つんつるテン・ショートショートコミュの「真似っこコーヒー」使用テーマ「愛」

僕には付き合い始めて3年、同棲をしはじめてからも明日で1年経つが彼女がいる。
同棲を始めた日が2人の付き合い始めた日だったので明日でちょうど3年ということになる。
特に大きな問題もなく、もちろん些細な喧嘩はあったけど、今でも２人ともはじめと変わらない気持ちで、自分で言うのもなんだが、いたって順調といえる。
リビングでコーヒーを飲みながらふと思い返していた。
同棲を始める頃は、すでに同棲をしている友達が「自分の時間がなくなる」やら「ケンカが増えるからやめたほうがいい」など否定の言葉が続いた。そして最後に「価値観、特に食べ物での違いが一番つらい！」と自分は同棲を続けているわけで説得力があるんだかないんだかわからないが強く言った。
ただそんなことを聞かなくても、食べ物が絡んだケンカなどは一度もなかった。
確かに彼女には嫌いな食べ物が、というか嫌いな「状態」がいくつかあった。
デザートとしてのクレープ（中身がツナなどならOK）だとか、たこ焼きにかかっているかつお節（たこ焼きは大好き）とか、「カレーをスプーンで食べること」なんていうのもあった。
でもそのたびに僕は「なんで！？」と思うこともなかったし、ましてやケンカになることなんて一度もなかった。
それどころか今ではクレープは腹が減ったら食べたいものに変わったし、カレーをフォークで食べるのがうまくなったし、たこ焼きなんて率先してかつお節を除いている自分がいる。
そのたびに彼女は「真似っこだぁ～」そういって無邪気に笑っていた。
別に彼女の趣味に無理して合わしているわけでもないし、そんな自分を情けないとも思ったことはない。
お互い譲歩しあうように意識もしてないし、「自然」に２人でいられた。
僕のことを一番知っているのは彼女で、もちろん反対もそうだ。知らない事なんてない。そう思っていた。

いつも僕は休みの日は昼ごろに起きるのだが、今日は珍しく早く目が覚めたのでリビングへ行った。
「珍しいね～」
そういって笑顔でおはようと言う彼女、返す僕。いつもと変わらない朝だ。
ん？?でもなんかいつもと違う。なんだ？?・・・わかった！コーヒーだ！彼女がコーヒーを飲んでいる。
同棲してから、というか出会ってから家でも店でも自動販売機でも彼女がコーヒーを飲んでいるのを見たことはなかった。　
「あれっ？コーヒーなんか飲んだっけ?」思わず聞いてみた。
「えっ毎日飲んでるよ。でも朝だけだけどね」
知らなかった…。おのろけの「知らないことなんてはない」はすぐに撤回された。。。
「あっでも朝のコーヒーは真似っこしないでね」
「起きてくるまでいい夢見てるかなぁ～って思いながらあったかいコーヒーを飲んで待ってるのが小さな幸せなんだから」そういって彼女は笑った。

僕にコーヒーを出した後、朝食を作る彼女を見ながら、思った。

明日の朝　「僕とおなじ苗字になって」　と伝えたら、
「真似っこだね」そういっていつもの様に笑ってくれるだろうか。