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映画レビューアーフォーラムコミュの【ネタバレアリ】『夢売るふたり』 [2012年9月8日公開]

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●Introduction
『ゆれる』や『ディア・ドクター』など、人間の深層心理に肉薄し、人間の心の闇をえぐり出すような作品で定評のある西川美和監督作。ある夫婦が火事で全てを失った事から始めた結婚詐欺を繰り返すうちに、本人ですら自覚していなかった己の深層心理と、お互いが知らなかった相手の本性に気づいていくさまが、可笑しくて恐ろしい。物語の軸となる夫婦を演じるのは松たか子と阿部サダヲ。松演じる気立てのよい妻が、心の奥に眠っていた悪意に目覚める瞬間の背筋が凍るような恐ろしさは、彼女の演技力の賜物だ。田中麗奈や鈴木砂羽、木村多江らが結婚詐欺の“対象”となる女たちを演じるという、キャストの豪華さも本作のウリのひとつ。

東京の片隅で小料理屋を営む貫也と妻の里子。店は小さいながらも繁盛していたが、調理場からの失火が原因の火事で全てを失ってしまう。絶望して酒びたりの日々を送っていた貫也はある日、常連客だった玲子と再会、酔った勢いで一夜を共にしてしまう。その事を知った里子は、結婚詐欺で金をだまし取る事を思いつく。店を再開するための資金を稼ぐために貫也は、出版社OL、重量挙げ選手、デリヘル嬢などに言葉巧みに次々と接近する。
[2012年9月8日公開]

コメント(2)

 本作のポイントは、平凡な主婦に潜む得たいの知れなさを描きだしたところにあると思います。西川監督は松たか子の起用にあたり、『告白』の主人公が教師であったという特殊性をはぎ取って見たかったそうなのです。普通の主婦にも『告白』の主人公のような怖さがあって、それを松たか子に演じさせれば、どのような表現をしてくれるのかに興味を引かれたところから、本作のキャラクターが作られていきました。
 その得たいの知れなさは充分に発揮されて、夫をコントロールして、平然と結婚詐欺を重ねていく、モンスターぶりを遺憾なく松たか子してくれました。その点は見応えアリです。
 しかし、後半からラストにかけての物語のオチの付け方には、前作の『ディア・ドクターのようなキレの良さを感じませんでした。人間の持つ不可解さを追求する余りに、不可解すぎるシーンが多く、主人公の本音をわざと見えにくくしているのです。さらに輪をかけて、登場人物の心象を語り終えずに、ばっさりカットして強引に場面展開するところや、逆に意味もなく無言のアップがあるなど、見ていてこれはどういう意味だろうという場面が数多く映し出されました。

 さらに、登場する騙された女たちのその後の顛末も、掘り下げられていません。消化不良気味になったのは、少々エピソードを詰め込みすぎたのではないかと思います。今回も徹底したリサーチを基にしたというから、落とすには忍びなかったでは?217分の長めの尺と相まって、ラストの詰めに悩んだのではないかと推察しました。
 もとより前作でも騙す側にもそれなりの事情を盛り込んで、騙す側にも三分の理 を説くことで問題提起してきたのが西川監督の手法であったはずです。
 今回のテーマが、『夢売る』ことであれば、もっと騙す方に義を持たせてやり、騙された側がそれでも満足していたという前作同様の結論に導くべきでは?
 ラスト近くに普通に弁護士が登場して、依頼人が騙した側を責め立てるようになってしまうのは、幕引きとしては余りに普通になってしまいました。
 だから終わり方も、ごく普通の終わり方に幕切れしたことが残念です。

 元々は是枝監督の発案だった本作。ゴンチチ風のサントラや、場面と場面の間の撮り方など随所に是枝監督風の場面が散りばめています。
 穿った見方をすれば、西川監督にとって主演級がキャストされた大作で、それぞれの出演シーンに気遣いしなければならず、また企画アイディアを出してくれた業界の恩人である是枝監督のアドバイスを無視できず、いろいろ気遣いをしなければいけなかったところが、本作の微妙に漂うイマイチ感り原因ではなかろうかと思うのです。

 物語は、小料理屋を営んでいた里子(松たか子)と貫也(阿部サダヲ)の夫婦が、火事で全てを失ってしまうところから始まります。しかし、2人は自分たちの店を持つ夢をあきらめきれません。里子は、貫也の浮気をきっかけに結婚詐欺を思いつきます。
 里子が計画し、貫也が女をだましていき、あと一息で新店にこぎ着けるとき波乱が。果たして夢を売り続けた顛末はいかにという話でした。

 見どころは、まず夫の浮気を知ったとき、里子が見せる嫉妬の底知れぬ怖さ。男として、これは怖かったです。なのに次のシーンでは、喜々として夫に指令を出して、訳ありの女たちからお金を出させていくように里子は豹変します。この辺の微妙な里子の心理描写は、「ゆれる」で見せた西川監督の真骨頂というべきものでしょう。人間の心の襞を奥深くえぐるように描きだしていくのです。
不思議なのは、阿部寛なら分かるけど、なんで阿部サダヲで、ころころと次から次に女が騙されていくのかという素朴な疑問です。けれども、そんな疑問も払拭するかのように、女心を知り尽くした里子は、裏で夫を操り、自分の仮病までネタにして狙った女から確実にせしめるのでした。
 巧みなのは、消してお金を請求しないこと。逆に、惚れた貫也に援助したがるカモになった女たちに、冷たく断れと指令を出すところが憎いくらいです。
 かかってきた電話のそばで里子が答えるべきシナリオをかいて渡しているところは、このふたりの関係性を象徴していて、可笑しかったです。

 だまされるのは結婚したい独身女性、男運の悪い風俗嬢、不倫で大金を手にした女など男社会で傷を負いながらも生きてきた女性たち。自分の今の状況や周囲の目を意識し、傷つきやすく、心と性を揺さぶられていたのです。 カモにされた女たちと貫也とが激しく絡むシーンも多く、鈴木砂羽までが風呂場で濡れ場を演じているのが意外でした。
 
 そんな中で、貫也のこころのゆれは分かりやすいものでした。どうしても騙しているうちに情が移っていくのですね。そんな男の純情さが発揮されるのが、女として意識されないウェートリフティングの選手に見せる愛情。相手が純情だと、見かけは関係なくホロリと情をいだいてまうところは、とても分かりやすかったです。また息子を抱えたシングルマザーの女の家に居着いてしまうのも、男がいだく家族団欒への憧憬を描いて、共感してしまいました。

 それに比べて、里子の心理は、もやもやしていて掴みようがありません。本当にお金が欲しいのか、他の女と交わる夫を許しているのか、女が女を心底騙せるものなのか。そして、本当に夫のことを愛しているのか?
 夫が外泊を重ねるため夫婦生活の途絶えた里子は、オナニーまでして自らの衝動を抑え込むのです。しかも他の男からの誘惑に乗るそぶりをして拒絶します。
 女のゆれは、里子のように繊細で小さいものなのでしょうか。その表情の微妙な変化に、監督は里子のこころの移り変わりを観客に委ねさせます。
 ただ食い入るように里子の表情を凝視続けていても、ますます彼女の本心が見えなくなりました。
 そんな得体の知れなさこそ、監督の狙った術中なのかも、しれません。

 ラストも、そこまでして!とため息が出るほどの変わりよう。ホント人間の不可解さを思い知らされました。西川監督は、女たちの見せたくない内面をあからさまに描いたのではないでしょうか。同情も抱擁もしない。冷静な視点がいいところ。自身が未婚であることから、冷徹な観察者として徹底できたのかも(^^ゞ
 美人なのに、もったいない!

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