（弘法大師空海から徳一師に向けての手紙）
「摩騰遊ばずんば振旦久しく聾し、康会至らずんば呉人長くめしいならん。
聞道、徳一菩薩は戒珠氷玉の如く、智海弘澄たり。斗藪して京を離れ、錫を振って東に往く。
始めて法塔を建てて衆生の耳目を開示し、大いに法螺を吹いて万類の仏種を発揮す。
嗚呼、俄梵の慈月、水あれば影現す。薩侘の同事いずれの趣にか到らざらん。珍重、珍重。
空海、大唐に入って学習するところの秘蔵の法門、その本、未だ多からずして広く流伝する事能わず。
衆縁の力に乗じて書写し、昂揚せんと思う。所以に、弟子康守を差しつかわして、かの境に馳せむかわしむ。
伏して乞う、かの弘道を顧みて、助けて小願を遂げしめなば、幸甚、幸甚。委曲は別に記す。嗚呼、雲樹長遠なり、誰か企望に堪えん。
時に風雲によって金玉を恵み及ぼされよ。謹みて奉状す。不宣。」
弘仁２年 ４月５日
沙門 空海
陸洲 徳一菩薩 謹空
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