競馬千夜一夜コミュのファーラップ

「レッド・テラー（恐怖の赤毛）と呼ばれた馬」ファーラップ（Ｐｈａｒｌａｐ）
牡(騸)　栗　ニュージーランド産　１９２６年生　１９３２年死亡
父ＮｉｇｈｔＲａｉｄ　母Ｅｎｔｒｅａｔｙ（Ｗｉｎｋｉｅ）
５１戦３７勝＜主な勝鞍＞ＡＪＣダービー、ヴィクトリアダービー、ヴィクトリアセントレジャー、キングズプレート、ＡＪＣセントジャー、メルボルンＣ、アクアカリエンテ・ハンディキャップ他

海外に遠征することが強い馬の選択になった現代ですが、数奇な運命を辿ったオセアニアの英雄の物語です。
ファーラップはニュージーランドのティマルに生まれ、オーストラリアで調教されたオセアニアの歴史的名馬です。２歳にして体高が約１７４ｃｍの巨体でした。名前はスリランカ語やタイ語で稲妻や閃光を意味し、父ナイトレイド(夜襲)からの連想もあって名付けられたようです。２歳時のセリ市での売れ残り、やっとついた値段がわずか１６０ギニー(約３万円)、オーストラリア在住のユダヤ人オーナーに購入されオーストラリアに渡りました。巨体を持てあまし５戦目の未勝利戦でやっと１勝。３歳となり本格化、ＡＪＣダービーやヴィクトリア・ダービーなどを勝ちまくりました。この年は９連勝を含めて１３勝。栗毛なのに濃い赤毛色をしていたことから“レッド・テラー”(恐怖の赤毛)と呼ばれました。４歳時にはメルボルンＣを含め１４連勝、５歳時にはコックスプレートなど８連勝を達成。この後、カリフォルニアとメキシコの国境近くで開催される世界最高賞金レース・アグアカリエンテＨに招待され渡米、コースレコードで圧勝してからわずか１６日後に放牧先のサンフランシスコ・メンロパーク牧場で急死ました。死因は疝痛といわれていますがヒ素が検出されたこともあり、今も謎とされています。
彼の心臓は研究対象として専門機関に寄贈されました。研究者たちは心臓の重さが６.３Ｋｇ(通常のサラブレッドの１.５倍以上)もあったことに驚嘆しました。ミルリーフが同じように６Ｋｇを超えていたといわれていますが、恐るべき心肺機能を持っていたと推測されます。１９３１年に記録した１完歩は８ｍ２７ｃｍ。１００ｍを１２完歩ちょっとで走れる計算になります。１完歩が他馬より５０ｃｍほど長いと言われるディープでも７ｍ５４ｃｍ、想像を絶します。１９５１年にスペインのＡｍａｄｏＭｉｏが２７フィート３インチ（８ｍ３０センチ)を出すまで歴代１位の記録でした。
オセアニア競馬史上ではカーバイン(４３戦３３勝、２着６回、３着３回)とならぶ２大最強とされる伝説の名馬ではありますが、この馬について一番特筆すべきなのは、オセアニアの人々にとっては最強馬ではなく、むしろ英雄として語り継がれています。戦績を見れば、確かに素晴らしい記録を残したファーラップですが、近い実績を残した馬がいないわけではありません。なぜ彼だけは英雄なのかで特別なのか。オーストラリアは１８世紀にイギリスの植民地となっています。初代総督アーサー・フィリップ率いる英船団が流刑囚８００名を引き連れて入植が始まり、島流しの国という扱いでした。今でもアメリカ人やイギリス人の中にはオーストラリアの人々を差別している悲しい現実があります。だから、オセアニアで素晴らしい活躍を見せたファーラップが、アメリカに遠征した時、国中でその活躍を祈ったというのは理解できる話です。そしてファーラップは、そのアメリカにおいて当時の一線級強豪達を相手にレコードタイムで圧勝を見せてアメリカ人の度肝を抜きました。当然、快く思わない人間も存在とたことは事実です。死因に憶測が流れる背景でもありました。
ニュージーランドの名牝サンラインはファーラップの妹ニーラップを祖としています。

コメント(10)

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[1] mixiユーザー 05月16日 17:07

真ん中の写真は、馬体が本当に大きく感じられますね。
当時の時代背景の中で、活躍したファーラップの生涯を複雑な思いで拝見しました。
わずかな値段で売買され、すごい記録を樹立し、そんな時に不幸なことになり...。
正に哀惜の英雄ですね。

海外遠征繋がりだと、ドバイ・ゴドルフィン・マイル（G2）のユートピア、
ドバイ・シーマ・クラシック（G1）のハーツクライに続いて、5/14の
シンガポール航空国際カップでコスモバルクも1着になりましたね。
遠征は大変だと思いますが、外国での活躍も応援していきたいと思います。

[2] mixiユーザー 05月16日 18:53

ドバイでの日本馬の活躍もあり海外で善戦したくらいでは驚かなくなっていますが、シンガポールのバルクには心より賛辞を贈りたいと思います。いくら遠征なれしているとはいえ、９５００キロも離れた気候も馬場状態も違う環境で結果を残したことは地方在籍馬にも夢が拡がりました。今年は決まっているハーツクライやディープの他にも安田記念の結果次第ではムードやシンボリグラン、暮れの香港にも何頭か行くはずです。凄い時代になりました。
現代より輸送が過酷だった時代にファーラップの残した偉業も大変なものでした。

[3] mixiユーザー 05月16日 19:15

ファーラップの馬生を再現した映画を見たんですが、ファーラップの輸送って簡易馬房みたいな特製コンテナをクレーンで吊るして船に乗せて２～３ヶ月かけてメキシコまで行ったんですよね。
その間は調教も出来なかったでしょうし、それでレコード勝ちするんだからとてつもないウマですよね。
何度も命を狙われたみたいだし、大変な時代だったんですね。

[4] mixiユーザー 05月16日 22:33

プンスキーさんが見られた映画のようにファーラップの遠征は、輸送を含めてとんでもないチャレンジでした。
初めて走る異国のレース、しかも初めてのダートであるアクアカリエンテＨではスタートで１秒以上も出遅れ１コーナーを過ぎてもまだ１０馬身以上は離れた最後方、落ち着きがなく頭を振りつづけるファーラップ。しかし、突然に彼は大きなウサギにでもなったかように大きなストライドで走り始めました。物凄い勢いで追い上げてたった１００メートル程の間で全ての馬を抜き去りました。勝ちタイムの２.０２.８はトラックレコード。格下の競馬後進国から来た無名競走馬の法外なレースぶりにアメリカ人はぶったまげました。複雑な歴史観念が交差する中で、祖国の期待を一身に背負っての勝利であったためらオーストラリアではもうお祭り騒ぎに近かったそうです。でも、このレースがファーラップにとって異国の地での最初のレースで生涯における最後のレースとなってしまいました。その死はアメリカとオーストラリアの間に大きな軋轢を残しました。彼の物語は１９８３年に映画化され大ヒットしました。また"Phar Lap - Farewell To You"（さらばファーラップ）という歌も作られました。

[5] mixiユーザー 05月16日 22:38

＞町人学者さん

その映画何てタイトルですか？
是非見てみたいです！

[6] mixiユーザー 05月17日 05:02

ほんっっっとに大きい馬ですねぇ（＠＠；）

友達がディープを見ていていつも感心しているのが
レース後、返し馬から戻って来る頃には
鼻がふがふがしてない（＝呼吸が落ち着いてる）事なんですが、
１完歩が長い事や心臓が大きいというファーラップの話を
読んでいて、なんとなくその事を思い出していました。
（心臓の大きさと心肺機能は関係無いかもしれませんが＾＾；）

私もその映画を観てみたいと思っていろいろ検索しましたが
どうも日本国内では発売されてないみたいです（＞＜；）
タイトル「Phar Lap / Movie」１９８３年
監　　督：サイモン・ウインサー（Simon Wincer ）
Amazon のユーズドに6,079円で出ていました。
どこかで放映してくれないかなぁ・・・・。

[7] mixiユーザー 05月17日 06:47

Ｓａｉさん映画情報有難うございます。
シービスケットのように馬を題材にした映画は多くありますが、ファーラップは制作年代と競馬環境の違いもあり日本ではファンにも知られてないようです。わが国でもトキノミノルをモデルとした「幻の馬」(１９５５年・大映)がありました。

＞（心臓の大きさと心肺機能は関係無いかもしれませんが＾＾；）

心臓と鼻の穴の大きさは心肺機能に関係があります。
トレーニングで高められる能力と、生まれついてのものはあり、人間も同じでしょうね。

[8] mixiユーザー 10月28日 16:18

ファーラップと同様に安く買われたテイクオーバーターゲットが世界で活躍しています。
１０月２３日のデイリー・テレグラフによるとファーラップが突然の死を遂げたのは大量のヒ素による毒殺だったことを報じました。オーストラリアの研究機関がシンクロトロンと呼ばれる最新技術を使ってファーラップのヘアサンプルを検証した結果、致死量のヒ素を検出し、死因をヒ素によるよるものと断定しました。
突然の高熱と激痛に苦しみだしたファーラップは３５時間後に死亡。あまりの強さに危機感を抱いた北米の競馬関係者やマフィアによる仕業とのうわさが広まりましたが、当時の科学技術では死因を特定することはできませんでした。
しかし、依然として誰が何の目的で毒殺したのかは謎のままです。
ファーラップが死んだ翌年に全米のアイドルとなるシービスケットが誕生します。