ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

草太郎クラブコミュの草太郎 第6章

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
初めて読経なるものをした草太郎と秀吉であったが、
30分もすると堪えられなくなってきた。
グルグルグル・・・・
そういえば山に入ってから、
バビ団子しか食べてないや
「和尚、これで何か御飯を用意してもらえないか?」
草太郎は一万円を和尚にチラつかせた。

和尚は一万円をぱっと手に取ると、
嬉しそうに眺めた。
「ここにいた者たちは無一文だったからのう。
ようし、お粥でも用意しよう」

和尚は米びつから麦を取り出した。
草太郎はお粥の中に具を和尚が入れるのか、
とても気になってきた。
まさか粗食粗食といって
、麦だけのお粥を出して一万円取るつもりだろうか。

山の料理といったら
山菜、茸、山魚、漬物位何も言わなくても出して欲しい。

そんな草太郎の心を知ってか知らずか、
和尚は麦のかゆを炊き始めた。
「麦には栄養がいっぱい入っているのだ」
オンリー麦のかゆを。
粥がグツグツと煮え立ってくる内に、
グツグツと草太郎の腹も煮え立ってきた。
和尚は草太郎の顔色をちらりと見て思うところがあったのか、
あわてて粥の中に
大根の葉っぱをちぎっていれた。
葉っぱじゃなくって 本体をせめて・・・・
(ああ・・・鍋をひっくり返して坊主に浴びせたい)
衝動的な苛立ちを草太郎が理性で抑えているとき、

メリメリメリと木が裂く音がした。
メリメリメリ メリメリメリ
木の裂ける音だと思っていたが、
寺を形成している木材が裂ける音であった。
「ホヒーーーーッ」
ミレコが結んであった鳥居ごと引っこぬいて、
粥の臭いが堪らなかったのだろうか此方へ猛進してくるではないか。
ドッドッドッドッド!!!
「粥ーつ」
粥にミレコは突進していくように思えたが、狙いは草太郎の若い肉であった。
「ホヒーっ」
しかし草太郎は俊足のため、逃げ足は素早い。
また秀吉も同じく、猿なので素早い。
不幸なのは読経しか普段していなかった和尚であった。
「ギャアアア」
ミレコは和尚をペロリと平らげてしまった!
そして草太郎と秀吉はその隙を狙って、ミレコの首にしがみ付き
ミレコの食料になる難を逃れたのであった。

鬼を倒しに来たはずなのに、
草太郎は和尚にとっては災悪をもたらす悪魔であり、
ミレコの耳の穴に住む猿にとっては初めての友達であり、
ミレコにとっては主人&非常食といった所だろう。

しかし現時点では、草太郎はミレコとの
危険な関係を気に入っていた。
「いつ餌になるかわからない緊張感」が、
草太郎を強くしてくれるような気もしているし
「人生を棒に振りたいという破滅的な欲望」が
草太郎の中にあるようにも感じた。

一方
外堀家では無垢な青年が
人生を棒に振ろうとしていた。

一家の大黒柱であるお爺さんが急逝したせいで、
一介の雇われ人であるアランが
お爺さんの代わりに外堀家の色々な物事を決めることと
スミエが任命したのだ。
お爺さんの血もお婆さんの血も一滴も入っていない
異郷人のアランに取って
それは大きな重圧だった。
「草太郎サンを呼び戻しましょう」
しかしスミエはNO!と
首を横に振った。
「草太郎が出て行ってまだ一週間。
外堀家の全てを背負う器はまだあの子にはありません」
「ダカラといって、
放浪していたらリッパになるワケないじゃないですかー?」
「草太郎の成長を信じるのよアラン」

アランはプレッシャーで
お葬式の日から胸が苦しくなることをスミエに伝えた。
「胸がイタイんデス。
アランに全て任せるナンテ無理デス」
スミエは目を大きく開けた。
「あら・・・・。 胸が?」
スミエはアランの胸元にそっと指先をはわせた。
「それは本当にプレッシャーなの?」
「エっ?」
華奢な白い指先からは
ほのかな甘い薔薇の香りがする。
「馬鹿ね、アラン。
胸が痛いときは病気の時だけじゃないのよ」
アランはドキドキして目を伏せた。
未亡人になったスミエの事を美しいと一瞬感じた時があった。
それをスミエは見透かしているのだろうか。
「胸を苦しくさせている 正体は
恋という時もあるのよ」
Koi
なんて甘酸っぱい響き。

「NO!」
アランは絞り出すように叫んで、踵を返した。
早くこの場から逃げ出したい!
魔女に捕まって絡め取られてしまいそうだった。

白い指先を唇に当てて
慌てふためいて退出していった青年の後姿を、可笑しそうにスミエはみていた。


続く

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

草太郎クラブ 更新情報

草太郎クラブのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。