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短編小説 「ダメのススメ」コミュの「ダメのススメ」第一章 ?

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あの伝説の男の初日以降、静かに時は流れた・・。世間は師走という事もあり、街にはイルミネーションが灯り、カップル達がここぞとばかりにあっちでイチャイチャ、こっちでイチャイチャ。しかし、東京、赤坂のとある事務所では最も熱いカップル?!がもっと熱い日々を過ごしていた・・・
「なーんでそこでもっと押さないんですか?!」
指導係田中の激が飛ぶ。
田中が熱くなるのも無理はない。通常、うちの会社ではたいていの新人が3日目で一件契約をとり、それから自分なりに試行錯誤しながら徐々に契約件数は伸びていく。だが、伝説の男、中西はこんな定説なんてなんのその。入社後一ヶ月間、契約件数ゼロ、完封記録更新中!
 もうその頃、私はそんな中西さんの虜となり、一挙一動にドキドキワクワク。営業云々より以前にその比類なき中西イズムに給料を払っているも同然だった。
 そんないつもと変わらぬ日常の中、ある男から、私の元に一本の電話がかかってきたのである。
「おつかれー。どうよ、調子は?」
この会社のオーナーからであった。オーナーといってもこの男は私の幼い頃からの友達、いわゆる地元ティなのである。この気さくな男は一風変わった性格で、自由奔放かつ冷静沈着。いつもは九州で生活をし、月に何度か東京に足を運ぶ。オーナー風を吹かせることもなく、従業員たちもこの男を慕っていた。
私は答える。
「そうだね、売り上げ自体は先月よりいいよ。まぁ、問題なしってとこだね。それよりさ、すげー新人入ったぜ・・・」
私は、この一ヶ月間の伝説の男中西についての一部始終を語った。すると、オーナーは電話だけで伝説の男に魅了され、是非会いたいと言い出し、仕事が終わったらみんなにメシでもオゴると言い出したのである。
 このオーナーからの提案が伝説の男、中西の素性を知る重大な提案となることに私は気付いていなかった・・・
 仕事を早めに切り上げ、伝説の男ご一行は赤坂のとある九州郷土料理屋さんに向かった。
私達が到着し、すぐにオーナーは現れた。
「ど〜も。おつかれでーす。」
オーナーが現れるやいなや、伝説の男は立ち上がる!
「はじめまして!中西と申します・・」
よし、ここまではいい調子。
「前職はラーメン屋で長いこつ仕事をしておりました!スープは・・・」
やっぱりそれかよ・・。着地地点間違えるやつね。もういいから、それ・・
もうこの時点でオーナーは完全につぼにはまったらしくニヤニヤがとまらない。
そうこうして、伝説の男を中心に宴は始まり、酒の量が増えていくとともに伝説の男も上機嫌♪
「いや〜オーナーさんにも麻雀じゃ負けんですよ!」
「いや〜この中で一番の女泣かせっちゃ俺ですばい!」
もう立場を忘れ失礼三昧。そんな中西のダメっぷりにご機嫌なオーナーは私達も入ったことのない中西ワールドに進入した・・
「そんなにモテるのに、中西さんって結婚しないんですか?」
オーナーさん、そりゃねーよ。42歳で訳アリで上京してくるくらいだぜ。その質問は酷だぜ・・・。
「はいっ!嫁さんは大牟田におるですよ!」
結婚してるわけ・・あるんだっ?!あんた何やってんの?誇らしげに金歯キラリン☆じゃないしっ!
「えー”?!?!」従業員一同驚愕!
さらに・・・中西は大好きな携帯ちゃんを取り出した!その瞬間!
「かわいかでしょう?!」
待ちうけ画面をみんなに見せた。確かにそこには気立ての良さそうな女性がいる。その隣には小学生くらいだろうか、男の子が写っている・・まさか・・・!
「こん子が俺によく似てワンパクとですよー。」
子供がいるわけ・・・いるんだっ?!あんた何やってんの?幸せいっぱいに金歯キラリン☆じゃないしっ!
だが、そのとき中西はまさに石原裕次郎ばりの渋い表情で語りだした・・・。
「嫁には迷惑かけっぱなしですばい・・。この歳になって子供ばおいて東京に行きたいっちゅてもなーんも言わずに送り出してくれるけんですねぇ・・・」
まぁ、私達には計り知れない何かを背負い、この大都会東京にやってきたんだねぇ。だから、仕事ができなくても、どんなに怒られても、めげずに笑顔振りまいて、一生懸命・・かどうかはわからないが、がんばってるんだよねぇ。私は初めて、彼に同情し、おもしろがってた自分の行為を反省し、人生の先輩として尊敬の念を抱いた・・・。
シーン・・。静まりかえる。
するとオーナーが切り出した。
「やっぱり訳ありって事は借金とかがあって、それを返済するために、東京に来たんですか・・?」
シーン・・。静まり返る。
中西は静かに口を開いた・・・
「借金とかはなかです・・・。でも・・」
その場にいたみんなが息を呑んだ・・
「俺はぁ・・・」
その場にいたみんながもう一度息を呑んだ・・
「ビックになりたかとです!!!」
「えっ?!」みんなの声がそろった。
「男に生まれたんならビックな男になりたかでしょ?!だけん、東京に来てがっぽり稼いでビックな男になって大牟田に帰ろうと思って上京したとです!」

沈黙・・・

ノーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
アンビリーバブル!!ミラクル!!ファンタスティック!!
それかよ?!42歳で?!奥さんと子供残して?!ビックになるために?!ビックな男になるために?!しかも、ビックって死語だから!言い切ったみたいな顔しなくていいから!さしずめ、あなたは平成のピーターパンだね。さっきの同情と反省と尊敬返して!
そう、彼は、いやピーターパンは仕事も安定もそして半分家族も捨て矢沢栄吉みたくビックになるためにだけに42歳で上京したのである。
しかも、訳アリってのは42歳で就職するのはなかなか大変だと思った末に、彼が考え付いた嘘だった・・・。

                 次回最終回に続く

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