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『心の中の大切な日記』-完結-コミュの第6章/思い出の場所

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コミュ内全体

あれから2週間が経過した。

俺は順調に回復して
ゆりは毎日、病院に顔をみせてくれた。

明日から大部屋に移動予定だ。

最近、少し元気になり1日1日を
退屈に感じでいた。

今日もぼんやり外を眺めていると
ドアをノックする音が聞こえた。

ドアの方を見るとおばさんとゆりが
そっと顔を覗かせた。

『健ちゃん!おばさん連れてきたよ!!』

『あっ。おばさん!ありがとう!』

『健ちゃん、大変だったねぇ。。』

『はい。。階段から転げ落ちて・・・
 俺って本当にドジというか・・』

二人はおばさんに心配させたくないので
階段から転んだと伝えてあった。

『りんご食べてねっ!』
おばさんは微笑みスーパーの
袋に入ったりんごをくれた。

『ありがとう!!』

おばさんと会うのは久しぶりで
いろいろな話をした。

ゲートボールの話。
近所のおじいさんの話・・・・。

そして、ゆりの話もした。

ゆりは毎日、おばさんの家で夕食を作り
二人で食事をしている様子だ。

昨日も俺が少しずつ元気になっていると
嬉しそうに話していたらしい。

『健ちゃん、また治ったら
 家に遊びに来てね。。
 待ってるよ!
 今日は近くまで来たから
 墓参りに行ってくるね!』

香織さんとご両親のお墓は病院から
歩いて10分位の場所にあるそうだ。

『おばさん、俺も行ってもいいかなぁ…』

俺はナースコールを押した。

看護師に聞くと短時間の外出ならば・・
ということで外出を了解された。


ゆりに肩を支えてもらい車椅子に乗り
病院の外へ出た。

蒸し暑く、太陽が眩しい。

久しぶりに外の空気を感じた。

病院から500メートル位歩いた所に
お寺があった。

桶に水を汲み、お墓へと向かった。

『今日も暑いねぇ・・・』
おばさんはお墓に優しく話し掛けた。

『新しい花が供えてある!
 誰か来たのかなぁ。。』

『私。。 健ちゃんの病院から近いし…』

ゆりは病院に寄った帰りに
いつもここに来ていた。

『ゆりちゃん、ありがとう!!』

ゆりは静かに微笑んだ。


三人はお墓に手をあわせた。


俺はゆりの優しい気持ちに癒された。


『健ちゃん、ありがとう。。
 嬉しいよ。。ありがとう!!
 私ッ、ゆりちゃんと健ちゃんが
 いてくれるから元気なのよ。。
 いつもありがとう!ありがとう!!』

おばさんはにっこり微笑んだ。

『俺もおばさんが元気でいてくれるから
 元気な気持ちになれるんだ〜』

『うん、私も同じ!
 おばさんありがとう。。』


三人の上には透き通るような青空に
スッと長い飛行機雲が浮かんでいた。


おばさんは病院の近くに住む友人に
久しぶりに会うのでここで別れた。

ゆりは俺の車椅子を押して病院へと向かった。

『健ちゃん、痛くないの。。』

『そらぁ、ギブスしてるから少しは痛いよ。。
 だけど、だんだん良くなってきてるし!!』

『ありがとう!!
 本当だったら私が入院していたかもしれない。。
 健ちゃんが守ってくれたから・・・。』

俺はどう答えようか少し戸惑った。


『・・・ああ。そうだとも!
 正義の味方〜木下健介!!
 大切なゆりと大事な宝物!
 二つも守れてこれだけの怪我ですんだ!!
 きっと神様が俺らの
 味方してくれたんだと思う。。』


二人は缶ジュースを買って
近くの公園に寄り道した。


いっぱいいろんな話をした。


急にゆりがダルマさんが転んだをしようと
言い出した。


俺もはしゃいで車椅子のまま木に顔をつけ
『ダルマさんが転んだッ!』と言った。

ゆりはゆっくりゆっくり近づいて来る。

俺も童心に帰り、夢中で振り返る。

二人とも心の底から笑った。

『健ちゃんといると楽しいよ・・・。
 ふたりでダルマさんしてても面白いよッ!!』

『俺も楽しい!!またおばさんも
 一緒にやろッ!』

『そうだね!おばさんやり方わかるかな。。』

『わかるって・・・二人で説明しよう!』


『そうだねっ。。
  ・・・・・健ちゃん、今日はごめんねっ!』


『えっ。。何がごめん。。』

『あぁ、何にも。。。』


俺はゆりの『ごめん!』が少し気になった。


二人は病室に戻った。

俺はベッドに横になり少し眠った。

目を覚ますと部屋の中は夕焼けで
オレンジ色に染まっていた。

横を見るとゆりも椅子に腰を掛けたまま
眠っていた。

ゆりの寝顔は優しい顔をしている。


いろいろなことがあった。
辛い日々もたくさんあった。

ゆりを幸せな気持ちにしたい。
喜ばせたい。
一緒に歩きたい。。
ずっと一緒にいたい。。


俺はゆりの優しい寝顔をみて
そう思った。


しばらくしてゆりが目を覚ました。

『ごめん。。健ちゃん。寝てしまった。。』

『あぁ。俺も少し寝てしまった。
 ダルマさんで疲れたかなぁ。
 思いっきりはしゃいだからな〜』

『健ちゃんの足が
 治ったらまたやろうねっ!
 今度は私が鬼になるから。。』

ゆりは立ち上がり
窓の外を眺めた。


『健ちゃん、すごい〜夕焼け綺麗!!』


肩を支えてもらい外を眺めると
空一面がオレンジ色に包み込まれ
太陽が山に沈んでいく瞬間だった。

『綺麗だなぁ〜』

二人は空の鮮やかさに言葉を忘れた。



そして自然に向き合いキスをした。



二人にとって初めてのキスだった。


あれから1週間が経過した。

俺は六人部屋に移っていた。

ゆりは夏休みということもあり
朝早くから夕方まで病院にいた。

あまり大きな声で話すことができず
静かに座っている。

俺が静かに話し掛けた。

『ゆり、明日、フルート持って来いよ。。』

『えっ?。。わかった!』

二人は小声で会話し
にっこり笑った。


翌日、二人は病院の屋上にいた。

『健ちゃん、どうしたの。。このギター。。』

『これさぁ。
 リサイクルショップで売ってたみたいで・・
 母さんが買ってくれた!!
 しかも2000円!!』

『そろそろ誕生日に向けて
 練習しなきゃいけないなぁ!!』

『また、一緒に練習できるねッ!!嬉しいなッ!!』

ゆりはフルートを吹き
俺はぎこちないギター演奏を始めた。


『涙晴の空』だ。


二人はおばさんの誕生日の為に
この日から練習を再開した。


澄んだ青空の下で演奏した日もあった。
夕焼け空を見ながら演奏した日もあった。

いつだって空に見守られながら
二人の小さな夢に希望を抱いていた。


ゆりの演奏は俺にとって
病院にいる寂しさを癒してくれた。


あれから数週間が経過した。

俺は退院し、リハビリの成果か足の骨も元に戻り
松葉杖はほんの支えだけになっていた。

二人は学校の帰りに駅のホームで待ち合わせ
電車を降りると必ずゆりが
ベンチに座り待っていた。

二人が階段を降りようとした時
俺の肩を誰かが叩いた。

駅員の牧野さんだ。

『久しぶりだなぁー!足、どうしたんだ。。
 大丈夫か?』

『あぁ。。ちょっと転んで・・・』

『そうか。。階段は特に気をつけてッ!!
 俺の肩につかまりッ!!』


ホーム全体に響く位、元気のいい声だ。


俺は牧野さんの肩につかまり
ゆりが後ろで背中を支えながら
ゆっくり階段を降りた。

『俺がいる時は声かけてくれよなっ!!
 肩ぐらいだったらいつでもかすから!!』

『ありがとうございます!!』

二人は改札口を出た。

『健ちゃん、待ってて。。』
そう言ってゆりは駐輪場へ走って行った。

『健ちゃん、久しぶりの二人乗りだねッ!!
 しっかりつかまるんだよッ!!
 つかまらなかったら〜落ちてしまうよ〜〜』

松葉杖を横にしながら後ろに座り
おばさんの家へ向かった。


ゆりは思いっきりペダルを漕いだ。


爽やかな風だ。


おばさんの家に着いた。

もうすぐ香織さんが亡くなって
1年が経過しようとしている。

二人は家に入ると
すぐに仏壇に手をあわせた。

『ありがとうね。。
 ゆりちゃん・・・健ちゃん。。
 いつもありがとう。。』

おばさんは
何か寂しそうな表情をしている。


沈黙の時間が続いた。


しばらくしておばさんはタンスの中の
老人ホームのパンフレットを取り出し
自分の気持ちを伝え始めた。

『あのね。。私・・
 老人ホームに行こうかと思ってるんだ。。  
 ここだと料理も出るし、世話もしてくれる。
 ゆりちゃんと毎晩、食事をするのは
 もちろん楽しい!
 だけど、いつまでも・・・
 ゆりちゃんの世話になるのは悪い・・・
 前から思ってたのよ。。
 ゆりちゃんには
 ゆりちゃんの人生がある。』 

『おばさん、私はおばさんといると楽しいよ!
 私はここの場所が大好き。
 おばさん!おばさん!!』

『でもねッ、おばちゃんは
 ゆりちゃんの人生を大切にしてほしいんだ。。』

二人の頬には涙が流れていた。

おばさんの誕生日の
2か月前の出来事だった。


おばさんは素直な気持ちをいっぱい伝えた。
そしてゆりは納得した。


『ゆりちゃん、健ちゃんとの
 思い出は私の大切な宝物。。
 この宝物を胸に老人ホームで暮らすよ。。』
 

そう言いながらおばさんは
にっこりと微笑んだ。

その顔はどことなく寂しげにもみえた。


二人は公園に向かった。

ゆりはうつむき寂しげな表情をしている。

カラスの鳴き声が虚しく響く。

『ゆり。。おばさんが決めたことだ。
 これもおばさんの生き方かもしれない。。
 別にずっとおばさんに
 会えないわけじゃない。。
 いつだって会える!
 おばさんの誕生日、老人ホームに
 行って盛り上げよう!!
 おばさんを喜ばしてあげよう!!
 それが俺たちのできることかもしれない!!』



しばらく沈黙が続いた。



『そうだ。。そうだよねっ!!
 それが私たちの今できることかもしれないね。。』

ゆりは静かに微笑んだ。

それから二人は日が沈むまで
演奏の練習をした。


あれから数日が経過した。

2週間後におばさんが老人ホームに
入居することが決まった。

そしておばさんの家が壊される日も決定した。

家の中には家具や日用品がたくさんあるが
老人ホームには必要がないみたいで
近所の人たちが貰いに来ている様子だ。

俺とゆりも学校が終わると
引越しの手伝いをした。

手伝いに来ている近所のおばさん数人が
ひそひそ話をしていた。

『あの子のせいで秋野さん、可哀想に。。』
『なんで、あんな子がこの家にいるの・・・』
『・・・あの子が・・・
 殺したようなものよ・・・』
『えっッ。そうなんだ・・!
 そんなことがあったの・・・』

前から住んでいる人たちが
引っ越してきたばかりの人たちに
昔の出来事を説明していた。

俺はたまたま耳にした。


悲しかった。
寂しかった。
悔しかった。


そして俺はそのおばさんたちに
思っている気持ちを吐き出した。

『あなたたちに何がわかるんですか。
 ゆりは・・・ゆりは・・・
 おばさんが大好きなんです。。
 おばさんが大好きなんです!!
 あなたたちにあいつのつらさ・・・
 おばさんの気持ちがわかるのですか。。
 おばさんの幸せを今、心から願っているのは
 ゆりだと思います・・・・・・・・・・・・』


目からは自然に涙が溢れ
何を言っているかわからなかった。


ただ、今まで押さえ込んでいた気持ちが
心の中で爆発したような感じだった。


振り返るとみんなに配るジュースの
入った袋を片手にスーパーから帰った
ゆりとおばさんが立っていた。

おばさんたちは間が悪そうに
そそくさと台所の方へ行った。

ゆりはずっと聞いていた。


『健ちゃん、もういいって。。
 健ちゃんだけでも私のことを
 わかってくれてたらいい。。。』

静かにそう囁いた。

おばさんは台所の方へ早足で行った。

『あんたら、ゆりちゃんのことを
 悪くいったら承知しないよッ!!!
 ゆりちゃんは香織の親友。
 そして私にとって孫みたいなもんだッ。
 あんたらは昔話のように話すだけだけど
 ゆりちゃんは私に一番親切にしてくれてる。
 あんたらは人の陰口言ってるだけだッ。
 出て行ってッ!!』

おばさんも涙を流しながら怒った。


おばさんたちは台所にあった日用品を持ち
気まずそうに無言で帰っていった。


三人は泣いた。
悔しかった。



『おばさん、ありがとう。。』

『健ちゃん、ありがとう。。』



ゆりは声を震わせながらうつむいていた。


『ゆりちゃん、当たり前よ。。
 あんたは何も悪くない!!
 私にとって大切な孫。。
 これからもずっと・・・・』

『おばさん・・・おばさん・・・』 

『ゆりは何にも悪くない!!
 おばさんありがとう。。
 俺も嬉しかった・・・』

『健ちゃん…』



しばらく沈黙が続いた。



『三人でダルマさんが転んだしよう!!
 ゆりが鬼をしろよ。。』

『いいよ。。やろうッ。。』

『何。。ダルマさんが転んだって・・・』

『おばさん、やり方教えるねッ!!』

二人はおばさんに説明し居間で
ダルマさんが転んだをした。

おばさんは初めてのわりに上手だ。

『えっ。今、動いたよ!動いたよ!!』

『動いてないって!』

居間の中に大きな声が響いていた。

とても楽しかった。
三人は思いっきり笑った。

窓にはオレンジ色の夕日が照らされ
いわし雲がたくさん浮かんでいた。


あれから数週間が経過した。

俺は松葉杖もなく
普通に歩いている。

二人はおばさんの家の中を片付け
家具などが無くなり広々としている。

ゆりは香織さんの部屋の掃除をすることにした。

部屋の中は香織さんが亡くなって以来のままだ。

ゆりは久しぶりに香織さんの部屋に入った。


『健ちゃん、香織とここでよく遊んだんだ。。  
 懐かしいなぁ。。』


二人が仲良くピースをしている
小学時代の写真が机の上に置いてある。

ゆりは懐かしそうな
そして寂しそうな顔をしていた。

おばさんの誕生日の前日
ここで夜遅くまで演奏の練習をしたこと。
宿題を一緒にしたこと。
夏休みの工作を作ったこと。
恋愛について話したこと。
将来の夢を語ったこと・・・・

いろんな思い出を伝えてくれた。

ゆりは参考書や雑誌を紐で束ねたり
家具の中の整理をし始めた。

俺は軍手をはめて
1階にいるおばさんの手伝いをしに行った。


香織さんの部屋にある家具の横に
通学用の鞄が置いてあった。


ゆりは鞄を開けた。


鞄の中は事故の日のままだった。

その中に一冊のスケジュール帳があった。

ゆりはこれを開いた。


1階にいた俺は
2階にいるゆりを呼んだ。

『おーい、ゆり!タンス、下に運ばないかっ!!』



・・・・返事がない。



俺は階段を昇った。

部屋を見ると、そこには涙を流し
肩をすぼめるゆりの姿があった。

ゆりの前にはスケジュール帳が置いてあった。

スケジュール帳はゆりの涙で濡れていた。

『今日は喫茶店にひとりで寄った。
 ゆりと純也は付き合っていた。
 今日、公園で二人を見た。
 少し寂しいけど、しょうがない気もする。
 それに気づかなかった私が悪かった。
 ゆりには話してほしかった。
 ただ伝えてほしかった。
 小3の時もそうだった。
 お父さんに会いたい。
 ゆりはまた私の大好きな人を奪った。
 つらい。。』

香織さんが亡くなった日の
ページにそう書かれていた。


第7章 からまわりの時間へ
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