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FCYCLEコミュの北海道Tour15

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コミュ内全体

2015/9/8

 ようやく夏のツーレポを書き始めたばかりですが、5連休、更なる株優入手(Nさんありがとうございます)、夏ツアーへの欲求不満などの条件が重なり、今年は私的初の秋ツーリングを敢行することになりました。

9/19(土)新得→未定
9/20(日)未定→晩成
9/21(月)晩成→八千代
9/22(火)八千代→幾寅or布礼別
9/23(水)幾寅→トマムor布礼別→上富良野

 急遽決まった日程に、長い間暖めていた十勝準温泉ツアーを持ってきました。日が短くなって朝夕も冷え込むでしょうし、朝食はしっかり食べて夕方は早めに着き、念力には気合いを込めて何とか晴天に持っていきたいと思います。
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 今年も行って参ります。

8/6(木)#1釧路空港→厚岸
7(金)#2厚岸→開陽
8(土)15#3民宿地平線の根釧台地ベスト202km
9(日)北海道Tour15#4開陽→チミケップ湖
10(月)#5チミケップ湖→西興部
11(日)#6西興部→中川
12(日)#7中川→猿払
13(木)#8猿払→仁宇布
14(金)#9仁宇布→大村
15(土)#10大村→トマム

 初めての北海道ツーリングが1986年。つまり今年で30年目の北海道ツーリングなのでした。というのはネタを探していて今気が付いたことで、実態としては今年も変わりばえの無い開き直りワンパターン行程になってしまいました。

 マンネリとは言え自分的には毎年楽しみな夏の私的恒例行事。今年のトピックスとしては
・とほ宿泊が1日も無い(多分30年間で初めて←記録を見直して確認しようと思います)
・まさかの2回目チミケップホテル
・新機材GR2
等がありますが、そろそろ寄る年波で体力も低下しつつあることですし、穏当に楽しく走ってこようと思います。

■■■2015/7/28
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

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北海道Tour15#4 2015/8/9 開陽→チミケップ湖-4

 16:50、チミケップ湖着。湖畔に着いてみると、やはりこの山中では雲が濃い。晴れた日には濃紺と水色に見える湖面は、今日は灰色の雲を移して鉛か水銀のような色だ。

 湖岸をそのまま進み、一旦ホテルの前まで行くが、思い直してそのまま奧へ進みいつものキャンプ場へ。運良く湖岸の樹の下の定位置が空いていた。自転車を停めて夕陽を少し待ってみるものの、やはり湖上の雲は厚い。日差しのニュアンスさえなかなか現れてくれないのだった。しかも、風がそろそろ冷たくなってきた。夕食まで1時間弱、もうホテルに戻って次の行動を進める方がいいかもしれない。

 17:15、チミケップホテル着。
 部屋に入って少し休んでいると、外に夕陽が出ているではないか。あと30分あの湖畔にいれば良かった。大変恨めしい一方、世の中ってこんな物かもしれないとも思う。
 天気予報をチェックしてみると、紋別地方で何と明日12〜15時の桝以降が雨になっている。しかも降水確率60%。明日の予定は、去年全輪行となったチミケップ湖→遠軽→滝上→西興部。チミケップ湖から走り始めれば、過去実績から考えて遠軽は大体11時過ぎに出発できるはず。つまり12〜15時以降が雨ということは、あの山深い上原峠登り〜紋別市山中、そして滝上から西興部も雨に見舞われるということだ。この区間の雨がどんなに恐ろしいかは、過去2〜3回体験してすっかり懲りている。もし雨が降るなら、この区間を避ける必要がある。しかしこの区間、紋別〜滝上〜西興部を通る鉄道やバスは皆無なので、遠軽から海岸の紋別、興部を経由して、バスを2回乗り継がなければならない。バスは極端に便数が少なく、西興部に夕方の普通の時間に着くには遠軽11時台発一拓だ。
 つまり、輪行時間を見込んで遠軽には10時半に着いていたい。そのためには、明日早朝出発すればいいだけだ。遠軽まで4時間あれば着けるだろう。チミケップ湖で早朝に写真を撮りたいから、チミケップ湖発は6時半だ。しかし、途中で何かトラブルがあるかもしれない。そして危ない橋を渡っても遠軽までしか走れないし、チミケップ湖の山中から降りた訓子府以降、遠軽まで全部国道だ。明日の主目的、上原峠〜狐沢橋〜西立牛峠を走れるわけじゃない。そして、雨が早まる可能性だってあるのだ。いや、天気の前倒し進行は夏なら当たり前だ。
 そんなことを考えていたら、いっそのこと去年と同じくチミケップホテルから全輪行にしてしまえ、と思えてきた。自分でも何でそこまで諦める必要があるのかと思うものの、何回もこのコースを走って辿り着いた方法だとも思う。最初からこの区間を避けて計画しておけばいいだけなのだが、この山奥区間はとても魅力的な道なので、計画段階としてはやはりコースに入れないわけにはいかない。
 行程全体の起承転結とは別に、とりあえず今の現実として、2年連続で3万弱を投入しつつ結局翌日全輪行となってしまうという事態に、私は直面していた。そして明日輪行するなら、今がホテルに北見への送迎車を頼む最後のチャンスだ。いや、もう夕食前。既に時遅しかも知れない。少なくとも明日朝にはもう送迎車はお願いできない。北見からタクシーを召還する、去年を上回る大技のお出ましである。

 悩んだものの、明日の行動についてはとりあえず天気の好転に掛けてみることにした。頼む、お天気様よ、何とか機嫌を直してくれ。

 18:00、ころっと気分を切り替えて、夕食のフランス料理だ。数時間前まで汗だくで津別峠展望台にセイコーマートだったのに、今はボーイさんが恭しくしずしずと、お皿の真ん中にちょこっとお上品に載った料理を運んでくれる。去年と違い、この違和感が大変楽しい。2年連続の経験で、こういうのも北海道Tourの引出しの一つになったのかもしれない、とも思った。
 夕食後にも天気予報は好転しないのみならず、降水確率は60%とやや悪化した。明日早朝に予報が好転していなければ、北見からタクシーを呼ばなければならない。北見には9時過ぎの列車に乗る必要があるので、片道1時間と考えると、最低限7時にはタクシーを呼ぶ必要がある。それはフロントにお願いしよう、1泊3万のホテルなのだから。

■■■2015/11/29
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔


北海道Tour15#5 2015/8/10 チミケップ湖→西興部-1

 4時に目が覚めて、すぐに天気予報をチェック。降水確率はゆうべのまま、紋別市で12時から15時の間降水確率が60%。やはりそうなのか。
 実は昨夜、気圧配置と全道で大雨の天気予報を見て、もう9割方ダメだなと思い、朝食をお願いしてしまっていた。その通りに今日は全区間運休、まずは2度寝だ。諦めてしまえば、もう至って平和で落ち着いた1日の始まりだ。諦めから始まることもあるのだ
 次に起きたのは5時。のんびりは大変いい。荷造りはゆっくりだし、渇いた口にいろいろ押し込んで流し込む必要が無い。しかしちょっと手持ち無沙汰でもあり、外はまだ雨が降っていないのみならず、朝日に照らされ始めて意外に明るい。少なくとも昨日の開陽よりは明らかに好ましい。室内も明るく爽やかで、時々外の森を眺めて、判断を早まったかなと思い始めていた。いや、今日は紋別市で降水確率60%。今は明るくても、山奥に踏み込んではまずい。この辺りの天気が数時間で一変することを、平地と山間は天気が全く違う事を、そして今日のコースは雨が降るとかなり大変なことを、過去の訪問で十分に思い知らされている。昨日と全く同じ順序で同じ考えが頭に浮かび、結局諦めざるを得ないことを再確認するに至る、という思考を繰り返していた。
 でも、今はとりあえず朝陽が出ている。チミケップ湖岸に行けば、晴れのチミケップ湖に会えるかもしれない。計画時に目論んでいたチミケップホテル宿泊の目的、上原峠→鴻之舞→立牛峠再訪は潰えたが、もう一つの、朝のチミケップ湖岸訪問という目的がある。そして7時の朝食までまだ時間がある。ならば可能性のあることをしよう。

 6:30、チミケップ湖キャンプ場着。
 雲の動きが速く、ホテルを出発する頃、既に朝陽は薄曇りに覆われてしまっていた。しかし湖岸の私的定位置では、時々薄い日差しが現れてくれた。雲の中にも、何となくうっすら青い色が見えるような気もする。そして薄日以上の日差しが、一瞬手前の樹の幹と湖対岸の低山を照らしてくれた。もう少しすかっと晴れてくれるともっと嬉しいのだが、いや、ここ4〜5年チミケップ湖では毎回薄暗い曇りにしかならなかった。今日はかなり上出来と言っていい。

 ホテルに戻って7:00。即朝食開始だ。
 さあ、張り切ってパンをお代わりするぞと思っていると、先入観を裏切って朝食は何と和食だった。まさかチミケップホテルで和食が食べられるとは思ってもみなかった。そしてこれが、大変真っ当な美味しい朝食である。しかもボリュームもたっぷり、これなら今日走っても腹が減らないだろうが、いやいやもう既に今日は1日輪行予定になってしまっている。
 朝食後は即自転車解体開始。ところが輪行作業中、何と日差しが現れた。相変わらず雲は空に広がっていて、たまたまその隙間から現れたという感じだったものの、その日差しが鋭く、暑いのにはびっくり。流石北見地方だ。これなら走れるかもしれない。いやいや、今は気を取られずに輪行作業を進めないと。

 8:10、チミケップホテル発。
 木漏れ日の湖岸区間をタクシーは走り始めた。道道494の極上ダートでも引き続き木漏れ日が続く。昨夜からあんなに悩んで輪行を決めたのに、現実は何だか大変に残念だ。しかし、携帯で天気予報を見直しても、午後からの雨予報は全く変わっていない。そもそも本当に雨は降るのか。もしかしたら判断を安全側に振りすぎたかもしれない。そしてこんなに安全側ばかり考えていては、全然走れなくなってしまう。過去だって出発してから危ない予報に気付き、結局天気が持ったことは何度もあった。結局雨に降られてかなりひどい目に遭ったこともあったが。
 どっちにしても、もう全区間輪行の行程が始まってしまった。悩んだってもう時が進むだけだし、こんなに楽じゃないか。等と思ってはみても、ダートの木漏れ日が気持ちよさそうで恨めしい。

北海道Tour15#5 2015/8/10 チミケップ湖→西興部-2

 開成峠から北見へは順調な道程だった。特に北見市街では信号回避の裏道を経由。昨年の45分を更新して何と40分で北見駅に着いてしまった。流石はタクシーだ。
 8:50、北見着。駅前広場に降りると暑さを感じる。昨日までの根釧台地からは考えられない気温だ。やはり北見地方はかなり暑いのだ。そして今、市街地ではさっきの山間よりますます雲が高くなっていて、大変恨めしい。
 9:12、キハ54の2両編成快速きたみで北見発。去年と同じ全輪行パターンの始まりだ。クロスシートに座っていると、うっすら現れてきた日差しが暑い。というより、これだと十分走れるではないか。いや、今日は午後から雨の天気予報なのだ。そして平野部ではともかく、山間部で降られたら逃げ場が無いのを忘れたのか、おれは。等と悔しく恨めしい気分も次第に眠さに紛れつつ、快速きたみは瑠辺蘂から金華峠を越え、生田原の谷間を快走し、あっという間に10:14、遠軽着。
 遠軽駅からバスターミナルまで、自転車と荷物を3ブロックの間運ぶ。これが今日一番の難所である。空には雲が広がっているものの、明るく高く薄く、雨の気配は全く感じられない。そして荷物が重くて空気は暑い。晴れなのに輪行袋と荷物を抱え、町中でぼうっとしている。おれは北海道まで来て一体何をしているんだ。

 11:10、遠軽バスターミナル発。紋別までのバスの外、西側の山々には雲はかかっているようには見えない。手前の山の向こう、20kmぐらいある山中がどうかは全くわからないが。バスの中は直射日光が暑いぐらいだ。
 12:35紋別着、10分乗り継ぎで12:45、紋別発。今まであれだけ問題無さそうに晴れていたのに、空が一気に曇った。そう言えばもうお昼過ぎだ。しかしまだ、空の雲は高いように見える。そしてこの辺りが予報と現実の落としどころかもしれない、等とも思う。仕方無い、今日は天気予報を見て輪行に決めたのだ。安全側判断を悔やんでも、今日の行程は帰ってこない。そして天気予報はそこそこ予報の通りに推移しているような気もする。
 13:10、興部着。興部まで北上すると、雲が空一杯に広がり風が冷たく、道北のオホーツク沿岸にやってきたことを意識する。それは1986年、紋別流氷の宿YHを出発して興部に辿り着いた時と変わらず、この先オホーツク沿岸を北上すると更に濃くなってゆく土地の印象でもある。
 バスターミナル隣の食堂には、本日最大のミッションがいくつかある。醤油ラーメン、だったん蕎麦、興部アイス、ソフトと一気に腹の中へ。売店で売っているパックのベーコンや、ブロックのチーズも美味しそうだ。普段そんなもんむしゃむしゃ食べられないので、食べるなら今だとも思う。興部バスターミナル(=道の駅)には何かと美味しい物があり、通るなら何か食べたいし、一方で過去の訪問では何かと余裕が無い場合が多かった。今回は訪問数回分の成果に相当するかもしれない。
 興部滞在中、次第に空は薄暗くなっていた。相変わらず雨は降りそうに無いものの、山中ではもしかしたら何かが起こっているかもしれない、というぐらいには雲が低く、厚くなっていた。

 14:50、興部発。興部川の谷間を遡り、15:15、西興部に着いてバスを降りると、今の今まで全面平均的な明るさだった空中に、急にどす黒い雲が現れ始めているのに気が付いた。何と雷までごろごろ鳴っている。そしてその雲は自転車組み立て中にどんどん大きくなり、最後にバッグを取り付けたところで突然大粒の水滴が空から落ち始めた。と驚く間も無く、恐怖を感じるほどの大雨になった。
 面白いぐらいに山方面の天気予報は当たっていた。谷筋の西興部でこれだから、もっと山奥は一体どんな雨になっていただろうか。今朝の判断は決して間違っていなかったのだ、と今、心から思えたのだった。

 しばらくバス停の建物の中で雨宿りした後、何とか少しは雨が弱まったチャンスを狙い、雨具を着込んでセイコーマートへ。雨が弱まったとは言え普通に大雨で、30秒ぐらい屋根から外に出ただけで、びしょ濡れになってしまった。
 明日の朝食を仕入れ、16:05、今日の宿「ホテル森夢」着。明日の天気予報は下川〜美深で9時まで雨が残るようだ。何とか前倒し進行で、下川から道道60に入る8時過ぎに雨が上がってくれるといいのだが。とにかく、明日からまた真面目に前向きに走ろう。

■■■2015/12/2
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

北海道Tour15#6 2015/8/12 西興部→天塩中川-1


西興部→(国道239)下川→(道道60)上幌内→(道道49他)美深 100km
ルートラボ>http://yahoo.jp/KHhHxv

 夜中、窓の外に雷がぴかぴか大音響で鳴り、凄い音で豪雨が降っていたのを寝ぼけて聞いていた。ひょっとして天気予報の「9時まで雨」ってこういう状況なのか。

 4時に起きると、なんと夜明けの空がからっと晴れていた。澄んだ空には小さな雲が浮かんでいるだけだ。やったやった、これなら行ける。しかし出発準備中、薄い雲が空を覆い始めたと思ったら、それはいつの間にか空一杯に拡がり、濃く暗い色になった。
 今日の宿は、道北の天塩中川だ。天気予報はと言えば、オホーツク沿岸方面は1日雨、下川町と美深町は一応曇り時々雨。15時過ぎからは降水確率がぐっと下がっているものの、今日一番山が深くなる幌内越峠〜仁宇布〜上徳志別は、どちらかというとオホーツク沿岸の天気に影響される傾向が強い。このため、山深い下川〜仁宇布〜歌登までは、場所と時間の両面から雨に見舞われる危険がある。
 昨日と同じく、過去には雨の日にこの区間を通ったことはある。しかし、晴れの日でさえ早朝や夕方には何だか森や山の圧迫感を感じるほど山深いこの区間、雨は避けられるものならなるべく避けたい。一昨年など、山入口の辺毛内で雷雨だったのに、歌登に降りてみたら曇りで路面すら乾き始めていた。つまり天気予報が予測する各地域市街より、山間の天気は悪いということだ。ましてや今年は雷を伴う大雨が全道、特に旭川で報じられている。平野部の旭川でそうなのだから、道北中部の山間は更に大雨だとしか思えない。

 今日の行程を昨日と同じく全輪行に変更するとしたら、終着は宗谷本線沿いの天塩中川なので、北上移動は宗谷本線一拓である。西興部から宗谷本線の名寄までは名士バスが通っていて、何もこんな早朝に出発しなくても天塩中川には夕方前の言い時間に到着できる。しかし今雨が降っていなければ、少なくとも今出発して、名寄までは自走するのが適切だろう。下川までなら元名寄本線の駅だったバス停に小屋が整備されていて、途中何が降っても最低限屋根の下で輪行作業が可能だ。
 つまり、今日何をするにしても、今ここ西興部が走れそうな天気なら、少なくとも予定通り出発するのがいい、ということになる。下川までで大雨で走れなくなったら、その段階で名寄までのバス輪行に切り替えればいいのだ。ちなみに下川から先の逃げ場所は仁宇布だけ。歌登では午後には音威子府行きのバスが無く、長距離タクシー輪行が必要になってしまう。不可能ではないが、極力避けたい事態だ。

 5:40、西興部「ホテル森夢」発。天気は5時頃より悪化していて、空は一面低い曇り。行く手の山が、早くも真っ黒な雲に覆われているのが見えた。まだここでは何も降っていないにも拘わらず、向こうから来るトラックのワイパーが動いている。恐らくすぐ向こうでもう雨が降っているのだろう。そして途中の電光掲示板には「紋別北部 大雨警報 発表中」の文字が。
 上興部の道の駅「花夢」手前で小雨が降り始めた。雨具を着込むのも兼ねてバス停の小屋に避難し、一息付く。少し走ったので、早朝感じたような寒気はもう身体から消えていて、少し汗までかいていた。今日も快調な朝が始まったところなのだ、自分の中では。そんな状態で空はもう真っ暗で、時々雷まで聞こえる。
 天北峠方面から車がやってきて、道の駅の駐車場に停まったので、峠の向こうの状況をヒアリングしてみた。作業着を着たその方は、天北峠への途中の分岐から林道に入り、森を点検してきたらしい。「山の中は雷が近くで鳴って危ない。天北峠方面は知らない」とのことだった。
 峠まではこの先6km弱、標高差130mしかない。そして今日は天塩中川まで辿り着かないといけない。過去には西興部より南の滝上から天塩中川まで走れていたので、今日はその日よりは余裕はあるが、しかしあまりぐずぐずしている余裕は無い。輪行に切り替える必要があるなら早めに決める方がいいが、名寄行きのバスは8時台。そして、走っている内に雨が止むことだってある。
 とにかく、今は多少の雨は我慢し、天北峠を越えてみよう。
北海道Tour15#6 2015/8/12 西興部→天塩中川-2


 天北峠手前で、予想通り雨がすっと上がった。そして峠を下り始めると、面白いように急に雲が明るくなり、下ると共に青空が現れ始めた。路面はまだぬらぬらの真っ黒、露骨に通り雨が降った直後のようだが、その雨は既に全部降り切ったようだった。
 谷間が拡がった一の橋では路面が乾き、その先二の橋、三の橋と進むにつれ低い雲が消えた。あまりぐずぐずしないでよかった。いつもやや退屈な二の橋、三の橋の谷間がしっとりと、しかし朝日に照らされ、眩しく輝くような農村風景が続いていた。いつもは当たり前の朝の風景が、何か大変に有り難い。いや、この辺りはもともとのんびりと静かな風景なのだ。いつもここを通る時に気が急く自分が悪いのだ。落ち着いて旅の風景を楽しまねば、と反省。

 7:15、下川着。
 朝の日差しが、正確に東西向きの通りの路面を明るく照らしている。上興部ですこしだけ雨宿りはしたものの、早出が効いて到着時刻は申し分無い。天北峠より大雨から逃げ切った安心感で少し落ち着きたくなり、セイコーマートでちゃちゃっと物資補給しておく。気分だけでなく、仁宇布に向かうなら、この先多分お昼前の仁宇布まで商店はおろか自販機すら一つも無いのだ。
 今のところ雲は高い。天気は予報より好転しているように見える。もしこの先雨が降るなら、行程を輪行に替えるエスケープポイントは、ここ下川か仁宇布だけだ。しかし、今日は仁宇布までは行ってみよう。そしてここでの出発時刻が、終着天塩中川の到着時刻に直結するのだ、私のペースは上がらないから。

 7:30、下川発。信号も無い分岐を曲がり、濁流のサンル川を渡って、道道60遡上を開始。
 サンルダムの工事を見下ろしながら新道へ登ると、顔に水滴を感じ始めた。しかし、辺りには霧は全く無く、空も基本的に晴れていて漂う雲も高い。空の中に水の粒が漂っているぐらいなのだろう。途中工事現場ゲートのガードマンさんに呼び止められた。この道で、3日前に熊が目撃されたという話を聞く。それは危険だ、やはり下川に戻るか。しかし、北海道に来てもう6日、ようやくやってきた晴れのサイクリングのチャンスである。ここで折り返すのは大変残念だ。熊鈴を鳴らしていればそう心配することも無いらしく、私の熊鈴は新得産の大変高性能(=やかましい)な熊鈴でもある。そのまま進むことにした。
 サンル大橋を渡って、青空と共にダム水没区間を見下ろしてみる。数年前まで「この橋を渡れるようになるのはいつなのだろう」と思いながら通っていた旧道と共に、もうダム湖外周の岸辺っぽい辺りが堤のように整備が進んでいるのがよく見えた。
 対岸へ渡って、山裾の新道区間から再びたにの真ん中の旧道へ合流。深い森と開けた牧草地が断続する谷間を、のんびりと進んでゆく。雲がやや早めだが、日差しは現れていて、木々や草の緑が明るい。そして道北ももう下川より北に来れば、この時間でも涼しい。至って平和で爽やかな道道60だ。これこそ北海道のツーリングに期待する状況だ。特にこの道では、ここ数年いい具合で晴れることが多いような気がする。実は道北への往復に専らこの道を使うため、毎回2度通ることが晴れの日に通れる大きな理由だが、いや、中標津では3日間チャンスを作っても、近年なかなか晴れの開陽台に出会えていない。良い道が好条件で通れるのは、大変有り難いことだ。
 キタキツネももう普通に道ばたに出没するのみならず、森区間の道ばたにかなり大きな糞を発見。夜か早朝か或いは日中なのか、明らかに道道60の路上にも熊はうろついているのだ。

 サンル牧場の最北部からカラマツの森に入り、そのまま次第に斜度が上がって峠区間となる。と言っても峠らしい斜度は最初だけ、辺りが開けて笹原と原生林に変わる辺りから斜度がかなり緩くなり、峠部分に至っては平坦区間が2〜300mも続く。
 9:40、幌内越峠通過。滝上出発の標準時刻より1時間以上も早い。さすが西興部出発だ。ピヤシリ山林道の入口となっている広場を過ぎると、その向こうは雄武町の幌内川の谷間へ、おもむろに80m以上下ってゆく。開けた谷間に続く山々の濃厚な森林を見渡すと、こちら側へ入った途端、空に低い雲が急に増えたことに気が付いた。日も翳っている。そうか、雄武町はオホーツク海側だもんな。しかし空の低い場所に雲が増えているだけで、まだ危険を感じさせるようなものではない。
北海道Tour15#6 2015/8/12 西興部→天塩中川-3


 上幌内で道道49号へ。次は今日最大の登り、美深松山峠区間だ。標高差は240m程度だが、峠毎に無人地帯が20km以上続くオホーツク山中でも際だって山深く、取付と峠手前の斜度は7〜8%と厳しい峠だ。そのためか、緩々の幌内越峠に比べて登っていて暑い。そろそろ10時だからかもしれない。噴き出す汗の臭いや身体の熱に、10時なりの暑さで元気になっているゴマフアブが尚更集まってくる。
 取付の深い森から一旦斜度が収まる辺りから、雷が鳴り始めた。空模様の推移を伺っていると、峠手前の開けた山間では、雲が濃く更に低くなり、雷の音がかなり近くなった。8%の直登を見上げつつ、峠のすぐ上の雲の中、稲妻がのたうち回っているのもよく見える。さっきから鳴っている雷で何となく予感はしていたものの、峠の向こうではこちらから稜線の向こうに見えている状態より天気が悪いのかもしれない。少なくとも、この山中から逃げ出さねばならないような事態に陥りつつあることを理解できる程に、天気は急に悪化しつつあるようだ。とにかく一刻も早く早く峠を越えて、仁宇布に下ろう。
 峠から下り始めると、予想通り雲が更に低く濃く、次から次へと動きが速い。下る途中、美深松山湿原への分岐辺りでは、今通り雨が上がったばかりのように、路面が真っ暗のぬらぬらに変わった。かなりの勢いの雨だったと思われる。そして通り雨が一時的に上がったからと言って油断できる状況ではないことは、廻りの低い雲と空の暗さを見れば一目瞭然だった。もう空の表情自体ががらっと変わり、何だか襲いかかってきそうなのだ。そして下るにつれどんどん辺りは暗く、気温は低くなってきた。

 10:40、何とか仁宇布着。交差点のコイブ前に自転車を停めたところで、中粒ぐらいの雨が降り始めた。コイブは営業していなかったので、少し奥、トロッコの仮設テントに避難する。
 雨はしばらく中粒ぐらいで降っていた。テントから出て見上げる西尾峠方面の雲は、周囲に比べるといくらか明るい。歌登の天気予報は終日曇りだった。天気予報はもちろん歌登市街の予報であり、市街で晴れでも道道120で雷雨であることは珍しくも何ともない。西尾峠を越えたら、少なくとも多少雨に降られるかもしれない。しかし基本的には回復の方向で推移してくれるはずだと思われる。ならばこのまま行かねば。西尾峠から歌登までずっと雨に降られたことだってあるのだ、過去には。
 等と缶コーヒーを飲みながら考えている内に、雨は弱まってきた。行くなら今だ。10:55、仁宇布発。

 交差点を過ぎて歌登方面に進むと、すぐに前から車がやってきた。ちょうどいい、この先の情報を仕入れねば。車の人が言うには、
「歌登までずっと大雨だよ。もの凄い雨。雷が凄い。ありゃー危ないよ。自転車?止めた方がいいよ」
とのこと。そう言えば、北側の山々全体が、さっき見たより明らかに霞んでいる。そして横の山を見上げると、今まで手前の山に隠れて見えなかった雲がかなり黒ずんでいて、どんどんこちらに拡がっている真っ最中だ。この先どうするのかというより、こいつはヤバイぞ。
 いや、まだ間に合う。早く撤退しよう。すぐ美深に降りれば助かる。

 道道60を下り始め、仁宇布の交差点を過ぎると、すぐ雨が降ってきた。さっきみたいな中粒ぐらいの、しかし動きが速い嫌な雨だ。振り返ると、少し向こうの山肌辺りが雨で霞んでいる。降り始めた雨はこちらに拡がってくるのは早かったが、谷間を下り始めると動きの速い方向と谷間の方向は違うようで、高広PA辺りで何とか再び雨雲の範囲からは脱出。
 その後も時々後ろを振り返りつつ、なる早で谷間を急降下。逃げ切れたと本当に安心できたのは、美深盆地手前の班渓発電所辺りだった。
北海道Tour15#6 2015/8/12 西興部→天塩中川-4


天塩中川→ポンピラアクアリズイング 3km
ルートラボ>http://yahoo.jp/L1EcTP

 11:50、美深着。すぐに稚内方面行きの列車を確認すると、13:02に稚内行きがあった。あと1時間10分、ゆっくり輪行して蕎麦を食う時間には十分だ。相変わらず暗めの曇りなのは変わらないし、これで今日の後半は輪行確定だ。
 次は蕎麦だ。町中で目に入った蕎麦屋へ入ると、流石蕎麦処の美深、大変美味しい蕎麦を戴くことができた。その間、店にいる間に外に停めておいた自転車は、知らないうちに雨に濡れてしまっていた。しかも濡れ方から想像するに、短い間でもそこそこ以上の勢いで降ったようだ。
 しかし、駅で輪行作業を始めると、何と上空の雲が切れて青空が現れ、何だか爽やかな風まで吹き始めた。晴れてしまったぞ。判断を誤ったのか、おれは。悔しくなり、空を見渡してみると、美深盆地の中は部分的に晴れているというのに、天塩川下流側で谷間が急に狭くなる恩根内方面には、かなりこってりした灰色の雲がかなり低く溜まっている。のみならず盆地周囲の山々にも、ぐるっと山裾から山側だけに雲がまとわりついている。つまり、平地は晴れのように見えても、ちょっと山方面に向かうと雨であるらしい。
 それなら、谷底だけ走っていれば雨だけは回避できるかもしれない。何も輪行してしまうほどのことは無く、国道40を北上すればよかったかもしれない、とは思ったものの、もう自転車は袋の中。今更再び組み立てる気はしない。そして山方面の黒く低い雲を見ていたら、どうせオホーツク山中を走れないのだ、という実感も得られた。かと言って国道40なんてあまり走りたくない。

 美深を出発した宗谷本線の各駅停車は、あまり雨に降られること無く、比較的明るい空の下を北上していった。夏の北海道らしく、各駅停車の乗客は鉄っぽい方が多く、今日は自転車は私だけだった。チャリダー達は今日は谷間を走っているのだろう、きっと。車窓からは、谷間を囲む山々に、100mぐらい上空からもう濃い灰色の低い雲がたっぷりまとわりついているのが見えた。きっとあの中はかなり天気が不安定なのだろう、と思えた。
 となると、やはり国道40を走るか走らないかが、輪行するかしないかの選択の分岐なのだ。自分の場合はどうか。何も国道40をそんなに嫌うことは無い。今日だって、少なくとも音威子府→佐久の20km余りでは国道40を走るようなコースになっていた。でも、美深→音威子府は交通量がやや多く、そして国道40で絶対に雨が降らないという確信も無い。

 取り留めない気持ちに苛まれている間にも、時間はいつものように経過し、普通列車は適切に正確に自分の仕事を進めていた。14:28、天塩中川着。
 ホームに降りると、雲はやや多く風が強いいものの、青空から明るい日差しが射していた。またもや走れば良かったかもしれない、と思った。しかし、最初晴れていた空には、輪行中にすぐ雲が広がった。そして強めの風が吹き始め、少し離れたセイコーマート補給中、南の雲がどす黒くなってどんどん拡がりはじめた。やばい、逃げ切らねば。結局今日は国道40を走っても、終始こんな感じだったかもしれない。
 それにしても、道東だけでなく道北も、一昨年の2013年以上に変な天気であることに、ようやく私は気付き始めていた。

 15:30、ポンピラアクアリズイング着。
 明日の予報はは朝から曇り。予定コースは、日本海沿岸の道道106から抜海、宗谷丘陵の道道1117を経由し、オホーツク海を猿払村まで下る。オホーツク沿岸、特に午後から夕方の天気予報は冴えないが、何とか1日走れそうな気がする。最後のオホーツク沿岸で、あまり遅い時間にならない方が良さそうだ。
 そして、上記のの日本海沿岸経由大回りのパターン1の他、日本海へ出ずに、最初から内陸を北上するパターン2も考えてはいた。
 どちらのパターンも未済経路を含み、特にパターン2はサロベツ原野東の台地の脇道未済経路を多くこなすことができる。中川は内陸方面へ向かいやすいので、明日朝起きてもし天気が良ければ、この機会にパターン2に行っておきたい。しかし天気予報と、ここ数日の天気の推移を見るにつけ、何だか内陸は望み薄のような気もする。特にニュースで報じられている旭川方面のゲリラ豪雨は、今回山間で出会ってきた天気の急変と全く同じ現象のようで、気圧配置を見ても、道内内陸のどこでゲリラ豪雨に見舞われても全く不思議じゃないように思われた。

■■■2015/12/19
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■■■高地 大輔
2015/8/12 北海道Tour15#7 中川→浜鬼志別-1

中川→(道道541・583)問寒別→(道道395)下コクネップ→(国道40)雄信内
→(道道256)幌延→(道道121・国道40・道道972)音類→(道道106)稚咲内
→(道道444)豊徳→(農道・町道・道道811)浜勇知→(道道106)抜海
→(道道510・616)上勇知→(国道40)開源→(道道138)鬼志別
→(農道・国道238)浜鬼志別 175km
ルートラボ>http://yahoo.jp/ezKsNS

 夜明けの時間になってもいつまでも薄暗い。空のかなり低い場所に灰色の濃厚な雲が溜まっている。窓の外を見ると、宿周囲の低山の、100mぐらいから上がもう完全にとっぷり雲の中だ。駐車場や路面は隅の方だけが湿っていて、一応雨上がりのようではある。しかし、雲の低さと濃さを見ると、とても内陸に向かう気はしない。天気予報は曇りになっているが、少なくとも午前中の山間方面はこんな感じが続くのだろう。今日は昨日検討した、海岸沿い平地主体のパターン1が良さそうだ。午前中は何とかこれで凌げそうだが、今日の宿はオホーツク沿岸の猿払村。あちら方面の天気予報が、15時以降小雨になっているのは変わっていない。夕方に多少雨に降られるのは避けられないかもしれない。

 5:40、中川「ポンピラアクアリズイング」発。まだ雨粒が顔に当たるような感覚を何となく感じつつ、道道541へ。市街地を北上し、天塩中川駅、セイコーマートとそのまま通過してしまう。40km先の幌延までもうセイコーマートは無いが、いかんせん6時前。まだこの店舗は営業を開始していない。一応コーヒーはさっき飲んでおいたし、もう中川でやることも無い、と町を出て行くことにする。
 佐久から中川、そしてサロベツ原野北端の幌延まで、天塩川の西岸は国道40、こちらの東岸には宗谷本線と道道541、256が続いている。道が二桁国道かローカル道道かの違いは、ツーリストにとって大きな違いだ。西岸、東岸ともあまり地形自体は変わらず、こちら側の東岸は牧草地と森の中。丘陵の裾を越える程度のアップダウン以外はほぼ平坦、行程も6日目でいい加減疲れが溜まってきた今日の私向きだ。雲は意外にも高く薄くなってきた。あと2時間ぐらい経ったら、完全に晴れてしまいそうな、明るく青いニュアンスすらある。しかし、道の周囲の山には低くかなり厚い雲がまとわりついている。雲の切れ間、正面にはまとまったボリュームの山裾が見えている。知駒岳だろう。あの稜線を越える目論見もあったのだが、やはり山裾から上がとっぷり雲の中に浸かっている。山間で極端に雲が増えるのだ。昨日の美深での出来事を思い出しても納得がいく。やはり今日も、山に向かうべきではない日なのだろう。ならば平地を淡々と進もう。何となく安心するような、物足りないような。いや、安心なのは確かである。

 歌内で道道541は天塩河岸を離れて内陸へ向かう。少し北の雄信内から道道256が再び東岸を北上し始めるまで、天塩川沿いには道道だけではなく、村道、農道を含めて道自体が連続していない。このため、天塩川沿の道道を辿る時には、いつも歌内から雄信内までどこかで対岸に渡って国道40を経由せざるを得ない。
 歌内から対岸へは、牧草地の中に続く必殺癒やし系の素敵な道がある。しかし今日はまだ早朝だし、未済経路消化の悪あがきを兼ねて、少しだけ道道541を継続して内陸へ向かい小さい丘を越えて、少し北の問寒別から国道40へ向かってみた。
 道道541が内陸に向かい始めた途端すぐに空が暗くなり、丘越え区間ではぱらぱらっと小雨が降り始めた。歌内まで次第に空は明るくなり始めていたのに。しかし、小雨の中を問寒別まで降りてくると、集落に入ったところで面白いようにぴたっと小雨が収まった。やはり山方面にたっぷり雨雲が溜まっているのだろう。そしてその割には、平地には低い雲は意外なほど少ないようだ。
2015/8/12 北海道Tour15#7 中川→浜鬼志別-2

 問寒別駅は、2008年に訪れた時の印象がとても強く残っている。その日は盛大な計画ミスで、宿の抜海「ばっかす」にはあと80kmぐらいありそうなのに(結局コース再検討で70kmに収まった)、知駒峠で15:20、問寒別で15:50。途方に暮れて輪行の可能性にすがりつきたくなり、経路上の問寒別に寄ってはみたものの、普通列車は2時間後。駅舎代用の元車掌車以外自販機すら無い問寒別駅に、何だか「現実逃避したって始まらないじゃないか」と諭されたような気になったものだった。
 駅手前の分岐から眺める問寒別駅には、今日もその時と同じように何があるわけではなく、やはり取り付く島は全く無い。しかし、駅とは別方向の集落の道沿いに自販機が見えた。20km先の幌延まで自販機も少ないはず、駅へ向かう代わりにコーヒーを飲んでおく。

 天塩川は満水という程の水量ではなかったものの、明らかに一度増水してから減りつつある雰囲気が、そこかしこに見て取れた。最近水量の少ないこの川を眺めた記憶が無い。近年の道北訪問で、それだけ天気が不安定な場合が多いのだ。
 雄信内までしばし国道40を経由。途中で国道232が天塩方面へ分岐して交通量がぐっと減り、ようやく何とかこれならツーリングしている気分になれる程度になる。しかし当初の予定通り、雄信内で再び天塩川東岸の道道256へ。やはり交通量は段違い、国道40に比べて身体の周りの空気が緩むような感覚を覚える。
 歌内までの道道541と同じく、道道256でも牧草地と森の中に道が続く。雄信内から先西岸にはサロベツ原野が拡がり始めているためか、牧草地の割合がぐっと増えていた。周囲に開けた牧草地が続くため、風景に変化はやや少なく、地形や登り下りの抑揚もほとんど無い。それでものんびりとした静かな里の雰囲気はここならではのもの。間違い無く個性的な良い道だ。
 さっきから雲が高くなり始め、南幌延辺りからは空が晴れ始めた。相変わらず山側には雲が溜まっている。平野だけが天気が良くなっているのだとすると、或いはサロベツ原野に近づいているためかもしれない。

 幌延手前では「北緯45°通過線 200m先」の標識があった。200mぐらい先できょろきょろしても、毎回その通過線がどこなのかさっぱりわからない。7:50、幌延着。早出が効いて、まだ7時台である。この先沼川まで商店らしい商店は無いと思われるので、この機会にセイコーマートでいろいろ食べておく。
 幌延出発直後、道道121で、北緯45°通過線がどこなのかようやくわかった。例によって手前に標識は建っているものの、当該部分にあまりでかでかと標識は建っていない。しかし、道路の舗装にマーキングが有り、歩道部分の舗装材がそこだけブロック状になっているのだった。

 再び国道40を少し経由した後、道道972でサロベツ原野を横断し、日本海沿岸の道道106へ向かう。
 道路の周囲は標高ほぼ0m近くに拡がる湿地帯となり、前方と周囲には高い草と道だけ、その上は空だけという開放感が続く。海岸へ向かっているため、もう幌延まで近くに意識していた内陸の山裾は、前方や周囲には無い。途中ビジターセンターがあるが、道からは数10m湿原に奥まっていて、道からは施設のボリュームは感じにくく、自販機の類も無いので通過するいちツーリストにとって存在感もあまり無い。本来は立ち寄っていくべきなのだろうと思うものの、今日はまだ先が長い。
 風景の構成要素は単純だが、湿原の道はひたすら単調というわけではない。途中の牧場で牛の横断に遭遇したり、終盤のサロベツ川の横断では橋の上からサロベツ原野の展望を楽しめたり、道東の根釧台地とはまた別の拡がりを感じさせてくれる。静かな、道北のとても印象的な道であり、こちらに来てつくづく良かったと思う。内陸方面に迎えなかった今日の残念な気持ちは、ここで完全に解消された。
 前回この道を通ったのは、さっきの問寒別駅と同じく2008年だが、この道の素敵な景色に全く記憶が無い。まだ抜海まで先が長いというのに日が暮れつつあり、そろそろ水も少なくなってきたことに遅まきながら気付き、気持ち的にかなり切羽詰まっていたことは覚えている。多分一杯一杯の精神状態で、景色が全く目に入っていなかったのだろうと思われる。自分がカワイソウになってくるが、計画が甘かったことも確かであり、まあ自業自得だろう。
 今日はこの風景をたっぷり楽しんでおこう。
2015/8/12 北海道Tour15#7 中川→浜鬼志別-3

 音類で道道106へ。ここからしばし道道106を経由する。音類と言えばオトンルイ風力発電所であり、道道106南端の天塩まであと約10km程。南下してくると、もう残りが気になるこんな位置で日本海沿岸に出るのだ。まだ抜海まで先は長い。
 日本海を眺めるのに都合が良さそうな場所で少し停まり、辺りを眺め回してみる。日本海と海岸際の丘に挟まれ、ひたすら北上してゆく1本道。いつの間にかこの道は、私にとってやや広めに感じられるようになってしまった。しかし今、この道の広い空間に車は時々通る程度で、海と空と緑だけの印象的な風景を存分に楽しむことができている。やはり道北の印象的な道の一つだ、と思い知った。今のところ頭上やこれから向かう北方面の空は晴れていて、青空が拡がっている部分のある。一方、南側の天塩方面や海上には雲が溜まっている。大きく見えるはずの利尻が裾すら見えない。天気予報通りにオホーツク沿岸で天気が不安定なのだとすると、平地上空が晴れているというより、サロベツ原野の辺りだけが比較的晴れているということなのかもしれない。昔から宗谷本線に乗っていて、そういうことはよくあった気がする。異常気象というより、単に道北の厳しい気象条件そのままのお天気なのかもしれない。

 稚咲内から再び内陸へ。道道106は何度も通っているし、少し内陸の道道444は以前兜沼まで通っているので、豊徳から沿岸部に沿って内陸を北上する農道を経由して北上しようと思っていたのだ。
 始めて通るこの道が、車が少なく静かなだけではなく、牧場の前では埃っぽく坂は農道基準で厳しく、時々サロベツ原野の展望が開ける、実にいい田舎道なのだった。一方、内陸へ入ると海の涼しい風が無くなった。時に直射日光がかっと射し始めて急激に身体が熱せられ、たまらなくつらくなった。しかし雲の動きは速く、すぐに多少厚く低い雲がやって来て辺りが急に薄暗くなったりもする。風景的にはもう少し晴れてくれると有り難い。しかし、道北も最北エリアのこの辺り、曇ると気温が一桁台、晴れると30℃以上が当たり前なのだ。まあまあ走れる気温なのだけでも有り難いと思わねばならない。
 豊里で再びサロベツ原野に降りてきたものの、すぐ北の清明で北側を囲む丘陵裾に到達。道はその裾に付かず離れずで、谷地のように丘陵に食い込むサロベツ原野とともに丘陵の奥へ進み、サロベツ原野が谷間に変わってゆく。この辺りは道道106で海岸しか通ったことが無く、海岸から丘を眺めるだけだった。丘陵の中側はこんなだったのか。

 夕来からオネトマナイへと標高20〜15mぐらいの低台地に遡り、下勇知から再び海岸へ。抜海まで道道106に復帰である。
 10:50、こうほねの家着。コースが海岸へ出るとともに、空の雲が切れて、広い青空と日差しが現れた。それまで晴れては曇ってが続きながらもじりじり気温が上がっていたのが、一気にかなり暑くなった。空だけでなく日本海はマリンブルー、岸の緑が明るく鮮やかだ。夏の北海道そのものの風景がやっと現れてくれた。
 何度か前を通ってはいたが、展望台と休憩所だけの小屋かと思っていたこうほねの家には、1階に軽食コーナーがあったのが嬉しかった。この先3〜40km先の沼川まで多分補給ポイントは無いので、大変有り難い。ソフトにサンドイッチをまとめてやっつけておく。その間、何組かチャリダーが去来していった。やはり道道106は圧倒的に自転車が多い。
2015/8/12 北海道Tour15#7 中川→浜鬼志別-4

 もう順当にお昼前。抜海の先で道道106とはお別れで、コースは海岸部から内陸部へ向かい始める。その下勇知から抜海までの短い間では、すかっと晴れた青空の下、いかにも夏らしい気分を味わうことができた。風も追い風で、絶好調の行程だ。この際すぐ後で向かい風になるかもしれない風向きについては考えないことにしていた。
 抜海駅から勇知までの道道510は、しばし標高一桁台の低地から80mも登って下る丘陵越え区間である。通る度にもうすこしまともな経路の道が通せなかったのかと思うが、多分この地に道ができた時からの経路でもあり、それなら何かの必然性がある経路なのだろう。宗谷本線乗車時にも、列車が稚内を出発してから広々としたサロベツ原野に降りるまで、確かに丘陵の中を迷走していて、この辺りが丘陵であることが伺える。その宗谷本線、実は意外に道の近くを通っていて、今日はスーパー宗谷が突如通過していった。
 向かい風に変わった強い風に乗り、丘陵の雲は早く動いていた。雲の厚みが変わるためか、空模様も変化が早い。辺りが急に明るくなったと思ったら、急に日差しと青空が部分的に現れてかっ暑くなり、すぐに翳ってまた涼しくなったりする。荒れ狂う雨雲に終われて海岸から逆向きに逃げてきた2013年の訪問を思い出すものの、今日は雨が降らないのがありがたい。

 上勇知で低地に降り、道道610から国道40に合流。片側2車線で歩道が車道と完全に分離された国道40は、まるで高速道路の路側帯をこっそり走っている気分になる。ここから少し南の豊富辺りでは無料の自動車専用区間もあり、むしろこういう表情が稚内手前の国道40の普通の状態と言えるのかもしれない。開けた国道上は落ち着きが悪く、曇り基調ながら照り返しでやや気温も高く、向かい風も強くて、お昼のけだるい雰囲気に飲み込まれてしまいそうだ。
 開源からは道道138で更に東へ。交通量が一気に減るのは有り難いものの、相変わらず横風が強い。真っ平らの低地だったサロベツ原野と違って、丘陵をまともに横断してゆくため、標高差数10m程度ながらアップダウンが頻発する。緑の牧草地の風景が大変嫌味に見えて仕方ない。地形図上のたかだか1〜2本の等高線をせこく数えながら、丘の数を数えて進む。

 何とか13:55、沼川着。元天北線の駅があった沼川にはAコープがあり、国道40か宗谷本線沿いにしかセイコーマートが無いこの辺りでは、内陸丘陵部の貴重なオアシス的存在だ。更にゴージャスな屋根付き屋内バス停もあり、休憩ポイントとして何かと頼りになる集落だ。欲を言えばセイコーマートのHotchefが食べたいようにも思うが、Aコープのパンとかカップ麺で十分腹は満たすことができる。
 空には低い雲が再び拡がり始めていた。その雲もすかっと真っ白なものではなく、なんだかここ数日よく見かける、とろんとして嫌な方に元気な感じになり始めていた。ここ沼川が、オホーツク沿岸との間の山地裾に位置するためかもしれない。カップ焼きそばを食べつつ、店舗前の仮設テントの職員さんらしき方に情報収集しておく。
「最近突然雷が鳴って豪雨が降り始めるんですよねー。あの雲も、手前の山の向こうでどうなってるかはわかりませんねー」
とのこと。天気予報をチェックしてみると、16時からこの辺りは雨に変わっているではないか。今後の予定は、この後下増幌まで未済経路の脇道込みで北上し、2012年に訪れた道道1077で宗谷丘陵の南側を横断、オホーツク海沿岸を国道238で猿払村に向かう予定だった。これなら今日は190kmぐらいは走れることになる。この予定通りだと、沼川から下増幌まで、道道1119で1時間は掛からない。しかし、その後道道1077でオホーツク沿岸に降りるのは16時を確実に過ぎるだろう。この段階で既に雨の中、更にオホーツク海沿いに雨の中を1時間弱。
 一方、沼川から直接東側へ向かう道道138なら、16時過ぎにはオホーツク沿岸の浜猿払には着けるだろう。距離の下方修正は悩ましいものの、その分順当に到着時刻が早まる。今の私は雨の可能性より安心感を優先したい気分だ。連日の下方修正で、もうあまり頑張る気も失せている。
2015/8/12 北海道Tour15#7 中川→浜鬼志別-5

 14:30、沼川発。
 道道138は元国鉄天北線に沿う道だ。鉄道が通っていただけあり、沼川から曲淵へ谷間は次第に狭くなるものの、その斜度は穏やかなものだ。しかし、沼川で今後の身の振り方が悩ましい程度に明るかった空が、小石峠まで最後の集落である曲淵では雲が目に見えて低くなった。そして峠へ続く森に進むと急に涼しい風が吹き始め、日差しが翳ったと思ったら上空がいつの間にか灰色の雲に変わっていた。前方の山の少し上はもはや霧に包まれている。というかどう見てもあの中は雨なのだろう。たまに前方からやって来る車はワイパーが動いていなくて、車体は濡れてもいない。ただバイクが雨具っぽい衣服を着ているのが何ともブキミだ。この先どこかで雨に降られるのかもしれないからだ。
 稜線部に向かって斜度が上がってくる頃には、空はかなり薄暗く、気温は低くなっていた。そして小石峠では濃い霧が降りてきたが、結局最後まで雨は降らなかったのは有り難かった。しかし身体には水滴が峠の向こうの小石では、集落まで下りきってもまだ辺りが寒く薄暗い。暑かった沼川とは完全に天気が違う。小石峠、標高160m余りと低いながらも、さすがの貫禄である。
 そして今この状況で、1時間後も雨が降らないとはとても思えない。やはり今日の天気予報は信用して間違いではなかったのだ。

 寒々しい道を下っても、というよりほとんど標高差の無い谷間を海岸部に向かって進んでも、空の暗さと寒さ、遠景の霧は変わらなかった。時々霧粒は雨粒にすら変わった。しかしこの状況でも、激安規格外ホタテはチェックしておく必要がある。
 直接海岸の漁協売店へ向かうために、鬼志別で道道138から北側の丘陵へ入り込む。近道のショートカットを目論んだものの、谷筋に通る道138の安定した地形とは違って、丘陵のアップダウンを細道で通り抜けてゆく経路が近道だったかどうかはあやしい。そしてせっかく寄り道した漁協売店は、やはりお盆の休業中だった。まあいい、規格外格安品に拘らなければ、ホタテは漁協のネット通販でいくらでも買えるのだ。そして猿払村のホタテは、通常の規格品で十分にお買い得だ。

 16:30、浜鬼志別着。落ちてきそうに雲は低いものの、まだ辛うじて雨は降っていない。セイコーマートで明日の朝食を仕入れておき、16:55、ホテルさるふつ着。国道沿いの段丘には、寒い風が吹き渡っていた。
 気が付くと、チミケップホテル以来、何と4日連続でホテルという凄いことになっている。今日のホテルさるふつは、外壁改修中の足場に包囲されていて入口がややわかりにくい。しかしこの寒空、到着の安心感もひとしおだ。そして風呂から上がると、もう宿の周囲は雨でしっとりし始めていた。天気が二転三転する一日だった。

 夕食はホテル標準のホタテ定食。とても美味しくてボリュームたっぷり、全く不満はないのだが、どうしても食べたかったホタテラーメンもこの際注文。食べ終わると流石に動くのがつらい。よたよた部屋へ戻り、本日のノルマ終了だ。
 明日は仁宇布まで。天気予報は歌登、美深で10時過ぎから曇り時々雨。大好きな道北縦貫道道の道道120・49・60を確実に通るために、道北への出入りを往復ともこのコースにする行程をここ数年毎年続けている。今回往路は仁宇布までしか到達できなかったので、帰路は是非とも仁宇布まで自走で南下したかった。しかし、特に山深い上徳志別・仁宇布間へ、この予報で足を向けるのはちょっと心配だ。そしてこれだけ毎日雨が続くと、もう自走に拘る気は失せている。
 一番めぼしいJR駅の音威子府方面へのバスは早朝発であり、流石に早朝から輪行する気にはなれない。また、曇り時々雨の天気予報はあくまで平地の予報であり、とりあえず進みながら現地でで実態を判断してゆく方法はあり得る。何にしても、列車への乗り換えポイントは音威子府であることは変わらない。音威子府で輪行するなら、歌登までに方針を確定しなければならない。その先終着の仁宇布まで、もう分岐は無いからだ。

■■■2016/1/24
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■■■高地 大輔


2015/8/13 北海道Tour15#8 浜鬼志別→仁宇布-1

浜鬼志別→(村道エサヌカ線他)浜頓別→(国道275他)中頓別→(道道120)兵知安→(道道647)上頓別→(国道275)音威子府
 93km
ルートラボ>http://yahoo.jp/v_NWa2

 夜明けの時刻になっても、窓の外はいつまでも薄暗い。雨は降っていないようだが、部屋から見える道の駅の駐車場、その向こうに国道238、更に向こうのオホーツク海の上空全てに、厚い雲が低くどんより溜まっている。今日もこんな天気なのか。内陸へ入るとからっとするパターンだといいのだが、生憎天気予報は枝幸町歌登、美深町の両方で曇り時々雨、降水確率50%だ。大変漠然とした予報は毎日同じであり、現在の天気は確実に良くない傾向を示している。それならば、予報が示すわかりにくい実態、そして裏切られる希望的観測も多分同じなのだろう。いい加減嫌気が刺し始めていた。
 コース上の歌登まではエスケープが可能であり、現地の空模様を見て輪行するかどうかの結論を先延ばしできる。到着時刻で言えば10〜11時ぐらい。それならば、歌登までは走行予定の時刻に沿って進むべきだろう。しかし良くて仁宇布直行、天気が良ければもう少し回り道したかったとか、計画時に目論んでいた希望的観測などは程遠い状況である。

 5:35、ホテルさるふつ発。
 駐車場に出てみると、薄暗いのみならず肌寒く、細かい霧粒が舞っている。ここが道北オホーツク沿岸もかなりの北部であることを改めて思い出す。薄暗い風景を部屋から眺めていたのでTシャツの上にポロで出てきたが、早々にレインジャケットを着込むことにする。
 走り始めると水滴の密度が濃くなってレインジャケットの表面に結露したり、また霧粒が薄くなって乾いたり。しかしジャケットの中は適度に暖かで適度に通風があり、着重ねの圧迫感が少ない。大変頼りになる。
 国道238では、薄暗い灰色の空の下、オホーツク海も牧草地の草原も全て彩度が減衰した灰色の風景が続いた。早朝なのでこの道の印象よりはるかに車が少なく、ライダーハウス、猿払パーキングシェルターと、人気の無い施設が点在し、通り過ぎてゆく。記憶通りに順当な順番と距離感覚で各要素が登場した後、「通称エサヌカ線 2km」の標識が登場。もう分岐の浜猿払手前なのだろう。通称とはなかなか粋な標識である。正式には道の名前は村道エサヌカ線ではないのかもしれないが、全国からこの銘道を訪れる人々のために、標識はこういう呼称にしてあるのかもしれないからだ。いつまでも中津川林道と呼ばれている道を思い出す。
 その標識によると、エサヌカ線の起点は実は2km先とのこと。ということは、浜猿払を過ぎ、国道238が内陸へ向かい始めて森の外れにある看板から直接入るのが正解なのかもしれない。何だか浜猿払の集落からエサヌカ線に入る方が、道がより海岸に近く、集落を通る道筋こそが本来の道のあり方であるような印象がある。それに、できればより早く国道238から静かなエサヌカ線に入りたい。

 等と思っていると、浜猿払の地名標識が登場。見えてきた橋の向こうから、浜猿払の集落へ。ホタテ御殿、漁港を過ぎ、海岸に続く草原の道が始まった。
 雨は降っていないものの、雲がかなり低い。もう頭のすぐ上まで雲が降りてきている。薄暗い雲の低いコントラストに目を凝らすと、動きがかなり速い。よくこの低さで雲が落っこちてこないものだ。頭上の低い雲が周囲の牧草地を覆い尽くし、遠景がまるでダメだ。
 極限まで低い雲は、やはり時々地面まで降りてきた。霧粒のような細かい水滴が、小雨ぐらいの雨に替わり、また軽い雨粒ぐらいに替わる間、薄暗い空は決して明るくならなかった。かと思うと、たまに遠方の空が明るくなってまたすぐ暗くなったりもしていた。雲は低く濃密だが、意外にそれほど厚くないのかもしれない。

 もともと開けた牧草地の中に起伏も無く延々と続く道なので、雲が低いと更に遠景の変化も感じにくい。雨に耐える気分が単調な行程を助長する。一直線の道に何度か登場するクランクカーブが、進行状況を教えてくれるものの、浜頓別が近づいても前方遠くに現れるはずの山はいつまで経っても全く見えない。浜頓別で天気が少しは変わることを期待していたが、やはり向こう方面も雲が濃いのだった。今日はやはりどこかで撤退しなければならないかもしれない。しかし輪行に切り替えるとしても、列車の乗車駅は音威子府一拓であり、浜頓別からもまだ予定コースを進む必要がある。
2015/8/13 北海道Tour15#8 浜鬼志別→仁宇布-2

 7:10、浜頓別着。町外れのセイコーマートで小休止。今日の行程上には、浜頓別、中頓別、歌登とお昼頃までにセイコーマートが頻発する。今朝は今朝で昨日鬼志別のセイコーマートで仕入れたネタでたっぷり朝食を摂っているので、本来ここではあまりすることは無い。ただ、明日明後日の2日間、コース上にセイコーマートはそう多くないので、そろそろセイコーマートで思い残しが無いようにしておきたい。そんなことを考えて、もう8日目、あと2日しか残っていないのだ、と改めて気付かされもする。
 浜頓別から中頓別へは国道272。浜頓別は標高一桁、24km先の中頓別は標高20m台。2つの町はともに頓別川沿いにあり、国道272がずっと川沿いならば、途中にはほとんど登り下りは無い筈なのに、国道272は途中常磐手前で、浜頓別の丘を掠める、丘越えとか登りと認識したくないぐらいの起伏がある。丘を通り抜ける農道に入って北へ向かえば、道北らしい広々とした風景がたっぷり楽しめることはわかっているが、国道272は丘の裾を中頓別へ向かう道なので、その風景は楽しめないし、今日は浜頓別から粛々と中頓別へ向かう必要がある。
 出発してからここまでずっと億劫でさぼっていた地図交換中、外国人ツーリストが追い抜いていった。さっきセイコーマートで休憩中、やってきた人だ。最近は北海道でも外国人ツーリストをよく見かけるようになったとも思う。地図交換後、こちらはGPS画面上に現れた農道らしき細道へ入り込むとする。国道272から少し丘側を経由して、国道272より少し先で頓別川の谷間に降りる、寄り道には大変都合がいい道のように思えたのだ。
 実際に農道はとても静かな道だった。もともと国道272ですら交通量はそう多くなく普通にツーリング向きの道なのだが、農道はその国道272と、普通の国道と農道の差ぐらいはのんびりひっそりとしていて、看板の「熊出没」が怖い程だ。実際に浜頓別では元天北線の北オホーツク自転車道で毎年訪問の1ヶ月以内に熊が目撃されている状況だし、その辺りの茂みから臭いが漂っているような気もする。まあそのぐらいに静かな道である。中頓別方面へのルートとしては多少大回りなのと、途中の登り斜度が国道272より厳しいので、時間のある今回のような場合限定かもしれない。

 谷間に降りてからもう少し台地裾を経由して、弥生で国道272に合流。国道272に戻ってはみたものの、この辺から普段はどかーんと正面に見え始めて気分が盛り上がる、敏音知など内陸方面の山々が、今日は裾まで雲の中。その低い雲がまた例によって濃い。見るからにダメそうな雰囲気が漂っている。
 8:30、中頓別着。浜頓別から24kmだが、中頓別にはセイコーマートがあるのでここで休憩せねばならない。最近増えて来た国道272のツーリストも大体ここで休憩してゆくようで、ツーリストの駅みたいな印象がある。いろいろがっついていると、先の外人ツーリストが再登場。こちらはけっこう寄り道しているのだが、或いは彼も途中寄り道してたのかもしれない。さすがに3回目の出会いなので、彼とは少し話し込んだ。今日はびふか温泉まで行くとのこと。こちらは仁宇布だが、ほぼ輪行確定の身なので何となくばつが悪い。
 じゃ、お互いそろそろ出発しましょうと9:15、浜頓別発。彼はそのまま国道272経由で音威子府方面へ、こちらは逆方向の市街地中央に向かう。とりあえず予定通りの道道120への分岐が市街地中央にあるためで、最終判断は歌登まで延ばせるし、道道120途中の兵知安では、敏音知の東側を経由して上頓別で国道272に合流する道道647にも分岐できる。敏音知の東側を経由する国道272より、道道120〜647の方が距離がやや短いことは、何度かの訪問で知っている。
2015/8/13 北海道Tour15#8 浜鬼志別→仁宇布-3

 道道120では、やはり周囲の低山が灰色の雲の中だった。兵知安まで8km、辺りはどんどん薄暗くなり、歌登に向かうまでもないことが実感された。そもそもこの天気だと、歌登まで向かう途中の兵知安峠からしてダメだろう。私にも判断能力というものが少しはあるのだ。
 兵知安の歌登21kmの標識には心が動くものの、おとなしく道道647方面に向かうことにした。あちらには行けない。想定タイムリミットより早い決定だが、今日は明らかに音威子府直行の方がいい。ならばもうのんびりしようという気持ちになってしまっていた。

 雲はますます低く、時々霧が雨粒に変わったりして推移していた。もう一刻も早く輪行に切り替えたいと思いながら国道272に再合流、すぐに10:15、上頓別着。歌登まで行ったとして、歌登からエスケープの道道12が国道272に合流するのも上頓別。かなりの交通の要所である。しかしもともと人口密度が少ないためか、上頓別の集落はかなり寂れていると言っていい雰囲気だ。かなり特徴的な駅前旅館の木造建築にも長い間心魅かれているが、明らかに営業していなさそうな雰囲気だ。その上頓別から天北峠への登りが始まる。脚を止める口実で自販機のコーヒーを飲み、やはりここまで億劫だった地図交換をしている最中、さっき中頓別で別れた外国人ツーリストがまたもや登場。お互い笑って挨拶、そのまま元気に走り去っていったが、逆方向に向かったはずのおやじが何故先にいるのか不思議だろうなと思う。事程左様に、国道272経由より道道120〜647の方が距離が短いのだ。

 上頓別からは天北峠への登り。標高190mと決して高い峠ではないが、そもそも昨日の小石峠だって標高167m。道北の峠なんてみんなこんなもんなのだ。それだけに標高450m以上もある知駒峠の存在感は大きい。天北峠について言えば標高は高くないし、上頓別からの登りだって90m程。ちょっとした丘越えぐらいなのだが、途中からは斜度が7%と一応普通の登りだし、峠の音威子府側からは低地の密森がなかなかの迫力で拡がる。道北ではそれなりの峠なのだ。
 その天北峠を越えると、何とここまでの天気が一転、急に晴れ始めた。あまりに予想外の意外な展開である。少しの間
「なんだ晴れるんじゃないか、これで音威子府までは降られることは無いだろう」
などと思いながら、下りかけたところで気が付いた。これなら歌登に向かうべきだ。
 そこで又登り返して歌登方面へ戻ると、やはり相も変わらず辺りは雲の中であり、雨まで降り始めた。やはりあちらはダメなのだろう。何だか残念だが、今日はもう迷わず音威子府へ行くことにした。
 天北峠を越えてから、音威子府まで10km強。峠から続く7%の短い下りが片付いた段階で、あらかた空の雲は消え失せてしまっていた。こうなると青空に眩しい日差し、明るい緑の森の下り基調と、何の心配も無いお気楽ツーリングだ。これなら国道40を走って美深に行けるかもしれない。しかし国道40、10年ぐらい前なら追い風基調だったものの1時間強で行けたこともあるものの、やはり車が多いのは嫌だし。一度輪行に変わってしまった頭の中はなかなか切り替わらない。止めておこう。

 11:30、音威子府着。
 天塩川の谷間に出てから、もうすっかり暑くなっていた。厳しい日差しの中で、駅前での輪行作業が暑くてたまらない。ちんたら輪行作業を終えても、まだ列車まで1時間近くある。こういう時に普段はなかなか訪れにくい音威子府蕎麦を食べるべきだ。いや、近年道北て天気が悪くて輪行ばかりなので、最近は毎年駅蕎麦を食べることができているように思う。その駅蕎麦が妙に混んでいる。そしてそれ以上に、普段お店を切り盛りしている老夫婦と、その娘さんお孫さんらしき方がけなげにもお手伝いしていた。最北駅蕎麦として旅行者に人気のこの音威子府蕎麦、少なくともこの期間だけはなかなか賑やかである。

 13:07、音威子府発。今日の各停には輪行自転車は私以外乗っていない。当たり前だ、今日のこちらの天気なら、みんな国道40を走っていて輪行なんかしないだろう。しかし、美深に出て見上げる函岳の向こうには濃く湿っぽさそうな雲がたっぷり溜まっていた。あの中はどうなっているかわからないのである。
2015/8/13 北海道Tour15#8 浜鬼志別→仁宇布-4

仁宇布→(町道他)ファームイントント 3km
ルートラボ>http://yahoo.jp/dzXzq0


 13:47、美深着。気温は31℃。しかし予約しておいたデマンドバスで仁宇布に向かうと、途中で見事に空が曇り始め、その雲は仁宇布近くでかなり低くなってきた。歌登から仁宇布へ向かったらどうなったかを想像し、やはり今日の輪行は間違っていなかったかもしれない、諦めるには十分な曇りである。

 14:40、仁宇布「トロッコ王国」到着。去年と同じく15時便に間に合うことができたので、折角なのでここはトロッコに乗っておくことにする。トロッコ自体が大変楽しいのは去年と同じだし、今回はトップバッターを拝命した。しかし、トロッコ乗車中も結局雲は低いまま、途中雨がぱらっとは来たが、それ以上降らなかったのが有り難いというべきというぐらいの曇天だった。

 16:40、ファームイントント着。今年もいよいよ終盤のファームイントントだ。トロッコに寄ってきた旨を報告すると、「トロッコ料金\1800がファームイントントで特別割引券\1200が買える」ことを教えていただいた。昨年も聞いたはずなのに、すっかり忘れていたのだった。まあ私にはトロッコは\1800でも安いと思えるので諦めは付くし、ファームイントントに寄ってからだとトロッコは1便遅れてしまい、風呂上がりに食堂でサッポロクラシックを呑みながら夕暮れの牧草地を眺めるのも1時間遅れてしまう。

 女将さんによると、仁宇布は毎日こんな天気らしいとのこと。意外にもあまりまとまった雨は降っていないらしいが、西尾峠方面や山の中はわからないらしい。ただ、私が仁宇布から美深に向かった一昨日は、
「あの日は変だった。雷が怖かったよー。降った時間はそう長くはなかったが」
 しかしそれでも、やはり山方面には黒い雲がいつまでも溜まっていたらしい。行かないで良かった。

 ファームイントントには固定客が多く、以前一緒だったお客さんと泊まり合わせることが多い。今回は、去年ファームイントントで出会った家族と夕食時に再会できた。「アナと雪の女王」を、夕食中振り付きでフルコーラス熱唱していた4歳の娘さんは、今年は「ダーウィンが来た」に夢中らしく、平原綾香の主題歌をやはり振り付きで歌ってくれた。その後、番組で紹介された生き物の話に移行。DVDで繰り返し観ているらしく、こちらも日曜日に「ダーウィンが来た」を流し観することが多いので、いろいろな生き物の話で話は熱っぽく盛り上がった。こちらがハチクマの話を出すと、その回はまだ観ていなかったらしく、悔しそうな顔をする娘さん。ハチクマというのは蜂の巣をを襲う鷹で、あの凶暴なスズメバチを物ともせずに襲撃する凄まじい映像が人気らしく、続編も放映されたぐらいなのだ。お父さんお母さんもその間合いの手を繰り出したり、面白がって「観ないといけないねー」などと話していた。ところが、北海道から帰宅した8月18日のダーウィンは、なんとそのハチクマの再続編だったのだ。娘さんはハチクマを観ることができただろうか。前回の「アナと雪の女王」は、結局紅白歌合戦で3回も聞くほどの大ヒットで、耳にする度にファームイントントの夜を思い出せていた。今回も帰った途端にそういう復習ができ、何か毎年素敵なお土産を頂いた気分になれた。

 明日から天気は少し良くなるようだ。何とか1日晴れて欲しい。そして、自走で美瑛に辿り着きたい。

■■■2016/1/24
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
2015/8/14 北海道Tour15#9 仁宇布→大村-1


仁宇布→(道道49)上幌内→(道道60)下川→(道道101)愛別
→(町道・農道・道道140・295)倉沼→(町道・農道・道道37)東神楽
→(町道)千代ヶ岡→(町道)大村 156km
ルートラボ>http://yahoo.jp/7VAhMx

 ファームイントントの外に拡がる、露が降りてしっとり湿った仁宇布の牧草地。灰色だった夜明けの空は、荷積み中にうっすら青くなり、5:30の段階で青空が登場。天気予報は美深から旭川まで曇りの後9時頃から晴れだが、前倒し進行なのかもしれない。朝雷が鳴るようだと、場合によって去年と同じく美深・幌加内経由だと思っていたが、これだと道道60確定である。今日は行ける。
 早くから準備して下さる美味しい朝食をたっぷり戴くとする。朝早くから道北の牧草地を眺める朝食、こんなに素敵な状況はそうそうない。今日のコースの場合、仁宇布を出発してから45km先の下川まで完全に無人地帯となるので、尚更有り難い。6時頃から辺りに漂い始めた霧が濃くなって雲に変わりつつあった。しかし、空は決して薄暗くない。天気予報とさっき見た青空からすると、心配するようなものじゃないだろう。ここ2、3日の間じゃ上出来だ。

 6:25、仁宇布ファームイントント発。仁宇布中央部の方が空はやや薄暗いものの、構わずに仁宇布の交差点で道道49の下川方面へ。3日前に雨雲から逃げるように下って来たこの道、今朝は逆方向で僅かに登りとなっている。のんびり進んでゆく道ばたの茂みに、何か獣が潜んでいそうで、やや不気味でじれったい。
 松山湿原分岐から登り斜度がやや増える。ぐっと狭くなった森の谷底、道道49は途中折り返しなどせず、標高425mの峠へ向かって谷をひたすら進んでゆく。いまどき道道風に道幅は広いが、同じ谷間の景色は変化は少なく、ただでさえ深い森に特に早朝や夕方は飲み込まれそうな気がする峠道だ。
 7:10、美深松山峠通過。峠の向こうの森は木々が道に近づき、更に奥深い。何だか獣が道ばたに潜んでいるような妙な空気は、仁宇布側より濃厚だ。毎回必ず狐はどこかで登場するし、路上に猛禽が悠然と漂っていることも多かった。そして近年、路上に残っているミヤマクワガタだけじゃなくて道の脇に目が行くようになってみると、確かにべちゃっと大きな熊の糞が時々見受けられる。たまに(区間全体で数台遭遇)通る大型トラックが何とも心強い。通り過ぎてゆく度に「あ、あの五月蠅くてでかいのが通ってたら、熊も山の中に逃げてゆくだろう」と思えるのだ。とにかく峠を越えて下りに変わった道を、下りに乗じて一気に下ってしまう。
 しかし、峠を越えて雄武町に入ってから、空には明らかに明るいニュアンスが増え始めていた。時々青空すら見えている。

 下りきった上幌内で、道道60に三つ股合流。道道49はオホーツク沿岸の雄武へ下ってゆく。こちらは道道60を折り返し、下川へ向かう。谷底の幌内川を渡って幌内越峠への160m登りが始まると、暑さを感じ始めていることに気が付いた。やはり南下しているのである。その一方で登り途中で低い雲が近づいてきて、途中からその雲の中で雷が鳴り始めた。あまり深刻そうではなく、せいぜいチンピラみたいな雲のようだが、因縁を付けられる前に逃げる方がいい。
 7:30、幌内越峠通過。ピヤシリ林道が合流する峠の広場と「幌内越峠」と書かれている標識は、峠付近に続く2〜300mの平坦区間の中で少し離れた場所にある。つい広場のある方が峠だと思ってしまいがちではあるが、あるいは標識の方が本当の幌内越峠なのかもしれない。
 峠を越えて天気が変わるのか、幌内越峠の向こうの空はやや重たいものの、とりあえず雷雲からは何とか逃げ切れたようでもあった。ピヤシリ林道出口が見送ってくれたような気がして、何だか嬉しい。
2015/8/14 北海道Tour15#9 仁宇布→大村-2


 幌内越峠周辺の平坦区間から、たいしたことのない下りが本当に少しだけ続いた後、更に緩い下り基調程度の下りに移行。下川まで27kmでたった200mしか下らない超緩下りのこの区間でも、風さえ無ければ走行アシストには十分な下りだ。サンル牧場と森が断続する旧道区間をどんどん下ってしまう。
 旧道区間から新道区間へ入ると、道周囲の空間が多少拡がったり路盤が高くなったりで、道全体の雰囲気が変わるのが感じられる。下川まで全区間旧道だった頃のこの道の距離感覚をまだ覚えているので、特に幌内越峠からの下りでは「あ、ここから新道なのか」と、旧道が短くなったことを実感できる。一方で3日前と同じく、新道区間ができたことで確実に道の味わいが多彩になったこともよくわかる。道内でもなかなかの、いや、傑出した豪快コースになったこの道。それだけに、今回中頓別からずっと続く内陸コースとして、道道120も一緒に味わいたかった。つくづく心残りだ。

 新道区間に入ってから、低い雲が消えて空が再び明るくなりはじめていた。そしてサンル大橋では日差しが登場。近い将来ダム湖となって水没する下川方面谷間を見下ろすと、下川上空辺りの空は明らかに何となく青っぽい。雲はどんどん少なくなって、新道から下川への街を見下ろす下りでは、空全体が青っぽくなった。こうなると、日差しと照り返しのW攻撃で、辺りが一気にかなり暑くなってしまった。そういえばこのコース、いつも下川で急に暑くなって、改めて道北最北部から延々南下してきたことを実感するのである。

 9:25、下川セイコーマート着。まだ午前中、今日の宿の美瑛までまだまだ遠い一方で、明日を含めてももうコース上のセイコーマートは上富良野、幾寅だけだ。東神楽や美瑛にもセイコーマートは一応あるのだが、終着近くなので明日朝食の買い込み以外に立ち寄り意義を見い出しにくい。そして何より、Hotchefは多分この店が最後になる。今朝はファームイントントでたっぷり朝食を食べることができたので、まだ弁当を食べる必要は無い。しかしフライドチキンや厚揚げポテチなど、ネタには事欠かない。さらば夏のHotchef、今年もありがとう。

 9:40、下川発。道は道道101となって、糸魚峠へと再び登り返しが始まる。下川までの下り基調から一転、こんなに僅かな登り基調でペースががくっと落ちるのが我ながら情けない。そしてもう10時近く、1日の内で一番暑い時間帯に差し掛かりつつあり、一面開けた畑の中、路上の日差しと照り返しと湿気が堪える。この時間に下川の開けた谷間が続いてつらいのは毎度の事、もう珍しくもない現象だし、ここまで道北山中を朝の涼しい時間に通ってきたのだから、今この場所で暑いのは当たり前ではある。ひたすら耐えて、何とか人里南端の班渓から谷間の森の木陰が始まるのを待つしかない。今回は谷間の森に近づいた辺りで再び空を低い雲が覆い始め、たまらない暑さは一段落。低い雲は山奥方面が例によって妙に薄暗い嫌な雲だ。道道101の上では、雨にも暑さにもどちらにも転ばず、穏当に推移してほしい。
 里から森に入ってからが大変長い。密度の高い森に1本道が延々と続いて谷里鯀未辰討罎のは、よく考えると道道49、60や120に共通する道北内陸の特徴だ。

 糸魚峠に近づくと、再び山の向こうの空は明るくなり始めた。そして糸魚トンネルを抜けて下り始めると、何だか身体に当たる空気の温度がまた少し上がったような気がした。峠の峠たる所以だろう。どんどん気温が上がっている。何しろもう次に於鬼登峠を越えれば、旭川盆地なのだ。
2015/8/14 北海道Tour15#9 仁宇布→大村-3


 11:10十和里着。道道61との交差点を岩尾内湖方面へ。道道101は、十和里から岩尾内湖東岸までしばし道道61との重複区間となっている。
 上空そのものは比較的明るく、昨日までの道北北部とは根本的に違って空気全体が暑い。これから向かう岩尾内湖上空の雲は低く膨脹気味で、動きが比較的速いように見える。気温の観点からは有り難いように思われるものの、麓でこれだと、この先湖畔〜於鬼登峠までどこかで降られてもおかしくないように思える。毎回岩尾内湖周辺では、雨が降らない方が珍しいのだ。できれば雷には遭いたくない。
 ダムの例に漏れず、ダム直下から岩尾内ダムまでは一気登り。斜度は終始7%以上で道内基準では厳しく、ダムまで続く道がほぼ全部見えて視覚的にもつらい。同じ直登でもこういうつらさは今時のサンルダム新道区間とは明らかに違っている。あちらはずいぶん気が楽だ。
 ダム管理事務所から湖岸の湖岸へ進む間にも、3度アップダウンが待ち構えている。標高差にしたら最大でもたかだか50mだし、入り組んだ地形のため仕方無いのだとは思うが、予め把握していてもややしんどくげんなりする。ただ、外周道路のところどころで見渡す岩尾内湖の山深い佇まいは毎回厭きることが無く、更に高度の変化が眺めの変化にもなっていて、脚を止める口実に事欠かない。今日はその湖面が、雨のせいなのか何だかどんより濁った色になっている。

 岩尾内湖東では道道61が上紋峠へ分岐。道道101は湖岸の広葉樹林を過ぎ、緩斜面に拡がる茂志里の集落から於鬼登峠へ向かってゆく。もうここ数年道北・美瑛(または旭川)というパターンを続けているが、そのコースは朱鞠内湖・幌加内周り、こちらの下川・岩尾内湖周りの2系統である。どちらも距離・風景とも甲乙付けがたく、毎回かわりばんこに通っている。朱鞠内湖・幌加内には最初のハイライトとして「母子里(もしり)」という集落がある。個人的にも1980年代から思い出多い場所であり、ここを経由することが朱鞠内湖・幌加内周りを通る大きな理由のひとつでもある程の場所だ。そしてこちらの「茂志里」も、2009年に初めて通って、ひたすら伸びやかな風景に感動してしまった。大好きな集落がどちらのコースににもあって、両方とも音が「もしり」ということが、とても楽しく感じられる。「もしり」という名前自体は道内ではあまり珍しくないようであり、北海道らしい現象と言えるかもしれない。
 アップダウンが続いた岩尾内湖北岸まで日差しが続いていたが、岩尾内湖南岸へ回り込んでから空の雲は増え始め、茂志里では雲が低くかなり薄暗く、どちらかと言えば風雲急という雰囲気が漂い、一次は大粒の雨がぱらぱらっときて冷や汗をかかされた。仕方無い、さっきダムの下から見上げた雲を思い出すと、大雨に遭わずに済むことに有り難さを感じるべきだろう。

 実は、この谷間中央の川は天塩川。岩尾内湖は天塩川の人造湖であり、茂志里は天塩川最上流の集落なのだ。そして於鬼登峠への登り途中、天塩川は対岸の山間へと遡ってゆく。道北を様々な表情で流れる眺めた大河、天塩川の上流を見送って、感慨混じりのいい気分で旭川盆地に下れるのが、道北→仁宇布→於鬼登峠というコースの大きな魅力でもある。
 道の行く手、正面の斜面のど真ん中が於鬼登トンネルである。稜線から120m程度下のトンネルではあるが、急に切り立った斜面には、地形図に載っている旧道が茂みに完全に埋もれつつあるように眺められる。茂志里から120mしか登っていないとはいえ、やはりトンネル効果が実感される。
 12:50、於鬼登トンネル通過。茂志里で低い雲が押し寄せて一時真っ暗になった空が、登り途中雲が軽くなってまた明るくなり始めていた。天気は次第に良くなっているのだ。下り途中で呷られるような横風が吹いているのはもう毎度の事、一瞬通り雨に見舞われたものの、さくっと快調に下ってしまう。途中の登り返しももうわかっていれば驚きはしない。むしろここまで来ればもう愛別湖東岸は間近、粛々とギヤを下げて標高差40mを登って下るだけの話だ。
2015/8/14 北海道Tour15#9 仁宇布→大村-4


 愛別湖岸からは、進行方向が大まかに西向きに変わっている。なにげ無く北を見上げて気が付いた。北側には真っ黒な雲が拡がり始めていた。実はもの凄い雲が追っかけてきていたのだ。黒い雲はまだそれほど近くというわけではなく、落ちてくるまでまだ余裕はありそうな高さだが、あまりのんびりしているわけにはいかない。

 愛別ダムから谷間に降りて振り返ると、雲は更に大きく低くどす黒くなっていた。恐らくダム上の、ついさっきまでいた辺りに迫っている。速い。見える範囲の山姿はまだ霞んではいないので、その辺はまだ降り始めていないようだ。しかし、雨雲に追いつかれると大変な事態が待っていそうだ。幸い雲の速さの原因らしき強い追い風が吹いている。下り基調も味方だし愛別までもう10kmしかない、一気に下ってしまえ。
 旭川盆地から続く谷間だけあり、谷間に拡がる平地は一面田んぼである。近年北海道のお米は味で鳴らしている。餅の看板などもみられ、つい何か食べ物を探してしまう。時々振り返ると、雲は明らかにけっこうな勢いで前に進んでいるものの、その姿は次第に小さくなっていることがわかった。自転車の速度でさえ普通に進んでさえいれば、一応雲を引き離せているのだ。とりあえずひと安心。雨雲に追いつかれない分には、天気は時々日差しが出る程度の明るい曇りである。日差しが出ると辺りがかっと暑い。その度にもう旭川盆地手前まで下っていることと、今日ももうお昼過ぎであることを実感する。
 13:40、愛別着。愛別市街で店の前にバイク、自転車が停まっている蕎麦屋さんを発見。徒歩でお店に入ろうとする方に尋ねてみると、なかなかの有名店らしい。いつ昼食にしてもおかしくない時間だし、香り豊かな美味しい蕎麦を想像すると更に腹が減ってきた。しかし北側の空を見上げるにつけ、まだ安心するわけにはいかない。多分昼食中に雨雲に捕まってしまうだろう。まあここまで来たら輪行でも美瑛に着くけどね、などと思うものの、こちらはセブンイレブンで我慢。愛別にはセイコーマートが無いのだ。

 国道39と石狩川を渡って対岸へ。もう名実ともに旭川盆地である。
 小春トンネル、伊香牛の丘陵裾、将軍山と、GPSトラックから外れないように旭川盆地東部裏道ルートを辿ってゆく。小山に谷地の田んぼ、森と集落。北海道というより東北地方を思い出すような楽しい風景だ。以前はこの辺りで赤とんぼの大群に感動したこともあった。
 暑さでは日本有数の旭川盆地ながら、頭上の天気は一応明るい曇りで推移していて、その点では有り難い展開だ。しかし、振り返ると、さっきの雲が依然として勢力を拡げているのがわかる。今頃愛別ダムは大雨だろう。大丈夫、自転車の速度でさえ一応どんどん逃げることができていて、もう完全に安全圏にいる。このまま進んでさえいれば、あの雲については心配は無い。
 とはいえ、後方のみならず、盆地外周の山々も何だか黒い雲に覆われ始め、唐突に虹も見えている。虹は不吉の予兆と言うが、こうしてゲリラ豪雨に終われる毎日を過ごしていると、虹が決してファンシーなだけのものではないことがよくわかる。雨の前でも後でも、虹が見えるときは大体ろくな事がないのである。しかし前方には、雲が切れて日差しが天使の階段のように降りてきていた。そしてそれはこれから向かう美瑛方面だ。美瑛は希望が持てそうだ。

 14:40、当麻着。着というより、道の脇に見覚えの無い新しめのセイコーマートが建っている。しかもHotchef付きだ。朝の下川でHotchefにはもう出会えないかもしれないと思っていたので、大変有り難い。ここから先、美瑛方面にもHotchef付セイコーマートが無いわけじゃ無いが、美瑛町中を多少回り道する必要があるので、ここで明日の朝食にも補給食にも使えるクロワッサンを仕込んでおくことにした。そもそもお昼がまだなので、回鍋肉丼も食べてみた。なかなか美味しい。ここまで豚丼を物色したら回鍋肉丼だけ残っていた場合が多く、ここでも豚丼代わりとして選んだ回鍋肉丼が、思いの外美味しい。今後豚丼のバリエーションとして考えられないことも無い。
2015/8/14 北海道Tour15#9 仁宇布→大村-5


 15:10、当麻発。
 桜丘、東山と台地裾を抜けると、東神楽まで数km、平地の横断が続く。事前にこの区間では水田に何本も並行する道から、できるだけ途切れること無く連続していて可能な限り細い道を選んでいる。平地なので旭川盆地が遮る物無くよく見渡せる反面、景色の変化にはやや乏しい。その分細道の表情で、何とか東神楽まで保たせる区間であり、15時を過ぎ次第に赤くなってきた日差しを意識し始める。
 目新しい物を探し、辺りを見回しながら走っていると、旭川の市街地方面上空が真っ黒な雲に覆われているのがよく見えた。また、別の方向の結構近くに、変に雲みたいな、壁状の淀んだ霞みが見えた。あれがここ数日道内ニュースで見かける、旭川の強烈ゲリラ豪雨なのだと気が付いた。霞の不透明度で、雨の激しさがよく理解できた。

 東神楽を過ぎて旭川空港の台地に登り始める辺りで急に空がまっ暗に変わり、登り切ったところでぱらぱら大粒の雨が降ってきた。今日も遂に雨雲に捕まったのであった。
 雨は大粒ながら激しい降り方ではないが、南からも真っ黒な雲がかなり迫りつつある。もう少し雲が進んでくると、さっきのゲリラ豪雨の雰囲気から言ってかなりまずいと思われる。はらはらしながら更に美瑛の丘に登るまで、雲は急に進みを止めているようだった。しかし、道の加減で少し南に向かうだけで雨の量が増えた。少しでも南に向かったらいけないようで、首の皮一枚で土砂降りから逃れることができているのだった。

 結局、西神楽から美瑛の丘に登る手前で急に雨が止んだ。空の暗さは相変わらずだったが、路面まで乾いてしまい、しかも前方の美瑛の丘の上は多少空が明るい。最後の最後で逃げ切れたようだった。
 丘の上を効率良く登る道を辿り、大村まで向かう。夕方になって、美瑛の丘には今日も一騒ぎ終わったような静かな雰囲気が漂っている。或いはこちらの思い込みかもしれない。よく見ると、まだ路上に車は多い。所々の展望台では、相変わらず観光客が売店にうじゃうじゃしている。観光バスもあちこちに目立つ。しかしそれでも仁宇布から走ってきて、そして大雨から何とか逃げ切れて、しかも何とまだ17時前。安心感と共に広々とした美瑛の丘を眺めてのんびり走ることができ、とてもいい気分だ。

 17:10、大村「美瑛ポテトの丘YH」。
 走行距離は155km。美深峠・朱鞠内・幌加内経由都比べてこちらの方が峠が多いが、20kmぐらい距離が短いのだった。なるほど。まあ休憩込みで、今日もまずますのペースで走ることができた。
 屋根付き自転車置場はヘルパーさんの詰所?脇。荷物を下ろして自転車を入れたら、人間の受付を済ませて速攻でお風呂へ。
 明日の天気予報は何と美瑛、富良野市(麓郷)、南富良野で9時と15時が雨、6時と12時は曇り。地域中央部でこれだから、山間はもう少し確率が上がるだろう。ということは、明日はコースの大部分で雨。自転車行程としては無理しないなら、ここ大村で、今年の北海道は終わってしまうことになる。そんな殺生な。最終的には明日の天気で判断しようとは思うが。

 美瑛ポテトの丘YHの夕食は、毎回とても美味しく、ボリュームたっぷり。食事前のペアレントさんのスピーチとともに、毎回
楽しみにしている。食事だけではなく、内装とか宿全体の雰囲気が居心地が良い、いい宿なのだ。自分にとってこういう宿の居心地の良さと宿泊料金は、あまり関係がないものなのだと思う。
 ペアレントさんのスピーチは、主に夕食の説明と美瑛の説明を手短に5分程度。いわゆるミーティング的な機能が凝縮されているものと思われる。その説明の一番最後に、明日の天気の説明があった。
 やはり明日の予報は曇りのち雨、降水確率は午前中30%午後50%で最高27℃最低17℃。北海道は梅雨は無いと言われているが、実は10年に1度ぐらい長梅雨の年があり、今年はそれに当たってしまったとのこと。雨は明日まで明日までと言われながら、もう数日長引いているのは、ここまでの行程で眺めてきたとおり。さっき旭川盆地で見かけた、ゲリラ豪雨上空らしきただならぬ霞や、どんどん押し寄せてくる黒雲が思い出される。2015年の北海道が大変な年だったことを、今、ようやく理解できたのだった。

■■■2016/1/31
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
2015/8/15 北海道Tour#10 大村→美瑛

大村→(農道・町道他)美瑛 5km
ルートラボ>http://yahoo.jp/oQWjCQ

 夜が明けた。低い雲が垂れ込める曇りである。遠景は澄んでいるが、雲は決して薄くはない。何だかとろんとして、いかにも湿っていそうな灰色だ。そして天気予報は悪化している。富良野(麓郷)、南富良野で9時以降雨、降水確率60%。迷うこと無く今日の輪行が決定してしまった。

 荷物を積むために外へ出ると、何だか薄暗くて涼しい。今年の夏ツーリングが終わりつつある、美瑛駅に着いたら行程が終わってしまう、そんな寂しい気持ちにぴったりの天気だ。
 5:55、大村「美瑛ポテトの丘YH」発。走り始めると、美瑛の丘が拡がっている。遠景も比較的よく見える。毎回天気予報は日中晴れとか曇りでも、早朝霧に包まれていることは毎回にある。しかし雲が決定的に重い、ように見える。
 すぐに美瑛の町に降りてきた。途中新栄〜美馬牛方面への分岐で少し迷ったものの、改めて辺りを眺めると、丘の上の雲がどうしようもなく低く重い。迷わず、いや、少し迷ったが、やはり迷う余地は無く美瑛駅だ。

 6:10、美瑛駅着。
 大変あっけなく駅に着いてしまった。ここで今回の自転車行程が終わるのである。「終わったー」という気持ちはあるが、去年の終着地トマムで感じたようなすかっとした気分ではなく、何だか「まだ美瑛じゃないか、こんなところでこんな時間にこんな形でほんとに自転車を畳むのか」というニュアンスにまみれている。そんな状態だと、輪行も一杯時間が掛かってしまう。
 徒然と過ぎてゆく時間を持て余しつつ、今日の身の振り方について考察してみた。本来、麓郷・北落合訪問と並ぶ旅のもう一つの柱はグルメである。麓郷A-COOPのゆでとうきび、そして幾寅なんぷていのカレーである。どうせこのまま札幌に着いても、明るい内から飲んだくれるだけだろう。ならばせっかくだし、できる範囲でできることをしよう。時刻表を調べてみると、7:20の富良野行きに乗れば上手い具合に幾寅でお昼頃時間が取れ、しかも札幌へ行くのに新得周りの方が速いことがわかった。新得まで行くことができるのだ。麓郷は無理だが、これで行こう。

 7:20、美瑛発。
 普通列車に乗って美馬牛の丘を越え、富良野盆地へ降りてくると、何だか空が晴れてきた。上富良野でベベルイ基線方面を眺めてみる。山側の雲は低いものの、本幸辺りの上空は何だか雲が切れているようにも見える。しかしすぐ先の山肌には濃い色の雲が掛かっている。今年はああいう雲が危ないのだ。しかしよく考えると、普段の美瑛→上富良野→ベベルイ基線訪問時と同じような展開にも思える。今日の雲が少し雨雲っぽいというだけだ。
 富良野では乗り換えの間、駅蕎麦「圭子ちゃんの店」で立ち食い蕎麦を戴く。意外にも爽やかに晴れているが、山の向こうに濃いめの色の雲がしっとりたっぷり溜まっているのが見えた。富良野の先の山部でも、麓郷へ向かう谷間の山の間に雲が溜まっていて、麓郷の天気は大体想像が付いた。その先金山で辺りは晴れ始め、かなやま湖外周区間では記憶の中でも晴れている方に推移していった。これなら幾寅到着後、自転車を組み立ててもいいかもしれない。幾寅到着10時過ぎで、組立て完了11時。去年幾寅発は12時過ぎだったので、最後の最後で大逆転、上々の北落合訪問行程が出来上がる。
 しかし幾寅で下車すると、やはり山方面にかなり低い灰色の雲が溜まっているのだった。これだと北落合は無理っぽい。今日は朝からうじうじ悩んでいたが、そう間違いはない判断だったかもしれないことが納得できた。何事も納得できることが大切なのである。
 何はともあれ11時まで待ってから、おもむろに駅裏手のなんぷていへ。美味しいなんぷカレーを2杯頂けば、今回の旅程にもう悔いは無い。11:54の普通列車で新得へ。

 幾寅、落合から新得へ、根室本線は通称新狩勝峠を越えて十勝の北西減りへ降りてゆく。この間、何と幾寅を出て落合まで完全に日差しが消え、景色が薄暗く寒々しい雰囲気に変わり、新狩勝トンネルを抜けると雨が降っていた。上富良野から富良野、そして幾寅で眺めた雨雲は、決して伊達ではなかったことを、今確信できた。
 新得では折り返しに1時間20分。1983年、初渡道で目指したのがまず新得で、当時は駅寝3連泊で狩勝新線の列車の写真を撮りに来ていた。感慨に耽って過去の訪問を思い出していると、2002年に駅近くの店で熊鈴を買い、音が大きいので重宝していることを思い出した。小雨がぱらつく町で、果たして期待通りに予備の鈴を仕入れることができた。

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2016/9/19 北海道Tour15#11 忠類→晩成-1


忠類→(道道319・657)忠類古里→(村道・国道336他)晩成 17km
ルートラボ>http://yahoo.jp/xyTRUy

 雨の千歳空港到着は、5分早着の11:00。多くの場合飛行機が遅れて、更に荷物受け取りに予想外に時間が掛かり、乗り継ぎやその後に気を揉むパターンが多いので、何とも幸先がいい。しかし、千歳空港駅でスーパーおおぞらの指定券は取れなかった。仕方無い、5連休初日だしな。
 12:24、スーパーおおぞら5で雨の南千歳発。雨の中をやって来る283系は、今まで何度も見ているが、そして110km/hに減速されてしまったが、やはり見るからに細身で速そうでかっちょいい。今風に言えばシュッとしている、というところか。しかし、不安通りに自由席では座ることはできなかった。

 雨は追分を過ぎると激しくなり、新夕張から先は正に雨に煙るという言葉そのままの天気だった。狩勝峠の向こう、新得畜産試験場では更に霧っぽい。実は今回の計画時、十勝平野周辺で5日間と決めてから、新得出発の可能性を結構探っていた。というより、新得周辺にムラウシ温泉や菅野温泉とか、いくつか訪れたことが無い温泉があったのだ。結局、トムラウシ温泉は改修中で、菅野温泉は満室、他にもいろいろ調べた可能性が全て予約で一杯。秋だというのにどこもかしこもずいぶん混んでいるので、さすが5連休と驚かされたものだった。しかし今、この天気を前にして、怪我の功名ながら新得スタートにしないで良かったと、心から思う。ましてやトムラウシ温泉自走とか菅野温泉自走とか、きっとタクシー輪行記録の更新になったに違いない。

 新得では7分停車というアナウンスがあった。速達列車のスーパーおおぞらなのにね、ふーんと思っていたら、出発後「交換の普通列車が遅れて7分遅れで新得を出発、このままの遅れだと帯広は7分遅れとなる」旨のアナウンスがあった。なに!?それだと乗り継ぎを目論んでいた帯広発14:30広尾行きのバスが、1分速く出発してしまうではないか!非常事態である。

 110km/hに減速中のスーパーおおぞらは、それでも新得→帯広を爆走。多分制限速度内ではあるものの、久々に283系の熱い走りを味わうことができたように思う。結果として、たった30分弱の区間で2分も短縮してくれた。
 しかし所詮は2分短縮、帯広着は14:29。バス乗り継ぎは1分しか無い。頼む、特急接続ぐらい待っててくれー。多分待ってないと思うが。
 到着5分前にはドアの前でスタンバイ。ドアが開くと同時に輪行袋を掴んで階段を駆け下り、改札からコンコースをダッシュで通過(笑)。駅前広場のバスターミナルを見ると、黄色いバスが出発していくところだった。まさかあれじゃないだろう、と思って所定の11番線を探す。と、やはりバスの姿は無い。しまったー、あのバスだったんだ!得意のタクシーで追跡するしか無い!
 と思ったが、出発したバスがバスターミナルの外側の道をぐるっと回り、信号待ちで停まったのが見えた。今ダッシュでバスターミナルを横切って信号待ちの間にバスに追いついたら、ドアを開けてくれるだろうか。こういう場合、都バスだとまず停留所以外で停まってくれないのだが、とにかく全てはバスの前まで行って運ちゃんとアイコンタクトしないと始まらない。

 というわけで結局もうひとダッシュ。首の皮1枚で広尾行きバスに乗れた。計画時、新得スタートなら夏に輪行で足を延ばした駅前に降り立ち、1ヶ月前なのに何だかさっき来たばかりのような気がする、等と感じるところから始まるのだろうと思っていた。しかし、実際は感慨どころではなかっな。世の中なかなか上手くいかないものだ。などと、ようやく落ち着いて考えられるようになっていた。

 帯広、そしてバス乗車中すっと雨は上がっていたが、道の端には濡れた跡が残っていた。空はやや暗めだし、夜からは天気予報通り雨が降るのだろう。
2016/9/19 北海道Tour15#11 忠類→晩成-2


 16:03、忠類着。すぐ先の道の駅で降りようと思っていたが、ここで長時間停車するとのこと。輪行しやすそうな手頃な軒下も目に入ったので、ここで降りるとする。

 輪行作業を終えたところで、突如雨が降り始めた。しまった、自転車なんて組み立てるんじゃなかった。タクシー輪行しにくくなってしまったじゃないか。仕方無い、目の前のセイコーマートに寄って缶コーヒーとクロワッサンで気合いを入れ、レインジャケットを上下着込み、16:30、忠類発。セイコーマートに寄っている間に雨は本降りになっていたが、晩成「セキレイ館」まで20km足らず、のんびり走っても夕食までには着けるだろう。
 初めての秋の北海道ツーリングだ。走り始めると、やはり寒さを感じる。夏とは訳が違うことを実感する。と思いつつ脚を進めると、雨はどんどん強くなってしまった。もはや大雨と言っていい。

 忠類で標高95m、一度30m台まで下り、農道経由の丘陵横断で125mのちょい峠を越え、17:25、晩成「セキレイ館」着。17時発の晩成温泉ツアーには間に合わなかったが、温かいお風呂で一息着くことができた。
 気が付くとノートPCとGPSの通過を繋ぐminiUSBケーブルと、ブロワを忘れていた。ブロアなど普段は2つもフロントバッグに入れっぱなしのこともあるのに。更にGショックが、風呂の途中で浸水し、液晶が消えたと思ったら窓の中が曇り始めた(笑)。それっきり動かなくなった。横着して正規のカシオテクノで交換せず、地元時計店で電池交換したのがいけなかったかもしれない。自宅でテストしたときは大丈夫だと思ったのだが。
 まあしかし、いろいろあってもこの季節の5日間ツーリングは何と言っても初めてで、夏とは違うとても新鮮な気分だ。宿もこの5連休ずっと満員で、夏でもこういうことは珍しいらしい。同泊の方に伺うと、十勝で何か大きなイベントが重なっているとのこと。

 外気の気温は一桁台。かなり寒い。やはり東京の秋とはかなり違う。

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2015/9/20 北海道Tour15#12 晩成→晩成-1

晩成→(町道・道道881)生花→(国道336)長節→(道道912他)大津
→(国道336他)昆布刈石→(道道1038)共栄→(国道38他)農野牛
→(道道62)五位→(道道15)糠内→(農道・道道62他)駒畠
→(道道15)元忠類→(町道・農道他)晩成 141km
ルートラボ>http://yahoo.jp/2aFcyb

 早朝には雨が上がって、路面は早くも完全に乾いていた。天気予報では9時過ぎから終日道南〜十勝で晴れるらしい。ならばそのうち、地上2〜30mぐらいを覆い尽くしている霧みたいな雲の中がかっと明るくなって、一気に晴れるパターンかもしれない。
 今日はこのセキレイ館に連泊予定。晩成発着の十勝南東部一周コースを昨夜仕込んでおいた。そして今回の4泊5日行程全体を、朝の冷え込みと早まっている夕方への対策として夏みたいに日中一杯走らず、朝食はしっかり食べて夕方は宿に早めに着く計画にしている。毎年たった1ヶ月ちょっと前に比べ、8月と9月(しかも下旬)では驚く程朝と夕方の明るさと気温に差が出るのだ。
 セキレイ館の朝食は、ご自慢の自家製パン。セキレイ館の朝食は過去1度だけ、確か1999年の春にしか食べたことが無かった。その時にはまだ自家製パンは無かったと思う。今回初めて頂いてやはり大変美味しく、一杯食べてしまった。ここでしっかり朝食を食べることが、1日快調なサイクリングの源となるのである。
 朝食後頂いた「チャリダー特典」の補給用ゼリーは、何とセイコーマートのオリジナル商品だった。私は普段ゼリー系を使っていないから、こんな便利なものがセイコーマートで手に入るのを今まで知らなかった。このセイコーマートゼリー、この後各セイコーマートで仕入れることになった。

 8:25、晩成セキレイ館発。
 今日最初のテーマは、国道336の寄り道である。折角のセキレイ館連泊なので、国道336から海沿いへ分岐する、過去立ち寄れなかった何カ所かの道を訪れるのだ。
 まずは裏手の町道から道道881へ回り道する。未だ日差しは出ていないが、もう雲の切れ間に青空が見え始めていた。そして時々雲が薄くなるのか、うっすら影まで現れるぐらいに雲全体が明るくなったりし始めていた。今後晴れてくるだろうことは明らかに理解できた。
 町道らしく、車が少なくのんびりした道の周囲には、森、牧草地、牧場が丘陵に続く。途中で晩成温泉から登ってきた道道88と合流、生花苗沼に続く低地に降りて、海岸方面から生花の国道336を目指す。過去国道336でしか通過したことが無い生花周辺、谷間の低地に拡がる牧場の風景は、国道336から眺めていた集落まっただ中のもの。未済経路はやはり印象が新鮮だ。

 9:00、生花着。交差点手前の自販機でコーヒーを飲もうとして、財布忘れに気が付いた。
 どうしよう。この先財布無しでは1日走ることができない。財布を取りに戻ってここまで来ると1時間10分、いや、20分ぐらいかかるだろう。折角昨夜いろいろ考えて造った予定コースの全体が、単純に言って1時間20分延着になる。それでは17時の晩成温泉ツアーに遅れてしまうばかりか、18時半過ぎの夕食にすら間に合わない可能性すらある。
 財布を取りに行った後、またここまで戻り、途中を端折って何とか曲がりなりにも予定コースをこなすという手はある。いや、それだとせっかくいろいろ見所を考えて作ったコースの大部分がパーだ。
 何かを我慢しなければならない。そして最低限旅にお金は必要だ。自販機で何か飲むのだってセイコーマートで昼食を食べるのだって。
 と思ったところで気が付いた。解決方法がある。4月中旬にMAPでキャリアごと変更した私の新スマホでは、モバイルSuicaが使える。そしてセイコーマートでの支払いはモバイルSuicaが使えるのだ。どうせ今日のコース上には、セイコーマートぐらいしか昼食ポイントは無い。ボトルの水を自販機で給水できないことだけは心配といえば心配だが、この爽やかな気温と今日の標高差の少ないコースを考えれば、あまり差し迫って給水が必要になるとは思えない。最悪どこかで水を頂けば済むことでもある。
 というわけで、スマホを出して即セイコーマートの位置を確認。電話してみると、モバイルSuicaで全く問題無く支払いできるようだ。よく考えたら、どうせお金があっても、そもそも自販機そのものを見つけるのが一苦労だろう。そしてバッグの中には昨日買ったクロワッサンに、さっき宿で頂いたゼリーもある。これで一体何が不足なのだ。

■■■2016/3/5
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2015/9/20 北海道Tour15#12 晩成→晩成-2


 9:20、生花発。
 国道336は軽いアップダウンと共に森の中を抜けてゆく。低地は牧草地と湿地帯で、国道旧道跡が茂みの中に消失しかけながらもまだ見受けられる。以前はあんな細道が延々と丘陵に続き、最後に渡し船で十勝川を越え、豊頃へ向かっていたのだ。現在の国道336は流石の国道、登り下りが緩く、特に下りを惰性で走れる距離が長くて、経済走行しやすい。
 途中で面白いように一気に雲が切れて辺りが明るくなり、青空が拡がった。天気が一瞬で晴れに変わったのである。空の大部分を占めている真っ青な青空に、これで今日は1日安心だと確信できた。

 10:00、湧洞通過。国道336はここで内陸方面へ向かう道道318、海岸の湧洞沼方面へ向かう道道1051と交差している。湧洞沼への道道1051は、沼を回り込んでから生花からの道と沼のくびれを挟んでつながっておらず、ピストン往復で10km以上。国道336では海岸方面への最大の寄り道ポイントなので、今日のテーマには合っているのだが、やはりボリュームが纏まりすぎている。この後の行程を考えて、結局割愛せざるを得ないのが残念だ。毎回立ち寄りたいと思ってはいるこの道、立ち寄るにはそれなり以上の余裕が必要そうだ。
 湧洞の先には、国道336の最高地点がある。最高とはいえせいぜい標高120m程度。少しまとまった直登気味の登りの後、周囲には記憶通りの牧草地、そして拡がる森の丘陵を眺めることができた。牧草地の脇に脚を停めて、気が付いた。しつこく五月蠅いあのゴマフアブが、全くいないのだ。そう言えばこれだけ日差しが当たっているとギーギー鳴き始めるエゾゼミもいない。日差しは何だか汗ばむように厳しいもののやはり9月、僅か1ヶ月前とは決定的に違うと思わされた。

 長生で道道912へ分岐。茂みのような林の中の向こうから、まずは長生湖が現れた。その先は太平洋、湖の奥や海上らしき辺りが薄い霧で霞んでいる。なかなか野性味溢れる風景に脚が停まる。長生湖の向こうにも、とぼとぼと海岸沿いに道は続いている。どうせあまり先までいかないことは地図でわかっているものの、太平洋と長生湖岸、その中に進んでゆく1本道の寂しげな佇まいには、心魅かれるものがある。
 長生湖の先、大津への海岸沿いでは波打ち際に道が続く。昨日の低気圧がまだ残っているのか波がやや高く、道の内陸側までしぶきが飛んでくる程だ。車が所々に停まっていて、釣り竿らしきものがうじゃうじゃ立っている。
 その先の大津は小さな漁村だった。国道336沿道の森と荒野の印象からは意外な賑わいに、やっぱりこの地域にも人が住んでいるのだ、と楽しくなった。集落にはラーメン屋もあるらしい。セキレイ館では海鮮ラーメンを勧められていたが、さすがにモバイルSuicaは使えないだろうし、今日は天気がいい。この後脚を停めるべき景色がかならず現れる。先を急ごう。

 ダートかもしれないと覚悟していた十勝川の土手は、走りやすい舗装道路だった。確か1999年に新十勝大橋から豊頃へ向かった時に、途中からだったか土手の道がダートに替わって、ずいぶんつらい思いをしたような印象があったのだ。
 十勝川に横たわるように掛かる新十勝大橋を渡ると、国道336に三つ叉分岐が登場。3方向の全てが国道336という名前の道であり、今日はこのまま太平洋沿岸方面へ向かう。もう一方は内陸の新吉野方面、国道38へのやや短い接続路だ。
 国道336の太平洋沿岸区間は、通称昆布狩石区間と呼ばれ、かつて岸壁上のダートで有名だった。昆布刈石というのは海岸の地名である。2001年に訪れた時は夕方で小雨の中、霧の中に続くしつこいアップダウンに難儀させられた。隣には時々工事中の新道が現れていて、それ以来なかなか再訪する機会がない間に、ダートが全部舗装新道に切り替わったと聞いている。さっきの新十勝大橋だって、上流は豊頃まで橋は無く、そして河口側にももう橋は無い。1980年代にこの橋ができて、全国的に有名だった国道336の渡し船区間が道に切り替わったのだ。2016年現在、それら秘境の迫力は薄れたものの、一度かつての面影を追って再訪したかった、本日二つ目のテーマである。

 十勝川河口の平野部、しばし畑から畑に道が続いた後、渡る川の名前は浦幌十勝川。浦幌十勝川、という大河に地名をくっつけた名前に、今は高い堤防に囲まれてゆったり流れる十勝川が、かつては河口の低地に見境無く溢れる暴れ川だったのかもしれない、等と想像してしまう。今のところは、まぶしい日差しで舗装路の照り返しが暑いほど。極上のサイクリング日和だ。

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2015/9/20 北海道Tour15#12 晩成→晩成-3


 十勝部の集落の先から、突如国道が直登で台地に乗り上げ始めるのが見えた。こういう風景に1990年代の私は多いにびびったものだったが、実際にはたかだか標高差40〜60m程度である場合が多く、今では標高差だけ把握して大らかな気持ちでのんびり粛々と脚を進めるだけだ。直登登りの途中では、海岸方面へ細道が分岐していた。かつてダート区間に入り込んだのも、こんな感じの分岐だったのを思い出した。いや、もう少し台地上に登ってからだったかもしれない。
 台地上には、さっき大津辺りでも見られた、海上の霧が押し寄せている。空は晴れているのに、うっすら霧っぽく、遠景の見通しが悪い。久々の昆布刈石海岸を前に、むしろ程良くミステリアスな雰囲気が漂っている。

 かつて国道336だったダートは、未だ健在だった。ごく普通の国道336の隣、岸壁上の荒れ地に元のダートは続いていた。けっこうな細道でアップダウンがしつっこいのも、再訪してみて実感させられた。途中、まるで消失しかけているように、道が茂みに中で細くなる箇所もあった。ところどころで砂利は深く、不連続に厳しい斜度のせいもあって空転、早々に押しが入る。
 茂みを進んでゆくと茂みは深く高くなり、少し不安になった。一度入り込んでしまった旧道のダートと現在の国道336は、付かず離れずの位置で並行しつつ、なかなか連絡箇所が現れてくれない。すぐ近くに走りやすそうな舗装路があるのに全然前に進まない状況に、さすがにじれったくなり始めた。ちょうど上手い具合にその辺りで道幅が再び拡がって、砂利が安定し始めた。これぐらいがかつての面影に合っている。

 道が台地から下り始めた。この先道が谷間の川を渡って再び台地に登り返した後、海岸沿いまで下り、その先厚内まで続くのはわかっている。新道はこの先旧道から大きく分岐して内陸へ向かうので、今回は未済経路の新道から道道1038で霧止峠へ。
 霧止峠はたかだか標高100mちょっとの峠だ。そういう印象よりも、森の中の峠道は鬱蒼と思いの外山深く、堂々たる雰囲気が漂っている。標高が低くても峠らしさが漂う峠だ。
 峠から下ると、牧草地と畑が低山の山裾沿いに続く、十勝外れの平地だ。いつの間にか風が向かい風気味に吹き始めていた。この先しばらく北上して、糠内の丘陵でコースの方向が南向きに変わるまで、多分この向かい風は続くのだろう。日差しもいつの間にか正面方向から、そして結構厳しくなっている。雲の日影が有り難い程だ。風と暑さに煽られ、意識はやや薄れ気味である。

 12:20、共栄で道道1038は唐突に国道38に合流。国道から逸れて十勝川沿いの畑へ少し回り道する予定だったが、さっき昆布狩石のダートで意外に時間を食っていたので、そのまま国道を行くことにした。予定というより根拠の無い山勘ではあったものの、豊頃のセイコーマートに12時には着けると思っていた。累積距離は現在70km。9時20分に晩成から10kmの生花を出発したので、3時間強後の進行としては適切だし、時間と共に総距離140kmの残りが順調に少なくなるだけなのだが、気持ちとしてとりあえず焦っていたのだ。しかし今にしてみると、何もそんなに焦る必要も無かったように思う。
 12:40、豊頃セイコーマート着。到着してみて、ここは1999年、吹き飛ばされそうなもの凄い強風の中辿り着いたセイコーマートであることを思い出した。風に音を立ててばたつく周囲の看板に恐れを感じ、糠平まで輪行を決めたのだった。今日は向かい風に悩まされているものの、至って平和である。
 順調に脚を進めるために、今日はここで補給しないと、この先モバイルSuicaが他では使えない。おにぎりに水を抱えてからHotchefへ向かうと、豚丼は既に売り切れだった。豚丼発祥の地、十勝のセイコーマートらしく「お勧め 豚丼」の張り紙まで貼ってあるのに。今日の所は在庫が一杯のカツ丼を仕入れておく。まあカツ丼だって美味しくて、豚肉たっぷりの人気商品なのだ。

 13:10、豊頃発。
 十勝川を渡り、茂岩の外れで牛首別川、そして農野牛川の谷間へ。しばし低山に挟まれた谷間の畑の道を遡る。木陰の全く無い路上が、厳しい日差しに向かい風基調と午後のけだるさが加わり、くらくらになるほど暑い。秋なのにこんなに暑さに悩まされるとは。途中地図交換で立ち止まると、腕に汗が浮いているのにはびっくりした。これだと、多分根釧台地の夏より暑いだろう。しかし夏なら、この辺りは軽く32、3℃ぐらいの気温にはなるとは思う。

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2015/9/20 北海道Tour15#12 晩成→晩成-4


 緩い登り基調の谷間を進むうちに、畑を囲む低山の谷間が狭くなり、やがて登り基調が始まった。最後は丘陵を乗り上げる小さな峠である。標高たかだか130m未満と馬鹿にしていたら、奥まで登らずに直前できりきりっと斜度を上げるタイプの坂道が登場。暑さもあって、短い直登がなかなかしんどい。こういうパターンは、以前通った、だいぶ南の道道210とよく似ている。

 登りは厳しかったのに、向こう側ではあまり下らない。しかしこれから十勝南西部の台地の南下が始まる。そして駒畠でまた標高190m以上まで登り返す運命なので、ここであまり無駄に下りたくない。
 五位で道道15に合流。コースの方向が南向きに変わった途端、風向きは待望の追い風に変わった。拡がる畑の道は緩登りだというのに、嘘みたいに楽ちん楽ちん、我ながら別人のように基本ペースが上がる。
 糠内から栄橋は対岸の町道を経由。栄橋から先も町道である。畑や森の中、のんびりと枯れて静かな雰囲気の道が続く。そろそろ再び30m程登り返しているはずだが、何故か殆ど登りが感じられない。
 駒里への登りは標高差90m。ルートラボでの計画時から把握していた、今日最大級の登りだ。実際に目の前に現れた坂道は、木立の中のやや閉鎖的な直登だった。登ってみれば6%基準のごく普通の登りであり、ゆっくりそろそろと登っていけば、時間と共に終わるという程度の登りである。

 台地上に畑が拡がった。今日3つ目のテーマ、駒里の台地である。台地上に適度な広さの視界が拡がり、様々な種類の畑、点在するポプラ並木や農家、トラクターなど適度な要素が点在する。外側が落ち込む高台独特の開放感と静けさが、自分の周囲全体を取り囲み、十勝でも印象的な場所の一つだと思う。
 もう15時。畑、木々の緑が、そろそろ傾いて赤みを帯びた日差しに照らされて鮮やかだ。真っ青な青空の雲も真昼に比べてもう遠くにしか無い。コースもそろそろ終盤で、最高の風景の中を走れている。夏がずっと天気が悪かっただけに、とても嬉しいツーリングになっている。

 オアシス的Aコープが建つ、駒里の五差路で道道15に合流。その少し南、標高197mの台地南端で、夢見るような駒里の台地は終わりとなる。畑終端の森に入った途端、道道15がいきなり谷間の森へ下り始めた。木陰では気温が急に下がり、肌寒くて仕方無い。2004年にこの道を通った時は忠類からの北上で、台地上の駒里まで森の中の道が長く、登り切ったてっぺんで突然拡がった駒里がとても新鮮な印象だったのだ。今日、逆方向からこの道を下っても、下りに任せているのに狭い谷底の森の道がとても長く感じられる。

 忠類のすぐ手前、元忠類で道道15から分岐、昨日大雨の中通った道の1本北の道へ。多分風景の傾向は同じだと思うのだが、今日は晴れの夕方だ。横方向から赤い夕陽に照らされた畑や牧草地の緑が輝くように鮮やかで、影が長くなって青みを帯び、風景全体のコントラストが高くなっている。奥には丘陵や日高山脈まで、青い濃淡のシルエットが、遠景に消えてゆく。のんびり眺める夕方の風景が、日が傾くにつれ、次第に穏やかに、薄暗くなり始めている。この時間で既に夕暮れが始まっているのだ。でもまだぎりぎり15時台。昨日も通った晩成手前のちょい峠越えまであと少し、セキレイ館の晩成温泉出発には余裕で到着できるだろう。最高の風景の中、安心のんびり、そして1日走った充実。こういうサイクリングがしたくて、また北海道に来たのである。

 16:20、晩成セキレイ館着。宿手前の農道では正面に夕陽が出ていて、最高のアングルの自転車写真が撮れた。この写真は2016年の年賀状写真となった。
 17:00からは、予定通りセキレイ館の晩成温泉ツアー。私を含めて3人が参加した。海岸を眺めて入るお風呂は、記憶通りに素晴らしい。落ち着いてゆっくり入れるちょうどいい温度お湯だし、何と言っても湯冷ましに外にも出て、広々と拡がる太平洋を眺めることもできる。以前5月の夜に訪問したときは、確か寒くて仕方なかった。今日も昼よりは気温は下がっているものの、お風呂の合間に涼むにはなかなかいい程度の気温である。
 風呂上がりには宿の車の回収時刻まで食堂へ。いかにも温浴施設併設の食堂らしく気軽な雰囲気、それにしちゃメニューが豊富で充実している。すぐ近くの中札内の地鶏唐揚げももちろんあるし、その他にも盛りだくさんだ。宿の夕食が待ち構えてなかったら、是非とも何か食べたいところだった。ここは生ビールとソフトで我慢しておく。そのソフトがまた濃厚で大変美味しいのであった。

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北海道Tour15#13 2015/9/21 晩成→鹿追-1


晩成→(国道336)美成→(町道)芽武→(道道55)大樹
→(国道236・道道622・1022)尾田→(道道55)中札内
→(農道)上清川町→(町道他)御影→(道道718他)清水大橋
→(道道75)熊牛→(国道274)鹿追 139km
ルートラボ>http://yahoo.jp/nxW8Is

 夜明けから既に激晴れだ。明るく、しかし深みのある空の青が、雲や霧の存在を全く感じさせない。
 二度寝して起きると6時過ぎ。日差しが明るく影はくっきり。メリハリのある景色が外へおいでよと誘っているようで、ライダーの皆さんも、早朝から起き出して前庭に出て忙しそうだ。とほ宿に魅せられ始めた30年ぐらい前、こういう風景をよく眺めたような気がする。
 再び外に出た7時過ぎには、もう寒さを感じない。こういうのを夏も含めてずっと待っていたのだ。思えば夏の北海道で、こういう爽やかな朝に久しく出会えていない気がする。今年の夏が全滅に近い状態だったことが大きな理由だが、昨日走ってつくづく思ったのは、きりっと涼しい朝に暑さを感じる昼、こういう爽やかなサイクリングこそが、私が夏の北海道に求めているイメージなのだ。もしかしたら温暖化で北海道の夏は以前と比べて高温多湿へと推移し、秋の今ぐらいがかつての夏に近くなっているのかもしれない、等と思ってしまった。いや、昔から十勝の夏は異常なほど暑いと評判だったし、昨日は確かに暑かったが、やはり夏ほど暑くはない。
 朝食は昨日と同じく自家製パンとスープがとても美味しい。出発前に、ツーリストでもある女将さんと2ショットを撮っていただく。更に女将さんとピンクの愛車を撮らせていただいた。今朝こそは8時に出発するぞと思ってはいたものの、出発前にやっておくことは何かと多い。いや、急ぐまい。どうせ140km。気持ちの余裕が新鮮な気分につながっている。

 8:30、セキレイ館発。晩成の丘を降り、国道336から逸れて海岸沿いの浜大樹へ。昨日と同じく、国道336の海側寄り道シリーズである。
 浜大樹訪問は大当たりだった。海岸までの道には、いかにも海岸近くらしいちょっと寂しいような雰囲気が漂っているのに、海岸の漁村に意外な賑わいがあるのは、昨日の大津気に似ている。国道沿いにあまり人が住んでいない国道336周辺の、港町の特徴かもしれない。あるいはナウマン国道として拡幅され、丘陵の森を突き進む新しい国道の表情が、この土地本来の風景とは違うのかもしれない。
 集落を抜けた外れから、道は海岸沿いのダートとなる。再び内陸へ向かう分岐までほんの短い区間のこの道が、また素晴らしかった。一直線の細道の正面に日高の山々を遠望、南側は海岸の丘から見渡す太平洋。今日は頭上が真っ青な空なので、シンプルな景色がよりシンプルに映える。すぐ先で南側の丘が低くなり、砂浜が見え始めた。誰もいない海と山と空、一直線の砂利道。これ程単純な風景は、最近北海道でもあまり見かけないような気がする。そして、昨日の昆布狩石にそういうイメージを求めていたのに、何となく片すかしを食ったような気になっていたことに、今気が付いた。ダートばかりだとすぐうんざりするだろうとは思うのだが。

 道がすぐ先で行き止まりなのはわかっているので、次の分岐から大樹へ向かう。森、牧草地、畑、牧場が次々登場する北海道のいい田舎道が続く。真っ青な空に眩しい日差し、涼しい木陰とともに、左から正面にかけて日高山脈の青いシルエットがよく見え、気分が盛り上がる。
 10:05、大樹着。セイコーマートで少し立ち寄りとする。セキレイ館で朝食をたっぷり頂いたので、あまり何か食べる気は無い。この後しばらく商店はほとんど無いというのに、中札内の道の駅や八千代牧場のレストランと、グルメポイントには事欠かないのだ。
北海道Tour15#13 2015/9/21 晩成→鹿追-2


 大樹から今日の宿がある十勝北部の鹿追へは、十勝西部縦断道を使う。「十勝西部縦断道」はワタクシの私的な呼称で、その実態は大樹から十勝清水手前までの裏道系山裾ルートである。以前は縦断道道を謳っていたが、近年訪問の度に道道の区間が減りつつあり、農道や町道村道の区間の方が多くなっている。通しで通ったことも実はあまり無く、部分的に使う機会が多い。今回は2015バージョンとして、これまで大樹近くで使っていた道道55ではなく、歴舟川の山側の道道622へ足を向けてみた。
 大樹を出発すると、日高山脈のシルエットがぐっと近づいてきた。道が山裾に移行しつつあるのだ。地形も道の線形も、十勝ではごく普通の極端な平面の一直線ではなく、山裾に拡がる平地に、山の凸部を結ぶように適度に屈曲しながら続いてゆく。周囲の牧草地、畑など、根釧台地辺りより人里っぽく親しみやすく、北海道の里ともいうべき風景だ。
 道が歴舟川沿いの山裾の森に入り、神居大橋で歴舟側を渡って河岸段丘を登り、対岸の尾田に向かうところで思い直し、もう少し山側を回り道してみた。どうせ時間の余裕はあるのだ。引き返して尾田橋を渡り、再び歴舟川の山側の、幸徳から相川の高台へ向かう。

 歴舟側の渓谷に2つ橋が掛かる光景は、北海道では余り見かけないように思う。さっきまで里っぽい風駅のまっただ中だったのに、何だか山深さすら感じさせる渓谷だ。森の中から集落へ、河岸段丘の登り返しで最高200m弱まで登らされる。しかしこちらを回らなくても、尾田の合流地点だって標高160強。どっちにしてもそろそろそれなりに登り始めるのである、今日の行程としては。
 そして登りのご褒美として、高く眩しい日差しの下、日高山脈の遠い山並みへ牧草地が遡ってゆく風景を、ちらっと拝むことができた。

 相川橋で再び歴舟川を渡り、尾田で道道55に合流。そのまま北上を続ける。
 開けた見晴らしからは想像しにくいぐらいに脚が重い。尾田から登りが始まっているのだ。最終的には、段丘の上の更別村村営牧場でまさかの標高300m超となるのだ。しかし周囲の平地は、自分が疲れてきているだと心配なぐらいに、平地まっただ中の風景だ。
 昨日も思ったが、更別村は意外なほど標高が高い場所にある。300mといえば、北海道ではもう立派な高原と言っていい。十勝は広大な平野という印象があるが、その実態は事程左様に河岸段丘が多い盆地である。その中でも更別村は高原なのだ。

 村営牧場を過ぎると、麓の上札内まで一目散の下りとなる。上札内もそのまま通過、更に9km先の中札内へ、僅かな下りに乗じて一気に進む。上札内から先、道はそれまでの山裾らしく起伏や風景の変化に富む地形から、一気にどことなく人里っぽい平野部まっただ中の風景となってきている。高原麓の中札内が周辺の高原より栄えているのは、世の習わしだ。

 12:10、道の駅「なかさつない」着。まあ普通の道の駅ぐらいの敷地一杯に、車が一杯に停まっている。道の駅でこれほど混雑している状態に、過去あまり記憶が無い。特別なイベントなどではなさそうだ。やはりこの連休中、どこもかしこももの凄い人出である。
 中札内と言えば様々な農産物が有名である。特に地鶏は道内でも有名であり、カントリーサインが鶏になっているし、昨日訪れた晩成温泉や遠く道東の中標津の町営温泉でも、「中札内地鶏」の唐揚げが出されている。最近はじゃがいも「インカの目覚め」が有名だ。断面が黄色くて、ジャガイモの香りとまるでサツマイモのような甘さを両立させている凄いジャガイモなのだ。
 私はと言えば、2008年に食べて以来忘れられなかったカレーを食べなければならない。「サルバトール」のチキンカレー、お店の場所もメニューも記憶と違わないので、多分以前と同じお店とカレーだろう。味も記憶が蘇るもので、混雑のため注文と出てくるまでにやや時間は掛かったものの、確かにとても美味しい。そして量がけっこう多く、他に何か食べようと思っていたのに、カレー1杯で満足してしまった。折角の訪問なので何か食べておきたいという気持ちだけが先走り、何となく地元物産店をぶらつくと、新じゃがが目に入った。前述の中札内名産、「インカの目覚め」が新じゃがで安い。母への土産に送っておいた。
北海道Tour15#13 2015/9/21 晩成→鹿追-3


 12:50、中札内発。
 中札内から上美生へは、縦断道も中盤といえる区間である。まずは広域農道で札内川、戸蔦別川を渡って西北へ。山裾からやや離れた平野の1本道なのだが、防風林のグリッドを次に進む度に新たな視界が開け、穏やかながらとても魅力的な風景が眺められる道だ。以前2008年に通った時に、八千代YH到着を目前になかなか前に進まなくて困った程だ。十勝でもこれほど平野の拡がりと山々の遠望のバランスがいい道は少ないと思う。そして今日は、絶好の青空で風景が更に際立っている。
 上清川町から広域農道を離れ、早々に山裾へ移動。直進すると、まだまだ景色がいい道がしばらく続くのはわかっている。しかし、山裾方面経由だと単純に回り道になってしまうので、今後この辺りを通る時には広域農道を使うケースが多いだろう。今日は山裾の道へ向かうチャンスである。
 清川の有名な「ジンギスカン白樺」もここから数kmだ。しかし目指す方向とは完全に逆だ。そしてそもそもさっきの道の駅の混雑ぶりからして、まあまともな事態は想定されない。十勝も奥の方の縁だというのに、意外にこの辺りには食事所が多い。

 戸蔦からは再び山裾、戸蔦川岸辺の雑木林へ。再び上八千代の台地上に出て、森、牧草地、畑の中を八千代へ、再び標高300m手前まで登り基調となる。開けた風景の中に山々が近づき、今日のコースの中を象徴するような魅力的な風景が続く。中札内までの道より農道やらローカル道道やらがのんびり推移し続けるこの辺り。大きな山裾の開けた緩斜面を登る経路なので、視覚的にあまり坂に見えない。しかし確実に登りで脚が重い。視覚と実態の乖離は、頭で登りだとわかっていても、「こ、こんなはずでは」と気が急いてしまう。
 そして八千代と言えば、私的にはこのコースで中札内の道の駅と並んで楽しみな八千代牧場のレストラン「カウベルハウス」が建っている。更に谷地YHの昼に営業している食堂も、機会があれば絶対に寄っておきたい。どこも美味しくてボリューム満点だ。つまりこのコース、大樹の先は羽帯や芽室に下るまでコンビニ皆無なのに、中札内・八千代辺りで食堂が充実しているのだ。
 しかし今の私のコンディションとしては、さっきのカレーで腹が十分すぎるほど満ちてしまっていて、これらのお店に寄る理由が全く無くなってしまっていた。

 13:50、八千代牧場通過。カウベルハウス、そして八千代YHも今日はそのまま通過である。十勝ももっと訪問せねば。そしてこの辺りで食事を複数箇所で楽しむために、道の選択も含めてもっと計画を寝る必要がある。八千代YHで泊まれると良かったのだが、生憎今回は満員で予約できなかった。
 戸蔦以降、北岩内、八千代町、北八千代と、連続していない道の乗り換えと分岐、そして一貫して牧草地と森、小さな川を渡る一直線アップダウンが続いていた。特に雄馬橋から先、川渡りの登り返しが増え、上美生、太陽では40〜80mの段丘越えが登場。開けた風景の中に現れるこれらの下り登りは、過去訪問でのややしんどい記憶とともに把握はしていて、「あ、ここでこれが登場するのか」という具合に、次々と降りかかる火の粉のように粛々とやり過ごし、登り切った台地上で再び拡がる風景を味わう区間である。
 それにしても、大樹からもうかなり走ってきている。今日のように北上しても、十勝清水や御影辺りから南下しても、十勝西部の山裾としては中程にすぎないこの辺り。今回も十勝の広さをつくづく思い知っている。
北海道Tour15#13 2015/9/21 晩成→鹿追-4


 空にはやや低めの、しかし勢いよく流れてゆく雲が増え始めていた。日差しが厳しい今日のような日だと、やや涼しくなってむしろ都合がいい。そして低度な存在感の雲が、光と風景に変化を付けてくれる。一方、戸蔦辺りから道は次第に山裾へ近づき、山の表面がはっきり見えていた。風景の拡がりの中、迫り来る聳え立つ山々の姿は進むと共に形を変え、景色と空間感覚を刻一刻と変える。そして時々、道ばたの木々の隙間から下手の平野方面を一望できた。

 15時を過ぎた辺りから、そろそろ風が涼しくなり始めた。いくら日差しが厳しくても、こういうところは夏と根本的に違う。そして傾き始めた午後の日差しで、緑、特に草原の明るい緑が輝くように鮮やかで、風景全体が赤味を帯び始めていた。
 剣山の円山牧場手前で、今回は十勝西部縦断道は終了。畑、防風林のグリッドの間を、羽帯へ向かう。途中から登り基調が続いただけあって、羽帯へは一方的な下りが続く。しかし、同じ十勝西縁から中央へ向かう下りでも、八千代から帯広への下りに比べると、下っても下っても道はのんびりしているところがやはり羽帯だ。「けっこう下ったけど、前方の交通量の多い道はいくらなんでもまだ国道38じゃないよなあ」と思っていたら、気が付いたら前方に踏切が登場。考えるまでも無く根室本線だ。やはり前方の道は国道38だったのだ。
 15:45、御影着
 更に段丘を降りて、十勝川を渡る。この先は鹿追手前まで河岸段丘を越えねばならない。羽帯でも相変わらず十勝の田舎らしくのんびりしていた周囲の風景が、十勝川を越えて道道75に合流すると、一気に普通の幹線道道っぽくなってしまった。

 谷間の平地を少し遡ってから、屈足で国道274へ。鹿追の段丘を越えたらもう鹿追だ。たかだか標高差100mのもうひと登りだが、慣れない国道の交通量のせいもあり、そろそろ辺りが薄暗くなり始めているせいもあり、もうあと10kmと思っていると気が急くのか、自分で自分がじれったい。しかし怠けネタには敏感で、坂の途中道ばたの展望台を見つけてつい立ち寄ってしまう。屈足の開けた谷間と、日高山脈〜狩勝の山々の青い影が、夕焼け空の下に拡がっていた。

 鹿追の丘陵では、もう景色が真っ赤っかで影が青い。16時以降の暮れ方は想像以上、夕方の早さはやはり9月のサイクリングである。そして風がかなり肌寒い。鹿追への下りで身体が冷え、脚を回して何とかバランスさせる。
 それにしてもよく晴れて、ツーリングとして、終始完璧に近い風景の中を走れた1日だった。

 17:00、鹿追「福生館」着。
 町中の商人宿みたいな宿である。お客さん同士の会話が賑やかだったセキレイ館とはまた違う雰囲気で、こちらはこちらで休めるし、気楽だし、隣には酒屋もある。こういうのもまた旅の楽しさである。
 そのセキレイ館で、一昨日お客さんに教わった十勝北部のコースを地図で探してみると、すぐに見つかった。セキレイ館では地図をじっくり眺める余裕が無かったのだ。宛が無かった3日目の午前中の目玉が決定し、早速ルートラボで検討、程良いボリュームの十勝北部ポタコースが完成した。小型PCの面目躍如である。

■■■2016/3/5
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour15#14 2015/9/22-1

鹿追→(道道416・町道9号)北笹川→(道道771)南大牧→(町道西9線)北誉→(道道133他)駒場→(道道337)共進→(町道21号・22号他)瓜幕→(国道274・道道593)岩松→(道道718・町道)新内→(国道38)ルーマ→(町道・農道)北落合→(農道・町道)幾寅→(国道38)西達布 141km
ルートラボ>http://yahoo.jp/GcoC_e

 夏と違って、ツーリング中でも4:00に起きる必要は無い。しかし、5時前に起きて、辺りはやや薄暗い。霧が掛かっているようだ。そしてかなり肌寒い。昨日まで2泊したセキレイ館は海岸沿い、ここ鹿追は内陸で狩勝の山々が近いからかもしれない。
 朝食は6時からというのも、6時には車のお客さんが朝食を食べずに殆ど出発してしまっていたのも、いかにも町の宿らしい。決して居心地の悪い宿ではないが、お客さんも短期間で工程をこなすのに必死なのだろう。自転車と事情はあまり変わらないのかもしれない。私にとっては、走り始める前のこの時間、朝食を食べておけるのが大変有り難い。10時頃に何か食べなくてもお昼まで体力が保つので、朝食のお陰で1日の行動全体が変わるとすら言えるほどなのだ。

 6:45、鹿追福生館発。朝食は食べたものの、まずは補給食を仕入れに町の南のセイコーマートへ。続いて給水のために再び町中心部の役所・公園施設を蛇口を探してうろつくと、オートキャンプ場でも何でもない広めの駐車場がオートキャンプの車でぎっしり一杯であることがわかった。やはりけっこうな数の人々が、この連休中十勝に繰り出しているのである。昨日の鹿追福生館だってごく普通の町の宿なのに、かなり探して何とかやっと確保できたぐらいなのだ。そして、ここには以前確実に訪れたことがあるのを思い出した。2008年、計画ミスで大幅な下方修正を余儀なくされた日だ。朝9時台にしてそろそろ「なんだかやばそうだなあ」と思い始めていた、そんな不安な印象と共に、この景色には記憶がある。もちろん鹿追自体には何の問題も責任も無く、今は実に平和で静かな秋晴れの朝である。もうああいういい加減な計画だけはしないように心がけねば、と思いながら給水を完了。なんだかんだで出発までに25分もかかってしまっていた。

 7:10、鹿追発。まずは道道416で町中から北上。町外れで同じ直線上のまま、道は道道から町道9号に替わる。交通量皆無の静かな細道沿いには、畑や牧草地、牧場が続く。空気は爽やかを通り越してやや冷え込んでいて、時々指を首筋で温めなければならない程だ。防風林の西側に沿いなので、道は朝日でまともに木陰の中で、レッグウォーマーが有り難い。空は真っ青、木陰や防風林の影が青く見えるほど。こういうのんびりした道が人里にある安心感が、十勝のいいところだとつくづく思う。
 こういう道はのんびり進みたいものだ。今もけっこうのろのろだ。しかしのんびりというより、緩い登り基調のため前に進みづらいのだ。開けた場所なので視覚的には全く上り勾配が感じられず、ペースが全然上がらないのに身体に負荷を感じていて、俺はかなり疲れているのだなどと焦ってしまう。落ち着け、「自分のペースでのんびり進みゃあいいんですよ、自転車なんて」といつも語ってるじゃないか。一昨日、セキレイ館でのライダーとの会話を思い出せ。

 笹川北で自衛隊鹿追駐屯地の脇を過ぎ、北向きから東向きに曲がって町道北14号へ。
 ここまで森の影の中を走ってきたのから一転して、真正面の太陽が大変眩しい。そして標高200mの鹿追から笹川北では290mまで登ってきていたのが、一転して下り基調に変わった。笹川まであんなにのろのろでしか進めなかったのに打って変わって快調ペース、毎度ながら大変に現金である。
 道の両側には、十勝を象徴するような風景が続いていた。北側は十勝外周の山々と山裾へ続く牧草地に畑、南側は拡がって下ってゆく牧草地と畑、そしてこれらをグリッドで区切る防風林。相変わらず真っ青な空の真っ正面に日差しが眩しく、風景全体が鮮やかで、何が現れてもばっちり決まる。

 町道北14は厚生で道道771に合流。名前が替わっても相変わらず同じ直線上の道ながら、いつの間にか、というより厚生から、風景に見覚えがあるような気がしていた。そういえばコーヒー休憩した厚生にも、なんだか以前立ち寄ったかもしれない。消去法で検討してみると、朝の鹿追同様2008年の可能性が高い。確か鹿追から厚生まで今日の経路と四角形の左上二辺と右下二辺の関係で別ルート、厚生から先は確かに今通っている道だ。思えば2008年の経路は、一昨日昨日のコースとも被っている。アドリブで選びやすい道を選んでいると、こういうことになるのだろう。
北海道Tour15#14 2015/9/22-2


 この先向かう町道中音更9は、セキレイ館で同宿の方に教えていただいた道だ。
「一直線で他の道から完全に独立して南下する細道がある。車でそこを走るのが大好き。他にちょっとない、道なので、近くに行ったら絶対行ってみてくれ」
とのこと、昨夜眺めた地図には、確かに十勝種畜牧場の中、周囲のグリッドに並行して南下する道が描かれていた。この道で広大な十勝種畜牧場を南下し、帰りは少し東から、やはり十勝種畜牧場の中を南東から北西へ、斜めにたすき掛けに遡る道を使えば、とりあえず一筆書きはできあがる。特に斜めの道は、十勝を区切る直行グリッドのど真ん中に描かれた線をかつて意識したことが無く、とても興味をそそられていた。しかし手持ちの地図はやや古く、往路の町道中音更9号はともかく、斜めの道は現地での現状確認が必須だと思われた。まあその程度に細道として描かれていたのだった。
 案の状、道道771終盤の交差部分で偵察すると、その道は畑の向こうで茂みの中へ完全に入り込んでいた。そして、どう考えても茂みの先へ道が続いているようには見えない。昨夜は町道中音更9号線とセットでかなり良い道を発見したと思っていたが、こりゃあ諦めた方がいい。
 町道中音更9でも、序盤で前述のたすき掛けの道との交差がある。こちらも、やはり入り込むのはためらわれる程度に、難儀しそうなかなりあやしめの泥道っぽい道が茂みの中へ消えていた。恐らく牧場の中で道が消失しながら断続しているのかもしれない。

 町道中音更9は、道道771から北誉で道道133に突き当たるまで8km、標高差は100m。川を渡るアップダウンの他は、比較的安定した下り基調で推移する。地図では牧場のまっただ中なのだが実態はしばらく牧場の低木林、道の両側はフェンスになっていて、ほぼ外界と隔絶されている。時々横断する道は全てオーバークロスであり、途中から周囲の森が牧草地に替わるものの両側のフェンスはそのままで、つまりひたすら家畜改良センター十勝牧場の中だけをまっしぐらに南下する道なのだ。
 間違い無く、他では見かけない雰囲気だし、静かな道だ。帯広から意外に近くにこんな道があるのだ、と何だか得した気分になった。一昨日昨日の太平洋沿岸の漁村や昨日の山裾区間など、まだまだ未済経路には新たな発見がある。後半には帯広18kmの標識も登場、帯広から輪行する自分をちょっとだけ想像するが、こんなに天気がいい快適な日に輪行する選択肢は無い。それにまだ朝8:30だ。

 最後はフェンスが途切れ、周囲がようやく開放的になってひと安心。台地の端の牧草地を下り、北誉で道道133に合流。
 道道133の周囲には、十勝種畜牧場の建物や畜舎が目立つ。ここまで車が殆ど来ない道を来たためか、この辺りの道道にしちゃ大型車が多いように思う。あるいは鹿追方面から帯広への幹線道道なのかもしれない。
 折り返し地点の駒場で十勝種畜牧場の入口が登場。一直線に続く白樺の並木道には「独立行政法人 家畜改良センター十勝牧場」と掲げられている。そうか、独立行政法人なんだな。地形図にはこういうことは描かれていない。前述の斜めの道は、ここから牧場へ入り込まないと通れない。しかし入口から中は関係者以外立入禁止のため、当初の予定コースは最初からあり得なかったことになる。或いは近年口蹄疫で牧場のセキュリティが上がるまで、通れば通れる道だったのかもしれない。
 それはそれとして、この並木道はツーリングマップルに載っている。確か以前も訪れたことがある。「美林」という小さな看板が立っている通り、白樺並木が高く優しく道の上に梢を延ばしていて、意外に他では見ることができない素敵な雰囲気だ。帯広近くの意外な名所だと思う。私のような中年男性でもつい脚を止めて見入ってしまうし、私が訪れている10分ぐらいの間、車から降りてただ外から並木を眺めてゆく観光客が絶えない。ざわつく木の葉を眺めていると、並木の木立が語りかけてくれるような気がする。そして周囲は変われど、昔からこの道の風景はこうだったのかな、などと想像させてくれる。そんなことを想像するのは、今は通れない道でコースを計画してしまったためかもしれない。
北海道Tour15#14 2015/9/22-3

 帰りのコースが直角二等辺三角形の長辺から短辺2辺に延びてしまった。粛々と進まねば、と出発すると、後輪がスローパンク気味である。9:05、目に付いた駒場小学校でチェック、確かにスローパンクだった。
 たとえチューブ交換でも、だらだら作業したり、ついでに給水、補給食等食べたりして時間がどんどん過ぎてしまう。その間、やや受動的に今後の予定について考えてみた。ここ駒場は標高115m。道の駅がある瓜幕は標高325mなので、200mずっと緩登りである。登りであればがくっとペースが落ちるのは毎度の事、行程距離の伸びと相乗して見込み行程からの更に遅延が増えてしまう。要するに、余裕綽々のつもりだったのが、想定内ながら意外に余裕が無くなってきたのだ。しかし何ができるということは無く、先も長いので無理無く進めるペースで着実に進むしか無い。
 とりあえずこの先、家畜改良センター十勝牧場を大回りで迂回するには、北回りと南回りが考えられる。そしてより風景の良さそうなのは、より山裾に近づいて走る北回りだろう。

 9:30、駒場発。道道337で北上を始める。流石に音更、鹿追から通ってきたどの道より交通量は増えていて、案の状僅かに登り基調、更に向かい風も感じられ始めた。頭では理解していても、思うように動けないストレスと焦りで、気持ちが疲れてしまう。そしてこの道、過去2回通ったことがあり、その時に「次は別の道を選ぼう」と考えていたことも思い出した。焦っても無駄、地道に続けても結局は目論見違いの既済経路、何だか報われない気分で一杯だ。
 そして今日もそろそろ10時前。日影が無い路上は朝からのかんかん照りですっかり空気が熱せられ、結構汗が出ている。まあこれが夏なら多分くらくらする程暑く、秋だからこの程度で済んでいるのだろうとも思う。

 東中音更で町道21へ。やっと西へ向かい始めることができる。
 町道21は、朝の道道771より1本だけ山寄りの道。場所的にはかなり近いにも拘わらず、しばらく道道771で感動的だった十勝山裾の雰囲気は薄い。どちらかといえば十勝中央部そのものの風景は、然別湖方面の山々がまだ遠いためかもしれない。
 西大牧で町道21が西11線に突き当たって終了するので、もう1本北の22へスライドしてみた。この辺りから北側の風景に、然別湖方面の山々が俄然存在感を表し始めた。ただ、北側に山裾の風景、南側に下手へ下る緩斜面の両方を眺めることができた町道14に対し、こちらはどちらを向いても山裾台地の景色であり、景色自体は十分感動的だが、変化にはやや乏しいように思われた。あるいは、更に強くなっていた向かい風と登り基調で、多少意識が薄れていたかもしれない。

 11:10、道の駅うりまく着。道の駅としてはややこぢんまりしたスケール感の小さな建物に乗馬コース、ここにも確か以前来たことがあるのを思い出した。小さな道の駅だというのに、そしてこの辺の交通量の印象にしちゃあけっこう混んでいる。やはりこの連休、十勝の人出が多いことをここでも実感。軽食コーナーは小さくても、サイクリング中の補給食程度には不自由しない。ソフト、唐揚げ、馬蹄型ソーセージを、やや風が強い外のテラスで集中的にいただいておく。

 11:30、道の駅うりまく発。
 いよいよ十勝も縁の十勝川段丘部だ。やや掘りが深く分節的な地形は距離感の掴みにくさに直結し、アップダウンと共に気持ち的にはややしんどい区間だ。
 しかしこの道を通りたい理由は、やはり変化のある地形と風景の移り変わりだ。国道274から道道593へ乗り換えて、その後上幌内の段丘へ、標高370mまで登る間に、姿を現し始める北側の谷間には、牧草地や狩勝の山々がダイナミックに展開する。そして次は十勝川の谷底、標高230mの岩松へ急降下。標高差140mとはいえ、大きく落ち込んだ谷底への下りは、昨日今日ずっと走ってきた十勝の平地とは明らかに異質のもの。十勝エリアもそろそろお別れなのだ。
 12:00、岩松着。谷底から少し南下、屈足の台地からまた標高320m上佐幌の台地を越え、13:00、新内で国道38合流。やっと新得の谷間、狩勝峠越えだ。つくづく十勝は段丘ばっかりである。まあ景色がいいので、毎回後悔はしていないのだが。
北海道Tour15#14 2015/9/22-4

 まだ標高230m。狩勝峠の登り始めという位置付けか、「1合目」の看板がある。確か10合目で峠だったか。狩勝峠は標高650m弱、それ程の標高じゃないだろうと思っていると、僅か標高差40mちょっとで次の看板が現れていた。
 SLホテルの敷地を過ぎた辺りから、道は次第に離陸し始め、次第に周囲のサホロの山々の姿が近づいてくる。正面から周囲に立ち上がる斜面が大きく、道が通っているのは山肌であり狭い谷底ではない。大きな平野に面しているわけではないのに、空間感覚が広々としていることが、狩勝峠の大きな特徴なのだと気が付いた。
 狩勝の山々に近づいたせいか、空には雲がやや増え始めていたものの、相変わらずの晴れ基調。思えば近年、狩勝峠で天気が良かった記憶が無い。途中所々で丘陵を見下ろす度、今日は本来の狩勝峠の風景を楽しめていると思う。途中から連続するスノーシェッドの向こうにも、ずっと周辺の山々や谷の見晴らしが続いていた。大型トラックや観光バスは通るものの、狩勝峠、これはこれでなかなかいいではないか。だだっ広い道幅に国道38でさえなければ、もっと印象のいい峠なのかもしれない。

 13:55、狩勝峠着。標高644m。
 ここまでずっと昼食を食べずに来れているのは、峠のあくつ天空館で蕎麦でも食べたい気分になっていたからだ。しかし、この5連休に何とあくつ天空館はお休みである。幾寅まで補給食でごまかすしか無い。
 天気がいいので、久々に道端の元展望台の場所や、少しだけ上に設けられた現展望台からの拡がりを眺めてみた。近年の訪問では、雨は降っていなくても、雲に包まれてこの眺めが全く見えないことも多かったのだ。
 果たして眼下には、1986年、初めてこの峠で眺めた景色の印性を思い出させてくれる風景が拡がっていた。丘陵の森や畜産試験場が、その向こうで十勝川の段丘らしい谷へと続いてゆく。そしてその彼方に十勝の平野が、霞の中で空の下端と曖昧に混じり合っていた。狩勝峠では十勝平野を見下ろすという印象があったが、こうして改めて鹿追から丘と谷間をいくつか越えてから振り返ると、これはあくまでサホロ高原とか狩勝高原とか呼ばれる丘陵であり、十勝の風景は更に遠いことが実によくわかった。

 下りの途中、というより下り始めて峠のすぐ下、道が西へ大きく方向を変えるカーブから眺められるはずの、旧狩勝信号場跡も楽しみにしていた。というより、最近は年々風化しているような印象があったのだ。
 結論から言えば旧信号場はちゃんと残っていて、除雪車展開広場から落ち着いて眺めることができた。山裾の間に設けられた平場には元より、峠部分を抜けるトンネルの痕跡までちゃんと残っている。何やら小さい立て札が立っていて、茂みが定期的に刈り込まれているようだ。その刈り込みが、元線路跡の散策道っぽい筋に続いている。恐らく何らかの遺構として、今後も手入れされてゆくのだろう。信号場の痕跡そのものは初めて眺めた1986年より風化しているものの、これなら私が生きている間は痕跡が消失するようなことは無いだろうと思われた。

 14:30、ルーマ着。時間も天気も全く問題無い。迷わず北落合方面へ向かう。
 ルーマから農免農道に抜ける細道沿いのログハウスの前を通ったところで、「手打ち蕎麦」の幟が目に入った。さっき狩勝峠で蕎麦にありつけなかった残念な気分が、無意識のうちに蕎麦の文字を自動スキャンしていたと言ってもいい。それぐらいに、気が付いたら自転車を停め、ややひっそりしたログハウスの中に入っていた。
 毎回前は通っても、何となく宿泊営業してるのかな〜ぐらいにしか眺めていなかったこのログハウスでは、ちゃんと手打ち蕎麦を食べることができた。しかも北落合産の蕎麦粉らしい。もりそばで頂くその手打ち蕎麦は、太めで短め、濃い素朴な味と香りが一杯で、北落合の感動的に美しい畑が思い出された。そして、やはり幾寅まで引っ張るには、かなり腹が減っていたことにも気付かされた。これから狩勝峠より標高が高い北落合を前に、北落合の神様か何かのお引き合いかもしれない。有り難いことだ。

 14:55、ルーマ発。
 農免農道北落合線を6km。道には意外にも車が時々通る。夏の訪問時とあまり変わらないどころか、むしろ賑やかな気すらする。その大部分はラフティングの人々であり、それっぽい小屋も近年更に増えた気がする。しかし周囲の風景からは、進行中の秋が感じられる。まだ夏の面影が伺えた十勝の低地と違い、さすがにこの山間、9月下旬にして谷間の木々は色づいている。夏より空気が澄んでいるのか、大雪も正面にはっきり見える。9月下旬といえば、あの山々にいつ初雪の知らせがあってもおかしくない時期である。
北海道Tour15#14 2015/9/22-5


 秋の北落合は始めてだ。そして今日の天気は過去訪問中最高である。
 初訪問の1998年以来、定期的に訪れることができる幸せに感謝しつつ、まずは最初の畑へ。前回立入禁止だった畑は、多少事情が緩和されたのか、畦道に歩いて入れるようにはなっていた。有り難い、畑に踏み込まないように気を付けながら、少し写真を撮らせていただく。今日もそろそろ夕方、真っ青な空の明るさが少し落ち着き始め、風景全体が赤みを帯び始めていた。

 16:05、北落合680m地点着。
 今回も遂にこの場所に来ることができた。夏の最終日、優柔不断なゲリラ豪雨に断念せざるを得なかった北落合なので、尚更嬉しい。
 到着して自転車を停めたところで、それまで出ていた日差しがすぐ雲に隠れてしまった。狩勝山間だけあり、雲が頭上近くで動きが速い。出そうで出ない太陽が再び雲から出るまで20分以上、その間に太陽は次第に低くなり、辺りの風景はますます真っ赤っかに推移していた。もうすっかり肌寒い。ここから幾寅へ下って日没、三の山峠を越えて西達布へ降りてちょうど真っ暗になるという潮時かもしれない。

 16:35、北落合680m地点発。
 行きに同じ1本道で一杯立ち止まったとは言え、下りは下りでまた別の風景が拡がる。北落合中央手前、とある脇道の私的ポイントで写真を撮っていると、軽トラの方に声を掛けられた。幸い「みだりに写真を撮らないでくれ」というというお叱りではなかったようで、北落合が好きで来ている旨答えると、喜んで下さった。少し安心したのみならず、「一番上までは行った?」「あそこ北落合で一番好きなんです」「あそこからうちの牧草地が見えるんですよ、いい景色でしょう」などという会話も。北落合最後の最後で、また北落合の神様にご褒美を戴けたようで、何だか嬉しい気分で北落合を後にすることができた。

 17:00、幾寅着。
 セイコーマートで明日の朝食代わりのパンとゼリーを仕入れ、そのまま次第に薄暗くなっている国道38へ。夕暮れで急いでいても、やはり三の山峠では大樹海に脚が停まる。
 しかしもう秋の釣瓶落とし、日が沈むと暗くなるのは恐ろしく速い。17:45、西達布「ダラムサラ−」着。明るいうちの最後の時間帯に、何とか西達布に着くことができた。

 「ダラムサラ−」は、昔ながらの木造の商人宿をそのままとほ宿に使っている。今まで訪れる機会がなかったが、実は麓郷から西達布へ抜けるときに毎回前を通っていて興味津々だった。なかなか静かで北海道の旅を感じさせてくれる、いい宿だ。
 十勝から少し外に出ただけで、宿の予約にも一苦労だった十勝の混雑が嘘のように、今日の夕食は私一人だ。本当は私が寝てから着く素泊まり客がいたらしいが、全く記憶に無い。一人で食べる夕食は、本格的トマトカレーだ。トマトの酸味だけではなく出汁が十分活かされていて、昔レシピを見て自分で造っていた頃のカレーを思い出す、大変美味い夕食だった。

■■■2016/3/6
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour15#15 2015/9/23 西達布→富良野-1


西達布→(町道老節布基線)老節布→(道道253)布礼別
→(町道ベベルイ基線)東中→(道道298・253)富良野 46km
ルートラボ>http://yahoo.jp/OsRikW

 5時過ぎ。布団を抜け出して窓の外をうかがっても、まだ外は薄暗い。そして何だか肌寒く、濃霧が漂っているようだ。最低限レッグウォーマーは必要だろう。

 今日は行程最終日。自転車行程、空港までの移動、飛行機を全部こなして、明日からまた出勤だ。
 自転車行程としては、麓郷、ベベルイ基線を経由して富良野まで。毎度の富良野周辺私的名所巡りである。帰りの飛行機が14:05千歳空港発なので、10:00発の根室本線に乗る必要があり、9時半ぐらいには富良野に着きたい。過去訪問を参考に考えると、6時に出れば余裕を持って行動できる。幸い天気は晴れ予報、降水確率0%。目論見通りの最高のお膳立てが仕上がっている。あとは全体の時間が3時間半しか無いので、バランスの良い進行を心がけつつ、濃厚なコース上に次々に現れる絶景を楽しんでいけばいい。心配事など何も無い。夏にはっきりしない天気に毎日振り回されていたのがまるで嘘のようであり、何だか物足りなくすらある。

 6:00、西達布ダラムサラー発。
 まだ指先が冷えるほど気温は低く、視界200m程の結構な霧が畑と丘を包んでいる。予報は間違い無く晴れであり、早くも空には青いニュアンスが伺える。晴天の放射冷却現象による霧なら、もう少し陽が出たら一気にどこかに行ってしまうだろう。今のところは、丘に拡がる老節布の畑、丘が眺められないのがやや残念だ。しかし視界ゼロというわけでもなく、霧に包まれた西達布から老節布への私的名所は、それはそれで普段と違う趣で見応えがある。
 ただ気温は低い。老節布の農協の交差点で手を温め、缶コーヒーで暖を採っていると、トラックが通り過ぎていった。今日も1日の暮らしが始まっているのだ。

 平沢へ登ると、俄然霧が晴れ始めた。丘の頂部近くだけ霧が晴れ始めているようだった。そして毎度ワンパターンの定点アングルで写真を撮っている間、丘の先、集落側の霧がどんどん晴れてゆき、辺りが朝日に照らされ始めた。見下ろす集落から向こうの森には、まだ霧の濃淡が残っている。一方手前の畑は日差しに照らされて、すっかり爽やかな朝の空気が漂っている。
 平沢から麓郷へは60mちょいの峠を越える。毎回麓郷から登ると標高差130m、10時過ぎのかんかん照りの暑さが堪えるこの峠も、こちらから登りは少なく、今日は空気が森の冷気でひんやりしている。朝日と共に登りで身体が温まって有り難いぐらいだ。

 7:10、麓郷着。見覚えがある麓郷の交差点に、全く普段の賑わいが無い。まだ7時なので当たり前だ。老節布、平沢と、これだけしょっちゅう脚を停めているというのに7時に麓郷に着けるという、西達布発の威力がまざまざと現れている。辺りに人気が全く無くても、麓郷に来て条件反射的にAコープでトウキビか何か食べていきたい気分になってしまっているのが、我ながら可笑しい。もちろんどうしようも無く、気持ちの行き場は無い。ここはAコープでコーヒーだけ飲んで出発することにした。今回は今回の旅があるのだ。
 Aコープに寄っているほんの少しの間に、地表近くにまだ多少漂っていた雲は、更に消えつつあった。間近に大麓山が大きく姿を現し、光一杯の青空の中で青いシルエットになっている。きりっと冷え込んだ、秋晴れの朝だ。

 布礼別からはベベルイ基線へ。標高差80mの登り開始だ。とはいえ、こんなもんでもう本日最後の纏まった登りである。
 緩斜面に拡がる畑の中の道では、視覚的には標高差がほとんど感じられない。わかっていても何だか身体全体が妙に重く、違和感がある。今日は余裕の行程で、風景を見落とさず身体を冷やさず、正面の大麓山、富良野岳を眺めて進んでいけばいいのだ。いつも逆方向から下るこの道、こんなに山々を眺めて登ることも余り無かったように思う。
 とりあえず登りきって北上区間に入ってしまえば、ほぼ等高線沿いに一直線の道が続くだけ。この素敵な道でここまでの登りに比べて快調すぎるペースが勿体無い。日差しが登って明るい高いカラマツの森から、西側の下手には東富丘の畑がよく見下ろせる。形のいい前富良野岳も、いよいよ間近に全貌を現している。
北海道Tour15#15 2015/9/23 西達布→富良野-2


 8:00、本幸着。
 雲一つない真っ青な空、澄んだ朝の空気。初めての秋ツーリングで、ほぼベストに近いだろう状態で本幸を訪れることができている。つくづく6時に出発して良かった。そして、私的定位置の道路端表示ポールが、今年は見事に復活していた。自転車入りの写真を撮る時自転車を立てかけるのに何かと都合が良く、毎回使っていたのに、一昨年45に折れ曲がり、去年は撤去されていたのだ。多分奔落の目的、積雪時の道路幅表示のために必要とされ、復元されたのだろうとは思う。またこの場所で2年ぶりの旧知に会えたような気がしていた。

 それにしても本幸で、いや、麓郷から本幸までこれだけ晴れまくったのは初めてだ。東側の形の良い旭岳、前富良野岳、奥の富良野岳もよく見える。そし北側に見下ろす丘の更に向こう、富良野盆地が見えているのにも気が付いた。毎回眺めているのかもしれないが、この場所でこれから下る富良野盆地を意識したのは、今回が初めてのような気がする。天気が良くて空気が澄んでいるためか、或いはいつも富良野盆地から登ってきてこの風景を眺めることが多いからかもしれない。

 あまりに眺めがいいので、もう少し下手の道にも立ち寄ってから、8:20、本幸発。
 あとはもう東中に下ってしまうだけだ。富良野盆地に飛び込むような下りの眺めをたっぷり楽しみ、一気に東中に着陸。東中から先は、洞野盆地東側山裾の1本道。静かな田舎道だが、もう本当に普通に富良野盆地の幹線生活道である。のんびりてれてれ流していると、1990年台のいつか、いや、1986年の初北海道ツーリングでこの道を通っているかもしれない気がしてきたが、もはやそんなことは帰って調べればいい。
 最後に富良野市街のセイコーマートで、Hotchefに何も無かったのが残念だった。これから普通列車で滝川に向かうというのに。
 9:15、富良野着。いい5日間だった。ここ何年か、夏に充たされなかったものが完全に解消されたように思う。

■■■2016/3/6
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