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自作小説お披露目会場コミュのブレイブハーツ 2−1〜居眠り姫の放課後〜

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コミュ内全体

 突如背後から気配を感じ、あたしは頭をちょっとずらした。すると、何かが通り過ぎ、頬に微風が当たり、何かは枕にしていた右腕に当たった。
「……知美、あたし、物凄く眠いんだけど」
「知っているけど、花の十代をそんな無駄遣いしちゃダメよ」
 軽やかなアルトで答えたのは、親友の天道知美。艶やかな鋼色の長髪を掻き上げ、あたしの横の席に腰を下ろした。容姿端麗な彼女が着ると何処にでもありそうな青色のセーラー服も映画か何かの衣装の様に見えるから不思議だ。
 今日も完璧に決まっている知美は、いつもの調子で口を開いた。
「一実、今日は何の日?」
「始業式」
「そうね。で、貴女は何をしているの?」
「寝ていた」
「どうして寝ていたの?」
「眠いからだよ?」
「私との約束も忘れて?」
 約束……そう言われて寝ぼけ眼だったあたしの脳は一瞬で覚醒した。
「ご、ごめん、知美! 今の今まで綺麗さっぱり忘れていた!」
 昨日の夜、知美から『明日始業式が終わったら遊びましょう』という連絡をもらったのをすっかり忘れていた。
「……まあ、待たせてしまった私にも非はあるか」
 ため息交じりに知美は言った。
 何の事か、と思ったが思い出した。生徒会長である知美は役員に呼ばれ、その対処に当たっていたのだ。で、あたしはそれを教室で待っていて、その間に寝てしまったのだ。うん、思い出してきた。
「そ、そうだよ、知美。あたしばっかり――」
「調子に乗らないの」
 知美がデコピンして来た。軽い打撃音に反して結構痛い。
「酷い……」
「これで許してあげる。ほら、行くわよ。私達で最後なのだから」
 その言葉は正しく、三年A組にはあたし達しかいなかった。当然だ。花の十代を無駄に過ごそうと思う奴なんて多分あたしくらいだ。
「また年寄り考えしているわね?」
「してないよ」
「遠い目をしていたわよ?」
「そう?」
「ええ。……正直そんな一実は見ていて辛いわ」
「……ごめん」
「そう思うならそんな顔しないで。一実は生きているのだから」
 そう言って、知美は教室を出て行く。あたしもその後を追った。
 知美がそう言うのは、あたしの両親が他界しているからだ。
 突然だった。本当に突然な不慮の事故。
 今から四年前、あたしの両親を乗せた飛行機は不運な事故で墜落して帰らぬ人となった。他の人は助かったけど、あたしの両親は運悪く海に投げ出されてしまったらしく、捜索は行われたが、終ぞ見つかる事は無かった。
 結果、離れて暮らしていたあたしは天涯孤独の身となった。
 両親は、逝ってしまったのだ。
 あたしに何の恩返しもさせてくれないまま。
「……ごめんね、無理言って」
 知美が謝った。悪いのは弱いあたしであり、彼女ではないのに。
 だから、あたしは今日も今日とて元気なあたしを演じる。
「――知美って進路どうするの?」
「……そうね、まだ決めかねているわ」
 その言葉にあたしは少なからず驚いた。歩きながら尋ねる。
「どういう事? 家を継ぐのじゃないの?」
 知美は、世界的にも有名な富豪・天道グループの一人娘だ。
 天道グループと言えば、誰もが知っている説明不用の名家だ。飲食業、運送業、不動産、マルチメディア――様々な企業に多大なる影響力を持ち、さらには政界にまでその力は働く。現日本の生活面の四割は天道に支えられていると言っても過言ではない。知美は生粋のお嬢様。同じ女の子として憧れる。
 で、そんなだから、あたしは家を継ぐものだとばかり思っていたけど、どうやら凡人と選ばれた人間では思考回路が違うらしく、実情は違うみたいだ。
「……一実、今物凄く失礼な事を考えなかった?」
「ううん。ただまあレールに乗らないのだなー、と思っただけ」
「やっぱり……。いつも言っているでしょう? 偉いのはお父様であって、私じゃない。私は単に運が良かっただけよ。幸運にも天道家の長女として生まれた。ただそれだけよって」
 お高く留まっていないのが、知美の美点の一つだ。天道家の教育が良質なのか、知美自身の性格か。少なくともあたしの知る限りで知美の事を悪く言う人はいない。逆に変に媚を売ろうとする人もいない。その上成績優秀で容姿端麗。一年生の頃から生徒会会長を逆指名で任されたにも関わらず、その役割を完璧にこなし、その支持率は百パーセントを保ったままであり、さらには自分が抜けた後でも問題無いように役員に指導している完璧超人。
「そうだったね。でもさ、どういう事?」
「お父様は私に家を継がせようとは思っていないのよ」
「あっ、OK。大体分かった」
 知美のお父さんであり、天下御免の天道グループ総帥の天道全知は、とても理解ある親であり、支配者だ。ナポレオンの名言に『我輩の辞書に不可能という文字は無い』というものがあるけど、天道全知はそれを体現している。
 そんな超人なら、自分は自分、相手は相手、と思っていても不思議じゃなく、子に自分の後を継がせるという一方的な事をしない人だ、という事なのだろう。
 でも、間違っていたら嫌だから一応確認しよう。
「つまり、お前の人生だからお前の好きな様に生きろって事?」
「そういう事よ」
「そっか。じゃあ、どうするの?」
「そういう一実はどうなの?」
「聞いているのはあたしだよ?」
「じゃあ一実が答えてくれたら答えてあげる、鍵を返してからだけど」
 気が付けば職員室の前だった。
「「失礼します」」
 挨拶してあたし達は職員室に入り、鍵を返却に向かう。
「お、居眠り姫がやっと目覚めたか」
 と、その途中で『サトセン』という通称で生徒に親しまれている担任の佐東栄一先生が話しかけてきた。あたしは足を止め、知美は鍵を返すために先生の横を通り過ぎる。微笑を湛えた一礼も忘れない。流石我らが生徒会長。生徒の鏡だね。
「おはよ、サトセン」
「もう昼だぞ」
 サトセンは壁にある時計を指差した。本当にお昼だった。
「というか、帰宅部のお前が何故にまだ学校にいるんだ?」
「私を待っていてくれたのです」
 鍵を返却し終えた知美が言った。
「天道を? あー、そういや、生徒会の集まりがあると言っていたな」
「そうそう。あたしだってそれが無かったらちゃんと帰ってるよ」
「どうだか。お前自分が何で『居眠り姫』何て言われてるか考えた事あるか?」
「あたしが可愛いからだね」
「まあ黙っていたらな。って、そっちじゃねぇよ」
「寝に学校に来ている様な物だからでしょ?」
「何だ分かっているのか」
「まあね」
「それにしても、どうしてお前はそんなに寝るんだ? 夜行性なのか?」
「一実はちゃんと寝ていますよ」
 答えたのは知美だ。何でそこで知美が答える?
「何で天道が?」
 サトセンも気になったのか、聞いてくれた。
「何でって、見ているからですよ。二十四時間体制で」
「二十四時間体制……? ……どうやって?」
「どうやってって、隠しカメラを含めた盗撮盗聴機材の各種で」
「……は?」
 サトセンが間の抜けた反応をして恐る恐る尋ねた。
「……聞くのが怖いんだが、どうしてそんな事を?」
「一実も一実のご両親も極度の秘密主義だからです」
「心配かけたく無いからね」
 分かっているあたしは別に驚かない。むしろ視線の正体が分かってすっきりだ。
「その善意が逆に不安にさせる事をいい加減覚えてくれないかしら?」
「それと何でお前は驚いていないんだ?」
「知美は心配し過ぎ。驚いていないのは分かっているからだよ」
「一実が話してくれれば良いのよ」
「まあ防人の洞察力なら気付けても不思議じゃないのか……まあそれはさておき、一応注意しておくぞ。防人、気付いているなら無視するな。相手が天道だからってプライバシー侵害だからな? それと天道、友達思いなのは結構だし、下手を打たないとは思うが警察沙汰にならない様に」
 こういうところがサトセンの人気だ。サトセンは物怖じしない人で大多数が天道の名を恐れて贔屓や媚を売るけど、サトセンは知美を『生徒の一人』という風に見ていて他の生徒と等しくちゃんと叱るし、ちゃんと褒めるのだ。
「心配するから話せないんだよ。害意は無かったので別に良いかな、と」
「害意が無いのは当然ね。全力で善意だもの。でも心配しないのは親友としてどうかな、という気はしない? 後先生、その辺はご心配無く。抜かりはありませんので。映像や音声は私の私産として私が管理していますので」
「杞憂だったか。しかし、防人、害意が無いからって無視はどうなんだ?」
「天道家と社会的方法で喧嘩しても時間の無駄だからね」
「一実なら勝てそうね」
「俺もそう思う。だがまあ何とも思っていないなら時間の無駄だけどな」
 あたしは肩を竦めて見せた。
「二人とも過大評価だね。あたしは一介の女子高生だよ?」
 あたしがそう言うと二人は呆れ切った様なため息をついた。
「世間一般の女子高生は暴漢十人相手に絡まれている女の子を助けに入ったりしないわ。ましてや暴漢を睨みだけで退かせるなんてね」
「後片手間で学校のサーバーに侵入したりもしないし、目立ちたくないからって態と試験の答案の一部を白紙で出して点数調整したりもしないぞ」
「探せばいるかもよ?」
「探さないといないから評価しているのよ」
「全くだ。……しかしあれだな、多少行き過ぎ、やり過ぎなきらいはあるが相思相愛なら平気だな。これからも仲良くやれよ」
 サトセンはそう言ってあたし達に背中を向けて自分の席へと戻っていく。
「またね、サトセン」
「佐東先生、また後日」
「ああ、気をつけて帰れな」
 挨拶を交し合い、
「失礼しましたー」「失礼しました」
 あたし達は職員室を後にし、下駄箱がある正門へと向かう。
「――で、何の話していたっけ?」
「進路の話よ」
 そういやそうだった。
 しかし、どう答えたものか……自分で振っておいてあれだが、実はぼんやりとなら考えているがそうしようとは諸般の事情でまだ思っていない。
「もしかして考えていないとか?」
 図星スレスレだ。相変わらず鋭いね。
「いやそういうわけじゃないよ。それなりに考えているよ」
「そう。どんな風に考えているの?」
「ん? 漠然としているけど、それでも良い?」
「ええ。私もそうだし」
「そっか。えーっとね、知美の手伝いがしたいなーって」
 天道家にはお世話になりっ放しだ。あたしの親とは親友同士だったから、ただそれだけの理由で、親類がいなかったあたしを養子として迎えてくれたし、葬儀とか遺産とかそういう面倒な事も全て引き受けてくれた。知美も知美の両親も恩に着せる気は無く、お前が自力で幸せだと思える事を成し遂げる様にしてくれればそれで構わない、と言ってくれているが、それでもこっちは恩返しがしたい。
 そうなると、あたしが出来る事は知美の手伝いだ。全知さんには照美さん――知美のお母さんという相棒がいる。あの二人は夫婦で相棒。全知さんで言えるところの照美さんにあたしはなりたいな、と思っている。
 と、知美の反応が無い事に気付いた。
 何でかなー、なんて思って盗み見たら知美は呆然と立ち尽くしていた。
「知美?」
「わきゃあ!」
 声をかけたらとんでもない悲鳴が返って来た。
「な、何? どうかした?」
「それはこっちの台詞だよ。どうかしたの?」
「な、何でも無い。何でも無いわ!」
 全力の否定。逆に怪しいよ知美。まあでも自己申告を信じるとしよう。
「そう? それなら別に良いけど」
 あたしが黙ると、あたし達の間には沈黙が訪れた。
 静かな廊下にあたし達二人分の足音が妙に大きく響く。
 窓の外からは運動部の声が聞こえてきた。学校が始まったばかりだと言うのに精力的だ。ああいう生活を送りたいとは特別思っていないけど、それでもこういう声を聞くとちょっと憧れる。
「――一実」
 下駄箱に着いた時、知美が控えめに口を開いた。
「何?」
「その……さっきのは?」
「さっきの? ……ああ、うん。本気だよ。知美はもちろん、天道家には昔からお世話になりっ放しだからね。これからは何某かの形で恩返しして行きたいなー、なんて分不相応な事を考えていたりするわけです」
「本当に本当?」
「うん」
「そう……」
 そう言って知美は黙った。
 一体どうしたのやら。さっきから様子が何処かおかしい。
 まあ詮索は敢えてしない事にしよう。
「ところで、これからどうする?」
 出入り口へ向かいながらあたしは聞いた。
「えっ?」
 すると知美は生返事をして来た。本当に大丈夫かな。
「えっ、じゃないよ。遊ぼうって言ったじゃん」
「えっ……、あ、そう……だったわね、うん」
「起きた?」
「起きているわよ。一実じゃないんだから」
「そっか。で、どうする?」
「一実はどうしたい?」
「あたしは知美と一緒なら何でも良いよ」
 途端、ボッと知美の顔は真っ赤になった。
「ど、どうしたの、知美。顔真っ赤だよ?」
「な、何でも無いわ! そ、それじゃあ、私の家に行きましょう! 新しいお茶が入ったの。それを一実に飲ませたくてね」
「お茶会かー、良いね。じゃあ一旦別れる?」
「一実がそうしたいならそれで良いけど?」
「あたしはどっちでも良いよ。天道家にも服はあるしね」
 あたしは両親の死後、天道家に養子として迎えられたけど、あたしの我が侭で別々に暮らしている。凡人だったあたしにお嬢様の生活は厳しかったからだ。
「そう。なら、このまま私の家に行くわ」
 そう言って、知美は携帯を取り出し、家へと連絡した。
「私よ。ええ、今終わったの。だから迎えに来て。ああ、それから昼食を一人分追加して頂戴。……え? 会食の予定は無かったでしょうって? 急に出来たのよ。――一実よ、一実。――なっ、ば、バカな事言っている暇があるなら職務を全うしなさい。――うん、それじゃあ待っているわね」
 一体どうしたのやら。急にお嬢様モードになったと思えば、素の知美に戻るし、何か急に怒り出すし。今日の知美は何か色々いつもと違う。
「すぐに来る――」
 知美がこっちを向いた際、あたしは自分の額を知美の額にくっ付けた。熱でもあるのかな、と思ったけど平熱だった。じゃあ何だろう?
「か、かかか、一実!? いきなり何するの!?」
 あたしは知美から離れた。すると、知美はどうしてか茹で上がったタコか甲殻類の様に真っ赤になっていた。本当に一体どうしたのやら。
「変だよ、知美。今日は止め」
「わ、私は平気よ!」
「――なら良いけど」
 被り気味で言われた。心配は残るが自己申告を信じるとして、
「でも、無理だったらちゃんと言ってね? 遊ぶのはいつでも出来るし、あたしは知美が無理しているところなんて見たくないからさ」
「……それは私も同じなのだけど?」
「あたしは無理して無いから平気だよ」
「じゃあどうして隠し事するのよ」
「さっきも言ったけど心配させたくないからだよ」
「待つ方もこれで結構辛いのよ?」
「ごめんね」
「謝るなら相談してくれると嬉しいわ」
「それは勘弁」
「……私はそんなに頼りにならない?」
 不意に知美がそんな事を言った。
「そうじゃないよ。でも、だからこそかな」
「どういう事?」
「保険があると安心出来るよねって事」
 知美が頼りにならないなんて事は絶対に無い。恥ずかしいから知美には絶対に言わないつもりだけど、知美には仮に世界中が敵になったとしても側にいて欲しい人だ。それだけであたしは誰とだって相手に出来る自信がある。それは知美を利用するって話だけど、それだけじゃない。例え知美が探せば何処にでもいる普通の女の子だったとしてもあたしには知美が必要なのだ。
「……嬉しい言葉だけど、その保険が適用される日は来るのかしら?」
「保険なんだから使わない方が良いに決まってんじゃん」
「生命保険がその最たる物ね。でも――」
 言葉を止めた知美は、不意打ちの様にあたしに抱きついて来た。
「と、知美?」
「……でもね、一実。これだけはちゃんと覚えておいて。私達は友達であり、そして家族よ。友達のため、家族のために何かをしてあげたいと思うのは当然よね? 私はそれをしたいだけ。……これだけはちゃんと覚えておいて」
 懇願する様な知美。あたしを抱く、知美の力がちょっと強くなった。
 その温もりか感じつつ、
「……分かった。魂に刻んどく」
 あたしは知美を抱き返した。
 と、そんな時だった。
「あらあらまあまあ。白昼堂々とラブ空間を展開して。見ているこっちが恥ずかしいですね。さてはて、声をかけるべきか、このまま見守るべきか悩みます」
 その声にあたし達は我に返った様に機敏に反応し、声の主を見た。
「つ、鶴来! い、いいい、何時からそこに!?」
「鶴来さん、いたんですか。何時からそこに?」
「お嬢様が一実さんに熱い抱擁をした辺りからですよ」
 声の主は、知美の世話をしているメイド姉妹の片割れである近衛鶴来さん。個人的にはお姉さんの方である沙耶さんよりも鶴来さんの方が接し易い。メイドさんに対して友達感覚なのはダメな気もするけど、沙耶さんの方は分かっていて色々意地悪してくるからちょっと苦手なのだ。
「主人に対して気配を殺して近づくとはどういう了見なの!?」
「ではお嬢様、お声をかけてもよろしかったのですか?」
「そ、それは……」
 狼狽する知美。まああんな場面で声をかけるのははばかられるからね。
「そうですよねー。というわけで、空気を呼んで抜き足差し足忍び足で近づかせてもらいました次第ですよ。ご不満だったでしょうか?」
「……いいえ、良い判断よ。ありがとね、鶴来」
「知美、納得行かないって顔で言っても説得力絶無だよ?」
「一実さん、それを言ったら台無しですよ」
「それはつまり、鶴来もそう思っているって事よね……減俸二ヵ月」
「はうっ! お嬢様、そんな殺生な!」
「殺生ってそんなに困る事ですか?」
 二人とも知美と一緒に暮らしているはずだし、基本的にメイド服だから衣食住において金を使う必要は無いはずである。自由にならない金が無いというのは、確かに不便かもしれないが『殺生』と言うほどでは無い気がする。
「死活問題だったりします。趣味のお金が減るので」
「あー、それは死活問題ですね。知美、せめて一ヶ月にまからない?」
「まからないわ。一実のお願いでもダメ」
「お嬢様、そこを何とか」
「ダメったらダメよ。それより迎えに来たのに車が無いのはどういう事なの?」
「と、そうでした。では、しばしお待ちを」
 ピュー、と鶴来さんは走り出し、角を曲がった。切り替えの早い人だ。少しして黒塗りのリムジンが現れ、それはあたし達の前で止まった。完全に停車すると鶴来さんが運転席から現れ、あたし達がいる方の扉を開けて一礼。
「お嬢様、一実さん、中へどうぞ」
「ありがとう、鶴来」
「鶴来さん、ありがとうございます」
「どういたしまして」
 あたし達は感謝を言ってから車内へ入り、鶴来さんは返答して静かにドアを閉めた。そうして運転席に乗り込み、
「お二方、シートベルトはお締めになりましたか?」
 と、聞いて来た。
「もちろんよ」
「大丈夫でーす」
「それでは発車致します」
 そして、あたし達は天道家の屋敷へと向かった。

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