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アナタが作る物語コミュの【青春活劇】中二病疾患 第十三話『砂時計』

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コミュ内全体

 私は元々占い好きやおまじない好きが高じて、オカルトに興味を持ってしまった。だが、後悔はしていない。今回はそんな私にぴったりな(?)不思議な話である。

 私、宅間ひかるはとある雑貨店にいた。何て事はない。クラスメイトの母親が経営する雑貨店だ。キラキラしていて可愛い小物とかも置いてある。ちょっとした占いやまじないのグッズもある。しかもどうやって仕入れているのか、安い。
 クラスメイトの野中くんとは全く似ていない小柄ぽっちゃりにふんわりショートの可愛らしいお母さんがお店にはいる。色が白くていつもニコニコしている人だ。上は高校生、下は小学生の母親には見えない。
「あれ? 来てたの?」
 低い声なのにのんびりした口調が響く。
「うん、何か可愛い小物を探しててさ」
 例のクラスメイト、野中くんだ。
「ふーん」
 気のない返事だ。たまに野中くんはお母さんのお店を手伝っているが、元はお母さんの趣味でやっているようなお店だ。気楽な感じらしい。
「何これ?」
 私はふと目に止まった砂時計を手にした。店の照明にかざす。中の砂は光りの加減によって赤にも黄色にも緑にも変化する。砂を入れている瓶には小さなヒビが入っていた。
「あ、それ。売り物じゃないんだ。ほら、ヒビが入ってるじゃん。でもきれいだし捨てるのがもったいなくてさ、俺がもらったんだ。何で商品と一緒に置いてるあるんだろ?」
 野中くんは首を傾げた。
「まあ、欲しかったらあげるよ」
「別に良い。何かせしめ取ったみたいだし」
「変なとこ律儀だよね」
「たまに言われる」
 私は笑い返した。確かにきれいだけど、どうしても欲しい物でもないし、いくら傷物でも元は商品だった物をタダでもらうのは気が引ける。
 砂時計を野中くんの手に渡す。その瞬間、シャラリと鈴が鳴るような音がした気がした。いや、気のせいだろう。でも妙にリアルに耳に残る音だ。さっき光りにかざした時には何もなかったのに。
「どうしたの? やっぱり欲しくなった?」
 野中くんが訊いてくる。
「いや、何でもないよ」
 私は取りあえず、店を出た。

「宅間さん!」
 家に帰る途中、野中くんに呼び止められた。
「どうしたの? 走ったの?」
 野中くんの顔は真っ赤だし、汗をかいていてる。陸上部の野中くんに取っては大した距離ではないと思ったが、走らせてしまって何だか悪い。私のポーチを手にしている。
「忘れ物」
 そう言いながら差し出す。小五の誕生日に買ってもらってからずっと気に入って使っているやつだ。
「明日、学校で良かったのに」
「いや、大切な物だったらいけないから」
 秋風が吹く。照れくさそうに鼻の頭をかく野中くんの頬も冷ましてくれるだろうか。
「ねぇ、ちょっと歩かない?」
 私は訊いてみた。

 ___

 ちょ…待って! まだ何も準備してない! いや、普段から準備なんてしないだろ、落ち着け、野中務!
「ねぇ、ちょっと歩かない?」
 これってデート? 土曜日の午後だし。いやいや、まずないだろ。宅間さんは単なるクラスメイトを気遣っただけだ。
「うん、歩こうか」
 俺は余裕ぶって答えた。でも…心臓はバクバクだ。

 秋は好きだ。涼しいし、冬ほど寒くない。いや、冬生まれなんだなけどね。
 宅間さんを追いかけて火照った体に、服抜ける爽やかな風、そしてポカポサしま太陽も心地良い。
「ちょっと、早いよ!」
 いつの間にか宅間さんを置き去りにしていたようだ。
「ごめんごめん」
 そう言えばどこをどう歩いていたかも記憶になかった。気付けば中央公園にいた。
 どうしよう? えっと…何故かポケットに手を突っ込む。何か硬い物に当たる。何だ?
 探って取り出してみると、店で宅間さんが欲しそうにしていた砂時計だった。砂の色が光りの加減によって赤や黄色や緑に変化する物だ。瓶にはヒビが入っているから売り物にならないと母が言っていた。こんな物を仕入れた覚えもないとも。
「あれ? 持って来てたの? 気に入ってるんだね」
 宅間さんが笑いながら言う。か…可愛い! 学校でのポニテも可愛いけど、下ろしてるのも可愛い。半月型になる目も良い!
「何か顔赤いよ? まだ火照ってる?」
 いや…走って火照ってたのはもう冷めた…はずだ。
「大丈夫」
 やばい、少し上ずった。
「変なの」
 変? 変に思われた?
「ねえ、その砂時計さ、時間を計る時に砂が落ちるじゃん? 光りにかざしたらきれいなんじゃない?」
 ドキドキしている俺に宅間さんが言う。
「え? あ、そうだね」
 俺は砂時計を逆さにした。シャラリと音がして砂が煌めきながら細い部分を通って落ちてゆく。光りを反射して落ちる時は金色にも銀色にも紫にも見える。不思議だ。どんな仕掛けだろう。
「きれいだね」
 宅間さんが感心していたその時だった。
 目の前にお姉さんだかおばさんだかよく分からない年頃の女性が現れた。勤続十年の事務員みたいに見える。今にも「私は経理系の専門学校を卒業後、今の会社に事務員として入りまして、六年前に主人と職場結婚、三年前に男児を一人出産、一年の産休を経て、現在はパートとして経理事務のお仕事をさせていただいております」とでも言いそうな女性だ。ベージュの地味なスーツが似合っている訳ではないが妙に馴染んでいるし、薄い化粧も動きないショートヘアもしっくり来ている。
「初めまして、ご主人様」
 俺を見て薄い作り笑いを浮かべる。ちょっと待って! 一体何だよ、ご主人様って…。
「私は砂時計の精霊です。所有者となった人がその砂時計を逆さにすると現れます」
 ちょっと待って!(二回目) 何それ、魔法のランプじゃあるまいし…。
「あの…あなたは願いを叶えてくれる系の精霊なんですか?」
 宅間さん、食い付いた!
「私は所有者以外の質問には…」
 精霊(あくまで本人談だよ)が苦笑いを浮かべる。
「願いが叶うんですか?」
 俺は訊いてみた。今度は俺にニッコリと愛想笑いを浮かべる。
「私は願いを叶えられると言えば叶えられます。受け取り方次第です」
 よく分からない。
「それってどう言う事ですか?」
「私は所有者を過去に戻し、その過去をやり直すチャンスを与える能力を持っています」
「過去をやり直す? 余計に分からないんだけど」
「そうですね、例えば…」
 精霊はパチンと指を鳴らす。その直後、俺は白い部屋にいた。広さは四畳半と言う所か、真ん中に丸いテーブルが置いてある。テーブルには椅子が備え付けてあり、精霊と俺が向かい合うように座っていた。見渡すと壁も椅子もテーブルも真っ白だ。窓もドアもない、どこから入ったのだろう? それに照明器具が見当たらないのになぜ明るいのだろう?
「ちょ…ここはどこですか?」
「砂時計の中です。早速ですが説明を…」
「それより元の場所に返してよ!」
「あの女の子がいらっしゃるとちょっと…。野中様の過去のやり直しですし、人によっては知られたくない過去の修正もありますし」
「俺にやり直したい過去なんて…」
 ある! たくさんある。
「ないよ…」
 嘘を吐いた。
「人間と言う生き物は誰しもあの時ああすれば良かった、こうしていれば今頃は、などと考えている生き物だと訊いてますが」
 確かにそうだろうよ。精霊は一定のトーンで落ち着いてしゃべる。
「せめて宅間さんは聞いてても良いだろ? 俺の言う事しか聞かないとか変じゃない?」
「私はそう言う風に出来てますから。ご主人様がおっしゃるのでしたらその宅間様もお呼びして、ある程度の質問に受け答えするくらいなら出来ますが。ただ、私は野中様の命令しか聞きません」
「そうしてよ」
 再び精霊はパチンと指を鳴らした。

 ___

 ここは誰? 私はどこ?
「ようこそ宅間様。改めまして私、砂時計の精霊です」
 精霊を名乗る女性は私にも愛想笑いを浮かべた。さっきは野中くんにしか向けていなかったのに。
 いや、それよりこの白い部屋は何? どうして私は野中くんと隣り合って自称精霊と向きあっているの?
「では早速システムの説明に入ります」
 私達はポカンと口を開けた。さぞアホっぽく見えたに違いない。
「私には人の過去を修正する力がある、と言うと大幅に語弊がありますが、持ち主様を過去に戻して修正のお手伝いをさせていただいています」
「それってどう言う事ですか?」
 野中くんが訊く。渡しも分からない。
「言ったまま、持ち主様を過去にお連れして修正したい箇所を修正していただきます。私はある程度の限界はありますが、それをサポート致します。
 そうですね。具体例を出しましょう」

 ………

 例えば野中様は今は中学生でいらっしゃいますよね。部活は陸上部、委員会は体育委員をなさっていますよね。
 そんなに驚かないで下さい。私はご主人様のデータを読み取っただけに過ぎません。
 さて、お話に戻りましょう。
 例えばもし、部活を陸上部ではなく文芸部に入っていたら今頃は本を読むのが好きで、もしかしたら小説家を目指していたかも知れない。もし、体育委員ではなく給食委員だったら体育倉庫の整理をさせられる事もなく、配膳の事を考えていたでしょう。
 そう言う事なのです。あの時、あの道を選べばきっともっと良い人生を歩めたんじゃないか、その思いを叶えるのが私の力なのです。
 私の力で野中様を過去に戻し、そこで修正したい箇所を直していただくのです。
 もちろんある程度の制限はあります。
 例えば、そうですね。過去の年齢は変えられません。野中様は今は十三歳でいらっしゃいますが、三年前に戻るとします。その時の野中様は今の十三歳の姿ではなく十歳の姿で過去を修正することになります。戻った時間の自分にしかなれません。赤ちゃんの頃の時間を修正する時は赤ちゃんに戻ります。もちろん、記憶は今の十三歳のままですからご安心下さい。
 え? ご自分が生まれる前に戻ったらどうなるのかですか?
 それはこれから説明します。
 生まれる前、出産前で受精後でしたら胎児の姿に戻ります。それよりも前でしたら、今の姿で戻る事が出来ます。
 そしてこれは肝心です。もし修正したからと言って、必ずしも思い通りになる訳ではないと言う事です。
 例えば昨日に戻って野中様がケーキを焼いたとしましょう。必ず今日、美味しいケーキが食べられるでしょうか? もしかしたら失敗してケーキは美味しくないかもしれません。もしかしたらご兄弟に見つかって先に食べられてしまうかも知れません。
 つまり修正した未来が必ずしも希望した形に繋がるとは限らないのです。
 私はサポートをすると申しましたが、実際に過去を修正するのは実体のある持ち主様、と言う事になります。私は必要な物品を出したり(と、言ってもあまり質量の大きな物は出せません、例えば家一軒とか)、情報を調べたり、それだけです。私は姿こそ見えど、実体のない立体映像のようなものとお考え下さい。
 そしてもう一つ。私が過去に戻せるのは一度だけです。思い通りにならなかったからと言ってやり直しのやり直しはできません。
 それではご納得いただけない? 確かにそうですね、より一層後悔してしまう可能性もあります。そこで、三回に限ってはシミュレーションを行えます。
 この時間まで戻ってこう修正したらどうなるか、それを予想してお見せします。そう言うプログラムがあるのです。
 では、修正したい過去はございますか?

 ………

「えっと…」
 野中くんは言葉に詰まった。きっと修正したい過去があるが、あまり言いたくないのかも知れない。
「凄いじゃん! だったらこないだのロト6の当選番号を調べてもらって買いに行くってのもありなんでしょ?」
 私は訊いてみた。瞳の奥に『¥』のマークが見えた事だろう。
「ええ、まあ」
 精霊は無表情で答えた。
「待ってよ。お金より大切な物もあるじゃん」
「それって何?」
 上手くすれば山分け…ぐふふ…なんて考えてしまう。よだれが…。だからこそ野中くんの言うお金より大切な物って何だ?
「ほら、皆が元気で平和に生きていける事とか」
 野中くん、現実に私の汚れている部分を示すのはやめて。
「よし! 決めた。阿久軍団の結成を阻止する」
 野中くんは高らかに宣言した。
 阿久軍団とは私達の中学の同学年で、一年の時に当時の一年一組を学級崩壊に導いた主犯の四人だ。今は私達のクラスの三宅くんが抜けているが、隣のクラスの不良ぶってた三人が加入し、服装の乱れや喫煙、校外でのケンカが問題となっている。
「ではシミュレーションしてみますか?」
 精霊が訊く。
「うん」

 まずはいくつかの話しを整理する。阿久軍団は元一年一組で仲の良かった四人組だ。リーダー格の阿久龍太郎を筆頭にケンカ要員の小林拓也と三宅洸太、マスコットポジションの仙道秀明によって構成されていた。
 去年の夏までは定金隊と言う高校生の不良グループがいた。彼らはこの界隈の中高生を震え上がらせる程に暴れ回っていた。
 中一の夏休みに阿久くん達は定金隊を二回のケンカに渡って倒し、自信をつけた。そしてそれを学校に持ち込んでいじめや校内暴力を起こし、学級崩壊を起こした。いつしか阿久くん達は阿久軍団と呼ばれるようになっていた。

「で、具体的に去年の何月何日に阿久くん達と定金隊がバトったか分かるの?」
「え…えーと…」
 野中くんが口ごもる。何月何日の何時何分か分からなければ過去に戻るなんてできないんじゃないか?
「私が調べられます。何があったかを特定できればですが」
 精霊が言う。
「えっと…去年の七月後半から八月の間の藻茶市で、阿久龍太郎、小林拓也、三宅洸太、仙道秀明の四名が定金隊と呼ばれる不良グループとケンカしたのはいつか教えて下さい」
 野中くんが言うと、精霊は目をつむって何やら白いぼんやりとした光りに包まれた。五秒後、光りが消えて目を開ける。
「去年の七月二六日の午後二時三二分から始まったケンカと八月二七日の午後一時三分から始まったケンカの二回があります。いずれも場所は中央公園です」
 そんなに厳密に…。
「七月の方で。公園に来る前に彼らがどこで何をしていたかとかは分かる?」
「一時二五分から近くの雑木林で蝉を捕まえたり歩き回ったりした後、二時二三分に林を出て公園に向かっています」
「林から公園までの彼らが通ったルートは?」
 精霊はポケットから携帯を取り出す。スマホだった。グーグルマップで藻茶市の地図を表示し、雑木林から公園までの道のりを示した。
「よし、シミュレートする。去年の七月二六日午後二時二十三分にこの林から公園までの中間辺りの道路に返して。そこで龍太郎達を待ち伏せする。宅間さんは隠れて見てて」
 野中くんは真剣な顔で言った。右の鼻の穴から毛がチラリと見えている事に気付き、ちょっとだけ残念だ。
「では、シミュレート開始します」
 精霊が言うと、辺りが突然眩しくなった。

 ___

 夏の真昼の住宅街。暑い。蝉の鳴き声も聞こえる。まだ十月の前半なのに懐かしさすら感じる。
  宅間さんは電柱の影に隠れていた。言われた通り、見守ってくれるようだ。
『では頑張って下さい』
 精霊の声がどこからか聞こえた。
 やるんだ。未来を変えるんだ。
「もうすぐ彼らがやって来る」
 龍太郎達は定金隊をやっつけて変に自信を着けたんだ。それから夏休みは不良高校生相手に暴れ回り、二学期からは学校でも暴れ回った。
 ならばこの日、定金隊と接触させなければ良い。そもそも一年の一学期の時点での彼らは自分達からケンカを吹っ掛けるような奴らじゃなかった。定金隊から絡まれたに決まってる。
 つまり彼らをねじ曲げた定金隊と接触させなければ良いんだ。
 四人が来た。
 髪がボサボサの洸太、龍太郎も拓也も髪が黒い。そして皆、今より幼い。まだ片足を小学生に突っ込んでいるみたいだ。ちょっと可愛いかも…!! って、そうじゃない。
「あれ? 皆これからどっか行くの?」
 俺の声が掠れた。あ、去年の秋頃まで声変わりだったっけ?
「よう、務じゃん」
 龍太郎がにこやかに言う。懐かしい…その柔らかな笑い方…。今はいつもムスっとしてるのに。
「公園でも行こうと思ってるんでぃ」
 洸太があっけらかんと言う。
「暑いじゃん、やめようよ。図書館とかで涼まない? 一人で行くの寂しくてさ」
 涼むと言うキーワードに四人の顔がほころぶ。汗だくだもんな。
「ほら、漫画コーナーでゆっくりくつろぎながらさ、三十分ならネットも出来るし」
 魅力的な言葉をかける。ただで涼めて何気に遊べる…中一なんてチョロいもんさ…フフッ。
「そうだね、外遊びも暑いし」
 秀明が賛同する。
「夏休みの読書感想文の本も選びたいし」
 拓也の太い声も賛同する。と、言うか意外と真面目だな。
「じゃ、図書館で遊ぶぜぃ」
 洸太もワクワクしているようだ。
「あんまり騒ぐんじゃねぇぞ。花…水沢が後でうるさいからな」
 あ、委員長が怖いんだ、龍太郎も。
 これで四人は公園に行かない。定金隊とも戦わない。平和だ!
 俺達は図書館へと歩き出した。
 これでよし! もう大丈夫。

 白い部屋に戻っていた。
 目の前に砂時計の精霊がいる。
「いかがでしたか?」
 にっこりと笑って訪ねて来る。
「うん、上手く行った」
「ねぇ、このシミュレートって今がどうなってるかも分かるの?」
 宅間さんが訊く。そうだ、俺も平和な学校生活を送っているはずの今を見たい。
「もちろんです。学校での様子でよろしいですか?」
 気が利くな。
「ああ。昨日辺りで」

 再び切り替わって朝の学校の昇降口だ。
 昨日は朝練がない日だ(来週試験だから部活はないんだ)。
「おはよう、楽しみだね、どんな未来が待ってるか」
 宅間さんがウキウキしている。
「きっと上手く行ってるよ」
 俺も笑いを抑えられない。
 俺達は二年四組だから、一組から三組まで教室の前を歩く。その時にバラバラになってしまった彼らを探せば良いんだ。
 一組。あれ? 龍太郎はいない? まだ来てないのかな? 朝が苦手とかではなかったと思うけど。
 二組の前を通る。拓也がいた。男子生徒と話している。茶髪じゃない! 制服のネクタイもちゃんと締めてるし、ボタンもちゃんとはめてる。グレてない。
 三組の前を通る。秀明がいた! 一年の時に同じクラスで阿久軍団にいじめられていた田頭周介や松屋行広と仲良さげに話している。髪も自然な栗色のままだ(元々色素は薄いからね)。こちらもグレてない。
 ついでに三組のチャラいのかヤンキーぶってるのかよく分からない三人組も見る。制服は着崩してるけど、グレるほどではない。髪も染めてないし。阿久軍団と手を組んでない! 素晴らしい!
「おはよう!」
 良い気分で四組の教室に入る。
「おう、おはよう。何か今日は妙に元気だな」
 健太が言う。
「ふふ、内緒」
「何だよ、何か良い事あったのか? 分かった! ついに初めてのセック…」
 大輔が下ネタを言いかけて、木下さんに喉元にハリセンを突き付けられた。大輔がヒッと声を上げる。宅間さんが呆れ笑いしている。
 楽しい朝だ。
「おはよう! 元気?」
 さっき(ホントは中一の夏)より髪がサッパリしている洸太に声をかける。
「おう、元気でぃ」
 ご機嫌な声が帰って来る。良い感じ。ネグレクトしていたお父さんからおじいちゃんに引き取られて幸せになる辺りはそのままみたいだ。小綺麗だし顔色も良いし。
「もう一回一組見て来る?」
 小声で宅間さんが聞いて来る。頷く。
「多分、大丈夫だと思うけど念のためにね」
 宅間さんが言う。
 一組の教室を覗く。いた、龍太郎。席にかけてうちのクラスの委員長と何やら話している。
 平和そうじゃん! 幼馴染みと話す余裕!
「あ、宅間さん、野中くん、おはよう」
 委員長が明るい顔を見せる。龍太郎は少しつまらなさそうだが一応会釈だけした。
 委員長が立ち上がり、こちらに向かって来る。
「誰かに用事だった?」
 委員長が訊いてくる。
「いや、別に…」
 曖昧にはぐらかしておく。
「ヘーンなの」
 委員長は明るい。いや、むしろ明るさに不自然さが…。
 教室に戻る。大丈夫、いつもの明るい朝だ。龍太郎達もグレてなくて平和じゃないか。委員長は…あれだ、たまたま寝起きが悪かっただけだ。いや、精霊がこれはプログラムとか言ってたから、プログラム故の不自然さだ、きっと。
「おはよーっす」
 気だるそうな声と供に乱暴に引き戸を開けて三人のヤンキーが入って来た。
 一人は金髪で髪をツンツンに立て、左耳には太いピアスが光っている。下は制服のズボンだがメチャ下げてパンツが見えてるし、赤地に白抜きのロゴ入りのTシャツに制服のブレザーを羽織っている。これは…葉山健…!?
 もう一人は長めの銀髪に眉毛がなくなる程に細く、胸元にごついネックレスが光っている。同じく下げたズボンだがカッターシャツを着ている。と、言っても胸元は大きく開けられている。これは…森はじめ…!?
 そして最後の一人。茶髪に青いメッシュを入れて
、同様に下げられた制服のズボン、上は(悪趣味な)ドクロのイラストが入った黒のトレーナーだ。これは…やっぱり鈴木和也だ。
 むしろ何があった!?
 クラスの皆が静まり返る。
「おらおら、場所開けろよ、教室狭いんだからさ」
 三人は肩を揺すりながら席に移動する。
「あ、おはよう。今日は朝から来てくれたんだ」
 委員長が例の不自然な明るさで足を投げ出すように座っている彼らに歩み寄る。そしてクラスの皆は彼らから離れる。
「何だよ、何だよ、せっかく早起きして登校したのに皆冷たいなぁ」
「あー、早朝登校とか無理があったわ、肩が凝る。おい野中、肩揉んで」
 和也が俺に顎をしゃくる。
 ちょっと待て、俺の元いた時間ではお前、サッカーの朝練とか自主的にしてたろ?
 頼まれると嫌と言えない俺は和也の後ろに回って肩を揉み出す。
「力足らんわぁ、お前でかいだけで力ないわぁ」
「す…すみません!」
 って、何謝ってるんだよ、俺! 情けなさ過ぎるだろ?
「ねぇ、コーヒー牛乳ないの? 喉渇いたんだけど」
 はじめがふて腐れたような声を出す。
「麦茶なら…」
 早くも机の上にコアラのマーチファミリーパックを広げているはじめに委員長がペットボトルの麦茶を差し出す。
「まぁまぁ気が利くな」
 意外にもご機嫌でコアラのマーチを口に放り込んで麦茶で流し込む。
「つまんない、つまんない、学校来てもつまんなーい。誰か面白い事しろよ」
 健がクラス全体を見渡しながら意地の悪そうな笑みを浮かべている。皆が目を合わせないようにする。
「あ、津山と目が合った。田村と一緒にコントでもやれよ」
 津山浩樹が体をビクッと震わせて、隣にいた田村明仁が身を乗り出す。
「おいタケ、あんまり調子乗るなよ」
 あくまでも明仁は諭すような口調だ。でも目の奥には厳しさが宿っている。
「何だよ、アキ。俺に暴力でもふるうの? 良いのかよ、そんな事して」
 健が不敵に笑うと明仁は一歩後ずさった。
「ほら、コント! コント! でっかいのとちっちゃいのでコント!」
「コント! コント!」
 健が手を叩きながらコントコールをするとはじめと和也もそれに悪乗りし始めた。
「ご…ごめん下さい! どなたですか! 津山浩樹が即興で何か面白い事をさせて頂きます! お始め下さい! …。ありがとう」
 浩樹、それで良いのか?
「やめろ、ヒロ」
 明仁が浩樹を庇うように前に立つ。
「うーん、十四点」
 はじめが腕組みをしながら渋い顔をする。
「あっちゃー。津山どうするよ? 森先生怒っちゃったよ?」
 健が浩樹に歩み寄った。明仁が前に立ち塞がる。浩樹は泣きそうだ。
「お前らそんな奴らじゃなかっただろ? いい加減にしろよ」
「あーお説教とかアキうざい。委員長、ぶっ飛ばしといて」
 健に言われて委員長が困り顔になる。
「お前らほんとにいい加減に…」
「良いよ、田村くん。私からちゃんと言って聞かせるから」
 あくまでも委員長は彼らの肩を持つようだ。
「もうやめて、こんな事。定金さんとも手を切って。何なら私が話しをつけても良いから」

コメント(26)

 何で定金さんが出て来るんだ?
「何だよ、委員長。俺にそんな事言うのかよ。泣いちゃうぞ?」
 むしろニヤニヤしてるよな、かなり嫌な意味で。
「おい、お前ら何やってんだよ!」
 教室の扉が激しく音を立てて開き、熱い湯をかぶったように顔を真っ赤にした龍太郎が教室内に入って来る。健達三人に歩み寄る。
「おう、どなたかと思えば俺らの家来のリュウじゃん。一組からわざわざご挨拶ありがとさん」
 完全にふざけているとしか思えない。
「学校に来たと思ったら皆に迷惑かけて、何してんだよ? 頼むから大人しくしてくれ」
 今の現実の龍太郎に聞かせたい台詞だ!
「今朝だって花と相談してたんだよ、俺達はお前らを甘やかし過ぎてたって。お前らにも家庭の事情とかあるし、俺らがしっかりしてればいつかは気付いてくれると思っていた。でも、もう限界だ」
 龍太郎が健の胸ぐらを掴む。健はバカにしたように睨み返した。
「あれ? いつまでも小四の時のお約束を守ってるリュウに俺達は殴れないよな?」
「粋がってないで放してやれよ」
 和也が龍太郎の肩を押すと、手が健の胸ぐらから離れてダラリとぶら下がった。悔しそうに唇を噛み締め、泣きそうな顔をする。
「お願い…もうやめて…こんなの嫌…」
 委員長が床にへたって顔を手で覆って泣き崩れた。委員長が泣くところなんて初めて見る。
「何をやってるの、あんた達!」
 いつの間にか教室にやって来た担任の灰田先生の声が響く。
「取りあえず皆、席に。阿久くんは自分のクラスに戻りなさい。もうチャイム鳴ってるから」
 各自席に戻って行く。
「あーあ…白けちゃった。外で時間でも潰す」
 三人は教室を出る。灰田先生は止めようとしない。
 委員長はまだ泣き止まずに…

「やめろぉーっ!!」
 俺はつい叫んでしまった。白い部屋に戻っている。砂時計の精霊がニッコリと微笑む。
「いかがでしたか、只今の修正は?」
「最悪だよ! 何で阿久軍団の代わりにあいつらがグレてる訳!? むしろ大人しい派で委員長の腰巾着の三バカトリオやってるような子達だぞ」
「いや、それは言い過ぎな気も…」
 宅間さんが言う。まぁ、腰巾着の三バカは言い過ぎたとは思うけど…。
「何であんな事になったの? 委員長が定金さんと手を切れとか言ってたけど、あいつら定金さんの家来にでもなった訳?」
 宅間さんが冷静に言う。
「では、あの修正された世界で鈴木和也さん、森はじめさん、葉山健さんが何故ヤンキーになっていたのかをお見せしましょうか?」
「出来るの?」
 俺は自分でも、あ、今の言い方めっちゃ間抜けだった、とか思った。
「はい、少々お待ち下さい」
 精霊は目をつむった。白いぼんやりとした光りが精霊を包む。

 ___

 また去年の七月二六日だよ。しかし暑いな。蝉も鳴いてるし、緑も濃い。
「ちなみにお二人の姿はこのプログラムの中では見えません。シミュレートも三回だけですので干渉できないようにしています」
 精霊の声がどこからともなく聞こえる。
 私達は中央公園にいた。小学生か中学生かよく分からない男の子も三人いる。
「和也にはじめ、帽子かぶってるのが健だ」
 野中くんが言う。
 あれが中一の時の…。森はじめに関しては一年の時は同じクラスだったがピンと来ない。
「もう少しむさ苦しいよね、今は」
 正直な感想を述べる。そう言えばさっきの阿久軍団も野中くんも幼く見えて、むしろ可愛らしさすらあった。
「男はそう言うもんなんだよ!」
「ああ、第二次性潮期で男性ホルモンの影響って奴? だんだん金玉が下がって来て…」
「何でそこから言うの!? 普通は筋肉が付き出してとか、声変わりが始まってとかでしょ!?」
 野中くんが顔を赤くして慌てている。はしたなかったかも知れない。まぁ、気にしないけど。
「ってかさ、やっぱ中一はまだ可愛いよね。たった一年であんだけショタっぽい。あんたも」
「ショタって…」
 少し前までは工藤や兄の前でしか出さなかった本性がズルズルと露見しているな、私。まぁ、気にしないけど(二回目)。
 そんな事よりも男子三人を見る。水飲み場の蛇口を全開にして噴水みたいにして遊んでいる。君達、エコって知ってる?
「ちょっと待って。この公園に定金隊が来るんだよね?」
 野中くんが言う。
「それってヤバいんじゃない?」
 私も焦る。
 その時、公園にあまり良い趣味とは言い難いアクセをジャラジャラさせて、髪を染めたお兄さん達が七人程入って来た。先頭は背が高くてニヤニヤした明るめの茶髪のお兄さん、定金さんだ。赤と黒が毒々しいチェックのシャツをはだけて着て、サンダルをペタペタ鳴らしている。
「あれさ、一年の鈴木の弟じゃね? 帽子の方は葉山の」
 一人が言う。
「鈴木は後輩の癖に仕切りたがりでウザいし、葉山も中学の時に文句ばっか言われてウザかったよな」
「弟の方が可愛いじゃん。ちょっといじめてやろうぜ」
 何だか散々な事を言っている。
「やめとけ。格下の小中学生には手を出さないのがルールだ」
 定金さんが言う。割と良い人だ!
「でもさ、たっちゃん中学の時に葉山にフラれたじゃん。だからちょっとくらい弟からかったってバチ当たらねーよ」
 どう言う理屈だ?
「ちょっとからかうだけだって。泣かすまではしないって。万が一泣いたらアイスでも奢ってやれば良いじゃん」
 だから、どう言う理屈?
「そうだな、ちょっとくらいなら」
 早くも同意した定金さんを見直して、大幅に損した気分になる。
「たっちゃんカッコ良いー! カッキーン!」
「さっすが。上手く行けば俺達の舎弟になるかもよ?」
「兄貴分じゃん!」
 取り巻き達がはしゃぐ。
「そうだなぁ、ちょうど舎弟が欲しかったしぃ♪」
 定金さん、上手く乗せられてる…。
 何やら騒いでいるお兄さん方に森くんが気付いた。表情が強ばる。
「逃げよ…」
 森くんが気付いて二人を連れて逃げようとしたが、早足でお兄さん方が三人を取り囲んだ。
「君達さ、楽しそうだね」
 思い切り高圧的な笑顔で定金さんが言う。三人は不安そうに顔を見合わせた。
「中々良い帽子かぶってるじゃん。ちょっと貸してよ」
 そう言って葉山くんの帽子を取り上げた。
「あ…」
 葉山くんが細い声を上げた。
「良いじゃん、ちょっとくらい」
 そう言われると葉山くんは一歩引き下がってしまった。
「ふーん…返して欲しい?」
 定金さんがニタニタ笑いながら言う。葉山くんは何も言わずに(言えないのかも)首を縦に振った。
「じゃあさ、取れたら返してあげるよ」
 何でだろう、定金さんはとても爽やかな笑顔を彼らに向けたのに、どうしても嫌な気持ちになってしまう。その笑顔のまま、定金さんは帽子を持った手を高く掲げた。
「ほら、ジャンプしたら取れるよ」
 背が高い方である定金さんと中一の葉山くんでは身長差は二五センチはありそうだ。腕の長さもある。葉山くんは何度か飛んでみたが、定金さんはその度に手を動かして葉山くんが帽子を取れないようにした。一度、葉山くんの手が帽子に触れたが、力で引っ張って放させてしまった。
「もう諦めようよ」
 息が上がっている葉山くんに森くんが言った。鈴木くんも半泣き状態だ。葉山くんも頷く。
「あれ? 諦めちゃう?」
「何だよ、根性ねぇな」
「もう少しじゃん、頑張れ」
 取り巻き達が好き勝手な事を言う。
「あの…もう帰らして下さい」
 森くんが言った。
「だーめ。取れるまで頑張らなきゃ」
 定金さんはバカにしたように言う。とうとう鈴木くんがマジ泣きになった。森くんと葉山くんも唇をきつく結んでいるが泣くのを我慢しているようだ。
「ああ、もう、泣かないで。悪かったって。ごめんな」
 定金さんはそう言うと葉山くんの頭に帽子をかぶせた。少しまがっていたし、深くかぶせられ過ぎたので葉山くんはまっすぐに直す。
「ホントごめん。ちょっとからかっただけだからさ」
 定金さんは今度はオロオロし始めた。だったら始めからしなきゃ良いのに。
「ほら、泣くなって。アイス買ってやるから。あ、かっぱえびせんもあるよ」
 定金さんは鈴木くんのご機嫌取りにかかった。何気に必死だな。

 場面が切り替わってお兄さん方に囲まれてガリガリ君を食べている三人がいる。不安そうにお兄さん方の顔色を伺っている。
「まぁ、色々いたずらしちゃったけどさ、仲良くやろうよ。悪いようにはしないからさ」
 定金さんより背の高く腕や脚がひょろ長い男が三人に話しかける。表情は優しいが雰囲気が怖いとでも言えば良いのだろうか、絶対に嫌とは言えそうにない。
「篤、怖がってるぞ。やっぱ人相悪いから」
 眼鏡をかけた男が笑いながら言う。
「じゃ、治から話せよ」
 ひょろ長い男(篤)が下がって眼鏡の男(治)が彼らに歩み寄る。
「ま、君らにアイスを奢ってお家に返してやる代わりに、俺らの舎弟になってよ。ケンカとかは後の方で隠れて見てれば良いから危なくない。絶対楽しいって。しかも俺らが後ろに着いてれば学校でもいじめられない。どうだ? 良い条件だろ?」
 だから、何、その理屈?
「ほらぁ、たっちゃんも良いって言ってるからさ、入っちゃえよ」
 そう言いながら治は葉山くんの肩を叩いた。

 また場面が切り替わる。今度は定金さん、篤、治の三人とお兄さん方が二人程、そして金髪やスキンヘッドやドレッドヘアの高校生三人がボコボコにやられている。夜の裏路地でそれって…漫画かよ。
「おい、出て来いよ」
 定金さんの声と供に葉山くん、森くん、鈴木くんが不安そうな顔をして現れる。おずおずとボコボコにやられた男達に近付く。
「とどめ、刺してやって」
 定金さんが言う。三人は顔を見合わせて頷く。そして、一人が一人ずつについて蹴り始めた。幼さが残る少年達の物を蹴る音とやられている人達の呻き声が小さく響くだけであった。

 また画面が切り替わって、コンビニの駐車場で座り込んでいる定金さん、篤、治がいる。
『昨日辺りに一気に飛びます』
 精霊の淡々とした声がむしろ怖い。
「健達、もう手に追えない。あんなに不良になるなんて…」
 定金さんが頭を抱えている。
「俺らもあそこまでやるなんて思ってなかったよ。度を超えてる」
「しかも見捨てようとしたらうそ泣きまでするし…もうやだ…」
 最低だな、それ。兄貴分まで手に負えなくなるなんて…。三人とも暗い顔をしてカップ麺をすすっている。まだポカポカと暖かい秋空にカップ麺の湯気が立ち上る様には哀愁すら漂っている。
「あれ? 先輩方じゃないっすかー」
 人懐っこそうだが変声期独特の掠れ方をした葉山くんの声に三人の男達はビクッとした。
「よう、どうした? 今日は学校行きなって言ったろ?」
 定金さんは無理矢理だが落ち着いた顔をして言う。ってか、あなた達こそ学校は?
「超ウザいって言うか、俺らハブられてて、つまんねーから早退きしたんす」
 葉山くんがヘラヘラしながら事実をねじ曲げた事を言う。
「ちゃんとさ、大人しくしてれば誰も何も言わないよ」
「先輩達もサボってるじゃないっすか」
 森くんが問う。
「俺達は中間試験だから選択科目の都合上、一時間で終わるの。お前らも来週から試験だろ?」
「俺らどうせ高校行かずにニートっすから」
 鈴木くん、もう少し真面目に将来を考えようよ?
「あのな、俺達が間違ってた。お前らをこんな道に引きずり込んで悪かった。だから真面目に学校行って大人しくなってくれ」
 定金さんが頭を下げた。
「何言ってんすか? 俺ら先輩の期待に応えただけっすよ? 先輩達まで俺らの事嫌いなんすか?」
 葉山くんが定金さんの顔を覗き込みながら言う。
「まぁ良いや。朝から学校行って腹減ってるし。パンでも万引きして来ますわ」
「よせって。ラーメンやるから」
「食べかけっすよね?」
「分かった。小遣いやるから盗みはするな」
 そう言いながら定金さんはポケットをまさぐる。千円札が二枚、葉山くんの手に渡った。
「いつもあざーっす。行こうぜ」
 三人のヤンキー中学生が立ち去る。
「たっちゃん、またバイト代あいつらに持ってかれちゃったよ。もうこう言うのやめようよ」
 篤が口を尖らせる。
「でも…あいつらがああなった責任は取らなきゃ…」

「もう良いよ! つまり、ショーテンガイズ男子メンバーを助けるために龍太郎達はケンカしたって事だったんだな」
 野中くんが遮ると再び白い部屋に戻った。
「もう一度やり直す」
「それは二回目のシミュレーションをすると言う事でしょうか?」
「そうだよ」
 野中くんは精霊に神妙な顔で言った。
「要は龍太郎達が定金隊と遭遇しなくて、あの三人も助かれば良いんだ。龍太郎達が公園に着く前に俺が助ける」
「そんな事できる? 相手は七人だよ?」
 因みに阿久軍団が相手にした人数は噂では十人とも十五人とも言われていた。それに比べたら少ないかも知れないけど、やっぱり野中くんと私の二人で敵うとも思えない。
「それと次に俺が考えてる作戦だとかなり危険なんだ。だから宅間さんは来ないで欲しい」
 え? 私、戦力外通告されてる?
 野中くんは精霊と何やら話し出した。精霊が持っている携帯の画面を見ながらああだ、こうだと言っている。
「用意して欲しい物があるんだ。コードレスのCDプレイヤーを充電満タンの状態でCDは…で、こんな衣装、出来る? そうそう、出来るだけド派手な奴が良い、めっちゃカラフルにして。三人が定金隊にイタズラされ始めた時間と龍太郎達が公園に来た時間は…だったらこのルートで逃げれば龍太郎達にも会わないはずだ。よし! 我ながら良い作戦だ!」
 野中くんはそこまで言うと部屋から消えた。
「あの…野中くんの様子を見る事は出来ないんですか?」
「野中様は宅間様に残るようにはおっしゃいましたが、宅間様には見せるなとは言いませんでした。ご覧になりますか?」
 ご主人様以外の人間に対しては無表情だ。
「もちろん」
「ではこちらに映し出します」
 精霊が手で壁の方を示すと、映写機で映したかのように映像が現れた。
 定金さんが葉山くんの野球帽を取り上げている。
 その時、何やら音楽が鳴り始めた。そして定金さんと名前の知らない取り巻き二人が踊り出した。
「何だ、この陽気な音楽は!?」
「これは…マツケンサンバ兇犬磴覆い!!」
「たっちゃん、どうしたんだ!?」
「それが…体が勝手に…」
 定金さんはそう言いながらも思い切り笑顔だ。
「あ、思い出した。定金さんの年代の大町小生って、運動会でマツケンサンバやってました」
 葉山くんが言う。
「それだ! 小五の運動会だ!」
「先生が厳しくてめっちゃ練習している内にこんな体質になってしまったんだぁっ!」
 何故っ!?
「叩けボ〜ンゴ! 響けサ〜ンバ! 踊れ♪ 南の♪ カルナバ〜ル!」
 ジャイアン並の音痴ボイスで歌いながら現れたのは野中くんだった。ゴールドの浴衣を着て、頭には三十センチはあるピンクやらオレンジやらのカラフルな羽をぎっしり立たせ、ハート型のサングラスかけている。
 サビが始まると浴衣を脱ぎ捨てた。下は股間の前をカラフルな羽と花でぎっしり隠してあるだけで、ほぼ裸だった。
「掘〜れ! 掘〜れ!」
 ジャカジャカジャン!
「ケツマン♪ サ〜ン〜バ〜!!」
 ケツだけ星人のように尻を突き出し、不良高校生達に向かって行く。尻の穴は女性器のイラストが入ったシールが貼ってあって、ギリギリで見えないようにはなっている。
「掘〜れ! 掘〜れ!」
 ジャカジャカジャン!
「ケツマン♪ サ〜ン〜バ〜!!」
「うわぁ! やってはいけないギャグを…!」
「松平健に謝れ!」
 不良高校生達がもっともな事を言う。しかし、説得力はない。
「恋せよ♪ アミ〜ゴ! 踊ろう♪ セニョリ〜タ! 眠りさえ忘れて♪ 踊り明〜かそ〜!」
 それでもクルクル踊っている定金さんに野中くんは近付き、葉山くんの帽子を奪還した。
「サ〜ンバ♪ ビ〜バ♪ サ〜ンバ♪」
 ここでケツを思い切り不良高校生達に向けて激しく振る。激しく振り過ぎたせいでシールが剥がれてしまい、肛門が露わになった。それでも振り続けている処を見ると、気付いていないようだ。
「ケ〜ツ〜マ〜ン〜サ〜ン〜バ〜!!」
「うわぁ! やめろー!!」
「ちょ…それはだめだろ!」
 しかし、定金さん始め三人は踊り続けている。まだ音楽が鳴っているからだ。
「オッレ〜ェッ!!」
 キメポーズ。それと同時に股間の羽や花も落ち、ついにチ…男の子の印が丸出しになる。野中くんは汗が迸り、頬が紅潮し、やり切った表情をしている。まさか丸出しになったのに気付いていない? 野中くん以外は皆、ドンビキしている。
 野中くん…それはどうかと思うよ…。
 いつの間にか不良高校生達とうちの男子達の間が大きく開いている。
 ツカツカと怖がる葉山くんに近付き、帽子を頭に被せた。
「今だ! 逃げるんだ!」
「え?」
「あ!」
「ありがとうございます! えーと…一組の…変態の人!」
 一応助けてもらったのに葉山くん…ストレート過ぎるよ。野中くんの頭にタライが落ちて来て、ぐわあーんと音を立てたし(ついでにタライの衝撃で羽とグラサンも落ちて遂に全裸になった)。
「あいつらあの変態と友達だったのか!」
「違います! 同じ学校ってだけで他人です!」
 森くんが追い打ちをかけるように言うと、野中くんの頭に今度は漬け物石が落ちて来て、ゴンッと音を立てた。
「とにかく逃げよう! 捕まったら変態の仲間にされちゃう! 絶対に嫌だ!」
 鈴木くんもきつい…。今度は野中くんの頭に『100t』と書かれた重りみたいな物体が落ちて来た。
 再びマツケンサンバが鳴り出す。定金さん達は当然のように踊り出した。それと同時にうちの男子四人(野中くん含む。商店街男子達は嫌だろうけど)は走って逃げ出した。野中くんはCDプレイヤーを抱えている。
「踊ってるって事は、やっぱり定金さん達の方が変態の仲間だったんだ!」
「捕まったらどんな事をされるか分からねーぞ!」
「追いかけてくるよ!?」
 野中くんに追い立てられながら男子三人は住宅街を走り出した。流石は陸上部、因みに野中くんは一年の冬のマラソン大会で校内一位だ。当然彼らを見失う事はない。
「うわ…まだ変態が追ってくる!」
「やめてくれぇ!」
「勘弁して!」
「掘〜れ! 掘〜れ!」
 ジャカジャカジャン!
「ケツマン♪ サ〜ン〜バ〜!!」
「俺達、何から逃げてるの? 定金隊? 一組の変態?」
「両方だよ!」
 葉山くんの質問に森くんが適切な解答を返した。
「恋せよ♪ アミ〜ゴ!」
「変態に恋なんてしません!」
「踊ろう♪ セニョリ〜タ!」
「定金さん達のダンスで我慢して下さい!」
「眠りさえ忘れて♪ 踊り明〜かそ〜う!」
「早く帰って寝たいです!」
 わざわざ突っ込みを入れる男子三人、割りと律儀だな。
 それにしてもシュールな映像だった。町中を逃げ惑う中一男子、全裸で肛門を晒しながら踊り狂う野中くん、それを踊りながら追う不良高校生の群れ…。何が何だか…。
「ケ〜ツ〜マ〜ン〜サ〜ン〜バ〜!! オッレ〜ェッ!!」
 ようやく野中くん、自分が全裸だと気付いたのか、キメポーズからCDプレイヤーで股間を隠した。
 CDプレイヤーはリピートするようにあらかじめ設定しているのか再びマツケンサンバが鳴り出す。
「ちょ…タンマタンマ! 三回目はきつい」
「勘弁してくれ!」
「せめて音楽を止めてくれ!」
 定金さんと取り巻き二人はかなり体力を消耗しているようだ。それでも踊り続ける。何だか可哀相になって来た。
 こうして野中くん達は定金隊を巻いた。
 そして、工事の資材置き場に切り替わった。そこではマツケンサンバがまだハピネスに鳴り響いていた。
「あ! プレイヤーがあるだけだ! 逃げられた!」
「え? うそ!」
 定金さんは四回目のマツケンサンバをフラフラになりながら踊っていた。
「止めるよ?」
 治がプレイヤーの電源を切る。踊り続けた定金さん達はその場に仰向けに倒れた。
「何か…色々嫌になった…俺らも高二だしさ、もう真面目に勉強でもしよう…」
 定金さんが息を切らしながら言った。
「そうだね…あんな変態にまで絡まれるのはごめんだ」
 篤も同意する。
「定金隊も解散かー」
「でも平和が良いよ」
「変態はもう懲り懲りだ」
 治も他のメンバーも続く。
「とにかく…疲れた…」
 それが正直な本音だろう。

 そこから少し離れた寂れた神社の境内に野中くん達はいた。
「変態に取り込むのは勘弁して下さい。助けてくれたお礼は良識の範囲内できっちりしますので」
 森くんと鈴木くんが頭を下げる。葉山くんは二人の後ろで野中くんの局部を見ないようにしている。
「いや、お礼はいらないよ。君達が無事でいてくれたらそれで良いんだ。それに、この恰好も君らを定金隊から引き離すための作戦だからで、本当なら絶対にあんな事はしない」
「えっと…一組の陸上部の…」
「野中務だ」
「野中くん、帽子、取り返してくれてありがとう」
 葉山くんは今度は野中くんの顔を見てニカッと笑った。
「良いって事よ」
 森くんと鈴木くんは葉山くんの手を引っ張って野中くんから引き離した。
「良いの? だって人前であんな事する奴だよ?」
「関わるな、絶対に頭おかしいって」
 二人はあくまでも変態とは馴れ合いたくないようだ。ってか、野中くんに聞こえてると思うよ。
「でも助けてくれたんだよ?」
「じゃ、何であんな羽とか付けて音楽まで用意してたんだよ? 僕らに関係なくああ言う事する奴だって事じゃん」
「多分触れてはいけない事情があるんだよ」
「どんな事情だよ!?」
「とにかく、今は羞恥心があるのか隠してるし、根っからの変態でもないはずだよ」
「まぁ…そうだな」
「それにちゃんと礼言わないのは問題があるって、助けてくれたんだし。あのくらいのインパクトがないと助からなかったし」
「確かに…」
 森くんと鈴木くんも野中くんに向き合う。
「助けてくれてありがとうございます」
「お…おう」
 あの会話の後なので野中くんの表情は微妙だ。
「ケツマンサンバは認めたくないけど野中くんは俺達のヒーローだよ!」
 葉山くん、ディスりたいのか褒めたいのかどっちなんだ?
「うん、憧れたりとかは絶対にないけどヒーローだ」
「した事はめちゃカッコ悪いけどヒーローだよ」
 森くんや鈴木くんまで…。
「胴上げだ! 野中ヒーロー!! 野中ヒーロー!!」
「ちょ…俺、すっぽんぽん…」
「野中ヒーロー!! 野中ヒーロー!!」
 彼らは全裸の野中くんを胴上げし始めた。
「うわ…大事な部分が…」
 野中くんは再び男の子の印と肛門を晒しながら赤面し、胴上げをされていた。でも何か嬉しそうなのはヒーロー扱いされてるからだよね?
「野中ヒーロー!! 野中ヒーロー!!」

 ___

 良い気分だった。白い部屋に戻った時の宅間さんが苦笑いしていた理由は分からなかったけど。
「まぁ、現在がどうなってるか見てみようよ」
 そうだ。龍太郎達も和也達もグレてない平和で明るい未来が待っているはずだ!
 精霊が白いぼんやりとした光りに包まれた。

 昼休みの教室、俺の頭に何か柔らかい物が当たった。何だろうと思って手に取ってみると丸めたティッシュだった。しかも鼻をかんだ後なのかベタベタした物が付着している。
「な…何で?」
 西田さんがこちらを見ながらクスクス笑っている。純が俺から目を逸らす。何があった?
「務、俺達は何があっても味方だから」
 健が隣に立って言う。和也とはじめも哀しそうな笑顔を浮かべている。
 机に目を落とす。『呪』『変態』『死ね』『サンバ』などと掘ってある。サンバ? ああ、あれを見られていたのか。目立ってたもんな。それで変態としていじめられるようになったのか。
「まぁ、自業自得だからさ」
 目がショボショボして来る。
「自業自得じゃないって。全く関係ない事じゃん」
「そうだって。あの人は事故だったんだ」
「たまたま務がサンバを踊った日と重なっただけだって」
 ん? 何の話し? 委員長が申し訳なさそうな顔で近付いて来る。
「あのさ、野中くん。言いにくいんだけど、この子達と関わるのはやめてあげて欲しいんだ。君が悪い訳じゃないのは分かるけど、最近はあれも悪化してるし」
 あれって?
「委員長!」
 三人でハモった。
「やべぇっ! また校内に入って来たよ!?」
「野中のせいだよ」
「うわぁ、見たくない」
 皆が口々に言う。何が起こっているんだ?
 教室の引き戸を勢い良く開けておばちゃんが乱入して来た。真っ赤な口紅にチュニックとか言う服を着て、髪を振り乱している。なぜかカラフリャーな羽や花を頭や背中に着けている。
「呪ってやる! お前にもうちの息子と同じ苦痛を味合わせてやる!」
 おばちゃんは俺を指差しながらそう叫んだ。
「あなたーとっ! わたっしがあーっ! ゆっめっのっなっかあーっ!」
 この音程を外しまくってるけど本来はおめでたい歌は…てんとう虫のサンバ!?
「あーか! あーお! きいろのー! いっしょーうをっつっけたー! てーんとーうむーしがーっ! しゃっしゃっりっでってぇーっ!」
 や…やめてくれ! 怖い。目が尋常ではなく血走っている。
「くーちづけせよと囃し立てーっ! くーちづけせよと囃し立てーっ! くーちづけせよと囃し立てーっ!!」
 おばちゃんは激しく踊りながら俺にキスを迫るように顔を近付けた。ジャケットを脱いだから制服の白いシャツに真っ赤な口紅が付着する。
「またですか! 勝手に校内に入られては困ります」
 灰田先生の厳しい声が教室に響く。数学の向井先生も一緒だ。そうか、相手が女性だから女の先生が対応しないとセクハラにされちゃうかも知れないんだ。
 おばちゃんは二人に捕まって教室から引きずり出された。おばちゃんは涙と鼻水を流しながら口を大きく開けて笑い続けていた。その視線は完全に俺にロックオンされていた。
「これでもまだ分からねーか? 務と関わるって事はああ言う人とも関わらなきゃならないんだ」
 明仁が健の肩を叩く。
「ちょっと待って! 何で野中くんがあんな目に遭ってる訳? あんな変質者に付きまとわれて、イジメにも遭って…」
 宅間さん? 何か優しさが妙に滲みる。泣きそうだ。
「よく言うよ、自分のせいなのに」
 健は宅間さんに、道路で牽かれた猫の死体か何かを見るような視線を送っていた。その目はやめてあげて!
「はぁ!? あんたいつも委員長や田村くんに守ってもらってばっかで、去年の夏だって野中くんに守ってもらって、それで野中くんも守れないで委員長や田村くんの言いなりになってんの? 大体私のせいって言いがかりも大概にしなよ」
 宅間さんのマジギレは初めて見た。意外と迫力がある。健は黙り込む…と、言うか言葉が上手く出ない感じだ。
「言いがかりじゃないよ。あんたが原因だし」
 委員長が宅間さんを軽蔑したように言う。
「確かにひかるのせいですわ」
「動画に撮ってネットにアップした張本人じゃん」
 普段は宅間さんと仲が良い村上さんや戸田さんも冷たい。
「私が何を…」
 宅間さんは狼狽えている。

「ちょ…待って!」
 白い部屋に戻った。宅間さんが泣きそうになっている。
「私が何をしたって言う訳? あのサンバの時に何があったか見せてよ!」
 精霊に詰め寄る。
「え? 宅間さん、サンバの事を知ってたの?」
「うん、そこの壁にスクリーンみたいに映し出されて…」
 ちょ…じゃ、いつの間にか全部脱げちゃってた時も、あの哲也でさえヒキそうなケツマンサンバをやった事も…。
「ちょ…何か急に顔が赤くなったり青くなったりしてるよ!? 紫色を経て赤と青を繰り返してる感じ…」
 そりゃあそうでしょうよ、あんな痴態を好きな子に見られるなんて…どっか遠くに行きたい…鳥取砂丘とか。あ、今、ぐわあーんって音がした。タライが落ちたかな…。
「ではあの時、どうなったか。宅間様もお連れしてよろしいですか?」
 精霊が言う。そうか、宅間さんに見せるなって言わなかったからか。どうやら精霊は人間の感情や常識は理解できないらしい。
「うん…どうにでもして…」

 また中一の夏休みの中央公園だ。相変わらず蝉も鳴いてて緑も濃い。空の入道雲がずいぶんと分厚い。
 あの陽気な音楽も聞こえている。もう始まっていたか。
「あ…もう取れちゃってる! お願い見ないでぇ!!」
 俺はつい情けない声を上げてしまった。
「どうせ一回見てるし、風呂上がりの兄とかで慣れてるから」
 宅間さん、やけにクールだな! そう言えば工藤仁平とは女子として扱われてないどころか男同士みたいにバカやってるっけ、たまに。
 俺達の前にはショーテンガイズ男子三人、俺、定金隊がいる。
「何アレ!」
 ちょ…その声は一年前の宅間さん? 髪が今より短い。公園の向こう側から携帯を構えて動画を撮影している。
「すげぇ。あれ、一組の野中くんだ」
 なんて呟いている。因みに現在の宅間さんはそれを見ながら俺の隣で呆然としている。
 そして場面は移り変わり、工事の資材置き場に切り替わった。CDプレイヤーは切られてしまったようだ。定金さん始め踊っていた三人が仰向けに倒れている。
「定金さん達もこの日を境に真面目になろうって言い出したんだよ」
 宅間さんが言う。
 それなら全てOK牧場じゃないか?
「ああ、それにしてもやっぱ今暴れ足りねーな。あの変態サンバ野郎、ぶん殴ってやりてーな!」
 一人の男が言う。確か…篤とか呼ばれてた。
「よせよ。関わるな」
 定金さんが体を起こしながら言う。
「だってあんな変態にあんだけコケにされたんだぞ? 中途半端にしかチン毛が生えてない包茎野郎に!」
 そこ、強調しないで! 今は大分生えてるし、先っぽだって…って、そんな事はどうでも良い!
「確かにあの小学生か中学生か分からない奴らと同学年だとすると、相当ガキだぞ、あの包茎野郎。そんな奴に踊らされてたっちゃんは悔しくない?」
 こう言ったのは治と呼ばれていた男だ。
「うん、悔しいけどもう関わりたくないから」
「たっちゃん…」
 治が呆れたような声を出す。
「達也の奴、そろそろ限界だな。元々おだてられてアタマやってるような奴だからな」
「まぁ、仕方ねーさ。俺らは俺らでやるだけ」
 少し離れて篤と治が内緒話しを始める。
 他のメンバーは立ち上がった定金さんと帰り始めた。
「篤、治、早く来いよ」
 茶髪の男が二人に走り寄る。
「それにしてもやっぱ暴れ足りねー!」
 篤が何かカバーがかけられた物を蹴る。
 ガシャーン! バラバラ…ガシャガシャ! 激しい物音と共に男の悲鳴が聞こえた。カバーの下は金属の棒が幾つも重ねてあったんだ。それが崩れて篤や治に走り寄った男の上に落ちたんだ。
 六人の不良達が青い顔をしていた。

『建築資材の下敷きに。高校生一人が死亡』
 そんな見出しが小さく新聞の地域ニュースの欄に載っている。一方、ネットでは…。
『驚愕! 建材の下敷きになって死んだ高校生は死の直前に呪われたサンバに遭遇していた!』
 なんてスレッドが立ち上がっていた。
 中一の宅間さんが携帯をいじりながらスレッドを立て、俺が全裸でサンバを踊っている動画をノーモザイクで流していた。
 それを見ている現在の宅間さんの頭にタライが落ちて来て、ぐわあーんと音を立てた。
「野中くん、ごめん。私、自分がこんな最低な奴だって知らなかった…」
 占いやおまじないが好きな宅間さんは、オカルトだの心霊だのにも詳しくなっていたらしく、あのサンバの呪いだとか、名前、学校、クラス、部活、等の個人情報をせっせと書き込んでいる。
「あれが私…もうだめだ…もうだめだ…もうだめだ…」

 そして、中一の一学期に切り替わる。
「よっ! 変態野中」
「呪いのサンバ楽しかったか?」
「定金隊を呪い殺そうとするなんて凄い度胸だな!」
 中一の俺は言われるままにうな垂れるしかなかった。

 そして、あの亡くなった男の遺影が飾ってある部屋で丸坊主にした定金さん、篤、治が土下座をしている場面に切り替わる。湿気た畳とねっとりとまとわりつくような空気、部屋の真ん中にはあの教室で狂っていたおばちゃんがいた。
「何で家の子が死んだ挙げ句、あんな変な動画までセットでこんな目にあわせられなければならないんですか? 悪事を働いていたのはあなた達とサンバの子だけで、息子は着いていってただけでしょ?」
 おばちゃんは不機嫌も疲れも怒りも隠し切れずに三人を見下ろした。
 定金さん達は何も言えずに土下座し続けた。
「呪いのサンバで死んだんですか、なんてイタズラ電話だって来るんです、もう…嫌…」
 おばちゃんは泣き崩れた。

 二年に上がって間もない頃に切り替わる。
 校門の前におばちゃんが立っている。羽や花を体中に着けている。
「野中務ーっ! うちの息子を返せーっ! お前もサンバで呪ってやるーっ!
 恋する女はぁ! きれいさぁーっ!」
 シブがき隊のお嫁サンバだっけ? 懐かしの何とかって類のテレビ番組で見た事がある。いや、西城秀樹だっけ?
「野中のせいかよ」
「あいつさ、ケツマンサンバとか平気でやる変態だし、ハブっても良くない?」
「つーか、迷惑だから学校来るなよ」
 なんて声が聞こえて来る。

 白い部屋に戻る。
「あのさ…俺がいじめられるのは我慢する。でも人死にはだめだろう!」
「あくまでもプログラムが作り出したシミュレーションですから」
 あくまでも精霊は冷静だ。
「今度は私がやる」
「出来ません。砂時計の所有権は野中様の物です」
 精霊が無表情で答える。
「でも俺より宅間さんがやった方が良いのかも。あれだけ失敗したし」
 二回とも悲惨は状況だった。
「でしたら、所有権を宅間様に引き渡す必要があります」
 そんなんできるんかい!
「ただし、野中様の権利がそのまま宅間様の物になるだけです。すでに二回シミュレートしていますのでシミュレートの回数は後一回限りですが、よろしいですか?」
「うん、引き渡す」
「え? もらって良いの?」
 我ながら軽いな、と思った。まるでビスケットでも食べる時のようだ。
「うん、やってよ。もう自信ない」
 あれだけ体を張ってもあの状況だったし。
「分かった。じゃ、私がやる」
 宅間さんが顔を上げる。
「では、宅間様に権利を引き継ぎます」

 宅間さんと聖霊が何やら話している。
「野中くんは定金さん達がマツケンサンバで踊り出す事を知ってたんだよね? それって何で?」
「それは定金さんの頭の中を覗いたんだ。何かどうしても注意を逸らせる事のできるものをと思って」
「なるほど、頭の中も読み取れるのか」
「ある程度の限界はあります。現実世界で読み取りたい人物が心に鍵をかけている場合は読み取れません」
 精霊が答える。
「よし、じゃ、定金さんがグレた理由から読み取ってみよう。定金隊が結成されなければ阿久軍団も結成されないし、森くん達も絡まれないで済んだ訳だし」
 成る程、元の元から断つ訳だ。
「それなら定金隊の恐怖支配も起こらないって訳だ」
「その通り! 真の平和が訪れる」
 宅間さんは精霊に向き合った。
「まず定金さんがグレた理由を知りたい」
「では定金達也さんの頭の中を覗いてみましょう」
「野中くんもおいでよ、何か良いヒントがあるかも」
 なぜかワクワクしている宅間さん、人の頭の中を覗くのが楽しいとか…?
「まずは現実の過去での定金様の頭の中を見てみましょう。葉山様ご一行に絡む直前で良いでしょうか?」
「もちろん」

 ………

 あ、あれはアイツ(葉山)の弟。顔だけは似てるなぁ。
 そう言や俺、ずっとアイツに世話焼かれっぱなしだったよなぁ。おかげで初恋だったんだよなぁ。
 でもアイツは俺を友達としてしか見てなくて中一の時にフラれちまった。
 でもその後もアイツはずっと小さい頃から変わらずにだらしない俺の面倒見てくれてたんだよな。
 でも、まさか向井が俺を好きだったとは…。もっと早く気付いてたら俺ってモテモテ〜♡ とか浮かれちゃってたけど、俺アホだから知らなかった。まさかアイツと向井は親友だったのに、向井が女子を煽動してネチっこくアイツをいじめるなんて…。
 何にも知らずにずっと甘えてた俺はバカだ。俺が甘えてずっとべったりだったらその分、向井はムカついてアイツを余計にいじめるのに。
 中二に上がって、アイツは不登校になって…どう言う訳か弟を殺しかけたんだよな。アイツと弟は未だに仲直りできてないし。俺のせいだよな。
 だから手遅れ感満載だけど、強くて賢い男になってアイツを安心させようと思って、ボクシング習ってる篤と仲良くなって、頭の良い治に勉強見てもらうつもりが…どうしてヤンキーになってるんだよ、俺!
 え? 舎弟? 兄貴分?
 ちょっと待て! ここでヤンキーの立場利用して葉山弟がいじめられないように守ってやって、仲直りできるように説得すればせめて罪償いくらいできるじゃん。
 まぁ、こいつらの手前、ある程度高圧的に振る舞う必要はあるけど…やるっきゃない!

 ………

「原因は葉山姉か…」
 健の家庭の事情は人伝いに聞いた事くらいはあるけど、定金さんが関わってたなんて…。
「よし! 定金さんがフラれるとこから修正するよ」
 宅間さんが言う。
「葉山姉と定金さんをくっつけるの?」
「アホだね君は。世話してるだけの手の焼ける幼なじみなんて恋愛の対象外でしょ? 商店街男子三人の誰かに委員長が恋してると思う?」
「してない。それに男子三人も委員長を頼りにはしてても女子だと思ってなさそう」
 それに委員長って恋愛向きのキャラでもないし(それも我ながら失礼だ)。
「つまりどうあがいても定金さんはフラれる。でも親友の向井さんって人がフラれて当然だと思う理由をでっち上げれば葉山姉はいじめられない」
「どうやって?」
「まぁ見ててよ、スクリーンで。私の読みが合っていたら絶対に上手く行くから」
 宅間さんは口角をキュッと上げて笑った。

 定金さん達が中一の一学期の終わり頃、確か精霊と宅間さんは七月十五日とか話していたな。
 草木の緑の、空の青の眩しさが飛び込んで来るようだ。きっと期末試験も終わって夏休みに向かって浮かれているんだ。学校中ワクワク感した雰囲気が漂っている。
 それにしても宅間さん、五年前だから小三だよな。そんな小さな子に何ができるんだろう?
 校舎裏に男の子が一人待っている。フワフワとした髪が風に揺れる。暑さのせいか汗ばんでいるが、顔が赤い理由はそれだけではないはずだ。あの子がショタ…中一の定金さん。
「たっちゃん、話しって何?」
 銀縁眼鏡をかけた女の子がやって来た。長い髪をうなじで一まとめにしているし、スカートも膝丈の地味な女の子、葉山姉だ。
 客観的に見ると定金さんの言う通り、葉山健と顔は似ている。葉山姉のまっすぐに見つめる鋭い目線に比べると、健の目はクリクリとよく動く。葉山姉のキュッと結ばれた口元に比べると、健の口はニカッとよく笑っていて愛嬌がある。葉山姉は凛々しい印象で中一にしてかなり大人びているが、健は柔らかい印象で中二でも子どもっぽく感じる。顔は似ている姉弟でも雰囲気や性別で全く違って見える。定金さんが似ていると思ったのを聞かなければ、全く似ていない姉弟だと思っただろう。
「また何か壊したとか?」
「違うよ、委員長。実は…話しってのは…」
 定金さんは顔が真っ赤だ。葉山姉は黙って定金さんを見ている(と言うか葉山姉は委員長だったのか)。
「俺、委員長の事が好きだ! 付き合って…」
「ちょーっと待ったぁーっ!!」
 定金さんが言いかけた時、甲高い子供の声が響く。
 え? あれは…小三の宅間さん!?
 何で!? 何してるのあなた! そのド派手はメイクは何さ? 宅間さんはピンクのラインストーンとフリルがたくさん付いたドレスを着て、金髪縦ロールのヅラをかぶり、ツケマとアイラインで異様にでかく見せた目に赤紫のグロス入りの唇、チークがキツ過ぎて頬は真っ赤、と言うひどい恰好だった。挙げ句に昔懐かしの厚底ブーツだからヨロヨロだ。
 でもケツマンサンバの後だからインパクトは薄いと思う。あ、あの人達はケツマンサンバを知らないから良いんだ、そこは。
「ひどいわ、達也! 私がいながらそんな地味でブスな女に告るなんて! 私をちゃんと見て!!」
 定金さんと葉山姉はキョトンとしている。
「あー、えーと…君は誰かな?」
 葉山姉が優しそうな笑顔を宅間さんに向ける。
「私は達也の恋人…未来の妻よ! あなたは!?」
 宅間さん、叫んでる割りにはずっと棒読みだよ?
「私は達也くんの友達の葉山…」
「葉山さん。あなたは知らないみたいだけど、達也は私の恋人で未来の夫なの! 気安く近付かないでちょうだい!」
「し…知らないよ、こんな子」
 定金さんが葉山姉の後ろに隠れた。割りと情けない? いや、当たり前か。怯えてるもんな。
「ええと…あなた、どうやって中学に入ったの?」
 葉山姉は優しそうな顔で笑いながら言う。少し背が高い人なので屈んでいる。あくまでも大人としての対応だ。
「愛の力でよ! 文句ある!?」
 いや、不法侵入だから文句あるだろ…。
「小学校は?」
「愛があれば学歴なんて要らないのよ!」
 葉山姉は困惑し始めた。騒ぎを聞き付けたのか他の生徒達も集まって来たが、遠巻きに見ている感じだ。
「お名前と学年は?」
「チャーミィひかる! 小三!」
 学年だけは偽らないのかよ!
「ひかるちゃん、達也くんはあなたを知らないって言ってるよ?」
 それでも優しい姿勢を崩さない葉山姉。定金さんも必死に首を縦に振る。
「私達、あんなに愛し合ったじゃない! 私を何度も抱いたじゃないっ!」
 ちょ…宅間さん!? セリフが大胆だよ(抱いただけに)!
「先生を読んで警察に保護してもらおう」
 葉山姉、最善の策を提案。定金さん、安心する。…って、それで良いのか?
「私達は本当に愛し合っていたの! あれは二カ月前の事、歩道橋を登る私のミニスカから見えるマンスジに釘付けだったじゃない!」
「知らないよ! 俺は小さな子どもには興味ない!」
「ひどいわ! 興味がないのならなぜ初めて会った日に怖がる私の肩に手を回して、マンスジを撫でたり、服に手を入れて乳首を指で弾いたりしたの!?」
「してない!」
 葉山姉が定金さんを見る目付きが変わった。疑り始めてるようだ。
「その後、怖くないぜベイベーちゃんって甘い言葉を囁きながら、キスをしたじゃない! 私の舌を舐めたり吸ったりしながら、××××××××!」
 宅間さん! そんな下品で卑猥な事、脳が認識できないからやめて!! お願いだからやめて!! 聴きたくない…。定金さんは宅間さんの激し過ぎる発言で気持ち悪くなったのか、吐いてるし。遠巻きに見ていた人の中には泣いている女子までいるし。
「ちょっとたっちゃん。こんな小さい子があんな下劣で悪趣味な事、普通は知らないよね? あんた、まさか本当に…」
 葉山姉の顔が険しくなる。怒りと哀しみで溢れているんだ。
「違うよ…俺、ホントにこんな子知らないもん…」
 泣き出した。これがあのヤンキー? ただの弱っちい子どもにしか見えない。
「ねぇ、ひかるちゃん。本当に達也くんとそんな事をしたの?」
 今度は宅間さんに向き直る。
「当たり前じゃん! その証拠に! 達也のゲロを今ここで犬食いする! それが達也の理想の女だから!」
 宅間さんは四つん這いになると定金さんが地面に吐き出した吐瀉物に顔を近付けた。人間としての尊厳に関わるような事はやめて!
「や…やめてぇー! それはだめーっ!!」
 葉山姉が止めてくれて良かった。定金さんは泣きながらどうする事もできなくなっている。
「たっちゃん、本当にそんな事、してないよね?」
 葉山姉は宅間さんを立たせると不安げに定金さんを見つめた。
「したのよ! 達也は私を愛していると言って体を求めて来たの! 何度も××××××××!」
 だから脳が認識できない表現はやめて!
「違うよ…俺が好きなのは…委員長だよ。いつも委員長と○○○○とかしたいと思って…」
 定金さん、あなたもですか…。葉山姉はあまりの衝撃(俺の脳では認識できない卑猥さ)に怒りに震えた表情になる。
「最低だよ、あんた」
 その目は完全に道路で牽かれた猫の死体か何かを見る時の物だった。
「私、あんたを甘やかし過ぎてたわ。まさかこんな幼女にイタズラした挙げ句、私までそんな目で見てたなんて…しばらくあんたとは関わらない事にする」
 定金さんはゲロに膝を着いて跪いて頭を垂れる。
「よく言った。定金くんは女の敵! よく見放す勇気を持ってくれた!」
 離れて見ていた集団の中から一人の女の子が出て来た。目が大きくてかなり可愛い。
「…向井…」
 あ、この子が葉山姉と親友だったと言う向井さん。
「葉山さん、私、目が覚めたわ! こんな最低な男だと気付かせてくれてありがとう!」
 宅間さんが言う。何て不自然な変わり身の早さだ! いや、登場した時から不自然だったから違和感がないんだけど、それもどうなんだろう?
 そして宅間さん、さっさと走り去る。
「あ、ひかるちゃん、待って!」
 葉山姉は宅間さんを追おうとしたが、周りに女子が集まって来た。
「葉山さん、凄い! いつもは定金くんに甘いとばっかり思ってたけど、見直した」
「やっぱ委員長だよ、あの気の触れてた少女を見事に救った!」
 何で? めっちゃ囃し立てられてるし。
「私、本当は定金くんが好きだったんだけど、こんな女の敵だとは思わなかった。私の目も覚まさせてくれてありがとう」
 向井さんは涙すら浮かべている。
「そう、定金は女の敵!」
「泣いたら許されるとか思ってんじゃねぇよ、変質者が」
「リンチだよ、リンチ」
 女子に取り囲まれた定金さんの顔には恐怖が浮かんでいる。魔物のような目をした女子達が跪いている定金さんを蹴り始めた。
「ちょ…やめてあげて!」
 葉山姉が止めに入る。
「たっちゃんももう分かってくれたよね? これからはもうしないよね?」
 定金さんは無罪のはずだけど、認めるように黙って頷いていた。
「ほら、分かってくれてるから暴力はやめてあげて」
「まぁ葉山さんが言うんなら」
「金輪際、女子を嫌らしい目で見るじゃねぇぞ、腑抜けが!」
 等と罵声を浴びせながら皆立ち去った。最後には葉山姉と定金さんだけが残る。
「さっきの続き。もうこれからは私の手助けはなしでお願い」
 感情を込めずに言うと、葉山姉は定金さんを見ずにその場を立ち去った。
「何で? 俺が何をした訳?」
 定金さんの目は、どこか遠くを見ていた。

 ___

 白い部屋に戻るなり、野中くんが私を見て怯えていた。
「あれ? どうしたの? ケツマンサンバよりはインパクト薄いと思ったけど」
「いや、アレよりケツマンサンバの方がマシだよ」
「そう? まぁ、これで明るい未来が待っているはずだよ」
 早速私が変えた未来を見てみたい!

「はい、宅間さん、ご注文のメロンパンです」
 葉山くんが哀しいくらいヘラヘラ笑いながら私にメロンパンを差し出す。他にも焼きそばパンとかレーズンパン、紅茶にオレンジジュースまで、購買コーナーで売られている物をたくさん抱えている。何だ、この卑屈な昼休みは?
「ちげーよ、バカ。メロンパンは私。あとフルーツ牛乳忘れてるし」
 あ、と言わんばかりに口を開けた葉山くんは、いきなり私と相田さんに頭を下げた。
「すみませんっした! すぐ買い直して来ます!」
「良いよ、また間違えるから。ほんと使えない」
 相田さんが私からメロンパンを引ったくって袋を開けてかじり出す。
「えーと…焼きそばパンは…」
「俺だよ。覚えとけよ、グズ」
 戸塚くんが葉山くんを小突く。たくさん抱えてるからよろけるが、何とか持ち堪えた。
「ほら、メモ。紅茶は立野さん。レーズンパンとカルピスは山口くん。あと…」
 委員長がまごついている葉山くんを手伝う。
「あ…ありがとう」
 葉山くんの顔がほころんだ。でもそれも束の間だった。
「委員長、もうやめなよ」
 森くんが言う。
「保育園から一緒だったかってのは分かるよ? でもこいつが何したか知ってるだろ?」
 鈴木くんが言うと、葉山くんがうな垂れた。
「委員長、もう良いよ」
 寂しそうに笑った。森くんと鈴木くんに庇われるように委員長が連れて行かれる。
 葉山くんに冷たい視線が注がれる。
 一体何があったんだ? 私はこんな未来なんて望んでない。

「何でだー!」
 私が絶叫すると共に白い部屋に戻った。
 精霊はにっこり笑いながら問う。
「いかがでしたか、修正された世界は?」
 精霊は人間の価値観が分からないから悪意なんてないのだろうが、逆にそこが怖いよ!
「何であんな事に? あれっていじめだよね?」
 精霊の代わりに野中くんが答える。
「うん、いじめだと思う。パシリにされてた」
 やっぱり。
「どうしてああなった? どこか間違いがあったの?」
「いや、間違いだらけだったと思うよ」
 やけに野中くんは言い辛そうに答える。
「なんでああなったのか見せて!」
「かしこまりました」
 精霊が白いぼんやりとした光りに包まれた。

「達也、今日も来てないって?」
「やっぱ女子に変態扱いされるのはキツいからな」
「でも小学生にイタズラしてたんだろ?」
「そら学校来れんわ」
 五年前の九月の終わり頃、男子生徒達がひそひそ噂話をしている。
 場面は切り替わって一年前の七月二十六日、中央公園だ。って、また? そこで何が起こった。
 見ていると高校生くらいのお姉さんと小学生か中学生かよく分からない弟の兄弟がやって来た。公園の前で止まる。あれは…葉山姉弟!
 仲良さげにしている所を見ると、葉山姉からの虐待や殺人未遂はなかったようだ。
「これのどこがあの卑屈な未来に繋がるの?」
 野中くんがとぼけた声を出す。確かに…葉山くんも機嫌良さげに笑っている。
「じゃ、委員会活動があるからちょっと学校行ってくる。あんたは寄り道せずに帰りなよ」
 葉山姉が言った。
「へいへい」
 葉山くんも答える。
 葉山姉が歩き出す。葉山くんは公園の中を見つめた。
(この公園突っ切ると家まで近道なんだよな)
 葉山くんの心の声が聞こえて来る。きっと精霊が何かしているのだろう。
 公園のベンチには空ろな目をした青年がかけていた。髪は耳が半分近く隠れているし、目にもかかってボサボサだ。肌も吹き出物を潰した跡がいくつかあり赤くなっている。ヨレヨレのTシャツは汗まみれで、擦り切れた膝丈のデニムを履いている。青年が葉山くんは葉山くんをじっと見ている。
(あ、あれは葉山…って事は弟か。顔だけは似てるなぁ。昔、好きだったんだけどフラれた挙げ句、いじめにも遭って引きこもっちゃったんだよな。
 何か可愛い…ってか、俺、男でもあの弟ならイケそうな気がして来たわ。まだ力は俺の方があるよな。
 そうだ。俺はあの訳の分からん虚言癖のある幼女のせいで変態扱いされたんだ。だったら本物の変態になったって変わらないじゃん。よーし、ヤッちゃおう)
 ちょ…何考えてるのこの人! ってか、定金さん!? 痩せてるわ、覇気がないわ、顔は見えんわで気付かんかったわ!
「ヤバい! 健、逃げろ!」
「葉山くん、逃げて! そこを通っちゃだめぇっ!」
 野中くんと私は声を張り上げた。
「干渉できませんので意味がないかと」
 精霊の声が冷淡に響く。
「そんなぁ…」
 野中くんが絶望的だと言わんばかりに嘆く。
 葉山くんはそうとも知らずに公園を早足に歩いて行く。定金さんの前を通る。
「ねぇ、君」
 定金さんのくぐもったような声が葉山くんに向かう。
「あ、はい」
 キョトンとした顔で立ち止まる葉山くん。定金さんはそれを見て、ニヤリと口元を歪めた。蝉の合唱がやかましく響く。
「さっき葉山さんと一緒にいたよね? 弟さんだろ?」
 葉山くんは頷く。
「えっと…姉の友達の方…ですよね?」
「うん。定金って言うんだ。知ってるの?」
「小さい頃とかは一緒にいるのをたまに見てましたから」
「そっか。最近は疎遠なんだけどね。ちょっと病気…的な」
「そうなんですか」
 葉山くんは立ち去ろうとする。さすがにろくに面識のない人に親しげに話しかけられる事には違和感があるのだろう。葉山くん、偉い子! やればできる子! 早く定金さんから離れて!
「ちょっと待って」
 定金さんが立ち上がって葉山くんの手を掴む。葉山くんの顔が強ばる。定金さんは作り笑いを浮かべる。
「あのさ、ちょっと恥ずかしいんだけど、俺、さっき言ってた病気のせいでさ、一人でトイレ行けないんだ。漏れちゃいそうでちょっと手伝ってよ。簡単な事だからさ」
 葉山くんは少し怯えながらも頷いた。
「じゃ、あの障がい者用のトイレまで一緒に来て」
 定金さんは葉山くんの手を引いてトイレに消えてしまった。トイレの鍵が静かに閉まる。
「あ…やめて下さい!」
 葉山くんの悲鳴のような声が聞こえたが、それっきりだった。
「中の様子はご覧に…」
「見たくない!」
 精霊の問いが終わらない内に野中くんとハモってしまった。
 しばらくしてから定金さんだけが出て来た。
「お前も感じてたくせに泣いてんじゃねーよ」
 ズボンを直しながら中の葉山くんに目をやる。葉山くんは裸にされて、胸に白いジェル状の物を垂らしながら、泣きながら定金さんを睨んでいた。
 定金さんは葉山くんを無視するとさっさと行ってしまった。
 場面が切り替わる。子ども部屋のようだ。漫画や脱ぎっぱなしの服が散らかっている。
「今年の七月の終業式の日です。場所は葉山健さんのご実家です」
 せんべい布団の上に葉山くんが寝転んでいる。今より少し痩せていて、髪も伸びている。肌は白い。
「あ! 見ないであげて!」
 野中くんが私の目の前に手をかざす。葉山くんがオナニーしている所だったからだ。
「兄のシコってるとこに出くわした事もあるから…」
「やめて!」
 野中くん、私は割りとそう言うの平気な女だし、この葉山くんもよく考えたらプログラムであって本人じゃないんだけど。
「うわ…結構出すんだなぁ…」
 野中くんは小さく呟いたつもりだろうけど、聞こえてるから。
「オナニーする元気あるんなら学校行けば?」
 不機嫌そうな葉山姉の声に野中くんの手を払い退ける。慌てて着衣を直す葉山くんの顔が赤くなる。少し泣きそうだ。葉山姉はドアを開けて葉山くんを見ている。
「何だよ?」
 声変わり中のしゃがれた声が不機嫌そうに部屋の壁に吸い込まれて行く。
「健、今日が何の日か知ってる?」
「何の日?」
「一学期の終業式。あんた丸一年も学校に行ってないんだよ? 何が怖いのか知らないけど、外にもほとんど出ないで」
「出たくない」
「ずっとそうやってウジウジして。取りあえず外に出るだけでも出てみな!」
 葉山姉が葉山くんの腕を掴んだ。
「やだ! 触るな!」
 葉山くんが喚いて、振り解こうとした。でも解けない。
「ああ、もう!」
 葉山姉は力任せに葉山くんを突き飛ばした。葉山くんは頭を机の角にぶつけてうずくまった。
「大丈夫でしょ、血も出てないし」
 葉山姉の声は冷たい。
「大げさなんだよ、あんた。大体何が…」
「定金って人、知ってるよな?」
 葉山くんが押し殺すような声を出す。
「定金達也くん? その子みたいに引きこもってる訳?」
「一年前、イタズラされた」
「はあ?」
 葉山姉が眉間にシワを寄せる。
「公園のトイレに連れ込まれて、裸にされて、散々いじられて、相手のもいじらされて…」
 泣きながら話している。
「それって本当にたっちゃんなの?」
 葉山姉の顔から血の気が引いていく。
「姉ちゃんにフラれた腹いせだって。姉ちゃんのせいだろ?」
「何言ってんの? そんな事されたんなら私…」
 葉山くんが立ち上がって姉に近付く。
「だったら責任取れよ? 姉ちゃんが原因だって言ってた」
「どうしろって…」
「死んでよ。そしたら外に出るからさ」
 葉山くん、それはムチャクチャだ。でも葉山くんも正気を保てていない。そして、本棚の横に立ててあった埃をかぶったバットを手にして、葉山姉に向き合う。
「やめな、健。私がたっちゃんには言って聞かせるから…」
 葉山くんは無表情でバットを振り下ろした。
 再び場面が切り替わる。
 返り血を浴びた葉山くんと動かない葉山姉。葉山くんは汗と血を拭うと、表情を変えずに携帯電話を耳に当てている。
「殺人事件です。姉を殺しました。場所は…」
 葉山くんは自宅マンションの所在地と部屋の番号、質問されたのか名前や年齢まで答えていた。こんなに落ち着いている葉山くんは初めて見た。
 また場面が切り替わる。
「今月の初め頃です」
 精霊が説明する。
「葉山さんのお姉さんは生きていました。後遺症もなく学校にも復帰しています。葉山さんが鑑別所から出たばかりの頃です」
 行き交う生徒達は葉山くんを避けている。
「葉山のせいでさ、週刊誌の人に追いかけられてさ」
「私も私も。写真持ってたらくれとか」
「二組の同小の子が売ったらしいよ?」
「マジ?」
「ってかさ、あいつ一年くらい引きこもりだったろ? 何か、変質者にイタズラされたトラウマで」
「でも逃げようと思えば逃げられる相手だったんだろ? 実は楽しんでたとか」
「またいるよ、何とか女性誌の人」
「しつこくねぇ?」
「葉山のせいだよ」
「葉山も自分のせいでこうなってるって自覚あるみたいだよ?」
「水沢が教えたからじゃん。四組の委員長。あいつ発達障がいだから自分から気付けないだろ?」
「で、何か居心地悪いから皆のパシリやってるって」
「パシリ代も一度立て替えたら誰もパンとかの金渡さなくなったんだろ? 小遣いとか貯金とかヤバいんじゃねぇ?」
「じいちゃんとばあちゃんが散髪屋だから、レジからくすねてるって」
「最低じゃん」
 再び場面が切り替わる。

『みなさん、さようなら。
 僕は今までずっと弱い奴でした。だからもう生きていけません。
 じいちゃん、ばあちゃん、レジのお金を盗んでごめんなさい。
 委員長、最後まで庇ってくれたのにこんな事になってごめんね。
 お父さん、お母さん、姉ちゃん、俺がいなくなったらまた家は平和になると思います。散々迷惑かけてごめんなさい。
 俺から進んで使いっ走りしてたのでクラスの皆は悪くありません。
 健』

 等と書いた手紙をポケットにしまって屋上にいる葉山くんがいた。泣きながらフェンスをよじ登って、縁に立つ。目を閉じて、足を踏み外…

「ぎゃああーっ!!」
 白い部屋に戻った。精霊が感想を訊こうとするが、訊かれる前に言ってやる。
「最低じゃん! どうやっても誰かが傷付く未来しかないじゃん!」
「未来が変わりますので、どう言う形であれ多少の変化はあります」
 精霊が答える。
「うふ…うふふ…ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん、あったかいんだからぁって何ですのん? …ふふ…はい、おっぱっぴー…ふふふ…ワイルドだろぉ…うふふふ…」
 野中くんがついに壊れる。
「ちょ…ブームが去ったギャグが色々混じってるよ
?」
 お願いだからアイーンのポーズをしながら眉毛ボーンと言うのはやめて、怖いから。
「ねぇ? 砂時計使わずにおく事ってできるの?」
「ええ、所有権を放棄すれば私はどこかに行って、また別のご主人様の過去の修正に携わらせていただきます」
 修正せずにはい、さよならってのもあり。でも元々は野中くんの物だ。
「ねぇ、どうする? あと二つ作戦思い付いたけど、もうシミュレーションできないし」
「ボインボインボインボイン♪ 務でーす♪ …え? 作戦!?」
 良かった、野中くんが正気に戻った。
「今までずっと定金さんが関わってるでしょ? 作戦その一。定金さんが産まれる前に戻って、両親がセックスするのを止める」
「それって定金さんを消すって事?」
「最初からいなかった事にする」
「だめだよ! 人殺しと一緒だよ」
「じゃあ作戦その二。定金さんが赤ちゃんの頃に戻って、誘拐してどっか遠くの乳児院の前に置き去りにする。アホな中学生カップルが後先考えずに産んで捨てたようにしかみえないよ」
「だめだって。捜索届け出されてたら一発で戻るよ。それに自分が産まれる前に戻れるの!?」
「戻れます。その際は、今の年齢のままで戻る事になります」
 なら誘拐作戦に…いやだめだ。野中くんが良い顔はしていないし、そもそもどんな危険が孕まれているか分からない。シミュレーションも出来ない。
「野中くん、私、やり直しの権利放棄する。野中くん、もし良い方法があったらやって。せっかく譲ってもらったのにごめん」
「うん、俺も思い付かないけど。ねぇ、やり直しの権利は所有者ならいつでも使えるの?」
「野中様が最初に手にしてから一年間が有効期限となっていますので、その期間内でお願いします。使われなかった場合は私はどこかに飛ばされて次のご主人様を待つ事になります」
「最初に俺の手に渡ったのが一週間前だから、ほぼ一年か」
 野中くんが呟く。
「じゃ、やり直しは保留で」
 俺が言うと、精霊はにっこりと笑って消えた。
 白い部屋も消えて、元の公園に戻る。
「何か不思議だったね。夢みたいだ」
 野中くん、頬をつねりながら現実かどうか確認するのは古いと思うよ?

 ___

「結局何もできないのか」
 俺は自分自身が情けない。
「そう言うもんだよ。色んな事が重なり合って世界は出来てるんだから」
 取り敢えず、宅間さんを家まで送って行く、それだけで良い事にしよう。
 しかし勿体ない。宅間さんが始めに言っていたようにロト6…いや、絶対に落とし穴がありそうだ。やめておこう。

 俺達は横断歩道を渡る。
 ふと気になって砂時計を取り出した。光りにかざすと煌めいて色が変わるのはそのままだけど、何だかもうあまりきれいには見えない。あんな不思議な存在(精霊)が宿っているのに神秘的にも見えない。
 ちょうど俺達が横断歩道を渡りきった時、砂時計が俺の手から滑り落ちた。コロコロ転がって横断歩道の上に止まる。ちょうど小学校低学年くらいの女の子が歩いてきて、その子の足元に止まった。その子が履いているピンクと白のスニーカーの方がよほど砂時計よりきれいな色に見えた。
「あ、落としましたよ」
 女の子が砂時計を拾おうとして屈んだ。
 信号はまだ青だった。
 でも、セダンとか言う車の種類だろうか、白い車が女の子に目がけて走って来た。スピードも出ている。
 ヤバい! 牽かれる…!

 ─やり直したい!

 俺は強くそう思った。

「やり直されますか?」
 精霊の声が聞こえる。俺と宅間さんは白い部屋にいた。
「もちろん!」
 即答だ。
「あの子を助けるんだよね?」
 宅間さんが訊く。
「当たり前」
「この部屋にいる間は時間が止まっています。状況を確認しますか?」
 頷く。精霊が白い光りに包まれて壁にスクリーンが映し出される。
「今の現実世界の映像です。時間は止まっています」
 確認する。
 まずは車。運転しているのは若い女性、暗めに染めたストレートの髪はセミロング、化粧も薄くて大人しそうな印象だ。目線は前に向いていて驚いたような顔をしている。右手には携帯電話が握られていた。多分、ながら運転って奴だ。
 女の子は車との距離が五十センチくらいしかないのに全く気付いていない。しゃがんだまま砂時計を手にしている。砂が水色やオレンジにキラキラ光っている。砂時計がそんな色になるのは初めて見るような気がする。
 後は、車の進む方向だ。そちら側には人もいないし、車もない。車の進行方向の信号は赤を示している。
 後はどのくらい戻すか。それと…。
「時間を戻してあの女の子を助けたとして、どんな問題が起こると思う?」
 それで誰かが傷付くのはごめんだけど、女の子が助かる方法はこれしかない。どんな問題が生じるか事前に分かればできる限り対応するつもりだ。精霊の答えを待つ。
「それは私には分かりません。シミュレーションもできませんし、シミュレーションできたとしても今より先の時間は見られませんから」
 つまり、三十秒戻して俺が砂時計を落とさないようにして女の子が助かったとする、その未来はまだできてすらないのだ。
「つまり、あの子が事故に遭う未来すらまだできてないんだよね? ならさ、問題ないじゃん。どんな事が起こったって、それはこれから起こる可能性があった事なんだから」
 宅間さんが言う。
「そうだ。未来なんて分からないんだ。ただ一つわかりきっているのはこのまま時間を動かしたらあの子は確実に車に牽かれてしまう」
 宅間さんも頷く。

 戻した時間は三十秒。
 俺は逆さにした砂時計をしっかりと握りしめて落とさないようにする。横断歩道を渡る。多分、さっきと同じ早さ…のはずだ。
 俺達が横断歩道を渡りきる。止まる。お願いだ、何も起こらないで!
 後ろから女の子が、宅間さんの脇を抜けて行く。サラサラとした肩に当たらないくらいの長さのショートミディアムの後ろ姿を見送る。
 ギュギュッと音がして振り向くと横断歩道の上で白いセダンが止まっている。大人しそうな若い女性が驚いた顔からホッとした顔に変わる。
 俺と宅間さんは周りを見渡す。良かった、誰もケガとかしていない。

「では私はこれで失礼します」
 精霊の姿は見えずに声だけが聞こえる。手元には砂時計、中の砂は温かみを含むピンクになって底にたまっていた。
 そして、ふっと消えた。
「何か…変な一日だったね」
 宅間さんが笑い出す。
「うん。しかもあの白い部屋にいた間は時間が止まってるからまだ二時半だよ」
 俺もつられて笑い出す。
 あ、宅間さん、やっぱ可愛い。頬の色がさっきの砂時計の砂みたいなピンクに染まっていて…。
「ほら、送るのはやめやめ。明るく楽しい未来のために遊びに行くよ!」
 え? 宅間さん、でも…。
「来週から中間テストだよ?」
「気にしない気にしない。こんな楽しい気分久し振りだもん。勉強なんてしていられない」
 そう行って俺の手を取って走りだす。
 え? だから、心の準備が出来てないって…。

【了】
【オマケ】

(中間テストが終わった日の設定です)
葉山「邪魔するぜー」
宅間「邪魔するんだったら帰っ…ぎゃーっ!」
野中「うわぁっ!! ショーテンガイズ男子メンバーがグレてる!」
森「大袈裟だな、単なるコスプレだよ」
鈴木「この茶髪とか金髪とかもヅラだしね」
宅間「何でそんな恰好してんだよ!」
水沢「商店街の秋祭りが来月あるからさ、コスプレさせてるの。予行演習的な」
野中「心臓に悪いよ! なんでそんな…え? 委員長、そのカラフルな物は何?」
水沢「サンバの衣装。中高生はなんちゃってちょい悪で接客、小学生はサンバを踊るんだ。そうだ、野中くんも飛び入りで踊る?」
野中「やだ! 絶対にやだ!」
葉山「そんなに拒否らなくても…。わかった! 北小って、運動会とかでサンバやった事あるだろ? 多分マツケンサンバで、ケツマンサンバとかふざけて尻出して先生に怒られて軽いトラウマになってるんだ!」
野中(ピンポイントで攻めて来ないで! ケツマンサンバとか)
水沢「タケちゃんのお姉さんの学年だっけ? 確か男子数名が低学年の前で雷落とされて…って、よく覚えてるよね。一年生の時じゃん」
葉山「先生が怖くて上級生達が泣きながらマツケンサンバしてたからな。あの後姉ちゃんも大変だったんだよ。マツケンサンバをかけたら自動的に踊り出す体質になっちゃって」
森「そんなに怖い先生がいたんだ(四年生から転校して来たので知らない)」
水沢「いたんだよ。それはそうと宅間さん、出てみない? 近くの美容学校の生徒さん達も来てメイクアップショーとかもあるけど。ちょうど宅間さんみたいにノリの良い人が必要だったんだ。ド派手メイクにして、フリフリ、キラキラのドレスとか着てくれるような」
宅間(こいつら砂時計の事知ってるんじゃ…)
森「あれ? 何か嫌だった?」
鈴木「ほら、賑やかし要員にしようとするから」
水沢「ほら、じゃあもう行くよ。テストの答え合わせしなきゃ」
葉山、森、鈴木「え…はーい…」
 ………。
宅間「全く…何でよ?」
野中「ホント、あんな風にピンポイントで攻めて来なくてもね」
宅間「でもさぁ、森くん達もさ、阿久軍団結成に関わっておきながら黙ってたんだよね?」
野中「あれはないよね。第六話の学活で話し合ってたじゃん。はじめと健は風邪ひいていなかったからとして、和也はその場にいて黙ってたとか」
宅間「責められるのが怖かったとか? ほんと、ケツの穴が小せぇなぁ」
野中「け…ちょっ…」
宅間「あんたは割りとデカかったけどね、ケツの穴」
野中「うわぁ! 言わないで! 何かさ、初期とキャラが変わってない? 大人しい女の子じゃなかった?」
宅間「私の小学生時代を知っててよく言うよ」
(二人は同小の設定です)
野中「いや、卓球してる時に人が変わったように気合いが入るのは知ってたけど」
宅間「まぁ、兄がいるからね。勝手に部屋漁ってエロ本とかエロDVDとか見てるし」
野中「何でそんな事してるの!?」
宅間「私のBL雑誌が見付かってさ。嫌がらせのためにわざと本の向きとか変えて置いてるんだよ。でも地味過ぎて兄は気付いていない」
野中「ホントに地味だね」
宅間「まあね。でも工藤の前でもこんな感じでしょ?」
野中「確かに…。ってか、あれはハメ外し過ぎだし。村上さんや戸田さんといる時は大人し…いや、最近はそうでもないな」
宅間「使い分けるの大変なんだよ。真理子(村上)や香織(戸田)も実はオテンバな本性隠し持ってるしね」
野中「そうなんだ…。確かに戸田さんも健(同じ部活)や旬(同じ委員会)と話してる時は男っぽいし、村上さんは男複数を相手にケンカして勝てるくらい強いらしいし」
宅間「そんなもんよ。野中くんも初期は騒がしい男子グループの一員だったのに何か大人しいよね」
野中「ああ、騒がしいのは大輔と和也、あと、健太も割りと声がでかいし」
宅間「あんたはむしろおっとりしてるよ。それで校内一の俊足だって言うんだからね」
野中「でも他の学校の陸上部と競うと埋もれるレベルだよ。お山の大将だよ」
宅間「さてと、砂時計の精霊について何か話す?」
野中「まぁ、あれは凄い存在だったよね。あんな悲惨な未来をシミュレートしておきながら、ニコニコしてるんだもん」
宅間「いくら人間じゃないからって、見た目は人間だったしね。むしろ怖いよ」
野中「しかもさ、あの白い部屋ってドアも窓もないのにどうやって入ったのか謎だしね」
宅間「ほら、忍者屋敷みたいに壁の一部がクルって回るんだよ」
野中「全然不思議な感じがしないよ、それ」
宅間「そもそもおばさんOLの姿をしていた時点で…。
 でも惜しかったよね。後々考えたらさ、私達があそこで砂時計を落とさなかったらって事でしょ? その前のロト6を買っておけばあの場で砂時計落とさなかった訳だし、同時に金も手に入る」
野中「今更…」
宅間「言っても仕方ないよね。まぁ、ちゃっちゃと次回予告しよ?」
野中「うん。(ホントにマイペースだな)
 次回は津山浩樹の出生の謎に迫る!」
宅間「いや、普通のそこら辺の小学生の出生の謎って…」
津山「誰が小学生じゃあーっ!」
野中、宅間「!!?」
宅間「いつからいたの?」
津山「ちゃっちゃと次回予告しようとか言ってた辺りから」
山口「何か俺らを小っちゃいものクラブとか言いそうな雰囲気がするぞ!」
桃井「言っとくけど、私は小学生じゃないからね。男子三人はともかく」
工藤「モモさん、一人だけ違うみたいに言わない方が良いっすよ…。こないだ電車に乗ろうとして駅員さんに間違って大人用の切符を買ったって誤解されてたっしょ?」
桃井「なぜそれを!」
工藤「こいつが目撃してたんす」(宅間を指差しながら)
宅間「ちょ…工藤! 売りやがった…」
野中(そこは自業自得だけど…)
津山、桃井、山口、工藤「では、次回もお楽しみに!」
野中「先に言われたし…」
【兄と妹とあと色々…】

 サラサラした短めの髪が肩の上で揺れる。お気に入りのピンクと白のスニーカーがアスファルトを踏み締める音は楽しげ。背中でランドセルが弾む。
 今日は別々に暮らす兄に会える日だ。小学二年生の少女はいつの間にか口元に笑みを浮かべている自分に気付いた。
 兄は今日まで中間テストだったらしい。でもそれも今日までだ。今日は兄の学校も午前中だけで終わる。
 少女は学校が六時間目まであるから兄を大分待たせる事になったが…。
「よう!」
 兄が手を上げる。柔らかな笑みが兄の顔に浮かぶ。
 今日の兄はカーキ色のチノに黒いTシャツ、上には白いパーカーを羽織っている。髪は元々少し茶がかっていたが、今はくっきりと茶髪に染められている。しかし、相変わらずサラサラしている。黒い濡れたような瞳はまるで宝石のようにピカピカ輝いているし、白い肌もスベスベ、背はその年頃にしては少し低いかも知れないが、自慢のイケメンの兄だ。
「走って来なくても良かったんだぞ」
 少女の息が上がっている事を察したのだろう、兄は少し口を尖らせた。
「だって月一でしか会えないんだもん」
 少女は頬を膨らませる。
「車とか危ないだろ? お前は注意散漫だから」
 声変わりと言う男の子特有の時期にあるらしい兄の声はしゃがれている。半年前までは澄んだ甲高い声だったのに…。
「大丈夫だって」
 兄が車とか危ないと言ったからだろうか。記憶の奥に何かが甦った。
 いつの事だっけ? この前の土曜日の事だ。仲好しの友達の家に向かっていた時だ。
 いや、そんな訳はない。ドラマのワンシーンか何かだろう。そんな事があったら今頃死んじゃってるよ、現に今はピンピンしているじゃない。
「どうしたんだよ?」
 兄が訝しげに首を傾げる。
「何でもない」
 少女は首を横に振った。
「まあ良いや。それよりどっか入ろうぜ?」
「じゃ、あの商店街の喫茶店が良い。パフェが美味しかったんだよね」
「少し歩くぞ?」
「平気」
 少女は兄の手を握った。学年が六つも離れているから兄は大きく、強そうに見える。
 でも少女は知っている。兄は本当は弱虫毛虫だ。

「最近学校はどうだ?」
「楽しいよ? 運動会ではリレーのアンカーを任されたんだ」
 見に来てよ、と言いたかったが次の言葉が出て来ない。
「そっか。行けたら行く」
 これは兄の絶対に行く、と言う意味だ。相変わらず照れ屋な兄だ。照れ屋で弱くて情けないのに、少女の前ではカッコイイ兄を演じている。
「あれ? 秀明じゃん?」
「何だよ、幼女とデートかよ?」
 バカにしたような男達の声が聞こえる。振り返ると金髪や茶髪の三人の男子中学生がいる。少女と兄を見てニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべていて、どうも好きになれそうにない。
「妹だよ」
 兄が答える。
「へぇ、可愛いね。流石は秀明の妹。セクハラさせてよ」
 一際チャラそうな茶髪にパーマの少年が少女の肩に手をのばす。
 きっと兄はいつもこいつらにからかわれたり、バカにされたり、パシリみたいに扱われたりしているんだと少女は直観した。
「いや…」
 少女は兄の後ろに隠れた。
「やめてくれよ、嫌がってる…」
 兄の口振りはどうも…言いにくそうだ。元々優しいけど気弱な兄なのだ。
「じゃ、ヒデが代わりにしてよ。いつもみたいに」
 チャラ男の手が少女の肩から兄の尻に伸びた。
「あ…」
 兄の口から声変わり前のような声が漏れた。
「人前でそんな声出しやがって、このエロ坊主。明日しっかり可愛がってやるからそれまで我慢しろよ」
 金髪の下にツーブロックを入れ、左耳と左眉にピアスを着けた少年が兄の顎を片手で持って斜め上を向かせて自分と顔を合わさせる。
「妹も呼んで見させる? それとも撮影して送ってあげようか?」
 兄は何も言えない。
 誰か…助けて!
「や…やめろよ。その子、嫌がってるだろ?」
 震える声がした。声の主は若くて痩せた背の高い男だった。商店街のハッピを着ていて、自転車に乗っている。
「何すかお兄さん?」
「俺達仲間同士なんすよ。これ、仲好しの印みたいなもんすよ。ちょっとふざけてただけっす」
「つーか、お兄さん言いがかりっすよね。警察に言っても良いんすよ?」
 お兄さんは少し怯んだようだが、唇をきつく結び直し、不良少年達に向き直った。
「そうは見えなかったぞ」
 だが少年達はギャハハと笑って茶化し始めた。
「そうは見えなかったぞ、だってさ」
「誰がどう見るかじゃねーっすよ。こいつは喜んでるんすよ」
「だよな、ヒデ」
 金髪少年が兄に訊く。兄は頷こうとしている。
「あんた達さ、じゃあこれから私が相手になろうか?」
 金髪を鷲づかみにしながら今度はお姉さんが登場した。長い髪が肩の下で揺れる凛々しい雰囲気の女性が不適な笑み浮かべつつも、鋭い視線を少年達に向ける。
「痛い! 暴行だ!」
 金髪の少年が叫ぶ。
「暴行って言うのはね…」
 鷲づかみにしていた手を放すと、お姉さんは金髪少年の耳元に口を近付けて、何やらゴニョゴニョと囁く。
「う…うわぁーっ!!」
 金髪少年は涙目になりながら地面を這うようにジタバタと這うようにお姉さんから離れた。
「ってか、あんた渡部の弟じゃん? 渡部さんも随分と甘いんだね。この程度で泣くような弟がいるなんて」
 お姉さんは少し拍子抜けしたような表情で言う。何を言ったんだろう?
「新ちゃん!? 大丈夫?」
「何をされたの?」
 チャラ男達が金髪少年に駆け寄る。
「ごめんなさい! 勘弁して下さい」
「どうでも良いけど漏らしてる。それじゃ私が怖がらせたみたいじゃん」
 ぐっしょりと濡れたズボンとアンモニア臭のする水たまりに、金髪少年はいよいよマジ泣きになった。
「う…うわあーん! 覚えてろー!」
 金髪少年は今時ギャグ漫画のいじめっ子でも言わないであろう捨てゼリフを吐くと、走り去ってしまった。チャラ男二人も金髪少年を追う。
 お姉さんはそれを見て、ワハハハと豪快に笑っていた。
「情けないなぁ」
「はい、言い返せなくて情けなかったです」
 お姉さんの言葉に兄が続く。
「何も言えなくてもあんたは妹を守ろうとしたから情けなくないよ。情けないのはあのなんちゃってヤンキーの三人」
 お姉さんは言った。
「俺も情けない…君が来てくれなかったらどうなってたか」
 お兄さんが言う。
「そう? 私はあんたを選んで良かったって確信したけど、あいつらに最初に声をかけた時に」
「選んだって?」
 少女が訊ねた。
「私達、実は恋人同士なんだ。好きな人を見つけたと思ったらショッボいヤンキー中学生相手に何やかんや言ってるんだもん。助太刀するでしょ、普通」
 お姉さんは照れたように笑う。意外と可愛いかも知れない、少なくとも兄はそう思っている。

「カッコイイお姉さんだったね」
 商店街の喫茶店にてモンブランパフェをつつきながら少女が言う。兄は不機嫌そうに頷いただけだった。
 ちなみにデート代は兄を引き取っている父から渡されている。厳密には父は働いていないので会社を経営している祖父が出所だ。
「お兄ちゃんもカッコイイけどね、お姉さんの次にだから世界で二番目」
 そう付け加えておく。何で一番じゃないんだよとも思ったが、カッコイイと言われたからか、少しだけ頬が緩む。単純な兄だ。
「あ、そう言えばさ、不思議な事があるんだ」
 少女がふと口を開く。
「何だよ?」
「あのね、私、こないだの土曜日に車に牽かれそうになったの」
「はぁ? 危ないじゃん」
「いや、それがね、私が横断歩道を渡ろうとしてたら前を歩いてたお兄さんとお姉さんが、すっごく綺麗な砂時計を落としたんだよね。光りが当たって砂が赤とか緑とか黄色にキラキラ輝くの。拾おうとして砂が細い管を通る時には金色や銀色や紫になるの」
「何だよ、それ?」
「さあ? で、それを拾って前のお兄さんやお姉さんにとどけようとしたのね。そうしたら、横に車が走って来てさ、信号無視ってやつかな?」
「危ねーじゃん! よく無事だったな」
 兄の声が少し荒くなる。少し離れた席に陣取っていた中学生四人が少女達を一瞬だけ見る。プリントや教科書を広げていて、どうやら勉強をしているようだ。中間テストが終わったばかりなので答え合わせをしているのかも知れない。
「それがさ、そんな事なかったの。車が私に迫って来るとか、砂時計を拾おうとしたとか、そう言う事自体なかったの。夢を見ていたみたいにも感じるけど、すっごくリアルで。
 で、本当はお兄さんとお姉さんの後ろを歩いてるだけで、二人とも砂時計を落としてないんだ。前を歩くお兄さんの手に水色やオレンジの砂が揺れてる砂時計がしっかり握られてて、それだけ。でも、私が横断歩道を渡りきったら後ろでキキッて凄い音がしてね。車が急に止まった音だったの。運転手の女の人が青い顔しててさ、あ、私、もしあの人達が砂時計落として、拾ってたら車に牽かれてたんだって念ったの」
「何だよ、それ?」
「さあ?」
「とにかくだ。車には気を付けるようにしろよ?」
 兄が念を押すように言う。
「でもさ、さっきのカッコイイお姉さんとあの野球帽のお兄さん、ちょっと似てるよね?」
「似てないよ。話しを逸らすな。それに隣のクラスの人達だ。あんまりジロジロ見るなよ。失礼だから」
「はいはい、分かりました」
 凄いギャグ小説キター! って感じです表情(嬉しい) こう言うの好きですウッシッシ 良いぞ、もっとやれ的な指でOK
>>[22]

(((;´∀`)いや、ケツマンサンバとか幼女がゲロを犬食いとかですよexclamation & question もっとやって良いんですかexclamation & question

 ___

宅間「私は覚悟決めたらゲロくらい食える気がしたけど…」
野中「…!!?」
宅間「葉山姉(厳密にはプログラムの再現)がいなかったら出来たと思うんだよね」
野中「だめ! 健のお姉さん(ほんとはプログラム)、越えてはならない線を越えさせないでくれてありがとう!」
宅間「でも野中くんは越えちゃっよね。チンコもケツ穴も晒したし」
野中「う…うわあーっ!! やめてぇー!」
宅間「それじゃやっぱ不公平だから私も次回では越えてはいけない線を越えるつもりだし」
野中「何すんのー!? いや、聞きたくない! 知りたくない!」
宅間「ほら、私ってさ、ひ…」
野中「うわぁーっ!! ネタバレにもなるから!」
宅間「やっぱ工藤じゃ私は止められないんだよね、まさか自分でも…」
野中「やーめーてーっ!!!」

水沢「何騒いでんだろ?」
工藤「さぁ? でも次回は宅間が遂に踏み入れてはならない領域に突入するシーンがあるらしいっすよ」
水沢「ってかさ、このシリーズ自体、やっちゃだめな事を次から次へとしてるか、何があっても今更な気もするけどね」
工藤「宅間がどれだけヤバい事をするかが見物なんすね」
第一話 空色デイズ 四月終わりから五月始め頃(作中での時間軸)
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&id=79801665&comment_count=11
第二話 イタい子達のレクイエム 五月後半頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&id=79881780&comment_count=20
第三話 イタい子達のレクイエムパート供]桟鄙鞍昇
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第四話 アジサイの季節に 六月後半頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&id=80063539&comment_count=28
第五話 雨上がりの屋上 七月前半頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comment_count=18&comm_id=3656165&_from=subscribed_bbs_feed&id=80171943&from=home_comm_feed
第六話 それいけ! アホ娘! アホ男! 七月中頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&id=80216531&comment_count=22
第七話 夏時間 七月終わり頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&id=80298492&comment_count=18
第八話 寄り添って眺める朝日 八月前半頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&id=80410141&comment_count=17
第九話 涙色の夕日 八月後半頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&comment_id=1466934099&id=80703168#comment_id_1466934099
第十話 守るって何? 九月始め頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comment_count=31&comm_id=3656165&_from=subscribed_bbs_feed&id=80817812&from=home_comm_feed
第十一話 クラゲと一緒に旅に出よう! 九月中頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&id=80865622&comment_count=21
第十二話 私の世界 九月終わり頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&id=81051118


その他の現在連載中の作品はこちらから↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=39667607&comm_id=3656165
>>[23]
 目次に追加しました。
 ヨシさんが作ってくれた過去作品のリストには12話のアドレスが抜けていました。で、コピペして作りなおしました。すみません。本文には追加できるんですが、コメントにはできないんです。
 あらためて遅くなりました。すみません。
>>[25]

(((;´∀`)しまったぁっ!! 抜けていたとは不覚…表情(青ざめ)
 どうも、ありがとうございましたぁ顔(願)

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