さだまさしコミュのまほろば

やまとは国のまほろば　たたなづく青がき　山ごもれる大和し美し
　古事記では倭建命、日本書紀ではその父１２代景行天皇が歌ったとされているとても美しい歌。

　その大和には現在、航空自衛隊幹部候補生学校（奈良基地）があり、この春防衛大を卒業した息子が入校し、その入校式が４月４日に行われ、妻と参列した。
　３４年前、ファイターパイロットを夢見ていた私も東京の一般大を卒業し、この幹部候補生学校の門をくぐった、なつかしい、本庁舎や講堂は新しくなっているが、住んでいた学生隊舎や教場棟は当時のままだ。
　３４年前、まだ２２～２３歳の私には地元に彼女がいた。
　大学を卒業したら地元に戻ると言っていたが、どうしても戦闘機を諦められなかった。
　薬学部を卒業し、地元で薬剤師を目指した君。
　遠い明日（戦闘機乗り）しか見えない僕と、足元のぬかるみ（地元での薬剤師）を気に病む君。
　結ぶ手と手、蜘蛛の糸は切れた。
　君は待つと言ってくれていた、でもそれは大学を卒業し地元に戻るまでの間、黒髪に霜の降るまでではなかった、そう約束を破ったのは僕の方。
　彼女に振られた後、夕暮れに奈良公園周辺を一人で散策した、私の頭の中では「まほろば」がリフレインしていた。
　時は逝き、いくつもの初恋を過ごして、いくつもの記念日を刻んで２５年前に結婚した妻と近鉄に乗って大和路を旅する。
　二人の宝物の晴れ姿を観て午餐会、息子に「俺の時は、俺はその時、頑張るしかないんだ」等一方的に話しかけ、息子は苦笑い。
　翌日、妻を連れて奈良観光。
　ここが飛火野、あれが春日山、春日大社だよ。
　「あのね、いつものことなんやけど、あなたについて歩くの疲れるとよ」
　