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国民統一戦線の探求コミュの矢部宏治著「知ってはいけない」この国を動かす「本当のルール」とは?

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「知ってはいけない」この国を動かす「本当のルール」とは?
矢部宏治著 (講談社現代新書 2017年8月20日刊)
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『はじめに』

それほどしょっちゅうではないのですが、私がテレビやラジオに出演して話をすると、すぐにネット上で、「また陰謀論か」「妄想もいいかげんにしろ」 「どうしてそんな偏(かたよ)った物の見方しかできないんだ」などと批判されることが、よくあります。
あまりいい気持ちはしませんが、だからといって腹は立ちません。
自分が調べて本に書いている内容について、いちばん「本当か?」と驚いているのは、じつは私自身だからです。
「これが自分の妄想なら、どんなに幸せだろう」いつもそう思っているのです。


事実か、それとも「特大の妄想」か

けれども本書をお読みになればわかるとおり、残念ながらそれらはすべて、複数の公文書によって裏付けられた、疑いようのない事実ばかりなのです。
ひとつ、簡単な例をあげましょう。
以前、田原総一朗さんのラジオ番組(文化放送「田原総一朗 オフレコ!」)に出演し、米軍基地問題について話したとき、こんなことがありました。
ラジオを聞いていたリスナーのひとりから、放送終了後すぐ、大手ネット書店の「読者投稿欄」(カスタマーレビュー)に次のような書き込みがされたのです。
★☆☆☆☆〔星1つ〕 UFO博士か?
なんだか、UFOを見たとか言って騒いでいる妄想ですね。先ほど、ご本人が出演したラジオ番組を聞きましたが(略)なぜ、米軍に〔日本から〕出て行って欲しいというのかも全く理解できないし、〔米軍〕基地を勝手にどこでも作れるという特大の妄想が正しいのなら、(略)東京のど真ん中に米軍基地がないのが不思議〔なのでは〕?

もし私の本を読まずにラジオだけを聞いていたら、こう思われるのは、まったく当然の話だと思います。私自身、たった7年前にはこのリスナーとほとんど同じようなことを考えていたので、こうして文句をいいたくなる人の気持ちはとてもよくわかるのです。

けれども、私がこれまでに書いた本を1冊でも読んだことのある人なら、東京のまさしく「ど真ん中」である六本木と南麻布に、それぞれ非常に重要な米軍基地(「六本木ヘリポート」と「ニューサンノー米軍センター」)があることをみなさんよくご存じだと思います(89ページ)。

そしてこのあと詳しく見ていくように、日本の首都・東京が、じつは沖縄と並ぶほど 米軍支配の激しい、世界でも例のない場所だということも。
さらにもうひとつ、アメリカが米軍基地を日本じゅう「どこにでも作れる」というのも、残念ながら私の脳が生みだした「特大の妄想」などではありません。 なぜなら、外務省がつくった高級官僚向けの極秘マニュアル(「日米地位協定の考え方 増補版」1983年12月)のなかに、
○ アメリカは日本国内のどんな場所でも基地にしたいと要求することができる。
○ 日本は合理的な理由なしにその要求を拒否することはできず、現実に提供が困難な場合以外、アメリカの要求に同意しないケースは想定されていない。
という見解が、明確に書かれているからです。

つまり、日米安全保障条約を結んでいる以上、日本政府の独自の政策判断で、アメリカ側の基地提供要求に「NO」ということはできない。
そう日本の外務省がはっきりと認めているのです。


北方領土問題が解決できない理由

さらにこの話にはもっとひどい続きがあって、この極秘マニュアルによれば、そうした法的権利をアメリカが持っている以上、たとえば日本とロシア(当時ソ連)との外交交渉には、次のような大原則が存在するというのです。
○ だから北方領土の交渉をするときも、返還された島に米軍基地を置かないというような約束をしてはならない。(註1)
こんな条件をロシアが呑(の)むはずないことは、小学生でもわかるでしょう。
そしてこの極秘マニュアルにこうした具体的な記述があるということは、ほぼ間違いなく日米のあいだに、この問題について文書で合意した非公開議事録(事実上の密約)が あることを意味しています(第4章・第5章参照)。
したがって、現在の日米間の軍事的関係が根本的に変化しない限り、ロシアとの領土問題が解決する可能性は、じつはゼロ。ロシアとの平和条約が結ばれる可能性もまた、ゼロなのです。

たとえ日本の首相が何か大きな決断をし、担当部局が頑張って素晴らしい条約案をつくったとしても、最終的にはこの日米合意を根拠として、その案が外務省主流派の手で握り潰されてしまうことは確実です。

2016年、安倍晋三首相による「北方領土返還交渉」は、大きな注目を集めました。
なにしろ、長年の懸案である北方領土問題が、ついに解決に向けて大きく動き出すのではないかと報道されたのですから、人々が期待を抱いたのも当然でしょう。

ところが、日本での首脳会談(同年12月15日・16日)が近づくにつれ、事前交渉は停滞し、結局なんの成果もあげられませんでした。
その理由は、まさに先の大原則にあったのです。
官邸のなかには一時、この北方領土と米軍基地の問題について、アメリカ側と改めて交渉する道を検討した人たちもいたようですが、やはり実現せず、結局11月上旬、モスクワを訪れた元外務次官の谷内正太郎(やちしょうたろう)国家安全保障局長から、
「返還された島に米軍基地を置かないという約束はできない」 という基本方針が、ロシア側に伝えられることになったのです。

その報告を聞いたプーチン大統領は、11月19日、ペルー・リマでの日ロ首脳会談 の席上で、安倍首相に対し、 「君の側近が『島に米軍基地が置かれる可能性はある』と言ったそうだが、それでは交渉は終わる」と述べたことがわかっています(「朝日新聞」2016年12月26日)。
ほとんどの日本人は知らなかったわけですが、この時点ですでに、1ヵ月後の日本で の領土返還交渉がゼロ回答に終わることは、完全に確定していたのです。

もしもこのとき、安倍首相が従来の日米合意に逆らって、 「いや、それは違う。私は今回の日ロ首脳会談で、返還された島には米軍基地を置かないと約束するつもりだ」などと返答していたら、彼は、2010年に普天間(ふてんま)基地の沖縄県外移設を唱えて失脚した鳩山由紀夫首相(当時)と同じく、すぐに政権の座を追われることになったでしょう。


「戦後日本」に存在する「ウラの掟」

私たちが暮らす「戦後日本」という国には、国民はもちろん首相でさえもよくわかっていないそうした「ウラの掟」が数多く存在し、社会全体の構造を大きく歪(ゆが)めてしまっています。
そして残念なことに、そういう掟のほとんどは、じつは日米両政府のあいだではなく、米軍と日本のエリート官僚のあいだで直接結ばれた、占領期以来の軍事上の密約を起源としているのです。

私が本書を執筆したのは、そうした「ウラの掟」の全体像を、「高校生にもわかるように、また外国の人にもわかるように、短く簡単に書いてほしい」という依頼を出版社から受けたからでした。
また、『知ってはいけない』というタイトルをつけたのは、おそらくほとんどの読者にとって、そうした事実を知らないほうが、あと10年ほどは心穏やかに暮らしていけるはずだと思ったからです。
なので大変失礼ですが、もうかなりご高齢で、しかもご自分の人生と日本の現状にほぼ満足しているという方は、この本を読まないほうがいいかもしれません。

けれども若い学生のみなさんや、現役世代の社会人の方々は、そうはいきません。みなさんが生きている間に、日本は必ず大きな社会変動を経験することになるからです。
私がこれからこの本で明らかにするような9つのウラの掟(全9章)と、その歪みがもたらす日本の「法治国家崩壊状態」は、いま沖縄から本土へ、そして行政の末端から政権の中枢へと、猛烈な勢いで広がり始めています。

今後、その被害にあう人の数が次第に増え、国民の間に大きな不満が蓄積された結果、「戦後日本」というこれまで長くつづいた国のかたちを、否応なく変えざるをえな い日が必ずやってきます。
そのとき、自分と家族を守るため、また混乱のなか、それでも価値ある人生を生きるため、さらには無用な争いを避け、多くの人と協力して新しくフェアな社会をいちからつくっていくために、ぜひこの本を読んでみてください。

そしてこれまで明らかにされてこなかった「日米間の隠された法的関係」についての、全体像に触れていただければと思います。(本書の内容をひとりでも多くの方に知っていただくため、漫画家の、ぼうごなつこさんにお願いして、各章のまとめを扉ページのウラに4コマ・マンガとして描いてもらいました。全部読んでも3分しかかかりませんので、まずはマンガから9章分通して読んでいただいてもけっこうです。

商業目的以外でのこのマンガの使用・拡散は、次のサイトから自由に行ってください。
〔アドレス https://goo.gl/EZij2e〕)

註1 原文は次の通り。「このような考え方からすれば、例えば北方領土の返還の条件として「返還後の北方領土には施設・区域〔=米軍基地〕を設けない」との法的義務をあらかじめ一般的に日本側が負うようなことをソ連側と約することは、安保条約・地位協定上問題があるということになる」(「日米地位協定の考え方 増補 版」1983年12月/『日米地位協定の考え方・増補版│ 外務省機密文書』所収 2004年 高文研)








『あとがき』

美しい「理念」を語るより、社会の「安定」を重んじる立場を「保守」と呼ぶのなら、私はその立場を心から支持します。社会が混乱に陥ったとき、最初に犠牲になるの はいつも私たち一般の庶民、なかでも、もっとも立場の弱い人たちだからです。

けれどもその「安定」が、単に見せかけだけのものにすぎないとしたら。

すでに社会の中枢神経がおかしくなっていて、末端で起きている悲劇やその痛みが、ただ感じられなくなっているだけだとしたら。 遠からず、いま私たちの生活を支えているさまざまな防波堤は決壊し、日本という国全体が大きな混乱に陥ってしまうことでしょう。

私が自分の本のなかで繰り返し取り上げてきた沖縄の人たちは、かつてその危険性を、「小指の痛みを、体全体の痛みとして感じてほしいのです」 という、見事な言葉で表現してくれました。

それはただ、苦境にある自分たちを助けてくれというお願いではありません。 体の一部がこれほどまでに傷ついているのに、その痛みが感じられないとは、いったいどういうことなのか。痛みというセンサーを失った生きものが、どうして安全に生きていくことができるのか。
このあと体全体に何が起ころうとしているのか、少しは想像してみたらどうなのだーー 。

そういう同胞としての、心からの警告でもあるのです。

沖縄が長い苦難の歴史のなかから紡ぎ出した、そうした輝くような言葉のなかにこそ、これから日本という国が再生していくための貴重な知恵が存在していると私は思っています。

この本は、2010年6月の鳩山内閣の崩壊と、その9ヵ月後に起こった福島原発事故をきっかけに始めた、約7年間にわたる「大きな謎を解く旅」の全体像を、できるだけ簡単にまとめたものです。

旅を終えた感想としては、「日米の軍事的な関係についての闇は、たしかに深かった。しかしそれは、自分たちがあまりに無知だったから深かっただけで、わかってみると案外単純な話でもあった」というのが正直なところです。

本文中では、 「あとは、きちんとした政権をつくってアメリカと交渉するだけだ」と書きましたが、もちろん容易なことではありません。
急いで調べる必要があるのは、他国のケーススタディです。
○ 大国と従属関係にあった国が、どうやって不平等条約を解消したのか。
○ アメリカの軍事支配を受けていた国が、どうやってそこから脱却したのか。
○ 自国の独裁政権を倒した人たちは、そのときどのような戦略を立てていたのか。

これからは、そうした「解決策を探す旅」が始まります。 少し時間はかかるかもしれませんが、何かわかったら、またご報告します。 それまでしばらくのあいだ、みなさん、さようなら。お元気で。



『追記』

なぜ「9条3項・加憲案」はダメなのか

本書を書きあげたあと、今年(2017年)5月3日の憲法記念日に、突如、安倍首相から改憲案が提起されました。現在の憲法9条1項2項は残しつつ、自衛隊の存在を憲法上(おそらく9条3項)に明記するという「加憲案」です。

もちろん自衛隊と憲法9条2項(戦力の不保持)のあいだに存在する深刻な矛盾は、いずれ解消しなければなりません。

けれどもオモテの条文だけを見て、「ウラの掟」(安保法体系と密約法体系)の存在を知らずに憲法に手を触れることが、いかに危険であるか。本書を最後まで読んでいただいたみなさんには、その深刻さがよくわかっていただけると思います。

ひとことで言うと憲法9条は、もともと占領中に国連憲章(国連軍)とセットで書かれたものだったのですが、本書(第9章)でご説明したダレスのトリックによって、1952年の独立後は、日米安保条約とセットで存在しているものだからです。

そのなかで米軍は、オモテの条文には書かれていない、
(1)「日本の国土を自由に軍事利用できる権利(基地権) 」(第1章・第2章・第3章・第5章)
(2)「戦時には自衛隊を自由に指揮できる権利(指揮権)」(第8章・第9章)
という、信じられないほど大きな権利を密約によって持っています。

そしてその歪んだ法的関係を構造的に支えているのが、
(3)「日米合同委員会」(第4章)
(4)「最高裁(砂川判決)」(第6章)
というふたつの聖域化された、アンタッチャブルな機関です。

この(1)から(4)までの四つの問題を解決しないまま、憲法で自衛隊を容認してしまうと、その先に待っているのは第9章でご説明した通り、朝鮮戦争のさなかに生まれた「米軍による日本の軍事利用体制」の完成です。

では、いったいどうすれば日本は今後、そのような歪んだ構造をただして、みずからが主権を持ち、憲法によって国民の人権が守られる、
本当の意味での平和国家に生まれ変わることができるのか。

その複雑なパズルを解くためには、いま、すべての人が、すべてのポジショントークを一度やめて、遠く離れた場所(沖縄、福島、自衛隊の最前線)で大きな矛盾に苦しむ人たちの声に真摯に耳を傾け、あくまで事実に基づいて(第7章)、根本的な議論を行うときにきていると私は考えます。


(*この投稿は、色平哲郎氏から直接いただいた記事に順序だけ変えて転載させていただいたものである。 )  


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