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アナタが作る物語コミュの【ホラー・コメディ】吸血鬼ですが、何か?第1部復活編第8話

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処女の乙女はマイケル・四郎衛門にここに来るまでの経緯を話し始めた。

「私の名前は咲田真鈴(さきたまりん)と言います。
 今は大学の3年生で法律の勉強をしています。
 これと言った彼氏はいません。
 私は魔法とか心霊とか…いわゆるオカルトな事が好きで色々調べたりするんですけど、大人数でワイワイガヤガヤするのが苦手で皆で心霊スポットに行ったりオカルトサークルに入ったりとかが苦手で本やネットで色々調べたりしていました。
 高校時代の友人に誘われてマッチングアプリに入ったらあの人(俺を指さした)がオカルトなことに関して色々資料を持っているとアプリで結構レアな資料の写真とかを見せられてついついお家に(ここの床を指さした)来ちゃって。
 ハーブティーを飲まされたら、睡眠薬か何かが入っていて寝てしまって気が付いたらこんな格好で(自分の服を指さした)あの部屋のベッドに寝かされていたんです。」

マイケル・四郎衛門が処女の乙女の真鈴の服の袖を遠慮がちに摘まんだ。

「ふぅむ、しかしこれはずいぶん仕立てが良いな、東欧当たりの民族衣装だとは思うが腕の良い縫子が祭礼用に特別に作ったものと見える。
 良い品だ、南部の舞踏会に出ても褒められる出来だと思うぞ。」
「でしょう?
 これは唯一このうちに来て手に入れた貴重な物だと思うんですよね!
 今回のお詫びにあの人(俺を指さした)から頂くことにしました!」
「それは良かったじゃないか!」

真鈴とマイケル・四郎衛門はお互いにあははと笑った。
なんか二人は打ち解けているようだと俺は少しほっとした。
マイケル・四郎衛門が吸血鬼となるまでの話を聞いたからなのだろう。
パスタを茹でている間にニンニクとオリーブオイルを絡めて弱火に火をかけ、ニンニクの匂いがキッチンからダイニング流れたが、マイケル・四郎衛門はまったく気にしていないようだ。
やはりニンニクが嫌いと言うのは迷信のようだ。
いやしかし、吸血鬼と言う存在自身が迷信の塊のような物なのだが、現に目の前に吸血鬼としか言いようのない存在がいる…それを考えると俺の頭の中で様々な考えが堂々巡りをして混乱してきた。

その考えを頭から振り払い、俺はパスタをフライパンにあけてペペロンチーノを作り上げ、セロリキュウリレタスにオリーブの実を混ぜたサラダを作り、テーブルに並べた。

「おお、これは旨そうだ。」
「もう深夜で太りそうだけど私もお腹すいちゃった。」

マイケル・四郎衛門と真鈴は料理にとりかかる、がマイケル・四郎衛門が顔を上げて俺を見た。

「彩斗くん、すまないけど何か頭を覆うものが無いかな?
 長年の埃がまだ髪の毛に残っていてね…」

俺は赤と青のバンダナを渡し、マイケル・四郎衛門がそれを頭に巻いた。

「うん、これで大丈夫、あと食事の後でバスを使わせてもらえんかな?
 どうもかなり長い事冬眠していたようでな…」

俺はどうぞ、お構いなしで使ってくださいと答え、マイケル・四郎衛門は嬉しそうに笑い、料理にかぶりついた。
やはりアメリカ南部の上流階級に触れていたようでマイケル・四郎衛門はものすごい勢いでパスタとサラダを平らげながらもそのしぐさは上品で気品を感じた。
当時アメリカ上流階級で執事をするくらいだからその辺りの作法など身に着けていたのだろう。

「しかし、昔はその、悪鬼の類は沢山いたのですね。
 かなり質の悪い悪党以外に悪鬼も退治していたようで…」

俺が尋ねるとマイケル・四郎衛門はふふんと笑った。

「じゃあ、今は悪鬼はいないと?」
「ええ、科学も進んでいますしテレビやラジオ…新聞マスコミの事なんですが悪鬼が出たなんて事も言われないですし…」
「彩斗君、あの壁にかかっているのはカレンダーだろう?」
「そうです。」
「すると…上に大きく書かれている数字がおそらく西暦だな?」
「はい、その通りです。
 今は西暦2022年の5月10日です」

マイケル・四郎衛門はふぅんと声を上げた。

「私があの棺に身を隠して冬眠に入ったのが1862年の頃だ。
 いまから160年前だな…人類の科学や社会がどれだけ進歩したか判らないが、悪鬼は決して絶滅なぞしていないと思うぞ。」
「…」
「普通の人間よりも悪鬼には頭が良くてずる賢い者も沢山いるし悪鬼は基本的に進歩的な新しいものが好きだ。
 昔、われが生きてきた頃でさえ悪鬼は結構巧妙に身を隠していた。
 頭の弱い悪鬼はすぐにその存在を知られて人間に存在を暴かれて退治されたかも知れないが、生き残った悪鬼達はより巧妙にその存在を隠し、己の欲望の為に人殺しや人を堕落させてきていると思うぞ。
 悪鬼は人の集中や混乱、まぁ大都市が出来る事や戦乱が大好きだが…今の時代はどうかね?」
「確かに人間はどんどん増えて大都市をいくつも作っていますね、ここは東京と言うところですが狭いところに1000万人以上が住んでいます。
 世界のあちこちで何百万人も住んでいる大都市は幾つも存在しています。」
「戦乱にしても今も世界中で起きているし、最近ヨーロッパでは大々的な侵略戦争が起きているわね。」
「ふぅん、やはりな。
 大都市になると近所に住む人間や隣を歩く人間の素性などに無関心になる。
 悪鬼としては隠れやすいし欲に駆られて悪事を働く操りやすい人間も多い。
 また戦乱が起きるとどさくさに紛れて悪鬼どもはやりたい放題だ。
 侵略をしたり戦争を仕掛ける権力者の側近には大抵かなり質が悪い悪鬼がいるのだ。
 品性下劣で欲が深い人間と波長が合うのだろうな。
 そう言う輩は大抵顔に出ているぞ。
 いずれその権力者も悪鬼と同化して手が付けられない災厄を引き起こす。
 私の生きている頃より悪鬼どもは増えているしより巧妙で手強いものになっているかもな。」
「今の日本でもですか?
 それはちょっと考え辛いですけど…」
「そうかな?この国では行方が知れなくなる人間がどのくらいいる?」
「それはちょっと判りませんけど…」

俺がそう答えると真鈴がサラダをフォークで取りながら答えた。

「年間8万人が失踪…行方不明になっています、届け出があるだけで。」
「真鈴さん詳しいね。」
「大学で法科ですから。」

マイケル・四郎衛門が頷いた。

「ほらな、判っているだけで8万人、実際は行方知れずになっている人間はもっともっと多いだろう。
 そのうち5パーセントが、実際に届け出がされた行方知れずの少なく見積もって5パーセント、4000人が悪鬼に食われたとしても相当な数字だと思うがな。
 その他不可解な自殺事故犯人が不明な殺人など加えたら…」
「…」
「…」

マイケル・四郎衛門の言葉に俺と真鈴はショックを受けて黙り込んだ。
会話が途切れ、黙々と俺たちは食事をした。
実際に存在する悪鬼の一人からこんな事を、具体的な数字を挙げて筋の通った説明をされたら…

「ふぅ、ごちそうさまだった。
 バスを使わせてもらって良いかな?」

マイケル・四郎衛門そう言い俺たちの顔を見つめた。

「色々聞きたい話があるだろうが、まずはさっぱりさせてくれ。
 160年分の垢を落とさねば。」

時計は午前1時を回っていたが俺達の目はますます冴えてしまった。





続く


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