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『心の中の大切な日記』-完結-コミュの届けたい想い/3

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コミュ内全体

大学に入学し1年が経過した。

夜、ゆりの日記を
何度も何度も読みながら
また同じ想いを繰り返し悔いては
自分を責め心閉ざしてしまった。

考えないようにしていても
身体は正直なのか無理だ。

久しぶりに机にしまっていた
『涙晴の空』の歌詞と楽譜をみた。

あの頃、二人で練習した曲。

歌や歌詞によって
俺たちは輝いていた。

生きているって気がしていた。

音楽の力は凄いと思った。


駅のホームで歌っていた
ゆりの姿を思い出した。


どんな時でも音楽は
俺とゆりに癒しをくれていた。

高校時代の忘れかけていた
自分の姿や心や情景が
鮮明によみがえった。

古い紙に書かれた歌詞を見た瞬間
その時の自分の全てが頭と心に
鮮明に甦った。

あの頃、楽譜すら読めない俺に
ゆりが一生懸命に作成してくれた
弦の弾き方のノートもみた。


砂浜の景色が目の前に広がった。


何でもいいから新しい自分を探したい。

ただそう思いあまり眠れず
久しぶりに日記を書いた。


俺はゆりと一緒に行った場所に
2年間行くことができなかった。

昨日はあまり眠れなかった。

朝、ゆりとの思い出の場所へ
行こうと急に決意した。


新しい自分を探したい…
そんな気持ちだったのかもしれない。


俺はギターを背負い始発電車に乗り
ゆりと練習した公園へと向かった。


駅に到着した。


駅のホームで会話していた時間を思い
立ち止まって懐かしい気持ちが甦った。


改札口を出て駐輪場に向かった。
そこにはゆりの自転車が置いてあった。
パンクしてハンドルも錆びていた。


告別式の帰り…
この場所に置いておこうと思った自転車が
2年間も処分されず駐輪場の片隅に置いてあった。


俺は合鍵を出し、近くの自転車店まで行った。


パンク修理等をしてもらい
公園まで自転車を走らせた。


懐かしい心地のいい風だ。


おばさんの土地には新築の家が建ち
ゆりの土地は空き地のままだった。


公園に着いた瞬間
ダルマさんが転んだをしている二人の姿が
俺にはぼんやりと見えた。


ブランコに座り
いろんなことを思い出した。
いろんなゆりの声を思い出した。


次に自転車を走らせ
桜を見た公園に行った。


あの桜の木はズシンと
あのまま立っていた。

三人でゴザを敷いた場所に座り
お父さんからもらった写真を見ていた。


ゆりが俺に見せたかった写真。


心からしあわせな気持ちでいたのだろうと
この写真を見てずっと泣いていた。


次に病院の屋上へ行った。

晴れ渡った空に太陽がまぶしく
ゆりと眺めた景色を見ながら歌を口ずさんだ。


香織さんのお墓にも手をあわせた。


ゆりと学校帰りによく行った
お好み焼き屋にも行った。

店の雰囲気や周りの風景は
あの頃と変わっていた。

でも、あの頃の空気と同じだった。

おばさんがお好み焼きを焼いてくれた。

一人でお好み焼きを食べながら
ゆりと笑いながら話していた
あの頃を懐かしく思い出した。


駅まで自転車を走らせ電車に乗った。

砂浜に行きいつも座った流木に
腰を掛けギターを演奏した。

老人ホームを外から眺めて
いろんなゆりを思い浮かべた。

窓越にぼんやりと景色を眺めている
おばさんの姿が見えた。


おばさんの心の中には
ゆりと俺がいる…
そう信じた。


プラネタリウムへ行き
満天の星空を眺めた。

ゆりの好きなオリオン座を探し
なんだか温かい気持ちになった。



俺は1日でふたりの思い出の場所を歩いた。



知らず知らずに足と記憶が動いていた。


最後に水族館に行った。

俺たちが1番遠出した場所だ。

放課後、電車に乗り
いろんな景色を眺め
指差し笑っていた。


水族館はあの日と変わらず静かで
魚が優雅に泳いでいた。


イワシの群れもあの日と変わらず
銀色の光を輝かせ、円を描いていた。




とても嬉しそうな顔をして
見上げていたゆりがそっと浮かんだ。




水槽の中はとても静かで
俺の世界とは全く違う
輝いた世界のように思った。


夜9時を過ぎ
駅のホームで電車を待った。


ベンチに座り自分をゆっくりみつめた。
それでもやはり…


俺の世界は白黒写真のままだった。


あの日から、ずっと俺の時間は止まったまま。


歩き出せば、ゆりといた日々が
遠くなっていってしまう。



あの日々に、もう決して手が届くことはないのに
それでも戻れるような気がして…
もう一度会えるような気がして…
あの日、この場所で歌っていた
ゆりの声が聴こえるような気がして…

また…
いろんなことが頭を駆け巡っていた。



しばらくして俺の肩を
誰かがトントンと叩いた。


振り向くと駅員の牧野さんだった。


『木下君と違う。。』


『木下です。あっ、久しぶりです。』


『やっぱりそうか!!久しぶりだなぁ。。』


ゆりへの手紙をお願いした日、それ以来だ。

相変わらず元気そうだ。

『遅れました!!
 あの日、彼女に手紙を渡していただいて
 ありがとうございました!!』
 
『あれからすぐに
 異動になって・・・
 木下君、駅長室まで来てくれる!!』

『懐かしいなぁ。。何年ぶりだぁ。。』

『彼女とは仲良くしているの。。』

『あぁ・・・2年前に亡くなりました。。』

『えッ・・・』


牧野さんは急に走りだした。



俺も急いで後を追った。


駅長室に入り、牧野さんの机の前に立った。


『木下君!!これ!!
 
 手紙を渡した次の日、木下君に渡してと
 
 彼女から頼まれてたんだ!!
 
 あれから、異動の辞令があって
 渡さないといけないと思ってた。
 
 木下君と一緒に行った
 おばさんの家に行ったけど
 空地になっててな。。
 
 今まで会える日をずっと持っていたんだ!!
 
 木下君、ごめんな。。
 
 彼女にも悪いことをしてしまった。。』



かわいい封筒に『健ちゃんへ』と書いてある。



『牧野さん、ありがとうございます。。』

『また、いつでも来てなッ!!
 俺はここにいるから!!』


俺は駅長室から優しく微笑む牧野さんに
深くお礼をしてホームに向かった。


タイミングよく電車が待っていた。



席はほとんど空席で
静かな車内に出発の笛が鳴った。



席に座り封筒を見つめ
とても嬉しかったが
開封することに戸惑いもあった。




俺は思い切って封筒を開けた。




封筒の開きの所に
銀色の紙吹雪の下で
演奏している俺達の絵が書いてあった。


その下に小さい文字で
『健ちゃんのことだから
 ハサミで切らずに丁寧に開けると思ったよ。。』
と書いてあった。


封筒には1枚の手紙が入っていた。


 
 
 健ちゃん、ごめんなさい。
 今日は逆のホームにいました。
 健ちゃんの所へ行くことができませんでした。
 行こうとしたけど階段で足が止まりました。
 今は会っても健ちゃんを苦しめるだけです。
 健ちゃんは健ちゃんの道を歩いてください。
 健ちゃんの姿を見てそう思いました。
 私の中の健ちゃんはいつも笑っています。
 私のことで悲しい顔はしないでください。
 笑っている健ちゃんが私は大好きです。
 本当、心配ばかりかけてごめん。
 
 ひとつだけわがままなお願いがあります。
 おばさんの誕生日、老人ホームの近くの砂浜で
 健ちゃんと演奏がしたいです。
 今度は私が健ちゃんを待っています。
 その日でちゃんとさよならをしたいです。
 無理なこといってごめん。。
 
 運命の神様がいてもし・・・
 私の気持ちを変えてくれたなら
 その時は健ちゃんと歩いていきたい。
 こんな気持ちも心のどこかにあります。
  
 そう思った時は黙って自転車の鍵を渡します。
 
 誕生日に砂浜で会えたとしても
 会えなかったとしても
 今日の手紙のことは心に入れて忘れてください。

 私がいなくても明るく元気な
 健ちゃんでいてください。
 私にとって、そのことが
 1番のしあわせです。       

                 ゆりより







手紙が震えるぐらい
俺は泣いていた。



『俺に生きる希望を持つんだ!!』
ゆりに応援されているような気持ちになった。

この手紙に出会えてよかった。
心からそう感じた。

2度目の約束・・と笑っていた
ゆりの言葉にも納得できた。

何気なく握った自転車の鍵の温かさも
やっと伝わった。

あの日のゆりと俺は同じ気持ちだった。
そのことが何より嬉しかった。

ありがとう。。ただそう感じた。

「その日でちゃんとさよならをしたいです。」

俺に伝えた当時のゆりの大切な気持ち。

それを忘れず歩いて行こう思った。

この手紙を数年間も大切にしてくれた
牧野さんに感謝したいと思った。

この手紙に出会った奇跡に
心からありがとうを伝えたかった。


ゆり、ありがとう。。
心の中で何度も何度も繰り返していた。


家に帰って俺は日記を書いた。


その日から温かい気持ちが
心の中を回転していた。


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