とにかく泣ける話。コミュの家族の結論

『九州に転勤だよ』
って会社で言われた時はビックリした、てか「え？その冗談笑えませんよ」って返事したぐらい突拍子もない異動の内示やった。

六年続いた単身赴任を終えて、また家族と暮らし始めたのが二年前。
また、家族と離ればなれ。しかも今度は遠い。
思わず日本地図見たぐらいやったからね。



それから二週間ほど会社の引き継ぎやら何やらで色々忙しかったんやけど、もう最後になるかも知れんって思って三男アキオとその友達連れてバスケのゴールのある公園連れて行ったり、次男ナツキの剣道の試合見に行ったり、末娘フユミを大好きな手芸屋さんに連れていったりしたんやけど、なんか子供たちみんなオレとの別れを惜しむ感じじゃなかったんよ。淡々としてたっていうか。


『ま、家族じゃなくなる訳やないし』って割り切ってたつもりやったんやけど、いよいよ最後の週末って時に長男ハルが
「今日は父ちゃんのお別れ会に外食や！」
なんて気楽なこと言うの。

「いやいや、これから二重所帯になるから色々と物入りなんや。贅沢せずに家で食おう」
と諫めるオレにハルが
「僕が年末年始にバイトした金が一万ぐらい残ってるからそれで行こう！」
言いやがるから涙腺弛んだやん(笑)

それでも
「あほか、父ちゃんなめんな。お前ら小僧に食わして貰うほど落ちぶれてないわ！」
なんて強がって気持ちだけいただくことにした。


ほんならカミさんが
「ほな、お父さんの好きなすき焼きにしよう」
て、なんかすごい高そうな牛肉買ってきた。
焼き肉食べ放題の方が安くついたんちゃうのってぐらいの高そうな肉。

結局、家でいつもより上等の肉のすき焼きが最後の晩餐になった。


その席で一応最後の言葉的なこと言わなあかんかなぁって
「ハル、ナツキ、アキオ。お前ら三兄弟は母ちゃんに心配掛けんようにせなあかんぞ！フユミは一生懸命勉強して母ちゃんみたいに素敵な女になれよ」
って言うたらカミさんが鼻すすって涙拭いてんの。それ見た三男アキオが
「お母さん、お父さんが行くまで悲しまへんって約束やったやん！」
と。


そうか、淡々としてたんは、そういう約束をしてたからなんやって判ったらまた泣けてきた。

カミさんが涙腺弛んだオレを見て
「ほらー、お父さんはすぐ泣くんや。だからお母さんはアンタ らに悲しい顔したらアカンって言うたんやん」

明らかにオレが泣き始めた感じにすり替えられた(;´д｀)



そんな晩餐も次の日の朝にはみんな学校やら部活に出掛けてて、オレも寂しく一人で旅立ったんよ。


実は会社の送別会でも有志だけが集まってくれた会があって、中締めの時にいきなり腕捲られて、マジックで『×』って書かれた。
「なんやねん、これ！」て言うたらみんながこっちに『×』って書いた腕向けてて
「仲間のしるしーっ！」てやってくれたんは泣けた。ワンピース知らないと意味わからんし、オレもう44歳なんやけど(笑)


そんなんもこんなんも含めて涙もろいまま九州上陸した。新天地やからもう涙拭って気持ち切り替えていかんとなぁって思ってた。

で、一人部屋の最初の週末。
カミさんに頼んでた引越しの荷物が届いた。

荷ほどきしてたら新品のワイシャツとネクタイと一通の封筒が。




『声を大にしてつたえたい……』
と書いてあるメッセージカードを開くと









『家族の中でいちばんかしこくなってやるから期待しておけ！
フユミ』


『三男だからって心配すんな！しごとがんばれよ！
アキオ』


『四兄弟の中で一番勉強ができる身としてしっかりがんばります！
ナツキ』


『親父のいない間、長男として種馬家を支えます。安心して仕事に専念してください
ハル』


『おじいちゃんと子供たちのことはまかせたまえ！
シオリ』







こいつらは……







こら反則やろ、、、












涙拭きながら思った。












オレこいつらが家族でホンマによかった。

さ、仕事がんばろって。















おしまい