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ラーマーヤナコミュの続・ラーマーヤナ

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◎続・ラーマーヤナ(『パドマ・プラーナ』より)



 悪魔ラーヴァナを滅ぼした後、ラーマは、シーターとラクシュマナと共にアヨーディヤーに帰還された。そこで彼は、理想的な方法でアヨーディヤーを約1万年治められのだった。

 ある日、大聖アガスティヤがラーマに会いに王宮を尋ねた。
 ラーマはアガスティヤにこう尋ねた。

「神々を苦しめたラーヴァナの一族の起源を知りとうございます。」

 アガスティヤはこう答えた。

「ヴィシュラヴァというブラフマー神の孫がおりました。
 そして彼の父は聖仙プラスティヤであります。
 ヴィシュラヴァには二人の妻――マンダーキニーとカイカシーがおりました。
 マンダーキニーの息子にはクベーラがおり、カイカシーの息子にはラーヴァナ、クンバカルナ、ヴィビーシャナがおりました。
 そしてクベーラがランカーを支配したのです。
 
 ある日クベーラは、プシュパカ・ヴィマナ(天の飛行船)に乗った両親に会いに行きました。
 そしてランカーに戻ってくると、クベーラのその王族に相応しい風貌に感銘を受けたラーヴァナは、カイカシーにこう尋ねたのです。

『あの者は誰でありますか?
 どこからあのような素晴らしい飛行船を手に入れたのでしょうか?』

 カイカシーはラーヴァナに、クベーラが異母兄弟であることを明かしました。
 彼女は言いました。

『クベーラはお前の叔母さんマンダーキニーの息子なのよ。
 マンダーキニーはクベーラの日頃の行いを見て、鼻高々に思っているようですね。
 しかし私は、あなたの取るに足らない生活ぶりを恥ずかしく思っています。あなたは虫けら同然です。』

 そこでラーヴァナは、誰にも負けない力と権力を手に入れて、母親の意見が誤りだということを分からせてやろうと心に決めました。
 そして森へ行き、一万年間片足で立つという苦行を行ったのです。
 彼は太陽を凝視し、一瞬たりともそこから眼をそらしませんでした。
 クンバカルナとヴィビーシャナも同じように苦行を行いました。

 そして遂にブラフマー神はお喜びになり、ラーヴァナに広大な王国を授けたのです。
 それからラーヴァナは、異母兄弟のクベーラを苦しめ始めました。彼はクベーラのプシュパカ・ヴィマナを奪い取り、彼をランカーから追放しました。そして次は目を神々に向けると、彼らを天界から追い出したのです。
 神々がブラフマー神に助けを求めに行くと、彼は神々をシヴァ神のもとに連れて行きました。
 しかしシヴァ神でさえも、不屈のラーヴァナを抑制する手段が分からず、最終的に彼ら全員でヴィシュヌ神のもとへと行き、彼に助けを求めたのです。
 
 主ヴィシュヌはこうおっしゃって彼らに請け合いました。

『私はラーマとして、アヨーディヤーと呼ばれる地に化身しよう。
 やがて、アヨーディヤーはダシャラタによって統治される。彼は三人の妃を持つが、息子に恵まれていないのだ。
 私はラーマとして化身する。
 心配するな! 私がラーヴァナという厄介者を滅ぼしてやろう。』」

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 そして聖仙アガスティヤはラーマに、ラーヴァナは「ブラフマラクシャス」というカーストであると話した。

 会話の中で、主ラーマは、ラーヴァナを殺したことに対して大変な悲哀を表された。ラーヴァナはブラーフマナの息子だったからである。(ブラーフマナの殺生は大変な罪)
 アガスティヤは主ラーマに、「あなたにとっては何の過ちもありません」と言ったが、それでもアシュヴァメーダ・ヤジュニャの儀式をやるように提案したのだった。
 彼はアシュヴァメーダ・ヤジュニャの儀式についてこう述べた。

「まず白い馬を用意し、ヴァイシャカ・プールニマの日にそれを礼拝した後、その馬を自由に放つのです。
 そしてその額にあなたの名と他の詳細が書かれたメモ書きを結び付けてください。
 そして護衛たちはその馬の行くところについて行きます。
 あなたはその馬を取り押さえた王と戦争をしなければなりません。
 そしてその馬が放たれた場所から、その同じところに戻ってくるまで、あなたは独り身の生活を送らなければならないのです。
 習わしでは、アシュヴァメーダ・ヤジュニャが完了するまで、アシュヴァメーダを執り行う者は慈善行為に没頭しなければなりません。」

 シュリー・ラーマはアシュヴァメーダ・ヤジュニャを執り行うことに同意し、アガスティヤに馬小屋に行って、それに最適な馬を選んでくるように頼んだ。
 その後、必要な道具がすべてそろうと、ラーマは、聖仙アガスティヤと共にサラユ河の岸辺へと向かった。
 そこでラーマは黄金の鋤を使って、儀式のための土俵を作り、多くの宮殿のような建物が建てられたのだった。
 大聖者たちが皆招かれ、主ラーマにしきりに会いたがっているナーラダ、アジタ、パルヴァタ、カピラ、アンギーラ、ヴィヤーサ、アトリ、ヤージュニャヴァルキャ、シュカデーヴァ等の無数の者たちも同様にアヨーディヤーにやって来た。
 主ラーマは彼らに牛や金などの褒美を与え、その後に彼らは皆一緒に座を取った。そして主ラーマは大聖仙たちに質問をし、彼らはその返答に、さまざまな題目に関する教えを彼に与えたのだった。

 数日後、聖仙ヴァシシュタは、馬を放す時が来たことをラーマに告げた。
 そこでラーマはラクシュマナにその馬を連れてくるように命じられた。
 そしてラクシュマナは軍隊の将兵たちにそのことを話し、馬を護衛するために旅立つように命じた。
 将兵のリーダーであるカーラジットは、犠牲になる馬を連れてきた。その馬は非常に美しく飾られ、そこで必要な儀式が為されたのだった。
 その馬が勝手にあちらこちらをさまようであろうという理由から、シャトルグナがその馬の護衛役に命じられた。
 そして遂に、馬が解き放たれた。
 ラーマはシャトルグナに、馬について行き、その馬を捕獲しようとする者たちを討つように命じられたのだった。



※アシュヴァメーダ・ヤジュニャ(馬祀祭)とは古代インドで行われていた祭祀のひとつで、国王の絶大な権力を示すために催す国家的祭典。まず馬を1頭選んで清め、その馬を北東の方角に放して一年間自由に歩き回らせ、王子たちが軍隊を率いてその後を追う。一年たったらその馬を連れて帰って、殺して、王妃がその死骸と一晩を共にする。そして次の朝、馬は切断されてみんなに分配される。これで馬祀祭は完了するのだが、もし馬が放浪中に他国に入ってしまった場合は、その国と戦争を行わなければならない。なぜなら馬が移動した範囲が全て馬祀祭を行った王のものとなるためだ。また、その馬が他国の軍に捕らえられてしまったら祭祀を行えなくなり、物笑いの種となって国王の権威は失墜する。祭祀を行う王にとっても、その近隣諸国にとっても命懸けの儀式である。
 バラタの息子プシュカーラは主ラーマの手から剣を受け取り、シャトルグナの後方を護衛した。
 そのときラーマは、ハヌマーンにも同様にシャトルグナを守護しに行くように命じられたのだった。
 馬は東へ向かい、幾多の王国を通り過ぎたが、主ラーマの武勇への敬意から、誰もその馬を捕えようとする者はいなかった。
 遂にその馬はスマダ王が治める王都アヒッチャトラに到着した。
 その馬はそこの美しい庭園に入り、シャトルグナもそれについて行った。
 その庭園の中で、シャトルグナは美しい寺院を見つけた。彼は彼の大臣スマティに、それについて尋ねた。
 そしてスマティはこう説明した。

「これはカーマクシ女神の寺院でございます。この女神はスマダ王によって礼拝され、この都を守護するためにここに宿っておられるのです。」

 大臣はシャトルグナに、この女神に敬意を払うように提案した。
 シャトルグナはスマティにスマダ王について尋ね、スマティ大臣はこのように説明した。

「スマダは敵国の王に両親を殺された後、森へ行っていくらかの苦行を行い、バーヴァニー女神(シヴァ神の妻)を瞑想しておりました。
 そこで彼の苦行の力を恐れ、インドラ神が彼の苦行を妨害しようと、多くのアプラサスたちと共にカーマ神を送ったのです。
 しかし、天女の前でも王は断固たる意志を崩しませんでした。
 遂に、カーマクシ女神が王の前に現れ、彼に助言したのです。――未来際において、主ラーマの弟が馬を追って王国にやって来る。そのときに彼に同行しなさい――と。」

 シャトルグナはこれを聞いて喜んだ。
 
 一方、王室に座っていたスマダ王は、馬が都にやって来たという知らせを使者から聞いた。
 王は、カーマクシ女神が予言した主ラーマの馬はいつやって来るのかと常に考えていたので、シャトルグナとその従者たちに最高の王家のもてなしをした。
 そしてスマダ王はシャトルグナとプシュカーラを象に乗せて、華々しく都へと招いたのだった。



 三日間そこにとどまった後に、シャトルグナは馬を追いかけてそこを発った。
 馬は幾多の聖者たちが住む場所を通って進んでいたので、シャトルグナは至る所で、兄ラーマの栄光が歌い称えられているのを聞いたのだった。
 ある日、馬は聖仙チャヴァナのアシュラムに入っていった。
 そしてシャトルグナも馬を追いかけてその庵に入ると、スカニャの横に座っているチャヴァナと出会い、自らを主ラーマの弟であると彼に自己紹介をしたのだった。
 会話の中でシャトルグナは、チャヴァナをラーマのアシュヴァメーダ・ヤジュニャに招待し、ハヌマーンにその聖仙をアヨーディヤーへと連れて行くように命じた。
 その後、馬はさまよい続け、ニーラ山に到着した。
 ダマナという名のある王の息子は、そこで狩りをしていた。
 彼はその馬を見つけると、部下にその馬を捕獲させたのだった。
 ダマナはその馬の頭にあったメモを読んだ。それにはこう書いてあった。

「ダシャラタという名の王がいた。
 ラーマバドラは彼の息子であり、弓の腕前において彼に並ぶ者はいない。
 彼はこの馬を放ち、その弟シャトルグナがそれを護衛している。
 自分を偉大なる戦士であると心得る者たちは、その馬を捕まえるがよい。しかしシャトルグナは確実に容易く、その馬を解放するであろう。
 さもなければ、戦わずにラーマチャンドラの御足に頭を下げたまえ。」

 王子は考えた。

「ラーマだけが弓術の達人であって、われわれは違うだと?」

 彼は従者たちに戦の準備をし、馬を都に運ぶように命じた。

 そのとき、馬を守る者たちはその場所に到着した。
 シャトルグナと同伴したプラタパグティヤは、敵対する軍隊の挑戦を受け入れたのだった。
 かくして、ダマナとプラタパグティヤの凄まじい戦いの火蓋が切って落とされた。

 最終的に、ダマナはプラタパグティヤの胸を矢で貫き、意識を失ったその王は、戦場から御者に運び去られた。
 その王を敗北させると、ダマナは、シャトルグナが来るのを待った。
 シャトルグナは、彼の軍隊が大量に殺戮されたのを見ると激怒し、まず最初にバラタの息子プシュカーラを戦いに送った。
 凄まじい戦闘の後、プシュカーラはなんとかダマナの胸を矢で貫いたのだった。
 そしてダマナが意識を失ったのを見ると、その御者がダマナを戦場から運び去り、彼の軍隊は都へと退散していった。
 それからスバーフ王が戦場へと赴き、勇ましく戦ったが、ついには敗北し、シャトルグナに降参したのであった。
 馬がさまよい歩き続ける一方、シャトルグナとその仲間たちは、ラーヴァナの友であり、彼の復讐を望むヴィデュンマリ率いる多くの悪魔たちと戦っていた。
 そしてあるとき、馬はレーヴァ河の岸に来ると、その河に飛び込み、二度と水面に浮かんでこなかったのだった。
 馬の護衛たちは、どうしたらよいかわからなくなった。
 そしてようやくシャトルグナがそこに到着し、起こったことを聞くと、彼はプシュカーラとハヌマーンと共に河の中へと入っていった。
 その河の中には、多くの素晴らしい庭園がある美しい都があった。
 ラーマの馬はそこで黄金の柱にくくりつけられていた。
 そのすぐ近くには、なんとも美しい多くの女性たちがいて、法螺貝の上に座っている女王に仕えていた。
 彼女たちはシャトルグナとその連れたちを見つけると、その女王にこう言った。

「あの三人の連中どもは、あなた様のごちそうとなりましょう。
 奴らは実に栄養がありそうです。奴らの血は、きっとたいそう美味なことに違いありませぬ。」


 これを聞くとその女王は笑った。

 三人は、そのまばゆく輝く女たちに近づき、敬意を示した。
 するとその女王はこう言った。

「ここに来られた御身らは何者か?
 このわが都はデーヴァたちでさえも近づき難い。
 ここに来た者は、二度と帰ることはできぬのだ。
 この馬は誰のものか?
 どうか、この私にすべてを教えてくれたまえ。」

 ハヌマーンはこう答えた。

「われらはシュリー・ラーマチャンドラ王の召使いである。この馬はラーマ様のものだ。
 われらが王は今、アシュヴァメーダを執り行なっておられる。
 さあ、その馬を放したまえ。われわれは皆、武器の扱いに長けている。馬の放浪の邪魔をする者は始末するであろう。」

 女王は笑ってこう言った。

「私に捕らえられたこの馬を放せる者など誰もおらぬ。
 だが、心配するな。私もまたシュリー・ラーマ様のしもべなのだ。
 私は今、この馬がラーマ様のものであると理解したゆえ、己を犯罪者であると心得る。ラーマ様よ、どうか私をお許しください。
 さて、御身らの王を喜ばせたいゆえ、汝ら願いを何か叶えてあげよう。私に何か願い事を言いなさい。」

 するとハヌマーンはこう答えた。

「ラーマ様の御慈悲により、われわれは、一切のものが素晴らしいものであると理解させていただきました。
 それでも、この恩寵を御身にお願いいたします。どうか、われわれが何度生まれ変わっても、主としてのラーマ様にお仕えすることができますように。」

 すると女王は再び笑って、こう言った。

「御身の望むものはすべて確実に叶うであろう。
 後にシヴァ神の守護の下にあるヴィーラマニ王が、御身らの馬を捕まえるであろう。さあ、その王に勝利することができるよう、御身らは私から素晴らしい武器を受け取りたまえ。
 シャトルグナよ、御身は馬車に乗ったヴィーラマニと、一対一で戦わねばならぬ。
 御身がこの武器を放てば、その王はこの馬が真にラーマ様の所有物であることを悟り、自分から進んでそれを御身に返してくれるであろう。」

 シャトルグナは、女王からその素晴らしい武器を受け取り、馬を連れて河から岸へと上がった。
 これを見て、河のそばで待っていた兵隊たちは皆、非常に喜んだのだった。
 馬はしばらく、思いのままに歩きさまようと、デーヴァルーパ付近に来た。
 この都は何とも裕福で、一般民衆の家でさえもが銀でできていた。
 その王の名をヴィーラマニといい、その王の息子をルクマンガダといった。
 ある日、ルクマンガダは、多くの美しい女性たちに囲まれて森へ行った。
 その魅惑的な雰囲気の中、何人かの女性たちは踊りで王子を喜ばせ、他の女性たちは歌で、また他の女性たちは愛情こもった抱擁によって彼を喜ばせた。
 ちょうどそのとき、ラーマの馬がそこに来た。
 その馬を見ると、女性たちは王子にこのように願った。

「愛しき王子様、あの愛らしい馬を捕まえてください。
 ごらんください、あの額の上に黄金のメモ書きがありますわ。」

 ルクマンガダは片手で容易くその馬を捕まえ、そのメモ書きをその女性たちに読んで聞かせた。
 そして彼はこう言った。

「ラーマとは誰だ?
 わが父君は最強の王であり、シヴァ神によって守護されておられる。
 わが父君がアシュヴァメーダ・ヤジュニャを執り行えるよう、この馬をわれわれの馬小屋に連れて行きなさい。」

 そうして、王子はその妻たちと共に都へと戻り、馬をその父に捧げたのだった。
  
 非常に知性の高いヴィーラマニ王は、ことの次第を聞いても、その行為に同意せず、自らの息子は盗人のような行いを為したのだと心中に思った。


 ヴィーラマニは、馬を連れてシヴァ神に助言を求めに行った。
 マハーデーヴァは王にこうおっしゃった。

「よくやった。今から大戦争が起こるだろう。それによって、私は常に瞑想しているわが主ラーマにまみえることができるのだ。
 ラーマは私の主であるが、私はおまえの守護神であるから、三億三千万の神々でさえも、おまえからは馬を奪えないうようにしてやろう。」
 一方シャトルグナは、馬が見つからないので、大臣のスマティに問い、彼はこう答えた。

「この地域の王はヴィーラマニでございます。」

 大臣はまたシャトルグナに、その王はシヴァ神に直接に守護されているのだと警告した。
 

 スマティがこのように話している間に、ヴィーラマニ王は兵隊を配置し、シャトルグナと戦う準備を整えていた。
 その後すぐに、シャトルグナは、戦をしようと近づいてくる巨大な軍隊に気づいたのだった。
 スマティはシャトルグナに、彼がシヴァ神と戦を交えられるよう、プシュカーラをヴィーラマニ王と戦わせるよう助言した。
 まず最初に、ルクマンガダがプシュカーラと戦った。熾烈な戦いの後に、プシュカーラはある武器を放ってルクマンガダの馬車を焼き、その王子を戦場で気絶させたのだった。
 息子の敗北を目の当たりにすると、ヴィーラマニは仇を討ちに、怒りながら近づいてきた。
 ハヌマーンはヴィーラマニに突進していったが、プシュカーラは彼を止め、この敵は全く案ずるに値しないと言った。
 そこでハヌマーンは攻撃を止め、プシュカーラがヴィーラマニと対決したのだった。
 ヴィーラマニ王は言った。

「おまえはただの子供ではあるまいか。
 私と戦うでない。私はたいそう怒っておる。私は戦において無敵なのだ!」

 プシュカーラはこう答えた。

「私を子供だとおっしゃいますか。ならば私は御身をご老人だと申そう。
 私はすでに御身のご子息を敗北させた。今度は御身を馬車からたたき落として差し上げよう。」
 恐ろしい戦いの火蓋が切って落とされた。両軍には無数の戦死者が出た。
 プシュカーラとヴィーラマニは互いに大いに苦戦し合ったが、ついにヴィーラマニ王は胸に強烈な矢を食らい、気を失って馬車から転落したのだった。

 かくして、プシュカーラはまた勝利を獲得した。
 そして信者たちの敗北を眼にすると、シヴァ神はヴィーラバドラをプシュカーラとの戦いに送り、ナンディをハヌマーンとの戦闘に送り出した。
 凄まじい戦闘の後、ヴィーラバドラがプシュカーラの馬車を破壊すると、プシュカーラはその馬車から降りた。
 そして二人の偉大なる戦士は拳同士で戦ったのだった。
 
 実にその戦いは数日間、昼も夜も休まずに続いた。
 五日目に、ヴィーラバドラはプシュカーラをつかみ、戦場の宙に高く飛び上がった。そしてついには、プシュカーラを地面に投げつけ、三叉戟でその首を切断したのだった。

 そして次に、シヴァ神がシャトルグナに戦いを挑んだ。
 このようにまた、大いなる戦いが両者の間で始まり、それは実に十一日間も続いたのだった。
 十二日目に、シャトルグナはブラフマ・アストラ(ブラフマーの武器)を放ったが、その報復として、シヴァ神は恐ろしい矢をシャトルグナの胸に放った。
 これによってシャトルグナは意識を失い、ハヌマーンが怒ってシヴァ神と戦を交えにやって来たのだった。 

 ハヌマーンは言った。

「ルドラよ、御身は信条に反しておられる。
 かつて私は、御身は常にシュリー・ラーマ様の御足を瞑想していると伺ったことがあります。しかし今、これが誤った情報であったと分かりました!
 この偽りの報いとして、私はまさにこの日に、御身をこの戦場の地に沈めて差し上げよう。」

 こう言うと、ハヌマーンはシヴァ神に向かって巨石を投げつけ、彼の馬車を粉砕した。
 すると、ナンディがそこに来て、シヴァ神に背中に乗るように懇願した。
 次にシヴァ神が三叉戟を投げつけたが、ハヌマーンはそれをキャッチし、粉々に砕いた。
 戦いは、両者が武器を一斉に投げ合う形で続いていった。


 遂にハヌマーンが尻尾でシヴァ神を取り囲むと、石や山や樹で彼に猛攻撃を仕掛けた。
 これにナンディは恐怖し、シヴァ神もまた混乱した。
 シヴァ神はハヌマーンにこう言った。

「御身は偉大なる功績を果たした!
 私は非常に嬉しい。ゆえに、何か私に祝福を請いなさい。」

 ハヌマーンは笑みを浮かべてこう答えた。

「ラーマ様の恩寵により、私は必要なものはすべて得ております。
 けれども私はこれを懇願いたします。――プシュカーラが死に、シャトルグナが意識を失ってしまいました。どうか、幽霊やハゲタカや動物たちが彼らの肉体を引きずっていって食べないよう、これら地に倒れた英雄たちを皆お守りください。
 私はドローナ山を持って来ます。それには生命を生き返らせる薬草がたくさん生えております。」

 そしてシヴァ神はそれに同意し、ハヌマーンは急いで乳海へ行き、ドローナ山を持って戦場に戻ってきた。
 ドローナ山を守護しているデーヴァたちは怒って武器の雨を浴びせて、ハヌマーンに攻撃を仕掛けた。ハヌマーンは彼らを容易く撃退し、彼らはインドラのもとに保護を求めに行ったのだった。
 天の王インドラは、ハヌマーンのやったことを聞くと、デーヴァたちを呼び集め、彼らにその巨大な猿を縛りつけ、捕虜として連れてくるように命じた。
 そしてデーヴァたちはハヌマーンに攻撃を仕掛けたが、いとも容易く打ち負かされたのだった。
 デーヴァたちはインドラのもとに戻ってくると、事の次第を告げた。
 天界の王インドラは恐れをなし、ブリハスパティのもとへと行って、その猿の正体を尋ねた。
 ブリハスパティはインドラにこう告げた。

「彼はラーヴァナとクンバカルナを滅ぼされた御方の召使いだ。
 名をハヌマーンといい、尻尾でランカーを焼き尽くした。
 彼は戦場で倒れた者たちを生き返らせるために、ドローナ山を持って行ったのだよ。
 百年間ハヌマーンと戦おうとも、おまえは彼に勝つことはできないだろう。
 ゆえに、彼が必要としている薬草を彼に与えるべきだ。」 


 これを聞くと、インドラは恐怖を捨てた。
 その後、ブリハスパティはインドラとデーヴァたちに囲まれながら、ハヌマーンのもとへと向かった。
 ブリハスパティはデーヴァたちの代わりに謝り、ハヌマーンに怒りを捨てるように懇願したのであった。
 そしてハヌマーンは戦場につくと、プシュカーラのもとへと行き、薬草をその胸に塗り、彼が生き返るようにシュリー・ラーマに祈った。
 するとプシュカーラは起き上がり、怒りながら「ヴィーラバドラは何処に行ったのだ!」と言った。 
 次にハヌマーンはシャトルグナのもとへと行き、薬草をその胸に塗ると、再び祈った。
 するとすぐにシャトルグナは起き上がり、「シヴァ神は何処だ?」と言ったのであった。


 その後、ハヌマーンは負傷した兵隊や死に倒れた兵隊たち全員を生き返らせた。

 そして戦争が再開された。

 プシュカーラはヴィーラバドラに攻撃を仕掛け、ハヌマーンはナンディと戦い、そしてシャトルグナは再びシヴァ神と対決したのだった。
 シャトルグナがシヴァ神に近づいていくと、ヴィーラマニ王が彼の行く先を封じた。

 シャトルグナは、シュリー・ラーマの女性信者から受け取った武器のことを思い出した。
 そしてその素晴らしい武器がヴィーラマニの胸に当たり、彼は意識を失った。
 シヴァ神が王の援助に来ると、シャトルグナが彼に攻撃を仕掛けた。
 神々と阿修羅との戦争でも絶対に見られないような、武器の投げ合いの驚くべき戦いが始まった。
 シャトルグナは窮地に陥った。
 そこでハヌマーンは、シュリー・ラーマを瞑想するようにと助言した。
 シャトルグナは祈った。

「おお、わが主よ、わが兄上よ、シヴァ神がこの戦でこの命を取ろうとしております。どうか、あなたの矢でわが身をお守りください。
 おお、ラーマ様、多くの信者たちが、あなたの聖なる御名を唱えるだけで、生死の大海を渡ってゆきました。」

 そのときだった。シュリー・ラーマがその戦場に現れた。
 シャトルグナは兄を目の当たりにして、驚嘆した。
 するとシヴァ神がやって来て、シュリー・ラーマの御足にひれ伏して、祈りを捧げたのだった。
 シヴァ神は、自分の信者のために戦を起こしたことに対して許しを請い、シュリー・ラーマに、ヴィーラマニ王はすぐに馬を返すであろうことを請け合った。
 シュリー・ラーマはこう返答された。

「信者を守ることは神の使命だ。ゆえに、あなたが為したことは誤りではない。
 ああ、シヴァよ。あなたは私のハートに宿り、私はあなたのハートに宿る。
 ゆえに、われわれに区別はない。
 けがれた心を持った愚か者のみが、われわれに区別を設けるのだ。」



 そして彼はヴィーラマニ王に触れて、彼の意識を回復させた。
 その後、その王は馬を返し、実にシヴァ神の要請によって、自らの王国全土をシュリー・ラーマへの奉仕のために捧げたのだった。
 そして賛美を受けると、シュリー・ラーマは突如として御姿を消したのだった。
 馬がまたさまよい歩き始めると、ヴィーラマニ王は自らの軍隊と共に、シャトルグナの御供をした。


 そしてある日、ある不思議なことが起こった。
 馬が像のように硬直してしまい、動かなくなってしまったのであった。
 護衛たちは鞭でその馬を打ったのだが、依然として動かなかった。
 シャトルグナはそれを聞くと、プシュカーラにその馬を持ち上げさせた。しかしその馬は硬直したままであった。
 そこでハヌマーンはその馬を引きずってみたが、それでも像のように動かなかった。
 シャトルグナはスマティ大臣のところへ行き、この不可思議な出来事について尋ねてみた。
 スマティは、「これは強力な聖仙の仕業に違いありません」と言い、このサードゥを探すために兵隊たちを遣った。
 そして遂に、遠く離れたところに聖仙シャウナカの庵があると知り、シャトルグナはハヌマーンとプシュカーラとその他数人で、そこへ向かったのだった。


 聖仙はシャトルグナに素晴らしいもてなしをし、訪れた理由を尋ねた。
 そこでシャトルグナは、不可思議にもラーマの馬が麻痺状態になったということを説明した。
 一瞬考えた後に、聖仙はこう答えた。

「かつて、カーヴェーリー河の畔で苦行を行なっていた、サーットウィカという名の大聖仙がおりました。
 ある日、死神がサーットウィカの前にやってきて、彼をスメール山の頂上へと連れて行ったのです。
 そこには素晴らしきジャンブの樹があり、ジャンババティという河が流れておりました。
 そこでサーットウィカは欲望のままに、多くの天女たちとの交流を楽しんだのです。 
 けれども彼は非常にプライドが高かかったゆえに、傲慢にもその天女たちを見下したのです。その結果として、彼は聖仙たちに呪いをかけられ、悪魔となってしまいました。
 彼が許しを請うと、その聖仙たちはこう言いました。

『ラーマの馬を硬直させたならば、おまえはラーマのリーラーを聞くことができるであろう。その後に、おまえはわれわれの呪いから解放されるであろう。』

と。」

 そしてシャウナカはシャトルグナに、その悪魔のもとへ行って、ラーマの遊戯を語り聞かせて、彼を聖仙たちの呪いから解放させてくれるように要請した。
 そこでシャトルグナは硬直した馬の近くに行き、ラーマの遊戯を語り始めた。すると突然、神聖なる存在が現れ、プシュパカ(空飛ぶ天の乗り物)に乗って天へと昇っていったのであった。
 そしてその存在はこう言った。

「私はラーマのリーラーを聞くことで、聖仙たちの呪いから解放されました。あなたの御慈悲により、やっと天界に帰ることができます。」

 そして馬は硬直状態から自由となり、またさまよい歩き始めたのであった。
 遂に、七ヶ月が過ぎた。馬はシュリー・ラーマの偉大なる信者であるスラタの王国へと行った。
 王の召使いはその馬に気づくと、そのことをその王に報告した。
 彼らはこう言った。

「この馬はアヨーディヤーの王ラーマのものであります。
 捕まえてはいかがですか?
 非常に愛らしゅうございます。」


 スラタは、そうするように命じてこう言った。

「ラーマにまみえることができるということは、素晴らしい幸運である。
 私は馬を捕まえ、ラーマ様がここに来られたときにそれを解放しよう。
 このようにして、私の人生の目的は達成されるのだ。」

 そして王の召使いは、ラーマの馬を捕まえたのだった。
 これを知ると、シャトルグナはスマティにその地域の王のことについて尋ねた。
 その返答で、スマティはシャトルグナに、ラーマの忠実な信者であるスラタ王のことを説明し、使者としてアンガダを送るように助言した。
 そしてアンガダはスラタのところへ行くと、馬を返すように助言した。
 スラタ王はこう答えた。

「私はそれと承知の上でラーマ様の馬を捕まえたのだ。
 シャトルグナへの恐れからは、その馬を放すつもりはない。
 しかしラーマ様ご自身がここに来てくだされば、この馬を返すばかりか、彼への奉仕としてわが王国全土を捧げよう。
 ラーマ様が来てくださらなければ、私は容易くシャトルグナとその従者たちを打ち負かして差し上げよう。」

 これを聞いて、アンガダは笑ってこう言った。

「御身は年をとって、ぼけておられるのではありませぬか!?
 御身はシャトルグナと彼のご兄弟の息子プシュカーラのことを大いに見くびっていらっしゃる。
 では、ハヌマーンに関しては何とおっしゃるか?
 彼らに比べれば、御身など、ただの蚊みたいなものであろう!
 仮にもご自分とご子息方の幸福を望むならば、馬を返したまえ。」

 スラタ王は依然として聞く耳をもたず、自分はハヌマーンよりも強いと思っていた。
 アンガダはシャトルグナのもとへと戻り、交わした話をすべて伝えた。
 その後に、大いなる戦いが始まったのであった。
 スラタの息子チャンパカは、プシュカーラと戦った。
 勇敢なる戦闘の後、チャンパカが矢を放ち、それがプシュカーラの胸に当たった。そしてプシュカーラは縛り上げられてしまった。
 そしてチャンパカはプシュカーラを馬車に乗せた。
 これを見てシャトルグナは、プシュカーラを救出するようハヌマーンに命じ、両者は戦い始めた。
 チャンパカは驚いたことに、ハヌマーンのすべての攻撃を阻止してしまった。
 激怒したハヌマーンは、腕でチャンパカをつかむと、彼を空中戦に持ち込んだ。それでも、チャンパカは勇敢に戦ったのだった。
 しかし遂にハヌマーンは彼の足をつかんで、地面に投げつけ、気絶させた。
 こうしてハヌマーンはチャンパカからプシュカーラを解放し、使命を完了したのだった。

 スラタは腹を立ててハヌマーンに挑戦を挑み、そして無数の矢を放って彼を攻撃した。
 しかしハヌマーンはスラタの弓をつかみ、それを粉々に粉砕した。
 そして実に何度も何度も、スラタは新しい弓を手に取り、また、ハヌマーンは何度も何度もそれを壊したのだった。
 このようにして、八十本の弓が破壊された。
 そこで次にスラタはシャクティの武器でハヌマーンを攻撃した。
 お返しにハヌマーンは王の馬車を持ち上げて、彼を海へと運び始めたのだった。
 しかしスラタは棍棒で激しくハヌマーンの胸を打ったので、馬車は彼の手から落ち、壊れてしまった。
 スラタが再び別の馬車に乗ると、ハヌマーンはそれを粉々にした。
 実に四十九回も、馬車はこのように粉砕されたのだった。
 
 そこでスラタ王は怒り、パシュパタの武器を放つと、無数の幽霊、魔女、鬼たちが現れた。
 驚いたことにハヌマーンは、このシヴァ神の武器に縛られてしまったのだった。
 しかしシュリー・ラーマのことを心に思うと、その縄はたやすく破壊された。
 
 そこで遂にスラタは、弓にシュリー・ラーマの武器をつがえた。
 ハヌマーンはその武器に縛られてしまった。しかしハヌマーンは、自らの師ラーマへの尊敬から、その武器から逃れようとしようとすることさえもできなくなってしまった。

 そこでプシュカーラがやって来て、スラタを攻撃した。
 息をのむような戦いの後、スラタはプシュカーラを戦場で気絶させたのだった。

 とうとうシャトルグナが出てきて、スラタに挑んだ。
 熾烈な戦いの後、スラタが放った矢がシャトルグナの胸に当たり、彼は意識を失ってしまったのだった。
 これを見て、シャトルグナを補助していた他の戦士たちは逃走してしまった。
 そこでスグリーヴァがスラタ王に挑んだ。
 しかしすぐにスラタは、シュリー・ラーマの武器でスグリーヴァを縛ってしまった。

 その後、王宮にて、スラタがハヌマーンにこう語った。

「信者たちの守護者であられるラーマ様のことを、心から思ってくれたまえ。そうすればあの御方はここに来られ、君たちを解放してくれるだろう。そうしなければ、何年経ったとしても、私は君たちを放しはしない。」

 そこでハヌマーンは、解放を請うて、シュリー・ラーマに祈りを捧げた。
 
「おお、主よ。私はスラタに縛られてしまいました。
 あなたがここに来て、私を解放してくださらなかったなら、この世界の人々は、われわれをからかうでしょう。
 ゆえに、どうかすぐに来てください。」

 するとシュリー・ラーマが、ラクシュマナとバラタとと共に、プシュパカ(空飛ぶ天の乗り物)に乗って現れたのだった。
 スラタはラーマに、何百回も礼拝を捧げた。
 そしてラーマはスラタのもとへ行き、彼を抱擁したのだった。
 その後、ラーマは縛られていた愛しい信者たちを解放された。
 そして、実に意識を失っていたすべての戦士たちが、すぐに意識を取り戻したのだった。
 この後に、スラタは喜んで馬をラーマに捧げ、許しを請うた。
 
 シュリー・ラーマは三日間スラタの宮殿にとどまると、プシュパカに乗ってアヨーディヤーに帰って行かれたのだった。
 そしてチャンパカに都の管理を任せて、スラタはラーマの馬を護衛するために、シャトルグナと共に旅に出発した。
 思いのままにさまよい続け、その馬は遂にヴァールミーキーの庵へと行った。
 そしてシーターの息子のラヴァが、多くの聖仙と共に森で薪を集めていると、偶然にもその馬を見つけたのだった。
 ラヴァはその馬に登ると、その額にあったメモ書きを読んだ。
 それを読むと、ラヴァは腹を立てて聖仙たちにこう言った。

「このクシャトリヤの厚かましさを見てよ!
 このラーマって誰だい? シャトルグナって?
 この人たちは、力の弱い昆虫みたいだ!」

 こう言うと、ラヴァは馬を捕まえた。
 その後すぐに、馬の護衛がその場面に出くわし、何者かが馬を捕まえたと知った。
 するとラヴァは矢の雨を浴びせて、その護衛たちを撃退し、彼らはシャトルグナに助けを求めに向かったのであった。
 

 ここで、シュリー・ラーマが市民からの批評を聞いて、シーターを森へ追放した物語を述べよう。


 ラーマはある晩に、臣下たちが彼についてどう話しているかということを知るために、スパイを送った。
 あるスパイが裕福な男の家に行くと、そこでは美しい女性がその子供に乳をあげながらこのように言っていたのだった。

「息子よ、好きなだけお乳をお飲み。後ででは遅いのよ。
 ラーマ様がこの都の主なの。
 ここに生きる人々は、この世界にはもう生まれないでしょう。
 生まれ変わらなかったら、どこでママのお乳を飲めるのかしら?
 ラーマ様のことをいつも思っている人たちは、もう二度とママのお乳を飲むことはないのよ!」
 二人目のスパイは別の家に行き、長椅子に座っている美しい女性を見つけた。
 彼女はその夫にこう言っていた。

「あなたは第二のラーマ様のようです! とてもハンサムで、眼は蓮華の花弁のようであり、胸は広く、お強い。」

 その夫はこう答えた。

「おお、貞淑な女よ。おまえは王家の女性に相応しいように語ってくれた。
 しかし、ラーマ様と比べられる私は誰だね?
 あの御方と比べると、私などはただの虫けらにすぎないだろう。
 どうやってウサギとライオンを比べるというのだね?
 道ばたの泥水とガンガーを比べられるというのかね?」

 そこで敬虔な妻は愛情を込めてその夫を抱き締めたのだった。

 三人目のスパイがある家に行くと、そこではある女性がベッドの上に花びらを置き、それにサンダルウッドのペーストと樟脳を塗ってベッドを整えていた。
 このようにして愛の行為をするためにベッドを整えると、彼女は夫にこう言った。

「今準備が整いましたので、どうぞベッドに横になってください。
 あなたのような人々は喜びを受けるに相応しいのでございますが、ラーマ様に逆らう人々は違います。
 さあ、あの御方の恩寵によって得られたものをお楽しみください。
 私のような愛情こもった妻と、いろいろな花々がまき散らされたベッド、これらはラーマ様の恩寵のゆえであります。」

 彼女の夫はこう答えた。

「そうだな。私の有する者すべては、ラーマ様の御慈悲によるものだ。」


 四人目のスパイがある家に入ると、そこではある女性が楽器を演奏し、その夫がシュリー・ラーマの栄光を歌っていた。
 彼女は言った。

「私たちはラーマ様の都に暮らすことができて本当に幸運でありますね。だって、彼がご自分の息子のようにして私たちを守護してくださるのだもの。」 

 夫はこう言った。

「主ブラフマーの懇願により、主は人間として、カウサリヤー様のご子息としてお現れになった。
 彼は実際は三界の主なのだ。
 われわれはラーマ様の蓮華のような御顔を見ることができて幸運だな。
 ブラフマーのようなデーヴァでさえも、主を見ることは非常に稀である。」
 五人目のスパイがある家に入ると、ある夫と妻がサイコロ遊びをしていた。
 彼女はこう言った。

「全部私の勝ちだわ! さあ、どういたしますの?」

 こう言うと、彼女は喜んでその夫を抱き締めた。
 夫はこう答えた。

「美しい身体の魅力的な女よ、勝つのは私だ。
 私は常にラーマ様を思っている。
 すぐにおまえを打ち負かしてやるから、見ていなさい。」

 こう言うと、彼はサイコロを振り、勝利したのだった。
 それに喜んで、彼はこう言った。

「私の勝ちだ! ラーマ様を思う者は、敵を恐れることはないのだ。」

 そしてその愛情に溢れた夫は、その妻を求めて、強く抱き締めたのだった。


 六人目のスパイがある家に入ると、洗濯屋の男が怒りで目を真っ赤にして、その妻を蹴っていた。なぜなら彼女は一夜を別の男の家で過ごしてしまったのである。
 彼は言った。

「おまえなど、その男のところへ行って暮らすがよい!
 私はもうおまえを許さないからな。」

 その洗濯屋の母は、請い願ってこう言った。

「自分の妻を捨ててはいけませんよ!
 彼女は何の過ちも犯してはいないのよ。」

 怒った洗濯屋の男は、こう言い返した。

「私は別の男の家で夜を明かした嫁を連れ戻されたラーマ様ほど、偉大ではないのだからな!
 王であるあの御方は好きなようにできるだろうが、私はそのような妻など受け入れてなるものか。」

 これを聞いて、そのスパイは腹を立て、剣を抜いて、その洗濯屋の男を殺そうと思った。
 しかしそこで、彼はラーマの指示を思い出した。

「私の臣民は、誰も殺してはいけない。」

 ゆえに、彼は剣を鞘に収め、他のスパイたちが待つところへと向かったのだった。

 翌朝、王家の集会で、ラーマはスパイたちに、彼らが昨晩臣民たちから聞いてきたことを発表するようにおっしゃった。
 そこで嫌々ながら、遂に六番目のスパイは、あの洗濯屋の男が言ったことをラーマに知らせたのだった。
 ラーマはその知らせを聞いて非常にショックを受け、気絶して床に倒れた。
 そして落ち着きを取り戻すと、ラーマはバラタを呼び、彼にそのことのすべてを打ち明けたのだった。
 ラーマはバラタにこう尋ねた。

「私はどうすべきであろうか?
 自ら命を絶つべきだろうか? それともシーターを捨てるべきだろうか?」 
 バラタはその話にカンカンに腹を立て、その洗濯屋の男を殺しに行ことし、鋭利な剣を手に取った。
 そして彼は懸命にラーマにシーターの純潔さを説いたのだが、ラーマはこうおっしゃった。

「私の妻が純潔でけがれがないということなどは知っているさ。
 しかしそれでも、そのような陰口が広まってしまうことが気がかりであるから、私はシーターを追放しよう……。
 ああ、その鋭利な剣をとって私の首を切ってくれ! そうでなければ、シーターを森に追放する。」

 これを聞くと、バラタは気を失って倒れてしまった。
 ここで、その洗濯屋の男の前生の物語にさかのぼる。

 ――シーターは、供儀を執り行うためにジャナカ王が耕していた土地の畝または轍(シーター)から現れた。
 王は喜んでその少女を娘として受け入れたのだった。
 かつて、彼女が庭で女友達と遊んでいると、可愛らしい二匹の鸚鵡(おうむ)を見つけた。
 その男女の鸚鵡は、愛を溢れさせながら、シーターという名の女とラーマという名の男について話していた。
 その鸚鵡たちが自分のことを話しているのではないかと思い、シーターは女友達にその鸚鵡を捕まえるように命じた。
 その女友達がその鳥を捕まえると、シーターはこう尋ねた。

「あなたたちが話していたシーターとラーマって誰なの?
 どこでそのことを学んだのかしら?」

 その鸚鵡たちは、大聖ヴァールミーキーの庵でシュリー・ラーマの未来におけるリーラーを繰り返し聞いたのだと説明した。
 そして鸚鵡たちはシーターに、将来シュリー・ラーマの妻になるであろうということを告げたのだった。
 そこで鸚鵡たちはシーターを喜ばすために、シュリー・ラーマのリーラーを物語り始めた。
 シーターはその鸚鵡たちに、「一緒に暮らしましょう」と頼んだのだが、彼らは断り、森の中で自由に暮らすのに慣れているのだと言った。
 そしてメスの鸚鵡は、自分は妊娠しているのだと言った。
 彼女は子供が生まれたらまたここに返ってくると約束したのだが、シーターは放してあげなかった。
 そこでオスの鸚鵡がシーターに彼女を放すように懇願した。
 その返答にシーターは、オスの鸚鵡は帰ってもよいが、メスの鸚鵡はペットとして飼うと言った。
 しかしそのオスの鸚鵡は、妻を置いては帰るのは嫌だと言った。
 
 そこで、メスの鸚鵡はこう言ってジャナキーに呪いをかけたのだった。

「あなたが私を夫と引き離そうとしているように、あなたは将来、お腹に息子を宿すとき、ラーマと引き離されるでしょう!」

 そして実にそのように言って、ラーマのことを思い出すと、そのメスの鸚鵡は命を捨てたのだった。
 それに気が動転して、オスの鸚鵡は、
「私はラーマ様の都に、シュードラとして生まれるだろう。そして私の言葉によって、シーターは夫と引き離されるだろう!」
と言いながら、ガンガーに落ちていった。
 
 オスの鸚鵡はシーターを侮辱しながら死んだので、彼は次の生でクローダナ(怒り)という名の洗濯屋の男として生まれたのだった。
 さあ、それではまた話をアヨーディヤーに戻そう。

 バラタが気を失うと、ラーマは門番にシャトルグナを読んでくるように頼んだ。
 そしてラーマは、シーターを追放しようと決めたことをシャトルグナに話したのだった。
 これを聞くと、シャトルグナも気を失ってしまった。
 ようやく意識を取り戻すと、シャトルグナは何度も何度も、シーターを追放しようなどという御意思をお捨てになるよう、ラーマを説得した。
 しかしラーマは断固として意見を変えなかったので、シャトルグナは再び気を失ってしまった。
 次にラーマはラクシュマナを呼ぶと、彼にもこのようにしてそのことを話した。

「あの貞淑な女を森に捨ててきなさい。さもなければ剣で私を殺せ。」

 ラクシュマナはとうとう、こう言った。

「ラーマ様の命令に背いてはなりませぬゆえ、為されるべきでないことを為しましょう。
 私はあなたがおっしゃったことを遂行いたします。」

 かくして、ラクシュマナは森にシーターを捨てたのだった。
 そして彼女はヴァールミーキーの庵へ行き、そこでラーマの息子である双子のラヴァとクシャを生んだ。
 その双子は、ヴァールミーキーに弓の使い方を教わり、ヴェーダとラーマーヤナでイニシエートされたのだった。
 シャトルグナは、護衛から馬がラーマによく似た少年に捕まえられたことを聞くと、隊長のカーラジットに、すぐに軍隊を隊列させ、出発するように命じた。
 このようにして、カーラジットはラヴァのもとへ向かい、戦いを挑んだ。
 熾烈な戦いの後、ラヴァは剣でカーラジットの首を切断したのだった。
 生存者が戻ってきて、シャトルグナにその将兵の死と軍の敗北を告げると、彼は次にプシュカーラを戦いに送った。

 凄まじい決闘の後、プシュカーラはラヴァの矢に胸を貫かれ、馬車から戦場に落ちて意識を失った。
 
 次にハヌマーンが戦いを挑みにやって来た。
 その戦いの最中に、ハヌマーンは自分がラヴァに打ち勝つことができないことを悟り、シャトルグナに後を任せようと、気絶したふりをした。

 シャトルグナはラヴァを目の前にすると、まるでラーマの子供の頃に瓜二つであると思った。
 そして戦ったが、シャトルグナもラヴァに気絶させられて馬車から落とされた。 
 その後、スラタ王やヴィーラマニ王たちも戦いに加わった。

 そのすぐ後に、シャトルグナが意識を取り戻すと、彼は再びラヴァに戦いを挑んだ。
 シャトルグナは赤々と燃え上がる矢を弓弦につがえると、ラヴァは兄弟のクシャのことを思い出し、こう考えた。

「もし僕の兄弟がここにいたら、このシャトルグナとかいうやつに負けないのにな。」

 すると、その矢がラヴァの胸に当たり、彼は気を失った。
 そしてシャトルグナは意識を失ったラヴァを、自分の馬車に乗せたのだった。

 ヴァールミーキーの何人かの弟子たちがシーターのところに来て、今起こったことをすべて話した。
 息子が連れて行かれたということを聞くと、彼女は地面に倒れ込み、泣き出してしまった。
 ちょうどそのとき、何人かの聖仙たちと巡礼の地に行っていたクシャが、ヴァールミーキーの庵に戻ってきた。
 悲しみに打ちひしがれている母を見ると、クシャはその原因を尋ねた。
 母からすべてを聞くと、クシャはその敵と戦うために出発したのだった。
 こうしてシャトルグナはクシャと戦った。
 間もなくして強烈な矢が胸に当たり、シャトルグナは気絶して戦場に倒れた。
 そしてハヌマーンがクシャに戦いを挑んだが、すぐに気絶した。
 次にスグリーヴァが戦ったが、クシャの武器によって縛られてしまった。
 そこでラヴァとクシャはハヌマーンとスグリーヴァを一緒に縛り上げて、ヴァールミーキーの庵に引きずっていった。
 
 シーターは、ハヌマーンとスグリーヴァが自分の息子に縛られているのを見ると、笑って、息子たちにこう言った。

「このお猿さんたちの縄をすぐにほどきなさい。私が彼らを笑っていると知ってしまったら、きっと彼らは死んでしまうわ。
 彼はハヌマーン、そして彼はスグリーヴァというのよ。」

 シーターはラヴァとクシャにラーマの馬を捕まえてはならないと言い、ラーマが彼らの父親であることを告げたのだった。
 その返答に、ラヴァとクシャは、クシャトリヤならば、息子が父と戦おうが、弟子がその師と戦おうが、二言はないはずだと言った。
 しかしラヴァとクシャは母に従って、ハヌマーンとスグリーヴァを解放し、そして同様に馬も放した。
 そしてシーターは、シャトルグナが意識を取り戻すようにラーマに祈り、それはすぐに叶えられた。
 
 そこでスマティはシャトルグナに、今や馬が解放されたのだから、できるだけ早くアヨーディヤーに戻るべきだと助言した。
 馬とその護衛たちの帰還の知らせを聞くと、ラーマはシャトルグナをもてなすためにラクシュマナを送った。
 その後、ラーマは喜んで、その御足に礼拝するシャトルグナとプシュカーラを抱擁した。
 そしてラーマに頼まれて、スマティは、馬が歩きさまよっている間に起こったすべてのことを語ったのだった。 

 この話を聞くと、ラーマはそのヴァールミーキーの庵に住む二人の少年が自分の息子であることを理解した。
 そこでラーマは、アシュヴァメーダに出席するためにアヨーディヤーに来ていたヴァールミーキーのもとへと行き、その少年たちのことを聞いた。
 ヴァールミーキーはこう答えた。

「すべての人の中に住まうあなたが、どうしてこれを知らないといえましょうか?」

 そしてヴァールミーキーは、ラクシュマナがシーターを森に捨ててから起こったことのすべてをラーマに話したのだった。
 また、彼はラーマーヤナを書いて、それをラヴァとクシャに教えたことを説明した。
 ヴァールミーキーはラーマに、ラヴァとクシャと共にシーターをアヨーディヤーに連れて帰るように懇願した。
 かくしてラーマはラクシュマナを送って、シーターたちを連れ戻したのだった。



 その後、ヴァールミーキーはラヴァとクシャに、シュリー・ラーマの賛美をメロディーに合わせて唄うように指示した。
 皆は、魂のこもったその歌に感動し、シュリー・ラーマはラヴァとクシャを抱擁したのだった。

 そしてシーターはアヨーディヤーに戻ってくると、アシュヴァメーダの遂行のためにラーマの隣に座った。
 聖仙アガスティヤは、聖別された剣をラーマに手渡した。
 そしてその剣が馬の首に触れた瞬間に、その馬は神の姿に変わったのだった。
 ラーマに問われると、その天人はこう説明した。

「前生において、私は敬虔なブラーフマナでありましたが、その後、ヴェーダに反する行動をしてしまいました。
 実に私は不誠実に修行をしていたので、偽善の権化のようになってしまったのです。
 かつて聖仙ドゥルヴァーサが河辺に来られました。そのとき私は、人を騙そうという意志を持って苦行を行なっていたのです。
 私はその聖仙に何のもてなしもせず、何の礼拝もしませんでした。
 ドゥルヴァーサはそれに怒って、私にこう言いました。

『この偽善者め!
 おまえなど動物になってしまえ!』

 これを聞くと、私は正気に返り、聖仙の御足をつかみました。
 そこで彼は私にこう言いました。

『おまえはシュリー・ラーマの供儀で使われる馬となるだろう。
 彼がお前に触れるやいなや、お前は神の姿を得るであろう。』」


 そう言うと、その神は天へと昇っていったのだった。

 その後、シュリー・ラーマはもう二回、アシュヴァメーダ・ヤジュニャを行ない、彼の栄光は三界すべてに鳴り響いたのだった。






※この話の最後の別の説


 ヴァールミーキーは彼女の純潔を請け合い、シュリー・ラーマにシーターを受け入れるように懇願した。
 シュリー・ラーマはヴァールミーキーにこうおっしゃった。

「私はシーターの純潔を確信しています。しかしシーターは一般民衆を満足させるために、自らの純潔を証明しなくてはならないのです。」

 すると、シーターはこう言った。

「母なる大地よ、私が今まで一度もシュリー・ラーマ様以外の男性を思ったことがなければ、どうか、私を受け入れたまえ。」

 その一節を唱えると、大地が裂け、シーターはその裂け目の中に消えて行った。
 シュリー・ラーマの心は深い後悔の念でいっぱいになったが、シーターと分け離されて生きなければいけないということは運命なのだと考え、ラヴァとクシャと共にアヨーディヤーとへ帰還した。


 時が経つにつれ、カウサリヤー、スミトラー、カイケーイーたちが天界へと召された。
 シュリー・ラーマはさらに1万年、アヨーディヤーを治めた。
 
 ある日、カーラ(時=死)がやって来て、シュリー・ラーマは、肉体を捨てるときが来たことを感じた。
 一方ラクシュマナは、シュリー・ラーマが肉体を捨てることを心に決めたことに気づき、サラユ河でサマーディに入り、肉体を捨てた。
 シュリー・ラーマはラクシュマナとの死別の悲しみに耐えられず、ラヴァとクシャをそれぞれドワーラワティとクシャワティの王として任命すると、天に帰ることに決めた。

 そしてシュリー・ラーマは、アヨーディヤーから3ヨージャナ離れたところを流れるサラユ河に入っていったのだった。 

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