110km/hにスピードダウンしていようとも)スーパー宗谷と所詮バスだしな。それぐらい差は出るだろう。何しろ偉いぞ、名士バスとJR北海道。
 などと落ち着いて駅の方を眺めて驚いた。名寄駅の決して広くない軒下が、雨宿りの人で一杯なのだ。輪行中らしい学生ツーリストの集団もずらっと並んでいる。普通列車には代行バスが出ていないのだった。普通列車も運転打ち切り、つまり宗谷本線自体全面運休なのだ。私は美深から僅か一駅特急に乗ったから、旭川には運んでもらえるのである。仁宇布から考え直すと、もし早朝に美深から輪行一拓が決まっていたら、仁宇布出発そのものををもう少し遅くしていたかもしれない。美瑛には十分早く着くことができるからだ。しかし列車がもう1本遅かったら間違い無く美深で足止めだし、スーパー宗谷2より1本早く普通列車に乗っていた場合も、名寄で足止めだったはずだ。
 つまり私の旅程は首の皮一枚で旭川まで繋がったということに、今気が付いたのだった。

 10:08、名寄発。
 最初は国道40を比較的順調に進んでいったが、雨は相変わらずというより次第に大雨に変わっていった。途中で何度か乗客の携帯が一斉に鳴り始めた。自分のを見ると、この近くの山間で集団避難勧告が出ているのだった。最初は他の乗客も一様に驚いていたものの、2度目からはもう何も言わなくなった。
 士別の市街地が遠くに見えてきたところで、国道が渋滞し始めた。20分ほどのろのろ進んでから、バスは道道へ迂回。ちょうど用を足したくなっていたので、大変に助かった。田んぼの直交グリッドをくねくねと、過去通ったことがある道道も経由。なんだか妙な懐かしさと、まさか代行バスで再訪すると思わなかったという感慨が入り交じる、名寄盆地の再訪だった。運転手さんの車内案内によると、士別到着は予定の20分遅れとのこと。駅到着直前、士別の市街地でも乗客の携帯が一斉に鳴り始めた。市街地で床上浸水らしい。ええっと思ってきょろきょろすると、確かに町中裏手の道がまるごと冠水している。恐らく普通ならあまり意識しない数10cmの高低差に、水が溜まっているようだ。市街地だからか雨は弱まってはいたものの、目の前で進行を続ける非常事態にもはやただ唖然とするばかり。名寄出発時点での「スーパー宗谷の時刻から何分遅れで旭川に着くのか、旭川でラーメンを食べられるのか」という心配は、さっきの渋滞や目の前の床上浸水の事態を経て「果たして旭川に無事着けるのか、付いてくれれば何の文句も無いのだが」という祈りの気持ちに変わっていた。
 10:49、士別着。
 士別は意外に、というかかなり小さい駅だった。昔はデパートもある街だったのに。私はと言えばいい加減そろそろ我慢の限界に近づいていて、停車と同時に速攻ダッシュでWCへ。結論から言えば何とか助かった。そして私が出るときには、速くも長蛇の列ができていて、5分の予定だったWC休憩は15分に延長された。それでも女性の方は大変だったろう。
北海道Tour16#10 2016/8/20 仁宇布→大村-3


 11:05、士別発。
 バスの中から市街地の床上浸水を眺めつつ、渋滞の国道40へ戻る。再び始まるのろのろ進行に、いつの間にか眠っていた。バスが揺れて気が付くと、バスは国道から分岐して、順調に和寒ICに入るところだった。ゲートをくぐれば、もう道北自動車道。高規格道路の路面は平滑に安定し、大型バスはエンジンに物を言わせて登りも雨も物ともせず、静かにすいすいぐんぐん進んでゆく。誰も何も言わない車内はますます静かだった。
 せめて塩狩峠はこの目で見届けたいと思っていたものの、またもやうとうと眠ってしまっていた。もう道は下り始めていて、再びバス全体にかかった大きな横圧で気が付くと旭川鷹番IC、一般道に降りるところ。鷹番と言えば旭川のすぐ手前、もう鷹番まで来てしまったのか。
 高速ではかなり順調な行程だったが、旭川市内の一般道では水たまりで水を跳ね上げたり、信号で停まりながら着実に進んでゆく。雨は更に強まっていた。予報通り、これから雨の本番だということが理解できた。

 12:30、旭川着。またもやトイレに行きたくてしょーがない。かなり大雨のバスターミナルを横切ってから、フロントバッグをバス停に置き忘れたことに気が付き、泡を食ってもう一度バスターミナルまで一往復。輪行袋も荷物も自分もびしょ濡れになってしまった。
 WCへ行って身体と気持ちを平常に戻し、次は列車時刻のチェックだ。次の次の列車ぐらいに乗れて、何とか旭川で1時間以上確保できれば、ラーメンにも行きやすいはずだ。今なら蜂屋を狙える。狙っていきたい。ちょっと遠いけどね。
 しかしこの段階になって、ようやく駅コンコースに漂うやや緊張した雰囲気に気が付いた。というより、構内放送が耳に入ってきた。それほどWCに行きたかったのだ。既に宗谷本線、石北本線は全面運休、午前中は函館本線だけが動いていたが、それも13時から全面運休が決まったとのこと。何!?富良野線はどうだ…ああ、同じく13時から全面運休だ。やばい。かなりやばいぞ。今日は本当に美瑛ポテトの丘YHまで着けるのか。
 富良野まであと30km強ぐらい。そしてここは北海道2番目の大都市旭川。時間さえあれば何でもできるだろう。飛行機なら東京にだって問題無く帰れるだろう、飛行機が飛びさえすれば。ならばここはタクシー投入か。いや、YHをキャンセルして駅から近い東横インに行くか。例えキャンセル料を払っても、宿の直前キャンセルは倫理上心が痛むものの、この非常時なら致し方ないだろう。そして東横インなら会員カードがある。事前に頼めば14時にチェックインが可能だ。今この大雨の中ホテルまで歩くと、ずぶ濡れにはなるな。ならばあと1時間ちょっと、駅で時間を潰せばいい。問題は部屋があるかだが、調べてみる価値はある。
 しかしここでもう一つ思いついて調べると、何と旭川から美瑛まで、路線バスがあった!
 有り難い!便は1日3本、次がちょうど13:00。あと5分だ。この際旭川ラーメンは諦めるしかない。その代わり、美瑛でラーメンが食べられるかもしれない。美瑛には1990年代中まで美味しいラーメン屋さんがあった。忘れもしないだるまや食堂、そのDNAが少しは街の中に残っているかもしれない。

 13:00、旭川発。乗車時には、やや厳しい顔のバスの運転手さんに厳しいことを言われた。或いは態度の悪い自転車乗りが輪行したのかもしれないと思った。大雨じゃなくて普通の雨なら乗車拒否されたかもしれない。一般交通機関の輪行状況は、ここまで進んでしまっているのだ。
 旭川市外から先、国道237主体にバスは大雨の中を進んでいった。次第に乗客が減っていくバスの車内では、座ったままで相変わらずすぐ居眠りしてすぐに時間が過ぎた。
 気が付くと、バスが上げ続ける白煙で窓の外が全く見えない。それ程の大雨なのだった。美瑛でラーメンを食べることなど、甘い妄想だったかもしれないと思った。しかし再び気が付いた、そろそろ美瑛が近づく西神楽辺りでは、一応窓の外の白煙は収まっていた。国道237で特徴的(という印象がある)な道の轍を思い出し、道の水たまりが無ければ白煙も上がらないことが、よく理解できた。後で知ったが、お昼頃に美瑛町では1時間42mm降ったようだった。

北海道Tour16#10 2016/8/20 仁宇布→大村-4


 13:50、美瑛駅前着。到着直前に車内放送があり、今日は盆踊りのためバス停が駅前ロータリーから2ブロック向こうに移動しているとのこと。
 何とか首の皮一枚の幸運が続いて、やっと美瑛まで来れた。まずはとにかく美瑛駅に向かって体勢を立て直したい。2ブロック、自転車と荷物を抱えて移動するのは、ただでさえ一苦労だ。ましてやこの雨。雨は一向に弱まっていなかったが、いや、それでも旭川より大分改善はされていたものの、やはりとりあえず駅に向かうまでにびしょ濡れになってしまった。でもそんなのへっちゃらだ。もう美瑛なんだから。
 とりあえず駅前でタクシー乗り場を確認しておく。駅に輪行袋を置かせてもらい、その後落ち着いて駅前のどこかで昼食を摂り、タクシーに乗ればいいと思っていたのだ。しかし、今日はタクシー乗り場も盆踊りのために本来の駅ロータリーから1ブロック手前になっているらしい。というより、さっき荷物を担いてびしょびしょに濡れながら可能な限りの速歩で通過した美瑛ハイヤー社屋がそうなのだった。一体何なんだよー。でもそんなのもへっちゃらだ。もう美瑛なんだから。
 それよりも駅の待合室は輪行袋を置くどころではなかった。駅一杯に外国人とお年寄りが、全面運休になった富良野線を前に途方に暮れていた。外国人観光客の何人かは、窓口のJRの職員さんに札幌へどうやったら行けるか詰問している。そもそも床のほぼ全面がびしょ濡れ。かなり阿鼻叫喚の巷となっていて、あまり長居したいような雰囲気ではない。
 仕方無く再び雨の中、さっき見かけたラーメン屋「八海」へ。この非常時、ラーメンの美味しさが染み入るように有り難い。その後は美瑛ハイヤーへ。美瑛ポテトの丘YHまでお願いして、ついでにこの際明朝の旭川空港まで予約してしまう。
 14:35、美瑛発。運転手さんによると、何でもここ美瑛でも集団避難勧告や、路上に倒木もあったらしい。

 14:45、美瑛「ポテトの丘YH」着。
 輪行袋はヘルパーさんの詰め所のような小屋に、勝手知ったるで置かせていただく。軒下で雨を眺めながら15時のチェックインまで15分待機。その間、雨が弱いときに到着できてつくづく良かったと思うほどの大雨が再び降り始めていた。

 風呂から上がってビールとする。もう明日はタクシーで旭川空港へ向かうだけ、と思いながら美瑛の丘を眺めて酔っ払う。完全に一息付いて思えば、かなり危機一髪の事態をラッキーだけで乗り切れた1日だった。そしてこのYH毎度の美味しい夕食は、北海道最後の夜に相応しい。

 翌朝は霧の中を美瑛空港へ。タクシー\3500はもはや何とも思わない。
 空港には7時過ぎ到着。オープンの7時半までしばらく外で待つ。こういうのが地方空港の面白さだと思った。かといって土産物屋で買える物は千歳空港と比べて何の遜色も無い。最終日、美瑛から旭川空港に向かうこのパターンはなかなかいい。難点は旭川空港から羽田の便がやや少ないこと。
 この間、みるみるうちに霧と雲が消え、飛行機が離陸する頃には爽やかな青空の夏の朝、と呼べるくらいの天気に変わってしまっていた。昨日から続いた道北からの帰還は、意外に爽やかな印象と共に幕切れとなったのがなんだか可笑しい。しかしその日の午後から道内の天気は再び大荒れの大荒れに。道内、特に道東の水害は大きく、既知の地名と共に胸の痛むようなニュースが報じられていた。
 最後まで首の皮一枚だった北海道Tour16なのであった。

■■■2017/2/22
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

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