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『心の中の大切な日記』-完結-コミュの最終章 同じ気持ちをみつめて/2

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コミュ内全体

あれから2年半が経過した。

植田かよという75歳の女性が入所した。

詳しい事情は園長と理事長しかしらないが
軽度の認知症があり60歳から車椅子で生活し
旦那さんが他界され息子夫婦と同居していたが
息子さんのご希望で2ヶ月前に入所された。

入所当日から部屋や食堂で
『早く、家に帰らせて』
『旦那がいるから、心配だから』と
大きな声で叫んでみえたが
俺たち介護士が話し掛け日に日に
植田さんの気持ちは落ち着いていった。

しかし、認知症は日に日に進行していた。

夏休みになり中学生のお孫さんが
おばあちゃんに会いたいと
事務室で生徒手帳を見せて面会希望された。

『木下さん、木下さん、事務室に来てください。』
夕方、放送で園長に呼び出された。

『はいっ!何かありましたか。。』

『こちらは植田さんのお孫さんの植田美沙さん。
 植田さんのお部屋に案内してあげてください。』

植田さんの入所当日、ご両親と一緒にみえ
ご両親は先に帰られたがお孫さんは夕方まで
かよさんと楽しそうに話してみえたのが
印象に残っていた。

俺は部屋に案内するのを少し戸惑っていた。

今のかよさんはかなり認知症が進行していて
お孫さんのことも覚えていないかもしれないと
頭をよぎった。

『おばあちゃんに会いに来ました!』

『美沙ちゃん、おばあちゃん…
 2ヶ月前と違って記憶が低下していて
 美沙ちゃんのことを
 覚えていないかもしれないんだ。。
 でも、美沙ちゃんのおばあちゃんは
 美沙ちゃんのおばあちゃんだから…』

俺は何を伝えているかわからなかったが
自然と今、思っている気持ちを伝えた。

『わかっています!お父さんもお母さんにも
 一緒に会いに行きたいと伝えたんだけど…
 駄目で…一人で行ってこいと言われ…
 私だけで来ました。。』

『そうなんだ。。』

俺は複雑な気持ちでかよさんの部屋へ案内した。

『かよさん、お孫さんがみえたよ!
 美沙ちゃんが会いに来たよ!』

『おばあちゃん、久しぶり。。』

『あぁ、美沙か。。久しぶりだねぇ。。
 会いたかったよ。。』

『おばあちゃん、もう夏休みになって
 私、テニス部の試合で3位になったんだ! 
 おばあちゃんに見せたくて
 賞状、持ってきたんだ!』

『よかったねぇ!おめでとう。。』


俺は安心し嬉しい気持ちになった。


『美沙ちゃん、ゆっくりね。。
 また、なんかあったらコール鳴らしてね!』

そう言って俺は各部屋の楽飲みのお茶を
入れに向かった。

15分くらいしてからかよさんの部屋から
大きな声が聞こえた。

『俊哉も恵子さんも、私を捨てて
 美沙ちゃんも私を捨てたんだ!!
 あんなによくしてやったのに!
 私を捨てて!帰れー!』

部屋に入ると真っ赤な顔で
かよさんが何度も怒鳴っていた。

美沙ちゃんは涙を流し廊下を走って行った。

三井さんにかよさんを任せて
俺は美沙ちゃんを追いかけた。

そして美沙ちゃんを見つけた。

ホームの外の塀の所に
しゃがみ込み泣いていた。


『私がおばあちゃんを家にいさせてと
 お父さんとお母さんに
 もっと伝えたらよかった!私は最低!
 おばあちゃん、ここに来て悲しかったんだ!
 ずっと寂しかったんだ。。私は最低。。』

涙を流しながらうつむく美沙ちゃん。

『美沙ちゃん、それは違うと思うな。。
 
 お父さんもお母さんもおばあちゃんのことを
 いろいろと考えてここで生活させようと
 考えたんだと思う。
 
 ここに来ておばあちゃんは最初は
 確かに「家に帰りたい」とみんなに
 大きな声で伝えていた。
 
 それだけ家族が大好きだったということだよ。
 
 でもね、美沙ちゃん、おばあちゃんは
 ここに来てから食欲も出たし
 歌を唄うときはにこやかに手拍子しながら
 楽しそうに笑っているし…
 
 いろんな人たちがおばあちゃんを見守っている。
 
 だから、おばあちゃんは今、ここにいて
 幸せなんだと思う。。』

うつむいていた美沙ちゃんが俺の顔をみつめた。

『でも…木下さんに
 私の気持ちなんかわからないよ…』

『たしかに…わからないかもしれないな。。
 
 でも、美沙ちゃん…おばあちゃんには
 美沙ちゃんの気持ち、わかると思うんだ。
 
 おばあちゃんは認知症で
 記憶が少しずつなくなってきている。
 
 たまにイライラしたり
 気持ちが浮き沈みしている。 
 
 おばあちゃんが捨てられたって
 本心で言ったと思う。。
 
 言ったのは美沙ちゃんに会えて
 嬉かったからだと思う。。
 
 美沙ちゃんが小さい頃から
 おばあちゃんの気持ちを癒してきた。。
 
 家族と離れたおばあちゃんは寂しかった。。
 
 心許せる美沙ちゃんに悲しい気持ちを
 伝えたかったんだと思う。。
 
 おばあちゃんの言葉に
 振り回されたらだめだよ!
 
 美沙ちゃんは美沙ちゃんのままで
 おばあちゃんはおばあちゃんのまま。
 
 美沙ちゃんが苦しい気持ちの時は
 おばあちゃんも苦しいと思う。
 
 美沙ちゃんが嬉しい時は
 おばあちゃんも嬉しいと思う。
 
 賞状、見せた時、おばあちゃん
 よかったねって笑っていただろ。。
 
 心で感じてると思うんだ。
 
 おばあちゃんは認知症になった。。
 
 こんな時だからこそ美沙ちゃんが
 笑顔でおばあちゃんを勇気づける!
 
 難しいことかもしれないけど
 今はこれが一番…
 美沙ちゃんにもおばあちゃんにも
 大事なことかもしれないよ。。』

俺は何を言っているかもわからず
気持ちのまま必死に伝えていた。

『美沙ちゃんのことを大切に思っていた
 おばあちゃんの心をそっと
 あたためてあげようよ。。
 おばあちゃんを勇気づけよう。。
 美沙ちゃん、ひとりだけじゃないよ!
 俺たちだっておばあちゃんの
 そばにいるから安心して。。』

俺は静かに伝えた。


しばらくして、かよさんの気持ちを
落ち着かせた三井さんが来た。

『美沙ちゃん、ココア入れたから飲む!
 夏だからこそっ、熱〜いココア!
 一緒に飲もッ!』

美沙ちゃんは少し落ち着き
三井さんと一緒に寮母室に行った。

俺は少し気持ちを落ち着かせて
空を見上げた。


一本のひこうき雲が綺麗に
空に描かれていた。


しばらくして、寮母室に向かった。


寮母室のドアの向こうから
三井さんの声が聞こえた。

『木下さんには美沙ちゃんの気持ちが
 わかるんだなぁ。。
 私にも少しだけど
 美沙ちゃんの気持ち、わかるよッ!
 美沙ちゃん、おばあちゃんには
 私たちや木下さんがいるから大丈夫だよ。。
 おばあちゃんに会いにいこうよ。。』

俺はドアを開けずに洗濯をたたみに
リネン室に向かった。

美沙ちゃんはかよさんと笑顔で話し
また来る約束をして帰って行った。

夜勤の寺井さんと山本さんへの
申し送りが終わり駐車場に向かった。

駐車場に向かう途中で美沙ちゃんが
しゃがんでいた場所を見つめていた。


『健之介は変わらないなぁ。。
 あの頃と全く変わらないなぁ。。』


三井さんの声がうしろから聞こえた。


『あのクリスマス会の日、ゆりちゃんも
 ここでしゃがんでいたね…
 健之介とゆりちゃんに紙を渡した後
 健之介の言葉、聞こえてたんだ…
 私もこの壁のうしろで泣いてたんだ。。
 健之介の言葉が私にも響いちゃってね…』


俺は涙をこらえた。


『健之介、時間あるっ!』

『あるよ。。』

『海、見に行かない。癒されるよ〜』

『いいよ…』

俺は黙って歩いたが三井さんは
鼻歌を歌いながら海まで歩いた。


俺と三井さんは砂浜に座った。

『健之介、ゆりちゃん…
 頑張って働いていたよ。。
 私も心通じる心友だった。。

 健之介、あのクリスマス会…
 私が園長にお願いしたんだ。

 秋野さんのあんな嬉しい顔
 ホームに来てから初めて見たから…

 秋野さんの誕生会の日
 私、あそこで洗濯干してたんだ。。』

 
三井さんはホームの屋上を指差した。


『あの日、ゆりちゃんがひとりで
 フルート、演奏してて
 私、洗濯干しながら聴いていたんだ。

 少しして健之介が来て
 二人でホームの方に走ってきたから
 私も急いで2階に降りて窓を開けたんだ。
 
 あの日の演奏、最高だったなぁ。。

 私がクリスマス会に
 呼ばなかったらゆりちゃんは…って…
 演奏中、ずっと思ってた。。

 こんな私でも少しは
 ゆりちゃんの気持ち…
 わかるから。。

 あのクリスマス会の日、二人が帰った後
 園長からボランティアでゆりちゃんが
 ここに来るって聞いてすごく嬉かったんたんだ。。

 私がジュースを持って行った時
 ゆりちゃん、嬉しそうな顔だったね。

 健之介があの場所で…
 ゆりちゃんの気持ちを癒したんだよ。。

 健之介の言葉が私にも響いて
 涙をこらえていた…

 あのクリスマス会の演奏は
 私にとって大事な思い出なんだ。

 ゆりちゃんと一緒に過ごした日も
 大事な思い出。。

 ゆりちゃんは秋野さんだけじゃなくて
 みんなに笑顔で接して優しかった。。

 私もこの仕事、長いけど、いろんなこと
 ゆりちゃんにいっぱい教えてもらった。。

 このホームで忘れかけていた気持ちを
 いっぱい教えてもらったんだ。』

俺は黙って三井さんの話を聞いていた。

三井さんの話は続いた。


『ゆりちゃんの事情はゆりちゃんから聞いたんだ。
 秋野さんの近所の人が来て
 秋野さんやいろんな人に
 ゆりちゃんのことを悪く言ってたから…

「秋野さんの面会にみえているんですよね。。
 秋野さんは私たちにとってとても大事な人です。
 そして、立花さんは、私たちの大事な仲間です!
 詳しい事情はわかりませんが
 大事な仲間の悪口を言うなら帰ってください!」
 
 そう怒鳴った時があったんだ。

 あれ以来、近所の人は来なくなって…
 言い過ぎたかなって少し反省したんだけど
 園長は気にするなって。。
 ゆりちゃんは仲間なんだから
 当たり前のことを伝えただけだって
 
 ありがとう…って言ってくれた。
 
 まずは秋野さんの気持ちと
 ゆりちゃんの気持ちを癒すことが大事だって。。

 でも、入居者にまで伝わって…

 パートさんもゆりちゃんと距離をおいたから…
 私、大事な仲間じゃないのって怒ったんだ。

 あの噂話をする人を信じるのか…
 ゆりちゃんを信じるのかって。。

 ゆりちゃんの小さい頃にとった行動は
 何にも間違ってないよ。。

 あれから、メンバー替わって
 ゆりちゃんを知っているのは
 鈴木さん、山本さん、寮母長と園長だけだから。。

 みんな、健之介はすごいと思ってるよ!

 ゆりちゃんが亡くなったと
 園長から聞いてすごいショックだった。

 ゆりちゃん、何にも言わずに辞めたから
 心配してたんだ。
 
 入院してからゆりちゃんから
 電話がかかってきて
 秋野さんのことを心配してた…
  
 秋野さんのそばには私たちがいるから
 ゆりちゃんは治療に専念してねって伝えたんだ。』
 

 俺はゆりの日記の
「私を守ってくれる仲間もいる。」
 その文字を思い出した。


『まいっち、ありがとう。。
 やっぱり…まいっちが…
 ゆりを守ってくれたんだ!

 まいっちがいたから
 ゆりはいきいきと過ごせたと思う。。

 ありがとう。。ありがとう…』

 
俺はうつむき涙が止まらなかった。


三井さんは急に立ち上がり

『健之介、泣くなよー!
 元気を出せー!元気を出すんだー!』

大きな声で海に叫んだ。


俺とゆりと三井さんがホームの廊下で
笑ったあの時を思い出した。


あの日、三井さんが
『帰りに海、みていってくださいね。
 癒されますよ〜』

そう言ってくれたから俺とゆりは
自分をみつめることができた。

三井さんの温かい気持ちに感謝した。

夕焼けで海がオレンジ色に染まり
波音が心に優しく響いていた。


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