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黒崎文庫コミュの病名(2007/08/03/06:15)

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暑い日が続いてますがみなさま健康にはくれぐれも気をつけ
ましょう。
人の体はささいなことでも体調を崩すものですから・・・。


+++++++++++++++++++++++++++

降りしきる雨の中私はバスを待っていた。

あと10分程この屋根もないようなバス停で待たなければ
いけないと思うと憂鬱にもなるが諦めるしかない。

私の前にもサラリーマン風の男性が重そうな鞄を左手に
紳士用の大きな傘を右手にイライラした様子で立っている。
しきりに体を揺らしながらバス停の時計を睨んでいる。

なんとなく面白かったのでずっと眺めていた。

時計を見る。
舌打ちをする。
右手で頭の後ろを掻き毟る。
時計を見る。
右のポケットをしきりにあさる。
時計を見る。
左手で背中をコリコリ掻く。
左手でズボンのポケットをあさる。
また時計を見る。
舌打ちをする。
右手で左肩をつかみながら、
左手は背中をしきりに掻いている。



男性は傘をさしたまま重そうな鞄を持っているのだ。

見間違いか?
その答えは次の瞬間にでた。

真っ赤な爪をつけた右手と、老人とおぼしき右手が
現れたのだ。
それらの手はしきりに何かを探しているようだった。
ゴソゴソと男性のポケットをあさり続けている。

私が声を上げそうになったとき、その手の動きが
突然止まった。

そしてゆっくりと私に向かって伸びはじめた…。

声を上げようにも声が出ない。
逃げようにも体が動かない。
その指先が私に触れようとする刹那。

♪ジリリリーン♪ジリリリーン♪

黒電話の音。男性の携帯が鳴ったのだ。
迫ってきていた手は消えうせていた。

「おう、なんじゃ?」ドスのきいた男性の声。
「ぁあ?そんなもん知るかボケェ」
「子供のゲーム機でも給食費でもエエから持って来い」
「じゃかましいわ!グダグダ抜かすなダボが」
聞くに堪えない罵詈雑言が続く。

夢でも見ていたか…。

自分に言い聞かせてその手のことと男性のことは
忘れていた。



今日この男性に再会するまでは…。


看護婦から性質の悪い患者がいるから注意してほしいと
頼まれた。
2人部屋に入ったはずなのに同室の患者に嫌がらせをして
追い出すらしい。
その患者はコワモテらしく追い出された患者も文句が
言いにくいだろうから私から言ってくれとのこと。

勘弁してくれ。



部屋の中から怒声が聞こえる。
「…いいからとっとと金とってこんかい!」
「わしがいったろか!」
携帯でわめき散らしている。ここは病室なのに…。
その声を聞いて思い出した。
あの雨の日の男性だと。

この男性は3日ほど前の夜に救急車で運ばれてきた
らしい。
なんでも体中を捻られるような痛みがするとのことで
その夜は鎮静剤を処方し次の日検査を実施したが…。
これといった異常は見られない。
ただ体が非常に衰弱している。
経過をみようということで入院してもらったが日々
悪行三昧。
個人的には退院してもらいたいが医者としてはそうも
いかない。衰弱の原因がわからないのだから。

私「えー、佐藤さん。ここは病院ですので携帯の電源
は切っておいてくださいませんか?」

佐藤「あー、スンマセンなぁ。出来の悪い若いもん
やから何べんもいわなあきませんのや」

私「頑張りすぎですよ、少しは体をいたわってあげて
くださいな」

♪ジリリリーン♪ジリリリーン♪
携帯が鳴り響く。
躊躇なく出る佐藤さん。
佐藤「おぅ、金できたんか?ぁあ?死ぬしかない?
勝手にしろや!…」
罵声が響く中ふと気づくと布団から手が伸びている。
佐藤さんの体の中にズブズブと入って行く。
そして何かを握り締めて布団の中へ帰っていく…。
今度は首元から子供の手が現れる。
同じように体の中へ入りまた何かを握り締めて
でていく…。
何本もの手が出入りを繰り返す。
そのたびに体の中から何かを持ち出しているようだった。



私はカルテに一言記入して病室を後にした。



病名「Bitterkeit(怨恨)」



+++++++++++++++++++++++++++

コメント(1)

この話から3話くらい『手』を題材にした話が続きます。

もう消しましたがこれ以降の3話は元々日記に書いたSSの
改編になってます。

人の日記に飛んだ時に「題名」と「最初の数行」が
全く同じだったときに「この前読んだな」と思いますよね。

それを利用して結構な数の「手」の話を毎日更新して前日分を
消去する。を繰り返してました。

マイミクの数人が気づいてくれたので満足してやめましたが
またこういうお遊びをしてもいいかもしれないな。


ちなみにこの話、一部実体験です。

雨の日にすれ違った会社員に違和感を覚えて振り返ると

傘を差しながら

頭をガリガリと掻き毟りながら

ポケットから携帯をとりだしました。

「え?」っと思ったときには頭を掻いてた手は

どこにもありませんでした・・・。

単なる見間違いだったのでしょうか?


それとも



それとも



今アナタの後ろで手招きしてるかも・・・。

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