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『心の中の大切な日記』-完結-コミュの最終章 同じ気持ちをみつめて/3

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コミュ内全体

老人ホームに勤めて6年以上が経過した。
 
美沙ちゃんはあれから1ヶ月に1回は
かよさんの面会に来て俺も三井さんも
嬉しくそっと見守っている。

三井さんは部屋に引きこもりがちなかよさんに
レクリエーションへの参加を呼び掛けたり
入居者同士のコミュニケーションに
気を配ることを大切にしていた。

そんな三井さんの姿に温かさを感じた。

介護福祉士の資格を取得して
俺なりに毎日をいきいきと過ごしていた。

自宅の押し入れのダンボールに入れておいた
ゆりにあの日、見せたかったなぞなぞ紙芝居を
かよさんの誕生会にして、みんなが喜んでくれた。

セロハンテープで貼り付けた紙芝居は
ホームの倉庫のケースに入れて
レクリエーションのたびに
いろんな介護士が使用している。

あの日、お父さんの横で
ビリビリに破った紙芝居が
少しだけ輝いて見えた。


今年も寮母室でクリスマスの出し物について
話し合いが始まった。

『今年は歌を中心にしてみんなで
 仮装して唄うのはどう。。
 この中にギター弾ける人いないかなぁ。。』

2年前に新しく入った水谷さんが言い出した。


少しの間、沈黙が続いた。


『俺、昔、ギターを弾いていたことがあって
 最近は押し入れにしまいっぱなしだから
 弾けるかどうかわからないけど…
 やってみようか!』

俺は老人ホームに就職してから
舞台でギターを弾くことをずっと避けていた。

そんな自分に挑戦してみたかった。

『健ちゃん、弾いてくれない!
 曲は赤鼻のトナカイにしない。。』

山本さんが言った。

『わかりました!
 あと1ヶ月あるから練習します。』


俺は仕事帰りに砂浜で曲の練習をした。


あれから1ヶ月が経過した。

今日はホームのクリスマス会。

みんなが食堂に集まった。

職員は「赤鼻のトナカイ」を披露するため
30分前にサンタやトナカイ…
いろんなメイクをして小さな舞台に上がった。

俺はトナカイの帽子をかぶり鼻を赤く塗り
ギターを片手に舞台に上がった。

俺にとってこの舞台でギターを弾くのは
ゆりと一緒に演奏した10年以上前の
クリスマス会以来となる。

俺はギターを弾きながら
おばさんをみつめた。

にっこり笑いながら手拍子をするおばさん。

最近は、『そおぅ。。』『そうだねぇ。。』と
話していたおばさんも何も話さなくなり
認知症もかなり進行した。

でも、にこやかなおばさんを見ているだけで
あの日の温かい気持ちを思い出した。

ギターを弾きながらおばさんがいなければ
ここに俺はいなかったと思った。

日々、いきいきと働かせてもらっているのは
おばさん、そしていろんな老人さんたち
そして温かい職員のみんなのおかげだと感謝した。


ゆりとおばさんと過ごした日々を
ゆっくり思い出していた。


ただ、にこやかにギターを弾くだけで
周りの職員の歌声は聞こえなかった。


この舞台で二人で演奏したことを
懐かしく感じた。


クリスマス会も楽しく終了した。


『健之介、懐かしかったよ!ありがとう。。
 練習がんばったね〜!上手に弾けてたよ!』

三井さんがメイクを落とす俺に
そっと笑顔で伝えてくれた。

このホームで働き、よかったと
心から思った。


あれから数ヵ月が経過した。

今日は三井さん、鈴木さんと三人で夜勤だ。 
 
おばさんはここ数日
肺炎になり体調悪化していた。

看護師にもあまりよくないと聞き
屋上で洗濯を入れながら心配していた。

『健之介、秋野さんが!!』

三井さんの大きな声が階段から聞こえ
俺は急いでおばさんの部屋に向かった。

呼吸が荒く、顔色が悪く
声を掛けても反応がない。

しばらくしてから隣接する病院の
医師がきた。

『酸素をして!急いで!』

一階の看護室の隣の部屋にベッド移動し
点滴を始めた。

『今晩がやまかもしれないな。。』

おばさんの胸に聴診器をあてながら
医師は重い表情で俺たちに伝えた。


俺の心は震え緊張していた。

『ここは入居者が人生を終える場所となります。
 その最期のときを迎えるまで
 入居者の介助を温かく行い
 いかに楽しく過ごしていただくかが
 介護職員の仕事です。』

寮母長から聞いた言葉を思い出した。

このホームに来てから数人が亡くなった。

職員みんなが家族と同じように
日々、入居者と接しており
落ち込んだ時があった。

そんな時に寮母長から
伝えてもらった言葉を
思い出した。


『今日は私たちがオムツ交換するから
 健之介は秋野さんのそばにいてね。。』
三井さんが言ってくれた。

午後10時くらいからおばさんの息が
夕方より荒くなり俺は看護師に電話で伝えた。


しばらくして、医師と看護師が部屋に入った。


俺はおばさんの顔と呼吸の動きを
じっと見ていた。

三井さんと鈴木さんもコールを
気にしながらおばさんのそばにいた。

おばさんの呼吸を聞くと同時に
今までのいろんな思い出が
交互に頭の中で回転した。


おばさんが一息一息するたびに
頭の中でいろんな思い出が
1枚1枚…写真のように甦った。

『うわぁ。。綺麗だねぇ。。』

ゆりと桜を見上げるおばさん。


あの日の綺麗な風景を思い出した。

俺とゆりをみつめながら真剣な表情で
老人ホームのパンフレットを見せ
自分の気持ちを伝えていたおばさん。


いろいろと話し合った場所。


ゆりとよく行ったおばさんの家の近くの
公園を思い出した。


ゆりと一緒におばさんを
みつめながら演奏したあの日。

『よかったよ。。。よかったよ。。。』
俺たちに微笑んだおばさん。


二人で描いたクリスマスカードを思い出した。



おばさんの呼吸がだんだんと小さくなっていった。


おばさんに喜んでもらいたい。。

同じ気持ちで二人で毎日、練習していた…



思い出の砂浜が目の前にすーっと広がった。



おばさんの呼吸が止まった。



頭の中が真っ白になった。


『健之介…』

三井さんの声がかすかに聞こえた。


『午後11時25分、ご臨終です』

俺は涙をこらえた。


『今から医師とエンゼルケアをしますから
 介護士のみなさんは寮母室で
 待機していてください…』
看護師が伝えた。

三井さんと鈴木さんは1階の寮母室で
俺は2階の寮母室で待機した。


俺は涙をこらえ無言のまま
2階へ向かった。


俺は寮母室で声を震わせて泣いた。


涙が止まらなかった。


思いっきり深呼吸して30分後
おばさんのいる部屋に向かった。


おばさんの鼻と口には棉が入れられ
白い浴衣を着せられていた。


涙が止まらなかった。


園長、寮母長、事務の人が部屋に来た。


俺は寮母室で待機した。


午前3時で外はまだ暗い。


コールが鳴った。


俺はコール番号を見て部屋に向かった。


『たづさん、どうしました。。』

『喉が乾いてね〜』

『たづさん、ちょっと待ってて。。』


俺は楽飲みを持って
給湯室へお茶を入れに行った。

おばさんの部屋の前を通り
おばさんのベッドの場所だけが
空間になっているのを見て胸が痛くなった。


給湯室でお茶を入れながら
また、涙が止まらなかった。


『たづさん、お茶入れたよ。
 また喉が乾いたらコール押してね。。』

『あんた、泣いているのかい。。』

『い…いやっ…』

『何で、泣いてるの。。
 あんたは私の息子なんだから心配だよ。。
 でもね…楽しい時は笑って
 悲しい時は泣いたらいいさ。。
 そうやってみんな生きてるんだよ!
 あんたがいるから元気になれる。
 あんたは私の生き甲斐だよ。。』


『たづさん、ありがとう…』


俺は小声でたづさんに伝えた。


たづさんの言葉に温かさを感じた。


しかし、寮母室に戻っても動揺していた。


俺は動揺を落ち着けるため
明け方、排泄介助が始まる前
寮母室にあったノートを破り
久しぶりに日記を書いた。


『今、寮母室で日記を書いている。

 昨日、おばさんが亡くなった。

 君と会った時
 おばさんは優しい目で
 君のことを紹介していた。

 君とのつながり
 おばさんとのつながり

 全ての思い出が空に…

 そう感じた。

 悲しい気持ちがこみあげた。


 君がやりたかったこと。


 あれからいろいろと悩んでいたが
 俺もおばさんのそばにいたいと思った。

 最初は君がやりたかったことだから
 と少し思っていた。

 今は自分の為だと思っている。

 あの時、この老人ホームの寮母室の
 片隅で泣いていた君。

 涙をこらえ笑顔で
 おばさんをみつめながら
 食堂で演奏したあの日

 おばさんに伝えたい。

 そう君は願いながら
 フルートを吹いていた。
 その気持ちを俺は横で感じていた。

 いつもいる場所が何気ない
 当たり前の場所と感じていた。

 破れた紙をつなぎ合わせていた
 悲しい場所が普段の何気ない
 場所となっていた。

 君と出会っていなければ
 今、俺はこのホームにはいないと思う。

 あれからいろんなことを
 ここで学んだ。

 自分との葛藤の中でも
 いろんな人の人生を学んだ。

 ここにはふれあいがあった。

 誰かの言葉や忙しさが
 辛い気持ちをまぎらわしていた。

 おばさんはいつも窓の外を眺め
 声を掛けるとニコッと微笑んでくれた。

 おばさんと過ごした貴重な時間は
 俺にとって大切な財産だ。

 たまに桜の木の下の写真を
 見せていた。

 おばさんはあの頃の思い出を忘れたが
 心の中にはあの頃の思い出が残っている。

 いつもそう信じ過ごしていた。

 俺はおばさんとの思い出も
 しっかりと記憶に…
 大切にしまっておきたいと思う。


 俺を失わずにいられたのは
 君とおばさんとの思い出が
 幸せすぎたからだと思います。

 君を尊敬しています。

 君と出会えたことに感謝しています。
 俺は君と出会って幸せでした。

 君と過ごした貴重な時間は
 俺にとって大切な財産です。

 俺にもいつか死が訪れると思うが
 その時まで小さなしあわせを探しながら
 ゆっくり歩いて行きたいと思う。

 時間が悲しみの中で静かに流れて
 俺もだんだん泣かなくなった。

 生きる気力もなくしてた時もあったのに
 今では、結構未来について考えていたりします。

 あれから泣いてないとはいえませんが
 ずいぶん、気持ちの整理がついたように思います。
 これからは、俺の為に生きて行こうと
 思えるようにもなりました。

 今でも、君の言葉は俺の支えです。

 こうなるのが運命だったとしたら
 こんな運命を受け入れるのも
 また運命なんだと思います。  

 君に出会えた全ての偶然と
 君から教えてもらった温かさに
 心からありがとう。。

 もういちど、ありがとう。。』


食事介助後、ホーム裏に霊柩車が到着し
職員がおばさんに手をあわせ見送った。

夜勤明けの俺は火葬場まで
一緒に行きたいと園長にお願いした。

自動車に乗り、霊柩車の後ろを走った。

火葬場に着いたが火葬までは
時間がかなりあるみたいだ。


俺は急いで家に戻った。


押し入れの奥に入れてあった
ダンボールの中からゆりの日記と
ゆりに書いてもらった楽譜を取り出した。


久々に2冊の日記を開いた。


ぱらぱらとめくるだけで
当時の懐かしい気持ちが甦った。

今朝、書いた1枚のノートを
俺の日記に貼り付けた。

ホームで働く前に書いた日記を読み
懐かしい気持ちになった。


ゆりの日記と楽譜を鞄に入れ
火葬場に向かった。


しばらくして、お経が始まった。


火葬前、棺桶の中に
ゆりの日記と楽譜を入れた。


おばさんにゆりの気持ちを届けたかった。

二人で考えた誕生日の歌を届けたかった。


火葬が始まった。

『健介、ゆりちゃんの時も
 私がいたから健介の気持ちはよくわかる。

 人生には必ず死が訪れる。
 
 それが早いか遅いかは誰にもわからない。

 でもな…秋野さんは健介
 お前に見送られて幸せだったと思う…

 健介…ありがとうな。。』

園長の目には涙が溢れていた。


『ありがとうございます…』


俺は何も言えなかった。


俺は市民病院の近くのお墓を園長に案内し
住職にお願いし園長と二人で納骨をした。


『健介、夜勤明けだから疲れただろう。。
 今日はゆっくりしろよ。。』

『はい…ありがとうございます。』


俺は園長と別れて自動車に乗り砂浜へ向かった。


砂浜に座り波音を聞きながら
ゆりとおばさんと過ごした日々を
ゆっくりと思い出していた。


『健之介、やっぱりここにいたか。。』

振り返ると三井さんだった。


『健之介、元気だせよッ!』

『これっ、健之介に渡しておくね。。
 秋野さんの棚に飾ってあった写真だけど…
 この男の子って秋野さんのお孫さん…』

『いや…違うんだ。。
 13年前に写真コンクールがあって…
 小さいけど後ろにゆりとおばさんと俺が
 写っているんだ。
 俺がホームで働きはじめた
 初日に置いたんだ。。』

三井さんは写真をじっとみつめて
泣いていた。


しばらく、沈黙が続いた。

『健之介、私…小さい頃から
 おばあちゃんと二人暮らしだったんだ。。

 優しいおばあちゃんだった。

 私が中2の時から認知症が出て
 中3の時にはかなり進行していた。

 私、いろんなホームに相談したんだ。

 このホームの園長がいろいろと動いてくれて…
 おばあちゃんはここに入所したんだ。

 アパートだったからお金もなくてね。。

 親戚もいないし、園長の家で
 お世話になったんだ。

 園長の奥さんも優しい人でね…

 私はおばあちゃんのそばにいたくて
 中学卒業してからホームで
 働かせてもらったんだ。

 3年間は園長の家でお世話になって…

 それから、アパート借りて
 独り暮らししてるんだけどね。

 健之介とゆりちゃんが演奏しに来た時
 すごく温かい気持ちになったんだ。

 あのクリスマス会の日の
 ゆりちゃんの気持ちもすごくわかった。

 健之介の言葉も…
 私に言ってくれてるみたいで
 寂しかった気持ちに響いたんだ。。

 あのクリスマス会で私のおばあちゃんも
 一緒に聴いていたんだ…

 ゆりちゃんと健之介の曲は
 私の大事な思い出なんだよ。。』


俺は波音を聞きながら泣いていた。


『まいっち、ありがとう。。』


『健之介、泣くなよ!
 元気を出すんだー、健之介ー!』


三井さんが大きな声で海に叫んだ。


あれから1年が経過した。

俺は指導員となり日々
入居者の方たちと
楽しく毎日を過ごしている。

自分のデスクも用意してもらい
書類で山積みになっていた。

時折、机の引き出しを開けては
初心の気持ちを忘れないように
桜の樹の下の写真をそっと見ていた。


今年の春から三人の新しい介護士が働いている。


三人とも介護福祉の専門学校を卒業し
二人は女性で一人は男性だ。

名前は浅井美香さん、岩田梓さん、香取俊晴さん。

三人にいろんなことを教え
数ヵ月が経過した頃
昼食時、母からホームに電話があった。


ターボの妹さんから電話があり
昨日、ターボが亡くなったとのことだ。

俺は園長に事情を伝え
翌日から休ませてもらった。


押し入れから俺の日記を取り出し
鞄に入れて北海道へ向かった。


ターボの実家に到着した。

前には海があり砂浜が広がっていた。


ターボの実家に着くと
直人、ひろみん、長沢がいた。

みんなが地方に引っ越してから会うのは久々だ。

ひろみんとは卒業式以来だった。

『健ちゃん、久しぶり。。』

『ひろみん、久しぶり。。』

『お前ら…
 あれからずっと年賀状、書いてたのか。。』

『あぁ。。』

みんな、あの卒業式以来
ターボにずっと年賀状を書いていた。

大勢の人がターボの実家に集まっていた。

ターボの人柄を感じた。



俺たちは棺桶の中のターボをみつめた。



あの頃と変わらない優しい顔のターボだった。


『高ちゃん、若い時に奥さん亡くして
 ずっと頑張ってたもんな。。』

同い年くらいの男性がつぶやいた。

『兄はみつ子さんが亡くなった時は
 家にこもってばかりいて…
 教員も辞めると休職していました。

 でも、生徒と向き合いたいと
 日に日に元気になっていきました…

 私にとって最高の兄でした。。』

ターボは教員になってすぐに結婚したが
奥さんは一年後に病気で亡くなったとのことだ。


高校時代にターボに伝えてもらった
一言一言は日記を読まなくても覚えている。


あの頃、ターボの一言一言が
真っ暗闇の俺の気持ちにすごく響いていた。


『私たちにとっても最高の先生でした!』

俺はみんなに伝えた。


『直人、ちょっと、表の海に行ってくるな。。
 すぐに戻るから…』


俺は直人に伝え、海まで歩いた。


砂浜に座り最後の日記を書いた。



『ターボ、ありがとうございました!

 あなたがいたから今の俺がいます。

 高校時代、その後の年賀状で
 いろんな気持ちを真正面から
 伝えてくれてありがとうございました!

 ターボの温かさは忘れません。

 ありがとうございました。』


日記を書き終え
みんなの元に戻った。


少し時間が経過しお経が始まった。


俺は高校3年から書き始めた
日記を握りしめて目を閉じていた。


あの頃の白黒の世界にいた俺を
毎日、毎日、笑顔で励ましてくれた
ターボに感謝した。


棺桶の中にみんなで御花を入れた。

妹さんにお願いし日記を中に入れてもらった。


ターボありがとう!と
心の中で何度もつぶやいていた。


帰りにみんなで喫茶店に寄り
クリームソーダを頼み、懐かしい話をした。

クリームソーダを飲むのは
あの日以来だ。


そこにターボも笑顔で
座っているような気持ちになった。


あれから数年が経過した。

今日は七夕会の出し物の話をしている。

『今年はどうする。。 
 歌にする。劇にする。。』
三井さんがみんなに伝えた。

『香取君、あいうえおブラザーズって
 漫才があるんだけど一緒にやらないか。。』

『健之介、懐かしいね〜!』

『なぁ、まいっちもやるだろ。。
 俺がマイク担当ということで…』

『健之介がマイク担当だよッ!』

『あいうえおブラザーズってなんですか。。』

香取君が首をかしげて聞いていた。

鈴木さんと山本さんも笑っていた。

『いいねぇ、健ちゃんとまいっちの
 あいうえおブラザーズ!
 懐かしいねぇ。。』

『じゃあ、七夕会は香取君とまいっちの
 あいうえおブラザーズの漫才と
 浅井さんと岩田さんの織姫、彦星の仮装で…』

『木下さん、漫才ですか。。
 頑張ってみます!
 三井さん、お願いします!』

『香取君、あとから、台本見せるから
 俺の机に集合なっ!まいっちもっ!』

『健之介、了解!』

俺は以前、まいっちが書いてくれた
3枚のホッチキスでとめた紙を
机の引き出しにしまっていた。

夕方、山積みになった机を整理し
引き出しから台本を探した。

懐かしい台本が見つかり引き出しの中から
額に入れた桜の木の下の写真を出して眺めていた。


『健之介、打ち合わせしよっか!
 香取君も連れてきたよ!』

俺は机の上に額を置いた。

『打ち合わせって…
 おおげさなもんじゃないんだ!
 香取君、アドリブでいいんだッ。。
 これっ、昔、まいっちと
 ずっとやってたんだ!
 これっ、まいっちが考えてさぁ…
 まいっち、俺も七夕会でするから
 三人でメイクしよう。。』



俺が話している時、机の上を
みつめる香取君の表情が変わった。


『木下さん、なんで俺の写真を…
  
 これ、俺です!
 
 実家に飾ってある写真と同じですッ!

 間違いなく俺ですッ!

 木下さんがなぜッ…この写真を…』


『えっ…』


香取君は動揺していた。


俺はそれ以上に動揺していた。


『健之介…』
三井さんが俺をみつめて
にっこり微笑んだ。


人生、誰と誰がどうつながっているか…
どう歩いて、どうたどり着くか…わからない。

そう感じた。


詳しい話はあれから
香取君と夜勤になった時に話した。


2015年4月

2年前に香取君が結婚して
披露宴に出席した。

三井さん、山本さん、俺は
かなり酔っ払った。

香取君は結婚後、お父さんの仕事を
継ぐためにホームを辞め、地元に帰った。


俺は園長に古い介護日誌の整理を
頼まれ資料室にいた。

いろんな入居者の介護日誌を読み
懐かしく思った。


おばさんの介護日誌を見た。


入居日から書かれていた。

懐かしかった。。

亡くなった日の日誌を読んだ。

鈴木さんが書いたおばさんの介護日誌。

今後、誰もみないであろう
介護日誌の最後のページに
『おばさんありがとう。。健介、ゆり』と書いた。


翌朝、今日の誕生会のことを考えながら
駐車場を歩いていた。


『健之介、おっはよう〜』


『おはよう!綺麗な青空だなぁ!
 まいっち、今日も1日ゆっくり頑張ろうー』



二人は空を眺めながらホームへ歩いた。


あとがき


長いお時間、読んでいただき
ありがとうございました。

あなたの隣にいる人と
出会った頃を覚えていますか。。

あなたの見えない場所で…
忘れたかけた場所で…
大切な気持ちが今も変わらず
動いているかもしれません。。

この物語が誰かの勇気に繋がれば
嬉しく思います。

長い時間お付き合いいただき
ありがとうございました。

この物語を読み終えて何かを感じられた方
こちらにご感想をお書きいただけると
嬉しく思います。

http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=54538&id=13043652



あの時の日記はあなたの心の中にありますか。
ここにいろんな人の温かい気持ちが集まりました。
あの日からゆっくりと月日が過ぎています。

そしてこの場所が懐かしい場所に
なりつつあります。  ガースケ

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