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レ・ミゼラブル  ビクトル・ユーゴー 作   豊島与志雄 訳...

レ・ミゼラブル  ビクトル・ユーゴー 作   豊島与志雄 訳  59 2016年10月30日 13:50
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     十 成功の続き


 ファンティーヌが解雇されたのは冬の末だった。
 そして夏が過ぎ、冬は再びきた。
 日は短く、仕事は少ない。冬、暖気もなく、光もなく、日中《にっちゅう》もなく、夕方はすぐ朝と接し、霧、薄明り、窓は灰色であって、物の象《すがた》もおぼろである。

 空は風窓のごとく、一日はあなぐらの中のようで、太陽も貧しい様子をしている。
 恐ろしい季節!
 冬は空の水を石となし、人の心をも石となす。
 その上ファンティーヌは債権者らに悩まされていた。

 彼女のもうける金はあまりにも少なかった。
 負債は大きくなっていた。
 金がこないのでテナルディエの所からは始終手紙をよこした。

 彼女はその中の文句に脅え、またその郵税に懐《ふところ》をいためた。
 ある日の手紙によると、小さなコゼットはこの冬の寒さに着物もつけていない、どうしても毛織の裾着がいるので、少なくともそのために十フラン送ってくれということだった。

 ファンティーヌはその手紙を受け取って、終日それを手に握りしめていた。
 その晩彼女は通りの片すみにある理髪店にはいって、櫛をぬき取った。
 美しい金髪は腰の所までたれ下がった。

 「みごとな髪ですね。」と理髪師は叫んだ。
 「いかほどなら買えますか。」と彼女は言った。
 「十フランなら。」
 「では切って下さい。」
 彼女はその金で毛糸編みの裾着を買って、それをテナルディエの所へ送った。

 その据着はテナルディエ夫婦を怒らした。
 彼らが求めていたのは金であった。
 彼らはその裾着をエポニーヌへ与えた。
 あわれなアルーエットは相変わらず寒さに震えていた。

 ファンティーヌは考えた。
 「私の子供はもう寒くあるまい、私の髪を着せてやったのだから。」
 そして彼女は小さな丸い帽子をかぶって毛の短くなった頭を隠していたが、それでもなおきれいに見えた。

 ファンティーヌの心のうちにはある暗い変化が起こっていた。
 もはや髪を束ねることもできないのを知った時に、周囲の者すべてを憎みはじめた。

 彼女は長い間皆の人とともにマドレーヌさんを尊敬していた。
 けれども、自分を追い払ったのは彼であり、自分の不幸の原因は彼であると、幾度もくり返して考えてるうちに、彼をもまた、そして特に彼を、憎むようになった。

 職工らが工場の門から出て来るころ、その前を通るような時、彼女はわざと笑ったり歌ったりしてみせた。
 そんなふうにしてある時彼女が笑い歌うのを見た一人の年取った女工は言った、「あの娘も終わりはよくないだろう。」

 ファンティーヌは情夫をこしらえた。手当たり次第にとらえた男で、愛するからではなく、ただ傲慢《ごうまん》と内心の憤激とからこしらえたのだった。
 やくざな男で、一種の乞食《こじき》音楽者で、浮浪の閑人《ひまじん》で、彼女を打擲《ちょうちゃく》し、彼女が彼とでき合った時のように嫌悪の情に満たされて、彼女を捨てて行ってしまった。

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