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ライドグライダーコミュのCRIMSON QUEEN / ライドグライダー・ブラッド

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<プロローグ>



「ちょっと 食べ物買ってくるから ここで待ってて。」

   オレは言われたとおりに大人しくシートの上に横になって待つことにした。


  あたりは  もう 暗い。  こんな時間か・・・
 
 夜のコンビニ   夜の駐車場   暗い照明灯

  車が   オレたちの ほかにあと  1台。

  お客は 3人。


 ドロロロロロロロ・・・・     キキっ

   バイクだ。    人が降りる。



   オレは 起き上がり 顔を窓から覗かせた。

バイクの男・・フルフェイスをつけたまま
       灰色のハーフコートを羽織って
       店の出入り口のまん前に停めた
       アメリカンバイクを降り コンビニの自動ドアが開く。 


   カラカラカラ・・   ジジッ
          ヒューーーーーーーー
        微かだが 音が聞こえる。
  そいつのポケットからか?   ケータイ?  モーター?

 オレの中に 解らない緊張が生まれる・・・ 「 やばいんじゃない? 」



  
 店の中    レジにアルバイト 2人
          男の客  2人   女の客 1人

           フルフェイスがレジの前を通過する。



       アイツは・・・?
     
        弁当のコーナーで 物色している。

 「 おい。 やばいんじゃない?・・・ 」
              イヤな感じだ!

   オレは 知らせるために 車の中で声を上げた。
 
「やばいぞ やばいぞ  やばいぞ
           気づけ   気づけ  気づけよ!!」

            オレは何度も続ける。 息で窓が白く曇りだす。
  
 くそ!  駄目だ   フルフェイスは アイツに近づいていく。

   店員が駆け寄り ヘルメットを脱ぐように説明しようとする。

     後ろ向きで無視するフルフェイスに 苛立った店員は 男の肩に手をかけた。
 

  ワィーーーーーーーーンンンンンンン

     モーターの音だ! 機械の音だ

   店員のほうに振り返る男・・   男の上着から素早く何かが飛び出した。

    ずいん・・・       ガシャンン 

     男から突き出た鋭利な「何か」が店員の胸を突き抜け、コンビニの棚をひっくり返しながら店員は床に崩れ落ちる。  鮮血が・・・



  オレは もう一度 吼えた。


       「ジュン! 
             やばい 
                  逃げろ!」
 
  

コメント(9)

<パニック サンクス>



「ああああ!
      なんだ なんだ なんだ!!
          どーした どした どした!」 もう一人の店員がレジから駆け寄る。          
                手には 緊急用のカラーボールが握られている。
  「ひゃあ!!」 惨状を見て引きつる店員B。 手から転げ落ちるカラーボール。

   血だらけで床に転がる同僚の胸に穴が開き
   横に立つ顔の見えないヘルメットを被った男の胸からは 尖った金属の角が飛び出している。



      フルフェイスは無言で振り返り、今度は壁際のジュンに対面した。


「行き成りかよ・・ 」パックのパスタを手にしたまま、眉間に皺を寄せ不満そうな表情になるジュン。



 ジジジジジジ・・  フルフェイスの体内からは小さく機械音が漏れている。
  次のターゲットは 確実にジュンだ。

 ジャ!   またもや 男の胸から飛び出す銀色の角。

     
         パンッ      ジュンは身を翻し 男の角はドリンクコーナーのガラスを突き抜く。



   横に跳んだジュンが男に向かって 手に持ったパックを投げつけると
     男の黒いグローブがフルフェイスの直前で叩き落とした。 ペペロンチノの匂いが広がる。




「 わああ!!」  「うわああ!!」 店内で悲鳴が響く。   店員Bは放心して立ち尽している。

「早く 逃げろ!   店から出て行け!」 ジュンは他の客たちに叫んだ。
      
   悲鳴を上げながら出口へ向かう客たち。

 オレが乗っているタウンエースバンの横を必死の形相で走り抜ける3人の男。



   ・・・あれ?   女の客は?   


    雑誌スタンドで身体を揺らしながらファッション雑誌を読みふけっている。
   耳には音楽プレイヤーのヘッドフォン・・・  あほ だ。




 フルフェイスの身体から再び ジュンに向かって銀の角が飛び出す。
   今度は 脇腹から2本の角だ。  転げるようにして逃げるジュン。 
 的を外れると また次々と男の胴体の数箇所から別の角が飛び出す。

  獲物に向かって何度も発射され、触手のように2メートルほど素早く伸びては縮む角・・ まるで 人間ハリセンボンだ・・

  連続して角を突き出しながら、フルフェイスはジュンを狙って店内をゆっくり歩き移動する。
 商品のスタンドが突き倒され、店の床にめちゃくちゃに品物が散乱している。





 オレは 車の窓から様子を見続けた。

 何度も繰り出されるフルフェイスの攻撃  ジュンは 逃げ場を失いかけている。
  雑誌スタンドの女を庇い、店の中で女と逆の方向に敵の攻撃を避けて逃げているからだ。




  物が飛び散り ラックや壁が突き破られている店の中で 
                       雑誌で顔を覆いリズムを刻む客の女・・・     あほだ。
 <フレンチドア>



バス!  
      バスン     バスン!
                      バスン!

 幾つもの穴がコンビニの床や壁に開き、連続する角の攻撃を交わすたびにジュンの逃げ場は狭くなる。
 
  やがて数発の攻撃がジュンの身体を掠り、着ていたブルゾンやジーンズを引き裂いた。

  「ジジジジジ・・・ モウ 動クナ。 
     痛くナイヨウに ラクにシテヤル。」
    フルフェイスから金属的な声が流れる。


 「うるさい!このチキチキボーンめ!
    アタシが狙いなら もっと広いところで勝負だ!」
  ジュンは一瞬 その場で膝を曲げうずくまると コンビニの天井に接するくらい高くジャンプしてフルフェイスの頭上を飛び越えた。

 
 フルフェイスは続いて振り返り 一度に数発の角を伸ばしたがジュンの素早さに追いつかずに新たな穴を商品ラックに開けた。


  商品棚の間に着地して自動ドアに向かって走る。
 途中で、出口横の雑誌スタンドにいた女を突き飛ばすと、女は雑誌を掴んだまま床に尻餅をついた。

  「ぎゃあ!   ナニすんだ!」 金きり声を上げる女。

 「伏せろ!  起き上がるな!」 ジュンは女に叫ぶ。
   店の壊れ方と男の姿に初めて気づき、細い目をまん丸にして驚く女
    ・・・腰が抜けちまったようだ。
  

  ジジジジジジジ・・・ フルフェイスはジュンのほうに向かって両腕を肩まで上げ、

   バズン!!    手首から勢いよく無数の線状のものが発射された。      
 
   「わあっ」  男の手首は煙をあげ、空気中にまっすぐ放射される無数の糸・・慌てて身を低くするジュン。


     ビジィーーーーー!
 
            横広の店のウィンドウガラスに幾つもの穴が開き、煙と蒸気が立ち込める。
  ガラスの自動ドアが 音を立てて真二つに割れる。

 「うあああああ!」  低姿勢のまま店の外にダッシュするジュン。
            地面に肩膝をついて着地して 右側に地面を転がった。 
            駐車場のタウンエースに逃げてくるつもりだ。



 ドム   ドム   ドム   ドム  店の中からフルフェイスが後を追う。
  
 幾つもの突起が穴の開いた胴体から飛び出し、かなりワケの判らない姿になった男が店から現れた。
  

  バヒン!   男の片腕から弾ける音がして 銀の角が弾丸のように飛び、逃げるジュンを狙う。  

  「ぐああ!」   貫かれたジュンの右腕から血しぶきと肉片が吹き飛ぶ。


  コキュン!
       血を流しながらオレの乗っているタウンエースのセキュリティロックをリモートで外して走るジュン。



  「大丈夫か!  ジュン!」 オレは吼える。

  「 ミカヅキ!   ゲートを開けて! 」

  
 おう!   オレは言われたように身を伸ばしてコンソールのスイッチを前足で押した。
 


  ゴウーン・・  
    タウンエースの後ろのフレンチドア(観音開き)が開き、ジュンの赤いHONDA FORZAが 闇のなかに姿を現した。





  そう。   
  オレは フレンチドアを開ける事ができるフレンチブルなのだ。  
 
  <機械の顔>



オレたちの乗るタウンエースはセコハンながら 特別仕様の改造が幾つかされている。
ベースの車両もリアゲートがフレンチドアになっている珍車だったのだが、それ以外のカスタムは殆どジュンのお手製によるもので、見た目は古臭く不細工だが、アイツの使い勝手がいいような実用重視のカスタムが施されているのだった。


今オレが押したフレンチドアの開閉スイッチも自動でタラップと連動されているので、左右にドアが開くのと同時に、車内に後ろ向きに格納されたFORZAの前方より地面に向かって鉄板のタラップが釣り下がった。


負傷した片腕を庇いながらバックゲートから車内に入り込むジュン・・・荷室も床にボトボトと傷口から血液が垂れ落ちる・・・運転席のシートの向こうから覗き込むオレと目を合わせると
「サンキュ」と小声で言いながらオレにウィンクをして赤いFORZAにまたがった。
 頭には愛用のジェットヘルを被っている。縦に大きく裂け目が付いたヘルメットは傷の隙間から、内張りされている鋼板が見えている。

ババっ バリババババババ・・・・ すぐさま、ド太いプロペラサウンドがタウンエースの室内に響く。


 バゥムっ!  スロットルを開かれたFORZAはタラップを伝って勢いよく一気に飛び出す。
           前方にはフルフェイスの男の黒い影が立ちふさがっていた。


  バス!   バスッ   バス!  

  真正面からのフルフェイスの攻撃    ジュンはFORZAにハングオンして 発射された鋼鉄の矢を避ける。 

男の正面まで近づいたFORZAは さらにスロットルを開けて 敵の身体めがけてアタック   ・・フルフェイスは勢いよく跳ね飛ばされ地面でバウンドした。
 
 ジュンの愛用のジェットヘル同様、FORZAのフェンダーにも鋼板が裏側に打ち付けられて、見た目にはキズだらけのボディを強力な戦闘アイテムにしている。
衝突して飛ばされる相手には、ちょっとした乗用車には跳ねられる以上のダメージを食らわせることができる。
 
 ブレーキをかけながら FORZAの方向を変えるジュン。

    ジジジ   ジジジジジィィィィィィ・・・・
 嫌な機械音を身体から漏らしながら、フルフェイスの男が起き上がる
 ・・・ いや 、 男からはフルフェイスが吹き飛び、代わりに頭部にあるのは
 半透明な肌色のデスマスクとその裏に収められた『機械の顔』だった。


「このガラクタ野郎! リサイクルしてやる!」  
 
 もう一度FORZAのエンジンを吹かし、よろける相手にアタックする。


   ドガガっ

          激突!
              しかし 今度は男は倒れなかった。
      そればかりか、男の全身から伸びた何本ものワイヤーがFORZAを背後から襲った。


  ggガガガgggggガガ・・・   ドス!
 
        
     発射されたワイヤーのほとんどがFORZAのボディで弾かれたものの、側面から伸びた1本が再びジュンの右腕を貫き、そのまま腕に巻きついた。

 命中したワイヤーは空中でピンと張り、ジュンは前進するFORZAから引きおろされた。

  「ぐううう・・」地面に落下したジュンは ワイヤーによって力ずくで引きずられる。 苦痛で顔が歪む。 ブレーキをかけられなかった赤いFORZAはジュンを落としたまま、しばらく無人で走った後、速度を失い転倒した。

 ギギ・・ジジジジジ ギガガッガガ・・・
   機械の顔から雑音が洩れる。その音には、さながら 捕らえた獲物の苦しむ姿を嘲りほくそ笑む声のような響きがあった。


グググググググルルルルル・・・オレは 開け放しのフレンチドアから顔をのぞかせて唸り声をあげた。

「おい! ジュン。   オレは準備できてるぞ! 
                さあ、オマエの力になってやる。
           こんな不細工な機械 早くヤッちまおうぜ。」
      オレの低い唸り声には、ジュンへのメッセージが載せられていたのだった。
       
<ワイヤー攻撃>


身に着けたダウンジャケットを地面に擦り付けながらも ズルズルと機械男に引き寄せられるジュン。

ふと見ると、 機械男の片腕の指先が痙攣している・・・尋常じゃないスピードで・・・
 それはまさに、小型の掘削機のような動きで、予想どうりに近づいたジュンを襲うために作動しているに違いなかった。

ジュンはエンジニアブーツで地面に踏ん張ろうとするも、ウインチのスピードは速く、みるみるうちに機械男の攻撃範囲に巻き込まれてしまった。 

   男の指先は 超ハヤい動きで ジュンの顔面に 近づけ  られそ・・

ヤバイヤバイヤバイヤバイ!   これじゃ ジュンは絶体絶命・・・・・

オレは・・・
 



  「ギャオオオオオォ gskごんvbぽymtyjりおおtkrtぼyyんbっじゅじゅhythj6j!!!!」

        雄たけびを上げながら  思わず タウンエースを飛び降り、 
 並みのフレンチブルの3倍の跳躍で 男に飛び掛っていった。

   ジャンプしたオレのキバが 機械の後頭部を狙う!

    ガキッ!   ギキキキキーーーー
                ヤツの後頭部の肉を切り取った。 へんてこな歯ざわりだ。

  オレの歯の隙間に、紙のように薄い皮膚が引っかかり、ヤツを見ると、 切り取られた頭部が銀色の鉄の肌をむき出しにしている。


  シュン!!   今度は 着地したオレに向かって 別のワイヤーが発射された。。

   
  おっと あぶねい!    発射されたワイヤーをパラレルにジャンプして避ける。

     
    もう一度 着地して すばやく ジャンプ!
      弧を描いて 跳躍して 大口で 敵の顔面を狙う
   
    「ガウ アウウウ   ウガッガガガアアア!!」

     ヤツの腕が振り下ろされる 
            オレの計算のうちだ!

      オレを狙った腕の上を 駆け上がる 
                機械の顔はすぐソコだ!

              オレの このキバを食らえ! 

         
          ガキン!        バギギギギバキバキ
         
            オレは歯を食いしばりデスマスクを食いちぎる。
           
   ギュンギュンギュンギュン・・・  オレがしがみ付いた頭部から異音がし出した。

   続けざまに何度もアゴに力をいれ 頭部の回路を噛み砕いてやった。 
 
    「ガガ   ・・ガガガッガガッガガガガッガガガ・・・・」
     ヤツの断末魔の悲鳴? のような 壊れた機械音声が 鳴り出す。
  
    

  「とう!」
           オレは ジャンプしてヤツから離れた。

   目の前の機械男は 頭部から火花を散らし、ガクガクとした動きで 目茶目茶なダンスを踊りだし、
 やがて 両膝を地面に着いて ブスブスと黒い煙を出しながら 完全に動きがとまってしまう

           ・・・はず  だった・・・
 ブワンブワンブワンブワンンンンンンン

  ところが オレの予想に反して、 頭部の故障など無関係に ヤツは再び暴れだした。
またもや 無数のワイヤーが 体中から伸びる。

 「ギャンギャンギャンギャン!」
    オレは何度も吼え、 ワイヤー攻撃がジュンに当たらないようにするために
      ヤツの気を惹いた。

 
    バヒュ!  バヒュ!
    
  体を捻って避けると、 鋭く光る銀のワイヤーがオレの黒いバットイヤーの真上を通過する。
    
     ジャンプしながら 発射されたもう一本のワイヤーも交わして 体制を整えようとした
       のだが、
  
   そのとき、


       オレの 胴体に 衝撃が・・・

            腰のあたりが   急に  熱くなる

          オレは バランスを    崩した。

                 ジャンプしたままの オレの目には  風景が縦に 回転する・・


          あ

           オレの からだが   回転してるのか

     クソ    当てられた!


                早く着地だ!

   
 
  しかし
              残念ながら 後ろ足には 力が入らず
                       オレは無様に 落下して地面に転がった。

    そして その 後すぐに こけたオレの目の前に 天から降ってきたのは

             
                         ワイヤーで切断された 
                                  オレの下半身だった。     
<クリムゾン・シャワー>



「ミカヅキ!!   

   ちっ      キショーーーーー!!!!!!」

  
  落下したオレの姿に ジュンは噴火した。


 ビキビキビキっ 
  立ち上がり ジェットヘルを投げ捨て、腕に食い込んだワイヤーを無理やりに引き抜く。四方に血が飛び散った。


  「ぎあああああああ!」  
 機械男に向かって 奇声をあげて引き裂かれたほうの腕を振り下ろす。
 
  噴出した多量の血液が男の身体に降り注がれた。

  シュウウウウウ・・・・
      男の身体に付着した血のラインから 勢いよく湧き上がる蒸気・・
   
  ジュンと男の間の地面に飛び散った血液からも 立ち上る蒸気・・

  
 素早くオレに走り寄るジュン。  
         自らも血しぶきを浴び、上半身が赤く染まっている。

  半分になったオレの上半身を胸に抱きかかえると 
   蒸気の向こうから 再び攻撃を開始した男のワイヤーを掻い潜りながら
    倒されたFORZA:アリスに向かってダッシュする。


   ワイヤーの飛距離外に走り出たジュンは 横たわるアリス号の向こう側で身体を伏せ、片腕にオレを抱いたまま 機体の下に肩を入れ引き起こした。

  カラダに力を入れるたびに 凄まじい量の血液が噴出する。
  よく見ると、血液は腕の傷口からだけでなく、ジュンの皮膚のいたるところからも滲んで浮き出るようにして辺りに広がっているのだ。
  切断されたオレの上半身にもジュンの血が降り注がれ、ジュンがアリス号に跨ったときには、赤いバイクの機体も含めて、まるで巨大な血の塊のようになってしまった。


 掴んだハンドルを伝わって FORZAの内部にも侵入する血液。
 やがて ジュンがイグニッションに触れずとも エンジンがスタートし、
 爆音が轟いた。
 
 
ババリバリリリリリババババ!!!! キィィアアアアアアア!!!!!

 いつもの排気音に 聞きなれない甲高い音が混じる。まるで 悲鳴のようだ。



 蒸気の向こうから機械男が現れた。相変わらず、身体からワイヤーが飛び出し、生き物のように波打っている。
  オレの攻撃で半壊した頭部は 結局、攻撃の中枢ではなくて、ただの音声装置だったのだと気づくと、急にオレの意識が遠のきだした。

 目の前が灰色に翳(かげ)りだした。
 
  「ミカヅキ、もう一度 アタシと戦って。」
     ジュンの声が聞こえた。
  
  オレの視界には 何も映っていないが ジュンの声の方向に顔を向けて
      頷いた。



   
    ガボッ

         切断された傷口にナニカが侵入してくる。


     オレの背骨を蔦(つた)って 脊髄までナニカが這い上がってくる。


 半死のオレには 恐怖も 痛みも 感じなくなっていた。

  むしろ  その感触には 優しさが感じられた。


  なぜなら、体内に侵入したソレが 

       ジュンなのだ と  いうことが解ったからだ。
     
 
<『媒介』>



オレの体内に次々と流れ込むジュン・・・

  オレの組織のなかに 赤いジュンの血液が滑り込み 結合する。

 
 ゴゴゴゴゴゴ・・・
          唸り声を上げながらFORZA:アリスが発進した
                  ・・・ジュンの『意思』に依(よ)って。

 ジュンの肉体は 血液と蒸気を噴出し、滑走するアリスは風船状の赤い泡で囲まれた。
 オレたちは アリスごと、大きな赤い繭となり移動していた。

 
 ジュンの『意思』は オレとアリスの間にも『媒介』となり、
  オレの『野性』は 繭に反映された。



   ウゴゴゴゴゴゴゴゴ!!! ギイイイイィィィィ!!

       血泡の表面が徐々に硬化して繭の外観が変わる。

 前方に嘴(クチバシ)が現れ、機械男に威嚇の咆哮を放った。


 目の前の赤い異形に対して 機械の心は恐怖を感じず、
 移動する的に向かって 戸惑いなく続け様にワイヤーを打ち出す。

  ヒュン     ヒュン


                ヒュン     ヒュン



  
      バスン    

                バスッン   


     二発のワイヤーが繭に命中して 貫通した。

  
  キュキュキュキュ・・・    ウインチが高速で作動してオレたちの繭を引き倒そうとする。



 「ミカヅキ・・・  跳ぶわよ」

    オレとジュンの『意思』は アリスの車体にパワーを集める。

   繭は ワイヤーの牽引で引き倒されずに 敵の方向に向かって跳躍した。


    ブオン・・・・・・・


                ドシャッ

   赤い塊となったオレタチの下敷きになる機械男・・

       踏みつけた後 相手を後輪で轢きながらその場を移動する。


   ギギギギギッ  食い込ませたワイヤーで引きずられた機械の身体から、
           駐車場のアスファルトの上に塗装や鉄粉や衣服の切れ端が擦り付けられた。



   地面に寝転んだままワイヤーを外すと 男は膝をついて素早く立ち上がり、またもや戦闘態勢をとる。

 壊れた原型を留めない頭部を自らの腕で引きちぎると、ぽっかり開いた首の穴から 表面に無数の穴が開いた鉄の半球がせり出した。

   ババババババ・・ いっせいに鉄球の穴から飛び出す無数のワイヤー
          
        再び、胴体からもワイヤーが飛び出す。

       これじゃまるで 怒ったウニ人間だ。


  鉄球が回転を始めて ワイヤーの触手が生き物のようにのた打ち回る。

  
 
  「ミカヅキ、  アンタの運動神経を使ってアイツにトドメを刺す。」
          

  ジュンの声がオレの脳に伝わる。

   ジュン沸き立つ血液が『媒介』となり オレの神経とアリスのパワーが繋がった。

  赤い繭の変形は進み、頭部の嘴には赤い「キバ」が備わった・・・オレの『野性』のシンボルだ。

 繭の皮膚も強度が増している。
 
 オレタチの準備ができた。   決着の時だ。
<弾丸化>


オレの下半身は失われてしまったが、今、その代わりにジュンの愛車がオレの足となった。

意識の喪失とともにオレは視力も失ってしまったが、それはジュンの意識から来る五感の信号が 行動のデータになっている。

 オレは 単純に 敵の破壊のために 自分の精神エネルギーを使えばいいのだ。


 ハリガネのバケモノと化したヤツは ワイヤーを振り回しながらも 自分の乗ってきたアメリカンバイクに近づいた。

 ビシィィ   数本のワイヤーがバイクのハンドルを掴み絡み付いていく。

 次々とワイヤーを発射させながら 本体もバイクに向かって移動を始め、
足でシートをまたぐ頃には、無数のワイヤーがあらゆる箇所に絡み繋がって
バイクと機械男は合体をした。


ズドロロロロロロロ・・・・・・・ 低いエンジン音が響く銀色の鉄の塊が 赤い血の塊のアリスと向き合った。


「ちっ  しゃらくせー。」  オレとジュンの言葉がカブった。 

一度 出方を覗ったほうがいいな・・・   地面に煙を立て急加速してアリスはコンビニの駐車場を後にした。

 当然 オレタチを追い 走り出すメカバイク。
走りながらもプラズマの触手のようにワイヤーを動かし続けているのを見ていると だんだん気分のムカツキが酷くなってきた。


ズバッ   ズバッ
      後方から短いワイヤーが飛来して アリスを掠る。

 ヤツの加速で車間が狭くなり、ワイヤーの飛距離が長くなってきている。
 あまり追いつかれるのは危険だ。


「こっちも飛び道具で 太刀打ちしてやる。」 

 ジュンのひとことが アリスのテール部分に 細い筒状の突起を生まれさせる。

   ・・・発射
 
  バンッ!   バッ   バンッ!
           赤い筒状の突起から オレタチのエネルギーが固形化して弾丸(バレット)となって飛び出す。

  発せられたワイヤーの隙間を飛び、敵の正面に向かって飛行する赤いバレット。

  バジィィィ   命中したバレットは敵の頭部のワイヤーを数本吹き飛ばした。

  しかし、怯むことなく加速して近づく敵のバイクからは ワイヤーが次々と放たれる。

   2発の攻撃がアリスに当たり、繭の表皮が傷つけられた。  その痛みはオレタチに共有され、ダメージになる。
    

   「たぶん このまま走っていてもキリが無いから、
 こっちは アイツみたいに連射できないけど あと数発バレットを  連射するわ。  
    そのあとで 勝負よ!」

 
   
   敵の間合いを計りなおし 感覚を使って トリガーのタイミングを合わせる・・・   発射   

                                                       発射
           
                                                         発射


  
                  前回とほぼ同じ場所に全弾が命中した。 ワイヤーを粉砕した箇所がハゲになっている。

         攻撃を受けた機械男は 滑走しながら尖ったワイヤーを伸ばし 何十本ものワイヤーの先端を標的:アリスの方向に向けた・・・ 一斉掃射するつもりだ。


  クライマックスだ。 あの総攻撃をまともに食らえば コッチは蜂の巣だ。

 「準備ができた。   やるぞ。」 オレはジュンに確認の声をかけた。

 「うん。  一発勝負よ。    キメテね!」



   オレは自分の意思を一つのバレットに集積させて固形にした。

  連射するたびに先端が黒ずんだ赤い銃身の奥に運ばれるバレットとなったオレ。


  狂ったようにパワーをあげた敵が近づく・・・  アリスのエンジンサウンドとジュンの鼓動がリズムを作り出す。


   バ     シ   ッ!
   
    「ウググ!」 次の瞬間 赤い塊のオレは銃口から空中に発射された。

   同時に オレが飛び出した空間には 敵からの無数のワイヤーが放射されていたのだった。

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