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『心の中の大切な日記』-完結-コミュの第5章/遠い記憶

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コミュ内全体

俺はストレッチャーで運ばれた。


警官が無線で応援を呼ぶ中
ゆりは救急車に乗り込んだ。

その時、俺の口には酸素マスクが付けられ
応急処置がされていた。



『健ちゃん、ごめんね。。健ちゃん…』



かすかにゆりの声が聞こえ
意識がなくなった。


<次の☆まではゆりから後から聞いた話です>

ゆりはフルートを手にギュッと握り締めて
何度も俺の名前を呼んでいた。

その後、俺は病院に救急搬送され
集中治療室に入った。

ゆりは震えながら詳しい事情を
警官に話した。

しばらくして中年女性がゆりの肩を
トントンと叩いた。

その女性は俺の母だった。

二人は初対面だった。

『あなたがゆりちゃん!』

『はい。はじめまして立花ゆりです。』

『はじめまして。健介の母です。。』

『すっ。すいません。私が健ちゃんを・・・』

『すいません。すいません…』

ゆりは泣きながら何度も母に謝った。


そして母は・・・・


ニコッと笑った。


『ゆりちゃん、なんで泣いてるの。。
 大丈夫って!!あの子はそんなことで
 くたばる男じゃないから! 
 ゆりちゃんが1番よく知ってるでしょ。。
 大丈夫って!!
 それで・・
 何でゆりちゃんが謝るの。。
 二人とも何も悪くないよ。。』

そう言いながら涙で頬を濡らす
ゆりの背中を母は何度もさすった。

家にも警察から電話があった様子だが
母は何も動揺していない様子だった。

そんな母の姿を見て
ゆりの涙は時間と共に静かに止まった。


『・・・・・・そうですね!! おばさん!
 私たちが泣いていたらだめですね!』

『そうよ。ゆりちゃん。。よく言った!!
 今は信じよッ。あの子の体力を・・・』

二人はニコッと微笑んだ。


しばらく無言の時間が続いた。


そして母が話しかけた。

『ゆりちゃん、今日、何があったの。。』

『あっ、あ、はい。・・・・』

ゆりは今までの練習のことや
今日、起こったことを伝えた。


『・・・』
母は無言だった。


しばらくして母が話した。

『あぁ!あの子らしいなぁ。。
 あのね。ゆりちゃん。
 私、あの子が小学校2年の時に
 すごく叱ったことあるのよ・・・・』

『はっ。はい。。』


ーーーー母の内容はこうだったーーーー 

健介は近所の雄二にずっといじめられていた。

二人は保育園の頃から仲良しでいつも遊んでいた。

二人には好きな子がいた。

しかも同じ子だ。

名前は奈美ちゃん。
バレンタインの日に健介は
奈美ちゃんにチョコをもらった。

しかし、雄二はもらえなかった。

いじめの原因はそのことだ。

その日を境に雄二は健介と
距離をおくようになった。

健介は母にいじめの事は言わなかった。

それは父が家出をして
母が毎晩、落ち込んでいたからだ。

子供心ながら気を使っていたのかもしれない。
健介へのいじめは毎日、続いた。

靴隠し、無視・・・。

小学生低学年ながら
教師の目を盗みながらの陰湿ないじめだった。

ある日、雄二は健介に謝った。
『ごめん。今まで悪かった。公園で遊ぼう!』 と


健介はすごく嬉しかった。



ランドセルを家に置き、すぐに公園へと向かった。


しかし・・・公園に着いた健介に
まっていたのはいじめだった。


『昨日、お前の為にみんなで
 たくさん作ったんだ!』


そう言いながら健介に
泥団子をぶつける雄二たち。

健介は身動きとれず壁際で泥だらけになった。

みんなが笑いながら帰ろうとすると
雄二の自転車の鍵がない。

健介は倒れているがそれを無視して
探し廻る仲間たち。

日も沈み、雄二をおいて帰る仲間。

雄二も明日、探そうと家に帰った。

次の朝。
健介は雄二に鍵を渡した。

健介はみんなが帰った後も
ずっと鍵を探していた。


寒い冬だった。


ライトもないので外灯の明かりだけだ。

泥だらけになり手探りで必死に探した。

そしてやっと見つけた。

健介は鍵を握り締め、家に帰った。

家に着いた時は夜8時を過ぎていた。


心配していた母は健介が帰ると同時にビンタした。 


健介は何も言わなかった。

ただごめん。。といって
泥だらけの服を脱ぎすぐに風呂に入った。

次の日、雄二に鍵を渡したが
いじめは続いた。

あることを機に雄二と一緒にいた子は
離れていきいじめの目は雄二に向けられた。

ある日、健介も雄二の無視に
加わるよう連中から誘われた。

健介はこの連中の誘いを無視した。

雄二はなぜ、こんな俺を無視しないと聞いた。

『無視する理由がわからない。。』

健介は軽く答えた。

それ以後、二人は以前のように仲良くなった。

このことを知っているのは
雄二が健介の家に遊びに来た時
母に今までのいろんなことを話したらしい。

【俺は今までいじめの事や自転車の鍵の日のことは
 一度も母に話したことがなかった。
 俺はただ雄二と昔のように仲良くなりたかった。】


ゆりはじっと母の話を聞いていた。


『あの子らしいよねッ。。
 フルート取りに行ったあの子の気持ち!!
 なんかわかるよ。。
 あの子の気持ち大切にしてあげようねッ!!』 

『私もあの子がフルート置いて
 逃げていったら逆に怒ってた。。
 だからもう泣いたらだめだよ。。ゆりちゃん!』

『はっ。はい!!』



しばらくして集中治療室から医師が出てきた。 



二人は医師の所へ駆け寄り
説明を聞いた。

頭や背中、顔に皮下出血の傷が多くあり
左大腿骨の骨折も確認された様子だ。

『数カ所の骨折もあり、負傷の程度が重く
 今後、ギプスで両足を固定することになり
 治癒に長い時間がかかります』


目をみつめ合わせる二人。 


しばらくしてストレッチャーに乗せられ
俺は集中治療室から出てきた。

顔はあざだらけで腫れ上がり
頭には包帯が巻かれていた。


☆≪ここまでがゆりから聞いた母との会話≫☆


『・・・・ゆり!母ちゃん!』


翌朝、俺の意識ははっきりとしていた。

俺は病室に運ばれた。
しばらくの間、個室での療養となった。


ゆりは何も言わず黙っていた。


病室に入ると、母とゆりの視線が集中した。

ゆりは思い詰めた表情で俺をみつめた。

『大丈夫。。』 
悲しそうに、ゆりが聞いてきた。

だけど、俺はそれに応える元気がない。

『ゆりちゃん!!大丈夫って。。
 こんな怪我でコイツはくたばりません。
 健介!また夕方、いろいろ持ってくるから。。
 また、夕方来るからね。。』
 
母は二人に気をつかったのか帰っていった。


『大丈夫。。』
俺は少し動く唇で答えた。


ゆりの目から涙が流れていた。


ゆりが無事だったことが何より嬉しかった。
 
ゆりは胸元の指輪を俺にみせた。

いつも無くさないように
ネックレスのように指輪をぶらさげている。

あの誕生日の綺麗な夕日が
記憶の底から這い上がり
いろんな記憶が蘇ってきた。

『健ちゃん!あの場所は私にとって
 大切な場所だよッ。もちろん今も!!』

俺は嬉しかった。

涙が溢れ、肩をふるわせ
布団に顔を埋めていた。


ゆりはギュッとフルートを握り締めていた。 


『健ちゃん、ありがとう!』


その『ありがとう!』が心に温かく響いた。


あれから3日が経過した。

俺の顔の腫れも少しだけひいた。

ゆりは学校帰りに毎日、病院に寄ってくれている。

今日はりんごの入った買い物袋を持って
病院に来てくれた。

『健ちゃん!今日はいい天気だねッ!!』

『いい天気だな!今日は暑いだろッ!』

話す度に骨折にすごく響くが
ゆりと話したい気持ちのほうが強かった。

『りんご、買ってきたから一緒に食べよッ!!』
そう言いながらゆりはりんごの皮を剥いた。

『健ちゃん、足どう?痛む。。』

『あぁ、ちょっとだけ。。
 でも、もうよくなったと思う!』

二人はりんごを食べながら
ありふれた話題に盛り上がった。


しばらくして、ゆりが黙った。


・・・・・そして俺に話し掛けた。


『私、健ちゃんにずっと言いたかった事があった。
 ・・・・・ずっと言いたかった。。
 でも言えなくて・・・苦しかった。。』



ゆりは俺の目を真剣にみつめ話し掛けた。


俺は「あのことではないか・・」と瞬時に思った。

『私、小学3年の時に町内会で
 川原に行ったんだ。香織とも前の日…
 楽しみでお菓子買いにいったりした。
 そしてね…』

ゆりの話は、以前、お父さんの
言っていた話と少し違っていた。


ーーゆりの話はこうだった。ーー

小学3年の時に町内会で川原にみんなで行った。

前日、お菓子を買うために香織さんの家に行き
香織さんがカラフルなボールを
嬉しそうに見せてくれた。

ボールの話は学校でも聞いていた。

それは1週間前の誕生日におばさんに
買ってもらったカラフルなボールだ。

ボールをゆりに見せながら
明日、持っていくんだ!と微笑む香織さん。

それで二人は投げあいをして遊んだ。

駄菓子屋でお菓子を買い、二人は別れた。

二人は明日が来るのがとても楽しみだった。

二人はうきうきした気分で次の朝を迎えた。

観光バスに乗り、楽しく会話し川に向かった。

ジャガイモを切ったり
にんじんを切ったり
みんな楽しそうに盛り上がっていた。

香織さんは近所の同級生に何かを
言われたのか元気がない。

突然、元気がなくなったのだ。

香織さんはクラスでいじめられていた。

同じクラスじゃなくても
いじめる子はいっぱいいた。

ゆりはいつも彼女なりに
香織さんを守っていた。

食後、川原で三人の女の子が
香織さんのボールを持っていた。

ゆりが不信に思い、近づくと
一人の女の子が釘を持っていた。

川原で拾ったのかどうかはわからない。

向こうでわいわいと盛り上がる大人達。

香織さんは少しは離れた所で
ひとりで綺麗な石を拾っていた。

ボールに穴を開けようとする女の子。

ゆりはそれを止めようとして必死になった。


ボールの取り合いになった。


そして、その瞬間・・・・・。
ボールが川に落ちた。


流れるボールに気づき
香織さんは拾おうとして
走り川に飛び込んだ。

それと同時に近くにいた香織さんのお父さんが
顔色を変えて川に飛び込んだ。

お父さんは香織さんを
抱くことだけで必死だった。

必死に香織さんを抱くお父さん。

戸惑う川辺の人たち。

お父さんは川の真ん中にある石に
香織さんを乗せ、力尽き流された。

ゆりと女の子たちは呆然としていた。

救急車が病院に向かい
消防団がお父さんを捜索していた。


ゆりの頭の中は真っ白だった。


・・・・そして女の子がつぶやいた。

『・・ゆりが香織のボールを
 川に投げたから・・・』

彼女の手には釘がなかった。

ゆりはさっきのことを言おうとした。


『私、私・・・』 


彼女が話そうとした時
ゆりのお母さんがビンタをした。

その時、ゆりの心と言葉は凍った。

そして皆に土下座する母。

『娘のせいで・・・娘の・・・すいません・・』

ゆりの産みのお母さんは
ゆりが幼稚園の時に
事故で亡くなった。

今のお母さんはゆりが小学1年の時に
再婚した母だ。

ゆりにはずっと冷たかった。

・・・ゆりの言葉を聞く前に手が出てしまった。

お父さんは動揺していて
何も言えなかった様子だ。

ゆりは自分の声に耳を傾けず
必死に謝る母の姿を
目の前にただ涙がでた。



・・・・・・ただ悲しかった。


鳴り響く救急車と消防車のサイレン音。


ゆりの家族を見る、皆の視線は冷たい。


香織さんが病院で処置を受けている間
ずっと待合室で待っていた他の子たちは
夜遅いのでみんな帰った。

悲しいことにお父さんが死んだことも耳に入った。

おばさんの泣き叫ぶ声も聞こえていた。

処置が終わったのは深夜で香織さんは寝ていた。
三人は朝まで病院で待つことにした。

近くにお母さんはいなかった。

ゆりはお父さんには話そうと思った。

『お父さん・・・今日・・・』

するとお父さんは言った。

『ゆり、辛いだろ。。
 お前がしたことは悪いことだ。。。
 悪いことなんだ。。
 秋野さんのお父さんが亡くなったんだ。
 父さんも心から謝るから。。』

ショックだった・・・。
この言葉を聞いて以来、本当のことは
ゆりの心の中にあり誰にも
言っていないとのことだ。

香織さんの退院後
家族三人で
おばさんと香織さんに
何度も何度も謝った。

その様子を見て
当時の様子を知らなかった香織さんは
ゆりが川にわざとボールを投げたんだと
思い込んでしまった。


あの事故から1ヶ月が経過した。

ゆりが川にボールを投げお父さんが
亡くなったという噂も広まっていた。

警察にも何度も足を運んだ。

二人は学校に通っていた。

香織さんはゆりを無視し続けた。

ゆりは香織さんに何も言えなかった。

いつも仲のよかった二人。

ゆりは悲しくて部屋の中でいつも泣いていた。


大事にしていたボールに釘を・・・
あの子たちが・・・
でも伝えることはできなかった。


香織さんの大切なボールを
手を滑らせ川に落としたのは事実だから・・・。


学校では先生に隠れて
『殺し屋』といじめられる日々。

もちろん、あの女の子もいじめに加わっていた。

彼女自身、自分が悪いなんて
全く思っていない様子で
自らが被害者のようで
香織さんの味方をしていた。

それでもゆりは学校へ行った。

香織さんは今までいじめられていたが
ゆりに皆の目線がいき香織さんの
いじめはなくなった。

ゆりはそれでいいと思った。

近所の目線も冷たく
お母さんは離婚し家を出て行った。

それ以来、お父さんとも
あまり話をしていない。

香織さんはゆりを3年間無視し続け
いじめにも加わった。

ゆりはずっといじめられた。


・・・悲しかった。
・・・・・香織、わかって・・・。
いつも心の中で呟いていた。


ゆりはあれから毎日
香織さんの家に手紙を届けた。

どんな日も。
毎日、毎日届けた。

ゆりが届ける手紙を
香織さんもおばさんも
一度も読んだことがない。
いつも捨てていた。

ある雨の日、手紙を届けるゆりの姿を
おばさんが見ていた。


おばさんはこの日の手紙を読んだ。


『香織、おばさん、ごめんなさい。
 私は今も変わらず二人が大好きです。
 おじちゃんも大好きです。
 私は二人を寂しい気持ちにさせました。
 だから私も寂しい気持ちになりました。
 私はずっと寂しくていい。
 でも香織とおばさんに幸せになってほしい。
 おじちゃんの仏壇に謝りたいです。
 許さなくていいです。
 それは当たり前のことです。
 ただ仏壇に手をあわせたいです。』

おばさんはハッと思った。

昨日の手紙、一昨日の手紙・・・・

ゴミ箱に捨てた手紙を探った。

そして・・・・
それらの手紙にも同じことが書かれていた。



おばさんはあの日の出来事を忘れていた。
ゆりのお母さんが事故で亡くなった日のことだ。

5年前、近所で事故があった。
買い物帰りの女性が事故にあったと
みんなが集まっていた。

ゆりは香織さんの家で遊んでいた。

おばさんが野次馬の中に入ると
女性が倒れていた。

トラックに自転車ごと巻き込まれた様子だ。
よく見るとゆりのお母さんだった。

家に走って帰り、ゆりに知らせた。

意識のないお母さんにゆりは何度も何度も

『お母さん!!お母さん!!』と呼んでいた。

救急車にはおばさんとゆりが乗った。


そして救急車の中でゆりのお母さんは
息をひきとった。


ゆりは大声で泣き叫んだ。


ゆりの横でおばさんは後悔していた。

その日、お母さんとゆりはデパートに
買い物に出掛ける準備をしていた。

その時、香織さんが家に来た。
『ゆりッ!!おばあちゃんがちょっと来てって!』

おばさんは香織さんとゆりに
親戚から届いた栗を食べさせたかった。

ゆりは買い物に行くのをやめた。

『ゆりが行かへんのなら
 バスに乗らんと自転車で行くわ。。』

お母さんはバスに乗らずに
自転車で行くことにした。

そのことを責めてゆりは
病院の中で子供ながらに呟いていた。

『私が買い物に行かなかったから。。
 わたしのせいで…』

それを聞いておばさんも胸が痛かった。


あの日と今のゆりの表情は同じだった。

・・・おばさんは思った。

川にボールを投げたのは
子供心からの寂しい気持ちからだ。

川にボールを投げたゆりも悪いが

拾いに行った香織も悪い。

そして、5年前・・・
病院で泣いているゆりに掛けた
言葉も思い出した。

『こんなおばさんだけど
 お母さんと思ってもいいよ。。
 困ったことがあったら何でも言ってね。。』


おばさんは部屋にいる香織さんを
玄関に無理やり連れ出した。

三人は仏壇の前に座ったが
静かな時間がしばらく続いた。

ただ・・涙声で『ごめん、ごめん…』
と謝るゆりの声が仏間に響いた。

うつむいていた香織さんが顔をあげて
ゆりをみつめた。

『・・・ゆりはずっと寂しい気持ちだったの。。
 そんなゆりに誕生日プレゼントを
 自慢した私が悪い。。
 あの時、川に飛び込んだ私も悪い。。』

香織さん自身も川に飛び込んだ自分を責めていた。     

ゆりは川にボールを落とした罪悪感もあり
ボールが川に流れた原因を
伝える事ができなかった。


・・・ボールに釘を・・・あの子たちが・・・


子供ながらにこれ以上、二人に寂しい気持ちに
なってほしくないと思っていた。

数時間が経過しゆりと香織さんは握手をした。

おばさんは『ゆりちゃん、ごめんね。。』
と言って静かに微笑んだ。


ゆりは仏壇に手をあわせた。


卒業式の数日前の出来事だった。



それ以来、ゆりは毎日のように
香織さんの家に遊びに行った。

学校帰りは寄り道をして
二人で公園で遊んだりもした。

二人はゆっくりゆっくり時間をかけ
以前のように仲良くなった。

中学になってもゆりへの
いじめはなくならなかった。

香織さんはゆりのいじめには
一切、加わらなくなった。

だが・・・内気な香織さんは
助けることもできなかった。

中学入学と同時に二人は吹奏楽部に入部した。

ゆりはフルート、香織さんは
トランペットを担当した。

コンクールの練習も互いの家で練習した。


コンクールの2週間前のことだった。

クラブの数人が小声で話していた。


『ゆりだけどさぁ、人を死なせておいて・・
 知ってる?あの子さぁ。香織の親を・・・』


ゆりはたまたま聞いてしまった。

クラスでは浮いていたが
クラブでは仲のいい子もいた。

だけど仲のいい子にも無視され始めた。

香織さんは一度
『ゆりをいじめるのはやめてッ!』
と部員の前で大声で叫んだことがあった。

それから目に見えるいじめはなくなった。
しかし心に感じるいじめが消えることはなかった。

ゆりはコンクールに行かなかった。

それ以後、クラブにも行かなかった。

ある日、机の上に落書きがされていた。
『殺し屋 ゆり追放』と書かれていた。

ゆりは勇気を出して『誰がやったの!!』
と大声で叫んでも皆、無視だった。

日が経つごとにゆりは荒れていった。
外見で近寄り難い雰囲気に見せていた。

髪も染め、化粧もした。

学校では皆と違った行動をした。

ゆりのいじめはなくなったと同時に
みんなとの距離も今まで以上に離れた。

しゃべり掛ける人もいず孤独な学校生活だった。

教師の目線さえも冷たく感じた。

香織さんとゆりはクラスが違う為
学校では話す機会がなくなった。

時折、他校の荒れた連中も
バイクに乗りゆりを遊びに誘った。


だが、ゆりは無視して
決して連中と遊ぶことはなかった。


ゆりには学校帰りに
必ず行く場所があったからだ。


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