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FCYCLEコミュの北海道Tour14

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コミュ内全体

 今年も行って参ります。

8/7(木) 釧路空港→標茶・開陽台→開陽
8/8(金) 開陽→根釧台地202km→開陽
8/9(土) 開陽→浜中・塘路→札友内
8/10(日) 札友内→津別峠→チミケップ湖
8/11(月) チミケップ湖→遠軽・滝上→西興部
8/12(火) 西興部→下川・歌登→浜頓別
8/13(水) 浜頓別→宗谷丘陵・抜海→天塩
8/14(木) 天塩→知駒峠・歌登→仁宇布
8/15(金) 仁宇布→母子里・幌加内→美瑛
8/16(土) 美瑛→麓郷・北落合→新得orトマム

 出発1週間前にしてほぼ全部確定したコースは、毎度ワンパターンの道東→オホーツク→道北→道央。今年は宿泊場所を変えたりして、何とか当社比目新しさを狙いました。中には1泊\2万5千のチミケップホテルという数年悩んだ大技(笑)も。そういうものに頼らなければならないほどマンネリ化も極まっているということかもしれません。
 現地はかなり暑いようですが、去年ほどおかしな天気ではなさそうなので、無人の道?を一杯楽しんでこようと思います。

■■■2014/7/29
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

コメント(57)

2014/8/7 北海道Tour14#2-3 民宿地平線の根釧台地ベスト202km

 9:20上風連発。休憩している間に路面はすっかり乾いていた。辺りも薄暗い雨間近の雰囲気から、やや明るい陽差しが天気の回復傾向を示している。出発から4時間、西円〜茶内原野の根釧台地ハイライトを前に、大変いい傾向でいい気分である。
 道は上風連から道道121となった。牧草地を別海町から浜中町へ南下するこの道は、道東でというより北海道の中でも大好きで、私的に根釧台地の主要幹線として過去何度も通っている。というより、道東で何度でも走りたい道の一つなのだ。民宿地平線ベストコースへの入選も納得だ。
 上風連の少し南では、道道121と道道813が分岐する。ベストコースも私的幹線も、道道813へ向かう方が正規ルートであり、今日も迷うこと無く道道813で東円朱別へ。
 広々とした台地上、道は時々緩く曲がりながら、牧草地の中を西に進んでゆく。やや緩やかな土地の起伏は、さっきまでの新酪農道のダイナミックな風景より伸びやかな広がりを感じさせ、それでいて適度な起伏が変化に富む景色を見せてくれる。絶景目白押しの別海町内でも、心に残る区間だ。

 西円の道道928の分岐手前から、道道813は西南への長大一直線区間に移行する。小刻みなアップダウンとともに、丘の向こうへ、更にその次の丘の先へと、どこまでもひたすら直線道路が続く。茶内原野の地名とともに、この根釧台地の印象を代表するほどの強烈な風景だ。ベスト202kmコースとしては、道道928の分岐から先、別寒辺牛湿原の手前まで「適当なところまで」行って帰ってくることになっている。適当なところまでというのはコースの含蓄を感じさせる表現だが、別寒辺牛の手前に確か知床山脈や雌阿寒岳まで展望が開ける場所があったはず。その辺りのことを指しているのだろう、きっと。

 西円にはJA浜中西円取扱所の小さな建物がある。取扱所とは基本的に牛乳関係なのだとは思うが、ここに小さな売店が併設されていて、毎回この道を通るとき、立ち寄るのを楽しみにしている。極端に人口密度が少ないこの道、尚更珍しい商店が、何故よりによってこんな牧草地のど真ん中にあるのか。有り難さや楽しさより不思議な気すらする。そんな有難みで、ここではつい缶コーヒー以上の休憩にすることが多い。今は帰りにもこの道を通る予定なので、その時に立ち寄るとしてまだ先へ。まずは折り返し地点を目指そう。

 西円〜茶内原野のアップダウンが終わると、道が大きくカーブを描き始め、高知で浜中町立高知小学校の脇を通過。この道沿いの小さな小学校はやはり物珍しく有り難く、水をいただいたこともあった。すぐ先の牧草地の真ん中は展望ポイントになっている。今日もいつの間にか知床の山々が雲とともに少し見え始めていた。
 多分ここが想定折り返しポイントだ。ここまで来たら、もうどこで折り返してもいいのだが、一応コースの一番奥とも言える、別寒辺牛手前の、糸魚沢方面への道との合流点まで行っておくことにした。
 しかし、その分岐まで来てみて気が付いた。この分岐には信号がある。折角信号の少ない経路が選りすぐって選ばれているのに、そのコンセプトを削ぐことになってしまうのだ。欲張りが裏目に出たと言える。まあそれぐらいに考え抜かれているコースだと言える。
 10:30、別寒辺牛着。陽差しが出始めると直射日光やら照り返しやらで妙に蒸し暑い。おにぎりを食べて降り返しとする。

 頭上に垂れ込める低い雲はかなり速いペースで動いていた。そして雲が切れ始め、濃い色の真っ青な空が見え始めた。
 11:00、西円着。件のJA浜中町取扱所に余裕でお昼前に再び着けたので、気をよくして少し立ち寄ることにする。いつもお店にいるお婆さんの代わりに、農協職員らしい青年が店番をしていた。店舗の前にお婆さんの家ではないかといつも想像している民家は寂れた様子も閉ざされた様子も無かったものの、少し心配な出来事だった。立ち寄ってはみたもののさっき別寒辺牛でおにぎりを食べたばかりだし、ここでは缶コーヒーの表敬訪問だけとしておくことにした。まだ先が長い。

■■■2014/11/8
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

2014/8/7 北海道Tour14#2-4 民宿地平線の根釧台地ベスト202km

 再び戻って来た東円で交差点を北へ、道道928に進む。ここでようやく中盤のピストン区間が終了、後半の折り返し北上パートに突入だ。
 何故別寒辺牛で折り返してここまで戻るかというと、道道813の北側には自衛隊別寒辺牛演習場があり、別寒辺牛湿原との合わせ技で広大な非居住エリアを形成するとともに、その内側を通ることができない。このため、根釧台地南部から北上するには、演習場の西側か東側を大回りするかしかない。西回りは根釧台地を大きく外れたり、交通量の多い国道272を経由する必要があるため、根釧台地ベスト202kmというテーマのこのコースとしては、例えピストンの逆戻りであっても現状の東回りが正解だと思う。
 その道道928は、道道813の台地の起伏の横断とは少し変わり、アップダウンの間隔がやや開き、登ってから少し平原が続いた後、谷底へ下ってまた登り返す。高台を乗り換えるように、少しづつ位置を東西に移動しながら北へ向かっていくのである。途中からは、西側に自衛隊別寒辺牛演習場の鬱蒼とした森が続く。余談だが別寒辺牛演習場は根釧台地西部のかなりの部分を占めている。演習場の森の中を通ることができたら、標茶方面へはかなり近道となるはずだ。

 道道928から演習場の北端に沿って西へ向かう道へ。辺りは起伏の少ない平原となった。南側は演習場の高い森で、空はやや霞っぽいものの、北側には牧草地が広々と拡がって伸びやかだ。もう12時過ぎ。ここで更に少し休憩することにした。。
 おにぎりを食べながら地図で自分の位置を確認しておく。コースはルートラボに入れてあるので間違いようはないが、全体での位置を知ることは行程管理に大切なことだし、昔からそうしているので、地形図を見ないとなんとなく心配なのだ。
 ここで出発後124km、5時半過ぎに走り始めて6時間半。私にしちゃかなり順調に行程をこなせている。順調というより荷物無し効果が大変に大きいといえるが、これなら17時開陽帰着と、その後の開陽台訪問は確実に可能だと思われる。
 さっき西円や茶内原野辺りで晴れ始めていた空に、再び雲が増え始めていた。知床の山裾はまだよく見える。しかし、陽差しはもう完全に消えてしまい、空気中の水滴すら顔に時々当たるぐらいだ。全く根釧台地の天気は変わりやすい。いくら人の手が入った牧草地が多いとは言え、こういうところはいかにも北海道らしい。

 おにぎりを食べたら先へ進むことにする。
 自衛隊別寒辺牛演習場入口から少し先で、更に西へ進む道へ曲がる。以前の訪問でこちらは道路工事でまるっきり通行止めだったので、ここからはまたもや未済経路となる。今日のコースに未済経路が多いのは、私にとってなかなかありがたい。
 この辺りは地形が安定していて、道も平坦な台地の上に続いている。さっきまでのようなアップダウンはすっかり少なくなり、平原に牧草地と規則正しい格子状防風林が続く。中標津と決定的に違うのは、山裾の雰囲気が中標津の景色にひと味加えるのに比べ、この辺りは平原がひたすら淡々と、穏やかな風景であることだ。
 このため、景色の印象も抑揚に欠ける嫌いがある筈なのだが、それでもこれまで通ったこの辺りの印象より変化のある風景の道が続く。というより、この辺りですら退屈しないいい道が続くのは、さすがベストコースだと思わせられる。

 牧草地に近年この辺りにも増えているという丹頂鶴を眺めたり、突如国道272をオーバークロスしたりしつつ、時間とともに位置は確実に西へ進んでいた。そして根釧台地の縁に近づいて標高が上がるとともに、道は登り基調となってペースが落ち始めた。その辺りで、いつの間にか路面が湿っぽくなったと思ったら、霞み始めた景色の向こうが霧に変わり、それはあっという間にこちら側の水滴に変わってしまった。天気予報通り、午後の雨が降り始めたのだった。
 昨日通った道道13に合流してから少し先で分岐。根釧台地の縁を掠める萩野への登りで、少しは天気が変わることを期待していたが、逆に望ましくない方に天気が変わり、霧雨が濃くなってしまった。こうなると、もう本格的な雨である。幸い今年は新兵器モンベルサイクルレインジャケットが付いている。もういよいよ終盤の1/5だ。このまま進んでしまおう。

■■■2014/11/8
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

2014/8/7 北海道Tour14#2-5 民宿地平線の根釧台地ベスト202km

 虹別から、いよいよ最後のパートとも言うべき根釧台地北側の1本道、道道885へ入り込む。カーブ断続区間を過ぎるとこの区間の一番いいところ、養老牛の先まで続く一直線区間に移行するが、雨はもうだいぶ濃くなってしまい、牧草地の向こうの防風林から先は完全に霞みの中。いつもこの道で楽しみな西別岳裾の風景も、もう完全に見えなくなってしまっている。西別岳登山口の手前からは昨日通った道の再訪なのに、時間は昨日より早いものの、昨日眺めた景色がさっぱり見えない。
 15:00、養老牛着。ここまで来たら、もう開陽まで20kmも無い。急がなくても15時台の開陽到着が可能だろう。いつものながかわ商店で少し雨宿りして、コーヒーを飲む。

 15:15、養老牛発、再び雨の中へ。
 北進では、牧舎のミルクスタンドと車が何台か停まっている喫茶店を横目に眺めて通過。開陽台に登れば、牛乳もソフトもサンドイッチも食べられるのだ。ブレーキシューによるタイヤ汚れを気にしつつ、北進の坂を一気に下り、昨日通っておいたダートを滞りなく経由。この期に及んで自転車が更に汚れてしまうが、まあそんなこと旅程が終わる10日後には、自転車がいつどういう理由で汚れたか、というだけの話ではある。
 16時前に俣落に余裕で着けたので、次は順当に開陽台だ。コース考案者の石川さんは「開陽台は省略しても構いません」と仰っていたが、コース地図にはいちおう開陽台まで描かれているし、時間はあるし、昨日開陽台を断念したのだ。今日は開陽台に行かない理由より、行かなければならない理由の方が多い。それに17時までに着けば、開陽台の喫茶コーナーでソフトが食べられるのだと思うと、頭の中がソフトだけになっていた。

 こういうときに限って、少し山裾に近づくだけで雨がかなり強くなる。最後の登りで雨がつらくて押してしまい、意外に時間が掛かって16:35、開陽台着。まあ時間的にはもうソフトでも何でも食べられるし、一応16時までに俣落にも着けた。気分は大変良く、もう何でも構わない。
 展望台に登っても、もはや根釧台地は霧の中。今より視界が無いときも過去にはあった。霧だけの日より、雨が降っている方が視界が効くのがなんだか可笑しいが、もうあまりそそんなことはもうあまり考えないことにして、今日のミッションをこなすことにしよう。
16時台に着けたので、開陽台ソフトを食べ、ローストビーフサンドを瞬殺する。17時に閉店するこの売店を、私が訪れることができる機会は案外限られてしまう。運良く訪問した時は、いつもひたすらがつがつ喰いまくりになってしまうのが、我ながら可笑しい。

 開陽台からは町道北19へもうひと下り、宿へも更にもう一下りだけ。17:10、開陽「民宿地平線」着。

 今日は1日じゅう、GPSの画面を眺めながら微妙に複雑に根釧台地を曲がりくねるコースを乗り移って走っていたが、改めて手描きコースを見直すと、道道13合流点の手前が去年石川さんに伺った代替コースだったり、自衛隊別寒辺牛演習場の手前で少し演習場寄りすぎの経路を通ったりしてしまっていたが、目出度く本コース初の自転車修了者となれたのだった。そのうち修了証を発行していただけるとのこと。
 でもそんなことより、1日じゅう根釧台地を目一杯味わえる素晴らしいコースを走れた充実感がとても大きい。それもただ道をつなげただけではない、各エリアの特徴がそのままコース全体の起承転結になっている、素晴らしいコースだったことがとても嬉しい。しばらく「民宿地平線連泊&根釧台地202kmコース」というのが、私的道東定番行事になりそうである。
 石川さんは、第2の根釧台地200kmコースを考案中とのことで、その構想も教えて下さった。

 夕食後は昨日と同様市内の中標津町営保養所の温泉へ、そして帰りに今日もセイコーマートを経由していただく。明日のコース前半は今日とだぶる箇所が多く、午後まで商店の類はほとんど無い。早朝の食事も含めて、たっぷり仕入れておかねば。

■■■2014/11/8
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

2014/8/9 北海道Tour14#3-1 開陽→札友内

開陽→(町道北19他)開陽台→(町道北19他)俣落→(町道・農道)豊原
→(道道831・123)上風連→(道道813)大別→(道道1128他)片無去
→(町道・農道)阿歴内原野→(道道221)塘路→(国道391)五十石
→(農道・町道・道道13)標茶→(国道391)磯分内→(農道)弟子屈
→(道道717他)札友内 180km ルートラボ>http://yahoo.jp/f7Nlct

 今日も自動的に目覚めは4時。それはいいが、何となく身体に疲れが残っている気がする。というか残っているな。まだ身体がツーリングの日々に慣れていないのかもしれない。
 しかしこういう状況でも、とりあえず店開きした荷物をサイドバッグに詰めたり、豚丼やらパック野菜やおにぎりを水とともに腹に流し込んでいると、頭も身体もしゃきっとしてくる。疲れていることは疲れているが、まだそれほど深刻なものじゃない。
 窓の外が次第に明るくなってきたことも、気持ちに張りを与えてくれる。空の雰囲気を伺うと、昨夜の予報通り、開陽を発つ今朝になってそこそこ天気がいいようだ。ならば今朝も開陽台に行かねば。昨日は雨で開陽台本来の展望を楽しめていない。

 5:45、開陽「民宿地平線」発。毎回この時間に起きている女将さんが、今日も見送ってくれた。また来年も序盤で連泊して、根釧台地202kmコースを走りたいと思いつつ、森を抜けて前の道へ。
 道に出ると、町道はまだ黒々濡れていた。やはり昨夜遅くは雨が降ったのだと思った。しかし、空は薄曇り以上に晴れていて、部分的な雲は高く、曇りの光線状態というより明るく赤みの帯びた朝の陽差しが辺りを照らし始めていた。
 途中私的撮影ポイントの町道ダートへ立ち寄ろうと思って曲がり角を入ったところで、この時間のこの道にしては珍しく、乗用車が続けて入ってきた。追い越すだろうと思って自転車を道の脇に寄せて立ち止まると、後ろの車も少し向こうで停まり、何と「民宿地平線」の石川さんが降りてきた。出発見送りに、わざわざ車で追いかけてきて下さったのだ。

 昨日雨のせいもあって押してしまった開陽台への登りは、今朝は全部自走で登ることができた。いつも4サイドで登るときと同じように、インナーローまでギヤを落としてじっくり登れば、ちゃんと登れるのである。少し安心。思えば昨日は、202km空荷の順調ペースで何となく快調な気がして、ちょっと重めのギヤで踏み込みすぎたかもしれない。雨でちょっと焦っていたかもしれない。
 6:20、開陽台着。駐車場の私的指定席に自転車を停め、まずはたっぷり濡れたままの展望台へ。
 空は薄曇りだが雲は高く、青空が出ている部分もある。そうかと思うと西側の丘には未明の雨雲がまだ部分的に残っていて、手前の山裾の森に朝もやが残っている。しかし雨上がりのためか景色は全体としてクリアでしっとり。手前から遠景に続いてゆく防風林のグリッドが、やはり昨日よりよく見える。済んだ空気の中で低い雲が常に動いてゆき、刻一刻と変わってゆく根釧台地。上々の開陽台ではないか。
 車がやってくる音がする。この時間にして、早くも時々早起きの訪問客が車で上がってくるのだ。この景色を共有できる人がいることが嬉しい。しかし、展望台から駐車場を見下ろして初めて気が付いた。今年はバイクが駐車場に1台も停まっていないのだ。えっ、と思って展望台裏手のキャンプ場を眺めると、こちらにもテントが一張も無い。いくら雨続きだったとは言え、ライダーの聖地だった開陽台にライダーがいないのは、かなり異例と言っていい。
 まあしかし、そういう観光客の些細な傾向とは関係無く、今日の開陽台は来て良かった、また来ようと思わせてくれる眺めである。

■■■2014/11/9
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
2014/8/9 北海道Tour14#3-2 開陽→札友内

 6:50、開陽台発。まずは俣落から一目散に南下開始、中標津市街地の西側から根釧台地南部を目指す。
 この辺りの既済経路を微妙に避けて組んだコースで、所々不連続な町道や農道を少しづつスライド。段丘から低地へ、そしてまた台地に乗り上げ、牧草地、防風林、谷や森を通り過ぎてゆく。こういう走り方はGPS導入で計画も実走も以前より飛躍的に簡単になった。既知と思っているエリアの、全く知らない新鮮な表情を楽しめる場合もよくあるので、最近よく使う方法だ。
▼動画37秒 俣落から南下中 1
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/3/r0000956.wmv

 いつの間にか路面は乾き始めていた。空の雲が動き、濃い色の青空と鋭い陽差しが辺りを照らし始めていた。それまで気温が多少低くても、こうなると周囲の体感温度が一気に上がり始める。途中見つけた自販機で缶コーヒーを飲みつつ、現在位置を確認。開陽台の麓から100mも下っているためか、距離も順調に稼げている。まあまだこれからだ。
▼動画41秒 俣落から南下中 2
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/3/r0000964.wmv

 国道272を渡り、更に不連続な道を少しづつ乗り換えて道道831を目指す。コース計画で地図を眺めて道を繋いだ時には、それなりに効率良くコースを組んだ気でいた。自分で地図を眺めながら組んだコースだが、不連続な道と微妙なカーブが続き、地図を見ていないと今どの辺りなのかすらわかりにくく、「ここで曲がるのか」「こっちへ行くのか」となかなか勘所が掴めない。また、ルートラボ上での自動選択だと途中大回りに見えた道を、ポイント指定で結んだ箇所がことごとくダートで、自動選択の理由がよく理解できたりもした。ダート区間はパンク回避の観点から、ペースをかなり落とす必要があるため、結果的に自動選択の大回りより時間がかかったかもしれない。しかし、ダートがどこも概ね良好路面だったのは有り難かった。

▼動画48秒 道道831開始
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/3/r0001001.wmv
 道道831は、一つ毎に次第に大きくなってゆく丘や谷を越え、南下してゆく。地形が中標津の平原から、別海の掘りが深い丘陵へと移行してゆくのだ。空の雲が再び低く、ボリュームを増やすのとともに、辺りの景色から陽差しの色の成分が消えていた。まあこれぐらいが涼しくて助かる。雨にさえならなければ。
 途中豊原の道道と町道の交差点に、1軒だけぽつんと建つ商店には、記憶がある。というより、以前特に何の気も無く写真を撮ったのが、その後印象に残っていたのだ。確か1996年の写真だったと思う。そのお店が、たまたま今日の道に登場したのだ。そう言えば確か前回も、養老牛から中標津西側を通ってこちらに向かったと思う。久しぶりの表敬訪問のつもりで、店で缶飲料を買おうとしたが、店番のお婆さんは何だか店先まで来るのがしんどそうな雰囲気だった。必要とされているからお店が続いているのだとは思うが、どこも年月が経っているのだ。

 道道831で南下する間に、天気は予報通りいい方に変わっていた。低い雲が勢いよく流れ、真っ青な空が見え、陽差しが辺りを照らし始めた。
 10:00、上風連着。昨日も来た上風連、今日はA-COOPには寄らず、とりあえず道道813の交差点でおにぎりを食べるだけにしておく。
 上風連からは昨日も通った道道813へ向かう。東円の広々とした台地上の、丘の森、牧草地の間を、道道813が直線とカーブを繰り返して通り抜けてゆく。晴れの日に眺めるこの辺りの風景はとても変化に富んでいる。最近こちら方向から通る時に、これだけ晴れる日があまりなかったような気がする。というか、あまりことらからこの道を通っていなかった。良い道は逆から通っても新たな発見がある。昨日通った根釧台地202kmコースも、また別の日に通る価値があるのだと思った。また来年この道を走る理由ができた。

■■■2014/11/9
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

2014/8/9 北海道Tour14#3-3 開陽→札友内

▼動画11秒 道道813 アップダウンを経済走行中(笑)
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/3/r0001053.wmv
 西円から茶内原野へは一直線アップダウン。その後は高知の広々とした牧草地。やはりこの道、天気がいいと印象が全く変わり、広々と伸びやかな台地の風景が心に残る。
 別寒辺牛から先は別寒辺牛湿原区間へ。ようやくここから昨日のコースの外へ出る。足かけ3日間の広々とした牧草地の後だと、毎回何となく奥行きの知れない雰囲気が感じられる森の丘も、比較的こぢんまりした距離感で淡々と進める道になってしまう。しかし、途中丘の切れ間に拡がる別寒辺牛湿原は、やはり何とはなしに雄大、重厚とでもいうべき存在感を感じさせてくれた。
 湿原が開けた後は、大別の牧草地まではあと少し。丘陵のアップダウンを経て、丘の植林が牧草地に変わり、眼前に大別の谷間が拡がった。牧場の間を近道で抜け、12:10、大田の道道14を通過。道道14は厚岸と標茶を結ぶ道であり、次第に根釧台地の外側へ出つつあることがちょっと寂しい。毎回こういう気持ちとともに道東から道北へ。そしていつの間にか旅が過ぎてゆくのである。

 太田から先、道は道道1144となり、上尾幌の台地に乗り上げる。台地上の比較的地形が安定した部分を道道1144は上手い具合に通っていて、そこから丘陵深入りルートの農道が2通り分岐している。過去何回かの訪問で、これらの道は全て通ってしまっていた。また、今日も12時を過ぎ、何となくお昼の眠気に襲われつつあった。今日はおとなしく台地上へ、穏当な地形の道道1144に進む。
 13:15、南片無去「夢紀行」到着。もう10年以上前から牧草地の中にぽつんと喫茶店ギャラリーが2軒、そのうちの1軒だ。以前は確かグリーンウェーブという名前で、ある時点で夢紀行という名に変わったのだが、今回その事実関係を確認できた。店内の営業許可証が「株式会社グリーンウェーブ」名義になっていたのだ。多分団体名はグリーンウェーブで、店の名前だけ変えたのだろう、等と勝手な想像をしながら外の軒下で。少しソフト休憩とする。休憩していると一気に眠気が襲ってきた。やはり少し疲れが出ているのかもしれない。

 東阿歴内では国道272を横断するため、一気に谷底へ降りる。この後塘路湖へ向かうのに、また登ってからすぐ下ってしまう。ここに大きな橋があればとも思うが、無いものは仕方が無い。それより、国道272を横断する少し手前に「おはか→」と手描きで描かれた看板があって、やはり毎回私的名所となっている。最初見たときにはちょっと驚いたこの看板、東阿歴内墓地への標識のようだ。今日のように夏の比較的過ごしやすい日ばかりではなく、冬の凍り付くような寒さの中でもおはかを見守る気持ち、何だか亡くなった親族、地域の人々への親しみと尊敬が感じられる。素敵だなあと思う。

 阿歴内側に渡ると道は一端台地の上へ。どうせ登ってもまたすぐ低地へ下ってしまうこの道、いつも無駄な登りだとは思うが、登り返し後は180°以上の丘陵の展望が開ける道でもある。過去の訪問ではいつも塘路湖側から来る事が多く、この風景に根釧台地の香りを感じていたが、根釧台地側から来るとやはりここはもう別のエリアに属する場所だと思った。
 丘を巻いたら農道は一気に谷底に下り、阿歴内の低地を塘路湖岸へ。もう塘路湖だと思っていると湖岸区間は意外に長く、アップダウンもあってなかなか塘路に着かないのが、いつも大変じれったい。

 14:10、塘路着。
 ここから標茶手前の五十石まで、国道391を通らねばならない。この道、走ったことがありそうで実は初めての道である。もともと釧網本線と釧路湿原沿いの幹線・観光ルートだし、かなり以前釧路から別保の先まで通った時に交通量が多かったので、今まで何となく近寄らなかったのだ。塘路湖、シラルトロ湖岸を通るため展望はいいものの、途中の丘を登って下る無駄なアップダウンが有ることも、地図でわかっていた。

■■■2014/11/9
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
2014/8/9 北海道Tour14#3-4 開陽→札友内

 実際の国道391もやはり慌ただしく埃っぽい。釧網本線からは見えないシラルトロ湖岸のリゾート地っぽい印象と、釧網本線がいかに釧路湿原へ入り込むかを実感できたことが目新しかったものの、ちょっとしたアップダウンが大変鬱陶しい。更に腹が減ってきて、ここまでの疲れも炸裂し始め、何だか気が散って前に進むのが億劫である。のろのろ走っていると、前方道ばたにワゴン車が停まっていて、脇にこちらに向かってカメラを構える人を発見。例によって今日の宿「鱒や」の宿主さん、橘さんなのだった。釧路での仕入れの帰り道、私を発見したとのこと。
 「もう乗ってきゃいいじゃん」と言って下さる橘さん。しかし、やはりこの先の広域農道を通りたいためにこの国道391を我慢して通っているのだ。ここは橘さんに先行していただき、少し先の五十石で一昨日通った農道へ入り込む。静かな道、癒やし系ツーリング再開である。

 15:20、標茶着。
 腹がかなり減っていた。食料を持っていないわけではなかったのだが、かといって停まるに相応しい場所が無く、そんな簡単な理由で走り続けざるを得なかったのだ。とはいえ、途中で襲ってきた眠気には道ばたで立ち止まったまま居眠りして対処している。自分でも単純に気分の問題なのだろうとは思う。やはり昨日一昨日の疲れが出ているのかもしれない。
 食事には中途半端な時間なので、豚丼はじめHotchefのメニューは売り切れだった。PBブランドの美味しいカップ麺をこの機会に食べておくことにする。そんなことをしていると、すぐに時間が経ってしまうのであった。

 結局40分も休んでから、16:00標茶発。
 弟子屈までもう約20km余り。何だか安心感も手伝って、一気に疲れが出てきてしまっているような気がする。幸い風は僅かに追い風気味の横風、道が曲がると向かい風気味になるものの、1時間我慢して進めば弟子屈到着だ。
 途中磯分内から、広域農道へ入り込む。実は標茶の少し先で、最初の分岐ポイントを見逃してしまい、無駄に国道391を走ってしまっていた。
 最後にこの広域農道自体を走るために全体を決めた程、今日のコース中重要パートのこの道。去年橘さんに車で釧路へ送っていただくときに教わった通り、やはり牧草地や森の中を淡々と進む、車の少ない静かな良い田舎道だ。アップダウンは無いわけじゃないがこの辺の道にしちゃ比較的少なく、広域農道のためか道路の表情は最近の道道みたいにゴージャスじゃなく適度にくたびれているのも、更に癒やし系である。今日のように体力と時間と気持ちの余裕が少ないときに、標茶方面から弟子屈への私的幹線、内陸経由でやや登り総量が多い道道53を通らなくて済む、楽しく実用的なルートだと思った。
 それでも標茶から弟子屈までは20数kmなりの距離感覚がある。磯分内、南弟子屈と並行する釧網本線の駅を地図で眺めたり、釧路川の向こう岸の谷間を伺っていると、1986年の最初の北海道ツーリング時に国道391で弟子屈から標茶へ向かったときのことを思い出す。あのときは暑い日に退屈な国道、しんどい1時間だった。日焼けで水ぶくれまで起こしたっけ。今日はもう夕方、日が傾いて木陰が多く、空気が涼しくて大変助かる。

 南弟子屈を過ぎてしばらくすると、道がおもむろに河岸段丘から谷間に下って、すぐに弟子屈の町外れが始まった。17:10、弟子屈着。いつものセイコーマートで無事明日の朝食の豚丼や行動食を仕入れ、サイドバッグに押し込み、道道717へ。

 17:50、札友内「鱒や」着。
 「だいぶ寄り道したんじゃない〜」と橘さん。さっきお会いした地点と時刻にしては到着が遅い、というツッコミだったが、確かに標茶でかなり休憩しているし、広域農道の静かさに甘えてずいぶんのんびりペースだった。さすが橘さん、この辺の距離と行程感覚はばっちり。お見それしました。

 早寝しようと思って予約時に一人部屋をお願いしておいたのだが、私のレーパンに着いていたガムらしき物体がシーツをまだ敷いていなかった布団に着いてしまい、鱒やさんにご迷惑を掛けてしまった。恐縮です。
 しかし一方、鱒やでは嬉しい再会があった。夕食時にお話ししていた一人旅の方が、「確か以前ここでお会いしたことありますよ」という話になって思い出した。2008年に鱒やに泊まった翌日、津別峠で写真を撮っていただいた方だったのである。大好きな会津の昭和村が故郷とのその方に、こちらも2008年に撮っていただいた写真を高地Netでお見せして、ようやくご報告できた気分になれた。

■■■2014/11/9
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■■■高地 大輔

2014/8/10 北海道Tour14#4-1 札友内→チミケップ湖

札友内→(国道243)ウランコシ→(道道588・ふるさと林道上里線)津別峠展望台
→(道道588)津別→(国道240)本岐→(道道494)チミケップ湖
82km ルートラボ>http://yahoo.jp/9FnsyR

 4時に起きてから、いろいろ食べたり荷物を片付けて少し時間が経っても、窓の外はあまり明るくならない。曇りなのだ。この分だと津別峠展望台まで登っても、あまり画期的な展望は期待できないかもしれない。
 一方で昨日午後感じていた疲れは、だいぶ取れたようだ。今日の行程は、津別峠展望台から津別へ、そしてチミケップ湖が終着だ。津別峠展望台は毎度の行程中最大の峠だが、全体の距離は90km未満とかなり少ない。そんなに楽でいいの、と自分でも思ってしまうぐらいだが、実はチミケップ湖を終着とする理由がある。ここ数年何度も泊まろうと思ってはあまりの宿泊料金の高さに挫折していた(今回も何度も泊まることにしては考え直し、一度など電話までかけて取りやめた)、あのチミケップホテルに遂に泊まるのだ。
 ちなみに明日以降の行程も、チミケップ湖泊が原因で例年と比べて分割地点が変わり、日ごとの行程がやや短くなっている。全てチミケップホテルに泊まるためだ。

 明日と言えば、昨日天気予報を視た段階で、全日行程取りやめが決定してしまった。
 降水確率90%。それ以上に天気図で日本の北半分、特に北海道全域が低気圧と詰まった線に覆われていた。過去あまり見たことが無い等圧線の密度が、絶望的というより非常事態すら感じさせた。しかしこれを前向きに捉えると、今日チミケップ湖に辿り着きさえすれば、明日は1日輪行移動で休めるということになる。しかも明後日以降は低気圧一過で、天気は少なくとも好転するらしい。つまり、多少疲れていても何でも、とにかく今日はチミケップ湖に辿り着けばいい。チミケップ湖まで行けばいいだけなら、津別峠でも何でもこなせるだろう。今となっては今日が楽な行程でよかったと思う。
 本来は明日、道道137で西興部に向かう予定だった。途中にはここ3年通行不能だったり雨だったりで通れていなかった、鴻之舞から立牛への狐沢橋区間が含まれる。今年5月、その狐沢橋が再び開通したと知って、「今しかない」と思っていたのだ。雨に阻まれるのは大変残念でもある。まあしかし、あの天気図を見て山奥に向かう気はしない。それに明日はもう北海道5日目、ここで休むと、ちょうど中休みになってこの先都合がいいのも確かである。実際に身体はやや疲れているし、今できることを前向きに捉え、その後に備えよう。

 5:50、札友内発。
 国道243へ出ても、身体がややしんどい。脚が何となく回りにくいように感じる。一方、いつもいいペースが出る釧路川沿いの森の区間では、今日も今の自分としては意外なほど快調で、あまり気にすることも無いのかと思う。何故この区間はこんなにいつも快調なのか不思議になる。両方向から勾配は無く、山裾の川沿いの森に風が吹きにくいからなのか、そもそも山裾の川沿いの森には風が吹きにくいのだろうか。
 考察から妄想しつつ、屈斜路で国道238から、一昨年以来の屈斜路湖岸デフォルトコース、山裾緩斜面の農道へ。雨上がりで田舎道の路面が未だぬらっとして、湿度も高い。やや濃い色の雲が低い上空にぐっと迫り、周囲の山々が裾のすぐ上から雲に隠れてしまっている。
▼動画47秒 国道243山側の農道 雲がかなり低い
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 しかし、道の周りの静けさは、やはり国道とは別世界だ。国道が見えるぐらいの距離しか離れていなくて、畑それ自体はあまり国道沿いの畑と変わらないのに、そしてそもそも国道243自体それほど交通量が無いはずなのに。
 トウキビ畑の中からやや山裾寄り、そして集落の中を、道はしずしずと通り抜け、屈斜路湖を南から東へと回り込む。この辺にしては珍しい中低層?建築物屈斜路湖プリンスホテルが見えてくると、道はおもむろに森に突入、
 7:00、ウランコシ分岐着。そのまま県道588へ。唐突に北海道Tour毎度のハイライト、津別峠が始まるのだった。

■■■2014/12/30
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2014/8/10 北海道Tour14#4-2 札友内→チミケップ湖

 初っぱなの開けた直登区間は、斜度8〜9%ぐらい。取付区間の例に漏れず斜度が急で、やや幅広の道が視覚的にもつらい。そして登り始めると、やはり想像以上に身体がだるく、すぐ息切れしてしまう。やはり一昨日の疲れはごまかせない。自分で自分を騙すことはできないことも、よく理解できた。
 いくつかカーブを経て広葉樹林の中に入ると、斜度が少しだけ緩くなり、気温はやや低く身体が楽だ。狭い道幅に、やや薄暗くしっとりとした森に、気持ちが落ち着く。時々笹の中から甘いような香りが漂ってきて、何だか熊が潜んでいそうで大変にブキミなのも毎回同じ、いや、今日はまだ朝の早い時間だけに更に熊が出そうに思ってしまう。しかし朝か昼かに関わらず、やはり津別峠で森区間が快適で、気持ちが落ち着くのは毎回変わらない。
 いくつかのつづら折れを経ると、道の斜度に緩急が出始める。更につづら折れ区間が終わる標高450m辺りから、森が開け始めて道の斜度が緩くなり始める。森が開けるのは、山腹全体がやや切り立ち始めるからだ。区間毎の微妙な斜度構成を分析できるのは、登りがしんどいからかもしれない。登り途中でしょっちゅう休み休みしながらそんなことを考える。あまり気温は上がっていないのに、ここの登りで近年最大回数休んでいる。今はとにかくこの登りをこなし、チミケップ湖まで辿りつかねば。

 つづら折れ区間から山肌トラバース区間に移行すると、もうカーブの残りを数える段階だ。尾根を巻く峠っぽい引っかけポイントも、毎年来ていればぬか喜びすることは無い。峠手前の100mで斜度が再び急になるのも、毎年の訪問でわかっている。落ち着いて目一杯ギヤとペースを落として、のろのろでも何でも登ってゆくだけだ。終わらない坂は無いのである。

 8:25、津別峠着。次は更に200mのデフォルトオプション、というかここを含めての津別峠、津別峠展望台だ。
 少し汗が収まるのを待って、息を整え、峠津別側のふるさと林道へ。初っぱなから12%以上の激坂が、ここまでの%表示から単に「登り急坂」となった標識とともに続くのはもう毎度の事で珍しくもない。こちらもここまでの絶不調を鑑み、インナーローに落として落ち着いて登り始める。
 前半の急斜面トラバースから中盤の森林直登区間に渡り、全体の2/3ぐらいの距離で一気に180m登ってしまった後、展望台下手までどういうわけか平坦に近いほどの斜度緩い区間が続く。その間、ついさっき峠まであれほど苦労したのに、途中1度も脚を付くことが無かったのは少し嬉しい。そういえば峠までの登りでは、4サイドなのに普段と同じように、ちょっとセンターで頑張りすぎたかもしれない、と思い出す。そういえば、一昨日の雨の開陽台も、似たような失敗をしている。頑張らないのが私のツーリング中の鉄則ではなかったのか、とも思う。
 再び急坂で一気に展望台へ乗り上げる最後の20m、この一登りが毎回かなり厳しい。ここまで足を着けずに行けるかもと思っていても、ここでしんどさを感じるのも毎度の事なので要注意である。途中あんなに中だるみ区間が無い、もう少し平均したまともな区間断面で作ってくれたら良かったのに、と思う。

 9:00、津別峠展望台着。
 まずは展望台の建物裏手の広場へ。屈斜路湖を見下ろすはずの柵の外は、眺めるまでもなく雲で真っ白け、視界20m。さっき津別峠の手前まで登っている間は青空が見え始め、展望台では一気に晴れるかと期待していた。その後ふるさと林道区間を登っている間、いつの間にか雲が再び空一杯に広がってしまっていたのだった。
 風が強くて雲が速い。その雲が時々さっと薄くなって下界の展望が広がり、観光客から歓声が上がる。しかし、また高速で雲が景色を覆い尽くしてしまう。展望台の最上階に登っても、とりあえず駐車場だけしか見えない。屈斜路湖と周囲360℃の山々が、今日は真っ白な霧の中だ。

■■■2014/12/30
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2014/8/10 北海道Tour14#4-3 札友内→チミケップ湖

 風は強いだけでなくやや低温で、寒くなってきた。というより身体が冷え始めてきた。相変わらず毎日日中34、5℃の日々が続いている東京からすると、贅沢な悩みである。人間は事程左様に温度変化に弱いのだ、とつくづく思う。
 とりあえずあまり人間の造りに逆らっても仕方無い。展望台の建物内に降り、携行食のおにぎりを食べることにした。津別町の施設である建物内は基本的に無人で、がらーんと静かだ。時々訪れる自動車の観光客以外に人気は無く、外の様子は見えるもののもう風の音は聞こえず、ベンチと机以外に何があるわけではない。以前蕎麦と饂飩が食べられた売店部分には、シャッターが降りている。もう営業していないのか、あるいはお盆休みだから休み中なのかはわからない。しかし、毎年訪れても営業している状態に遭遇しなくなって久しいような気もする。
 強風から逃れ、一人でおにぎりとパンをむしゃむしゃがつがつ食べつつ、今日は展望は望み薄だ、とわかったら、少し眠くなってきた。やはり疲れているのかもしれない。
 去年の津別峠から今日までいろいろなことがあった。毎年無事に旅を続けるために、自分はいろいろな条件をクリアする必要があると意識するようになった今日この頃。北海道に来ることはできたが、明日は全道大雨で終日運休ほぼ決定なのだ。今、自分がここに来れたことはとても嬉しいことだ。最後まで景色が見えない今年の津別峠だが、空と絶景の中に身を置ける年もあるし、もちろん来れない年だってある。こういう年もあるというだけのことだ。もちろん晴れてくれた方がうれしいのだが、今年の訪問それ自体に悔いは無い。そして是非ともまた来年来たい。

 10:30、展望台発。ついさっき苦労して登ったふるさと林道の急坂を、直登区間から山肌を巻き、あまり速度が上がりすぎないようにして峠まで。峠近くでようやく辺りの霧っぽさがすっと消えた。
 トラバース区間を下るとともに、見渡していたはずの辺りの山がどんどん高くなり、谷間の中へ。下るとともに行程が先へ進むとともに、身体を取り巻く温度が少しづつ段階的に上がっていくのを感じる時、やはり天上の津別峠展望台からどんどん遠ざかっていくことも実感され、寂しい気もする。仕方無い、時はどんどん過ぎてゆく以上、旅を前に進めてゆく必要がある。趣味であるはずの自分の旅には、なかなか制限や縛りが多いとも思う。しかしそれはまた当たり前のことだとも思う。脳内世界とは無関係に、一方で景色を流れるまま、身を重力に任せ、山肌に張り付く道をきりもみ急降下。森の中へ、谷間の底へ。

 峠区間を下りきってからも谷間は更に津別まで、約21kmで標高差約270m、ほぼ下りのみで続く。延々と続く下りは、斜度は緩いものの、あまり脚を回さない経済走行で下ることができる。谷底に出たとき、森の谷間が開け始めて牧草地が現れた辺り、農家がぽつぽつ現れて上里の小学校跡を過ぎる辺り、そして谷間の畑の中に道が続いて美都の集落上手に辿り着く美都橋辺りと毎度の各ポイントで、段階的に雲が薄くなり、それ以上にどんどん気温が高くなってきた。さすがは道内で一番暑い網走地方である。と思うとともに、寒さすら感じていた、標高980mの津別峠展望台をまた思い出してしまう。

 結局津別手前の豊郷辺りで、すっかり空が晴れた。これならこの後のチミケップ湖もかなり期待できる。普通に経済走行で下って、展望台から津別の町外れまでちょうど1時間、これももう毎回同じである。11:35、津別着。
 津別は今日の行程上唯一の町であり、補給可能場所だ。今日はもうチミケップ湖まで30kmぐらいだが、とにかく津別では昼食、セイコーマート立ち寄りなどミッションが一杯ある。
 まずは明日の、チミケップホテルから北見駅への送迎車を確認しておくことにする。今は晴れていて暑くても、明日はどうせほぼ確実に雨なのだ。もう輪行前提に、潰せる不確定要素は潰しておかねば。果たして予め前日までに予約しないと、北見駅送迎の車は出ないとのこと。電話してみてほんとに良かった。これでチミケップ湖から北見駅までは安心だ。
 次は町中大通り沿いの蕎麦屋へ。ファミレス風の蕎麦屋っぽくない店なのに、この閑散とした津別の町中でお昼前なのにお客さんが何人かいた。と思っていると、12時を過ぎてお昼のサイレンが鳴ってから、お客さんが次々入ってきた。果たしてしゃきっと舌触りも味も上々、おまけに大盛りで大当たり。さすがに道内の蕎麦屋は美味しい店が多いように思う。というか、今まで蕎麦がまずい店に入ったことが無い。

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2014/8/10 北海道Tour14#4-4 札友内→チミケップ湖

 昼食後、セイコーマートで買い出しへ。明日早朝の朝食もあるが、それ以上にセイコーマートでは普通に食べたいものが多すぎる。
 とりあえず思いつく物を仕入れて店の外に出ると、高校生ぐらいの男の子に
「どこから来たんですか」
と声を掛けられた。以前津別のこの場所で、新興宗教に勧誘されたことが有り、ちょっと警戒しながら答えると
「釧路までツーリングに行きたくて自転車を検討していて、いろいろ話を聞きたい」
とのことだった。
 人にものを尋ねる前にまず自分のことを話す態度に、とても感心、いや、感服した。大変真っ当な、大人でも珍しい態度である。最近こういう立派な態度で大人と話ができる少年が、少しずつ増えているように思う。
 少年の自転車はいわゆるMTBルック車で、とにかく一度釧路へ自転車で行ってみたい。誰に言われた訳ではないがそれにはやはりそれなりのツーリング車が必要だと思っていて、購入資金のためにコンビニでバイトもしているとのこと。
 今の自転車では高校まで自転車通学していて、美幌までなら40分で行けるらしい。私だと裏道の道道経由だが、確か何年か前に美幌から津別まで1時間。彼なら釧路までのサイクリングには十分な体力を持っていると思われた。ならば若い時間を無駄にせず、まず片っ端から近場に出かけてみる方がいい。幸い津別は北海道(私的)最高の峠である津別峠、最高の癒やし系スポットチミケップ湖など、ネタには事欠かない。そうでなくてもたとえば一度網走でも往復してみると、自分が何時間走ればどこまで行けるかの行程感覚や、1日のサドル上での過ごし方、必要装備なども一気に体感できることだろう。自転車なんてその後に考えればいいのだ。そしてできれば、いや是非とも、釧路までの本番には津別峠を含めて欲しい。
 などと若いツーリストとツーリングの話をするのは、とても楽しいことである。
 結局津別には1時間いた。

 12:40、津別発。
 津別に着いたときには青空だったのに、空には再び雲が増え始めていた。お昼の津別なら、暑い日は暑くてたまらないはず。過去には軽度の熱中症に追い込まれたこともある。今日は今のところ曇り気味で暑くなりすぎず、大変ありがたい。
 チミケップ湖まではいつものペースなら1時間半程度、余程のんびりしても14時半前には着けるだろう。今日は天気予報が早まれば、夕方から雨が降るかもしれない。今もう薄曇りで、この後次第に雲が増えるとすると、青空のチミケップ湖は難しいかもしれない。まあそうなればそうなったで、適当にのんびり走って湖岸で適当にのんびりして、あとはチミケップホテルでのんびりしよう。
 本岐からは道道494。ケミチャップ川の谷間を、22kmの間農家や牧場もまばらに、静かに淡々と遡る。もうあと1時間しないうちにチミケップ湖に到着、今日の旅程は終了だ。心配なのは湖岸での天気だけ。というぐらいに雲が濃くなってきたのもやや残念ではあるが、雨さえ降らなければこの道毎度の現象、想定範囲内の出来事だ。

 14:10、チミケップ湖着。
 やはり雲が低く、陽差しは隠れてしまっている。ゆっくり動く雲の濃淡加減で時々辺りが明るくなるものの、濃紺の湖面と輝く緑には出会えそうも無い。
 いつものキャンプ場で、木陰の私的特等席で自転車を停め、しばし自転車写真を取ったり湖を眺めたり。津別峠に続いてまたもや昼寝などしてみるものの、時間が経っても雲が切れることは無く、陽差しすらなかなか出ない。まあ雨はまだ降る気配は無い。今晩から大雨との天気予報からは、かなり上々の現況とも言える。これはこれで大変に穏やかな今年のチミケップ湖岸なのは間違い無い。やはり今年もここに来れたこと自体がありがたく、そこにいることができる時間を一杯楽しもう。
▼動画1分1秒 チミケップ湖キャンプ場 今年も来れた
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2014/8/10 北海道Tour14#4-2 札友内→チミケップ湖

 向こうの木陰では、キャンプ中のテント脇でバーベキュー中のようで、何だか楽しそうだ。脇には自転車が何台か停まっている。地元サイクリストがキャンプしに来ているようだ。過去、チミケップ湖では自分以外に自転車を見たことを思い出せない。しかし、さっきの津別の高校生とともに、北見周辺にもサイクリストが増えてきたことを現すような出来事だ。
 一方、撤収中の別のキャンプ客は話しかけてきた。今はまだ曇りだが、もう今晩から明日いっぱい大雨なので、テントを畳んで北見へ帰るとのこと。それが正解だろう。今晩は大雨のテント泊を仮に楽しめたとしても、明日になったら大雨の中テントを畳まないといけない。なんだかんだ言いつつも、こういうとき今夜の宿が近くにあるのは大変ありがたい。

 15:40、チミケップホテル着。
 まずはフロントでチェックイン。と、早々にウェルカムドリンクというものを、生まれて初めて選ぶ羽目になった。そうか、こういうホテルにはウェルカムドリンクというものがあるのだ。選択肢にはいくつかのソフトドリンクとビールとワインか何かが含まれていたような気がしたが、ここは迷わずビールを所望。
 次にマイクロバスを確認しておく。ちゃんと8時に北見から来てくれるよう手配済みとのことで、わざわざ一人の運搬のために、頭が下がる。

 部屋はシングルでやや狭め。「1泊\27500」の文字が頭をよぎるが、駅周辺のビジネスホテルと違い、こういうホテルの宿賃は部屋の広さとの相関関係は全く無いのだと思い直す。アメニティがリッチな部屋付きのユニットシャワーバスでお湯を浴びてから、ラウンジでまたビールを飲んで少し居眠りし、時々いつまでも明るい外を眺める。普段ならまだ走っている事だろう。明日はもう雨らしいし、今日はもう全てをチミケップホテルに委ねればいいだけだ。すっかり気楽である。
 それにしても、この静かな湖に1軒だけ建っている超高級ホテルには長い間大変興味があり、いつか一度泊まってみたかった。とともに、何故このチミケップ湖をプライベートビーチ状態に従え、1軒だけリゾートホテルが建っているのか不思議でもあった。そこでホテルの方に尋ねてみると、昔このチミケップ湖で漁をして、捕れた魚を食べさせる旅館が1軒建っていた。その営業権を、北見のとあるホテルが譲り受けた、とのことだった。
 夕食前に空が急に暗くなり、おもむろに大雨が降り始めた。明日の雨で急遽お客さんのキャンセルも出たそうで、朝食材料も余ってしまうそうだ。「\2000にしておきます」の言葉に負けて、朝食を7時に作っていただくことにした。さっきの津別で朝食ネタは仕入れているものの、ちゃんとした朝食が食べられるに越したことは無い。しかしこれで、今回のチミケップホテルは遂に1泊\3万になってしまったのだった。

 夕食はフランス料理のフルコース。私の夕食は安コースなのだが、前菜、スープ、メインディッシュ、パンやデザートまでいろいろ贅と手間と粋を尽くしたものだった。ツーリング4日目の、味覚とか視覚的オドロキだけではなく、目の前の山盛り料理を腹一杯食べたいという欲求は、とても美味しいパンをお代わりして解決した。貧乏根性で普段のツーリングからの違和感が無いといえば嘘になる。しかしたまにはこういうのもいい、そう思えば何の問題も無い。何と言っても、今自分はチミケップ湖岸に泊まれているのである。

 明日の天気予報は昨日通り、大雨だ。90%の降水確率以上に、もの凄い量の等圧線で落ち込んだ低気圧が2つ日本列島の上にやって来る天気図を見れば、もはや走る気は全く起きない。そうなると、食後は速攻で就寝なのも何だか勿体無い。が、外は雨だし、そうでなくても完全な真っ暗闇だし、更にガが飛び交っている。熊も歩いているかもしれない。そうなるともう寝たもん勝ちに思える。
 大雨の後、低気圧は去ってゆくらしい。天気図からは大変な異常気象に陥りつつあるようにも思えるのだが、明後日以降は晴れが期待できそうだ。まあそれは明日輪行で西興部に着いてからの話だ。

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2014/8/11 北海道Tour14#5-1 チミケップ湖→西興部輪行

 目覚めが4時なのはいつもの通り。しかし、既に2日前からの天気予報通り窓の外は大雨だ。一昨日「鱒や」到着段階でほぼ決まっていた通り、何の躊躇も無く今日はまるまる輪行だ。
 一方、今回のツーリングも5日目だと改めて思う。今日西興部に到着した段階で、全10日の旅程が半分終わってしまうのである。何だかあっという間に4日間過ぎてしまったのは、去年、特に前半道東パートで毎日雨で輪行していた去年に比べ、今年は圧倒的に充実しているからかもしれない。

 今日も1日休みになって喜んでいるが、いや、本来旅程の1/10を占める貴重な時間だし、輪行移動だって旅なのだ。
 さて、その行程である。北見から西興部までの輪行は、列車・バスの乗り継ぎが合計3回、もともとの本数の少なさと連絡の悪さの相乗効果で、4通りしか選択肢が無い。このうちまあまともな時間に出発して順当に到着できるのは、北見9:12→西興部15:17の1本だけ。これだと到着後ゆっくり風呂も入れて、セイコーマートで落ち着いて買い出しもしやすい。途中の乗り継ぎもこのコースにしちゃまあ順当だ。次候補の10:19→17:37になると、西興部到着がやや遅く、途中の乗り継ぎ待ちがやや冗漫だ。残りの2本は、北見発が7:11と極端に早かったり、西興部着が20:02と極端に遅かったり。
 このため、第一候補が圧倒的に好ましく、極力北見駅9:12発で行きたい。そして朝食、輪行、荷造りを逆算していくと、必要起床時刻は5時。普段とあまり変わらない。ならばもうこのまま起きちゃえ。ちなみに去年は津別発滝上着だったが、北見→紋別は同じパターンで輪行している。

 というわけで、かなりだらだらやっても予定通りに荷造り完了は6時過ぎ、7時までに自転車の輪行作業を完了。7時からは朝食のコースが、昨夜に引き続きお行儀良く一つづつ順番に登場した。グレープフルーツジュースもスクランブルエッグもソーセージも極上で美味しかったが、昨夜同様パンがとても美味しくお代わりし放題。調子に乗って、あまりこういうホテルにそぐわないぐらいに食べてしまった。
 マイクロバスは予定通り8時にチミケップホテルの前に来た。この大雨の中、北見からは峠越え1回(低いが)、ダート10kmで丘越え2回を越えてきてくれたことになる。頭が下がる。
 速攻で自転車を積み込んでも、これだけ大雨だと、やはり濡れる物は濡れる。そんなことにはお構いなくドアをがらっばんと閉じて、さあ出発。さらばチミケップホテル、さらば1泊30000円の夜。

 湖岸から最初のピーク、2回目のピークと、森のダートをマイクロバスは越えてゆく。晴れた日は適度に涼しい森の中だが、今日は坂道が川になっている。
「倒木なんか有りそうでちょっと怖い感じですねー」
と言いながら、私よりちょっと歳下ぐらいの運転手さんは落ち着いたものだ。過去何度かそういうことはあったらしい。冬にも大雪が降り、ダート区間が全部自動車が走れなくなって、除雪が終わるまで2週間ぐらいチミケップホテルに缶詰になったことがあったとのこと。
 本来は北見の親会社のホテルにいるというその運転手さんは、冬のチミケップ湖の話から、雪の中の鼠を狐がひっぱたいてダメージを与える狐パンチの話などもして下さった。冬のチミケップ湖はやはり格別とのこと。お話ししていると、冬にもチミケップホテルを訪れたくなってしまった。しかし、確かによさげではあるんですが、やはり。
 等と思っている間に、バスはダート区間から、開成の畑の中の舗装区間へ。開成からはごく普通の道道27で北見へ一直線。チミケップ湖から北見までの道は、自転車で行くときと変わらないので、自動車の便利さが身に浸みる。
 大雨の中、見覚えのある景色(というより見て順番を思い出す景色)が次々あっという間に通り過ぎてゆき、北見には無事8:45に到着。列車の出発まで27分もある。チミケップホテルから北見駅まで、車だと45分しかかからないのだった。たとえ今日のような大雨でも。

■■■2015/2/15
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2014/8/11 北海道Tour14#5-2 チミケップ湖→西興部輪行

 9:12、北見発。キハ54の特快きたみ旭川行だ。1本遅いと、北見発は10:19の特急オホーツク4、特急料金がかかってしまう。それなのに前述の通り途中の連絡は極端に悪く、9:12発のパターンより所要時間は1時間余計に掛かる。この観点からも、今日の北見発9:12は外せなかった。
 今日は金華峠から生田原、遠軽へと向かう筈だった。本来走るはずだった国道39〜242に並行する石北本線で、キハ54がなかなか快調ないい走りをしてくれる。キハ54という気動車は、登場当初確かキハ56のエンジンと台車を流用した更新車で、ステンレスぴかぴかの車体も内部が狭く、何となく上っ面だけの車両に見えて仕方無かった。それが長年毎日毎日広大な北の大地を1両とか2両でどこまでも突き進んでゆくうちに、適度に枯れた表情を醸すようになってきた。一方でエンジンも台車も換装されて、性能はグレードUP。頼もしいローカル線の車両になった。ただ、相変わらずというか車体幅の狭さは変わりようが無く、窮屈に感じられる場面は多い。

 10:14遠軽着。
 安国辺りから雨は上がっていて、町では路面が乾き始めている。しかし、町を囲むすぐ近くの山々の、頭上100〜150mぐらい以上は濃厚な灰色の雨雲にすっぽり包まれている。実際には山で雨が降っていて、結局は1日輪行する方が正解なのはいつものパターンだ。しかし頭ではわかっていても何だか大変に後ろめたく落ち着かないのも、またいつものパターンだ。
 とにかくどんな形でも、時間の経過と共に先に進まねばならない。とりあえず今、遠軽駅からバスターミナルまでは3ブロックもある。重い自転車と荷物を担ぎ、「間違い無く今日最大の山場だな」と思いつつ、交差点毎に立つ3つめの信号をよたよた目指す。雨が降っていないのは大変に有り難い。
 バスターミナルでは約50分待ち。去年も蕎麦を食べた併設の食堂で、今年はラーメンを食う。前回何となく「ラーメンも食べたい」と思って蕎麦だけで空腹が満たされ、ラーメンを食べず仕舞いで、食べたい気持ちだけが宙ぶらりんになっていたのだ。1年でその気持ちが充たされるとは思わなかった。

 11:11、遠軽発。
 近年は雨の輪行でこの区間をバスに乗ることが多い。毎年いかに同じパターンの旅程か、改めてよくわかる。去年もそうだし、その前は2007年だった。あの時は津別での軽熱中症の翌日で、前の日から比べて一気に気温が20℃も下がったのだった。今日も雨で、何だか肌寒い。雨に降られないバスが、大変有り難い。
 遠軽の町を出ると、空には一度青空まで登場した後、雲が更に低く辺りは暗くなり、雨が降ってきた。雨は大雨になったり小降りになったりして、紋別の手前まで続いた。やはりこういう日は走らないで正解なのだ、とつくづく思った。
 バスは雨の国道238を力強く進み、時々国道から逸れて集落へ入り込み、元名寄本線の駅跡に各駅停車で、優しく丁寧に廻ってゆく。もともと少なかった乗客は中湧別で半分ぐらいになり、紋別の少し手前までかけて少しづつ降りていった。
 灰色の空の下、薄暗い景色を眺めていると、すぐに眠たくなる。輪行時は居眠りするに限る。何時間でも大丈夫だ。

 12:35、紋別バスターミナル着。紋別では雨が上がっているのみならず、何と青空まで出ていた。しかし、この天気に惑わされてはいけない。今ここ紋別から走っても、もうたいしたことはできない。それにきっと町外れで雨が待ち構えているのである。
 それよりバスの選択肢として紋別から興部へは、実は2通りの選択肢がある。紋別1245→1329興部と、紋別1349→1430興部だ。どちらに乗っても、興部から西興部は興部1450→1517西興部だ。従って、待ち時間が紋別で多い方がいいのか興部で多い方がいいのかで、選択は決まってくる。
 紋別ターミナルで乗り換え時間を潰したことは過去何度かある。バスターミナル前のややチープな雰囲気の蕎麦屋が意外に美味しいことも知ってはいる。一方、興部ターミナルがある道の駅では、ソフトやアイスが食べられる。私の場合、紋別バスターミナルを訪れる機会より、興部バスターミナルを訪れる機会の方が少ない。つまり今日は興部で時間を取る方がいい。ならば次のバスは10分後だ。

■■■2015/2/15
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2014/8/11 北海道Tour14#5-3 チミケップ湖→西興部輪行

 12:45、紋別発。
 オホーツク街道こと国道238は、沙流辺りからしばらくオホーツク海の海岸に続く。道のすぐ外に拡がる海の表情には、そこはかとなく、しかし決定的に北の海としか言いようがない、どこか寂しげで気温が低いような雰囲気が漂っている。初めてこの道を通った1986年には、初の北海道ツーリングだったこともあり、ずいぶん北まで来てしまったと思った。今日の海の色は、雨の日ならではの鉛色。更に岸近くではは明らかに泥水色だ。
 海上の空には青空が混じっていたものの、道が海岸から段丘に登ると、内陸側の山々をこってり濃厚な雨雲が包んでいるのが見えた。オホーツク海上や海岸縁の平地では辛うじて安定した天気が続いているように思われる。しかしやはり、今日は内陸方面は大雨なのだと思った。実際に、全道で記録的な大雨だったようだ。

 13:29、興部着。バスから降りた興部は、時々雨がぱらつく程度だが、雲はやはり低く厚い。そして紋別よりやや気温が低い。流石に道北の入口である。
 そんなことはお構いなく、まずはソフトを注文。実は私の勤め先の近くでも売っていたおこっぺソフト、やはり本場のソフトはこってり濃厚で大変美味しい。次は食堂のラーメンだ。海鮮ラーメンはお昼過ぎにして早くも売り切れらしく、普通のラーメンを頼む。こちらもなかなか美味しい。海鮮ラーメンはもっと美味しいのかもしれないが、今は味わいより塩分と脂分の方が有り難いようにも思う。麺を味わったりお汁を全部飲んだり、可能な限りうだうだして時間を潰し、待合室で居眠りから覚めたところでバスまであと30分。もうひとつソフトを食べ終わり、ようやくバス発車15分前。
 この間、興部では遂に雨は降ること無く推移していた。またもや今日は本当は走れたのではないかという疑問が頭をもたげ始めるが、そんなことを考えてももう手遅れの時間だし、そもそも実際に走り始める気がしない自分がいる。

 14:50、興部発。
 バスが興部川の谷を内陸へ向かってゆく。少し内陸に入っただけで、低山が裾までこってりした雲に覆われ始め、再び水滴がぱらつき始めた。やはり今日は走ってはいけない日なのだ、と思い直す。

 15:17西興部着。
 今日の宿から2〜300mぐらいの場所にバス停はある。どうせ時間はあるのだから、明日の朝組み立てに時間を食うより今輪行する方がいいし、今ここで自転車を組み立てる方が、ホテル前まで荷物を運んでから自転車を組み立てるより楽だ。
 バス停に着いたときにはまだ空は暗く、水滴が空気中に感じられたが、自転車組み立てを終えたときにはもう空気中の水滴は完全に消え、空の中に明るい部分まで見え始めていた。天気が好転し始めているようだった。またもや何だかちょっと気が咎めたものの、周囲の低山はまだとっぷりと雲の中。やはり今日予定の山中コースは、この時間までほぼ全て雨の中だったに違いない。それにもう、今日の宿のすぐ近くに着いてしまった。何を悩んでも後の祭りなのだ。ならば悩まない方がいい。

 15:50、「ホテル森夢」(これでりむと読ませる)到着。
 ロビー、フロントからしてかなりきんきらきんのゴージャスな作りである。部屋も基本的に新しく広い。2日連続でこんなにツーリングっぽくないまともなホテルに連続して泊まっていいのか、自分は芸風が変わったのか、等とも思う。しかし、結局何をやっても悩んでも、旅の時間はいつもと同じように淡々と過ぎてゆくだけだ。今日だって1日そうだったじゃないか。明日朝はまた早朝から出発だし、今はここでできることを思い悩むこと無く前向きにやればいいのだ。
 まだ16時台だがとりあえず温泉の大浴場へ。ゆっくりお湯に浸かって部屋で居眠りし、18時からの夕食に。慣れ親しんだ公共の宿系。たっぷりゴージャスで自分ペースで食べることができる。やはりこっちの方が気を遣わない。
 いろいろ悩ましくはあったが、この時間になって思い返せば、いい休憩で平和な1日だった。

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■■■高地 大輔
2014/8/12 北海道Tour14#6-1

西興部→(国道239)下川→(道道60)上幌内→(道道49)仁宇布
→(道道120)中頓別→(国道276)浜頓別 173km
ルートラボ>http://yahoo.jp/DwpXBg

 さあ6日目、旅程も後半の始まりだ。4時過ぎ、次第に明るくなってくる外は、光のニュアンスが明らかに昨日とは違う。空には青空が見える程度に雲が広がっているが、すぐに消えてしまうことが確信できる。
 外に出ると、空気はそこはかとなく爽やかで、間違い無く今日は晴れだ。出発の朝はやはりこういう空気が漂っていてほしい。

 5:35、西興部発。出発時にはまだ低かった空の雲は、少し進んだ上興部ではすっかり高くなり、しかも色が薄くなって基本的に青空っぽくなってきた。大変いい傾向である。
 更に天北峠への登り始め辺りから、行く手の空が澄み始めた。
 天北峠へは、ほんとに緩い坂が峠手前までじりじり続き、最後に峠部分だけをひょいと乗り越える。以前、といってももう25年前に廃止された名寄本線は、この天北峠越え区間でこの道に併走していた。非力な当時の気動車が、峠部分だけエンジン音高らかな名寄本線からは、峠手前まで道を見下ろしていたのが、峠手前で道がせり上がり、掘り割り状の峠を越えたのを鮮明に覚えている。その頃は、まだこの歳になっても毎年北海道を旅するなんて思っていなかったので、まるで他人事のように道路のせり上がりを眺めていた。
 天北峠から一の橋側に下り始めると、高く薄くなっていた空が一気に晴れ始めた。わずか標高304mの峠ではあるが、いっちょ前に、というよりさすが峠の名にふさわしい現象だ。更に一の橋への下りの途中で、行く手の空は完全に晴れてしまった。
 これで今日は天気予報通りである。きっと下川以北の山奥区間では、素晴らしい晴天が待っていることだろう。

 しばらく森の中を下って周囲の谷間が拡がると、一の橋だ。がらんと開けた国道239の両側に、西部劇の町のようにぽつぽつ家屋が建っているのが、毎回とても印象的な集落である。前述の名寄本線では、一の橋と上興部が天北峠両側の駅で駅間も確か10km近くあり、速度を伴わずに気動車のエンジン音だけが高まる長い峠区間に、乗客としてもそれなりの緊張感とともに乗車していた記憶がある。
 天北峠から下川方面に向かう今日の行程としては、一の橋の次は下川方面の二の橋、続いて三の橋。それぞれ元名寄本線の駅と現在の集落が一致していて、他に集落は無い。思えばほんとに沿線人口の少ない路線だったのだと思う。昔のことばかり思い出すのは、国道239の比較的開けた谷間は、畑の山の形もあまり変わり映えしない嫌いがあるからだ。交通量が少ないのも、のんびりとした雰囲気も、国道にしちゃなかなか上々なのに、毎回一の橋から下川はちょっと退屈で気が急くような気分になるのである。今日は向かい風や横風がやや強い場合が多いことも、その気分を助長する。

 8:10、下川着。もうすっかり雲一つ無い快晴である。西興部から2時間半、気は急いたが特に無理することも無く特に疲れもせず、標準所要時間で到着できた。身体に疲れが残っていないのは、昨日充分休んだ効果が出ているのだ。
 道の両側に民家や商店が並ぶ下川の町並みは、一の橋、二の橋、三の橋に比べて町と呼ぶのにふさわしい。この後向かう予定の、信号すら無い道道60への分岐を横目にちらっと眺め、今はそのまま通過。まずは町の反対側のセイコーマートに立ち寄らねば。この後90km先の歌登まで、コンビニは全く無い。ちなみに自販機は仁宇布と志美宇丹の2箇所、商店は仁宇布にあるものの営業していない可能性がある。

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2014/8/12 北海道Tour14#6-2

 8:35、下川発。
 道道60へ進むと、町外れから早々にサンルダム新道区間への登りが始まる。その天塩川サンルダム、2018年3月に堤体が完成することを、出発直前に知った。急展開だ。初めて工事中の迂回道路の存在と、サンルダムの名を知ったのは、2003年のこと。思えばそれ以来12年の日々が経ってしまった、と思って、自分でも12年にびっくりした。せいぜい6、7年ぐらいの感覚しか無かったからだ。更にこれから3年後、堤体が完成するのである。完成は3月なので、あるいは雪解け水でダムは一気に満水になるのかもしれない。税金を使う以上いつまでもだらだらやるわけにもいかないのだと思うが、それにしても急な展開ではある。急な展開の理由はなんとなく想像できるような気もする。
 感慨とともに谷間を横切る橋の上から、工事現場を見下ろしてみる。ダムがどの辺りにできるのかはわからないが、橋のすぐ下辺りにダンプや重機が停まっているのがよく見えた。

 道道60は、いかにもダム迂回道路風に山の中を進んでゆく。アップダウンがちょこちょこあって、登って下るんなら平坦に作れなかったのかと思うが、とても交通量の少ない道なので、建設費優先線形なのは仕方の無いことかも知れない。
▼動画1分22秒 山間をばんばん突き抜けるサンルダム新道区間
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 山中をもう少し進んだサンル大橋では、もう一度谷間が一望できる。ここは湖上の橋になるのかもしれないと思って、眼下に広々と拡がる山間の森や草原に湖面を脳内画像合成してみる。平地の中を一直線に橋の下を抜け、反対側の森に入ってゆく旧道を見ると、かつて旧道から「いつかあの上から下を見下ろす日が来るのか」と思い始めてから、やはり数年強が経っていることも思い出す。サンル大橋自体は去年から通れているが、去年は雨だった。今年は満を持して文句無い青空だ。ずっとここから眺めてみたかった景色だ。いろいろ思いが尽きない、道道60の私的新名所なのである。

 サンル大橋から北へ向かうと、谷底の地形はどこかでがつんと変化すること無く、平面のまま少しづつ高度を上げてゆく。この地形を考えると、将来のダム湖は、道内の他の人造湖のように、上流側では草地がいつの間にか下流側へ湖になってゆくパターンなのだろう。そして朱鞠内湖のように、建設後数十年かけて立ち枯れの木々が朽ちてゆくのだろう。谷間に拡がるこの森が。
 新道と旧道がおもむろに合流し、以前と変わらないやや細めの道に変わって、道道60は森とサンル牧場の間を更に北上してゆく。かつての旧道区間は山間に延々牧草地と森が断続して、大変楽しい道だった。しかし、2/5ぐらいが切り替わったダム新道区間もなかなか見所があり、ダム以外の区間と合わせて相変わらず退屈しないいい道だと思う。
▼動画1分21秒 サンル牧場と森が断続する道道60
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/6/r0001672.wmv

 辺りの森がカラマツから広葉樹含みの原生林に変わり、ほんの少し登り斜度が上がると、いよいよ幌内越峠まであと少し。少し上がった斜度は峠まで半ばにして再び緩くなり、更に峠手前数百mぐらいでほとんど平坦になる。こちらも原生林の表情を眺めつつ、そのまま幌内越峠を通過。
 上幌内側は打って変わって150m急降下、谷底で道道49に合流。再び美深松山峠へ240mの登り開始となる。

 初っぱなはまず深く薄暗い森の中。登り斜度も幌内越峠よりやや急である。早朝の通過時には熊が出そうでブキミな道だが、9時になっても薄気味悪い雰囲気は濃厚だ。谷底が拡がって斜度が一段落しても、毎回頭上を猛禽類が徘徊し、なんだかこちらの様子を伺っているのだ。いつも熊など出ないじゃないか、大丈夫、楽しんで通ればいいのだ。などと思うが、去年この辺の道ばたで見かけた大きな糞を思い出してしまう。早朝でもこの時間でも、毎回心細い道なのだ。
 道が谷間から登り始めると辺りが開けた。峠までの最後の一登りである。

 美深松山峠をそのまま通過すると、もう仁宇布までは150m下る一方だ。谷底から松山湿原への登り口、そして仁宇布への緩斜面と推移して約6km。最後の直線の先に仁宇布の信号が見えてくると、下川から延々続いた無人区間が、とりあえず一段落することになる。さすがに少しほっとした。

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2014/8/12 北海道Tour14#6-3

 10:25、仁宇布着。
 交差点の軽食喫茶「コイブ」前の自販機で缶コーヒーをいただく事にする。今日はお店は営業していないようだが、その替わりにというか、少し向こうの美深トロッコで蕎麦が食べられそうなので、今後の通過時もあてにすることはできるのだ、と思った。まあしかし、今日は下川で携行食を補給済みだ。
 日焼け止めとムシペールを塗り直し、10:30、そそくさと仁宇布発。

 仁宇布の牧草地では雲が早めに動き、陽差しが辺りをかっと照らしたり、どんどん動く雲に陽が遮られて薄暗くなったりしている。写真を撮りたい場所であまりうまく晴れてくれないのが少し残念だ。
 仁宇布から登る西尾峠は、標高差100mの大変楽な峠である。峠部分で標高380mと、道北の峠としてはまずまずの標高だが、そもそも仁宇布からして標高280mの、道北では異例の山間高原なのだ。
 「西尾峠」の丸太札を眺めながら峠を乗り越えると、向こう側に稜線部の鞍部に少し平場が続き、その後おもむろに谷間の森の中へ60〜70m下りきって、その後フーレップ川の谷間の森林を約6km、延々とだらだら下ってゆく。
▼動画1分31秒 西尾峠から谷間に下る
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 速度ゆっくり目の登りだと、時々獣の気配や物言わぬ森の圧迫感などが怖いが、下りだとそれも一気に通り過ぎることができる。しかし、下りでも登りでも、同じような森の谷間が延々とたっぷり続く印象はあまり変わらない。これこそがこの道の持ち味であり、特に晴れた日の緑の量感は、他ではちょっと味わいにくい独特の雰囲気だ。逆に雨の日や夕方には、極力通りたくない道でもある。
 道がフーレップ川を渡ると、すぐに天の川トンネルが登場。こちら側の入口には、狭くてやや居心地が悪い牽牛橋休憩所がある。ならばさっきの道が牽牛橋なのだろう。何度も通った道だが、梁の名前はいちいち確認したことが無い。次回は橋の名前を確認してみよう、覚えていたら。

 長い天の川トンネルの向こうは、織姫橋休憩所である。トンネルの両側でほとんど登りは無いが、実はフーレップ川の谷間から隣の徳志別川の谷間に移ってきたことになる。本来何らかの峠か丘越えがあって然るべきで、それが全く無いのは、天の川トンネルのお陰だ。
 道北スーパー林道の合流点が近い織姫橋休憩所では、林道を往来するオフロードバイクのエンジン音が聞こえてくる。あずまやがあって比較的立ち寄りやすい織姫橋休憩所に脚を停めつつ、地図交換などしながら奥の山々へ続く森一杯の谷間の広がりを眺めていると、2002年の道北スーパー林道訪問を鮮明に思い出す。

 次は大曲へ。無人ながら、仁宇布以降ようやく登場した地名が付く場所だ。軽い登り返しとともに、ほんの少しだけ谷間が広がる盆地でもある。大曲の方がここに入植されたのかもしれない。道北のこれ程の山奥での開拓は、大変なご苦労だったことだろう。森の中の廃屋に、かつて人が住んでいた痕跡が伺える。今は牧草地と、小さな炭焼き小屋がある程度だ。
 谷間が再び狭くなり、大曲から標高差40mぐらい下ると、やっと、そして突然周囲が拡がった。上徳志別の盆地だ。仁宇布から延々と山の中を北上し、やっと辿り着いた人里である。
▼動画1分7秒 上徳志別到着 盆地が拡がった
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 北側に隣接する志美宇丹と瓢箪状につながった広い盆地は、仁宇布より平坦に広がった盆地、そして広い空が、更に濃厚な道北らしさを感じさせる。それだけに今日のような陽差しの中で、牧草地の輝くような夏の緑と開放感がとても嬉しく感じられる。毎回感じるこの感動は、ここまで延々続いた森とともに、毎年この道を、いや、道北を訪れる理由にもなっている。仁宇布とともに、私的な道北の名所である。

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2014/8/12 北海道Tour14#6-4

 嬉しくなってきょろきょろ見回していると、かみとくツーリストキャンプ場の校舎前に停まっている車を発見。このやや寂れたキャンプ場は、ちゃんと泊まれることをこの時わかった。その後聞いた話によると、古びた校舎の中に泊まることもできるらしい。テントを持たない私でも、それなら泊まることができる。メンバーが集まれば、一度是非ともトライしてみたいものだ。
▼動画1分31秒 かみとくツーリストキャンプ場辺り
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/6/r0001746.wmv

 盆地中程で道道120から、オホーツク海方面への乙忠部へと下ってゆく道道1023が分岐する。盆地の南北を貫く道道120は、ここで徳志別川とも別れ、北側の志美宇丹の盆地縁へと再び緩々と登り始める。
 分岐周辺は、前述のひょうたん形の首部分。志美宇丹で再び周囲が拡がって、元志美宇丹小中学校の廃校がある中心部を通過。開けた牧草地の中、縁へ向かう登り基調が鮮明になってくる。上徳志別、志美宇丹は、通しで通過すると、地形、景色の変化がある志美宇丹の方が狭く思える。ただ、地図で見るとその差は少ないし、盆地に拡がる牧草地と周囲の山々と青空の風景は、両者甲乙付けがたい。
▼動画1分39秒 志美宇丹
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 盆地北端の縁が志美宇丹峠と呼ばれているのを知ったのは、実はつい最近のこと。美幸線未成線もここを直登している程斜度が緩く、志美宇丹から約30m程度の標高差にも、ここが峠なのかと思ってしまう。森の中を下ってゆく歌登側はまだ峠らしいのだが、志美宇丹側は峠まで開けた牧草地が続き、全然峠っぽくない。もっとも美幸線未成線は、仁宇布から歌登、枝幸まで全て緩い斜度の谷間を常に直登している。

 志美宇丹峠を越えると、打って変わって森の中。やや急な、というかごく普通の下りが辺毛内までしばし続き、辺毛内から森が開け、いよいよ歌登の盆地へ下りきる。市街地まではまだ8km、この間標高差は10m程度。普通の地形なら、10m程度の標高差は、多少のアップダウンの下りパートでいつの間にか何となく過ぎてしまうのだが、この微妙な標高差が8kmずっと下り基調で均等に分散されている。更に言えばこの僅かな下りは、歌登の先18km、枝幸の海岸線まで更に平滑度を上げて続く。いかにも道北らしい地形だ。

 13:10、歌登着。
 8時過ぎの下川以来、5時間ぶりのセイコーマート休憩だ。道東の根釧台地200kmコースで1日じゅう1軒のコンビニも無かったのに比べると、5時間走ってコース上にセイコーマートがあるのは大変ありがたい。しかも今日は浜頓別終着。13時過ぎに歌登に着けているのはとても安心感がある。裏を返すと今日の行程がそんなに距離が無いということであり、それは昨日の宿がいつもの滝上ではなく西興部だったことが原因だ。元を正せば、一昨日のチミケップホテル泊が今回の行程分割を決定付けている。事程左様に1泊3万の大事業は、今回の旅程全体に何かと影響を及ぼす象徴的存在となっている。
 まあこういうのも今年の旅なのだ。と思って集中的にがつがついろいろと食べておく。それに次の中頓別までまだ距離がある。標高差200mちょっとの峠が一発、と思って甘く見がちだが、歌登・中頓別間、実は40km近くもあるのだ。

 13:35、歌登発。
 中頓別まで30km。中間には今日最後の峠、標高220mの兵知安峠がある。谷の奥まで進んでからぐいっと登って下る、頂点がとんがった行程断面を持つ道だ。近くの知駒峠も似たような形で、更に言えばもっと北の道に似たような峠がいくつかある。道北最北部の峠の特徴といえるかもしれない。
 たかだか200m前後の標高から考えられないほど谷間の森が深い雰囲気なのも、兵知安峠の大きな特徴であり、この辺の峠の特徴でもある。仁宇布〜上徳志別の長い山間区間より余程山深い雰囲気だと思う。

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2014/8/12 北海道Tour14#6-5

 兵知安峠を越えると、中頓別側は歌登側と同じく谷間へすとんと下り、谷底の森を兵知安へ。兵知安で谷間が拡がるとともに周囲は牧草地となり、ようやく不気味なほどの山深さからは開放される。しかしこの道、まだ中頓別まで20km近くもあるのだ。
▼動画30秒 兵知安到着
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/6/r0001834.wmv

 牧場と森が断続する広目の谷間は、例によってかなり一方的な緩斜面。今日のように風の条件がそう悪くないときにどんどん下るには都合がいい。
 まだ時間は15時。中頓別のセイコーマートで休んでも、かなり時間には余裕がある。明るい陽差しの中、経済運転でてれてれ流せて大変気分がいい。

 15:25、中頓別着。
 浜頓別までもう20km。この分だと1時間で着ける筈、浜頓別到着は驚異の16時台になるだろう。ちょっと距離をセーブしすぎたかもしれないね、などと一人で余裕をかましてみる自分が何とも可笑しい。
 歌登でセイコーマートを出てからまだ2時間弱だが、表敬訪問としてセイコーマートでまたもや休憩しておく。中頓別のセイコーマートには、国道275を行き来する自転車やライダーが立ち寄っているのをよく見かける。私もその一員に加われるのであれば、なんだか嬉しい気がする。

 15:45、中頓別発。
 寿、弥生、下頓別と北上する国道276はかなりの強追い風、僅かな下り基調と合わせ技で、本日の旅程終盤の時間に至って30km/h巡航の絶好調だ。先は見えているものの、それだけに急ぐ理由は何も無い。ならば今やるべき事はこの余裕を活かして体力温存の経済走行である。しかし、海岸がどんどん近づいている。いつこの風が追い風に変わるかわからない。行けるうちに行ってしまうのが、正しいのかもしれない。となったらもうあまり気にせず行ってしまえ。
 調子に乗っただけあり、浜頓別手前の丘陵部では、たかだか20mぐらいの登りがやっぱり少し堪える。でも、登ってしまえば浜頓別はもうすぐだ。それに風に揺れる草原が、そろそろ赤くなってきた陽差しに照らされて鮮やかだ。初めてこの道を通った時には、丘に開ける牧草地の伸びやかな風景に感動したものだった。今は国道275の露骨に国道っぽい佇まいが多少気になる。しかしこれは私の個人的な好みであり、本来この辺りで浜頓別特有の牧草地の風景が目一杯楽しめることに変わりは無い。また丘陵に足を踏み入れてみたら、私の考え方も変わることだろう。
 等と思っているうちに、行く手の森の先におもむろに町外れの建物が、そしてセイコーマートが登場。
 16:25、浜頓別着。明日朝の物資を少し買い込むうちに時間が経ち、トシカの宿着は17時ちょっと前の16:50。

 お待ちかねジンギスカンは18時半過ぎから。それでも到着に余裕があるのは大変いいことだ。安心してゆっくり風呂に入れるし、安心して洗濯もできる。一方で、もう少し遠回りして200km台を目指しても良かったなという気もするが、まあこういう余裕も早めの到着ならではだろう。とにかく出発も到着も前倒しがツーリングの鉄則なのである。

 他のお客さんの間で不安な噂が流れていたのでまさかとは思っていたが、ライダーの夕食前の天気予報では、何と見事に明日は朝の内雨。9時頃には雨が上がって昼からは曇り時々晴れに推移するようだが、悪い方に転ばなければいいが。

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2014/8/13 北海道Tour14#7-1 浜頓別→天塩

浜頓別→(天北南部広域農道・村道エサヌカ線他)浜鬼志別→(国道238)東浦
→(道道1117・889)清浜→(国道238)富磯→(農道・道道1119)沼川
→(道道121)有明→(農道・国道40)豊富→(道道444他)稚咲内→(道道106他)天塩
168km ルートラボ>http://yahoo.jp/uC8aQM

 4時にはまだ軒先から水滴の音がしていたが、5時前になって次第に辺りが明るくなってくると、風とともに雨は止んだようだった。外に出てみるとまだ空気中に水滴は感じられ、地面はじゅくじゅくしている。しかし、空の雲は低いながら動きが速い。昨夜の天気予報では、今朝は8時頃から晴れ。現状は、前倒しで天気が良くなりつつあるということかもしれない。一昨日もそんな感じで、16時過ぎには青空が出てきたではないか。
 バッグを積みに外に出ると、早起きのライダー2人が空を見上げて「まあこんなもんかもしれないですねー」とのこと。3人ともこの早朝に水滴ぱらつく空を見上げ、考えることは同じである。希望を持って出発せねば。

 5:30、浜頓別「トシカの宿」発。
 セイコーマートが2軒もある浜頓別で、出発前にセイコーマートに立ち寄らないのは何だか勿体無いような気はする。しかし必要なものは昨日夕方全部買ったし、そもそも浜頓別のセイコーマートは両方とも6時開店だ。などと考えつつ、国道238からおもむろに天北南部広域農道〜村道エサヌカ線へ。
 今朝のように雲が低く濃厚だと、早朝のこの時間はまだ辺りが少し薄暗い。開けた牧草地の中とは言え、どこまでも無人の1本道、しかもけっこう細い。所詮は町道なので、国道や道道に比べて路盤レベルが低く、草原と人間の移動のための専有空間は一体化している印象がある。特に人が少ないこの時間は、植物や茂みに潜んでいる(かもしれない)獣の圧迫感に押しつぶされるような気分だ。
▼動画1分1秒 村道エサヌカ線 何も無い雨の早朝、ハードボイルドなツーリング(笑)
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/7/r0001906.wmv
 さっきの国道238を思い出し、この時間だと車はほとんど来ないから国道でもいいじゃん、などとふと思う。そんなことを考えていると、行く手や後ろからオートバイや自動車が通り過ぎていき、その度に少し安心したりする。人の少ない道を選んでいるからこうなるのだが、あまりに寂しいと人恋しくなってしまうのは、現金なものだ。灰色の空の下、360°構成要素が少なくて彩度がひくい景色に包まれていると、思考は次第に内向きになってゆく。
 途中から雨が降り始めていた。弱く粒も細かいが、べったりと身体を包むような、いつも甘く見ているうちに気が付くと全身しっとり濡れてしまうような雨だ。単調な景色の中では、立ち止まる理由を見つけにくく、なかなか雨具を着込むタイミングは難しい。頭上と行く手の空は次第に暗くなり、雨はその後消えそうになったりしとしと降りに変わったりしつつ、結局浜鬼志別まで降り続いた。

 村道エサヌカ線が終わった浜猿払の集落には、真新しい住宅が建ち並んでいた。これがウワサのホタテ御殿か、と思った。すぐに国道238に乗り換え、しばし北上を続ける。天北南部広域農道辺りから吹き始めた風は、けっこうな向かい風に変わっていた。空は暗く空気中は雨っぽく、脚を回しても全然前に進まない。波の打ち寄せる音に右を見れば、鉛色の空の下に泥水色のオホーツク海が拡がっている。かといって前方を見ても、一直線の国道と左手に冴えない緑色の段丘と、やはり鉛色の空と泥水色のオホーツク海が拡がっているだけだ。景色が単純なので、こういう天気の時は気分が盛り上がらない道だ。しかも寒い。まだ早朝なので国道にしては車が少ないのが救いだが、国道っぽい雰囲気と先入観だけで、何となく居心地も悪い。広々と北海道らしく雄大で静かな風景なのには疑いは無いが、何となく気が急いてしまう。

■■■2015/3/8
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2014/8/13 北海道Tour14#7-2 浜頓別→天塩

 7:40、道の駅さるふつ着。トイレ休憩と称し、缶コーヒーで暖を取ったりして合計30分ぐらい雨宿りとする。しかし、一向に雨は止む気配は無い。今は先に進むしか無いのである。
 幸いここ浜鬼志別では、雨宿り以外にお土産のホタテを仕入れるというミッションがある。再び立ち寄ったセイコーマートで必要物資を仕入れるとともに、店のおばさんに、少し先の漁協ほたて売店の営業状況を尋ねてみた。このお店でだけ買える格安規格外ホタテは、知る人ぞ知る人気商品なのだ。
 今日は8/13、お盆期間であっても不思議は無いし、道の駅で横目に覗いた漁協はお盆休みだったので覚悟していたが、やはり今日から漁協は休みらしい。他に民間のホタテ売店も浜鬼志別周辺にはあるものの、やはりお盆休みか、少なくともこの時間ではまだ営業していないようだった。最後にこのお店で直接ホタテを買ったのは、確か2009年。その後2012年の訪問時には、やはり漁協のお盆休みと重なって売店でホタテは買えなかった。その時は「格安」は諦め、ホテルさるふつの売店でホタテを買った。今、この時間にホテルさるふつはまだ営業していない。1986年以降北海道Tourの実績で、お土産として一番好評なのが猿払村のホタテなのだが、今年は遂にホタテを諦めないといけない、と思った。
 しかし次におばさんは、かつて想像だにしなかったホタテ問題の解決方法を教えてくれた。何と「日本全国FAXで買える」らしい。つまり、東京に帰ってから漁協営業期間内にFAXで注文すればいいのである。お土産としての意味はやや希薄になり、格安ではない普通の規格品になってしまうものの、ホタテのお土産発送や品質で悩む必要は全く無いのだった。まあよく考えたら、ものの売り方として今時当たり前の話ではあるし、更に帰ってからググってみたら、普通に当たり前にWebフォームでの注文が可能なのだった。
 重要ミッションが解決でき、やや拍子抜けしつつセイコーマートの前でいろいろとむしゃむしゃ食べていると、北方面からもう一人自転車ツーリストが登場。雨具にモンベルサイクルレインジャケットを着ていて、私とオソロである。定番雨具として評価が高いこのジャケット、最近はブルベなどでもほとんどユニフォームのように各休憩ポイントで見かける機会が増えているそうだ。

 浜鬼志別では結局1時間ぐらいうだうだしてしまった。8:40、浜鬼志別発。
 更に国道238の北上を続ける。休んでいる間に路面と空気は乾き始め、空の中には青い色が見え始めていたのが有り難い。地道に努力を続けるもので、今日も運が開け始めた。しかし、向かい風は相変わらず強めだ。向かい風は坂より質が悪い。負荷の具合が見えないから、脚を動かしても思い通りに走れず、ストレスが溜まるのだ。まあしかし、そんなことを考えていても始まらない。とにかく少しづつでも前に進まねば。それに、思い通りに進まず気分的に疲れるものの、一応15kmぐらいの速度は出ている。そんなに悲壮になることはない。
 シネシンコ、知来別。まばらな漁村が、地図上の見慣れない地名とともに、海、道、緑の土手、空だけの景色の先に現れてどんどん大きくなり、やがて通り過ぎてゆく。かったるくてもしんどくても、脚を回してさえいれば、時間と共に先に進むことができるのだ。そして、今日は時間と共に青空部分が少しずつ増え、路面も次第に乾きつつあった。

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2014/8/13 北海道Tour14#7-3 浜頓別→天塩

 知来別でいよいよ猿払村から稚内市へ。少し先の東浜で国道238とお別れし、道道1117で上苗太路川の谷間へ。内陸に入ると風はぴたっと収まってくれた。
 確か2000年代前半、いや、それ以前からだったか、ツーリングマップルの宗谷丘陵内陸部に、破線の途中が途絶えていた道道1117と道道889。それが近年ようやく全通した道道1117の峠越え部分は、一昨年いかにもまだ新開通の道らしい雰囲気が一杯だった。一方以前から地図に載っていたオホーツク側のこの辺は、ややくたびれた路面と路肩、草が生い茂る無人の沿道など、長らく未開通だった雰囲気がぷんぷん漂っている。
 内陸へ向かう道としては、何だかかなり平坦な道なのが、いかにも道北内陸の道らしい。登りがいつの間にか始まっていたのを意識し始めた辺りで新開通区間に入り、次第にペースが落ち始める辺りで道道889への分岐が登場。こんなに下の方だったっけ、などと思いつつ、行程が楽で予定コース通りなのに全く問題は無く、ありがたく道道889へ向かう。

 宗谷丘陵の丘や谷、濃厚に密生する原生林を、道道889は切り通しや橋とともにあまり大した起伏も無く、宗谷岬手前まで北上してゆく。さすが開通まで時間が掛かっただけのことはある、と思わせられる。カーブは多いものの道の線形が緩やかでなだらかなせいか、雰囲気は開放的で、原生林が拡がる丘陵の見通しは悪くない。時々行く手の道が坂を直登のように登っているのも見えて気が萎えるが、谷間に拡がる森は堂々と逞しく、足下の笹原は鬱蒼と深い。道道1117からずっと続いている無人の森林、何となく漂うワイルドさには、道東太平洋岸の道道142に通じる独特の最果て感が感じられる。この道ができたことでこの場所を訪れることができているのだ、とつくづく思う。

 周囲に笹原が拡がった辺りで、原生林に混じって次第に植林らしい整った杉林が現れ始めた。丘と道の起伏は彫りが深くなり、丘陵が下ってゆく東側にはオホーツク海も見え始めていた。丘の向こう、何本も頭を出し始めた風力発電の風車は、宗谷丘陵ウインドファームである。
▼動画1分34秒 道道889 ウインドファームの風車が見えてきた
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 宗谷丘陵のこの辺は、2006年に訪問している。当時ツーリングマップル北海道版の表紙になったばかりだったこの辺の風景は、再訪してもなかなか見応えがある。その頃、ここまでの道道887は、まだダートか未開通だった。長年念願の未済区間を消化できた気分を、伸びやかに拡がる笹原と共に味わえていることが嬉しい。欲を言えば、もう少し青空が拡がっていると更に嬉しいのだが。いや、文句は言うまい。
▼動画45秒 道道889 宗谷丘陵まっただ中
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 宗谷丘陵ウインドファームの風車に囲まれて辺りを睥睨する、標高167mの丸山の下を通過すると、丘陵は次第に宗谷岬方面へ下り始める。
▼動画46秒 道道889 丸山や宗谷肉牛牧場を眺めつつ宗谷丘陵も終盤
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 宗谷岬は丘陵の段丘に隠れて見えない。その段丘の手前に、確か宗谷牛の焼肉を喰わせる店があった筈。というか、平屋の細長い建物がよく見える。宗谷牛はブランド牛肉として有名で、ここの牧場はその名も宗谷岬肉牛牧場というのだ。今日もまたいつの間にか思考が空腹ネタに変わっているが、まだ先が長い。ここは脚を進めることにする。
▼動画39秒 道道889 オホーツク海がよく見える
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 丘陵の溝を、切り通しの向こうに拡がる宗谷湾へ一気に下りきり、11:00、清浜で国道238に再合流。
 3日目からここ宗谷丘陵までずっと北上してきた今回の行程は、今後あと3日半強、最終日まで南下してゆくことになる。今日で7日目、旅程も残り1/3となってしまった。しかし一方、現実としてはかなっり向かい風が激しい。富磯で最北のセイコーマートにわざわざ立ち寄ってみるものの、ややうんざりする宗谷湾海岸である。

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2014/8/13 北海道Tour14#7-4 浜頓別→天塩

 11:30、富磯の南で内陸へ向かう農道へ分岐。下増幌でさっきオホーツク海岸から内陸へ入り込んだ道道1117の終点が合流、中増幌で道は道道1119に合流し、上増幌までだだっぴろい平原の中、遠い先の曲がり角へ直線基調で続いてゆく。
 この間、海岸から内陸へ向かえば、さっきの海岸の強風が少しはマシになるだろうと期待していた。しかし、一旦向かい風からは逃れられたように思えたものの、多少内陸へ入っても、実は風向きが横風気味に変わっただけで、風自体は全く収まらなかった。総体的にはやはり相変わらず向かい風成分が高く、しかも南下するにつれその割合が増えそうな方向へ道は向かっていた。
 そして、内陸に入ってから再び雲は厚く低く、空を覆い尽くしていた。脚と気持ちの疲れは、ぱっとしない天気とともに、道北の平べったい地形とやや単調な緑をますます単調に思わせてしまう。

 上声問辺りから地形は緩やかに起伏し始める。緑の丘と共に次第に増える道のアップダウンを、道道1119は更に南下してゆく。丘の効果で風は少しは弱まっていたが、今度は標高差10m前後のアップダウンと風の相乗作用で、しんどいのは相変わらず。
 この緩やかに隆起する緑の丘は、2012年の訪問時に印象的で、今日も楽しみにしていた。2012年の進行方向は北上、下り基調と追い風の快調な行程で、曇りではあったが伸びやかな風景を存分に楽しめた。しかし、その時の好条件は今日ことごとく悪条件に変わっていて、緑の丘が砂丘のようにすら思えてしまう。まあ、今日は天気もあまり良くない。
 こういう時、勢いよく下ってその勢いを使ってしんどくない程度に脚を回せば、ある程度の所まで登れる。せこい経済走行が私は得意である。何とかそんなしのぎ方で脚を先へ進めてゆくうち、もう今回ここはこれでいいや、という投げやりな気持ちが頭をもたげ始めていた。

 13:00、沼川着。このルート上のオアシスA-COOPと、悪天候時の待避に嬉しい屋根付きバス停がある。ここから先、コースは少しづつ登り基調となる。距離配分からも、豊富までの休憩地点に決めていた場所だ。
 さっきの宗谷湾から1時間半。同じ稚内市でもあるし、沼川なんてすぐだと思っていた。しかし、けっこう時間が掛かってしまった。平坦な道北内陸部は地形を把握する手がかりが少なく、事前に距離感を掴みにくいのだ、と思った。向かい風もかなり効いている。
 今日はこの先、有明、目梨別辺りまで南下してから、折り返して兜沼まで北上し直し、日本海沿岸の道道106へ行くつもりだった。しかし13時過ぎの段階で沼川だと、宿がある天塩到着は19時頃になりそうな気がしてきた。今日の宿は公営の温泉施設なので、別に19時でも夕食には間に合うのだが、夕方遅くまで強風の中で揉まれると思うともううんざりだった。兜沼から抜海へは去年通った道だし、報われない気分のアップダウンが続く。
 今、豊富へショートカットし、20km弱先の豊富から道道444でサロベツ原野を横断すると、サロベツ原野や日本海沿岸で景色を眺めてのんびりできる。サロベツ原野から利尻島が大きく見えるのは、道道444の大きな魅力であり、また訪れてみたい。日本海沿岸道道106の、海と空と平原だけのほぼ同じ風景も、確かにここでしか味わえない風景だ。しかし、それが抜海から天塩までの50kmが稚咲内からの25kmになったって、十分すぎるぐらいだ。
 行程の下方修正は確かに後ろめたい。しかし、走行距離なんてちょっとぐらい短くなったっていいじゃないか。コースがツーリングとして楽しくなるなら。などと、言い訳は瞬間的にまとまってしまった。

 13:20、沼川発。
 川西、曙と丘陵部のアップダウンが続くのは、元々の有明方面でもショートカットの豊富方面でも変わらない。しかし、豊富までもう10数km。ノルマが激減したことにより、相変わらず向かい風ながら気持ちはだいぶ軽くなっている。
 幌加、豊瑞、福永と、道北の丘陵部からサロベツ原野の豊富へ、次第に高度を下げてゆくのも気分が楽な大きな要因かもしれない。そう考えると、沼川から豊富へは未済経路を含むこともあり、何だか風景まで目新しく思えてきた。つくづくツーリングには適正距離というものが必要なのだと思う。

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2014/8/13 北海道Tour14#7-5 浜頓別→天塩

 14:25、豊富着。町の北側のセイコーマートでしばし休憩。さっき沼川で休んだばかりだし、今日の終着天塩にはセイコーマートがある。明日の物資はまだ買う必要は無い。補給ポイントが多いのは、道北と道東の根釧台地辺りとの大きな違いだ。
 14:40、豊富発。
 稚咲内へ向かう道道444は、サロベツ原野のど真ん中を日本海へ向かう、大変見晴らしの良い道だ。前回通ったのは2010年。正面間近に見える利尻島に、度肝を抜かれたのをよく覚えている。今日は雲がやや多く、陽差しも利尻岳のぎざぎざの稜線も雲に隠れている。しかし、広大なサロベツ原野を眺めるには、サロベツ原野を横断するいくつかの道のうち、この道が一番好ましいと思う。そして途中から海岸部に近づいたためか、利尻の裾がはっきり間近に見え始めた。
▼動画46秒 道道444のサロベツ原野 まだ利尻は見えない
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 途中、サロベツ原野豊富ビジターセンター辺りで景色を眺めていたら、後ろからやってきた若いツーリストに道を聞かれた。これからキャンプ場のある稚内辺りまで向かうため、国道40へ行きたいとのこと。彼はドコモスマホのGoogleマップだけで走っていた。思い切りの良さにも、ドコモ通信網の広さにも脱帽だ。ちなみに私のスマホだと、電波状況と電池の持ちの両面から、まず無理だ。
 今この場所なら、豊富以北でアップダウンがある国道40より、日本海海沿岸の道道106の方が車が少なく景色が良く、しかもほとんど平坦だ。だめ押しで今日は北上方向だと多分追い風になる。特に国道40を経由しなければならない理由が無ければ、道道106の方がツーリングとして楽しいに違いない。若いツーリストとそんな話をしたり、時には立ち止まって利尻やサロベツ原野に感動しながら、2両編成で道道444を稚咲内へ。

 稚咲内で道道106に合流。稚内へ向かう彼は手を振って、稚内方面へ走り去っていった。こちらはやっぱり強い向かい風の中を南へ。
▼動画46秒 道道106 稚咲内出発直後
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 15時を過ぎて陽差しは次第に傾いてきたが、一方で雲は更に高く少なくなり、青空基調と言っていいまでに天気が良くなっている。さっきサロベツ原野から利尻島がよく見えていた通り、日本海上の天気はいいのかもしれない。
 右には日本海、左には草地が、少し離れた低い丘まで拡がっている。開けた行く手と空が広々と、特に今日のように天気が悪くないと、風景の開放感は比類が無い。そして空と地面が接する視界の先へ、道道106はどこまでも続いてゆく。時々海側の丘が開けて海面が見えたり、砂浜が見下ろせたりして、ともすれば単調になりがちな行程のアクセントになってくれるし、振り向けば利尻島が相変わらず間近にでっかく見える。特徴的なぎざぎざの稜線は、やはりまだ完全に雲に隠れているが、裾はさっきのサロベツ原野よりますますはっきり見え、思わず立ち止まってしまうほど見事だ。旅程終盤にして、明らかに空気中が澄み始めている。
 向かい風はつらいものの前へ前へとのろのろ進んだり、脚を停めて景色を見回しているうちに、稚咲内から既に遠くに見えていたオトンルイ風力発電所の風車群が、少しづつ少しづつ次第に近づいて、横を通り過ぎてゆく。

 日本第3位の大河、天塩川の河口部を大きな橋で渡ると、もう天塩の外れだ。16:55、天塩着。過去何度か使っている町外れのセイコーマートで明日の物資を補給し、17:15、天塩温泉「夕映え」着。
 やや早めの到着だ。ショートカットがやや効き過ぎて距離は168kmと短めだったが、まあこういうのも安心感があって悪くない。

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2014/8/13 北海道Tour14#7-6 浜頓別→天塩

 早々に温泉の大浴場で汗を流すことにする。熱すぎずぬるすぎず、海岸らしく塩っ辛く、湯船で一息付くのに向いている温泉だ。まだ明るい夕焼け空を眺めながら、今日1日を思い出してのんびりお風呂に浸かっていると、つくづく幸福だ。もう7日目の行程も終わった。旅程全体として、残り1/3を切ったことになる。ということは、旅程がもう終盤に入っているということだ。明日も朝のうち雨っぽいみたいだが、まあ何とかなるだろう。嫌でも時は過ぎてゆく。
 露天風呂から内風呂に戻り、そろそろ上がるかなと思っていると、「高地さん」と呼ぶ声が。何と釧路空港でお会いした、BikeFriday乗りの方との再会だった。そう言えば確かに、私と同様旅程後半に道北に向かわれると仰っていた。今日は隣のキャンプ場泊で、併設の温泉に来たら、入口に見たことがある自転車が置いてあった、とのこと。普通風呂の中や脱衣所でいきなり会っても、予備知識がないとまず誰だかわからないと思う。自転車で誰だかわかっていたというのがいかにもサイクリスト特有の現象で、大変可笑しい。
 その方には謝らないといけないことがあった。釧路空港で相手の行き先も考えずに、自分目線だけで「これから晴れますから」などと口走ってしまったのだ。しかも私の方角は予報通り晴れたものの、その方が向かった阿寒方面は、やはり雨だったようだ。恐縮しきり。しかし笑って許していただけて、そんな話もとても楽しい旅先の話なのだった。

 夕食後まで海上の夕焼けが見事だった。しかし道北全体に、夜から明け方に掛けて雨との天気予報が出ていた。明日は昼前から天気が回復し始めるようだが、内陸部には雨が残るかもしれない。明日予定の知駒峠は、断念しなければいけないかもしれない。2日連続ショートカットになってしまう。

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2014/8/14 北海道Tour14#8-1
天塩→(国道232・開拓農道町道浜更岸線他)啓明→(道道119)佐久
→(国道40)音威子府→(村道他)咲来→(道道220)歌登→(道道120他)仁宇布
144km ルートラボ>http://yahoo.jp/MGE9-P

 道北の天気予報は午前中雨だった。午後は晴れてくるらしい。そして夜が明けると、日本海の上は空が高く、雲が切れて青空が出ていることがわかった。山の方は一転、濃厚な低い雲がびっしりと低山の裾まで覆っている。山の方は天気予報通りなので、海上は晴れているのだろう。昨日の日本海はそうだった。
 昨日までの計画では、今日は雄信内経由で知駒峠へ、続いて兵知安峠から歌登へ。歌登から先は一昨日の逆走で道道120、仁宇布へ向かうというつもりだった。しかし天気がこれだと、午前中は内陸の山間には行きたくない。ましてや標高450mの知駒峠に、標高は226mだがかなり山深い兵知安峠が続く。
 代案としてどういう可能性があるかというと、幸い2003年に途中分岐で換装していない、道道220がすぐ近くにある。道道220の先は国道40を介して音威子府から咲来、そして道道119で咲来峠を越えて歌登に向かえば、当初のコースに復帰でき、当初のコースより短くはあるものの適度なボリュームの、しかも途中にネタが一杯のコースが一丁上がりだ。
 ちょっとしんどい気持ちに雨予報という大義名分が加わって、一気に計画の下方修正が決まってしまったのであった。下方修正ではあるが、何度山方面の雲を見ても、どう考えても知駒峠に向かう気はしない。妥当でしょう。うん。

 部屋からもう一度日本海方面を見る。海岸にはキャンプ場があり、昨日再会したFriday乗りの方を目視で探してみるが、まだキャンプ場はひっそりしていて、人影も自転車も見当たらない。今日も夏の1日が、キャンプ場で夜を明かした人々の1日が始まろうとしている、そんな感じである。
 外へ出ると、上空が晴れ始めていた。というか、この辺りだけなら実に快適な、道北の夏の朝である。よし、この中を一日走るぞと思ってはみるが、辺りを見回すと、山方面は完全に上半分を厚く濃厚な雲が包んでいる。内陸へ向かうとどういうことになるのかはあまり考えたくない。しかし今日の宿はかなり内陸の仁宇布。例え輪行で到着するにしても、全輪行しないなら、どこかで必ず内陸に向かわなければならない。歌登に行ってしまえば時間的にもうリカバリーできない。仁宇布へはそのまま道道120を走って行くしか無いのだ。だから、今日最終的に自走で歌登に向かうかどうか、音威子府で判断する必要がある。その時点で雨っぽかったら、列車で美深に向かうしかない。幸い去年音威子府から全輪行で仁宇布へ向かっていて、時間も必要な予約も全部わかっている。うん、これで決まりだ。

 5:55、天塩温泉夕映え発。
 まずは更岸基線から開拓農道町道浜更岸線へ。開拓農道とは凄い名前だ。他ではあまり聞いた記憶が無い。その実態は、海岸の牧草地や漁村の中を一直線に続く細道だ。やや寂しげでハードな雰囲気は、開拓農道の名に相応しい。天塩側にはダート区間もある。離合しつつ併行する国道232はやはり海岸部の平地や丘陵を豪快に突き抜けて乗り越える典型的な国道であり、近年やや交通量が増えてきたのも加わって、国道232とこの町道浜更岸線は対照的な雰囲気の道となっている。そういう意味では、昨日通ったオホーツク海岸の村道エサヌカ線とキャラが共通しているように思う。
 今日の日本海沿岸は、青空に浮かぶ雲は低いものの、速度は速くて勢いよく、しばらく雨が降りそうな気はしない。草原は横から射す朝日に照らされ輝き、気分が盛り上がる。
▼動画46秒 開拓農道町道浜更岸線 緑に輝く牧草地
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 気をよくして山の方を眺めると、未だ山々は厚く濃い雲に覆われていて、やはり向こうに向かう気はしない。この先啓明から、内陸方面に嫌でも向かわなければならない。しかし、今は先のことを考えても、そのときなるようにしかならないだろう。今日はまだ先の心配はせず、気持ちのいい朝の海岸コースを目一杯楽しむことにしよう。こんな風景の中、滅多に走れるものではないのだ。
▼動画1分1秒 開拓農道町道浜更岸線 右に日本海を見渡す
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2014/8/14 北海道Tour14#8-2

 啓明の手前で橋の崩落工事に遭遇し、国道232の旧道を経由。6:50、啓明発。
 今までの海岸からは打って変わった谷間の道、道道119で今度は東へ向かう。2003年、この辺りに来た時には、逆方向からこの先で道道256に分岐、ロクシナイ峠へ向かっていた。開拓農道町道浜更岸線は2009年に訪れているので、さっきの迂回区間とこの道道119の道道256までの間が、今日の未済消化区間ということになる。
 涼しかった海岸部に比べて、内陸は陽差しが出ると路上がぐんぐん暑くなり始める。しかし啓明の農村部を過ぎると、谷間は無人の茂みになり、空は急に曇り始めた。内陸部の雲はまだ全く消えていないのだ。
 道道119はあまり斜度を上げずに、だらだら平坦なくねくね道とともに内陸方面へ続いてゆく。かなり南だが同じような日本海沿岸東西ルートの国道239と、似た雰囲気の道だ。ただこちらの方がかなり距離が短い分、峠部分への展開は速い。そして霧立峠を越える国道239と違って、道道119の峠部分は咲花トンネルという名前のトンネルだ。途中、前述の道道256分岐辺りから雲が低くなってきて、時々ぱらぱらっと小雨も降り始めてきた。道道256の分岐なので咲花トンネルへの距離感がわかり、そしてトンネルで抜ける山の裾に、やはりまだ雲が溜まっていることもよくわかった。
 咲花トンネルを抜けると、向こう側もかなり雲が低い。その割には辺りが時々急に明るくなる。雲が薄くなっているのだ。どうやら山裾に厚い雲が取り付いているものの、その動きは早いのかもしれない。希望的観測をするならば、恐らく今日は全体的には天気予報通り、午前中次第に回復傾向に向かうのかもしれない。
 ここまで道道119は、登りも下りもかなり狭い閉鎖的な谷間だった。風景は森と茂みだけで変わり映えせず、今日の行程を音威子府で判断するミッションも控えている。天気の考察以外にあまり頭に浮かんでくるものはない。

 8:20、佐久到着。8時に佐久に着けた。この分だと、24km先の音威子府到着は9時半頃だろう。これだと音威子府で駅蕎麦を食べても、仁宇布にのんびりペースで16時前に着けた去年と全く同じパターンだぞ。知駒峠ショートカットの効果が出過ぎである。
 と思ったところで気が付いた。あ、そうだ、トロッコ王国に乗ればいい。去年早めに仁宇布のファームイントントに着いて、女将さんに「トロッコに乗ってくれば良かったのに」と言われたことも思いだした。天気による現地下方修正の結果だが、その宿題を1年でこなせるということになる。下方修正による今日のちょっと後ろめたい気持ちに、俄然前向きな目的が現れたのだった。

 佐久から音威子府までは国道40。切り立った斜面に挟まれた谷間に、幅の広い天塩川と宗谷本線と道だけが24km続く。3日前、私の予定コースを全輪行に変えてしまった雨の影響はもう収まったのか、今日の天塩川の水量は普通の部類だ。確か昨日だったか、宗谷本線が雨の影響で停まっているという話を聞いた気もする。風景は基本的に国道っぽい道と森と天塩川だけなので、変化と言えば流れる川と通過する自動車だけだ。たまに牧草地やトンネル、「北海道命名の場所」などという看板も現れるものの、基本的に単調な景色は、区間距離の長さを更に長く感じさせる。更に向かい風と相まって、僅かな登りがじれったい。谷が狭くて地形が平地っぽくないせいか、雨がまたぱらつき始めた。急いで雨具を着込んだりしていると、気分もだれてくるというものだ。しんどくなって途中立ち居眠り休憩(眠いとそういうのでごまかすこともある)なども挟みつつ、行く手に谷間が開けたときは嬉しかった。

 9:35、音威子府着。以前45分で通過できたこともあったこの区間。まあその時は逆方向からの下り基調かつ追い風ではあったが、今日はやはり体調気分とも低調なのかもしれない。ならばその観点からも、下方修正は適切な措置のかもしれない。目の前の現実としては、ちょうど音威子府駅の駅蕎麦が営業を始めたところだ。列車で訪れると、営業開始時刻が各停特急の連絡時間に間に合わず、自転車で訪れると予定をこなすのに汲々として、立ち寄る余裕が無い。狙って訪れないと、なかなか食べることが難しいこのお店、今日は表敬訪問で2杯頂いておく。

■■■2015/3/15
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2014/8/14 北海道Tour14#8-3

 その間、この後どうするかの判断を先送りしていた。この先あの山深い道道120で仁宇布に向かうのか、つまり4〜5時間後雨に降られるかどうか、歌登ではなくここ音威子府で判断しなければならない。仁宇布への自走を諦めるなら、美深経由の輪行一拓となり、音威子府出発は13:16と一気に時間が空く。一昨年はこのパターンで仁宇布に到着した。今年もこれで行くとなると、何だか道北後半のだれた旅程が定常化するような気がしていた。しかもここまで、5日目の全輪行を除いて順調な旅となっている。尚更残念だ。一方、自走で仁宇布に向かうなら、ここまでの下方修正でだいぶ行程に余裕があるとは言え、なるべく早く出発すべきだ。などと考えながら蕎麦を食べ終わって自転車に向かうと、思いがけず空が晴れ始めていた。これなら即出発だ。
 デフォルト経由の町外れのセイコーマート立ち寄り後、10:00、音威子府発。国道40から咲来へ向かう村道の途中辺りから、青空の面積がどんどん広がり始めた。午後から晴れ始める予定が、期待通り前倒しで好ましく推移しているのかもしれない。これでコースも時刻も、そして天気の傾向も、自走で音威子府から仁宇布に向かった去年と同じである。

 咲来峠へ向かう道道220は、谷間を長い直線基調で少しずつ高度を上げてゆく。いつも陽差しが照りつけて暑い気がする道だが、今日は再び出てきた低い雲のお陰でやや涼しい。
 登り切った咲来峠は標高僅か235m。標高の低い峠だが、峠を越えた歌登方面から、急に涼しい風が吹き始めることが多い。峠の咲来側では、美深盆地からやってくる内陸部特有の暑さに悩まされることが多く、歌登側の涼しさがより際立ち、オホーツク海側に出たことを感じさせてくれるのだ。咲来峠から海岸部の枝幸までは約40kmあるにも関わらず、咲来峠から枝幸までは標高差120m。この間登り返しも無く、ほぼ均等な平面が海岸まで続く。あるいはその地形のお陰で、オホーツク海の風が峠まで吹いて来るのかもしれない。
 今日の咲来峠は、オホーツク側に相変わらず雲が多い。雲は致命的なほど暗くはないものの、ややしっかり厚めで、視界いっぱいに広がっている。ここまでちょっと楽観的な予測をしたこともあったが、現実は11時でもなかなか簡単に晴れ渡ってはくれないようだ。

 本幌別に下りきってから、歌登まで約20km。
▼動画1分1秒 本幌別
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 開けた牧草地の中に続くこの道では、何回か雨具を羽織ったり仕舞ったりする羽目になった。時には急に一天にわかにかき曇り、通り雨が土砂降りで降り始めもした。幸い雨はそう深刻なものではなく、雨宿り場所を探しつつ5分も走っていると、突然すっと収まってくれた。また、次第に横風が吹きはじめた。風の方向としては北風だ。歌登へ向かうにはやや向かい風だが、歌登からは道道120を南下するので、この風は追い風に変わる。
 歌登手前で低い雲は去り、代わりに青空と高い筋雲が現れ、辺りは夏の陽差しですっかり明るくなった。とりあえず、人里周辺の天気は安心できるという状態なのかもしれない。

 11:50、歌登着。何とかお昼前に歌登に着いた。このままのんびりでも順調に進めば、仁宇布には16時前に着けるかもしれない。最終トロッコには十分間に合うだろう。ただし、見上げる雲の動きは速い。山間の天気は未だ予断を許さない。実際に、セイコーマート休憩の間、またもや低い雲が空を覆い始めた。このまま夕方まで空模様は、3歩進んで2歩下がる、なのかもしれない。しかし多少降られようが、もう選択肢は「このまま進む」しか残っていない。ならば進むしか無い。

 12:30、歌登発。
 空を覆う低めの雲にはあまりすかっとしたニュアンスが無く、これから志美宇丹、上徳志別と道道120のハイライトに向かうに当たり、やや残念な傾向だ。まあ晴天の道道120は2日前に十分味わったし、とりあえず雨じゃないのが大変有り難い。
 志美宇丹ではしばし旧道を迂回してみる。集落の北側から現在の道道120の東側を回り込み、旧小中学校の脇を通って、集会場の近くで道道120に合流するこの道。迂回という程の回り道ではなく、こちらを通っていると、初めて来たときから数回はこちらの旧道を通っていたことを思い出す。そういえばこの道も、始めて通ったのは2000年。もう15年目経ってしまった。

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■■■高地 大輔

2014/8/14 北海道Tour14#8-4

 上徳志別を過ぎて大曲の谷間に入ると、頭上の雲はますます低くなってきた。全体的に道北の天気は曇り基調。昨夜が雨だと、山間にまだ雲が残っていても何の不思議も無い。それにしても、今日の道道120では、すぐに雨が降り始めそうな空が続いている。変な風も吹いてきて、明るいのに空気中に水滴を感じる時もある。
 天の川トンネルを抜けて隣の谷に移っても、空模様は一向に変わらない。更に西尾峠の手前辺りから風が強くなり、辺りは更に暗くなり始めた。谷間反対側の低山は、既に裾近くまで雲の中だ。風雲急である。こうなると流石の山奥、平地の人間にはまるでこれから嵐が来るような、かなりの迫力が感じられる。早く峠を越えてしまいたい。
 雨がぱらぱら降ってきたところで、西尾峠を何とか通過。峠のすぐ向こうで、厚い雲の間に青空が現れ始めた。ぱらついてきた水滴は収まって辺りが明るくなり、何とかひと安心。こういう場合に、峠の向こうだろうが実は雨が弱まらないこともあるが、今回は助かったようだった。
 仁宇布の盆地に降りてくると、もう雲は高くなって雨の心配は全く無い。
▼動画1分48秒 仁宇布到着
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 拡がった牧草地を下りながら、何とか仁宇布に着けた、音威子府で自走を決めて良かった、と嬉しくて仕方が無い。下方修正の1日でも何でも、何だか今回最大の山場を越えたような気がしていた。

 15:15、仁宇布着。すぐに交差点からよく見えるトロッコ王国の事務所へ向かう。
 小さなログハウスの事務所では、16時便の受付に間に合うことができた。料金は\3500。15:50から事務所前で説明があるので、集まって欲しいとのこと。実は16時の後にもう1便、17時の便があったこともわかった。この後宿で落ち着いて風呂に入り、夕食前にビールを飲んで夕方の風景を眺めるためには、もちろん16時の便の方がいい。
 仁宇布の「トロッコ王国美深」は、以前から一度は訪問せねばと思っていた。美幸線の廃線跡を使って、地元の方がNPO法人を立ち上げ、施設整備と運営管理に大変な努力をされているという話は有名だし、仁宇布を通る度、遠目にその賑わいを眺めていた。更に訪れた方から「お勧め」な旨を聞いてもいた。だめ押しは、一昨年のファームイントントだった。輪行で15時前にファームイントントに着いたとき、女将さんに「トロッコに乗ってくれば良かったのに。お勧めですよ、あれ。是非一度乗ってみて下さい」と言われていたのだ。

■■■2015/3/15
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2014/8/14 北海道Tour14#8-5

 発車前の説明には、40〜50人程度の乗客が事務所前に集結。ついさっきまで事務所周辺にいた人々の2倍ぐらいの人数に、びっくりした。小さいエンジンと自転車のサドルが取り付けられたトロッコは、全部で約20台。私のような個人おやじ客は希で、子供連れご家族とか友人っぽい二人連れなどが多く、大体1グループ1トロッコに割り振られている。トロッコの乗車手順や取扱、コース説明などの説明後、係員さんに導かれるままトロッコへ。椅子は少し小さいママチャリ用サドルで、普段革サドルに乗っている身としては、やや痛く感じられた。しかし係員さんに手伝って貰ってトロッコが動き始めると、そんな気持ちはどこかへ吹き飛んでしまった。とにかく大変に楽しいのである。
 道道49沿いなので、過去通った時に何度も道から眺めていたと思っていたこのトロッコ路線だが、脇から眺めるのと実際に走ってみるのは大違い。
▼動画2分31秒 仁宇布出発 まずは茂みから牧草地へ
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 空には日差しが現れていた。きらきらと緑に染まるような森の木漏れ日の中、旧美幸線をトロッコがエンジン音を上げて進んでゆく。がたごととレールのジョイント音はかつての赤字ローカル線そのものだし、昭和30年代後半開通路線らしいコンクリート橋でペンケニウプ川を渡ったり、時々開ける牧草地の中を快走したり。
▼動画2分2秒 森の中を疾走 木漏れ日きらきら
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 道道49の高広PA脇まで往復数km。高広PA脇に設けられた周回線では、カーブがかなりきつくて速度に若干注意は必要なものの、初めての人でも乗車したまま周回が可能だった。最高速度はGPS表示で30km程度。ただ、前後トロッコとの間隔や振動、エンジン音などにより、大体25km/hぐらいで走るのがいいようだ。
 説明や折り返し時間含め、乗車時間は45分ぐらい。楽しくてあっという間だが、ボリュームたっぷりで大満足でもある。そして眺めるにつけ、設備の補修修繕を含め、大変な手間が掛けられた施設だと断言する。乗ってからの感想は、「楽しさ、感動に溢れた乗り物。\3500は大バーゲン的に安い。近くを訪れて時間があるなら絶対行くべき。」だ。このトロッコをもうかれこれ16年も維持されている美深町の方々の努力は、今更ながらではあるが特筆に値する。
 というわけで、大満足のトロッコ王国は、今年の道北の大変いい思い出になった。

 17:10、ファームイントント着。
 過去最高の状態に比べると、夕焼け空には雲が多い。しかし思惑通り、風呂上がりに牧草地の夕暮れを眺めながら、美味しいビールと夕食を頂くことができている。毎度の羊乳グラタン、ジンギスカンも大変美味しく、お腹一杯で幸福この上ない。ここまで走ってきて良かった、と心から思える、近年私の北海道ツーリング上の無くてはならない宿である。

 天気が次に崩れ始めるのはどうやら来週半ば以降。最後まで安心して毎日予定をこなせそうだ。一方、明日の天気は崩れないまでも、道北の天気は朝のうち曇り。行きに通った道道49〜下川経由、道道101で旭川盆地へ向かうコースを、明日のためにGPSに入れてきてある。しかし、例によって山間は雨の危険がアブナイ。そして雨じゃなくても、早朝の山間は薄暗いだろう。2日前の朝に通った道道49の美深松山峠区間を、かつて晴天の7時台に通ったことはあった。しかし、薄暗い曇りの日、早朝に通る気はしない。
 どうも消去法で、去年通った美深〜国道275〜幌加内のコースに決まりそうだ。去年通ったとは言え、去年は幌加内から先が雨のためにバス輪行になってしまったので、幌加内経由で旭川に向かうのは楽しみでもある。
 明日は早朝から美味しい朝食を準備して下さる予定なので、晴れでも曇りでも霧でも、腹一杯朝食を食べながら牧草地の朝を眺めて決めればいい。

■■■2015/3/15
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2014/8/15 北海道Tour14#9-1

仁宇布→(農道・道道49他)美深→(国道275)幌加内→(道道48他)下幌加内
→(道道72)共和→(道道915)嵐山→(道道98)江神橋→(市道他)西御料
→(国道237)西聖和→(国道452)五陵→(農道)大村
169km ルートラボ>http://yahoo.jp/g5gvbK

 ファームイントントの食堂から、雲みたいな濃い霧に覆われている早朝の牧草地がよく見える。しかし霧の上空は澄んだ晴れで、つまりその霧はこちらには届いていない。辺りは未だ完全に明るくなっていないが、これなら出発する時間ぐらいにはすっかり晴れそうな気がした。
 しかし次に荷物積みに降りてきた時、空一杯に濃く低い雲が拡がり、青空はすっかり見えなくなっていた。少なくとも朝のうちはこの空が続きそうな気がする。仮に30分以内にここ仁宇布で晴れ始めたとしても、山間にはまだ雲が残る可能性が高いだろう。ということは、山深い美深松山峠方面へ向かうより、美深盆地へ下ってから、国道275で美深峠へ向かうのが良さそうだ。
 などというのはある程度想定内の話であり、さっさと荷積みを終えて朝食とする。窓の外、薄暗い牧草地に厚い雲は、これもまたよくある道北の朝の風景だ。そして道北最後の朝、仁宇布で美味しい朝食など頂きながら、その風景を見ることができることこそが素晴らしい。そもそもこの早朝に朝食を準備してくれるだけでも有り難い。これだから、ファームイントントを道北最後に持ってくる近年のパターンが止められない。

 6:20、仁宇布「ファームイントント」発。
 霧っぽい牧草地の中、まずは仁宇布の交差点まで一気に下ってしまう。開けているので視覚的には登りも下りもわかりにくいが、下ってみるとどんどん速度が上がり、行きになかなか思うように進めなかった理由がよく理解できるのは毎度のこと。ファームイントントまで意外に登っているのだ。
 続いて道道49。途中集落が全く無いペンケニウプ川の谷を、美深盆地へ21km、標高差約200m。かつて「日本一の赤字線」として大変有名だった美幸線は、美深の次は班渓、班渓と次の終点仁宇布との駅間距離は20km弱。美幸線という路線は、開通した区間だけでもかなり極端な路線であり、美幸線を走ったキハ22気動車にとって、約200mの標高差はなかなかしんどかったと思う、
 しかし自転車で下る場合、21km標高差200mはかなり緩い下りである。そして谷底の風景は単調だ。下り斜度が緩くなった挙げ句、軽い登り返しが現れたりもする。おまけに今日かなり強めの向かい風が吹いていて、下りといえども思うように進めない。そうでなくても長い谷間は、行けども行けども行く手の山影が途絶えず、なかなか狭い谷を脱出できない。
 その間、雲はそう高くないが、次第に雲が濃くなって落ちてきそうな雰囲気でもない。しかしやはり、美深松山峠方面へ向かったらあまり好ましくない事態に陥ったかもしれない。

 前方の山影が切れ、茂みみたいな木の中に建物の影が見えた。班渓発電所だ。地図を確認するまでもなく、ようやく美深盆地だ。気が付くと仁宇布出発から1時間近く経過していた。盆地中程に出て国道40に合流。ようやく青空の色が見え始めた。路面の隅の方はまだしっとりしているような気もするが、いい傾向だ。今日はこれから次第に、そして旭川で暑すぎない程度に晴れて欲しい。
 7:30、美深セイコーマート着。少し缶コーヒー休憩をしておく。朝食を食べてくると、朝のうち補給時間を食わずに助かる。

 美深の町中、十字路の分岐で国道275を幌加内方面へ。去年、国道275で雨に悩まされた挙げ句、幌加内で遂にバス輪行となってしまった。今年は空に青い色が見えているので、少なくとも去年のようなことは無さそうだ。しかし六郷の谷間辺りまで、雲がどんどん薄くなっていたのに、玉川から南下が始まると、空は再び雲で覆われてしまった。まあ、雲は明るいし、そう簡単に晴れるとは思っていないし。
 玉川、泉と農村が続き、泉の一番奥で美深峠への登り区間が始まる。国道275は国道だけあり、標高160mの泉の一番奥から標高439mの美深峠まで、登り280mを均等な斜度で美深峠まで登っていく道だ。しかし5kmという区間距離とその均等な斜度より、実際の登りはしんどい。道が豪快な直線基調なので、一直線の道を見てうんざりしてしまうのだ。
 しかし、泉大橋、うるべし橋など何カ所かの橋で、眼下の谷底から天塩山地へ続く大樹海を見渡せる。その眺めは、北海道でもあまり類を見ない迫力があり、しんどい登りで立ち止まる口実としてもとても有り難い。

■■■2015/3/21
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2014/8/15 北海道Tour14#9-2

 9:20、美深峠通過。
 尾根を回り込むと、母子里方面に青空が見え、下る途中で陽差しも登場。いい傾向だ。そのままささっと下ってしまう。
▼動画46秒 母子里到着
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/9/r0002621.wmv
 母子里交差点脇のホクレンスタンド自販機で、缶コーヒーだけ飲み、そのまま出発。牧草地で何回かのアップダウンをバウンドした後、数10m登って朱鞠内湖外周区間へ。特徴的な白樺の森の中、ストレスにならない程度のアップダウンが続く。美深峠やこの後の朱鞠内以南に比べて道の線形はやや変化に富み、ところどころで湖面が見え、時には対岸から天塩山地まで見渡すことができる。こういう湖岸の道は、実は北海道には少ないように思う。美深峠や政和、幌加内盆地のソバ畑とともに、幌加内町の道を魅力的な道にしている大きな要素のひとつが、この朱鞠内湖湖岸区間だ。
 湖を巻いて南岸へ向かう間、雲は一旦低くなった。南岸では再びかなり高くなり、道道251との分岐辺りの平場で青空が登場。毎回ここで天気が変わるのだ。
▼動画46秒 道道251との分岐辺り
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/9/r0002654.wmv
 青空に期待はしていたが、陽差しが現れた途端に突然かっと辺りが明るくなり、照り返しでかなり暑くなってきた。同じ道北でももう南部。昨日走っていた宗谷丘陵とかサロベツ原野辺りとは、根本的に違う。やはり走ってきただけの距離は移動しているのだ、と実感した。
 最後にちょっと登ってから、朱鞠内の谷間へまっしぐらに下り、湖岸区間が終了。途中のえんじん橋辺りで、緑に埋もれそうな湖畔の集落が見渡せる。1986年、まだダートだったこの道から見下ろした、同じ場所の景色を眺めることができるのは、とても嬉しいことだ。湖畔には、当時よく泊まっていた「しゅまりの宿」があったし、母子里だけではなく湖畔でも牧草ロール積みのバイトを紹介していただいた。思い出多い場所なのだ。そして、走りながら昔を思い出すことが増えたことに気が付く。歳である。

 10:50、朱鞠内着。えんじん橋で思い出に浸った後なので、除雪センターやその辺の公営住宅っぽい住宅辺りに、やはりついつい今は跡形も無い深名線朱鞠内駅の佇まいを思い出してしまう。冬に来たとき-20℃の朝に出発して、まつげが凍ったこともあった。もちろん非自転車である。しかも当時この道はやはりダートだった。国道275沿いに建つ万屋には、当時朱鞠内湖名産のわかさぎ佃煮が売っていた。今も売っているかもしれない。等と思いつつ、またもや自販機缶コーヒーで表敬訪問。

 朱鞠内から続く谷間では、湖岸とは打って変わって曇りが続いた。しかも雲が厚く低くなっている。雲の動き方は速いが、今すぐ雨が降りそうな気はしない。添牛内で政和の盆地へ出れば、また次の展開があるのだろう。ここはあまり寄り道せずに、狭い谷間をひたすら下る。
 11:20、添牛内着。有名蕎麦店「ほろほろ亭」の前にはバイクが一杯停まっている。以前立ち寄ったことはあったが、今日はまだ先が長い。蕎麦を食べられる余裕をまず作らねば。そのまま先へ。
 添牛内を過ぎても、空の雰囲気は雲が若干高くなったぐらい。相変わらずの曇りだった。盆地へ出てからは弱い向かい風が吹き始めている。ここは着実に脚を進めておかねば。そんなわけで行く手の天塩山地を眺める自転車写真ポイントも、今日はささっとこなすだけにしておく。

 盆地一杯のソバ畑が眼下に開ける政和の展望台、去年は単管で組まれた展望台と出店が登場して驚かされた。今年は去年より出店が増えている。何と蕎麦屋まで登場した。この蕎麦生産量日本一の地幌加内で、盆地一面のソバ畑を眺めつつ蕎麦を食べられるのは大変魅力的だ。数年前まで道北から南北に50kmもある幌加内町は、プライベートビューポイント同然だったのに、という気が無いと言えば嘘になる。しかし、いい景色を多くの人が楽しめるのは喜ばしいことだし、国道275の交通量はこんなことで増えたりする訳が無い。私も一度ここの蕎麦を食べねば。きっと香り高い美味しい蕎麦に違いない。と思って今日は先へ。

■■■2015/3/21
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2014/8/15 北海道Tour14#9-3

▼動画31秒 政和のソバ畑
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 12:00、政和の南端、道の駅「森と湖の里ほろかない」到着。ここまで粛々と進んだお陰で、何とかお昼にここまで着けた。とりあえずYHで夕食前に風呂に入るための希望ペースに乗れている。
 ここにも蕎麦屋があって、美味しいのはわかっているが、今はまだ立ち寄るわけにはいかない。でもソフト速攻喰いぐらいなら大丈夫だろう。というか、ソフトの誘惑に我慢できなかった。冷たい食感で身体がほっと落ち着くのと同時に、けっこう気温が上がっていることに初めて気が付いた。位置としてはもう名寄や下川の南であり、いつも下川では急に気温が上がるのを実感している。この辺りで暑さを感じるのは順当だ。この分だと旭川盆地は更に暑いのだろう。

 道の駅「森と湖の里ほろかない」で政和の盆地は終わり、再び幌加内盆地が開ける上幌加内まで、辺りはやや狭い谷間となる。狭い谷間の常で、雨竜川は幌加内へ向かって下っているのに、あまり意義を感じない軽い登り返しまで現れる。毎回このアップダウンのお陰で、朱鞠内からここまでの順調ペースがやや崩れる区間でもある。いつも天気がやや不安定な印象があるこの谷間、今日は曇りのままで持ってくれているのが有り難い。
 上幌加内で幌加内盆地に出ると、広々とした盆地が、一面ソバ畑と田んぼだ。明らかにもう道北とは違う風景だ。向かい風が更に厳しくなり、毎回甘く見る上幌加内から幌加内の距離が、大変長くつらく感じられる。
 12:35、幌加内着。ここまで蕎麦屋をいくつも見送ってきたが、いい加減にお昼を食べねばならない大義名分ができた。希望通過時刻の13時に対して余裕もある。そして、バスターミナル1階には大変美味しい蕎麦屋「せい一」があることがわかっている。ここは満を持して立ち寄らねば、と思ったが、残念ながら「せい一」はお盆休みなのだった。大変残念だが、旅程をこなすには都合がいい。先へ進もう。

 とはいえ幌加内から沼牛を経由して江丹別峠下までは、幌加内屈指の風景が続く。盆地端部らしく波打ち始める地形一面に、ソバ畑や田んぼが拡がるのだ。その中にところどころ小山や集落がアクセントになってくれる。ここで立ち止まらないと、何のためにこちら方面に来ているかわからない。幌加内での蕎麦屋先送りは、この観点からは好都合だった。

▼動画46秒 沼牛〜下幌加内の細道
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/9/r0002777.wmv
▼動画1分37秒 下幌加内 細道が続く 私的に幌加内盆地ソバ畑のハイライト
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/9/r0002780.wmv
 しかし、沼牛辺りで青空が見え始めたものの、幌加内以北と同じように低い雲が空の中を次々動き、あまり綺麗にすかっと晴れてくれない。やはり脚を停める必然性はあまり見いだせない。粛々と江丹別峠へ向かうことにしよう。引き続き江丹別峠の登り区間では、あまり気温を上げずに推移してほしい。
▼動画40秒 下幌加内 江丹別峠への道道72に向かう
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/9/r0002786.wmv

 下幌加内で道道72に合流し、江丹別峠の登りが始まった。標高478mのこの峠、意外にもさっきの美深峠より高い。下界からの標高差は300m程度だが、基本斜度は7%。毎回登れてしまうものの、ボリューム感はそれなりにある峠だ。しかしここを越えれば、もう旭川市。峠の「旭川市」の看板に、いよいよ道北から道央に戻ってきた気にさせてくれる、道北と道央の境界なのだ。

 14:00、江丹別峠通過。
 峠手前辺りから、雲が切れてからっと明るく濃い青空が見え始めた。これこそ夏の北海道の色、道北から帰ってきて何だかほっとした気になれた。晴れの中を走れそうで嬉しい。一方でこれから暑い旭川盆地なのに、暑さが多少心配でもある。まあもう14時を過ぎた。これからの涼しくなる時間帯に期待だ。

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2014/8/15 北海道Tour14#9-4

 西里、拓北と山の南北に拡がるソバ畑を見下ろして、森の中をどんどん下る。下りきった拓北の農場スタンドで、ソフト休憩とする。以前はひっそりしていたここも、近年は訪れる度に必ず営業していて、お客さんが増えている。だってここのソフトはとても美味しいし、江丹別の景色はいい。旭川からのプチドライブに都合がいいのだろう。

 14:25、江丹別中央着。2003年に訪れた「そばの里 江丹別」が営業中で、30分以上行程の余裕もある。通る度に毎回再訪のチャンスをうかがっていたが、実際には江丹別ではいつも時間に追われることが多かった。生産量は幌加内に譲るものの、最近では都内の蕎麦屋でも江丹別産の文字を見かけることが多い程のソバ処江丹別。そして今を逃すと、旭川市街まで昼食に寄りたいような場所は思い浮かばない。申し分無い相手に対しタイミングと大義名分が揃った。これ以上のチャンスは無い。
 幸い店内は先客が1組。あまり待たずに出てきた蕎麦は、きりっと冷たく香り高く、しっかりした舌触りがとても美味しい。それにしても、蕎麦の冷たさに改めて旭川の暑さを感じてしまう。そして、前回の訪問から11年経ってしまったのだとつくづく思う。次はいつになるのだろうか。

 「そばの里 江丹別」から出ると、空の低い雲がすっかり消えていた。14:55、江丹別中央発。
 谷間の影は意外なほど長くなり、日なたがそろそろ赤みを帯びている。旅程も9日目、もう8月15日。まだまだ暑いものの、確実に秋は近づいているのだ。
 下り基調の道道72〜915は、追い風でかなり順調に通過。静かではあるが何か展望が開けたり渓谷美が展開するような谷ではなく、ここは下り基調に乗じてどんどん工程をこなしてしまう。
 嵐山を過ぎると道央自動車道が見え、すぐに石狩川の土手と江神橋が登場。15:30、江神橋通過。唐突に、そしていよいよ旭川盆地に到着したのだ。行程の余裕もまだ30分ある。今日は美深峠経由のコースでその後が上手くいったと言える。

 旭川の町中は、裏道をGPSトラックに沿ってクリア。あまり車に悩まされず、中美瑛川沿いに自転車道なども経由。近年旭川は、このパターンでストレスを感じずに、楽々通過できるようになったのが有り難い。
 16:15、西御料着。ここからしばし我慢の国道237だ。極力裏道を通るようにしていても、この区間だけどうしても国道が残ってしまう。合流点で目の前を通り過ぎる車の列に、ちょっと気が重い。
 16:25、西神楽着。ここで国道452へ分岐。国道とはいえ流石に400番台、交通量が一気に減って田んぼの中の田舎道となる。途中で美瑛の丘へ向かう農道へ分岐すると、丘へ登る狭い谷間が始まった。

▼動画1分36秒 夕方の美瑛をてれてれ
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/9/r0002895.wmv
 夕方で観光客が少なくなった美瑛の丘は本当にいい。少し進むと景色が少しづつ変わる、美瑛の良さが存分に味わえる。そして今日も、夕方になってみれば夕焼けの風景の中を走れている。この期に及んで10%以上の登りが頻発するものの、まあそんなに長い登りではない。
 17:35、大村「美瑛ポテトの丘YH」着。四万十市出身で、いずれ自分で宿を開きたいというヘルパーさんが自転車を見て話しかけてくれた。四国の話で盛り上がる。いつだったか、大洲YHで北海道の話を延々と続ける同泊者に辟易したことを思い出し、少し可笑しくなった。

 美瑛ポテトの丘YHは人気のYH。今日も食事が美味しく、宿泊者は多彩で賑やかだ。旅程最後の宿(明日の札幌はもう大都会なので除外)が賑やかなのが、人の少ない道東や道北から、次第に人々の間へ帰ってきた気にさせてくれる。昨日泊まった道北最後の宿が道北らしい牧草地の中の仁宇布。その後にこのYHが、旅程終盤に向けていい流れを作っている。仁宇布→美瑛のコースは私的に2通りあるが、どっちにしても仁宇布発で美瑛着のパターンを、序盤の道東巡りと共に崩すことが難しい。
 そして明日はいよいよ最終日。ベベルイ基線、麓郷、西達布、北落合と私的名所のメドレーだ。暑すぎず、適度に青空が見えてほしい。

■■■2015/3/21
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2014/8/16 北海道Tour14#10-1

大村→(町道・農道他・道道353・291)上富良野→(道道298)東中
→(町道ベベルイ1号線)布礼別→(道道253)麓郷 →(道道253他)しらはぎ
→(国道38)幾寅→(農免農道落合線・村道他)北落合
→(農免農道落合線・村道他)ルーマ→(道道1117)串内→(道道136)トマム
112km ルートラボ>http://yahoo.jp/rttqma

 外へ出ると、空一杯に灰色の雲がどんより低い。ほんとに晴れるのか不安だが、もう少し経つとこういう雲が急に晴れることは珍しくない。曇ったって誰が謝ってくれるわけでもない。とりあえず前向きに、晴れるかもしれない、ぐらいに考えておこう。
 今日はもう最終日だ。コースは最終日のワンパターン、ベベルイ基線→北落合。終着はトマムまで足を延ばすつもりで、この方が札幌到着が早く、ホテルでゆっくり休む時間が取れる。行程はそれでも100km強だが、それ故途中で油断して全体の時間が延びる場合が私には多い。そうでなくてもこのコース、脚が停まる見所や途中寄りたい場所は多い。折角1日走れそうな天気だし、今日も早めに出発しよう。
 早朝だが、昨日仁宇布で感じた肌寒さは、ここ美瑛では皆無だ。さすがにこの時間、まだ暑くはないものの、やはりここ2日でかなり南下してきたのだ。

 5:40、大村「美瑛ポテトの丘YH」発。
 今朝の美瑛の丘は、厚く濃く低い雲に覆われている。大村周辺でも美瑛の町から南側の丘に登り返しても、視界は2、300m程度止まり。晴れていれば東西に連なる丘の展望が見事な新栄でも、すぐ近くの丘まで雲みたいな霧の中だ。しかし視界は開けなくても、早朝の空気はやはり爽やかだ。晴れて展望が利けば有り難いが、最低限雨が降っていなくて、この空気の中に身を置けることは、やはり有り難いことだ。明後日はもうこの時間は、家で暑さにうだりながら出勤の身支度をしているのだ。
 とはいえどこへ行っても霧の中、空もいつまでも明るくならないので、美馬牛からもう上富良野最短コース、谷間の町道へ降りてしまう。毎度の事だが、谷間に降りるとそこは丘の上の整った風景とは異なる、ごく普通の北海道の片田舎。これはこれで親しみやすく、安心感がある風景だ。作り込まれた丘の畑の風景に、近年は外国からの観光客で賑わう美瑛にも、こんな場所が残っている。何となくすました猫がマタタビで我を忘れるのを眺めるような、そんな楽しさがあるような気がするが、穿ちすぎた見方かも知れない。

 6:50、上富良野着。町中に入ると、突然空が明るくなり、雲が開けて青空が現れた。急展開だ。どういう訳なのか、時間によるものか移動によるものか。しかし、とにかくこれで雨の心配は完全に消えてくれそうだ。あとは各名所で暑すぎずに晴れてくれれば言うことは無い。
 いつも立ち寄るセイコーマートで小休止。コースが毎年同じなら、休憩ポイントすら毎年同じだ。この店にはHotchefは無いが、わかっていたので朝食相当の物資をYHで腹に入れてきた。とはいえ、今日はこの先もう幾寅しかセイコーマートは無い。札幌では流石にセイコーマート以外に食べたいものが一杯ある。ここでは、缶コーヒーグランディアやカップ麺で、可能な方法で残り少ないツーリング中のセイコーマート休憩を楽しんでおくつもりで訪れたのだった。まあでも、ここに寄らなくても、帰ってから茨城県や埼玉県の店に行けばいいだけなのだが。

 上富良野を出発すると、空に雲が増えてきた。やはり多くの人が住む上富良野の待ちの上は天気が安定している。そして、山裾方面はまだ雲がこってり溜まっているようだ。
 果たして東山から見上げると、標高差200mをほぼ直登するベベルイ基線の行く手は、まさに雲の中に突入している。ただ、低い雲の上に青空が拡がっているし、雲には日差しが眩しい程乱反射している。これから晴れ始めるときに、ありがちなパターンだ。実際にはいくら考察しても、天気は考察によって変わるものではない。でも時々念力とツーリングの神様へのお願いは効くような気もする。などと無駄に考察しつつ、ギヤを落として緩斜面の直登を登り始める。
 200mの登り区間が、これだけ直線だけな道も珍しい。今日は登り方向なので、振り返ると富良野盆地の展望が見事だ。登り途中で時々立ち止まって振り返る度、この展望が味わえるのは楽しい。同時にギリシャ神話の振り返ってはいけない話などを思い出し、今振り返るとこれから何が起こるのかちょっと不安になったりする。大丈夫、事故に気を付けて楽しくツーリングすればいいのだ。もう最終日なのだから。

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■■■高地 大輔
2014/8/16 北海道Tour14#10-2

 斜度が一段落すると、緩斜面まっただ中だった周囲は、突然畑が拡がる丘が緩やかに波打ち始める。ベベルイ基線を訪れる大きな理由となっている、私的名所がここ、本幸だ。
 去年根元から45度折れていた道路幅員表示の赤白棒は、今年は完全に撤去されてしまっていた。自転車を立てかけると、背景に点在するポプラや周囲の畑がちょうど好みのバランスで絵になり、1999年から定点撮影場所になっていたこの棒。今年はその場所が、1本ずれてしまうことになる。背景のポプラが小さい、横から撮っても丘が木立に遮られるなど、明らかにいつもよりバランスが悪い。今後ずっと定点撮影がこれだと困るという理由の、あくまで個人的な希望だが、元の場所に棒を復活させてほしい。まあ公共の福祉的に、積雪期に困るだろうし。
 本幸到着時、空は一面低い雲だったが、本幸で写真を撮っている10分ぐらいの間、雲はどんどん動き始めていた。そして本幸を出発すると間もなく途中から晴れ、待望の日差しも登場。あとほんの少し待っていれば良かったのかもしれない。まあそんなものかもしれない。
 それに布礼別へ向けて道が100m緩斜面を下る区間で、見晴らしのいい場所でちょうど日差しが現れてくれた。毎年同じ場所でしびれてないで、今を今なりに楽しめ、というツーリングの神様からのお導きかもしれない。
▼動画1分16秒 ベベルイ基線 布礼別へ100m下り
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/10/r0002986.wmv

 9:00、麓郷着。
 A-COOPの店先で、朝摘み茹でたての最高のトウキビが売っている。私的には、麓郷へ来たらこれを食べねばならない。しゃきっとした歯触りでジューシーで香り高く、美味しいとしか言いようが無いのだ。
 さっきベベルイ基線から布礼別に降りてくる辺りから、空はかなり晴れ始めていた。日なたが暑くて仕方が無い。肌がちりちりするような気がするのは、北海道の紫外線の強さを物語るものだろう。気温については曇りの方が有り難いなあ、と思いながら日陰のベンチに待避し、むしゃむしゃトウキビ3本を一気喰い。3本も喰ってしまえば、もう出発するしか無い。9:20、麓郷発。

 次は老節布へ。道道253で標高差約100mを登って下る。道北の涼しさに慣れると、この程度の峠越えですら暑くて耐えられなのが情けない。しかもトウキビで腹ががぼがぼで苦しい。幸い今日は比較的雲が多く、登り途中で直射日光にあぶられることが少ない。
 平沢と老節布を隔てる稜線の新光では、ショックな変化があった。稜線部分に通る道の、平沢と老節布を南北両側に見渡す区間の老節布側に、防風フェンスが建ってしまっていたのだ。平沢側にも少し以前にフェンスが建てられていたため、かつての絶景展望ポイントが、段階的に障害物の間に展望が楽しめる場所に変わってしまったことになる。
 緩斜面が南北からせり上がってぶつかるこの尾根部分、季節によっては余程の強風場所なのだろうと思われる。いや、真夏以外は常に強風なのかもしれない。しかも地形から言って、その風は常に下から吹き上げる風となる。車も通るのに支障がある程の強風なのかもしれない。特に冬など、この場所で常時地吹雪状態が続くようにも思える。確かにそれならとても危険だ。
 景色を見るだけなら相変わらず絶景ではある。写真が撮りにくいだけだ。さっきの本幸でのちょっとした変化と似た現象だ。自分は単に、去年と違うことにあらを探しているのかもしれない。私はこの場所ではあくまで1年1回未満で訪れるだけの通りすがりなのだから、あまり気にしてはいけないだろう。次へ向かおう。

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2014/8/16 北海道Tour14#10-3

 老節布では、しばらく穏やかに隆起する地形に、作物、畑の畝、牧草ロールが規則正しく並んで展開する。拡がる畑の中、点在する丘や立木、防風林が、風景のアクセントになる。そして随所に、ダイナミックな地形と人が作ったルールが適度にバランスする風景がある。つい写真を撮りたくなって脚を停めると、日差しは相変わらず現れたり隠れたり。
▼動画1分1秒 老節布 畑の中をゆく
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2014/hokkaidoutour14/10/r0003032.wmv
 とどまつ、くろまつ、あやめ、老節布から西達布の小集落には植物の名前が平仮名で付けられている。風景と共に、この地の人々の営みをつい想像するような、楽しい場所だ。美瑛からここまでずっとそうだったが、特にこの老節布は、道東や道北辺りの長大無人区間とは根本的に違う、作り込まれた人里だ。暑さと共に、またもや道央に降りてきたことを実感する。道北もこちらも、サイクリングの道としての楽しさには優劣付けがたい。

 10:25、しらはぎ発。ここから国道38の樹海峠越えだ。標高僅か200m足らずの峠越えだが、まがりなりにも幹線国道であり、毎回気持ちがちょっと重い道だ。まあそれでも毎回、ゆっくりでもしばらく脚を回しているうちに、そのうち通り過ぎてしまう道ではある。それに近年道東自動車道開通で、交通量は以前に比べてだいぶ減っている。
 樹海峠は、本当は三の山峠という名前があるようだ。峠部分にも「三の山峠」という標識がある。樹海峠という名の方が何故か通りはいいが、何だか国道っぽい後付けの大袈裟っぽい名前であることは否めない。そんな樹海峠の峠手前で眼前に拡がる、十勝岳裾の大樹海は大変に見応えがある。峠手前には、ご丁寧に「樹海」という看板もある。そんなわけで峠の名をどちらで呼ぶべきか悩ましいが、そもそも名前で悩むほどの峠ではないようにも思われる。西達布と幾寅の間というより、風景の素性の良さと人為の狭間にある、そんな峠であるように思う。

 11:15、幾寅着。ここまであまり晴れなかったため途中各ポイントで時間を取らなかったのが効いて、幾寅にお昼前に着けた。昼食には絶好の時間である。ならばなんぷ亭に行くしか無い。店の前には11:30開店都の札が掛かっていたが、10粉待とうと店の前で自転車を停めたところで、運良くお店の方が営業中の札を出しに外に出てきた。
 なんぷ亭の「なんぷカレー」が、私は大好きなのだ。富良野牛ステーキの鉄板上にご飯と洋食カレーも乗っけてしまったこのカレー、構成はシンプルだが、その味わいは絶妙で大変素晴らしい。ちなみに札幌ラーメン、スープカレー、海鮮丼などなど、北海道にはこういうシンプルな構成で、素材自体の組み合わせが美味しい料理が多いように思う。そしてこのなんぷカレーは、近年訪れる度にその美味しさをパワーUPさせている。連続2杯はサイクリング中デフォルトだ。こんなことも明後日からあまりできなくなるのだろう。

 11:50、幾寅発。狭い谷底に1本道が続く。あまり風景が開けずにあまり斜度の無い坂がじりじり続く、やや退屈な道だ。相変わらず雲は低いが、次々動いて通り過ぎ、時に日差しが辺りをかっと照らして暑くなる。これなら夏らしいと言っていい。森の中でエゾゼミもギーギー鳴いている。エゾゼミの声は図鑑などでギーギーということになっているが、ほんとにギーギーだな、と思いながら汗を拭いてみたりする。
 地図とGPSで、現在位置と北落合までの距離は把握できる。中程から斜度も次第に増し始め、東幾寅方面への分岐を横目に眺めつつ、まだ距離があると思うとしんどい。しかし、そのうち行く手の景色は、道の曲がり角や森の切れ間に現れた畑の端など、順当に北落合っぽくなってくる。

 12:40、北落合中央着。低い雲の間の真上から強い日差しが開けた畑に照りつけ、防風林の中からエゾゼミの声が響いている。絵に描いたような夏休みのお昼だ。静かな小中学校の校庭給水栓で、水でも頂きたい気分になってくるが、生憎まだボトルに水はたっぷり残っている。
 北落合の交差点、集落、開けた牧草地や畑を、農免農道の上手終点670m地点まで標高差130m。毎回妙に脚の重さを感じるこの道。帰りも意外なほどに速度が上がるのを思い出す。広々とした景色で何度来ても視覚的には坂を感じられない不思議な道だが、けっこう登っているのだ。ちなみに狩勝峠の標高が643m。実は北落合、道内でもかなり標高の高い集落である。

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■■■高地 大輔
2014/8/16 北海道Tour14#10-4

 13:10、680m地点着。
 畑の隅から、下ってゆく畑と農免農道の1本道が山々と共に見渡せるだけで、本来農免農道北落合線の北端という以外になんら特筆すべきものは無いこの場所。私的には、北海道で一番印象に残る場所の一つであり、最近は北海道Tour最終日のハイライトを飾る場所となっている。今年も10日間の旅程の終盤にここに来れた。そして適度に晴れて暑すぎない中、しかしそれでも夏らしい風の中に身を置ける。大変嬉しく有り難い。
 それにしても何の変哲もない場所ではある。ここに来れて感動しているのは、あるいは単なる思い込みかもしれない。「だが、それがいい」のかもしれない。別に人に評価される必要は無いのだ、日常生活のように。思い込みでも感動なら、それが自分の感動なのだ。

 頭上には大きな低い雲が次々やってきて通り過ぎ、曇ったり日が照ったり。そこそこ青空が入った写真は撮れたし、いつまでいてもこの天気や風景が劇的に変わるものではない。この場所で40分間、そろそろいいだろう。今年もいよいよ、北海道Tourの最終局面だ。

 13:50、680m地点発。北落合中央手前の分岐、定点撮影地点をいくつかこなし、ルーマへ一目散。しかし一目散のつもりが、やはり途中で希望以上に時間を食ってしまう。仕方無い、今日は天気がいいのだ。時間を優先して風景をはしょると、後で後悔してしまう。
 台地上から谷間に降りると、シーソラプチ川沿いの森の木陰が涼しい。日陰から日なたの風景を眺めると、今日もいつの間にか日差しにそろそろ赤い色が目立ち始めている。北海道から帰ると、今年の夏も一段落だ。あとは早く東京のくそ暑さが一日も早く収まってくれるだけだ。

 14:35、ルーマ通過。トマムまであと17km、道道1117〜道道136で150m程の登り返しだ。きょうここまでの農村とは打って変わって、無人の森が根室本線、石勝線と共に続く。最後の最後で2日前に戻ってしまったような気がするのが我ながら可笑しい。しかし、1983年初渡道の目的地だった石勝線の風景には、未だに懐かしさも感じられる。
 ルーマから登り返し始めて以来、空の雲は俄然密度を増していた。それでも日差しはまだ現れていたが、最高地点を越えてトマムの集落を過ぎる辺りから、いつ雨が降ってもおかしくない雰囲気に。
 ぱらっと来始めたところで、15:25、トマム着。首の皮一枚で雨からは逃げ切れた。事前に調べていた16:03スーパーおおぞらには間に合いそうで、理想的だ。即輪行開始とする。

 スーパーおおぞらはキハ283系がやってきた。一見何の変化も無いのだが、走り始めてみると、最近のJR北海道の減速運転でその走りは悲しいほどに振るわない。エンジン音が高くなってきた、いけいけー!と思うと、すぐに加速が終わってしまう。このキハ283系、本来は日本最強最速の特急車両の一つなのである。心から思う、がんばれJR北海道。またいつの日か、その熱い走りで乗客を魅了して欲しい。そして究極の在来線高速車両、キハ285系プロジェクトを復活させて欲しい。

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