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『心の中の大切な日記』-完結-コミュの第9章/伝えたい気持ち

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コミュ内全体

あれから1か月が経過した。

二人は全く会っていない。


明日はおばさんの誕生日だ。


俺はゆりとの約束をずっと気にしていた。


本当なら明日、おばさんの家で
一緒に演奏を披露する予定だった。


桜の木の下で微笑んでいた
おばさんとゆり。。

海で練習した日々。。

病院の屋上で聴いたゆりのフルート。。

大切にしていたフルート・・・


「俺たちは明日を楽しみにしていた・・・」
「でも・・・もう無理・・・・」
「ゆりの思いだけでも軽くなってほしい・・・」

いろんな思いが頭の中を
ぐるぐると回転して眠れなかった。


そして、俺は決心した。


明日の朝、早起きして老人ホームに行こう!!
老人ホームの外からでもいい・・
おばさんに『おめでとう』を言おう!!


会えなくてもいい・・・
おばさんの近くから
ただ、あの日の二人の思い・・
『おめでとう』を伝えたかった。


次の朝、ギターケースを片手に
老人ホームにバスで向かった。 

ゆりとよく通った
海岸沿いに老人ホームがある。

バスの中は客が三人しか
乗っていないため静かだ。

窓の外はギラギラと太陽に照らされて
海が綺麗に輝いている。

隣にいないゆりを
思い出し、いろんな気持ちになった。

30分後にバスが到着した。

バス停から老人ホームまで歩いて
10分位の距離だ。

バスを降りると海岸から
静かな波音が心地よく聴こえてきた。

しばらく歩いているとフルートの音が
海岸から聴こえてきた。

耳を澄ましてよく聴くと
二人がいつも練習していた曲だった。



「ゆりだ!」
「きっと、ゆりだ!間違いないッ!!!」



俺はフルートの音色の流れる
砂浜の方へ無我夢中で駆け出した。


必死に走った。


ゆりとの楽しい思い出が頭の中で
いっぱいいっぱい駆け巡っていた。


砂浜にはゆりがいた。


優しいような哀しいような
そんな横顔でフルートを演奏している。

ゆりッ。。
大声で声を掛けたい!
そんな気持ちもある。

でも・・
ゆりの演奏を静かに聴いていたい
もうひとりの自分もいる。



ゆりの演奏を
波音と共に静かに聴いた。



曲と共に出会った頃からの
ひとつひとつの思い出が
頭の中で駆け巡っていた。

なんだか懐かしいような
ニコッとするような・・
そんな癒された気持ちだ。

そしてゆりは演奏を終えた。


俺は思いっきり拍手した。


驚いて振り向くゆり。


『・・・健ちゃん・・・・・』


『俺もここに来たかったんだ!!』


『ここからおばさんに届くかなぁ。。。』


『ゆり!行こッ!!』

俺はゆりの手を握り
老人ホームまで走った。


『ここから、おばさんに
 おめでとう!!を伝えよう。。』

俺は老人ホームの下から
2階の窓を見た。

同年代ぐらい介護士の女性が
窓際に見えたから大きな声を掛けた。

『秋野さん、みえますかッ!』

『ああッ。ちょっと待っててください。
 今日は秋野さんの誕生会なんですよ。。』


しばらくして窓越しにおばさんが現れた。


二人はおばさんの姿を見ると同時に
あの日、砂浜で練習した『涙晴の空』を
自然に演奏し始めた。


ゆりの目から
静かな涙が流れていた。


俺はこの日のために
何度も何度もゆりに教えてもらった
ノートを見て練習していた。

窓越しにはおばさんだけではなく
たくさんの老人さんたちが集まってきた。

俺の隣には静かに演奏するゆりがいて
上には優しい顔でおばさんが微笑んでいる。

なんだか・・・とても温かい時間に感じた。

演奏はゆっくり終わった。


『おばさん、誕生日おめでとう!!!』


ゆりは大きな声で窓に向かって叫んだ。


俺も負けずと大きな声で『おめでとう!!』
と叫んだ。


『二人は私たちの孫なのよ。。
 春には桜、見に行ったり・・・』

おばさんの小さな声が聞こえた。

おばさんはホームの仲間に
にこやかな顔で説明していた。


『お〜い〜孫ッ!!いいぞ!
 もっかい曲聴かせてくれ!たのむぞ〜〜』


元気そうなおじいさんが
窓越しに声を掛けた。

二人は目と目を合わせてうなずき
もう一度、演奏した。

大きな大きな拍手が二人を包んだ。


2階の窓は老人さんの
笑顔でいっぱいだった。


おばさんも窓越しから
おもいっきり拍手をしている。


そして、演奏を終えた。


『ありがとうね!!
 最高の誕生日だよ!!また来てよ!!』


窓越しでおもいっきり手を振る老人さんたちに
二人も後ろ向きに歩き力いっぱい手を振り
ホームから離れた。


しばらくしてさっきの介護士の女性が
二人の元に走って来た。

『あのぅ、ご親戚のかたですか。。』

『いえっ、近所の者です。』

『そうですか。』

『すいません。。
 お騒がせいたしました。。』

『いいえっ、いいんですよ。。
 そんな意味で言ったんではなくて・・
 あんなに楽しそうな秋野さん、初めてみました。
 ぜひ、クリスマス会に来ていただけませんか。
 先ほどの曲を披露していただけませんか。
 みんな、絶対に喜ぶと思いますから。。』

『ええっ?!』

『二人で相談して明日
 電話させていただきます・・・』


二人は戸惑った。


介護士の女性はパンフレットを渡し
老人ホームに戻った。


バス停に向かいながら
なんだか気まずい雰囲気で
沈黙する二人。


そしてゆりが静かに話し掛けた。


『おばさん、嬉しそうだったね。。
 よかった。。健ちゃんありがとう。。』

ゆりは静かにつぶやいた。

『俺も嬉しかった!!!』

『健ちゃん。手紙ありがとう。。』

『あっ・・牧野さんに頼んだんだ。。
 読んでくれてたんだ!!』

『うん・・。。
 健ちゃんに会うのが怖かった…
 でも、健ちゃんのいうように今が大事。。
 今日の老人さんたちの笑顔を見て、そう思った。
 恐がって家にいたらあんな笑顔見れなかった。。
 健ちゃん、ありがとう。。』

ゆりはにっこり笑った。

『ゆり、クリスマス会に行ってみよう。。』
 
『うん。。健ちゃん、ギターうまくなったね。。』

『そうか!待ってました!!その言葉!!
 結構、練習したんだ。。
 また、ゆりと演奏ができて嬉しかった〜 』

『ゆりッ、クリスマス会行こッ!!』

『うん!』


バスが停車した。


海はあの日、練習していた時と
同じような夕陽に染まり
キラキラと輝いていた。


あれから数週間が経過した。

おばさんの家の空き地で練習する二人がいる。

ゆりはあの日以来、学校に行き始めた。

二人は学校帰りに公園で待ち合わせをして
いつも練習をしている。
 

『健ちゃん、ここの弦を軽く押さえて・・・』


二人はクリスマス会が待ち遠しく
楽しそうな笑顔で会話している。

時間がタイムスリップしたような・・・
そんな癒された時間がこの場所に戻った。 

『健ちゃん、クリスマスだからさぁ。。
 サンタさんの衣装を着て演奏しようよ!』

『ええッ、サンタの衣装か?』

『うん!どう思う。。』

『ちょっと恥ずかしいけど・・・
 いいなッ!
 老人さんたちも喜ぶかなぁ。。
 白い髭、俺が付けてなッ!』
         

『ジャーーーン!    
 雑貨店で売っていたから買ったんだ!!』 


ゆりは横に置いてあった紙袋から
男性用と女性用のサンタの衣装を取り出した。

『うわッ!びっくりした!!
 買ってたんだ!びっくりするな〜
 よしッ。はりきって練習するぞッ!!!』 

『健ちゃん。。
 老人さんたちみんな笑顔で
 いっぱいになるといいねぇ。。』

『そうだなッ。
 俺たちが気持ちを込めて演奏すれば
 きっと伝わる。そう信じよう。。』



『健ちゃん、これ自転車の鍵…』



あの日、玄関に置いて帰った自転車の鍵だった。


『ありがとう。。大切に持っとくよ。。』


二人の上には綺麗な夕焼け空が広がっていた。


あれから1週間が経過した。

二人は放課後、駅で待ち合わせをして
水族館へ向かった。

特急電車に乗り2時間以上かけて
今までで一番の遠出だ。

電車の中では、クリスマス会で
どう喜ばせようかいろいろと話していた。

なんだか二人ともわくわくして
時間があっという間に過ぎた。

午後6時を過ぎやっと水族館に到着した。
制服姿なのは俺たちだけだった。

タツノオトシゴ、ハリセンボン、サメ、ウツボ
綺麗なさんご礁・・・・
いろんな海の生き物に夢中になった。

『健ちゃん、癒されるねぇ。。』

『癒されるなぁ。。』

静かな空間とキラキラと輝く魚の世界に
心地よい温かさを感じ魚が泳ぐように
二人の世界もゆったり流れていた。

そして、ゆりが急に走りだした。

『うわぁ、綺麗・・・』

銀色の光を輝かせ、反射しながら
数千匹のイワシが大きく円を描いてはうねり
神秘的な一つの生き物のように動いていた。


『思い出すなッ!』『思い出すねッ!』
二人は同時に話した。


『健ちゃんのロケット!!あのキラキラ感!!!』

『俺も今、思い出した!!』


二人は見つめ合い、恥ずかしそうにニコッと笑った。



『綺麗。。。』



ゆりはとても嬉しそうな顔をして
キラキラと輝くいわしの群れを見上げていた。

俺の知らない海の世界で
今も魚たちがこんな風に
生命を営んでいるのかと思うと
本当にすごいことだと思った。

そして、ゆりの見上げる
優しい目に温かさを感じた。

二人は時間を忘れ、ただただ感動し
最終電車の時間を忘れていた。

地下鉄に乗り、特急電車のホームへ急いだ。

最終電車に間に合い
電車はまだ到着していなかった。

ゆりは疲れたのか息切れが激しく咳き込んでいた。

夜9時を過ぎ少し肌寒く
遠く離れたベンチに二人は座った。

『健ちゃん、今日は楽しかった。。』

『すごい癒されたー!!』

『健ちゃん、私、一度・・・
 『涙晴の空』 歌っていいかなぁ。。
 いつも演奏ばっかりだから。。』

『聴かせてくれるの!!』

『うん!!』

ゆりは俺の座るベンチの前に立った。

俺は大きな拍手をした。


元気いっぱいの笑顔で歌うゆり。
それに合わせ手拍子する俺。


歌が終わり大きな拍手をすると同時に
特急電車が到着した。

帰りの電車の中でも
クリスマス会のことをいろいろと話し
あっという間に2時間が経過し
いつものホームに到着した。

夜11時も過ぎたため
俺はゆりを家まで送った。

久しぶりに自転車で
二人乗りをした。

『健ちゃん、久しぶりの二人乗りだねぇ。。』

『そうだなぁ。。』

『あのねッ、駅前のあの音楽ショップの
 入口においてある曲いいよね〜
 健ちゃん、知ってる!!』

『あの曲だろッ!ゆりもそう思う!』

ゆりとの何気ない会話に
俺はとても嬉しく感じた。

ゆりの家の前に到着した。

家は真っ暗でまだお父さんも
帰宅していない様子だ。

『健ちゃん、ありがとう。。
 明日、また練習するから
 家まで自転車、乗って行っていいよ。。』

『そうか。。もう終電だったから
 借りてくな!!ゆり、また明日ッ!!』

俺はなんだかとても嬉しく
口笛を吹きながら家まで帰った。


風は冷たいが夜空の星はキラキラと輝いていた。


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