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人と自然コミュの梅雨の6月に読んだ本

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梅雨の6月に読んだ本。◎がお勧め。○は準ずる。


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◎有田芳生 「何が来たって驚かねぇ!」 駿河台出版社 ¥1000(税込み)

 現職の参議院議員でジャーナリストの著者が東北大震災の現場を見歩きました。政治家はちょっと避難所に立ち寄って、すぐ帰るようなアリバイ作りが多いのですが、この方は毎月のように訪問されて、直接住民と話し合ったり意見を聞いています。知り合いの鍼灸師ととも避難所・仮設住宅を訪問して治療に当たられている最中に、いろんな事情を見聞しています。
 テレビ局などは、交通の便のよい避難所や仮設住宅しか取材しませんが、有田氏は日の当たらないような過疎地まで足を運びます。タイトルは、地震・津波を経験した漁師の言葉。被災地の現状は、この本一冊で十分だとは思わないけれども、直接現地を訪れて、直接被害に遭われた方に耳を傾ける。「聞いてくれてありがとう」と言われる。政治家でもあるので、要望のうち、実現できそうなものは自治体や国の関係機関に知らせることで、実現に向かうこともあるようだが、なかなかそうもいかないようだ。

 私は、農産物をわずかだけ利用していただいた程度しか救援はできていない。そもそも、3.11(そして3・14のフクシマ原発)自分の中でどのように位置づけたらよいのかの整理ができないままだ。
 早くから有機農業の道を選んでいるので、環境問題として、反原発の立場であるのは言うまでもないことだ。30年ほど前に参議院選挙で「原発いらない人々」の選対本部が愛知県に置かれたときに、関わったことがある。しかし、あのような、まだ何が起こっているのかの全容を解明できていない事故を起こさせてしまったことは痛恨の極みだ(下でも後述します)が、原発事故以前は反原発(脱原発依存)派の社会的な影響力は、それは微々たるものだったのだ。
 私たち家族は自然の中でシンプルな暮らしと営農を続けているが、福島と近県の農家、漁民の暮らしを想うだけでもつらいものがある。風評被害もあるし、消費者が激減してしまった農家も少なくないようだ。自殺した畜産業者もいる。消費者が放射能汚染を警戒するのもわかる。ここに来て、関電大飯原発の再稼働を政府が決めた・・・。


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◎内田樹「街場の大学論」角川文庫 ¥629(税別)

http://blog.tatsuru.com/
これが内田氏のブログです。著書も多く、最近では「日本辺境論」(新潮新書)も読みました。日本人の歴史、考え方にいろいろヒントをいただいています。
「街場の大学論」は、とにかく大学の話題、問題点を挙げて、通俗的ではない内田氏の答えも明快に書かれていますが、中でも少子化で大学進学率が50%に達していて、入学定員を遙かに下回る大学も4割に達したとかの中で、なお学部学科新設や大学統合などが進んでいる。ベースの受験生数が減少しているのだから、氏は全大学が入学定員を少なくすれば、経営を維持でき、学力も維持できるとしている、この「ダウンサイジング」の考え方は新鮮でした。しかし「規制緩和」「市場主義」に絡みとられていて実現は容易ではないようです。教育は市場化とは無縁でなければならないが、今は大学生の就職活動が大変な負担になっていて、後半の2年間は講義・ゼミに支障を来すようになっているし、学生も腰が据わらない状態だと。そして資格とつながる実学的な学部学科が増えて、専門学校化している。教養(リベラルアーツ)が軽視されているので、広い知識や判断力が涵養できなくなっている。文学部や哲学などは実学とは程遠いけれど、内田氏は本来的に大学はそのような企業の実学要請とは一線を画しているべきものであるとの原則論だし、私もそれに賛同します。即戦力である企業戦士を育てることが大学の目標ではあっては、すべてはカネのため、と同じことではないだろうか。
 文部官僚との対話もあり、これも面白かった。


◎内田樹「期間限定の思想」角川文庫 ¥552(税別) (平成23年10月刊)

 副題に、「おじさん」的思考2,とあります。著者は女子大の先生なので、女子学生から聞かれたことに答えるような形での文章展開になっていて、読みやすいです。
 時事問題にも触れてあるのだけれど、ちょっと古い10年くらい前の話題もあります。でも面白いです。フェミニズム批判の部分を解説者が絶賛しています。


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○佐藤信「60年代のリアル」ミネルバ書房 ¥1890

 1960年の安保闘争から、68,69年の全共闘運動・連合赤軍事件までの学生運動。そして現代の若者の政治感覚。リアルというのは皮膚感覚のことだという、リアルを切り口にした解説なので、政治闘争的歴史事実を書いているわけではないので、この時期を過ごしてきた私の感覚とはずいぶん遠いのだが、著者は東大の大学院生という若さなので、その取り上げ方がどういうふうなのかに私は興味を持ったわけです。
 私には樺美智子という名や、朝日ジャーナルも、三島由紀夫の切腹も、連合赤軍・浅間山荘、リンチ事件も同時進行で見聞してきた事柄であり、いささかの市民運動デモ参加や政治的社会的な活動もなかったわけではないが、私が若者であった時代に起きた、それらを現在の立ち位置から見て、評価を下すのは私の場合はそう困難ではない。公害被害者救援の作業に関わったこともあり、中部地方の市民運動とはなんらかの関わりを持ってきたし、現在の有機農業というエコロジーの仕事につながっているし、で、私の場合は卒業後どの位置でも「転向」した感覚がない。まぁ、転向するほどの高く隔たった位置にいなかったというのが真実で、ずっと現在までつながり続けているように思う。
 世界の流れでは、米ソの冷戦、共産主義と自由主義の対立の中で、それが国内に政治的分裂論争を起こし、学生がセクトの差はあれ、共産主義的イデオロギーという「理想」を抱えて、闘争を繰り返してきたのだ。しかし、理論的な話はこの本では一切無しで、ただただ皮膚感覚。ちょっと違和感を感じるが、巻末で紹介される文献を拝見すると相当の関連書を読破されておられる。私にとっては自分の体験歴史ではあったが、現在の学生からは「東大落城」や「連合赤軍」などは信じられないような過去の事件だろう。60年代から40年を過ぎて激動も過去のセピア色になった。
 長く続いた米ソの冷戦もソ連の解体で終結したあと、中国の台頭だが、すでに米国とは相互依存の貿易関係が構築されており、局地的な民族紛争を除けば世界全体を揺るがすような対立は存在しないようになっている。
 だけれども、国内では格差拡大。低所得者層の拡大。若い人を中心に雇用不安・非正規雇用拡大などの問題が多いと思う。人口も経済も下降傾向になっている。ダウンサイジング、降りていく生き方、などという言葉も出てきた。そして、フクシマである。
 (先に挙げた「原発いらない人々」は1989年参議院選挙比例代表区で立候補したが、結果的には全国で16万票。1議席には100万票必要であったので、話にならない惨敗だった。私の町ではポスター80枚のところ、50票程度であり、後々笑い話にしてしまう始末。他にも環境保護政党(山本コータローのちきゅうクラブなど)はあったのだが、それらを総合すれば、1議席程度は可能だったくらいの弱さ。その後、故藤本敏夫氏が「希望」で立候補するも、同じような得票数で惨敗。そんな経過の中で、原発が増加するのを止めることができず、フクシマが暴発したということだった)
 
 本題からは反れるので、これくらいにしておきたい。いずれにしても声を大にして話せるほどの私の経歴ではないし。


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○佐伯啓思 「反・幸福論」 新潮新書 ¥740+税

 2010年末から11年9月まで「新潮45」に連載されていたのが、12年1月に新書になり、4月末で10刷だから、読まれているのだと思うが、なかなか整理するのが難しい内容だと思う。ニィチェ、ハイデガー、プラトン、国内では法然が引用される。
 前半。米国の影響を受けて個人の権利や自由の拡大が「幸福」だと受け取られていて、ムラや家族は個人を束縛するという思想が「個人主義」なわけで、「封建的」ムラや構成員を「自由にさせない」(家父長的)家族が遠ざけられてくれば、その結末が現在にある個人の孤立と。現在は、しかし、「絆」とか「コミュニティ」という言葉に変わりつつあるが、それらはムラや家族ほどの強い拘束を受けない「ウィーク・タイ」(弱いつながり)なので、個人が引き受けることが可能らしい。
 科学技術は西洋思想から生まれたもので、日本では自然は神が宿っている信仰があるのにたいし、キリスト教文明では、自然は征服・支配・改良すべき対象であるとする。自然から人間に有益なものを取り出すことが、科学技術である。たとえば、代表的なものがエネルギーだ。その手段の究極が原子力発電ということになる。こういう脈絡で与えられると、なかなか反原発派の私には答えにくい。暮らしのあらゆる場面で、私たちが科学技術の恩恵を受けていることは間違いないわけで、そのような西洋文明の根底にある自然支配と技術信仰が人を幸福にすると、おそらく今も信じられているだろう。

 氏だけではないが、戦後日本を貫いてきたのが、平和憲法、日米安保体制、経済成長追求だと言う。現在でも国民はこれに満足しており、変えるつもりはないと。しかし、経済成長などは人口減・少子高齢化やグローバリズムで今後は望めないというのが常識ではないのかなぁ。そのように考えるのは陰鬱になるので「頑張れニッポン」などと勢いのいい言葉が飛んでるのだと。
 


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ロナルド・ドーア「金融が乗っ取る世界経済」中公新書 ¥800+税

 金融とは何かと言うと、カネ(それを担保する証券)の売買取引ということになるだろう。トレイダー、ディーラーの世界。実体経済ではなくて、投資・投機。外為・FXもこれに含まれるか。
 一時期、村上ファンドというのがあった。出資を受けて、企業の株を買い占めて、企業買収を言いながら、株価が上昇するような企業行動要求をする。株価の上昇機に売り抜けて利益を盗る、というのが常道だったが、その元は「アングロサクソン自由主義的経済」で、アメリカなどで主流の、会社は株主の利益を第一に考えるべき存在だとする。日本ではまだ会社は社会的地域的人脈的文化的存在と受け入れられているので、そのような株主利益擁護第一の声は強くなっていて、主張は時々聞くこともある。
 デリバティブなどを構成した数式などはバンカーでも理解できないらしい。住宅ローンが証券に溶け込んだなどと言われても、なかなか実感がないわけだが、実際に日本の銀行でも被害があったようだ。
 とにかく、私とは別世界の話しなんだけれども、最後まで読みました。


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櫻田淳「常識」としての保守主義 新潮新書 ¥740+税

 保守主義とは何か、を知ろうとするのなら、西部邁氏の著書か文章を読むだけで足りるのだが、別の考えもあろうかと思い、買ってみた。歴史や経験いを尊重し、緩やかな変化を許容するというのが基本理念だと思っていて、それ以上の記述はないし、文章も読みにくいので、100ページ未満で読書放棄。
タイトル買いの本だから、ミスもたまにはあるわね。


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◎「銃・病原菌・鉄」(上・下)草思社文庫 各¥900+税

(大作なので、別枠で書きます)

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