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草太郎クラブコミュの草太郎 第11章

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「死ぬかと思った。」
「キッキ」
海原に突如現れたシャチの1メートル以上あろうかと思われる
巨大な口。
それは最初
草太郎を狙っていた。
そしてシャチの存在を察知したミレコがうなり声をあげて、
剥き出しの食欲で
シャチの方へと旋回し向かえうった。
「アオオオーーーン」
鋭い牙をシャチの顔にめり込ませる。
ドボッと鮮血に染まる海、
血を飲もうと口をあけるミレコ、
血に染まる草太郎、
血に染まる秀吉、
血に染まるミジンコたち。
シャチは鋭い牙でカラダに穴が開いているのに、
獰猛な食欲でミレコを狙う。
そして混乱に乗じて、草太郎と秀吉の命をも狙うミレコ。
奇跡的に荒波に揉まれてミレコの爪をかわし、五体満足で陸に辿りついた草太郎と秀吉。
5分もしない間に骨だけになったシャチ。
「命とは儚い」
「キッキ」
ポカーンと寝転がって空を眺めると、
頭上には雲ひとつない空の青さ。
深い海の中へ落ちていくような陶酔感。
どちらが海でどちらが空かわからなくなりそうだ。
ジャリジャリ・・・。
砂を踏む様な音がした。
草太郎は人の気配に視線を動かした。
女が一人いた。
目を見開いて、ミレコを眺めている。
「海を泳いで来たの?あれはアザラシ?」
ミレコは全長4メートルを超える肉食の化け物です。
といきなり説明するのは草太郎でも気が引ける。
「アザラシではない。危ないから近づかない方がいい」
「あら」
女は草太郎と秀吉が血まみれであることに気づいた。
「あの獣と戦ったの?」
一緒に海を渡ったものの、命を狙われたから戦ってないことも
無いのかもしれない。
草太郎も男である。
「戦った。」
見得をはった。
「見た目によらず勇敢なのね。」
「怪我一つしてない。これは奴(が食ったシャチ)の血だから」
女は微笑んだ。
「良かったら私達のテントに遊びに来ない?
何か暖かいものを食べたいんじゃない?」
日に焼けた爽やかな女の笑顔に、草太郎はホッとした。
久しぶりにヒトとの会話でもあった。
草太郎は立ち上がった。
「私の名前はサヤ。あなたの名前は?」
「外堀草太郎。僕のこと知ってる?」
外堀という名前を聞いただけで、
外堀財閥だとこのあたり全域に住む人ならわかるはず。
しかしサヤは知らないと言った。
「私達は移民。
島から島へ理想の土地を探して移動してきたの。
ほら行きましょ
流れ着いた先が私達のキャンプでよかったと思うわ」
サヤは草太郎の手を掴んで、目配せした。

サヤの仲間達は赤や紫、緑、青、
色とりどりの衣服を纏っていた。
同じ言葉を話すのに、
本当に草太郎と同じ国の民だろうか?
世界は広いものだと草太郎は思った。

草太郎は広場の真ん中に座らされていた。
草太郎を囲むようにして、サヤの仲間達はじろじろと眺めている。
仲間達のリーダーと思われる
浅黒い肌の背の高い男が、目配せすると
草太郎の前にどくどくしい色のむしが出てきた。
オレンジと赤い斑点模様のふくふくとした芋虫だ。
それを「きえいっ」というあらあらしい掛け声で、髭を蓄えた初老の男が薄汚れたカサカサの指ですりつぶした。
芋虫「キィィ・・・グフっ」
「ようこそ草太郎とやら。
我ら「自由の民」は
客人を迎える儀式として客人に
友情という名前をもつキエフという昆虫を
捧げる慣習があるのだ」
「さあ遠慮はいらん、ググっと飲み干してくれ!!!」
器の中にはどろどろになったキエフが入っている。どろどろになっても器の中で
キエフの何かが脈打っている!ホカホカしている!
「何か暖かいものってこれ・・・!?」
仲間達はみんな笑顔だ。
ニコニコニコニコニコニコ
断ることは出来ない雰囲気。
「サヤ君は飲んだことあるの?」
「客人しか飲むことが出来ない、貴重なむしなの」
最悪だ。
草太郎はカッと目を開いて、器を握ると一気に飲み干した。
どろどろ
世界の暗黒を集めたようなえぐみ。生暖かい舌触り。
喉の奥でキィィと鳴き声。
涙が勝手に零れ落ちる。
舌が嚥下機能が、全力で拒否しようとしている。
苦しさに草太郎は膝をガクっとついた。
「ウエルカム!!!」
新たな仲間との出会いに自由の民のメンバーたちは歓声を上げた!!!

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