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怖い話で眠れなくする!!コミュの赤緑シリーズ 正しい除霊

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佳澄の件から数日経ったある日、私の家にいつもの3人――古乃羽、雨月君、北上が訪ねてくる。
そこで雨月君が、事の顛末を話してくれた。

私も古乃羽も佳澄には危険な目に合わされた訳だが、話を聞くと、少し複雑な気分になる。
私「それで、その人形を牧村さんの家に持っていったのね」
雨月「あぁ。お婆さんも人形を見て、ごめんねごめんね、って…ちょっと気の毒だったよ」
古乃羽「…でも、きっとそれで良かったんだと思うよ」
涙を拭きながら言う古乃羽。彼女はこの手の話に、めっぽう弱い。

北上「あぁ、あの婆さんがなぁ…。でも可哀想になぁ…夏美さん。あの世で幸せになって欲しいなぁ…」
北上も涙もろいようだ。何でも、牧村のお婆さんと面識があるらしく、以前、古乃羽達を助けるのに、力になってくれたという。

古乃羽「そうだね、きっと幸せに…佳澄と仲良くやっているといいね…」
北上「うんうん…」
慰めあう二人。何だか珍しい組み合わせだ。

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ひとしきり話も終わり、しんみりとした空気が流れていたが、
私が何となくチラシ(「チラシお断り」と書いておいても、郵便受けにいつも貯まるチラシ!)の整理をしていると、古乃羽が何かを見つけて、こう言った。
古乃羽「あ、これ…どう思う?私の家にも、よく来るの」
私「ん?」
見ると、それは「往来会」とかいう団体からのものだった。

北上「どれ?…あぁ、うちにもくるよ。"霊に関する事なら何でもご相談ください"って奴ね」
古乃羽「何だか怪しいよね…コレ。何かの宗教なのかなぁ」
私「こういうのが、そんなに流行るとも思えないけどねぇ。何か詐欺っぽいし」
北上「除霊しますとか言って、とんでもない金額請求してきそうだな」
私「そうそう。あなたは悪い霊に取り憑かれています、とか言ってね」

ちょっと怪しむ私たち。しかしそこで、雨月君が意外な事を言う。
雨月「…そうでもないらしいよ」
北上「え?」
古乃羽「知っているの?これ」
雨月「あぁ、ちょっとね。姉貴から聞いた話だけど」
私「へぇ、舞さんがねぇ…」
古乃羽「どんなこと?」
古乃羽の目が輝く。この子はまったく、舞さん絡みの話となると…。
雨月「そこに何か依頼したとかじゃなくて、その会から派遣されました、って人に偶然会ったらしいんだ」

そう言って、雨月君は話を始めた。

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雨月「ある日、姉貴は除霊活動の一環で、とある家を訪ねたんだって」
北上「ほぉ…」
私「いきなり除霊活動で、って聞くと、なんだか舞さんの方が怪しく思われそうね…」
雨月「俺もそう思う…けど、結構受け入れてくれるらしいよ。本当に霊が居て、それで困っている所を訪ねる訳だしね」
古乃羽「舞さんの人柄なら、平気だと思う」
古乃羽様、心酔しすぎです。…実際には、そうかも知れないけど。

雨月「訪ねた先は、ある小学生の男の子の家で、父親が単身赴任中で、母親と2人暮らし。あとペットに犬が一匹居る、っていうとこでね」
まぁ、普通の家庭だ。
雨月「そこを訪ねたとき、丁度その往来会から来た、っていう男の人が居たらしいんだ」
北上「へぇ。かぶった訳か」
雨月「そそ。姉貴の方は、アポとか取らないからさ。会の人は、ちゃんと依頼されて来ていたらしいよ」
私「それで?」

雨月「どうしようか迷ったけど、向こうの人が見ていきなさい、って言うから、姉貴は除霊を見させて貰うことにしたんだってさ」
古乃羽「ふーん…自信あるのね」
上からの物言いが、古乃羽には少しカチンときたみたいだ。

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私「その男の人って、どんな人だったのかな」
雨月「えーっと…30過ぎくらいの、スーツを着た人。眼鏡を掛けた真面目そうな人だった、って言っていたよ」
北上「スーツ姿で除霊とは…新しいな」
古乃羽「ね、意外」

雨月「で、そこの母親の話では、数日前から息子の様子がおかしい、ってことでね。何かこう、変なものが見えるって言い出したり、突然奇声を上げたり…」
北上「…頭の病気とは考えなかったのかな」
雨月「それが、母親がちょっとオカルト好きな人らしくて…病気じゃなくて、これは悪い霊のせいだ、て考えたらしいよ」
私「うわ…」
本当に病気だったら、どうするのだろう?子供としては、たまったものじゃない。
これはこれで、怖い話に思える。

雨月「とにかくそれで、家に来ていたチラシを見て、相談したってことらしい。取り敢えず一回…ってね」
北上「ふむ…」

雨月「で、いざ母親に連れられて、その男と姉貴の3人で息子の部屋に行ったんだ」
古乃羽「うん」
雨月「部屋に入ると、その子は1人でゲームして遊んでいたらしい。でも、一目で分かったってさ。あぁ、これは何か憑いているな、って」
北上「お姉さんが気になって訪ねたなら、そうなんだろうな」

雨月「そこで男も気付いたらしい。これは危険ですね、と。それで、早速始めますから少し下がっていてくださいと言われて、母親と姉貴は部屋の入口まで下がったんだ」

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古乃羽「その人も、普通に分かる人だったのね」
雨月「あぁ。ちゃんと霊感もあるし、普通に除霊もできるでしょうね、って姉貴は言っていたよ」
古乃羽「ふーん…」
少しつまらなそうにする古乃羽。
きっと古乃羽的には、その男がまったくの素人で、舞さんが代わりに…みたいな展開を望んでいたのだろう。

雨月「その子は、何の用だろう?って感じでこちらを見ている。そこに男が、適当に挨拶しながら歩み寄っていく」
北上「うんうん」
雨月「で、すぐ傍まで近寄ったところで、突然その子からガクンと力が抜けて、身体から白いモヤモヤが出てきたんだってさ」
私「取り憑いている何かね」
雨月「うん。姉貴もそう言っていた。それを見て、男もサッと身構える」
北上「で、何か必殺技でも出したか」
雨月「…」
古乃羽「…」
私「…バカ」
北上「…ごめん」

雨月「で…その時だな、飼っている犬…室内犬なんだが、これが駆け込んできて、ソレに向かって吠え出したんだ」
古乃羽「そういうのが分かる犬って、居るみたいよね」
雨月「あぁ。でも子供に飛び掛ったら危ないからって言って、姉貴が抱きかかえていることにしたらしい」
北上「ふむ」

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雨月「それで犬が大人しくなってから、モヤモヤと対峙した男は、懐からお札を取り出す」
北上「霊札ってやつか」
雨月「だな。それで、サッと近寄ると、素早くソレに貼り付けたんだ」
私「…モヤモヤでも貼れるのね」
雨月「まぁ、その辺はよく分からないけどさ。普通の、ただの紙切れじゃ無理だろうけどね」
古乃羽「それで?」

雨月「そうしたら、そのモヤモヤがパッと散開して…そのまま消えていったとさ」
私「あら…。あっけなく、除霊成功?」
雨月「成功だった、って言っていたよ」
北上「なんだ…やるじゃないか、往来会とやら」
古乃羽「意外だね…。ちゃんとした団体なんだなぁ」
北上「だなぁ。…でももしかしたら、凄い金額を請求されていたり…?」
雨月「それは分からないなぁ…。そこまでは聞いてないし、姉貴も聞かなかっただろうし」
北上「そりゃ、聞けないよな」

雨月君の話は、私たちにとっては意外な結末になった。
古乃羽は少しガッカリしている様子だ。まぁ、世の中に除霊ができる人というのは、舞さん以外にも沢山いるだろう。

…でも、何だろう。何か、話の中で引っ掛かるものがある――?

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私はよく、こういった「引っ掛かり」を感じることがある。
そういう時は、必ず何か裏があるハズだ、と自分では信じている。

古乃羽「それで、その男の人は帰っていったの?」
雨月「あぁ。姉貴に一言言って、帰っていったってさ」
古乃羽「なんて…?」
雨月「どなたか知りませんが、こういった事は私共に任せて…とか」
古乃羽「むー…」
ふくれる古乃羽。

北上「まぁ、そう言われても仕方ないのかなぁ…」
古乃羽「ムッ」
北上「…すまん」
にらまれる北上。

私「で、舞さんは?」
雨月「それで大人しく帰ってきたよ。用事も済んだことだしね」
古乃羽「そっかぁ…。舞さんなら無料でやってあげたと思うのにな」

確かにそうだろう。でも、お金が発生しないのが逆に不安を与えることも…と思ったが、口に出すのはやめておいた。私までにらまれそうだ。

それにしても、やっぱり気になる…

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私「あのさ…」
雨月「ん?」
私「うーん…何か、変じゃない?よく分からないけど、何か引っ掛かるのよね…」

雨月「お…」
雨月君は何故か感心したような声をあげる。
私「お…って?」
雨月「いや、凄いなぁ神尾さん。分かった?」
古乃羽「ん?何かあるの?」
私「うーん、何か、ちょっと…」
雨月「これ、姉貴に聞いた話をそのまま話したんだけど…。
姉貴さ、ちょっとイタズラ心というか、わざと要点を言わないで話をしてきたんだよね」
北上「要点とな?」

雨月「後で教えてくれたけど、俺は聞いただけじゃ分からなかったよ。…神尾さんは分かったのかな」
私「うーん…一ヶ所、何か不自然なところが。あの――」
古乃羽「あー、待って待って。まだ言わないでね。私も考えるから」
北上「んじゃ俺も…」
雨月「お前が分かったら、ショックだ」
北上「…みてろよ」

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古乃羽「うーん…」
北上「実は…モヤモヤは霊じゃなかったとか」
雨月「小学生がタバコでも吸っていたか?それは間違いなく霊だったってさ」
北上「…実はその往来会の男が悪霊」
雨月「普通の人だよ」
北上「…実は全部嘘。夢オチ」
雨月「話したことは、全部実際に起きた、本当のことだ。…姉貴に妄想癖はないと思う」
北上「じゃあ、実は…」
雨月「あのなぁ…。そう言っていけば、いつか当たるかも知れないけどさ」
北上「…」

古乃羽「除霊をするためにその家に行って、先に男の人が来ていて、母親から話を聞いて、子供から変なのが出てきて…」
古乃羽が話の順を追っていく。
北上「うんうん」
古乃羽「男の人がお札貼って、消えて、おしまい…って話よね」
北上「そうだよな…。あ、あれか?実はそれだけじゃまだ終わってなかったってパターン」
雨月「どんなパターンだ?ちゃんと除霊は終わったってさ」
北上「うーむ…」

私「その流れ、ひとつ抜けているよね」
古乃羽「…あれ?」

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古乃羽「えーっと…」
私「それだと登場人物が足りない…よね?」
雨月「そそ」
うん。じゃあ、やっぱりそうだ。
古乃羽「…あ」
雨月「分かった?」

古乃羽「…犬ね?」
雨月「そう、正解!」
私「うん。犬のところが、何か引っ掛かったのよね」
古乃羽「そっかぁ…」

北上「あの…俺だけ置いていかないでくれ」
古乃羽「だから、子供に飛び掛ろうとしていたのよ。出てきた霊に、じゃ無くて」
北上「…?」
私「で、その犬が舞さんに抱かれて、大人しくなった訳よ」
北上「そりゃきっと、何かの癒しパワーで…」
古乃羽「それもまぁ、ありそうだけど…この場合は別の可能性があるんじゃない?」
北上「別とな」
私「除霊したのよ」
北上「…あ!」

私「そうよね?舞さんが除霊をしにいったのは、子供じゃなくて、その犬の方なのよ」

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北上「そうか…。じゃあ悪い霊は2体居たんだな」
古乃羽「そう…なのかな。子供の方は、もしかしたら?」
雨月「あぁ。子供の方は、悪い霊なんかじゃなかったってさ。いわゆる守護霊みたいなものだったらしい」
私「え…。じゃあ、その守護霊を消しちゃったの?」

雨月「いや。姉貴の話では、その霊は普通子供に憑くものとは別物で、ちょっと強すぎて、長く憑いていると霊障が出そうだった、って言っていたよ」
古乃羽「そっか…」
雨月「現に、母親の話では少し害が出ていたみたいだしね。ただ、犬に憑いているモノから子供を守るために憑いていたんじゃないか、って」
私「あぁ、それで…」

雨月「うん。姉貴が犬の除霊をしたから、それで安心して、その守護霊も消えたってことさ」
北上「お札で消えたんじゃないのか…」
雨月「そうみたいだな。あんな安っぽいお札で消えるようなものじゃ無いって言っていたよ」
古乃羽「そっかそっかぁ…」
何だか嬉しそうな古乃羽。ま、気持ちは分かるかな。

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古乃羽「何よねぇ…私たちに任せて、なんてさ」
北上「その場で言ってやれば良かったのにな。除霊したのは私ですよって」
古乃羽「いいの。舞さんはそーゆーこと言わないの」
北上「あ、そう…」
また注意される北上。雨月君とは違い、まだまだ古乃羽の事を分かっていないようだ。

北上「でも、まぁ何だ。その往来会も大したこと無いな」
雨月「…さっきと一転したな」
私「んー…でも、ちゃんと霊感持ちの人が来ていた訳よね。何か頼りなくなっちゃったけど」
雨月「そのお札はアレだったけど、それで効果なかったら他にも手があったかも知れないしな」
北上「あぁ、それもそうか。除霊するのに、たった一枚だけお札持って来るってのも、あり得ないよな」
古乃羽「本当の除霊対象は間違っていたかもだけど…それでも、子供に悪い影響のある霊だった訳だしね」
まぁ、何も知らずに守護霊を消そうとしていた、って事にはなるけど。
北上「ふーむ…侮りがたし、往来会…」
雨月「どっちだよ…」

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私「でもさ、その家の人たちにとっては、その往来会の人が除霊してくれた、って認識なんだよね」
雨月「そうなるねぇ」
北上「あながち間違いでもないし、インチキでもなかった訳だからな」
古乃羽「一応はちゃんとした団体なのね。…依頼しようとは思わないけど」
どことなく、敵対心を燃やしている感じの古乃羽。

私「私たちの場合、舞さんに相談しちゃうからなぁ…」
古乃羽「うんうん」
北上「俺の場合は、牧村のお婆さんかなぁ」
古乃羽「…あ。私たちも一度、ちゃんとお礼に行かないとね。そのお婆さんに」
雨月「だなぁ。前に会ったとき、知らなかったから何も言ってないや…」

その後も雨月君は舞さんの話をいくつかしてくれた。
それを聞くにつれて、彼がシスコンであることが明らかになっていく。
これは古乃羽にとってマイナスイメージじゃ…?と心配になったが、
古乃羽はこの点を許しているらしく、逆に舞さんを大事にしないと許さない、くらいの事を言う。

もしこの2人がこのまま一緒になったら…舞さんは少し大変かも知れない。
その時は私が舞さんの相談相手になろうと、心に決めた。

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