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栗本慎一郎コミュのわくわく読書、さらさら引水。(2周目)

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上善は水の若し。水は善く万物を利して而も争わず。衆人の悪む所に処る。故に道に幾し。(老子より。)



コメント(486)



「一月は普く一切の水に現じ一切の水月は一月に摂まる」<証道歌>より。






立原正秋『旅のなか』角川文庫




男と女がどうかした、などの小説を書いている男が悟入したといったら人は笑うだろう。ただ自分の死については、ある程度心がきまっている。散歩の途中、即興的に詩をよむことがある。去年の暮は裏山でつぎのような詩をよんだ。

<風の裂け目に闇の見ゆ
いづこより迫りくるか>






山田風太郎『半身棺桶』徳間文庫





戒名は、何も縁もゆかりもない坊さんに頼む必要はないのである。自分が自由につければいいので、その例はたくさんある。
自分で戒名をつけた人々はそれぞれ理由があるのだろうが、私のは遊びである。
曰く、「風々院風々風々居士の墓」。





小浜逸郎『死にたくないが、生きたくもない。』幻冬舎新書






人は人倫的な間柄において生きる存在だから、必ずしもひとりぎめの美学に則って自裁することがよいことだとも言えない。「四十に足らぬほどにて」と書きつけた兼好も、結局は七十近くまで生きてしまったではないか。
だらだらと老い、だんだんに死んでいく。それがある年齢に達したふつうの人のふつうの生き方というものであろう。




カレル・チャペック『園芸家12カ月』小松太郎訳 中公文庫





ほとんどすべての植物が、自分種を帽子のように頭にのせながら、上へむかってはえるのだ。想像してみたまえ。かりに赤ん坊が生まれるとすると、母親を頭の上にのっけて生まれるのだ。…何を言おうとしてたのだっけ?そうだ、何も言うことはなかったのだ。ただ、生命というものは、想像もおよばぬくらい複雑なものだということ、それだけだ。




淺野晃「生物」:『現代日本詩集』新学社文庫 所収





雪のしたで
冬ごもつてゐる

思ひ出してゐる
いろいろのことを そして
じつと春を待つてゐる
待つてゐるのではない
いつのまにか自分も
みんなといつしょに
春になつてゆくのだ





[駄洒落コーナー]陸続き(りくつづき)の弊(へー)を説く理屈ずき(りくつづき)。へー!ウッシッシ





ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』野矢茂樹訳 岩波文庫






事実はただ問題を導くだけであり、解決を導きはしない。
神秘とは、世界がいかにあるかではなく、世界があるというそのことである。




坂口安吾『肝臓先生』角川文庫クラシックス





それほど死ぬことを恐れながら、〔戦争中〕私は人の親切にすすめてくれる疎開をすげなく却けて東京にとどまっていたが、こういう矛盾は私の一生の矛盾であり、その運命を私は常に甘受してきたのである。一言にしていえば、私の好奇心というものは、馬鹿げたものなのだ。




立原正秋『美しい城』文春文庫




警官の取調べにたいして私は、刺した理由をきかれ、雨が降っていたから、と答えた。私は自分の内面の曲折を説明するのが面倒だった。だから、雨が降っていた、というのは立派な理由だった。〔刺された〕体操教師は頭が悪いばかりでなく、心情が賎しく、いわば下衆だった。私はそんな男とかけひきをしなければならないほど心が落魄していなかった。




『新編 原民喜詩集』土曜美術社出版販売





遠き日の石に刻み
砂に影おち
崩れ墜つ 天地のまなか
一輪の花の幻



養老孟司『無思想の発見』ちくま新書





無と空で、世界はできるか。できると私は思う。だって、コンピュータはまさにゼロと一だけでできているではないか。無にゼロを当て、空に一を当てれば、コンピュータの世界がたちまちできてしまう。



宮台真司『日本の難点』幻冬舎新書






日本の立て直しを考える場合、柳田國男を参照することが重要だという結論に至らざるを得ません。…僕が社会学に学問的関心を抱いたのは、吉本隆明氏の著作を通じて柳田國男を知り、いま述べた柳田國男の問題設定と同じものが社会学にも見出されることを知ったからです。




吉本隆明「<うつ>関係の拡張(7)」:『心的現象論本論』文化科学高等研究院出版局 所収





「私の周りにいる人々は見知らぬ人たちのように見え…」という疎隔体験は、自己関係づけの異化に見舞われて、どこにも自己の所属感がないことを語ってはいるが、自己が消えてしまった感じを語っているのではない。だが、このばあい、表現的自己が異変に出遇っているのだということは、はっきりしている。




瀬戸内寂聴『手毬』新潮文庫





私〔貞心尼〕は良寛さまの枯木のようなお掌を、まるで百合の花でも抱くようにそっと握りあたためていた。…人はこうして病み、苦しみ、糞尿にまみれながら逝くものだということを教えられているような気がした。人の世の人の苦しみを一身に代り受けてくださっているような尊さと有難さが湧いてきた。そだを折る音が愕くほど静かな空気をきりさいた。



滝川一廣『「こころ」の本質とは何か』ちくま新書






個体的でありながら共同的であるとは、深い矛盾をはらみます。私たちのこころはその矛盾からなりたつことを本質としています。その矛盾した本質ゆえにこそ、統合失調症や自閉症と呼ばれる精神現象がまれならず(必然的にある頻度で)生じるのでしょう。




内田樹+高橋源一郎『沈む日本を愛せますか!』ロッキング・オン





内田:国際化っていうのにはさ、「国連の公用語に日本語を採用しろ!」「国際会議を日本語でやらせろ!」って選択肢だってあるわけでしょ。
高橋:グローバリズムって「どこにでも通用する」とかいう規範を持ってくるところが、おかしいわけ。




名越康文『どうせ死ぬのになぜ生きるのか』PHP新書






「どうせ死ぬのになぜ生きるのか」という問いに対する仏教の答えも、実は言葉にならない世界にあります。だからこそ仏教では「行」を経験していくことによって一人ひとりがその答えを自分で得ることができるよう、修業の道を整えてくれているのです。…「言葉で説明できる限界」を超えていく方法というのは、実はスポーツや武道、あるいは楽器演奏、舞踏といった技芸の世界においては、あるレベルの壁を超える上で欠かせないものだと思います。




アンリ・ベルクソン『笑い 喜劇的なものが指し示すものについての試論』竹内信夫訳 白水社





観客の笑いは、劇場の客席が埋まっていればいるほど大きく広がる、とは繰り返し言われてきたことではないだろうか?また、喜劇的効果の多くは、ある言語から別の言語に翻訳できない、したがって笑いはある特定の社会的集団の風俗や観念に相関している、と何度指摘されてきたことか?



澁澤龍彦『快楽主義の哲学』文春文庫




最後に王が、
「何かほしいものがあったら申すがよいぞ。」
というと、ディオゲネスは片手を上げて、大王をはらうような身ぶりをしながら、
「じゃまをしてくれるな。きみがそこに立っていると、日かげになる。」
といったというのです。
…ディオゲネスは九十歳で、タコを食って死んだといわれています。



福田恆存『論争のすすめ』新潮社




救世主としてあれほど強烈な自信をもつていたイエスも、ぎりぎりのところでは、弟子たちに向つて、自分の人生は自分で生きて知れといつてゐるのである。たしかに生きて知らねばならぬ。つひに知りえぬものがあることを。



イザベラ・バード『日本奥地紀行』平凡社ライブラリー





その〔アイヌ人の〕体格はいかに残忍なことでもやりかねないほどの力強さに満ちている。ところが彼らと話を交わしてみると、その顔つきは明るい微笑に輝き、女のように優しいほほえみとなる。その顔つきは決して忘れることはできない。…男たちが「獰猛な野蛮性」をもっているように見えるのは、厚くて柔らかで黒い髪が豊富にあるからである。



釈徹宗+秋田光彦『仏教シネマ』文春文庫





秋田:「がんばろう!日本」と連呼されたフレーズも、人によってはものすごく無神経なメッセージになります。がんばれないときもあれば、がんばらないほうがいい場合もある。
釈:そうですね。どうも日本の現代語には応援する言葉が少ないんですよね。「がんばれ」「がんばろう」しかないでしょ。


白石一文『草にすわる』光文社文庫





不意に曜子さんが言った。
「私、もうダメだよ。ほんとにもうダメだと思う」
ここでようやく洪治は思い当たった。こういうとき、人は誰かの格別の言葉を求めているわけではないのだ。
「ダメなのは、俺もおんなじだよ」
必要なのは共感と同意だけだろう。そう思うと気が少し楽になった。



竹村公太郎『日本文明の謎を解く』清流出版





官庁のみならず民間会社も、説明責任を果たすといった名目で膨大な説明資料やパンフレットを作成し配分している。しかしパワーを持った資料にはめったにお目にかかれない。ほとんどが資源の浪費といってよい資料だ。
その資料がパワーを持つかどうかの分かれ目は、…トップリーダーが、情報を間引きしたかどうかである。多くの情報の中から意味ある情報を選び抜き、それを示し得たかという点である。



三好十郎〔1958年肺患病歿〕『知識人は信頼できるか』東京白川書院





ウソをつかされる君が悪いのではない。雇主や上長が反省すればよいことであって、君がそのことで不当に苦しむことは正義病というものだ。…つぎに君はなるべく楽しいことや快い事をとりあげ、苦しいことや不快なことは避けて通るようにしたまえ。そうでなくても、この世は苦しみや不快に満ちていて、楽しいことや快いことはわずかしかない。わずかしかないことは大事にしたほうがよい。




今西錦司『生物社会の論理』平凡社ライブラリー





さきには形態がちがえば、その生活様式もちがうであろうというところから、生活形を形態に直結させた―これを生活形の形態原理ということができる―のであるが、こんどは、生活の場がちがえば、その生活様式がちがってくるべきだ、ということから、生活形と生活の場を結びつけるのである。これを生活形の棲みわけ原理ということができる。




『大杉栄評論集』飛鳥井雅道編 岩波文庫






生の拡充は生そのものの根本的性質である。原始以来人類は既にその生の拡充のために、その周囲との闘争と、およびその周囲の利用とを続けて来た。また人類同士の間にも、お互いの生の拡充のために、お互いの闘争と利用とを続けて来た。そして人類同士の闘争と利用とが、…その生の道をふみ迷わしめたのである。




岸田秀『「哀しみ」という感情』新書館





いい歳になったあるとき、がんばるのがアホらしくなり、がんばるのをやめた。すると、非常に気が楽になった。そして、かつての父のように無責任にだらしなくぶらぶら遊んでいて別に生活上、差し障りはないのであった。やはり、わたしは父の子であった。



宮崎市定『西アジア遊記』中公文庫






私がこの旅行中に気付いたのは、歴史上におけるシリア地方がもつ重要性である。…私が〔自説を補強する〕こんな細かいことを数え立てるのは、決して功を誇ろうという意味ではない。反って内心では私の説に賛成しながら、いざ公けに意見を発表する段になると、大先生の名声に圧せられてか、私の説が無視されることが多いのを知るからである。



清水博『生命知としての場の論理〜柳生新陰流に見る共創の理』中公新書






西田幾多郎は「物来たって、我を照らす」といっています。私はこの言葉を、自己を捨てた(自己否定をした)自己の内部に深い無が現れて、根元的な創出ルールが働きかけてくる様子を表現したものとして理解したいと思います。




西田幾多郎『善の研究』岩波文庫






実在は一に統一せられていると 共に対立を含んでおらねばならぬ。ここに一の実在があれば必ずこれに対する他の実在がある。而してかくこの二つの物が互に相対立するには、この二つの物が独立の実在ではなくして、統一せられたるものでなければならぬ。




山本健吉『ことばの四季』文藝春秋






昔から日本人は、海も山も生きものであり、生きているからには、死ぬものだと思い、大事にしなければならないと考えていた。海や山が死んだら、草も木も、魚も鳥も虫も、人間も死んでしまうのだと知っていた。
その深い「縁」を忘れて、人間はいま、まっしぐらに死に急いでいるのであろうか。



森繁久彌『あの日あの友』中公文庫





コト絶えた伴淳さんの顔は眠っているようにいい顔をしていた。…一切消滅した時に、人は皆こんな顔をするのかと、私は枕元に座ってしばし考えこんでいた。
<人は何も分からなく生き
人は何か分かったような顔で死ぬ>
と拙著の扉に書いたことがあるが、すべての死は極楽への道であろうか。


大木惇夫「山蘭」:『現代日本詩集』新学社文庫 所収





素直に日向を掘つてゐる、
そのうちいいこともある、
山蘭のしろい匂ひがする。


北杜夫『或る青春の日記』中公文庫





くだらないことをスイスイとしゃべれる人は幸福だよ。でもむやみに腹が立つ。僕はかなり無理してそういう語を発する。怒りっぽくなったよ、たしかに、この頃は。シメシメ。…日々があきれるくらいどんどん経ってしまう時、人はどんな顔をするのだろう 僕みたいに眠そうな顔をしているのかしら?



多田富雄『残夢整理』新潮文庫





病理解剖も、〔岡林篤〕先生のやり方は変っていた。たとえば脳腫瘍の遺体解剖でも、脳の病変をいくら詳細に記載しても、先生は満足しなかった。関係ないと思われる全身のリンパ節、脾臓や骨髄、胸腺まで詳細に調べさせられた。「病変局所に目を奪われるな。背後にある全身の変化のほうが大切だ」というのが口癖だった。




思うところあり、この、気ままな活字中毒患者の読書メモ、突然ながら終了とさせていただきます。

皆様、これまでありがとうございました!


猿





>>[484]

気が向いたときにでも、再開を。ぜひ。

ペンギン

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