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いつか、どこかでコミュの第4話『ドラマチック』

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意外にも話の口火を切ったのは彼女の方だった。
彼女は和也の独り言に気付き、クスッと笑いながら声を掛けてきた。
『さっきの無口な案内人さんですよね?』
意気込んでいた和也は不意を突かれたようで、うぐっ、と言葉にならない音を発する。
また笑われたが、和也は全く悪い気がしなかった。
とりあえず教室に入りませんか、と彼女に誘われ、和也はフラフラと付いていく。
その覚束ない足取りは和也の恋の盲目さを表しているかの様だった。
教室に入り、前から3列目の席に隣同士に座る。
次こそは先手を、と和也は口を開いた。
『あの、とりあえず、サラッと自己紹介を済ませよう』
平生を装った発言とまとまりのない思考がごっちゃになって和也の口から出る。
言ってる本人すらも心配になるくらい分かりやすい動揺に和也の顔は真っ赤にした。
その和也の姿に彼女はまた小さく笑う。
このやり取りが今の和也には堪らなく幸せだった。
高揚してタイミングを逃さないように、和也は自己紹介を始めた。
和也が一通りの紹介を済ませると、続いて彼女も話し始めた。
『私は奈緒って云います』
やっと彼女の名前を聞けた。
和也はまるで全ての目的を達成したかのように胸をなで下ろすと、途端にふっと意識が遠のいた。

気が付くと、和也は見知らぬベッドに横たわっていた。
眼前に広がる白い天井は少し前に流行ったドラマのワンシーンを彷彿とさせる。
気絶して気が付いたらベッドの上だなんてベタだな、と苦笑し、すぐに和也はドキッとした。
そのドラマでは、ベッドの横に主人公の最愛の人が座っていた。
つまりこれがドラマ通りならば、まさしく今ベッドの横には奈緒がいるはずなのである。
まさかそんな幸せな展開が…
そう思いながらも和也は恐る恐る右を向いた。
しかし、そこにはベッド同士を区切る白いカーテンがあるだけだった。
少さな期待が外れ、和也はがっかりとした。
はぁっ、とため息を漏らす。
間髪入れずに声がした。
『あ、気が付きました?』
突然左から聞こえてきた声に驚き、和也はベッドから落ちそうになる。
『いきなり倒れたから…』
そう続ける彼女の声は、もはや今の和也には全く聞こえていなかった。
今日1日、まるでベタなドラマのようだ。
和也はボーっとした頭で次の展開を考えていた。

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