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『心の中の大切な日記』-完結-コミュの第12章/届けたい想い

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コミュ内全体

『ゆりの検査結果がわかった時・・・
 
 頭が真っ白になった。
 
 病名は伝えずに
 検査入院をしてほしいと強く伝えた。
 
 それでもゆりは老人ホームに行き続けた。
 
 いくら俺が反対しても無視だった。。
 
 今、やれることをやる!って言ってな。。
 
 そんな思いが強く・・・
 
 少しぐらいの熱があってもな。。
 
 でも・・・母さんの手紙を読んで
 
 ゆりの気が変わったんだ。。
 
 ゆりが今まで押し入れで眠っていた
 
 雛人形を出していた。
 
 俺も一緒に出した。
 
 なんの会話もせず、無言で出した。
 
 箱の底に死んだ母さんの
 手紙が入ってたんだ。。
 
 ゆりと俺は黙って読んだ。
 
 その日・・・ゆりが治療すると言い出した。。』



『木下君、読んでいいよ。。』


1通の手紙にはこう書いてあった。


あんたらがこれを読んでいる時は

私はいないかもしれん。

これは毎年、毎年書いて入れとったんよ。

この季節が来るたびにこの私が書いた手紙を
読んで1年無事生きさしてもろたと感謝しとるんや。

お父さんはお雛様飾るん
手伝わへんでここにもしもの
遺書を入れとこうと思ったんや。

遺書といっても自殺なんかを
考えているわけじゃない。

余命数ヵ月という病気になったわけでもない。

だから心配しやんといてな。

もしもの場合の私の気持ちや。

そのために遺書を書いてみようと思ったんや。

本を読んでたら、こんな質問があった。

「人生が残り3日間しかなかったら何をしますか」 

真剣に考えてみた。

3日間を悔いなく過ごすにはどうしたらいいか?

そして、一番したいことが見つかった。

それは、あんたらにメッセージを伝えること。

あんたらと出会ったことが私にとって

どれほど幸せなことだったか。

あんたらからどれほどたくさんの

喜びと生きがいをもらったか。

私があんたらにどんなに感謝しているか。

そのことを心の底から伝えたい。

素直な言葉で伝えたい。

だから、もし万一のことがあって

そのメッセージを伝えることなく
世を去ることになったとしたら
私はそのことを悔やんでも悔やみきれやん。

だから、生きているうちに普段の言葉のままの
私の気持ちを手紙に毎年、毎年、書くことにした。

ひなまつりが来るごとに幸せに感謝できるしな。

これから、私の本当の気持ちを書くな。

そしていつの日か、私がこの世を
去ったとしてこの気持ちは
永遠に消えることはあらへん。

あんたら、私がもし死んでても
悲しんだらあかんで。

ゆり、わかっとるか。

ゆり、私も同じように親が
天国へ行き悲しい思いをしたんや。

同じ気持ちやで。

母さんも同じ思いしたんや。

でもあんたらと楽しく過ごした。

後悔はあらへん。だから、悲しまんといてな。

ゆり、あんたがいきいきと成長していく姿が
母さんにとって最高の喜びなんや。

母さんは親としての喜びを知ることができた。

ゆりもいつか親になったときに知るやろう。

クリスマスやゆりの誕生日がやってくるたびに
いかにしてあんたを喜ばそうかと
父さんと考えたなぁ。

それは、お父さんとお母さんにとって
何よりも楽しみなこと。

ゆりはお父さんとお母さんに
たくさんの喜びと楽しみと感動を
もたらしてくれた。

父さんのこともたのむで。

あんたが保育園で父の日にあげた
プレゼントを覚えてるか?

あんたが描いてくれたお父さんの顔の絵や。

お父さんはそれを会社に持っていって
引き出しに入れているんや。

仕事で辛いことがあっても
その絵を見ると元気が出るそうや。

ゆりの存在が、お父さんとお母さんに
元気と勇気とやる気を与えてくれた。

私たちを人間として成長させてくれた。

私たちはあんたからたくさんのものを
もらってるんや。

父さんをたのむで。

とにかく、私のことで悲しんだら私が悲しいんや。

だから落ち込まず、悲しまず
安心して今したいことをしたらいい。

今を幸せに生きたらいい。

母さんは、ゆりがゆりであることを
いつまでも応援するから。

神さまへ

父さんとゆりに出会わせていただき
ありがとうございます。

素敵な家族と幸せな人生をありがとうございます。

来年も幸せな気持ちで手紙が書けますように。。




そんな温かい手紙だった。


俺は手が震えていた。


ゆりから言われているような
そんな気持ちになっていた。


『元気な母さんだった。。
 3月の節句が近づくたびに・・・
 あんた!!ボーッとしてやんと手伝ってよ!!
 私が死んだら必ずあんたらで飾ってよ!
 関西なまりの怒り口調で
 毎年、愚痴を言いながら飾ってな。。
 俺はそんな母さんの言葉さえも忘れていた。。
 最低だ。。。』


お父さんは肩を落とし悲しそうだ。


『ゆりはこの手紙を黙って読んで泣いていた。
 寂しそうな背中だった…
 ずっと俺が苦しめていたかもしれないな。。』


『いやっ。。そんなことはありません!!
 今、ここにいるゆりも
 この手紙と同じ気持ちだと思います。
 ゆりはお父さんもお母さんも
 大好きだったんです。
 だから、ゆりはこの日記にも
 ごめんと書いているんだと思います。』


俺はゆりのノートをお父さんに見せ
ノートをギュッと胸に抱いた。


『だから、人の為じゃなく
 自分のために治療したんだと思います。
 自分を責めるのはやめてください。
 ゆりが悲しい気持ちになりますから。。。』


そう言いながら俺は
自分自身を慰めていた。


お父さんと俺は
膝をついて泣いた。

お父さんとゆりの関係は
時間とともに移り変わっていった。

誰だって今日がそのまま明日になることはない。

気がつかないだけで
平凡な毎日でも少しずつ違うはずだ。


そう感じた。


そして、紙袋から老人さんたちに
書いてもらったゆりへの
メッセージをそっと置いた。

ゆりと公園で会った次の日に
俺は老人ホームに行った。

老人さんひとりひとりに
メッセージを書いてもらった。

みんなの言葉で元気になってほしい。
そんな気持ちだった。

おばさんも筆を持たせたら
『心』と一文字だけだが書いてくれた。


俺はゆりの横でひとりひとりの
メッセージカードを読んだ。


笑ったゆりに伝えたかった。。

そう思うと涙が止まらなかった。


俺は泊まらせてもらい
お父さんの手伝いをした。


お父さんの希望で
ホームの園長と俺、三人だけの
静かな通夜とお葬式だった。


近所の人は家の前を早足で
通り過ぎるだけだった。


とても悔しかった。
とても虚しかった。


テレビのスイッチを切った時のように
それまで抱えていたいろんな気持ち全てが
フッと消えて真っ暗になったような気持ちだった。


信じられない、信じるしかない…
でも・・もしかしたら
嘘かもしれないとずっと悶々としていた。


立花ゆりという芳名板を見ても
何かの間違いかもしれないと
どこかで思っていた。


住職がお経を唱えている時もゆりは違う場所に
いるのではないかと信じていた。


でも・・棺桶を覗き込むと静かな顔をした
ゆりが・・何も言わないゆりがいた。


火葬場が近づくにつれ
驚くほど自分の鼓動が聞こえて焦った。

火葬場に着き、棺桶の窓が開けられ
ゆりと最後の対面をした。

逃げたいと、本当は少し思っていた。

目をつぶったゆりの顔は
とても優しかった。


今にも「健ちゃん!!」
と呼びそうな…


『大丈夫、私が教えるから。まっかせなさい!!』
俺に自信満々な顔で笑っているゆり。



『・・・いいよ』
   こちらこそお願いします!!!』
恥ずかしそうに俺をみつめているゆり。



『なに!これめっちゃ綺麗!!』
微笑みながら空を見上げるゆり。



『私、健ちゃんにずっと
 言いたかったことがあった。
 ずっと言いたかった。
 でも言えなくて・・・苦しかった。。』
真剣に俺を見つめながら話すゆり。



『私なんか、死んだほうが消えたほうがいい!!!
 死んだほうが・・・・
 健ちゃんもそう思ってるでしょ!!』
涙を流しながら必死で伝えるゆり。



『本当のことを伝えられて本当によかった。。
 健ちゃんありがとう。。。』
辛い表情を見せまいとして、優しく微笑むゆり。



『ジャーン!』
フルートを嬉しそうに見せ
静かな表情で演奏するゆり。



『健ちゃん、いっぱい食べてねッ!!』
嬉しそうにおばさんとにっこり微笑むゆり。



ゆりのいろんな声と
表情が胸の中を回転し涙が流れた。


棺桶の中にお母さんからの手紙と
老人さんからのメッセージを入れた。

そして…
ゆりが持っていた
俺の写真をそっと入れた。


お父さんは泣き崩れた。


火葬の前に俺はホームの園長から
そっと言葉をかけてもらった。


『ゆりさんは今から火で燃やされるのではなく
 火で身体を洗うんだよ。。
 今から火で身体を洗い流し天国へ行き
 また天国で思い出を作る。。
 だから、心配しなくていい。。。』


俺は心の中でゆりは
今から燃やされる、焼かれると
何度もつぶやき葛藤していた。


この言葉を聞いた瞬間
なんだか少しホッとしたような気がした。


「ただいまから…」
火葬の担当者が話し出したがあまり記憶がない。


ただ『ボッ』と火が燃える瞬間の音が
虚しく悲しかったことだけ覚えている。


ゆりが扉の向こうに行くのを
やめさせたい思い…
そんな思いも心の片隅にあった。


火葬が始まるとお父さんと園長は
個室で話をしていた。


俺は外に出て煙と空を眺めていた。



ゆりと俺がいつもみていた空に
そっと煙が雲のように包まれていた。


いつも・・ただ何気なくみていた空を
今はいろんな気持ちで眺めている…


いろんな思い出が頭の中でゆっくり回転していた。


1時間30分が経過し俺たちは呼び出された。


ゆりの骨がそこにあった。


跡形もない姿に俺は涙もでず
静かな気持ちを感じた。


風と共にゆりは広い空の一部になった…



そんな気持ちで骨壺の中に
お父さんと入れていた記憶しかない。


ゆりは近いところにいるような
遠い場所へいったような
そんな気持ちのままゆりの家に帰った。


家に帰りお父さんと俺は
遺影の前に座った。



ずっと沈黙が続いた。



『ゆり・・・ごめん。。。』



お父さんがゆりに向かって
話し掛けた。


『ゆり、ごめんな。。
 お前が産まれた時、最高の気分だった。
 母さんも父さんも手を握って泣いてたなぁ。
 オムツを換える時もミルクを飲ます時も
 そこにはいつも笑顔があった。
 お前が歩いた時は拍手して喜んで…
 動物園行ったり
 ハイキングに行ったり・・・
 お前との思い出は
 あの日から止まっているなぁ。』
 
『あの日、泣いているお前を
 抱きしめていれば…
 俺だけでも話を聞いていれば…』



遠い昔を眺めているような
優しい目だった。



痛いような寂しいような虚しいような
でもそれだけではないような。。
ただ、その言葉は悲しみだけで
生まれているものではないと感じた。
何か、穏やかで温かい何かを含んでいた。


届けたい想い/2へ
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