アシモフのＳＦ３段階発展説に従えば「経営学」という社会科学を扱ってｉｆからの構築をなされた立派な第３段階のＳＦだからトピタイに合致するように考えられるのですが……
|
|
|
|
コメント(80)
『妖精作戦』や『星虫』も今ではラノベSFの走りという扱いになるんですねえ...当時はラノベという分類自体まだ確立してなかったような、と遠い眼をしつつ。
＃この分だと『銀英伝』とか『敵は海賊』とかも？（笑）
閑話休題
webで連載していた小説が電撃文庫から商業化されたものですが、
『ソードアート・オンライン』川原礫
をお勧めしておきます。
近未来のオンラインVRゲームを舞台とした作品で、細かい設定が結構凝っています。
未刊の第四部ではさらにSFチックなギミックがいろいろ……ごにょごにょ。
＃設定が.hackシリーズに似てるという人もいるかもしれませんが、むしろルーツは押井守の『AVALON』かしら。
＃この分だと『銀英伝』とか『敵は海賊』とかも？（笑）
閑話休題
webで連載していた小説が電撃文庫から商業化されたものですが、
『ソードアート・オンライン』川原礫
をお勧めしておきます。
近未来のオンラインVRゲームを舞台とした作品で、細かい設定が結構凝っています。
未刊の第四部ではさらにSFチックなギミックがいろいろ……ごにょごにょ。
＃設定が.hackシリーズに似てるという人もいるかもしれませんが、むしろルーツは押井守の『AVALON』かしら。
＞45
嘗て富士見ミステリから出ていたGothicも角川文庫、スニーカーではなく緑背から再販されていますしね。
大幅な改稿と言うか、リメイクでもあったのなら別物として再評価だと思います。
吉岡平さんの無責任シリーズ等は、富士見ファンタジアとファミ通では別として評価すべきでしょうし…
聖戦のレギオスみたいに、文芸判で出ていて富士見ファンタジア文庫に落ちる物もありますから、レーベルで分けると相互乗り入れはありますね。
星虫も、朝日ノベルズやソノラマ文庫の前に新潮文庫からでいていたと聞けば、ならラノベではないのかなと思う人もいるでしょう。
ですから、レーベルだけで分けるのは判りやすいかもしれませんが、短絡的ではないかと思う次第なのです。
ハヤカワ文庫JAも、ダーティーペアとかありましたので、ラノベレーベルに入れている方もいます。
逆に言えば、ラノベレーベルと一般レーベル双方で書いている方は、レーベルによって意図的に書き分けて差別化していたりするのでしょうか？
嘗て富士見ミステリから出ていたGothicも角川文庫、スニーカーではなく緑背から再販されていますしね。
大幅な改稿と言うか、リメイクでもあったのなら別物として再評価だと思います。
吉岡平さんの無責任シリーズ等は、富士見ファンタジアとファミ通では別として評価すべきでしょうし…
聖戦のレギオスみたいに、文芸判で出ていて富士見ファンタジア文庫に落ちる物もありますから、レーベルで分けると相互乗り入れはありますね。
星虫も、朝日ノベルズやソノラマ文庫の前に新潮文庫からでいていたと聞けば、ならラノベではないのかなと思う人もいるでしょう。
ですから、レーベルだけで分けるのは判りやすいかもしれませんが、短絡的ではないかと思う次第なのです。
ハヤカワ文庫JAも、ダーティーペアとかありましたので、ラノベレーベルに入れている方もいます。
逆に言えば、ラノベレーベルと一般レーベル双方で書いている方は、レーベルによって意図的に書き分けて差別化していたりするのでしょうか？
『風の白猿神』
私も続編が読みたい作品の一つです。
あのまま作品が進んでたらアニメ化されてガンダムやマクロス並の作品になってたかもなぁ。
『パンゲア』
「聖エルザクルセイダース」の松枝蔵人氏の作品で、
天才ハッカーと超AIと古代文明という少年心をくすぐりまくりの作品でした。
『異次元騎士カズマ』シリーズ
SFに数えるには微妙ですが、
記憶に残ってるラノベとしては真っ先にこれが思い浮かびます。
といっても、作品全体はうろおぼえで、
骸骨旗トラベル編のある場面だけが記憶に焼き付いてるという感じです、
純朴な少年だった私は読後に数日鬱になった気がします。
「トラウマになったラノベ」として多くの人が名前を挙げていますね
私も続編が読みたい作品の一つです。
あのまま作品が進んでたらアニメ化されてガンダムやマクロス並の作品になってたかもなぁ。
『パンゲア』
「聖エルザクルセイダース」の松枝蔵人氏の作品で、
天才ハッカーと超AIと古代文明という少年心をくすぐりまくりの作品でした。
『異次元騎士カズマ』シリーズ
SFに数えるには微妙ですが、
記憶に残ってるラノベとしては真っ先にこれが思い浮かびます。
といっても、作品全体はうろおぼえで、
骸骨旗トラベル編のある場面だけが記憶に焼き付いてるという感じです、
純朴な少年だった私は読後に数日鬱になった気がします。
「トラウマになったラノベ」として多くの人が名前を挙げていますね
庵田定夏『ココロコネクト ヒトランダム』（ファミ通文庫）
八重樫太一、青木義文、稲葉姫子、永瀬伊織、桐山唯。私立山星高校文化研究部の五人の生徒の間で、人格の交換現象が起きはじめる。何の予告もなしにランダムに人格が入れ替わり、数分から数時間で元に戻るのだ。
混乱する彼らの前に、〈ふうせんかずら〉と名乗る正体不明の知性体が顧問の教師の肉体に憑依して現われる。そいつが観察対象として五人を選び、この現象を起こしているのだ。
最初はとまどっていたが、しだいにこの異常な状況に順応していく太一たち。だが、この現象は確実に彼らの人間関係を変えてゆく……。
この手の“『転校生』もの”も、ライトノベルにはいろいろあります。まあ、たいていは男が女の子になっちゃってさあ大変という、エッチ系のコメディなんですが。
この作品も最初はコミカルな部分が多いです。特に六章の最初で、女の子になった太一たちがやる遊びが大笑い。確かにこれはやってみたくなる！
しかし後半、話はしだいにシリアスに。人格交換がきっかけで、女の子たちが抱えるトラウマや悩みや本音が明らかになり、それを太一（ついた渾名が「自己犠牲野郎」）がどうやって解決してゆくかが見所。
唯のトラウマ克服法も意表をついてたけど、姫子の抱える不安を解消するのに使った手が……いや〜、これを言うのはものすごい勇気が要るわ（笑）。高校生活を棒に振る覚悟がないとできんわ。
笑えるけどもシリアス。深刻だけどダークすぎもしない。恋あり笑いあり涙ありの、なかなか素敵な青春小説でした。
八重樫太一、青木義文、稲葉姫子、永瀬伊織、桐山唯。私立山星高校文化研究部の五人の生徒の間で、人格の交換現象が起きはじめる。何の予告もなしにランダムに人格が入れ替わり、数分から数時間で元に戻るのだ。
混乱する彼らの前に、〈ふうせんかずら〉と名乗る正体不明の知性体が顧問の教師の肉体に憑依して現われる。そいつが観察対象として五人を選び、この現象を起こしているのだ。
最初はとまどっていたが、しだいにこの異常な状況に順応していく太一たち。だが、この現象は確実に彼らの人間関係を変えてゆく……。
この手の“『転校生』もの”も、ライトノベルにはいろいろあります。まあ、たいていは男が女の子になっちゃってさあ大変という、エッチ系のコメディなんですが。
この作品も最初はコミカルな部分が多いです。特に六章の最初で、女の子になった太一たちがやる遊びが大笑い。確かにこれはやってみたくなる！
しかし後半、話はしだいにシリアスに。人格交換がきっかけで、女の子たちが抱えるトラウマや悩みや本音が明らかになり、それを太一（ついた渾名が「自己犠牲野郎」）がどうやって解決してゆくかが見所。
唯のトラウマ克服法も意表をついてたけど、姫子の抱える不安を解消するのに使った手が……いや〜、これを言うのはものすごい勇気が要るわ（笑）。高校生活を棒に振る覚悟がないとできんわ。
笑えるけどもシリアス。深刻だけどダークすぎもしない。恋あり笑いあり涙ありの、なかなか素敵な青春小説でした。
別トピで、ＳＦ作品をラノベ化したらどうなるかというのをやっていますが、こういう作品があったのを思い出しました。（出版は2002年）
神代創『パートタイムプリンセス』（ＭＦ文庫）
高校生の拓也はいきなり異世界に召喚される。鏡に映った自分の姿はとびきりの美少女。ガラン王国の王女リアンと精神が入れ替わってしまったのだ。
どうにか元の世界に戻ったものの、それ以来、精神の交換現象は頻繁に起きる。リアンとの間で手紙によるコミュニケーションをとりつつ、拓也は異世界の王女を演じ、王国を襲う危機を回避しなくてはならない。
あとがきで作者は「とあるスペオペからモチーフを引っ張ってきました」と書いています。
そう、これはハミルトンの『スターキング』！
こういうアレンジのしかたがあったのかと感心しました。
さらに驚いたのは、クライマックスで主人公が敵を撃退するのに考えつく方法です。これがハミルトンの、2002年当時は未訳だったはずのある作品（書かれたのは1941年）のアイデアと同じなんです。偶然の一致なんでしょうね。まあ、論理的にそれが最も妥当な案なんですが。
ちなみに『パートタイムプリンセス』の方が、この「方法」についての科学考証が詳しいです。このくだりは科学が好きな人間ならわくわくしますね。
何にしても、何十年という時を隔てて、アメリカのスペースオペラ作家と日本のライトノベル作家のアイデアがシンクロするというのは、面白い現象だと思いました。
神代創『パートタイムプリンセス』（ＭＦ文庫）
高校生の拓也はいきなり異世界に召喚される。鏡に映った自分の姿はとびきりの美少女。ガラン王国の王女リアンと精神が入れ替わってしまったのだ。
どうにか元の世界に戻ったものの、それ以来、精神の交換現象は頻繁に起きる。リアンとの間で手紙によるコミュニケーションをとりつつ、拓也は異世界の王女を演じ、王国を襲う危機を回避しなくてはならない。
あとがきで作者は「とあるスペオペからモチーフを引っ張ってきました」と書いています。
そう、これはハミルトンの『スターキング』！
こういうアレンジのしかたがあったのかと感心しました。
さらに驚いたのは、クライマックスで主人公が敵を撃退するのに考えつく方法です。これがハミルトンの、2002年当時は未訳だったはずのある作品（書かれたのは1941年）のアイデアと同じなんです。偶然の一致なんでしょうね。まあ、論理的にそれが最も妥当な案なんですが。
ちなみに『パートタイムプリンセス』の方が、この「方法」についての科学考証が詳しいです。このくだりは科学が好きな人間ならわくわくしますね。
何にしても、何十年という時を隔てて、アメリカのスペースオペラ作家と日本のライトノベル作家のアイデアがシンクロするというのは、面白い現象だと思いました。
庵田定夏『ココロコネクト キズランダム』（ファミ通文庫）
庵田定夏『ココロコネクト カコランダム』（ファミ通文庫）
54で紹介した『ヒトランダム』の続編。
１巻目で起きたのは人格交換だったけど、２巻では「欲望解放」。突然、欲望の歯止めが利かなくなってしまう現象。いきなり服を脱ぎはじめる姫子。これはヤバい。危険度という点では人格交換とは比べものにならない。
いつ爆発するかと、全編ハラハラし通しでした。
２巻では、太一以外の４人が、肉体と心が子供に戻ってしまう。〈ふうせんかずら〉一族の能力には際限がないですな。
これも終盤、５人が絶望的状況に追いこまれてゆく展開が重苦しくて、裏表紙の「愛と青春の五角形コメディ」というコピーが空々しく思えます。コメディじゃないよ、これはすでに。
どの巻についても言えるのは、とてつもない現象に翻弄されて、５人の恋や友情にひびが入るけど、最終的に前よりも強い絆で結ばれるという展開が、実に気持ちいいこと。このシリーズは当たりでした。
庵田定夏『ココロコネクト カコランダム』（ファミ通文庫）
54で紹介した『ヒトランダム』の続編。
１巻目で起きたのは人格交換だったけど、２巻では「欲望解放」。突然、欲望の歯止めが利かなくなってしまう現象。いきなり服を脱ぎはじめる姫子。これはヤバい。危険度という点では人格交換とは比べものにならない。
いつ爆発するかと、全編ハラハラし通しでした。
２巻では、太一以外の４人が、肉体と心が子供に戻ってしまう。〈ふうせんかずら〉一族の能力には際限がないですな。
これも終盤、５人が絶望的状況に追いこまれてゆく展開が重苦しくて、裏表紙の「愛と青春の五角形コメディ」というコピーが空々しく思えます。コメディじゃないよ、これはすでに。
どの巻についても言えるのは、とてつもない現象に翻弄されて、５人の恋や友情にひびが入るけど、最終的に前よりも強い絆で結ばれるという展開が、実に気持ちいいこと。このシリーズは当たりでした。
●西尾維新『傾物語 まよいキョンシー』（講談社）
『化物語』シリーズ、面白いことは面白いいんだけど、ＳＦじゃないからなあ……と、ここでは紹介を控えていたのですが、これは紹介してもいいでしょう。
何たって今回はタイムトラベルものですから。
夏休みの終わり、きわめて『ドラえもん』的な理由で、一日前の世界へのタイムトラベルを試みた阿良々木暦と忍野忍。しかし、何の間違いか、到着したのは11年前の世界だった。そこで阿良々木は、八九寺真宵が交通事故で死ぬのを阻止しようと考える……。
『化物語』でタイムパラドックスものをやるというのは意表を突かれましたな。しかも八九寺を助けちゃうって……いや、阿良々木の性格からして、そういう発想になるのは当然といえば当然なんですが。
さらに後半、阿良々木たちが現代に戻ってからの展開が、まったく予想外で、驚きの連続。まさかここまで大変なことになっちゃうとは。
例によって、キャラクターが小説の登場人物であることを自覚してメタな発言を連発したり、無駄話ばかりで本編がなかなかはじまらなかったり（そこが面白いんだけど）、ムチャクチャな話なんですが、驚くべきことに、タイムパラドックスのつじつまだけはちゃんと合わせてます。しかも今後タイムトラベルがやたらできないように、制限もかけてるし。
どんなに小説の定石を破りまくってても、押さえるべきところはきちんと押さえるところに感心させられます。
このシリーズ、本文中にイラストが無いんですが、今回はそれが残念。何と言っても、あのキャラのあの姿と、あのキャラのあの姿は……「何でここでイラストが無いの!?」と、ものすごく悔しい思いをしましたよ、はい。
『化物語』シリーズ、面白いことは面白いいんだけど、ＳＦじゃないからなあ……と、ここでは紹介を控えていたのですが、これは紹介してもいいでしょう。
何たって今回はタイムトラベルものですから。
夏休みの終わり、きわめて『ドラえもん』的な理由で、一日前の世界へのタイムトラベルを試みた阿良々木暦と忍野忍。しかし、何の間違いか、到着したのは11年前の世界だった。そこで阿良々木は、八九寺真宵が交通事故で死ぬのを阻止しようと考える……。
『化物語』でタイムパラドックスものをやるというのは意表を突かれましたな。しかも八九寺を助けちゃうって……いや、阿良々木の性格からして、そういう発想になるのは当然といえば当然なんですが。
さらに後半、阿良々木たちが現代に戻ってからの展開が、まったく予想外で、驚きの連続。まさかここまで大変なことになっちゃうとは。
例によって、キャラクターが小説の登場人物であることを自覚してメタな発言を連発したり、無駄話ばかりで本編がなかなかはじまらなかったり（そこが面白いんだけど）、ムチャクチャな話なんですが、驚くべきことに、タイムパラドックスのつじつまだけはちゃんと合わせてます。しかも今後タイムトラベルがやたらできないように、制限もかけてるし。
どんなに小説の定石を破りまくってても、押さえるべきところはきちんと押さえるところに感心させられます。
このシリーズ、本文中にイラストが無いんですが、今回はそれが残念。何と言っても、あのキャラのあの姿と、あのキャラのあの姿は……「何でここでイラストが無いの!?」と、ものすごく悔しい思いをしましたよ、はい。
大樹連司『ほうかごのロケッティア』（ガガガ文庫・2009）
私立イトカ島学園高校に通う褐葉貴人（かっぱ・たかと）は、かつて覆面少女歌手クドリャフカに電波な手紙を送りまくり、彼女がアイドルから転落するきっかけを作ったという黒歴史を持つ。
そのクドリャフカこと久遠かぐやがなぜかイトカ島に転校してきて、過去の手紙をネタに貴人を脅迫する。彼女の持つ携帯電話は実は機械に擬態した宇宙人で、それを宇宙に帰すために協力しろというのだ。
２人は都立イトカ実業高校ロケット研究部の協力を得て、衛星軌道に乗る「本物」のロケットをひそかに製作するというプロジェクトを開始する。
「この作者、分かってるな」と思ったのは、貴人たちが初めてロケット研の部室を訪れるシーン。
> 奥のホワイトボードには、ひょろりとした少年が、手にした本をめくりつつ、ものすごい勢いで数式を書きつけている。数学の参考書か何かかと思ったら、タイトルは、海を見る人、と読めた。どうやら小説らしい。なぜに数式がいるのか。よくわからん。
> ロケット研究部らしいのは「Ｅ?ロケット、打ち上げ成功!!」という壁に貼られた新聞の切り抜きと、あとは――本棚くらいか。『宇宙船ガリレオ号』、『天の光はすべて星』、『ロケットボーイズ』、『ロケット・ボーイズ２』、『二〇〇五年のロケット・ボーイズ』、『ロケット・ガール』、『夏のロケット』、『なつのロケット』、あとは輝くシールの貼られた箱――『ロケットの夏』、『星空☆ぷらねっと』――。あとは専門書らしき背表紙。『ロケット入門』とか『ロケット工学概論』とか『ロケット物理学』とかその他ロケットロケットロケット。
> ロケットがゲシュタルト崩壊しそうだ。
かつて『ライオン・キング』が『ジャングル大帝』のパクリだと騒がれた時、とり・みき氏は「あれは２作目だから盗作だけど、だれか３作目、４作目をつくれば「ジャングル大帝もの」というジャンルが確立するのだ」と発言したと言われています。
その理屈でいくと、もうすでに「夏のロケットもの」というジャンルは確立していると言えそうです。
かつて厨二病だった少年が、電波系の少女の出現で、封印していたイタい過去と向き合わざるを得なくなる、という物語。雰囲気的には、同じガガガ文庫の田中ロミオ『ＡＵＲＡ 〜魔竜院光牙最後の闘い〜』を連想しました。
私立イトカ島学園高校に通う褐葉貴人（かっぱ・たかと）は、かつて覆面少女歌手クドリャフカに電波な手紙を送りまくり、彼女がアイドルから転落するきっかけを作ったという黒歴史を持つ。
そのクドリャフカこと久遠かぐやがなぜかイトカ島に転校してきて、過去の手紙をネタに貴人を脅迫する。彼女の持つ携帯電話は実は機械に擬態した宇宙人で、それを宇宙に帰すために協力しろというのだ。
２人は都立イトカ実業高校ロケット研究部の協力を得て、衛星軌道に乗る「本物」のロケットをひそかに製作するというプロジェクトを開始する。
「この作者、分かってるな」と思ったのは、貴人たちが初めてロケット研の部室を訪れるシーン。
> 奥のホワイトボードには、ひょろりとした少年が、手にした本をめくりつつ、ものすごい勢いで数式を書きつけている。数学の参考書か何かかと思ったら、タイトルは、海を見る人、と読めた。どうやら小説らしい。なぜに数式がいるのか。よくわからん。
> ロケット研究部らしいのは「Ｅ?ロケット、打ち上げ成功!!」という壁に貼られた新聞の切り抜きと、あとは――本棚くらいか。『宇宙船ガリレオ号』、『天の光はすべて星』、『ロケットボーイズ』、『ロケット・ボーイズ２』、『二〇〇五年のロケット・ボーイズ』、『ロケット・ガール』、『夏のロケット』、『なつのロケット』、あとは輝くシールの貼られた箱――『ロケットの夏』、『星空☆ぷらねっと』――。あとは専門書らしき背表紙。『ロケット入門』とか『ロケット工学概論』とか『ロケット物理学』とかその他ロケットロケットロケット。
> ロケットがゲシュタルト崩壊しそうだ。
かつて『ライオン・キング』が『ジャングル大帝』のパクリだと騒がれた時、とり・みき氏は「あれは２作目だから盗作だけど、だれか３作目、４作目をつくれば「ジャングル大帝もの」というジャンルが確立するのだ」と発言したと言われています。
その理屈でいくと、もうすでに「夏のロケットもの」というジャンルは確立していると言えそうです。
かつて厨二病だった少年が、電波系の少女の出現で、封印していたイタい過去と向き合わざるを得なくなる、という物語。雰囲気的には、同じガガガ文庫の田中ロミオ『ＡＵＲＡ 〜魔竜院光牙最後の闘い〜』を連想しました。
小林雄次『ウルトラマン妹』（スマッシュ文庫）
http://www.amazon.co.jp/dp/4569678084
>兄想いだった妹・月島あかりが、怪獣に襲われて瀕死の重傷!?…と思ったら、ウルトラマンと一心同体になって大復活。中学2年でいきなりウルトラ戦士となったあかりは、地球侵略をたくらむ凶悪な宇宙人の魔の手から、みんなの地球を守るために奮闘する。しかし、一体化したウルトラマン・ジャンヌの能力にも問題があり、絶対絶命の大ピンチに。そんなとき、救いの手を差しのべてくれたのは、あの宇宙警備隊の隊長の…。円谷プロ監修で贈る、美少女ウルトラ戦士の物語。
『ウルトラマンマックス』『ウルトラマンメビウス』『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』などの脚本を手がけた小林雄次氏による、円谷プロ公認のコメディ。
いちおう正史とリンクしていて、メビウスが去って数年後の世界という設定らしい。当然、ウルトラマンの存在は認知されていて、「ウルトラマン80に対する侮辱だわ！」とか「ごく稀に、ウルトラの母とか、ユリアンとか、ウルトラウーマンベスっていう例外はいましたけど」といった台詞も飛び交う。
誰もが思う「女の子だから『マン』じゃないだろ」というツッコミは、作中に何度も出てきて、繰り返しギャグとして使われている。
全体として見ると、意外に普通のライトノベルだな、という印象。もっとぶっ飛んだ話にしても良かったと思うんだけど。
でも、面白くないわけではない。コメディとして十分に笑える。特にヒロインであるはずのジャンヌの無能ぶりがおかしい。ゾフィー隊長の下で訓練中の研修生のうえ、光の国のゆとり世代（あるのか、光の国にも）なんだそうで。ジャンヌ・スラッシュ（頭部の飾りをブーメランのように投げる、アイスラッガー的武器）が練習しないと使えなくて、しかも練習中に変な方向に投げて無くしてしまったり。ここまで役立たずなウルトラマンも珍しい。
もちろん、最後にちゃんと見せ場はあるんだけど。
あとがきで作者は、ファンに怒られるんじゃないかとびくびくしてるんだけど、そんなことはない。きちんとウルトラ・シリーズの設定を踏まえ、その範囲内でコメディを展開してるから、ファンでも納得できる内容のはず。
http://www.amazon.co.jp/dp/4569678084
>兄想いだった妹・月島あかりが、怪獣に襲われて瀕死の重傷!?…と思ったら、ウルトラマンと一心同体になって大復活。中学2年でいきなりウルトラ戦士となったあかりは、地球侵略をたくらむ凶悪な宇宙人の魔の手から、みんなの地球を守るために奮闘する。しかし、一体化したウルトラマン・ジャンヌの能力にも問題があり、絶対絶命の大ピンチに。そんなとき、救いの手を差しのべてくれたのは、あの宇宙警備隊の隊長の…。円谷プロ監修で贈る、美少女ウルトラ戦士の物語。
『ウルトラマンマックス』『ウルトラマンメビウス』『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』などの脚本を手がけた小林雄次氏による、円谷プロ公認のコメディ。
いちおう正史とリンクしていて、メビウスが去って数年後の世界という設定らしい。当然、ウルトラマンの存在は認知されていて、「ウルトラマン80に対する侮辱だわ！」とか「ごく稀に、ウルトラの母とか、ユリアンとか、ウルトラウーマンベスっていう例外はいましたけど」といった台詞も飛び交う。
誰もが思う「女の子だから『マン』じゃないだろ」というツッコミは、作中に何度も出てきて、繰り返しギャグとして使われている。
全体として見ると、意外に普通のライトノベルだな、という印象。もっとぶっ飛んだ話にしても良かったと思うんだけど。
でも、面白くないわけではない。コメディとして十分に笑える。特にヒロインであるはずのジャンヌの無能ぶりがおかしい。ゾフィー隊長の下で訓練中の研修生のうえ、光の国のゆとり世代（あるのか、光の国にも）なんだそうで。ジャンヌ・スラッシュ（頭部の飾りをブーメランのように投げる、アイスラッガー的武器）が練習しないと使えなくて、しかも練習中に変な方向に投げて無くしてしまったり。ここまで役立たずなウルトラマンも珍しい。
もちろん、最後にちゃんと見せ場はあるんだけど。
あとがきで作者は、ファンに怒られるんじゃないかとびくびくしてるんだけど、そんなことはない。きちんとウルトラ・シリーズの設定を踏まえ、その範囲内でコメディを展開してるから、ファンでも納得できる内容のはず。
●逢空万太『這いよれ！ニャル子さん ９』（ＧＡ文庫）
アニメが放映開始され、これからさらに人気が(」・ω・)」うー！ (／・ω・)／にゃー！ と盛り上がることが予想されるシリーズ。前の巻があんまり面白くなかったんで息切れしたのかと心配してたんですが、今回はまたテンションが復活してます。
いつものようにパロディてんこ盛り。もうメテオとかゴーバスターがネタにされてるのには驚き。いつ書いたんだ、この原稿。「古人イワーク」とかも、上手いなあ。
そういう最新のネタがある一方で、宇宙刑事パロとか、「ゲル・ドルバ照準」とか、「14へ行け」とか、懐かしいネタもいろいろ。「14」は今の若い読者には絶対分からんと思うんですが。
他にも、いろんなパロが隙あらば詰めこまれていて、ギャグ密度がとてつもなく高いです。『ＭＭＲ』パロとか、危うく見過ごすところでした。あと、４章のサブタイトルの元ネタに、そのシーンになるまで気がつかなかったのが悔しい。
ニャル子が「ちっちゃくないですよ」と言ったり、お母さんの声が「次女から三女に変わったような」という中の人ネタも。
毎回、ものすごく変な伏線の張り方がしてあって、真尋といっしょに「今回は何が伏線なのか」と推理するんだけど、当たったためしがないんですよね。今回も、いかにも伏線っぽいのがミスディレクションで、些細なことだと思って見過ごした（たぶん作者自身も書き飛ばした）くだりを後づけ設定として出してきたのには驚き。大バカな話なんだけど、作者はいろいろ考えてるなあ。
驚いたといえば、何でニャル子が真尋に惚れたのかという理由がついに解き明かされたのには驚きましたが。
ちなみに今回はタイムパラドックスものです。
アニメが放映開始され、これからさらに人気が(」・ω・)」うー！ (／・ω・)／にゃー！ と盛り上がることが予想されるシリーズ。前の巻があんまり面白くなかったんで息切れしたのかと心配してたんですが、今回はまたテンションが復活してます。
いつものようにパロディてんこ盛り。もうメテオとかゴーバスターがネタにされてるのには驚き。いつ書いたんだ、この原稿。「古人イワーク」とかも、上手いなあ。
そういう最新のネタがある一方で、宇宙刑事パロとか、「ゲル・ドルバ照準」とか、「14へ行け」とか、懐かしいネタもいろいろ。「14」は今の若い読者には絶対分からんと思うんですが。
他にも、いろんなパロが隙あらば詰めこまれていて、ギャグ密度がとてつもなく高いです。『ＭＭＲ』パロとか、危うく見過ごすところでした。あと、４章のサブタイトルの元ネタに、そのシーンになるまで気がつかなかったのが悔しい。
ニャル子が「ちっちゃくないですよ」と言ったり、お母さんの声が「次女から三女に変わったような」という中の人ネタも。
毎回、ものすごく変な伏線の張り方がしてあって、真尋といっしょに「今回は何が伏線なのか」と推理するんだけど、当たったためしがないんですよね。今回も、いかにも伏線っぽいのがミスディレクションで、些細なことだと思って見過ごした（たぶん作者自身も書き飛ばした）くだりを後づけ設定として出してきたのには驚き。大バカな話なんだけど、作者はいろいろ考えてるなあ。
驚いたといえば、何でニャル子が真尋に惚れたのかという理由がついに解き明かされたのには驚きましたが。
ちなみに今回はタイムパラドックスものです。
アニメ放映繋がりということで、川原礫氏の『アクセルワールド』電撃文庫（アスキー・メディアワークス）
なんていかがでしょうか？ http://accel-world.net/
『ソードアート・オンライン』と同じ作者さんです。
wikiによりますと、ジャンル は、VR格闘ゲーム、サイバーパンクだそうです。
内容は、ラノベらしく（？）、ボーイミーツガール要素や、友情など盛りだくさんの青春王道ストーリーです。会話やネタ的な面白さだけではなく、構成やストーリー展開、設定の使い方など多くの点で楽しめます。
私の説明では魅力が伝わらないので、とりあえず読んでみてください（アニメ放映中のせいか中古屋さんにはなかなかありませんが・・・）。
なんていかがでしょうか？ http://accel-world.net/
『ソードアート・オンライン』と同じ作者さんです。
wikiによりますと、ジャンル は、VR格闘ゲーム、サイバーパンクだそうです。
内容は、ラノベらしく（？）、ボーイミーツガール要素や、友情など盛りだくさんの青春王道ストーリーです。会話やネタ的な面白さだけではなく、構成やストーリー展開、設定の使い方など多くの点で楽しめます。
私の説明では魅力が伝わらないので、とりあえず読んでみてください（アニメ放映中のせいか中古屋さんにはなかなかありませんが・・・）。
庵田定夏『ココロコネクト ユメランダム』（ファミ通文庫）
シリーズも７冊目。
またも文化研究部の面々の前に現われた〈ふうせんかずら〉は、「これで最後です」と宣言する。
最後に奴が起こす現象は「夢中透視」。文化研究部以外の山星高校の生徒や教師の抱いている願望が、ランダムにイメージとして見えるというもの。
見えるだけなら実害はない。これまでの現象に比べればたいしたことはないと油断する一同。しかし、「なにもするな」という姫子の指示に逆らって、太一と唯が能力を人助けに使いはじめたことから、またも彼らの人間関係に亀裂が入る。
いつものことながら、揺れ動く人間関係を描くのが上手いです。特に今回は、いつもは火消し役のはずの太一が率先してトラブルを惹き起こしてしまい、姫子との仲が危うくなるという、はらはらどきどきの展開。
ラストはようやくハッピーエンドか……と思いきや、そんなあっさり終わるはずもなく、最後の一行で大きな波乱を予感させます。
あとがきによれば、次に短編集１冊をはさんで、いよいよ完結編だとか。期待して待ちましょう。
ところでこのシリーズもアニメ化決定とかで、キャストが発表されてるんですが、後藤龍善の声が藤原啓治だというのは嬉しい。確かに、〈ふうせんかずら〉のあの喋り方ができる人は藤原啓治しかいない！
シリーズも７冊目。
またも文化研究部の面々の前に現われた〈ふうせんかずら〉は、「これで最後です」と宣言する。
最後に奴が起こす現象は「夢中透視」。文化研究部以外の山星高校の生徒や教師の抱いている願望が、ランダムにイメージとして見えるというもの。
見えるだけなら実害はない。これまでの現象に比べればたいしたことはないと油断する一同。しかし、「なにもするな」という姫子の指示に逆らって、太一と唯が能力を人助けに使いはじめたことから、またも彼らの人間関係に亀裂が入る。
いつものことながら、揺れ動く人間関係を描くのが上手いです。特に今回は、いつもは火消し役のはずの太一が率先してトラブルを惹き起こしてしまい、姫子との仲が危うくなるという、はらはらどきどきの展開。
ラストはようやくハッピーエンドか……と思いきや、そんなあっさり終わるはずもなく、最後の一行で大きな波乱を予感させます。
あとがきによれば、次に短編集１冊をはさんで、いよいよ完結編だとか。期待して待ちましょう。
ところでこのシリーズもアニメ化決定とかで、キャストが発表されてるんですが、後藤龍善の声が藤原啓治だというのは嬉しい。確かに、〈ふうせんかずら〉のあの喋り方ができる人は藤原啓治しかいない！
ゲイル・ギャラガー
「アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う」（ハヤカワ文庫FT）
「アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う 」（ハヤカワ文庫FT）
「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う 」（ハヤカワ文庫FT）
「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」（ハヤカワ文庫FT）
ハヤカワ文庫FTは、ライトノベルレーベルかと言われると微妙ですが、内容はライトノベル風なので大目に見てください。
オカルトという素材に、スチームパンクという調味料をかけたようなオカルト色8割、スチームパンク色2割の小説です。一言でいうと、サイレントメビウスをスチームパンクにして、舞台を倫敦して、女性を一人にした感じでしょうか。
「アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う」（ハヤカワ文庫FT）
舞台は、19世紀ヴィクトリア朝時代のロンドン。人類が吸血鬼や人狼と共存する一方で、飛行船が発明されるなど科学技術が進歩した世界。
そんな世界で、結婚に行き遅れたオールドミス、25歳のアレクシア女史がはぐれ吸血鬼や人論の連続失踪事件に巻き込まれます。
作者が女性のせいか、ハーレクィン風ですが、そこを乗り越えられれば、楽しめると思います。
「アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う」（ハヤカワ文庫FT）
「アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う 」（ハヤカワ文庫FT）
「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う 」（ハヤカワ文庫FT）
「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」（ハヤカワ文庫FT）
ハヤカワ文庫FTは、ライトノベルレーベルかと言われると微妙ですが、内容はライトノベル風なので大目に見てください。
オカルトという素材に、スチームパンクという調味料をかけたようなオカルト色8割、スチームパンク色2割の小説です。一言でいうと、サイレントメビウスをスチームパンクにして、舞台を倫敦して、女性を一人にした感じでしょうか。
「アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う」（ハヤカワ文庫FT）
舞台は、19世紀ヴィクトリア朝時代のロンドン。人類が吸血鬼や人狼と共存する一方で、飛行船が発明されるなど科学技術が進歩した世界。
そんな世界で、結婚に行き遅れたオールドミス、25歳のアレクシア女史がはぐれ吸血鬼や人論の連続失踪事件に巻き込まれます。
作者が女性のせいか、ハーレクィン風ですが、そこを乗り越えられれば、楽しめると思います。
『円環少女』シリーズ(角川スニーカー文庫)、読み終わりました。
今まで長谷敏司さんの作品は、SFマガジンで読んだ「地には豊穣」だけだったのですが、
円環少女は素晴らしい異世界交流テーマの作品で、その壮大さ、工夫の上手さに衝撃を受けました。
異世界との接触が、異文化との交流という単なる国際問題の比喩にはなっていないところが、設定的には特に良かったです。
違う物理法則を持った世界の人間たちがこの世界訪れるという出来事を、
「魔法使い」という伝承と重ねて描くという、
SFやファンタジーを好きな人間なら、いつか読んでみたい、と思う贅沢な作品でした。
最近のライトノベルでも似た設定の作品は当然多いのですが、この作品の作りこみは圧倒的だったと思います。
特に戦闘の描写！
設定を作りこみ、さらにその設定を前提とした戦闘法が描かれていく中での、各魔法の衝突がマジで燃える。
魔法が物理現象のどの部分を捻じ曲げるのか、というところでのリアルさの演出は、言ってみればSF的な発想を使い倒すという作業に他ならず、読んでいて痛快でした。
自分の行為は悪なのではないかと苦しみ続ける主人公も、単純な考えで割り切らない面白いヒーロー像でしたね。
ライトノベルだと、SFファンにも面白い挙げたい作品は他に3つか4つあるのですが、あまり連投する時間も無いので、また今度来ます。
今まで長谷敏司さんの作品は、SFマガジンで読んだ「地には豊穣」だけだったのですが、
円環少女は素晴らしい異世界交流テーマの作品で、その壮大さ、工夫の上手さに衝撃を受けました。
異世界との接触が、異文化との交流という単なる国際問題の比喩にはなっていないところが、設定的には特に良かったです。
違う物理法則を持った世界の人間たちがこの世界訪れるという出来事を、
「魔法使い」という伝承と重ねて描くという、
SFやファンタジーを好きな人間なら、いつか読んでみたい、と思う贅沢な作品でした。
最近のライトノベルでも似た設定の作品は当然多いのですが、この作品の作りこみは圧倒的だったと思います。
特に戦闘の描写！
設定を作りこみ、さらにその設定を前提とした戦闘法が描かれていく中での、各魔法の衝突がマジで燃える。
魔法が物理現象のどの部分を捻じ曲げるのか、というところでのリアルさの演出は、言ってみればSF的な発想を使い倒すという作業に他ならず、読んでいて痛快でした。
自分の行為は悪なのではないかと苦しみ続ける主人公も、単純な考えで割り切らない面白いヒーロー像でしたね。
ライトノベルだと、SFファンにも面白い挙げたい作品は他に3つか4つあるのですが、あまり連投する時間も無いので、また今度来ます。
岩井恭平『ムシウタ』（角川スニーカー文庫）の既刊についての感想をちょろっと。
『ムシウタ』の特徴は、シリーズ作品というより、各巻の主人公となる少年少女のエピソードの集合体だということですね。
他の多くのシリーズものと違い、各話のストーリーの独立性、完結度が高いです。
日常に見え隠れするSF的な世界を舞台にその形式をとるという点では、ブギーポップの正当な後継であり、かのシリーズが好きな人はぜひ読むべきかと。
ただ、全体的にダークな雰囲気の話が多いブギーポップに対し、ムシウタは希望を求める話が多く、その点では明るい（というか、これから明るくなることを予感させる）のが、印象に残りますね。
各能力についてはかなり綿密な描写がされていて、戦闘に素直に入り込めるという点では、前に挙げた『円環少女』と同じで存分に陶酔できます。
これで現在前日譚の『bug』含め20巻のボリュームですから、長大というよりは、「いろんな話が積み重なっている」というのが自分の印象でした。
あと、キャラの個性が強い、というのはラノベでは当然なのですが、このシリーズくらい一人一人を大事に描かれると、やっぱり唸ってしまいますね。
『ムシウタ』の特徴は、シリーズ作品というより、各巻の主人公となる少年少女のエピソードの集合体だということですね。
他の多くのシリーズものと違い、各話のストーリーの独立性、完結度が高いです。
日常に見え隠れするSF的な世界を舞台にその形式をとるという点では、ブギーポップの正当な後継であり、かのシリーズが好きな人はぜひ読むべきかと。
ただ、全体的にダークな雰囲気の話が多いブギーポップに対し、ムシウタは希望を求める話が多く、その点では明るい（というか、これから明るくなることを予感させる）のが、印象に残りますね。
各能力についてはかなり綿密な描写がされていて、戦闘に素直に入り込めるという点では、前に挙げた『円環少女』と同じで存分に陶酔できます。
これで現在前日譚の『bug』含め20巻のボリュームですから、長大というよりは、「いろんな話が積み重なっている」というのが自分の印象でした。
あと、キャラの個性が強い、というのはラノベでは当然なのですが、このシリーズくらい一人一人を大事に描かれると、やっぱり唸ってしまいますね。
あざの耕平『Dクラッカーズ』（富士見ファンタジア文庫 完結済み）
前掲『ムシウタ』で思わずSF的な世界と書きましたが、超能力の源を、科学っぽい説明がついていなくてもSF的と呼ぶかどうかは、人によると思います。ただ、神も悪魔も妖精もいない設定で、人間を起源とする不思議な力の物語を現代で描いた場合、ファンタジー小説と呼ぶかどうか。そう考えると、超能力はファンタジー好きより、SF好きが好む物語ではないか、という考え方もできます。
『ムシウタ』は原理こそ明かされないものの、国家レベルの専門機関が設定されており、明らかに研究対象として超能力が捉えられています。そういう意味ではSF寄りの設定ですね。
『Dクラッカーズ』は単に用語の問題ですが、もう少しファンタジー寄りでしょうか。「悪魔」を使役する力を持つ麻薬を巡る物語であり、現代が舞台でありながらその設定はオカルティックと言えるでしょう。ただし、この悪魔は神と対置された存在ではありません。では、この悪魔はどこから現れたのか？ というのがこのシリーズ後半の鍵になります。
ラノベを読んでいて面白いと思うのは、設定がいかに神様が出てくるくらいのファンタジーであれ、現代を舞台に世界の変容まで描いてしまうと、結局ハードでないSFを読んでいるという感覚になることですね。まあ、「現代」も「近未来」もあっという間に過去になるのがSFの歴史ですが。
『Dクラッカーズ』において、探求の先に現れたものがSF的と言っていいのかファンタジー的であると言っていいのかはさておき、探求の過程もその結果もワクワク度やカタルシスが高いのは確かです。
前掲『ムシウタ』で思わずSF的な世界と書きましたが、超能力の源を、科学っぽい説明がついていなくてもSF的と呼ぶかどうかは、人によると思います。ただ、神も悪魔も妖精もいない設定で、人間を起源とする不思議な力の物語を現代で描いた場合、ファンタジー小説と呼ぶかどうか。そう考えると、超能力はファンタジー好きより、SF好きが好む物語ではないか、という考え方もできます。
『ムシウタ』は原理こそ明かされないものの、国家レベルの専門機関が設定されており、明らかに研究対象として超能力が捉えられています。そういう意味ではSF寄りの設定ですね。
『Dクラッカーズ』は単に用語の問題ですが、もう少しファンタジー寄りでしょうか。「悪魔」を使役する力を持つ麻薬を巡る物語であり、現代が舞台でありながらその設定はオカルティックと言えるでしょう。ただし、この悪魔は神と対置された存在ではありません。では、この悪魔はどこから現れたのか？ というのがこのシリーズ後半の鍵になります。
ラノベを読んでいて面白いと思うのは、設定がいかに神様が出てくるくらいのファンタジーであれ、現代を舞台に世界の変容まで描いてしまうと、結局ハードでないSFを読んでいるという感覚になることですね。まあ、「現代」も「近未来」もあっという間に過去になるのがSFの歴史ですが。
『Dクラッカーズ』において、探求の先に現れたものがSF的と言っていいのかファンタジー的であると言っていいのかはさておき、探求の過程もその結果もワクワク度やカタルシスが高いのは確かです。
日下一郎
『妹戦記デバイシス』（スマッシュ文庫）
>世界は「妹」によって侵略を受けた。
>何を言ってるのかわからんと思うが、俺にもわからなかった。
>世界中の誰にもわからなかった。
>わからないうちに、世界の半分は「妹」に制圧されていた。
地球を侵略してきた謎の存在「異妹（アウタ・シス）」。目視した相手の意識に入りこみ、概念を撹乱する能力を持つ知性体。目視した者は奴らを「妹」と認識するようになり、その忠実なしもべである「妹隷（シス・レイヴ）」と化す。
ネットや電波通信によっても侵食するアウタ・シスのため、人類は高度なコンピュータや通信網の使用を封じられた。日本も東半分が奴らの手におち、「妹圏（シス・ゾーン）」に取りこまれて通信途絶する。
近代兵器では対抗できないアウタ・シスに対抗できるのは、同じ「妹」のみ。「超妹（いも）理論」に基づく「妹力（シス・フォース）」を動力源とする「妹戦機（デバイシス）」を完成させた人類は、反攻に転じる。
ＪＳＦ（日本妹軍）の兄候補生・瀬野尾一樹は、高い妹値を持つ「妹力者（シスタ）」のニカとコンビを組み、デバイシスに乗りこんでアウタ・シスの侵攻に立ち向かう。
こんなにもふざけた設定であるにもかかわらず、驚くべきはこの話がシリアスであること！ ギャグもパロディもほとんどなく（ある意味、全編がギャグなんだけど）、圧倒的な力で地球を侵食する不気味なアウタ・シスと、人類最後の希望であるデバイシスの戦いが、大真面目に描かれるのです。
設定としては『戦闘妖精・雪風』あたりを連想させますね。『蒼穹のファフナー』とか『塩の街』とかも。
クライマックスで明かされるアウタ・シスの正体も、ＳＦ設定として納得できるもの。欲を言えば、シス・フォースの原理について、もうちょっと屁理屈こねていただきたかったですが。
高度なコンピュータだとアウタ・シスに乗っ取られてしまうので、システムにＭＳＸを使ってるとか、細部の小ネタも楽しい。
古橋秀之氏の『超妹大戦シスマゲドン』と並ぶ、「妹ＳＦ」の快作といえるでしょう。
『妹戦記デバイシス』（スマッシュ文庫）
>世界は「妹」によって侵略を受けた。
>何を言ってるのかわからんと思うが、俺にもわからなかった。
>世界中の誰にもわからなかった。
>わからないうちに、世界の半分は「妹」に制圧されていた。
地球を侵略してきた謎の存在「異妹（アウタ・シス）」。目視した相手の意識に入りこみ、概念を撹乱する能力を持つ知性体。目視した者は奴らを「妹」と認識するようになり、その忠実なしもべである「妹隷（シス・レイヴ）」と化す。
ネットや電波通信によっても侵食するアウタ・シスのため、人類は高度なコンピュータや通信網の使用を封じられた。日本も東半分が奴らの手におち、「妹圏（シス・ゾーン）」に取りこまれて通信途絶する。
近代兵器では対抗できないアウタ・シスに対抗できるのは、同じ「妹」のみ。「超妹（いも）理論」に基づく「妹力（シス・フォース）」を動力源とする「妹戦機（デバイシス）」を完成させた人類は、反攻に転じる。
ＪＳＦ（日本妹軍）の兄候補生・瀬野尾一樹は、高い妹値を持つ「妹力者（シスタ）」のニカとコンビを組み、デバイシスに乗りこんでアウタ・シスの侵攻に立ち向かう。
こんなにもふざけた設定であるにもかかわらず、驚くべきはこの話がシリアスであること！ ギャグもパロディもほとんどなく（ある意味、全編がギャグなんだけど）、圧倒的な力で地球を侵食する不気味なアウタ・シスと、人類最後の希望であるデバイシスの戦いが、大真面目に描かれるのです。
設定としては『戦闘妖精・雪風』あたりを連想させますね。『蒼穹のファフナー』とか『塩の街』とかも。
クライマックスで明かされるアウタ・シスの正体も、ＳＦ設定として納得できるもの。欲を言えば、シス・フォースの原理について、もうちょっと屁理屈こねていただきたかったですが。
高度なコンピュータだとアウタ・シスに乗っ取られてしまうので、システムにＭＳＸを使ってるとか、細部の小ネタも楽しい。
古橋秀之氏の『超妹大戦シスマゲドン』と並ぶ、「妹ＳＦ」の快作といえるでしょう。
望公太『異能バトルは日常系のなかで』（ＧＡ文庫）
ある日突然、俺・安藤寿来を含めた文芸部の５人は、不思議な光を浴び、超絶的な異能を身につけた。
これで厨二病的異能バトルの世界に突入するかと思いきや――
半年経っても、俺たちの日常には何の変化もなかった。
平凡な人間がいきなり超能力に目覚めたために、日常が大きく変わってゆくというのは、ＳＦではよくある話です。最近では『クロニクル』という映画もありましたね。
しかし、異能に目覚めても日常が変わらないというのは、斬新なパターン。
なぜかというと、第一に、戦うべき敵が現われないから。
第二に、主人公の安藤の能力は、手から黒い炎（ただし熱くない）が出せるというしょぼいものだけど、他の４人の女の子の能力はどれもこれも超絶的すぎて、うかつに使えないから。
うん、確かにこの能力で戦争を終わらせようとかしたら、『戦場の魔法少女』になりそうだな（笑）。
結果的に彼らは、文芸部の部室でしょーもない話題を駄弁ることしかできない。要するにこれは、『生徒会の一存』や『てさぐれ！部活もの』みたいな、限定された空間での日常会話が主体のコメディなんですな。
ただ、そこで展開される「厨二病」「異能」「二つ名」などの概念に関する議論は、なかなか本質を突いていて、笑いながらも「なるほど！」「言われてみればそうだよな」と感心させられます。
全編、迷シーン・迷台詞のオンパレードなんですが、特に大笑いしたのは千冬ちゃんの二つ名！ これ以上に衝撃的な二つ名は思いつきません、はい。
まだ１巻しか読んでないんですが、２巻以降は異能バトルものになりそうな伏線も張ってあります。ただ、希望としては、このまま日常路線を維持してほしいですね。バトルになっちゃうと、どこにでもあるラノベになってしまいそうなんで。
ある日突然、俺・安藤寿来を含めた文芸部の５人は、不思議な光を浴び、超絶的な異能を身につけた。
これで厨二病的異能バトルの世界に突入するかと思いきや――
半年経っても、俺たちの日常には何の変化もなかった。
平凡な人間がいきなり超能力に目覚めたために、日常が大きく変わってゆくというのは、ＳＦではよくある話です。最近では『クロニクル』という映画もありましたね。
しかし、異能に目覚めても日常が変わらないというのは、斬新なパターン。
なぜかというと、第一に、戦うべき敵が現われないから。
第二に、主人公の安藤の能力は、手から黒い炎（ただし熱くない）が出せるというしょぼいものだけど、他の４人の女の子の能力はどれもこれも超絶的すぎて、うかつに使えないから。
うん、確かにこの能力で戦争を終わらせようとかしたら、『戦場の魔法少女』になりそうだな（笑）。
結果的に彼らは、文芸部の部室でしょーもない話題を駄弁ることしかできない。要するにこれは、『生徒会の一存』や『てさぐれ！部活もの』みたいな、限定された空間での日常会話が主体のコメディなんですな。
ただ、そこで展開される「厨二病」「異能」「二つ名」などの概念に関する議論は、なかなか本質を突いていて、笑いながらも「なるほど！」「言われてみればそうだよな」と感心させられます。
全編、迷シーン・迷台詞のオンパレードなんですが、特に大笑いしたのは千冬ちゃんの二つ名！ これ以上に衝撃的な二つ名は思いつきません、はい。
まだ１巻しか読んでないんですが、２巻以降は異能バトルものになりそうな伏線も張ってあります。ただ、希望としては、このまま日常路線を維持してほしいですね。バトルになっちゃうと、どこにでもあるラノベになってしまいそうなんで。
宮澤伊織『ウは宇宙ヤバイのウ! ~セカイが滅ぶ5秒前~』 (一迅社文庫)
>巨大隕石が降り注いで5秒…地球は滅亡した!―と、次の瞬間、高校生の久遠空也はベッドの上で目覚めた。今のは夢!?だけどやけに生々しい…。ベッドの隣には冷めた目のヌル香。「なにやってるんです?しっかりしてください」彼女はため息混じりに説明する。空也はかつて星間諜報局の敏腕エージェントだったが、世界線混淆機なるものを起動させたことで記憶を失い、地球人の高校生になったというのだ。「緊急措置としてついでに時間も遡りました。隕石が再び落ちてくる二日後までにこの状況をなんとかしてください」「…ってどうしろと!?」
これは秀逸なスラップスティックＳＦ。超兵器によるバトル、パラレルワールド、タイムトラベルと何でもありの、言わばラノベ版ワイドスクリーン・バロック。話がどこに転がるかさっぱり分からない。バリントン・ベイリーがラノベでコメディ書いたらこうなるかな、という感じ。
交叉時点（クロスホエン）とか「火を発見した熊」とか、ＳＦファンなら分かるネタがいろいろ。人名も、コードウェイナー菫はまだしも、洲谷洲わふれむって強引すぎ！（笑）
でもいちばん笑ったのは、時間警察に「時間遡行恋人救出防止係官」という役職があるという話。ああ、確かに時間犯罪者の動機のほとんどがそうだわ。
『銀河ヒッチハイク・ガイド』や『宇宙船レッド・ドワーフ号』が好きな人には、断然おすすめ。
>巨大隕石が降り注いで5秒…地球は滅亡した!―と、次の瞬間、高校生の久遠空也はベッドの上で目覚めた。今のは夢!?だけどやけに生々しい…。ベッドの隣には冷めた目のヌル香。「なにやってるんです?しっかりしてください」彼女はため息混じりに説明する。空也はかつて星間諜報局の敏腕エージェントだったが、世界線混淆機なるものを起動させたことで記憶を失い、地球人の高校生になったというのだ。「緊急措置としてついでに時間も遡りました。隕石が再び落ちてくる二日後までにこの状況をなんとかしてください」「…ってどうしろと!?」
これは秀逸なスラップスティックＳＦ。超兵器によるバトル、パラレルワールド、タイムトラベルと何でもありの、言わばラノベ版ワイドスクリーン・バロック。話がどこに転がるかさっぱり分からない。バリントン・ベイリーがラノベでコメディ書いたらこうなるかな、という感じ。
交叉時点（クロスホエン）とか「火を発見した熊」とか、ＳＦファンなら分かるネタがいろいろ。人名も、コードウェイナー菫はまだしも、洲谷洲わふれむって強引すぎ！（笑）
でもいちばん笑ったのは、時間警察に「時間遡行恋人救出防止係官」という役職があるという話。ああ、確かに時間犯罪者の動機のほとんどがそうだわ。
『銀河ヒッチハイク・ガイド』や『宇宙船レッド・ドワーフ号』が好きな人には、断然おすすめ。
- mixiユーザー
- ログインしてコメントしよう！
|
|
|
|
SF(Science Fiction) 更新情報
-
最新のアンケート
-
まだ何もありません
-
SF(Science Fiction)のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています
人気コミュニティランキング
- 1位
- ハレプロ セッション♪
- 453人
- 2位
- mixi バスケ部
- 37784人
- 3位
- 【ハレプロＪ】セッション
- 269人