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生活保護者の集いコミュの「生活保護を受けるとやる気がなくなる」は本当か

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https://diamond.jp/articles/-/189205

みわよしこ [フリーランス・ライター]

「生活保護はやる気を失わせる制度」という見方は非常に根強い。一度生活保護を受給すると、多くの人がなかなか労働復帰できないのは、なぜなのか

「生活保護でやる気がなくなる」
を検証する3つのポイント
「生活保護は、やる気を失わせる制度」という見方は、非常に根強い。笑顔とエネルギーに満ち溢れた楽しそうな人が生活保護で暮らしていることは、事実として少ない。何が原因なのかはともかく、生活保護で暮らしていることと、体力や気力や尊厳が失われがちであることは、強く結びつきがちだ。

 今回は、この問題の解決策の1つとして挙げられることの多い、次の3点のアイデアを考えてみたい。

(1)働いても収入が増えない「収入認定」の仕組みが、生活保護からの脱却を妨げているのではないか。

(2)生活保護から脱却すると、社会保険料や医療費の自費負担によって、かえって生活が苦しくなる。この問題を解決する必要があるのではないか。

(3)世間、特に「頑張っているのに生活保護より苦しい」と感じる低所得層の視線をもう少し温かくするために、生活保護を受給していない低所得層を、もっと支援する必要があるのではないか。

 現在、厚労省は「生活保護受給者に対する就労支援のあり方に関する研究会」を開催しているが、非公開なので内容は不明だ。例えば10月19日に開催された第4回会合ではパソナからのヒアリングが行われたが、資料は公開されていない。しかし、公開されている議事要旨からは、本人の就労意欲を重視していることが読み取れる。いずれにしても、生活保護と就労については、「都市伝説」が多すぎる。

 最初に、大切なことを1つ確認しておく必要がある。働いて生活保護から脱却できる可能性がある人、言い換えれば単身者で年収200万円程度の収入を得られそうな人は、何人いるのだろうか。

 細かく集計された年次・年度次の最新データが揃っているのは、2016年の生活保護統計だ。とはいえ、生活保護統計から「自分の働きによって、生活保護以上の生活ができそうな人」の人数を見積もるのは、実はかなり困難なのだ。

たとえば「母子世帯」には、母子世帯も父子世帯も、両親以外の大人が子どもを育てている世帯も含まれる。いずれにしても、子どもと同居している大人の健康状態や年齢は顧られない。生活保護で言う「母子世帯」であるということが意味するのは、「子どもがいて、両親の片方または両方がいない」ということだけなのだ。

 生活保護で暮らす母子世帯の世帯主は、病気や障害を抱えているかもしれない。また、子どもが障害や病気を抱えており、大人が容易に働けない状況にあるのかもしれない。公式統計では、「母子世帯」が「死別」「離別」「その他」に分類されているが、その世帯の大人が働けるかどうかを示す指標ではない。

 まず単純に、年齢に注目しよう。生活保護で「働ける」とされるのは64歳以下だ。しかし、生活保護で暮らす人々の平均年齢は56.8歳なのだ。「働ける」残り時間は、約8年ということになる。

生活保護受給者で「働ける人」は
実際にどれくらいいるのか
 もっとも「平均=典型」と言えるかどうかは、一般的に疑わしい。せめて、平均ではなく中央値に注目すべきだろう。ところが、公開されている統計データから中央値を推測すると、60〜64歳の範囲にある。62歳なら「働ける」残り時間は3年だ。

 2016年は約211万人が生活保護で暮らしていたが、「働ける」とされる20〜64歳の人々は約85万人だった。このうち約46万人は50〜64歳だった。「働けるはずなのに」と叱咤激励しても、あまり意味がなさそうだ。

「努力すれば、就職はそれほど難しくないはずだ」と言えるのは、20代・30代であろう。同年、生活保護で暮らしていた人々の中に含まれていた20代は約6万人、30代は約11万人であった。合わせて17万人。20代・30代で「若いから働けるはずだ」と考えられる人々は、生活保護で暮らす人々の8%に過ぎなかったことになる。

 さらに年代別に見てみると、40代が23万人、50代が34万人である。この世代に関しては、「失われた20年」「ロスジェネ」「バブル崩壊」「リーマンショック」といった時代の波を考えざるを得ない。
そこに、一度失敗すると再起が困難な日本の就労状況の影響も重なる。60代は、60〜64歳だけで20万人だ。50代で失職して生活保護を必要とする状況になったら、就労努力を重ねても安定した雇用は得られず、アルバイト収入を得て保護費を少なく受け取るのが精一杯のまま60代を迎え、やがて65歳の高齢者となるのは、自然の成り行きかもしれない。

「働けるはず」と言える人が
実はほとんどいない生活保護の世界
 次に「単身者かどうか」に注目しよう。単身の人々と、育児や介護を担っている人々では、同じ「男性でやや不健康な55歳」であっても、就労を開始したり転職したりするにあたっての制約が全く異なるはずだ。

 2016年、生活保護世帯は約160万世帯であった。単身世帯は約127万世帯で、約80%を占めていた。高齢化と単身化が同時に進行しているのは、日本全体に見られる傾向だが、特に生活保護世帯が時代を「先取り」していると言えるかもしれない。

 127万人の単身者たちのうち、20〜64歳は約51万人、20代と30代に限定すると約6万人だった。20代・30代の単身者は、生活保護で暮らす210万人の約3%に過ぎなかったことになる。

 就労には、多様な意義がある。自分の生み出した仕事の価値が認められて報酬を得ることは、社会とつながる重要な回路の1つだ。就労により生活保護から脱却することの価値は、「保護費を減らし、国と地方の財政に貢献する」ということにとどまらない。しかし、年齢別に見ていくと、生活保護で暮らす若い人々が就労によって生活保護を必要としなくなったとしても、保護費の削減はあまり期待できなさそうだ。

 その上に、障害・病気・負傷が重なっているかもしれない。本人の状態を考慮すると、生活保護で暮らす人々の3%にあたる20代・30代の単身者6万人のうち、実際に「働ける」状態にある人々はいったい何人いるのだろうか。

 生活保護で暮らす人々の中に含まれている「働ける」人々は、もともと非常に少ない。したがって、就労指導を強化しても生活保護を必要とする人々は減らず、保護費削減にもつながらない。これが実態だ。

単身者で最大3万円程度の労働収入
生活保護から抜け出す気になるか
 ここで、冒頭の3つの問いに答えよう。

 1番目の問いは「働いても収入が増えない「収入認定」の仕組みが、生活保護からの脱却を妨げているのではないか」というものだ。

 生活保護はあくまでも「健康で文化的」な最低限度を保障する制度なので、生活保護の下では、「最低限度」以上の生活はできない。このため、生活保護費以外の収入がある場合には、「収入認定」され、同額が生活保護費から差し引かれる。

 働いて得た賃金の場合は、「働き損」にならないように、まず働くことに対する必要経費がカバーされる。さらに、本人の可処分所得が若干は増える。とはいえ、単身者の場合の最大で、増加分は3万円程度だ。それでも、「モチベーション下がりまくり」と嘆息しながら正直に収入を申告しなければ、不正受給となる。ちなみに、不正受給のうち最多のパターンは、就労申告を隠したり少なく申告したりするものだ。

 2番目の問いは、「生活保護から脱却すると、社会保険料や医療費の自費負担によって、かえって生活が苦しくなる。この問題を解決する必要があるのではないか」というものだった。

 この問題への回答は、2013年に「就労自立給付金」として制度化されている。生活保護の下で就労している場合、就労収入の多くは前述のとおり「収入認定」されるのだが、その分を仮想的に積み立てておき、保護脱却時に一時金として給付するというものだ。

 ところが、そもそも対象者がいない。背景は、「そもそも、働いて生活保護を脱却できそうな人がいない」ということだけではない。この制度が前提としているのは、安定した収入が得られる状況が継続、言い換えれば一定の金額を「収入認定」できる期間が継続するということなのだが、その前提は成り立たないことが多いのだ。

 たとえば、「生活保護で暮らし始めて、すぐ就職に成功して脱却した」という場合、積立期間がないため給付金の対象にならない。それでも2016年、約1万人が生活保護から脱却して「就労自立給付金」を受け取ったが、厚労省によれば、その1万人は就労によって生活保護から脱却した人々の40%に過ぎなかった。

 生活保護基準を引き上げれば、就労した場合に手元に残せる金額も増える。収入申告した場合に手元に残る金額を同時に引き上げれば、「働いたら生活が豊かになった」という手応えが大きくなるだろう。すると、預貯金が容易になる。効果が疑わしい給付金よりも、より効果的に就労意欲を高められるのではないだろうか。

頑張る低所得層を助ける仕組みも
やはり生活保護基準の引き上げから
 そして最後の問いは、「世間、特に『頑張っているのに生活保護より苦しい』と感じる低所得層の視線をもう少し温かくするために、生活保護を受給していない低所得層をもっと支援する必要があるのではないか」というものだ。

 確かに、その通りだ。しかし、この問題に対する解決策も、まずは「生活保護基準を引き上げる」ということになる。生活保護基準を引き上げれば、連動して最低賃金が引き上げられるからだ。


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 さらに、低所得層に対する社会保険料や医療費の自己負担を減らす必要がある。税の減免対象であるはずの低所得層から、実質的に税である社会保険料を徴収するから、「働いて納税しているのに、生活保護より苦しい生活」という倒錯が生まれてしまうのだ。

 社会保険料や医療費の自己負担を減額・免除する制度は、一応は全国的に存在する。しかし、必要とする人々が誰でも使えるようにわかりやすく説明している自治体や、申請を容易にしている自治体は、現在のところは「日本のふつう」ではない。

 2018年は、生活保護に関して明るいニュースがほとんどないまま終わろうとしている。日本の残念すぎる実情を変えていかなくては、課題問題が濃縮されがちな生活保護の世界は明るくなりようがないだろう。

 それでも、「自分が少しだけラクになりたい」という思いを、「ついでに生活保護の人々も」と広げていくことはできるだろう。そして、厚労省が非公開で続けている生活保護と就労支援の研究会に関心を向けよう。もしかすると、それは自分を救う近道になるかもしれない。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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